JP3247139B2 - 耐食性に優れた缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた缶用鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、調質度T1〜T6、
DR8〜DR10の全調質度およびプレス加工でつくら
れる2ピース缶(SDC: Shallow-Drawn Can, DRDC: Draw
n & RedrawnCan, DTRC: Drawn & Thin Redrawn Can, DW
IC: Drawing & Wall Ironing Can )にも胴を接合して
つくられる3ピース缶(Side Slam Soldered Can, Side
seamWelded Can, Thermoplastic Bonded Side Seam Ca
n)にも使える缶用鋼板を一種類の鋼種でつくられる、
経済性に優れた、合理的な缶用鋼板およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】缶用鋼板は、Sn〔ぶりきSn付着量
2.8g/m2 および薄目付鋼板(Lightly Tin Coated
Steel)を含む〕,Ni,Cr,Zn等の各種めっきを
施した後、缶詰に供せられる。飲料缶、食缶等に使用さ
れる缶用鋼板の材質は調質度で規定される。調質度はロ
ックウェルT硬さ(HR −30T)の値をもって表わさ
れ、一回圧延製品では軟質なものからT1〜T6に、二
回圧延製品は同様にDR8〜DR10に区分されてい
る。
【0003】各調質度のものをつくりわけるため、T3
材以下の各種軟質ぶりき原板はCおよびMn含有量を変
化させた低炭素Alキルド鋼素材を用いて、箱焼鈍法で
焼鈍温度と時間で材質を調整した後、1〜3%圧下率の
乾式調質圧延で仕上げてきた。また、T4材以上の各種
硬質ぶりき原板はC,N含有量を変化させた低炭素Al
キルド鋼素材を用いて、連続焼鈍法で焼鈍温度と時間で
材質を調整した後、1〜3%圧下率の乾式調質圧延で仕
上げてきた。そして、DR材はT1〜T6材の各種焼鈍
原板を用いて5〜50%圧下率の湿式(調質圧延油また
は冷間圧延油を使う)、二回圧延(Double cold-Reduci
ng)調質圧延で仕上げてきた。
【0004】本発明者らは、C,N含有量を調整した低
炭素Alキルド鋼を素材とし、急冷、過時効処理帯を有
する連続焼鈍法で軟質化できる技術を発明し、T2材ま
での商業生産を行なってきた。しかし、最も軟質なT1
材は連続焼鈍法では製造できなかったことから、連続焼
鈍法によりT1材を製造する方法の開発が要望されてい
た。
【0005】箱焼鈍法には下記(1)〜(3)に示すよ
うな欠点があることが知られている。 (1)タイトコイル状態で焼鈍が施されるために焼付き
欠陥(Sticking Break)が生じて歩留が低下する。 (2)均熱には数時間以上が必要であるため、焼鈍中に
鋼板表面の結晶粒界へC,Mn等が富化濃縮され、その
結果グラファイトに起因する表面欠陥が発生したり、ま
たぶりきの耐食性が劣化することがあった。 (3)コイルの温度は外巻部と内巻部は高温になり、中
巻部は低温になるため、コイル内硬度のばらつきが大き
くなり均質な原板を得ることは困難であり、その結果平
坦度も劣化していた。 以上述べたことからわかるように、従来箱焼鈍法によれ
ば良質のT1〜T3級のいわゆる軟質ぶりき原板の製造
は困難であった。
【0006】さて、軟質ぶりきは主に3ピース缶の胴板
などに使用されているが、プレス加工で製缶される缶体
(2ピース缶)にもまた使用される。2ピース缶体に使
用される場合には軟質であることのほかにプレス加工性
に優れていることも必要であり、特に
【外1】 の面内異方性が小さいことが要求される。一般にぶりき
にプレス加工を施すと表面の錫層はプレス加工の潤滑の
役目を果たすために、
【外2】 はそれほど大きいことは必要ではないが、面内異方性が
大きいとイヤリングが大きくなり、歩留が低下して経済
的でない。また、缶体胴部の板厚が不揃いとなって缶径
精度の低下や缶強度の低下をひきおこす。
【0007】また、もし同一の鋼種でT1材も連続焼鈍
法で製造できれば、T2材以上は加工硬化法でつくりわ
けることができるので、製造工程の合理化が図れる効果
が期待された。
【0008】一方、3ピース缶、2ピース缶は図1に示
す工程でつくられる。2ピース缶、3ピース缶とも、合
理化を図るため、製缶技術の進歩によって、板厚の薄い
ものが使用され始めているが、板厚を薄くすると当然、
缶強度が小さくなる。その補強としてネックイン加工、
さらに進んで多段ネックイン加工、スムース大幅ネック
イン加工が施され始めた。2ピース缶においては、塗
装、焼き付け後、深絞り加工、しごき加工、ストレッチ
加工、張り出し加工、底のドーム加工が施される。ま
た、2ピース缶製法においても缶高さは増々高く(絞り
比大)なってきた。
【0009】以上の加工を施すことは、Sn,Ni,C
r等の表面処理皮膜は破壊されたり、地金との密着性が
悪くなるし、塗装、印刷面と表面処理面との密着性も悪
くなって食品を充填した後、食品の腐食性によっては、
缶内面が黒く腐食したり、程度の悪い場合は穿孔腐食と
なって、あなあきになったりする。一方、缶外面の印刷
にしても、苛酷な加工によって密着性が低下して、発錆
しやすくなる等の問題もあった。
【0010】さらに、最近では、大型缶(18l缶、ペ
ール缶、オイル缶等)では、表面処理を施さない、調質
圧延原板に直接塗装、印刷を施して、合理化を図るもの
も出始めた。そのような場合、前記のように箱型焼鈍材
では耐食性、耐錆性に劣るし、従来の連続焼鈍材にして
も、耐食性、耐錆性に対しては充填物によっては不十分
であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の連続
焼鈍法はもとより箱焼鈍法によっても充分に満足し得る
品質の調質度T1〜T3を有する錫めっきあるいはティ
ンフリー鋼板を製造することができなかったことに鑑
み、連続焼鈍法およびこれに続く調質圧延の圧下率の適
切な選定によって単一の鋼種で良質の調質度T1さらに
はこれより硬質の調質度T2〜T6、調質度DR8〜D
R10のプレス成形性および耐食性に優れる缶用鋼板、
直接塗装可能な鋼板、錫めっき鋼板およびティンフリー
鋼板ならびにそれらの製造方法を提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、組
成が重量比で、 C:0.004%以下、 Si:0.03%以下、 Mn:0.05〜0.60%、 P:0.02%以下、 S:0.02%以下、 N:0.01%以下、 Al:0.02〜0.20%、 Nb:0.001〜0.1%、 Ti:0.0001〜0.1%、 Cr:0.1%以下、 Cu:0.1%以下、 Ni:0.1%以下、 B:0.0001〜0.005%、 Mo:0.01%以下、 O:0.01%以下、 V:0.01%以下、 Zr:0.01%以下、 Ca:0.005%以下、 Sn:0.01%以下、 Sb:0.01%以下、 希土類元素(REM):0.005%以下、Na:0.001%以下、 Mg:0.001%以下、 As:0.001〜0.01%、 Te:0.0001〜0.01% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる極
低炭素鋼よりり、表層にNi/(Fe+Ni)の重量
比が0.01〜0.3で厚さが10〜4000ÅのFe
−Ni合金層を有することを特徴とする耐食性に優れた
缶用鋼板を提供するものである。
【0013】この鋼板には連続焼鈍、圧下率を適切に選
定した調質圧延を施して任意の調質度の缶用鋼板を得る
ことができる。さらに、調質圧延時に乾燥重量で1〜1
00mg/m2 の防錆油膜を形成しておくと、直接塗装
可能な缶用鋼板が得られる。あるいは、表面に錫めっき
またはクロメート処理を施してぶりき、錫薄目付鋼板、
ティンフリー鋼板を得ることができる。
【0014】以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】本発明者らは、製鋼時に真空脱ガス処理を
有効に駆使して、C量を極微量にしたAlキルド鋼スラ
ブを使用することにより連続焼鈍法によってもぶりき原
板では最も軟質な調質度T1の原板を製造することがで
きること、ならびに上記Alキルド鋼スラブに炭化物お
よび窒化物形成元素であるNb,Ti,Bを必要により
含有させたAlキルド鋼スラブを使用することにより、
【外3】 が大きく、Δrが小さいために絞り加工によって製缶す
るのに適した素材を連続焼鈍法を用いて調質度T1の原
板を製造することができることに想到して、本発明を完
成した。
【0016】また、極低炭素鋼板は用途や使い方によっ
ては脆性がみられるが、結晶粒界強度を増加する元素で
あるBを必要により含有させる。
【0017】また、連続焼鈍法により前記(1)〜
(3)は解決できるが、さらに、缶分野で進んでいる薄
めっき化に対応できるように、焼鈍時に鋼中の微量Cが
表面に濃化してくることを防止し、めっきの密着性、耐
食性を改善できる効果のあるTe,As,Sn,Sbを
必要により含有させる。
【0018】本発明者らは、ぶりきの硬度に及ぼす固溶
C、Nおよび結晶粒径との関係を系統的に調べた結果、
固溶C,Nが少なく結晶粒径が大きくなると軟質になる
ことを知見し、この知見に基いて焼鈍後に固溶Cを少な
くするため出発材である連続鋳造鋼片製造用溶鋼中のC
を少なくすればよいと考えた。
【0019】一方、Alキルド鋼連続鋳造スラブを用い
て通常工程により冷延鋼板となしたものに箱焼鈍を施す
と、Cについては焼鈍後の冷却速度が小さいためにCの
溶解温度域において溶解したCも十分に析出することが
できるので、固溶Cの残存量が微小になる。またNはA
lN析出温度(400℃以上)域での焼鈍温度ならびに
時間ともに十分であるために、ほどんとすべてAlNと
して析出し、また焼鈍時間が長いので十分な粒成長をも
図ることができ、従って箱焼鈍後の原板は軟質で非時効
性となるためにぶりきの硬度も十分に軟質になることが
知られている。
【0020】本発明者らは、先に連続焼鈍法による軟質
ぶりき原板の製造方法を発明して、特願昭56−125
996号(特開昭58−27932号公報)によって特
許出願した。前記方法によれば、N量が少なく、かつC
量をある程度含有したAlキルド鋼材を用い、熱間圧延
に際しては仕上温度をα+γ共存領域あるいはγ領域
で、さらに巻取温度は炭化物が凝集しない範囲で中温に
して得られた熱延板を用い、急冷帯と過時効処理帯を有
する連続焼鈍炉で再結晶温度以上で焼鈍を施すことによ
って軟質な原板を得ることができた。しかし、ぶりきの
硬度としてはT2〜T3になって、T1のものを得るこ
とはできなかった。その理由は、焼鈍時に溶解した固溶
Cを析出させるために、析出サイト(Site)として
のセメンタイトを密に分布させるために、C量をある程
度以上含み、巻取温度は中温以下にして連続焼鈍炉にお
いて過時効処理を施してもセメンタイトが十分に析出す
るに至らないためであった。前記セメンタイトの析出を
促進するためには過時効処理時間を長くすることが考え
られるが、そのためには過時効処理設備の長さを長くす
る必要があり、このことは工業的規模では実施が困難で
ある。また固溶C,Nが残存しためっき原板は次工程の
調質圧延によって加工硬化を受けるばかりでなく、さら
にめっき後のリフロー処理(溶錫化処理)によりめっき
鋼板は約400℃からの水焼入れを受けて歪時効硬化が
加わるので、硬度の増加は固溶元素量に比例して大きく
なる。したがって軟質ぶりき原板を製造するためには固
溶元素の残存量を箱焼鈍材並みに調整することが肝要で
あることに本発明者らは想到した。
【0021】以上の考察から本発明者らは鋭意研究を重
ねた結果、極低炭素鋼素材を連続焼鈍を行い、引き続き
行う調質圧延で圧下率をそれぞれ変えることによってT
1〜DR10の原板にそれぞれ作り分けることのできる
ことを新規に知見して本発明を完成した。
【0022】一般にぶりきをプレス加工により製缶する
際に
【外4】 を高くすることも重要であるが、さらにΔrを小さくす
ることが重要であることは前述のとおりである。本発明
者らは、ぶりき原板のΔrをさらに小さくする方法を検
討した結果、結晶粒の核となる炭素を極く微量にし、結
晶粒径を粗大化することで達成できることも有効である
ことを知見した。
【0023】次に出発素材である連続鋳造鋼片の成分元
素の挙動ならびに成分組成を限定する理由を説明する。
【0024】Cは再結晶温度を大きく支配し再結晶粒径
の成長を抑制する重要な元素であり、箱焼鈍法によれば
C量を多くすると結晶粒径は小さくなって硬質化する
が、連続焼鈍法による場合にはC量が多くなるに従って
硬質化するという単純な傾向は見られない。図2にぶり
き硬度に及ぼすC量の影響を示す。同図から判るように
非常に複雑な傾向を示す。これを冶金学的に説明する
と、C量が約0.004%以下の極微量になるに従って
軟質化し、一方C量が増加すると約0.01%において
最も硬度が高くなるピークが見られ、C量がさらに多く
なるに従って逆に硬度は低くなり、C量0.02〜0.
07%の範囲内で谷となり、さらにC量が多くなるとま
た硬度が高くなる。C量が約0.004%以下で軟質に
なる理由は焼鈍時にCの溶解温度での溶解量の絶対値が
少ないことにより、Cによる歪時効硬化が小さくなるた
めと考えられる。またC量0.01%でピークが現れる
理由は溶解したCを析出させるに際し、C量が少ないの
で析出核としてのセメンタイトが少ないために析出移動
距離が長くなって、これにより冷却過程での析出量が少
なくなり多く残存するからである。したがって0.01
%を超えるある程度のC量を含んでいるものが軟質化す
るに際して有効である。しかしさらにC量が多くなると
セメンタイトは十分存在するが結晶粒径が小さくなるの
で硬質化する。従って連続焼鈍炉により調質度T1以下
の軟質ぶりき原板を製造するためには、C0.004%
以下にする必要がある。
【0025】Siはぶりきの耐食性を劣化させるほか、
さらに材質を極端に硬質化する元素であるので、Siを
過剰に含有させることは避けるべきである。よって製鋼
段階でできるだけ少なくなるようにすることが肝要であ
り、耐火物中のSiO2 が溶鋼中のAlによって還元さ
れるのを抑制するために、従来使用されているシャモッ
ト質耐火物に代えてジルコン質耐火物を用いる等の注意
を要する。すなわち、Siは0.03%を超えると硬質
化して調質度T1〜T3のぶりき原板を製造することが
できないのでSiは0.03%以下にする必要がある。
【0026】Mnは熱延コイルの耳割れ発生を防止する
ために添加する必要があるが、上記耳割れは直接的には
Sによって支配され、このSによる耳割れの発生をMn
の添加によって抑制している。したがってS量が少なけ
れば敢えてMnを添加する必要はないが、鋼中にはSが
不可避的に含有されていることからMnを添加する必要
がある。Mnが0.05%より少ないと耳割れの発生を
防止することができず、一方Mnが0.6%より多いと
結晶粒径が細粒化し硬質化するのでMnは0.05〜
0.6%の範囲内にする必要がある。
【0027】SはMn量との関係において過剰に含有す
ると熱延コイルの耳割れを生成させ、またS系介在物と
なってプレス欠陥となるのでSは0.02%以下にする
必要があり、特にMn/S比で8より少ないと上記耳割
れ、あるいはプレス欠陥が発生するのでMn/Sは8以
上にする必要がある。
【0028】Pは材質を硬質化させ、かつぶりきの耐食
性を劣化させる元素であるので、過剰の含有は好ましく
なく、Pは0.02%以下にする必要がある。
【0029】Alは鋼の製造過程において脱酸剤の機能
を発揮する元素であり、鋼中の含有量が多くなるのに従
って鋼の清浄度が高くなるが、過剰の添加は経済的に好
ましくないし、さらに再結晶粒径の成長を抑制するの
で、Alは0.20%以下にする必要がある。一方、A
lの下限量としては、本質的には溶鋼中の固溶酸素量に
見合った量のAlを添加して、脱酸を完了させることが
できればよいことから金属Alとして鋼中に残存させる
必要はないことになるが、このようにするとぶりきの清
浄度が悪くなる。さらに軟質ぶりきを得るためには固溶
NをAlによって固定し、その残存量を減らす必要があ
る。Alが0.02%より少ないと鋼中の固溶N量が多
くなるので、Alは0.02%以上にする必要がある。
よってAlは0.02〜0.20%の範囲内に限定す
る。
【0030】Nは鋼の製造過程において空気中のNが混
入する結果含有されるが、Nが鋼中に固溶していると軟
質な鋼板が得られずNは不必要な元素であるので、製鋼
過程で空気中からのNの混入を極力抑制してNは0.0
1%以下にする必要がある。
【0031】Nbは炭化物、窒化物形成元素なので、固
溶C、固溶N量の残存量を少なくする機能を有し、一
方、多量添加するとNb系析出物による結晶粒界のピン
止め効果により再結晶温度が高温になり、連続焼鈍炉の
通板作業性が悪くなるのでNbは0.1%以下とし、下
限はNbの効果を発揮するに必要な0.001%とする
必要がある。
【0032】Tiは炭化物、窒化物形成元素なので、固
溶C、固溶N量の残存量を少なくする機能を有し、一
方、多量添加すると、薄鋼板断面を顕微鏡観察すると、
鋭利なとがった、いかにも超硬質である析出物が発見さ
れる。缶用鋼板において、このような介在物が最もきら
われるもので、耐食性を悪くするとともに、プレス加工
を施した際に、すり疵発生の原因にもなると考えられ
る。従って、Tiは0.1%以下とし、下限はTiの効
果を発揮するのに必要な0.0001%にする必要があ
る。
【0033】薄鋼板において、極低炭素鋼を基に、炭化
物形成元素を添加して、固溶Cを極端に減少すると、再
結晶粒界の強度が弱くなり、缶の用途、あるいは缶詰の
使われ方によって、極低温で保管される場合は、脆化割
れが生じる心配も考えられる。このような用途にも品質
上満足できるものをつくるためには、Bを添加すること
が有効である。粒界に固溶Cが存在するとPの偏析が小
さくなり、粒界強度が大きくなって、脆化不良の恐れは
なくなる。しかし、固溶C量が少なくなると粒界にPが
偏析して脆化する。その際、Bが存在すると、固溶Cの
役目をする、あるいはB自体が粒界強度を大きくするの
で脆化不良は解決できる。Bはまた、炭化物、窒化物を
形成するので、軟質化に有効であるが、連続焼鈍時、再
結晶粒界にBが偏析し、再結晶を遅らせ、通板作業性を
悪くするのでBは0.005%以下とし、下限はBの効
果を発揮するのに必要な0.0001%にする必要があ
る。
【0034】Oは再結晶温度を低下させる元素なので、
連続焼鈍炉の通板作業性を改善できる元素である。しか
し、Oが多いと鋼中のAl,Mn,あるいは耐火物のS
i,フラックスのCa,Na,F,等と酸化物を形成
し、プレス加工時の割れ原因、あるいは耐食性を劣化さ
せるのでできるだけ少なくする必要がある。その方法と
しては真空脱ガス処理による脱酸強化、タンディッシュ
の堰形状、ノズルの形状、鋳込速度の調整により清浄度
の優れたものが得られる。その過程において、鋼中にA
l量が多いと介在物がクラスター状を成し、ストークス
の法則で浮上しやすくなって、清浄度が改善される。そ
のためにもAl等は多い方が良い。従って、Oは0.0
1%以下にする必要がある。
【0035】Caは溶鋼中でCaOを形成し、これにA
2 3 が反応すると、融点の高い超硬質Al2 3
在物の融点を低下させ、硬度も低下させるので、誤って
Al 2 3 が薄鋼板に残存したとしても軟質なため苛酷
な冷間圧延加工で分断され、小さくなって、品質低下を
防止できる。従って必要によっては添加しても良い元素
である。その場合0.005%以下とする。
【0036】Sn,Sb,As,およびTeは焼鈍時薄
鋼板表面に富化濃縮するので、ぶりきの耐食性を著しく
劣化させるC(グラファイト)の富化濃縮を防止でき、
密着性、耐食性を改善するのに有効な元素である。しか
し、そのために必要な量は微々たるものであり、いずれ
の元素でも単体であれば0.01%以下であれば十分で
あり、スクラップからSbやSnが混入しない場合はA
sやTeをそれぞれ0.001%、0.0001%以上
添加することは有効である。
【0037】Mo,V,およびZrは炭化物、窒化物形
成元素であるが、その効果は小さく、高価な元素なので
不経済である。しかし、スクラップから混入すること
は、何らさしつかえないが、いずれも再結晶温度を上昇
させる元素なのでいずれも0.01%以下にする必要が
ある。
【0038】Cr,Cu,Ni,Na,Mgおよび希土
類元素(REM)は缶用鋼板の品質には大きく影響を及
ぼさないが、多く含有していると再結晶温度が高温にな
ったり、圧延性が低下するので、Cr,Cu,Niは
0.1%以下、Na,Mgは0.001%以下、REM
は0.005%以下に規定し、本発明鋼板の特性を悪く
しないようにする必要がある。
【0039】本発明の出発素材である鋼を製造するには
C量を0.004%以下の微量となすことに注意する必
要があり、このためには真空脱ガス処理法によって脱炭
反応を生起させてCを低下させる方法がある。一方通常
の脱ガス法によれば、長時間を要し、さらにC0.00
4%以下にすることが困難であると共に、脱ガス処理中
に溶鋼の温度低下が大きくなって、次工程の連続鋳造工
程において鋳造作業が困難になるばかりでなく、溶鋼温
度の低下により介在物の浮上分離性が悪く鋼の清浄度が
劣化するので満足できる品質のぶりきが得られなくな
る。したがって本発明において用いられる出発素材を得
るには溶鋼を真空脱ガス処理することにより脱ガス効率
を向上させることが肝要になる。このためには底吹転炉
による場合には吹止Cを0.03%以下に低下させるこ
と、ならびに脱ガス溶鋼の環流速度を上昇させることが
有効であり、かかる速度上昇のためには脱ガス用環流ガ
ス量を増大させることが重要である。本発明者らの実験
によれば、C0.03%の溶鋼を脱炭する通常の真空脱
ガス処理において取鍋溶鋼を5回転環流させても0.0
05%Cにまでしか下がらなかったのに対し、上記の如
く環流ガス量を増大して環流速度を上昇させることによ
り、同一回転環流によってC0.004%以下にするこ
とができるばかりでなく、短時間で同一回転環流処理が
達成され、さらにまた温度低下も最小に抑制することが
できる。
【0040】本発明において用いる連続鋳造鋼片は、上
述の如く転炉溶鋼に環流速度を大きくした真空脱ガス処
理を施し、次に連続鋳造して得ることができる。
【0041】前記法により連続焼鈍で仕上げた表層にF
e−Ni合金層を有する極低炭素鋼板に、調質圧延圧下
率を適切に選定することにより、加工硬化度を大きくし
て、一つの鋼種で調質度T1〜T6、DR8〜DR10
までの任意の調質度のものをつくりわけることができる
ことを知見した。
【0042】さて、缶用鋼板としてはぶりきが主流であ
り、コストダウンを図ったものとしてはティンフリー鋼
板(Crめっき鋼板)、薄錫めっき鋼板、Niめっき鋼
板があるものの、これ以上コストダウンを図るのは困難
である。
【0043】最も安価にするには、極論すればめっきを
施さずに調質圧延原板の裸鋼板を使用することが考えら
れるが、現実には裸鋼板を塗装、焼付けするまでに錆が
発生し、あえてそのまま塗装しても、塗装密着性が悪く
なる。また、錆が発生する前に塗装、焼付けを実施して
も、板端部から発生する糸状錆(filiform corrosion)
を防止することはできない。缶用鋼板としては、耐錆
性、塗装密着性、塗装加工後耐食性等が要求される。
【0044】このような要求を満足し、かつ低コスト化
を達成できる缶用鋼板としては、従来めっき鋼板と裸鋼
板との中間に位置するものが最適であると考えられ、本
発明者らはNiめっき拡散処理鋼板に注目した。
【0045】この鋼板は、Niめっきを施した後、焼鈍
を行ない、Niを拡散させることによって、NiとFe
が完全に合金化し、耐食性に優れたFe−Ni合金層を
形成したものである。このFe−Ni合金層は、それ自
体非常に耐食性に優れており、さらにNiよりFeに電
位が近いため、仮に素地鉄まで達成する疵などが入った
場合でもFeの溶出が起こりにくく、耐錆性、耐食性に
優れている。
【0046】本発明の缶用鋼板の表層に形成されるFe
−Ni合金層におけるNi/(Fe+Ni)の重量比は
0.01未満であると、Fe−Ni合金層自体の耐食
性、耐錆性が不十分となり、また0.3を超えると素地
鋼板までに達するようなすり疵等の欠損を生じた場合、
この欠損から素地鋼板の溶解が著しくなる。
【0047】また、このFe−Ni合金層の厚さは10
〜4000Å、好ましくは200〜4000Åである。
Fe−Ni合金層の厚さが10Å未満であると、耐錆
性、耐食性が不十分となり、4000Åを超えると、通
常Fe−Ni合金は硬く脆いため、得られる鋼板を用い
て2ピース缶にした場合、ネックインフランジ加工、ビ
ート加工、深絞り加工、張り出し加工等の成形加工時に
欠陥が発生し易く、耐錆性、耐食性が低下する恐れがあ
る。
【0048】ところが、Niめっき拡散処理鋼板は溶接
が困難であるという欠点があることがわかった。そこ
で、種々実験を行なった結果、塗装焼付けを行なわない
場合には、この鋼板は溶接可能であるが、塗装焼付けを
行なうと溶接が困難となることがわかった。即ち、塗装
焼付け時にFe酸化物が形成され、溶接性を低下させる
ものと考えられる。
【0049】そこで特に塗装焼付け後にFe酸化物を形
成させない方法として、さらにめっきすることが考えら
れるが、低コストで製造することができないだけでな
く、さらに異種めっきを行なうことは、そのめっき量が
少ない場合には、この新たなめっき金属とFe−Ni合
金の間で電池を形成し、耐食性を低下させる原因とな
る。
【0050】そこで、本発明者らは、Niめっき後焼鈍
によってNi拡散処理を施した鋼板に、次いで防錆性に
優れた圧延油を用いたウェットスキンパスを行なうこと
によって、Fe酸化物の形成を少なくできることを見出
した。
【0051】これは次の理由によるものと考えられる。
即ち、調質圧延時には、鋼板表面に多数の歪が入るが、
この歪部にFe酸化物が形成されやすく、従って調質圧
延時に防錆性を有する調質圧延油を供給しながら圧延す
れば、酸化物の生成を抑制することができる。また、同
様の理由で、糸状錆も防止できる。なお、調質圧延後に
防錆油を塗布することは一般的であるが、この方法では
十分な溶接性は得られなかった。
【0052】上記Fe−Ni合金層上に形成される防錆
油膜に用いられる防錆油としては、鋼板の調質圧延工程
において、通常用いられる直接塗装可能な防錆油であれ
ばよく、特に限定されない。特に、防錆油として、
(a)FDA(Food and Drug Administrationの略称)
パラグラフNo.178−3910に規定される石油ワ
ックスおよび/または合成ワックスおよび/またはラノ
リンを10〜60重量%、(b)FDAパラグラフN
o.178−3910に規定される脂肪酸を5〜40重
量%、(c)FDAパラグラフNo.178−3910
に規定されるトリエタノールアミンを5〜30重量%、
(d)FDAパラグラフNo.178−3910に規定
される鉱物油を10〜40重量%、(e)非イオン系活
性剤のポリエチレングリコールモノステアレートおよび
/またはFDAパラグラフNo.178−3400に規
定される非イオン系活性剤を1〜20重量%を水溶溶媒
に分散乳化させた組成油、具体的には、特開昭59−1
45076号公報に記載された組成油を用いれば、非常
に衛生的で、飲食物用缶材として好適な缶用鋼板を得る
ことができる。この鋼板には直接塗装印刷することがで
きる。
【0053】この防錆油膜は、前記Fe−Ni合金層の
上に乾燥重量で1〜100mg/m 2 、好ましくは1〜
23mg/m2 形成される。防錆油膜を1〜100mg
/m 2 の範囲に形成すれば、防錆性、溶接性、さらには
直接塗装性に優れた3ピース缶用鋼板を得ることができ
る。また、防錆油として前記組成物を用いて飲食缶用の
3ピース缶用鋼板とする場合には、飲食用缶材に対して
はその塗布量の上限も制限されているため、乾燥重量で
1〜23mg/m2 の範囲とするのが好ましい。
【0054】本発明による缶用鋼板を製造するにあたっ
ては、まず前記成分組成を有する連鋳スラブに、常法に
より熱間圧延、冷間圧延を施す。
【0055】次いで、鋼板表面に0.02〜0.5g/
2 のNiめっきを施し、ひきつづき還元性雰囲気中で
連続焼鈍してNiを素地鋼板中へ拡散浸透させて鋼板表
層にNi/(Fe+Ni)の重量比が0.01〜0.3
で厚さ10〜4000ÅのFe−Ni合金層を形成した
後、連続して防錆圧延油を用いて調質圧延を施し、前記
鋼板表面に乾燥重量で1〜100mg/m2 の防錆油膜
を形成させればよい。
【0056】なお、前記Niめっき量が0.02g/m
2 未満であると、耐食性が低下し、0.5g/m2 を超
えるとそれ以上の耐食性の向上効果が得られず、コスト
的に不利となる。
【0057】また、前記還元性雰囲気としては、特に制
限されず、例えばN2 とH2 の混合雰囲気等が挙げら
れ、連続焼鈍は、通常650〜750℃で30秒〜10
分間行なわれる。調質圧延処理は常法に従って行なうこ
とができ、特に制限されない。この調質圧延工程におい
て前記防錆油を用いて圧延を行なうことによって製缶前
に脱脂する必要がなく、また塗油工程を備える必要がな
いため経済的であるだけでなく、溶接性に優れた缶用鋼
板を得ることができる。
【0058】さらに、本発明を最も効果的に行なうため
に、Niめっき設備を連続焼鈍ラインの前に設け、焼鈍
ラインの出側に調質圧延設備を設けるのがよい。めっき
焼鈍調質圧延を1つのラインとしてつなぎ一挙に仕上げ
ることによって、連続化による大幅なコストダウンが可
能となる。また、各設備がつながっているために、めっ
き→焼鈍→調質圧延の工程を時間をおくことがなく連続
して行なうことができ、Fe酸化物等の形成を防止する
ことができ、溶接性、耐食性向上効果がさらに大とな
る。
【0059】勿論、本発明では極低炭素鋼を素材として
連続焼鈍法により製造しているので、低炭素鋼を素材と
した箱焼鈍法と比べ、不純物の表面濃化もなく耐錆性の
点で有利となる。
【0060】上記材は溶接缶用材に限らず、プレス加工
でつくられる2ピース缶用にも十分使用できる。
【0061】次に、前述したようにして連続焼鈍で仕上
げた表層にFe−Ni合金層を有する極低炭素鋼板に対
して、圧下率を適切に選定した調質圧延により、調質度
T1〜T6、DR8〜DR10の任意の調質度の缶用鋼
板を製造する方法について簡単に説明する。
【0062】図3には調質度(HR −30T)と調質圧
延圧下率との関係の一例を示す。前述したような組成を
有する極低炭素鋼板にニッケルめっきを施し、これを連
続焼鈍してFe−Ni合金層を表層に形成した鋼板に対
して、調質圧延を行なう。本発明においては、上記組成
の鋼種を用いるために、最も軟質の調質度T1の鋼板を
連続焼鈍−調質圧延により製造することができる。これ
は従来不可能なことだったのである。
【0063】図3の例示から明らかなように、調質度T
1(HR −30Tで49±3)の鋼板を得たいときに
は、連続焼鈍板に対して、圧下率を数%に選定して調質
圧延を行なえばよい。調質度T2では圧下率約10%と
いうように、図3から所望の調質度に対して調質圧延時
の圧下率を選定すればよい。このように、本発明におい
ては、一つの鋼種で全ての調質度の缶用鋼板を製造する
ことができる。
【0064】調質圧延時に上述した防錆油を用いれば、
そのまま塗装、印刷を施してもFe−Ni合金層が存在
するために、糸状錆の発生も防止でき、主に大型の缶用
に使用できるようになる。防錆油膜を残存させることに
よって、そのまま塗装印刷を施して、溶接を行なって
も、スプラッシュの発生もなくきれいに仕上げられるよ
うになった。塗装塗料としては、エポキシフェノール系
塗料、アルキッド系塗料などを使用できるが、これらに
限定されるものではない。
【0065】以上の結果、本発明鋼板は、缶用途、必要
に応じて製缶設備に応じて、そのまま塗装、印刷を施し
て2ピース缶、3ピース缶に、さらにめっきを施して製
缶するものにはめっき量を低下させても耐食性、耐錆性
に優れたものが得られるようになった。
【0066】さらに、所望の調質度に調整した鋼板に、
従来行なわれているようなSn,Cr,Ni等のめっき
を施すことによりぶりき、錫薄目付鋼板、クロメート処
理鋼板(ティンフリー鋼板)にすれば、さらに耐錆性、
耐食性が改善できるようになり、めっき目付量をさらに
少なくすることができる。なお、Sn,Cr,Ni等の
めっきは従来一般に行なわれている方法によればよいの
で、説明は省略する。
【0067】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。 (実施例)表1に示す成分組成の鋼を270t底吹き転
炉により溶製し、C0.03%となして出鋼した。続い
てR−H真空脱ガス処理を施してC0.004%以下に
脱炭した後、Alを添加し続いて炭化物形成元素、窒化
物形成元素および鋼板表面への濃化元素を添加したもの
を作った。これらをそれぞれ連続鋳造機を用いて介在物
の浮上分離を促進して鋳込んで清浄度に優れた鋼片を得
た。これらの鋼片を熱延温度(SRT)1150℃、熱
間仕上温度(FDT)840℃、巻取温度(CT)60
0℃でそれぞれ圧延し2.0mm厚の熱延コイルとなし
た後、酸洗して脱スケールした。次に6スタンドタンデ
ム冷間圧延機にて0.2mm(冷間圧延率90%)の極
薄板厚に圧延した後、一部はニッケルめっきし、これら
に連続焼鈍を施し、Ni拡散処理を施したものと施さな
いものをつくった。熱サイクルは750℃、60秒の水
準であった。続いて調質圧延機にて圧延率を表2に示す
ように選定して調質圧延し、種々の調質度の鋼板を製造
した。調質圧延においては、一部の鋼板について防錆油
A,Bを用いた。
【0068】調質圧延を施した後、ハロゲンタイプの電
気錫めっき工程にて#25錫めっきおよびリフロー処理
(溶錫化処理)を連続して施して、ぶりきに仕上げた。
ぶりきから供試材を採取し硬度(HR −30T)、
【数1】 Δr(Δr=(rL +rC −2rD )/2)、イヤリン
グ、缶体の肌荒れ評価を測定し、また曲げ加工を施して
耐フルーティングテストを行った。フルーティングテス
トの評価は缶の胴の成形に相当するように曲げ加工を施
し、胴体に発生した折れが商品として見るに耐えない程
度のもの(×印で表示)とそうでないもの(○印で表
示)に判定した。
【0069】また、(調質圧延した)原板鋼板について
は防錆性評価、塗装鋼板については耐食性評価、糸状錆
性評価、塗料密着性評価を行なった。そして、溶接性評
価も行なった。それぞれの結果を表2に示す。これらの
結果から、本発明鋼板は比較鋼板に比べ裸鋼板の耐錆
性、塗料密着性に優れることが明らかである。
【0070】また、調質圧延後の鋼板に直接塗装を施し
た塗装鋼板も作製し、表2のように評価した。塗料はエ
ポキシフェノール系塗料(大日本インキ(株)KCC−
201)を、乾燥重量で20g/m2 塗布した。
【0071】使用したNiめっき浴および焼鈍条件は下
記の通りである。 Niめっき浴 組成: 硫酸ニッケル 250g/l 塩化ニッケル 45g/l ホウ酸 30g/l 浴温度 65℃ 電流密度 5A/dm2 焼鈍条件 雰囲気:NHXガス雰囲気(10%H2 +90%N2 ) 焼鈍温度:750℃
【0072】使用したSnめっき浴およびリフロー条件
は下記の通りである。 Snめっき浴 組成: 塩化第1スズ 75g/l 弗化ナトリウム 25g/l 弗化水素カリウム 50g/l 塩化ナトリウム 45g/l Sn2+ 36g/l Sn4+ 1g/l pH 2.7 浴温度 65℃ 電流密度 48A/dm2 リフロー条件 通電加熱(280℃)
【0073】防錆圧延油は、下記の組成のものを用い
た。
【0074】この試料のNiめっき量、表層におけるN
i/(Ni+Fe)比、ならびに防錆性、耐食性、Tピ
ール試験による塗料密着性、および高速溶接性を下記の
方法に従って測定または評価した。 Niめっき量 蛍光X線を用いて測定した。 Ni/(Ni+Fe)比 GDSを用いて重量比で深さ方向に調べた。
【0075】防錆性 乾湿サイクル試験機を用い、温度25℃相対湿度50%
の乾燥状態と温度50℃相対湿度98℃の湿潤状態を3
0分ごとに繰返す条件下に、試料を暴露し、1週間後の
試料表面における錆の発生個数を測定し、下記の基準で
防錆性を評価した。
【0076】糸状錆性 試料の表面に変性エポキシエステル塗料(東洋インキ
(株)F−65DF−102(改1))を60mg/d
2 塗布後、160℃×10分の条件で焼付した後、対
角線にXのスクラッチを入れ、これを乾湿サイクル試験
機を用い温度25℃、相対湿度50%の乾燥状態と温度
50℃、相対湿度98%の湿潤状態とを30分ごとに繰
返す条件下に試料を暴露し、2か月後に糸状錆の発生を
観察し、錆の程度により下記5段階に分け評価した。 ◎:糸状腐食なし ○:僅かな糸状腐食 △:中位の糸状腐食 ×:やや激しい糸状腐食 *:激しい糸状腐食
【0077】耐食性 試料の表面に変性エポキシエステル塗料(東洋インキ
(株)F−65DF−102(改1))を60mg/d
2 塗布後、160℃×10分の条件で焼付した後、こ
れを用いて90℃のトマトジュース70mlをホットパ
ックした。このホットパックを55℃で10日間経過し
た後、取り出して、腐食状態を観察し、下記の基準で耐
食性を評価した。
【0078】高速溶接性 線径が約1.5mmφの銅ワイヤーを溶接電極として用
い、2枚の試料を定加圧下に重ね合わせ、溶接電極を移
動しながら溶接速度20m/分で電気抵抗溶接を施し
た。このとき、溶接部が十分な強度を有し、かつスプラ
ッシュの発生がないという条件から決められる溶接電流
と加圧力の適正な範囲の大きさより溶接性を評価した。
【0079】塗料密着性 2枚の試料の表面に、それぞれ変性エポキシエステル塗
料(東洋インキ(株)F−65DF−102(改1))
を60mg/dm2 塗布後、160℃×10分の条件で
焼付した後、塗装面同士を厚さ40μmのナイロン12
フィルムを挟んで加圧して接着し、引張試験片を作成し
た。この試験片について、引張試験機を用いてTピール
試験に供し接着強度を測定し、塗料密着性の指標とし
た。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
【発明の効果】本発明は、結晶粒径を大きくできる極低
炭素鋼を使うようにしたから、従来連続焼鈍法で製造で
きなかったT1材も製造できるようになった。また、焼
鈍前Niめっきを行ない、焼鈍で拡散させてFe−Ni
合金層を形成させるので、耐食性、耐錆性に優れた鋼板
を得ることができる。その上、防錆油を用いた調質圧延
を施すことによって、裸鋼板の耐錆性を改善でき、その
まま塗装、印刷も施せ、製缶上非常に合理化が図れる。
単に調質圧延時の圧下率を選定するだけで、T1〜T
6、DR8〜DR10の全調質度原板を単一鋼種で製造
できるようになったので、大幅に缶用鋼板製造の工程時
間の合理化、短縮が図れるようになった。以上の結果、
箱型焼鈍では10〜20ton位のコイルを数段積んで
約1週間もかけて焼鈍を施してきたが、そのためには広
い敷地の工場が必要で、時間もかかり過ぎていたもの
が、連続焼鈍炉一基で短時間で対応できるようになっ
た。その上、箱型焼鈍材がかかえていた品質上の問題も
解消でき、食缶ゆえに耐食性が強く要求されるが、安心
して提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スラブから2ピース缶および3ピース缶を製
造するフロー図である。
【図2】 鋼中のC含有量がぶりきの硬度(HR −30
T)に及ぼす影響を示す図である。
【図3】 ぶりきの硬度(HR −30T)と調質圧延圧
下率との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浜 原 京 子 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究本部内 (56)参考文献 特開 平3−97813(JP,A) 特開 昭63−266093(JP,A) 特開 昭63−105991(JP,A) 特開 昭58−197224(JP,A) 特開 昭59−145076(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】組成が重量比で、 C:0.004%以下、 Si:0.03%以下、 Mn:0.05〜0.60%、 P:0.02%以下、 S:0.02%以下、 N:0.01%以下、 Al:0.02〜0.20%、 Nb:0.001〜0.1%、 Ti:0.0001〜0.1%、 Cr:0.1%以下、 Cu:0.1%以下、 Ni:0.1%以下、 B:0.0001〜0.005%、 Mo:0.01%以下、 O:0.01%以下、 V:0.01%以下、 Zr:0.01%以下、 Ca:0.005%以下、 Sn:0.01%以下、 Sb:0.01%以下、 希土類元素(REM):0.005%以下、Na:0.001%以下、 Mg:0.001%以下、 As:0.001〜0.01%、 Te:0.0001〜0.01% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる極
    低炭素鋼よりり、表層にNi/(Fe+Ni)の重量
    比が0.01〜0.3で厚さが10〜4000ÅのFe
    −Ni合金層を有することを特徴とする耐食性に優れた
    缶用鋼板。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の鋼板の焼鈍板に調質圧延
    を施した缶用鋼板。
  3. 【請求項3】請求項2に記載の鋼板表面に乾燥重量で1
    〜100mg/m2 の防錆油膜を有する直接塗装可能な
    缶用鋼板。
  4. 【請求項4】請求項2に記載の鋼板表面に錫めっき層を
    形成してなる缶用鋼板。
  5. 【請求項5】請求項2に記載の鋼板表面に金属クロムお
    よびクロム水和酸化物よりなるクロメート処理層を形成
    してなる缶用鋼板。
  6. 【請求項6】請求項2に記載の缶用鋼板を製造するに際
    し、請求項1に記載の組成を有する極低炭素鋼板にニッ
    ケルめっきし、このニッケルめっき鋼板を連続焼鈍して
    鋼板表面にFe−Ni合金層を形成し、この焼鈍板に圧
    下率を適切に選定して調質圧延を施すことによりT1材
    あるいはT1材より硬質の缶用鋼板を得ることを特徴と
    する缶用鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】前記調質圧延は防錆油を用いて行なう請求
    項6に記載の缶用鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項6で得られた鋼板にさらに錫めっき
    あるいはクロメート処理を施す缶用鋼板の製造方法。
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