JP3249339B2 - アクティブ中性子多重測定装置 - Google Patents

アクティブ中性子多重測定装置

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アクティブ中性子多重
測定装置、特に核燃料サイクル関連施設より生ずる廃棄
物中に含まれているプルトニウム等の超ウラン元素を測
定するアクティブ中性子多重測定装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、プルトニウムを中心とする超ウラ
ン元素が大量に生成されるようになり、核燃料廃棄物等
から環境中への拡散が進む可能性が増すにつれて、これ
等の元素の環境における挙動が問題になってきている。
そのため、中性子を減速して熱化する中性子減速材を内
側面(内壁面)に設けた照射室と、同照射室内で検査対
象物に中性子を照射する中性子源と、照射室内に配置し
た中性子検出器とを具えたアクティブ中性子多重測定装
置を使用している。
【0003】このアクティブ中性子多重測定装置では、
中性子源により高速中性子を発生させ、この高速中性子
を照射室の内側面に設けた中性子減速材により減速して
熱化することにより、照射室内にほぼ均一な熱中性子場
を形成し、核燃料サイクル関連施設より生じる廃棄物を
内部に有する照射室内の検査対象物中の超ウラン元素
と、照射室内の熱中性子との核分裂反応により生成され
る核分裂中性子とを、照射室内の中性子検出器により測
定し、超ウラン元素を定量化して、超ウラン元素の量を
把握するようにしている。
【0004】この種の測定装置としては、例えば198
2年4月22日のワシントン州リッチランドにおける放
射性廃棄物の処理及び取扱に関するアメリカ原子力学会
(ANS)例会の会誌に掲載された「多同位体超ウラン
元素の廃棄物のアッセイシステム」がある。この測定装
置では、照射室の内側面(内壁面)に接して小型加速器
中性子源を固定的に設置しており、これより、高速中性
子を発生させる。また照射室の内側面(内壁面)に内張
りした中性子減速材として照射室内の高速中性子に直接
曝される10cm程度の厚さの黒鉛からなる内層と、2
3cm程度の厚さのポリエチレンからなる外層とを有す
る複合体を使用し、この複合体により、照射室内に略均
一な熱中性子場を形成し、その熱中性子により超ウラン
元素の核分裂反応を誘起させている。
【0005】照射室内には、中性子検出器があり、核分
裂により発生した中性子を測定し、その計数から超ウラ
ン元素量を得ている。このとき、検査対象物内の超ウラ
ン元素の核分裂反応は、検査対象物内の熱中性子束に比
例して発生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記従来のアクティブ
中性子多重測定装置には、次の問題があった。即ち、照
射室内に固定的に設置した中性子源から検査対象物に中
性子を照射したとき、検査対象物内に生ずる熱中性子束
は、一様一定な値ではなく、検査対象物の組成及び中性
子源との位置関係とにより、1桁程度の山谷を有する分
布になる。
【0007】このため、超ウラン元素が検査対象物内の
熱中性子束の高い領域に偏在するか、低い領域に偏在す
るかにより、測定される超ウラン元素量に1桁程度のば
らつきが生ずることになる。本発明は前記の問題点に鑑
み提案するものであり、その目的とする処は、検査対象
物内の核分裂反応率のゆがみに起因する超ウラン元素存
在量測定値の誤差を低減することができるアクティブ中
性子多重測定装置を提供しようとする点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、中性子を減速して熱化する中性子減速
材を内側面に設けた照射室と、同照射室内で検査対象物
に中性子を照射する中性子源と、前記照射室内に配置し
た中性子検出器とを具えたアクティブ中性子多重測定装
置において、前記中性子源は、前記照射室内に移動可能
に設置され、この中性子源を移動させるごとに前記中性
子検出器によって中性子の検出を行うように構成してい
る(請求項1)。
【0009】前記アクティブ中性子多重測定装置におい
て、中性子源を前記照射室内の複数箇所に設置してもよ
い(請求項2)。
【0010】
【作用】本発明のアクティブ中性子多重測定装置は前記
のように構成されており、中性子源から検査対象物へ中
性子を照射する。照射した中性子は、照射室内で必要に
して十分な厚さを有する中性子減速材(黒鉛)と検査対
象物中の物質とにより効率的に熱化され、生成する熱中
性子が検査対象物内の超ウラン元素に核分裂反応を誘起
させる一方、中性子検出器により核分裂反応による中性
子を検出して、超ウラン元素を定量化する。ここで、検
査対象物内の超ウラン元素の核分裂反応の量は、同検査
対象物の組成及び中性子源との相対的位置関係に依存し
ている。本発明では、中性子源の照射位置を変えること
により、ある中性子源位置では熱中性子束が低い検査対
象物内の領域について別の中性子源位置を選択すること
により、熱中性子束を高くし、各中性子源位置での超ウ
ラン元素の存在量の測定値に適切な重みをつけて平均す
ることにより、精度のよい超ウラン元素の存在量を得
る。
【0011】
【実施例】次に本発明のアクティブ中性子多重測定装置
を図1に示す一実施例により説明する。1が測定装置、
2が照射室で、同照射室2は、中性子線量率を低減する
ために、その周囲が中性子遮蔽材(例えば水を充填した
中性子遮蔽体2a〜2f)により囲まれている。
【0012】この照射室2の内側には、中性子減速材と
して厚さ約35cmの黒鉛ブロック3が多数設けられて
いる。測定装置1が遮蔽された測定室(図示せず)内に
設置される場合には、中性子遮蔽体2a〜2fは特に設
置しなくてもよい。また照射室2内には、中性子を照射
する中性子源4と、プルトニウム等のような超ウラン元
素を含む核燃料廃棄物を貯蔵したドラム缶(検査対象
物)5と、中性子検出器6とを図示のように配設してい
る。なお図1の例では、中性子源4は、上下方向に移動
可能である。図1は、ドラム缶5を出し入れするため
に、測定装置1の中性子遮蔽材2dが斜め下方に引き出
された状態を示している。
【0013】図2は、本発明の測定装置において、中性
子源4の位置を変えたときの代表的超ウラン元素プルト
ニウム239の単位質量に対する核分裂反応の発生率
(以下、核分裂反応率)の等高線分布を測定装置1内、
及びドラム缶(検査対象物)5内について示したもので
ある。これらの核分裂反応率の等高線分布は、単位質量
のプルトニウム239がある場所に存在すると仮定し、
その場所の熱中性子に反応して生ずる単位時間当たりの
核分裂数を等高線で結んだものであり、核分裂反応率
は、プルトニウム239の核分裂反応断面積に各場所の
熱中性子束を乗じて得られる。
【0014】図2において、中性子源4は、ドラム缶
(検査対象物)5に向かい合う黒鉛の表面付近にあっ
て、その高さ方向の位置は、図2(A)では、ドラム缶
(検査対象物)5の高さ方向の中点面よりも僅かに下方
であり、図2(B)では、ドラム缶(検査対象物)5の
高さ方向の中点面であり、図2(C)では、ドラム缶
(検査対象物)5の中心軸上の天井付近である。
【0015】ここで、各場所の熱中性子束は、中性子源
を線源とするボルツマン輸送方程式を、大型計算機上の
プログラミングされた計算コードを使用して、数値計算
により得られたものである。図2の計算では、計算コー
ドの制約から測定装置1がドラム缶(検査対象物)5の
中心軸を中心とした円筒体系に近似しているため、図2
(A)(B)(C)は、ドラム缶(検査対象物)5の中
心軸を中心とした円筒体系により表現されている。
【0016】図2(A)(B)(C)の核分裂反応率の
各等高線分布の比較から、図2(A)では、核分裂反応
率がドラム缶(検査対象物)5の頂部付近で低くなって
おり、図2(B)では、ドラム缶(検査対象物)5の頂
部付近及び底部付近で低くなっており、図2(C)で
は、ドラム缶(検査対象物)5の底部付近で低くなって
いることが判る。
【0017】図2(A)(B)(C)のいづれか1ケー
スのみの中性子源位置で測定を行う場合は、超ウラン元
素の検査対象物内の存在位置により核分裂反応率が1桁
程度変動しているため、得られる超ウラン元素存在量測
定値は、ファクタ10(10倍から1/10倍)程度の
精度になる。しかし中性子源の位置を変えて複数の測定
を行う場合は、ある中性子源位置のときに核分裂反応率
の値が低くなる領域が他の中性子源位置では値が高くな
るように、各中性子源位置を設定して測定を行い、得ら
れる超ウラン元素存在量の各測定値に適当な重みをつけ
て平均することにより、一層精度のよい超ウラン元素存
在量測定値が得られる。
【0018】例えば図2(A)では、核分裂反応率がド
ラム缶(検査対象物)5の頂部付近で低くなっている
が、図2(C)では、ドラム缶(検査対象物)5の底部
付近で低くなっているので、両者から得られる超ウラン
元素存在量の各測定値を算術平均して、超ウラン元素存
在量を求めれば、これは、図2(A)(C)各単独の測
定値よりも精度が向上する。
【0019】以上は、中性子源位置として代表的な3点
(A、B、Cケース)に例をとって本発明の有効性を示
したものであるが、さらに厳密な説明を以下に記述す
る。即ち、精度のよい超ウラン元素存在量測定値を得る
には、以下のようにする。 中性子源位置を変えたときのドラム缶(検査対象
物)5内の代表的超ウラン元素プルトニウム239の単
位質量に対する核分裂反応の発生率(以下、核分裂反応
率)の等高線分布を、大型計算機上のプログラミングさ
れた計算コードを使用して、ボルツマン輸送方程式によ
り数値計算を行って得る。ここでは、中性子源位置とし
てN個の異なる位置を考えるものとして、各中性子源位
置に対するドラム缶(検査対象物)5内の核分裂反応率
分布Fn(x、y、z)を得る。
【0020】ここで、n=1、2、・・・、Nとし、
x、y、zは、ドラム缶(検査対象物)5内の空間座標
とする。 N個の核分裂反応率分布Fn(x、y、z)を線形
結合し、関数F(x、y、z)を作成することを考え、
線形結合の重みWnを以下のように選定する。ここで、
関数F(x、y、z)は、Fn(x、y、z)から合成
されたドラム缶(検査対象物)5内の核分裂反応率分布
に他ならない。
【0021】 F(x、y、z)=ΣWn*Fn(x、y、z) 上式で、Σは総和記号であり、n=1、2、・・・、N
までの総和を示す。*は乗算記号である。重みWnは、
合成されたドラム缶(検査対象物)5内の核分裂反応率
分布F(x、y、z)が最も一様・平坦な分布になるよ
うに選定する。これは、例えば一様・平坦な分布からの
偏差を2乗した値をドラム缶(検査対象物)5内で積分
し、その値を最小にするように試行錯誤により行う。下
式は、考え方を示している。
【0022】
【数1】
【0023】但し、積分範囲vはドラム缶(検査対象物
5)内とし、
【0024】
【数2】
【0025】より与える。 上記の考え方で選定したWnの逆数を重みとして用
いたn=1、2、・・・、Nの各中性子源位置における
超ウラン元素存在量測定値の算術平均値は、単一の中性
子源位置における超ウラン元素存在量の測定値に較べて
一層精度のよい超ウラン元素存在量測定値を与える。
【0026】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の
中性子源を用いたアクティブ中性子多重測定装置では、
中性子源から検査対象物への中性子の照射位置を変えて
照射することにより得られた複数の測定値を適当な重み
をつけて平均するので、検査対象物内の核分裂反応率の
ゆがみに起因する超ウラン元素存在量測定値の誤差を低
減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアクティブ中性子多重測定装置の一実
施例を示す斜視図である。
【図2】本発明のアクティブ中性子多重測定装置におい
て中性子源位置を変えたときの代表的超ウラン元素プル
トニウム239の単位質量に対する核分裂反応率の等高
線分布を示す説明図である。
【符号の説明】
1 アクティブ中性子多重測定装置 2 照射室 2a〜2f 中性子遮蔽体 3 中性子減速材(黒鉛ブロック) 4 中性子源 5 ドラム缶(検査対象物) 6 中性子検出器
フロントページの続き (72)発明者 諏訪 博一 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三菱重工業株式会社内 (72)発明者 舘野 徹 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三菱重工業株式会社内 (72)発明者 薄井 和也 茨城県那珂郡東海村村松4−33 動力 炉・核燃料開発事業団 東海事業所内 (72)発明者 家村 圭輔 茨城県那珂郡東海村村松4−33 動力 炉・核燃料開発事業団 東海事業所内 審査官 岡▲崎▼ 輝雄 (56)参考文献 特開 昭63−124988(JP,A) 特開 平2−126144(JP,A) 特開 昭64−74438(JP,A) 特開 昭61−262690(JP,A) 特開 昭61−139795(JP,A) 特開 平5−40078(JP,A) 実開 平2−113184(JP,U) 実開 昭64−40099(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01T 1/167 G01T 3/00 G21F 9/36 511

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中性子を減速して熱化する中性子減速材
    を内側面に設けた照射室と、同照射室内で検査対象物に
    中性子を照射する中性子源と、前記照射室内に配置した
    中性子検出器とを具えたアクティブ中性子多重測定装置
    において、 前記中性子源は、前記照射室内に移動可能に設置され、
    この中性子源を移動させるごとに前記中性子検出器によ
    って中性子の検出を行うことを特徴とするアクティブ中
    性子多重測定装置。
  2. 【請求項2】 前記中性子源を前記照射室内の複数箇所
    に設置した請求項1記載のアクティブ中性子多重測定装
    置。
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