JP3252803B2 - 超指向性スピーカ装置 - Google Patents

超指向性スピーカ装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば展示場や娯
楽施設等の放送設備に適用される超指向性スピーカ装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、パラメトリックアレイスピーカを
使った超指向性スピーカ装置では、音圧レベルを十分に
確保するために、構造的に音圧向上させる方法が採用さ
れてきた。例えば、「”パラメトリックアレイビームに
よる空中音源”、電子情報通信学会 信学技報EA94
−37 1994−08 pp.25−pp.30」に
開示された超指向性スピーカ装置では、反射板を用いて
音響振動を収束させることにより音圧向上を図ってい
る。この超指向性スピーカ装置の構成を図6に示す。図
6の超指向性スピーカ装置では、超音波スピーカ31か
ら放射された超音波の音響振動を反射板32で反射する
ことによって、音響放射を収束させて放射する。音響振
動の収束する収束点で音圧レベルが最大となり、音圧レ
ベルの向上を図ることができる。
【0003】また、特開平4−337999号公報に
は、可聴音のスピーカを用いた超指向性スピーカ装置が
開示されている。この超指向性スピーカ装置の構成を図
7に示す。図7の超指向性スピーカ装置は、映像音響機
器41の左右にフルレンジタイプのスピーカ42を用い
たスピーカシステム43を左右各12個、同方向に直線
上に配置し、スピーカシステム3の位相を−90°〜+
90°の範囲で可変することができるように構成した移
相回路44を各スピーカシステム3に接続して設け、あ
る特定の方向だけで音を聞きたい場合にそのリスニング
ポイントで位相コントローラ5を操作してそれぞれのス
ピーカ42の位相を各々変化させて特定のポイントに指
向性を集中させることができるようにしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図6に
示す超指向性スピーカ装置では、超音波スピーカの音圧
向上を図ったとしても、例えばマグネット方式のスピー
カの音圧レベルまで上げることはできないという問題点
があった。その理由は、超音波スピーカ31が、振幅変
調された音響振動が空中で復調して元の可聴音になるこ
とを利用するパラメトリックアレイスピーカであるた
め、復調する際の変換損失があり、エネルギー効率が悪
いためである。さらに、この超指向性スピーカ装置で
は、遠距離に位置する視聴者に音響振動が伝搬せず、聴
取できないという問題点もあった。その理由は、音響振
動の収束点より遠距離では、音響振動が発散して、聴取
可能な音響エネルギーが伝搬しないためである。また、
図7に示す可聴音のスピーカを使った超指向性スピーカ
装置の場合、スピーカ42の指向性によって音声の指向
性が左右されるが、可聴音のスピーカであるため超音波
スピーカ程の指向性が無い、すなわち指向性が悪いと言
う問題点があった。本発明は、上記課題を解決するため
になされたもので、高い音圧レベルと指向性を有する超
指向性スピーカ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の超指向性スピー
カ装置は、請求項1に記載のように、音声信号により超
音波帯域の搬送波を振幅変調する振幅変調器と、振幅変
調器から出力された被変調信号を増幅する第1の増幅器
と、上記音声信号を増幅する第2の増幅器と、第1の増
幅器で増幅された被変調信号を超指向性の第1の音響振
動として特定方向に放射する超音波スピーカと、第2の
増幅器で増幅された音声信号を第2の音響振動として上
記特定方向を含む広い範囲に放射する広域スピーカとを
有するものである。このように、指向性の極めて高い超
音波スピーカと広域スピーカとを組み合わせることによ
り、所望の特定空間のみ音圧レベルを大きくしたり小さ
くしたりすることができる。また、請求項2に記載のよ
うに、上記振幅変調器の前段に上記音声信号の位相変化
が可能な位相制御器を有するものである。また、請求項
3に記載のように、上記音声信号から上記第1、第2の
増幅器の増幅率をそれぞれ示す増幅率情報を抽出する判
定器と、この判定器からの増幅率情報に従って第1、第
2の増幅器の増幅率を制御する増幅率制御器とを有する
ものである。また、請求項4に記載のように、上記超音
波スピーカから放射された超音波の視聴者からの反射波
を検出することにより、上記特定方向に視聴者が存在す
るか否かを識別する超音波センサと、超音波センサの識
別結果に従って第1、第2の増幅器の増幅率を制御する
増幅率制御器とを有するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】[実施の形態の1]次に、本発明
の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態を示す超指向性スピー
カ装置のブロック図である。本実施の形態の超指向性ス
ピーカ装置は、音声信号を生成する音声生成器1と、音
声生成器1から出力された音声信号の位相変化が可能な
位相制御器2と、位相制御器2から出力された音声信号
により超音波帯域の搬送波を振幅変調する振幅変調器3
と、振幅変調器3から出力された被変調信号を増幅する
第1の増幅器4と、音声生成器1から出力された音声信
号を増幅する第2の増幅器5と、増幅器4,5の増幅率
を制御する増幅率制御器6と、増幅器4で増幅された被
変調信号を超指向性の第1の音響振動として特定方向に
放射する超音波スピーカ7と、増幅器5で増幅された音
声信号を第2の音響振動として上記特定方向を含む広い
範囲に放射する広域スピーカ8とから構成される。
【0007】次に、このような超指向性スピーカ装置の
動作を説明する。超音波スピーカ7は、いわゆるパラメ
トリックアレイスピーカであり、可聴音(音声信号)に
よって超音波帯の周波数をもつ搬送波を振幅変調したも
のを空中に放射し、空気の非線型特性を利用して可聴音
を復調することにより指向性の高い音響放射を行うスピ
ーカである。これに対し、広域スピーカ8は、無指向性
あるいは低指向性の音響放射を行うスピーカである。
【0008】音声生成器1から出力された音声信号は、
2つに分岐され、特定空間の音量を大きくしたり小さく
したりするための超音波スピーカ系と上記特定空間を含
む空間全体に音響放射を行う広域スピーカ系とに入力さ
れる。まず、超音波スピーカ系において、位相制御器2
は、音声生成器1から出力された音声信号の位相を変化
させる。
【0009】振幅変調器3は、位相制御器2から出力さ
れた音声信号で超音波帯域の搬送波を振幅変調する。振
幅変調器3の搬送波周波数は超音波帯の周波数すなわち
20KHz以上である。ここでは、搬送波周波数を40
KHzとし、超音波スピーカ7の公称周波数も同じく4
0KHzとする。次いで、増幅器4は、振幅変調器3か
ら出力された被変調信号を増幅率制御器6で設定された
増幅率に従って超音波スピーカ7をドライブ可能なレベ
ルまで増幅して、これを超音波スピーカ7に出力する。
【0010】超音波スピーカ7は、増幅器4で増幅され
た被変調信号を超指向性の第1の音響振動として特定方
向に放射する。超音波スピーカ7によって空気中に放射
された第1の音響振動は、空気の非線形特性によって歪
み波となり、空気中を伝搬中に元の可聴音に復調され
る。この復調された可聴音は、元の超音波の超指向特性
を持っているため、所望の特定空間に対してのみ音響放
射を行うことができる。
【0011】ここで、超指向性の音響放射について、図
2を参照して説明する。音声生成器1から出力された音
声信号が図2(a)に示す伝送波である。図2(b)に
振幅変調器3の内部で生成される搬送波の波形を示す。
搬送波を伝送波にのせることによって、伝送波は図2
(c)のような被変調波に変換される。
【0012】このときの被変調波xは、搬送波周波数を
f1、伝送波周波数をf2、搬送波振幅をn1、伝送波
振幅をn2とすると次式のようになる。 x=(n1+nx)sinf1+n2sin(f1±f2) ・・・(1) ここで、nxは伝送波が0の時の音声信号レベルを示し
ている。
【0013】この被変調波xを空中に放射すると、空気
の非線形特性により空気が順方向に震動するときには早
く進み、空気が逆方向に進むときには遅く進むことか
ら、音波は図2(d)のように歪んでゆき元の可聴音が
復調されていく(図2(e))。この復調された可聴音
は、元の超音波の超指向特性を持っている。
【0014】一方、広域スピーカ系において、増幅器5
は、音声生成器1から出力された音声信号を増幅率制御
器6で設定された増幅率に従って広域スピーカ8をドラ
イブ可能なレベルまで増幅して、これを広域スピーカ8
に出力する。広域スピーカ8は、増幅器5で増幅された
音声信号を第2の音響振動として上記特定方向を含む広
い範囲に放射する。
【0015】以上のように本発明では、超音波スピーカ
7による超指向性の第1の音響振動の放射と、広域スピ
ーカ8による無指向性あるいは低指向性の第2の音響振
動の放射を同時に行う。第1の音響振動が伝搬する音場
は、限定的な音響空間を形成し、第2の音響振動が伝搬
する音場は、低い音圧の広域な音響空間を形成する。そ
して、第1の音響振動と第2の音響振動が重なり合う音
場において、これらが逆位相の場合には第1、第2の音
響振動が相殺され、同位相の場合には音響振動が強調さ
れる。
【0016】したがって、第1の音響振動の位相を位相
制御器2によって変化させることにより、第1の音響振
動を放射する特定空間のみ音圧レベルを大きくしたり小
さくしたりすることができる。図3に本実施の形態の超
指向性スピーカ装置の指向特性を示す。図3において、
0°は超音波スピーカ7の主軸方向、すなわち上記特定
方向を示す。また、ここでは、超音波スピーカ7と広域
スピーカ8を接近させて配置し、各々の主軸方向を揃え
ている。
【0017】特定空間(図3の0°付近)において、第
1の音響振動と第2の音響振動が逆位相になるように位
相制御器2を調整すれば、特定空間の音圧レベルは図3
の特性Aで示すように低下する。逆に、特定空間におい
て、第1の音響振動と第2の音響振動が同位相になるよ
うに位相制御器2を調整すれば、特定空間の音圧レベル
は図3の特性Bで示すように上昇する。なお、0°から
左右に大きく傾いた方向に対し0°付近の音圧レベルが
高くなっているのは、広域スピーカ8に指向性があるた
めである。
【0018】また、超音波スピーカ7による超指向性の
第1の音響振動は、直進性を持ち、遠距離まで伝搬する
ので、超指向性スピーカ装置から遠距離に位置する視聴
者であっても聴取が可能である。
【0019】なお、本実施の形態では、増幅率制御器6
が増幅器4,5の増幅率を同じ値に設定しているが、こ
れらを独立に異なる値に制御してもよい。このような独
立した増幅率制御によって特定空間の音量の上げ下げを
行うことも可能である。また、超音波スピーカ7と広域
スピーカ8の位置関係を調整して位相を変化させるよう
にすれば、位相制御器2を省略することも可能である。
【0020】[実施の形態の2]図4は本発明の第2の
実施の形態を示す超指向性スピーカ装置のブロック図で
あり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。
本実施の形態の音声生成器1aから出力される音声信号
には、超音波スピーカ系と広域スピーカ系の増幅率を個
別に示す増幅率情報が付加されている。
【0021】判定器9は、音声生成器1aが発生する音
声信号から増幅率情報を抽出し、これを増幅率制御器6
aに渡す。増幅率制御器6aは、この増幅率情報に従っ
て超音波スピーカ系の増幅器4の増幅率と広域スピーカ
系の増幅器5の増幅率を独立に制御する。その他の動作
は実施の形態の1と同様である。このように本実施の形
態によれば、所望の特定空間において、音圧レベルを大
きくしたり小さくしたりする制御を音声生成器1が出力
するコンテンツによって自由に行うことが可能となる。
【0022】[実施の形態の3]図5は本発明の第3の
実施の形態を示す超指向性スピーカ装置のブロック図で
あり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。
超音波センサ10は、超音波スピーカ7から放射された
超音波の視聴者からの反射波を検出することにより、上
記特定空間に視聴者が存在するか否かを識別する。
【0023】つまり、超音波スピーカ7の主軸方向の特
定空間に視聴者がいる場合、被変調波の形で超音波スピ
ーカ7から放射された超音波の一部が視聴者によって反
射される。超音波センサ10は、この反射波を検出可能
な位置に設置されている。増幅率制御器6bは、超音波
センサ10で反射波が検出された場合、すなわち特定空
間に視聴者が存在すると判断される場合、特定空間の音
圧レベルが上昇するように増幅器4,5の増幅率を独立
に制御する(例えば、増幅器4の増幅率を上げる)。
【0024】また、増幅率制御器6bは、超音波センサ
10で反射波が検出されない場合、すなわち特定空間に
視聴者が存在しないと判断される場合、特定空間の音圧
レベルが低下するように、増幅器4,5の増幅率を独立
に制御する(例えば、増幅器4の増幅率を下げる)。た
だし、視聴者がいない状態で特定空間の音圧レベルを低
く設定している場合には、音圧レベルを変えなくてもよ
い。なお、実施の形態の1,2では、位相制御器を使用
していないが、実施の形態の1のように位相制御器を使
用してもよいことは言うまでもない。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、請求項1に記載のよう
に、指向性の極めて高い超音波スピーカと広域スピーカ
とを組み合わせることにより、所望の特定空間のみ音圧
レベルを大きくしたり小さくしたりすることができ、従
来のパラメトリックアレイスピーカを使ったスピーカ装
置よりも高い音圧レベルと可聴音のスピーカを使ったス
ピーカ装置よりも高い指向性を実現することができる。
また、超音波スピーカによる超指向性の第1の音響振動
は、直進性を持ち、遠距離まで伝搬するので、本装置か
ら遠距離に位置する視聴者であっても聴取が可能であ
る。また、広域スピーカにより広範囲に音響放射を行う
ので、限定された特定空間だけでなく、他の位置でも聴
取が可能である。このため、特定空間の音圧レベルを下
げて特定空間での聴取を不可能にしたり、特定空間の音
圧レベルを上げて特定空間にいる視聴者に聴取させたい
場合に、全体の音圧レベル(第2の音響振動の音圧レベ
ル)を変化させる必要が無い。
【0026】また、請求項3に記載のように、判定器及
び増幅率制御器を設けることにより、音圧レベルを大き
くしたり小さくしたりする制御をコンテンツ(増幅率情
報を含む音声信号)によって自由に行うことが可能とな
る。
【0027】また、請求項4に記載のように、超音波セ
ンサ及び増幅率制御器を設けることにより、特定空間に
視聴者がいる場合には特定空間の音圧レベルを上げ、特
定空間に視聴者がいない場合には特定空間の音圧レベル
を下げるかあるいは変えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示す超指向性ス
ピーカ装置のブロック図である。
【図2】 超指向性の音響放射について説明するための
図である。
【図3】 図1の超指向性スピーカ装置の指向特性を示
す図である。
【図4】 本発明の第2の実施の形態を示す超指向性ス
ピーカ装置のブロック図である。
【図5】 本発明の第3の実施の形態を示す超指向性ス
ピーカ装置のブロック図である。
【図6】 従来の超指向性スピーカ装置の構成例を示す
ブロック図である。
【図7】 従来の超指向性スピーカ装置の他の構成例を
示すブロック図である。
【符号の説明】
1、1a…音声生成器、2…位相制御器、3…振幅変調
器、4、5…増幅器、6、6a、6b…増幅率制御器、
7…超音波スピーカ、8…広域スピーカ、9…判定器、
10…超音波センサ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−230898(JP,A) 特開 平2−60400(JP,A) 特開 平6−33033(JP,A) 特開 平4−337999(JP,A) 特開 平3−159400(JP,A) 特開2000−4500(JP,A) 特開 平6−113388(JP,A) 特開 平4−151998(JP,A) 実開 平2−60393(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04R 3/00 310

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 音声信号により超音波帯域の搬送波を振
    幅変調する振幅変調器と、 振幅変調器から出力された被変調信号を増幅する第1の
    増幅器と、 前記音声信号を増幅する第2の増幅器と、 第1の増幅器で増幅された被変調信号を超指向性の第1
    の音響振動として特定方向に放射する超音波スピーカ
    と、 第2の増幅器で増幅された音声信号を第2の音響振動と
    して前記特定方向を含む広い範囲に放射する広域スピー
    カとを有することを特徴とする超指向性スピーカ装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の超指向性スピーカ装置に
    おいて、 前記振幅変調器の前段に前記音声信号の位相変化が可能
    な位相制御器を有することを特徴とする超指向性スピー
    カ装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の超指向性スピーカ装置に
    おいて、 前記音声信号から前記第1、第2の増幅器の増幅率をそ
    れぞれ示す増幅率情報を抽出する判定器と、 この判定器からの増幅率情報に従って第1、第2の増幅
    器の増幅率を制御する増幅率制御器とを有することを特
    徴とする超指向性スピーカ装置。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の超指向性スピーカ装置に
    おいて、 前記超音波スピーカから放射された超音波の視聴者から
    の反射波を検出することにより、前記特定方向に視聴者
    が存在するか否かを識別する超音波センサと、 超音波センサの識別結果に従って第1、第2の増幅器の
    増幅率を制御する増幅率制御器とを有することを特徴と
    する超指向性スピーカ装置。
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