JP3243812B2 - 金属蒸気放電灯 - Google Patents

金属蒸気放電灯

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光化学反応や塗料およ
びインキの硬化などに用いられる金属蒸気放電灯に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】光化学反応を生起せしめたり、塗料やイ
ンキなどを硬化させるために、紫外線がよく利用され
る。これらの塗料やインキなどを硬化させるためには、
波長域が280〜400nm程度の紫外線が有効である。
従来、この波長域の紫外線の放射源として高圧水銀灯が
使用されているが、高圧水銀灯の放射光は多数の輝線ス
ペクトルからなっており、かつ、それらのスペクトルが
相当広い波長域にわたって存在している。しかし、光化
学反応や塗料の硬化などに有効な波長域は280〜40
0nmであるから、高圧水銀灯を使用するのは効率的に損
である。このため、高圧水銀灯の発光管内に水銀ととも
に、沃素、臭素もしくは塩素のハロゲン化金属もしくは
それらを組み合せたハライドを発光物質として封入し、
有効波長域の放射量を増加させた金属蒸気放電灯が使用
されるようになった。ことに水銀とともに鉄を封入した
金属蒸気放電灯は、350〜400nmの波長域に連続ス
ペクトルを放射するために、光化学反応や塗料の硬化な
どの目的のためには好都合である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鉄を封
入した金属蒸気放電灯を長時間点灯していると、鉄が発
光管の内壁に付着して薄膜を形成する。ことに塗料やイ
ンキなどの乾燥工程における生産性を向上させるため
に、より強い有効な紫外線を放射する金属蒸気放電灯が
求められているが、この要求を満たすために鉄の封入量
を多くすると、発光管の内壁に比較的短時間で鉄の薄膜
形成がより多く形成される。しかも、発光管の内壁に形
成された鉄の薄膜が有効な紫外線の透過を阻害し、28
0〜400nmの波長域の紫外線の放射強度が数十時間の
点灯で減少してしまう欠点がある。
【0004】この欠点を解決するために、水銀とともに
鉄を封入した金属蒸気放電灯に更に他の金属を封入し
て、鉄の薄膜が形成されないようにしている。例えば、
鉛(実公昭54−15503号公報)、錫(特公昭58
−18743号公報)、マグネシウム(特開昭62−8
0959号公報)、カドミウム(特開平1−16165
5号公報)、マンガン(特開平1−128345号公
報)などを追加すると鉄の薄膜形成を阻止できることが
知られている。ところが最近では、280〜400nmの
波長域の放射が強く、かつより長寿命のランプが強く要
請されるようになった。しかし、これらの金属を追加し
たランプは点灯時間をより長くすると、発光管の内壁に
鉄の薄膜がやはり形成されることが判明した。つまり、
これらの金属を水銀と鉄を封入したランプに追加して
も、鉄の薄膜の形成を完全に防止できるものではなく、
薄膜の形成速度を遅らせるのみである。
【0005】ところで、これらのランプは、一般的にラ
ンプハウス内で冷却されながら使用されるが、この冷却
を強めて金属蒸気放電灯の発光管の外面の最高温度を8
00℃程度に保てば、鉄の薄膜形成を大幅に減少させる
ことができることを見出した。しかし、発光管の外面の
最高温度を800℃程度に抑制すると、発光管の内面の
最冷部の温度も低下し、鉄の発光による放射強度が弱く
なるので、塗料などのキュアーに有効な紫外線の放射強
度も低下してしまう。
【0006】そこで本発明は、鉄が発光管内壁へ付着す
るのを防止し、280〜400nmの波長域に大きな紫外
線放射強度が長時間維持できる金属蒸気放電灯を提供す
ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに本発明は、電極を備えた発光管の内部に、アーク放
電を維持するのに十分な量の水銀および希ガスととも
に、適量の鉄と、適量の錫・マグネシウム・ビスマス・
タリウム・カドミウム・マンガンの少なくとも1種以上
と、およびハロゲンを封入した金属蒸気放電灯におい
て、ハロゲンには少なくとも臭素が含まれ、臭素の含有
量が全ハロゲン量に対して重量比で0.26%以上と
し、発光管の最高温度が800℃になるようにして点灯
する。
【0008】
【作用】臭素の混合量を全ハロゲン量に対して重量比で
0.26% 以上にすると、発光管の外面の最高温度を8
00℃程度に低下させても、鉄の発光による放射強度の
低下がほとんど起こらず、従ってキュアーに有効な紫外
線放射強度もほとんど低下せず、キュアー用金属蒸気放
電灯として十分に使用することができる。しかも発光管
の内壁の最高温度を低くして点灯するので、鉄が発光管
内壁に付着して薄膜を形成することを防止でき、紫外線
放射強度を長時間維持できる。なお、臭素の混合量が全
ハロゲン量に対して重量比で0.26% 未満であれば、
発光管の外面の最高温度を800℃程度で点灯した場
合、紫外線放射強度の低下が大きく、280〜400nm
の波長域の放射強度の増大効果が期待できない。
【0009】
【実施例】以下に図面に基づいて本発明の実施例を具体
的に説明する。図1は、塗料のキュアーなどの光化学反
応を利用した産業用の光源として使用される定格消費電
力が24KWの金属蒸気放電灯を示す。1は発光管であ
って、内径が22mmφの石英ガラス管で出来ており、発
光管1内に一対の電極2,2が対向配置されており、電
極間距離は1450mmである。発光管1の両端にはシー
ル部 11 が形成されており、シール部 11 にはモリブデ
ン箔3が封止されおり、このモリブデン箔3を介して外
導線4と電極2が電気的に接続されている。発光管1内
には、700mgの金属水銀と5.8 mgの鉄、5mgの臭化
水銀(HgBr2 )、30mgの沃化水銀(HgI2 )、
27mgの沃化ビスマス(BiI3 )および50mmHgのキ
セノンガスが封入されている。この実施例において、臭
素の全ハロゲンに対する混合割合は重量比で6.10%
である。
【0010】このように構成した金属蒸気放電灯を、ラ
ンプハウス内で冷却風によって冷却しながら発光管の最
高温度が800℃になるようにして点灯すると、キュア
ーに必要な波長域が280〜400nmの紫外線が有効に
放射される。この280〜400nmの波長域の紫外線放
射強度は、後に表1に基づいて説明するが、臭素を添加
しない従来の金属蒸気放電灯を発光管の外面の最高温度
を850℃に保って点灯したときと同等である。なお、
臭素を添加しない従来の金属蒸気放電灯を発光管の外面
の最高温度を800℃に保って点灯すると、紫外線強度
は850℃で点灯したときの70%程度である。つま
り、臭素の混合割合を全ハロゲンに対する重量比で6.
10% にしたランプと、臭素を混合していない従来の
ランプとを、発光管の外面の温度を同じ800℃で点灯
した場合、前者のランプの280〜400nmの波長域の
紫外線放射強度は、後者のランプの紫外線放射強度を基
準にして43%大きい。
【0011】一方、発光管の外面の最高温度を850℃
に保って点灯していた従来のランプと同等の紫外線放射
強度を得るのに、この実施例のランプは800℃で点灯
すれば良いことになる。つまり、従来のランプよりも低
い管壁温度で点灯できるから、発光管の内壁に鉄の薄膜
が従来のランプに比べて形成されにくい。すなわち、図
2に示すように、実施例のランプは1000時間点灯時
における280〜400nmの波長域の紫外線放射強度維
持率は95%以上である。一方、臭素を添加しない従来
のランプでは、同じ紫外線放射強度を得るのに、発光管
の外面の最高温度を850℃にして点灯するので、発光
管の内壁に鉄の薄膜が形成され易く、1000時間点灯
時における280〜400nmの波長域の紫外線放射強度
維持率は90%程度である。
【0012】次に、発光管の最高温度を800℃で点灯
した時の全ハロゲン量に対する臭素の混合割合(重量
%)と紫外線放射強度(相対値)の関係を測定したが、
その結果を表1に示す。表1には、比較のために、上記
した従来のランプとその点灯条件も併記した。なお、臭
素の混合割合は、臭化水銀と沃化水銀との封入量を変え
ることによって変化させた。
【0013】
【表1】
【0014】表1において、波長域350−400nmは、特に
鉄の発光による連続スペクトルが顕著に表われる波長域
であり、波長域280−400nmは、前述のとおり、キュアー
に有効とされる波長域である。いずれの波長域において
も、全ハロゲン量に対して臭素の混合割合を増加して行
くと紫外線放射強度が飽和して行くので、臭素混合割合
が11.5%のときの放射強度を100として相対値で
表示した。また、臭素混合割合が0%、つまり従来のラ
ンプの金属蒸気放電灯を、発光管の外面の最高温度を8
50℃に保って点灯した時の紫外線放射強度の相対値
は、波長域350−400nmの領域では97、波長域280−400
nmの領域では前記のとおり100である。つまり、表1
に示すように、全ハロゲン量に対して臭素混合割合を
1.28% 以上にすれば、発光管の外面の最高温度を8
00℃に保って点灯しても、両放射領域において、従来
のランプの金属蒸気放電灯を発光管の外面の最高温度を
850℃に保って点灯した時の紫外線放射強度と同等の
紫外線放射強度が得られる。また、臭素混合割合が0.
26% であれば、紫外線放射強度は従来のランプの金
属蒸気放電灯を、発光管の外面の最高温度を850℃に
保って点灯した時よりも5%程度しか低下せず、十分に
実用に供することができる。しかし、全ハロゲン量に対
して臭素混合割合が0.13% であれば、発光管の外面
の最高温度を800℃に保って点灯すると、紫外線の放
射強度の低下が著しく、実用的でない。従って、発光管
の外面の最高温度を800℃に保って点灯しても、十分
な紫外線放射強度を得るためには、全ハロゲン量に対す
る臭素の混合割合は重量比で0.26%以上でなくては
ならない。
【0015】以上の実施例のランプにおいて、封入する
金属として、ビスマスを用いたランプを示したが、他に
錫、マグネシウム、タリウム、カドミウム、マンガンを
用いた場合にも同様の傾向が得られた。従って、ハロゲ
ンとして臭素を含有し、この臭素の含有量を全ハロゲン
量に対して重量比で0.26%以上にすることの有効性
が確認できた。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の金属蒸気
放電灯は、少なくとも臭素が含有されたハロゲンを用
い、臭素の含有量を全ハロゲン量に対して重量比で0.
26% 以上とし、発光管の最高温度が800℃になる
ようにして点灯するので、発光管の外面の最高温度を低
くして発光管の内壁に鉄の薄膜の形成されるのを抑制し
ても十分な紫外線放射強度を得ることができる。従っ
て、塗料やインキなどのキュアーに有力な紫外線放射強
度が長時間維持される金属蒸気放電灯とすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属蒸気放電灯の説明図である。
【図2】280〜400nmの波長域の紫外線放射強度維
持率の説明図である。
【符号の説明】
1 発光管 2 電極 3 モリブデン箔 4 外導線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森 和之 兵庫県姫路市別所町佐土1194番地 ウシ オ電機株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−80959(JP,A) 特開 昭52−16888(JP,A) 特開 昭52−16887(JP,A) 特開 平1−161655(JP,A) 特開 平1−128345(JP,A) 特開 昭54−150873(JP,A) 特開 平2−288152(JP,A) 特公 昭58−18743(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 61/20

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極を備えた発光管の内部に、アーク放
    電を維持するのに十分な量の水銀および希ガスととも
    に、適量の鉄と、適量の錫・マグネシウム・ビスマス・
    タリウム・カドミウム・マンガンの少なくとも1種以上
    と、およびハロゲンを封入した金属蒸気放電灯におい
    て、 前記ハロゲンには少なくとも臭素が含有され、臭素の含
    有量が全ハロゲン量に対して重量比で0.26% 以上で
    り、発光管の最高温度が800℃になるようにして点
    灯されることを特徴とする金属蒸気放電灯。
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