JP3243107B2 - 低比表面積シリカゲルの製造方法 - Google Patents

低比表面積シリカゲルの製造方法

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忠行 赤崎
英伸 米井
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日本シリカ工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低い比表面積とコント
ロールされた構造性を有する新規なシリカゲルを提供す
る。さらに本発明は、上記物性を有するシリカゲルの製
造方法に関するものである。本発明のシリカゲルは、分
散性に優れることから樹脂用充填剤として有用であり、
また濾過性に優れることからビール等の醸造物の濾過剤
等として有用である。
【0002】
【従来の技術】シリカヒドロゲルの製造方法は、USP
2,466,842に詳細に述べられている。シリカヒ
ドロゲルはケイ酸ナトリウムと硫酸を過剰硫酸量が0.
5Nの条件下において、混合ノズルを用いて定量的に混
合する事によりシリカヒドロゾルを得、次いでゲル化さ
せ、シリカヒドロゲルを得る事ができる。
【0003】また、シリカヒドロゲルは、USP1,9
00,859に記載の様に、水熱処理をするによって種
々の比表面積に調整することができる。シリカヒドロゲ
ルは、乾燥することによりシリカゲルが得られ、乾燥方
法は、USP2,856,268に記載されているよう
に、乾燥を加熱蒸気下において、瞬時に乾燥する方法等
がある。
【0004】さらに、乾燥により得られたシリカゲル
は、粉砕により所望の粒度に調整されるか、または乾燥
と粉砕を同時に行う事により、種々の粒度に調整する事
ができる。一般的に5μm以下の微細な平均2次粒子径
を有するシリカゲルは、塗料の艶消し剤、フィルムのア
ンチブロッキング剤、粘度調整剤等として利用されてい
る。また、5μm以上の平均2次粒子径を有するもの
は、クロマト用分離剤、ビール用濾過剤として利用され
ている。
【0005】また、シリカゲルの改質方法として、US
P2,625,492にアンモニア処理することにより
比表面積や細孔径等を調整し、さらに塗料中での沈降性
を改良する目的でフッ化化合物で処理した後に乾燥して
得られるシリカゲルについての開示がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】シリカゲルは、前記の
ように例えばビール等の醸造物の濾過剤として利用され
る。シリカゲルは、その細孔や表面シラノール基によ
り、醸造物中のタンパク質やポリフェノール類を吸着除
去する。ところが、従来のシリカゲルは、上記のような
物質を吸着する能力には優れるが、濾過速度が遅く、濾
過性が悪いと言う欠点を有している。
【0007】従来のシリカゲルは、一般に300m2
gを超え、400〜600m2 /g程度の比表面積を有
するが、本発明者らの検討の結果、濾過性は、比表面積
が低くなるほど良くなる傾向があった。しかしながら、
従来のシリカゲルでは、例えば水熱処理することにより
比表面積を300m2 /g以下にすると、吸着性能が低
下してしまうと言われている。これは、種々の検討の結
果、水熱処理により、タンパク質やポリフェノール類を
吸着除去するのに有効である、8〜200Åの細孔も消
失してしまうことが原因であると考えられる。
【0008】そこで本発明の目的は、醸造物等の濾過剤
等として有用な、吸着性能と濾過性とに優れたシリカゲ
ル及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者等は、
上記物性を有すシリカゲルについて鋭意研究を重ねた結
果、シリカヒドロゲルをフッ素化合物で処理して得られ
るシリカゲルが、吸着性能と濾過性とに優れた新規シリ
カゲルであることを見いだして、本発明を完成するに至
った。
【0010】本発明は、BET比表面積が50〜300
2 /gであり、かつメジアン細孔径が8〜200Åで
あることを特徴とするシリカゲルに関する。
【0011】さらに本発明は、BET比表面積が50〜
300m2 /gであり、メジアン細孔径が8〜200Å
であり、細孔容積が0.1〜2.5cc/gであり、か
つ平均2次粒子径が1〜200μmであるシリカゲルに
関する。
【0012】また本発明は、シリカヒドロゲルをフッ素
化合物で処理し、次いで乾燥してシリカゲルとする特徴
とする上記シリカゲルの製造方法に関する。
【0013】本発明のシリカゲルは、BET比表面積が
従来のシリカゲルよりも低く、かつメジアン細孔径は従
来のシリカゲルと同等のものである。BET比表面積が
50〜300m2 /gの範囲にあることで、良好な濾過
性を得ることができる。特に、製造が容易であるという
観点からは、100m2 /g以上であることが好まし
く、また濾過性の観点からは250m2 /g以下である
ことが好ましい。また、メジアン細孔径が8〜200Å
の範囲が吸着性能が優れるという観点から好ましい。
【0014】また、本発明のシリカゲルは、さらに、細
孔容積が0.1〜2.5cc/gであり、かつ平均2次
粒子径が1〜200μmであるものが好ましい。細孔容
積が0.1〜2.5cc/gの範囲にあれば、十分な吸
着容量を有する。好ましくは、0.5〜2.0cc/g
の範囲である。平均2次粒子径については、1μm未満
の場合は濾過性が低下する傾向があり、200μm以下
では、吸着との接触面積が不足して吸着性能が低下する
傾向がある。好ましくは10〜100μmの範囲であ
る。
【0015】本発明のシリカゲルは、基本的に、シリカ
ヒドロゲルをフッ素化合物で処理し、次いで乾燥するこ
とにより得られる。シリカヒドロゲルは、例えば、Si
2 25wt%、モル比3.3の如きケイ酸ナトリウム
とH2 SO4 wt%の如き硫酸を混合ノズルを用いて、
pH0.5〜2.0、温度60℃以下の条件で混合しシ
リカヒドロゾルを得ることができる。次にシリカヒドロ
ゾルは10分以内にゲル化し、シリカヒドロゲルを得る
ことができる。さらに、バッチ反応槽において、ケイ酸
ナトリウムと硫酸をpH0.5〜2.0の条件で同時に
滴下しながら得る事もできる。
【0016】上記の反応法のいずれの場合も、反応時の
pHは0.5〜2.0が好ましい。pHが2.0を越え
るとゲル化が早く、ハンドリングが難しくなるばかり
か、品質の制御も難しくなる。また、pHが0.5より
も低すぎるとゲル化に長時間を要する。ケイ酸ナトリウ
ムのSiO2 濃度は好ましくは10〜29wt%、硫酸
の濃度は、好ましくは35〜45wt%であり、いずれ
もこれらの濃度に限定されない。但し、これらの濃度を
越えて使用すると、反応中の溶液の粘度が上昇し、操作
場困難となる傾向が現れ、また、これらの濃度より低い
濃度で使用すると、反応中のゲル化をコントロールする
ことが非常に難しくなる傾向が現れるので、上記範囲と
する事が好ましい。温度は、好ましくは10〜70℃で
ある。より好ましくは、30〜60℃である。温度が高
くなり過ぎると細孔分布に影響がでるので好ましくな
い。また、温度が低くなり過ぎると洗浄効率が悪くなり
好ましくない。
【0017】この様にして得られたシリカヒドロゲル
を、次いでフッ素化合物で処理する。フッ素化合物によ
る処理は、シリカヒドロゲルをフッ素化合物水溶液中に
一定時間浸漬することにより行うことができる。フッ素
化合物としては、例えば、フッ化ナトリウム(NaF)
やケイフッ化マグネシウム(MgSiF6 )を例示する
ことができる。また、浸漬時間は0.5〜3時間の範囲
であることが適当である。
【0018】フッ素化合物としてフッ化ナトリウム(N
aF)を使用する場合、1wt%以上、好ましくは3w
t%以上の濃度の水溶液中にシリカヒドロゲルを浸漬す
ることが好ましい。フッ化ナトリウムの濃度が低すぎる
と目的とする物性のシリカゲルが得られないか、もしく
は長時間浸漬が必要となり、実用的でない。尚、フッ化
ナトリウムの常温での飽和溶解度を考慮すると、濃度の
上限は5wt%程度である。
【0019】フッ素化合物としてケイフッ化マグネシウ
ム(MgSiF6 )を使用する場合は、2wt%以上、
好ましくは4wt%以上の濃度の水溶液中にシリカヒド
ロゲルを浸漬することが好ましい。ケイフッ化マグネシ
ウムの濃度が低すぎると目的とする物性のシリカゲルが
得られないか、もしくは長時間浸漬が必要となり、実用
的でない。尚、ケイフッ化マグネシウムの常温での飽和
溶解度を考慮すると、濃度の上限は23wt%程度であ
る。
【0020】本発明におけるフッ素化合物処理は、シリ
カヒドロゲルを水洗した後に行っても良いし、水洗前に
行ってもよい。フッ素化合物水溶液中で一定時間浸漬す
ることにより本発明の目的は達成でき、工程の組合せは
目的に応じて適宜選択することができる。但し、水熱処
理のみでは本発明のシリカゲルを得ることはできない。
【0021】次ぎに、フッ素化合物処理されたシリカヒ
ドロゲルは乾燥することでシリカゲルが得られる。ま
た、乾燥により得られたシリカゲルは、所望により粉砕
されるか、或は乾燥と粉砕を同時に行うかして、適当な
粒度に適宜調整される。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、濾過性と吸着性に優れ
た新規なシリカゲルを提供することができる。さらに本
発明の新規なシリカゲルは、濾過剤等として有用である
ばかりか、分散性に優れることから、樹脂用充填剤とし
ても有用である。
【0023】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに説明す
る。尚、シリカゲルの各物性値の測定は以下に示す方法
により行った。 (1)BET比表面積 ASAP2400(島津製作所社製)を用いて、窒素の
吸脱着等温線を測定の後多点法によりBET計算式を用
いて計算した。 (2)細孔容積 ASAP2400(島津製作所社製)を用いて、窒素の
吸脱着等温線を測定の後Barrett−Joyner
−Halenda法 J.Am. Chem.So
c.,73,373(1951)記載の方法を用いて行
った。
【0024】(3)メジアン細孔径 窒素の相対圧力と細孔直径の関係をBarrett−J
oyner−Halenda法 J.Am. Che
m.Soc.,73,373(1951)記載の方法を
用いて決定し、細孔容積との関係を求め、そのメジアン
を読んだ。
【0025】実施例1 ケイ酸ナトリウムSiO2 25wt%、モル比3.3と
硫酸H2 SO4 42wt%を、ケイ酸ナトリウム流量約
15リットル/min硫酸流量約7.0リットル/mi
nの条件で混合ノズルを用いて混合しシリカヒドロゾル
を得た。この時の温度は約50℃であった。該シリカヒ
ドロゾルは約5分でゲル化しシリカヒドロゲルを得た。
次いで該シリカヒドロゲルを篩いを用いて約10mmに
粉砕した後、30℃の水で洗浄した。さらに洗浄したシ
リカヒドロゲルを、NaF3.0wt%水溶液に30m
in浸漬した後、箱形乾燥機を用いて200℃、60m
inで乾燥した。乾燥したシリカゲルをジェットミルを
用いて粉砕し、シリカゲルパウダーを得た。この時の、
比表面積、細孔容積、メジアン細孔径を表1に記載す
る。また、このシリカゲルパウダーを500mmHgの
差圧下において、5Cのロ紙を用いて、直径120mm
のヌッチェで1リットルの5%スラリーを濾過するのに
要する時間を同じく表1に示す。
【0026】実施例2 洗浄したシリカヒドロゲルを、MgSiF6 5.0wt
%水溶液に30min浸漬した以外は実施例1と同様に
して、シリカゲルパウダーを得た。この時の比表面積、
細孔容積、メジアン細孔径を表1に示す。また、このシ
リカゲルパウダーを500mmHgの差圧下において、
5Cのロ紙を用いて、直径120mmのヌッチェで1リ
ットルの5%スラリーを濾過するのに要する時間を同じ
く表1に示す。
【0027】実施例3 洗浄したシリカヒドロゲルを、MgSiF6 20.0w
t%水溶液に30min浸漬する以外は実施例1と同様
にして、シリカゲルパウダーを得た。この時の比表面
積、細孔容積、メジアン細孔径を表1に示す。また、こ
のシリカゲルパウダーを500mmHgの差圧下におい
て、5Cのロ紙を用いて、直径120mmのヌッチェで
1リットルの5%スラリーを濾過するのに要する時間を
同じく表1に示す。
【0028】実施例4 ケイ酸ナトリウムSiO2 25wt%、モル比3.3と
硫酸H2 SO4 42wt%を、ケイ酸ナトリウム流量約
15リットル/min硫酸流量約7.0リットル/mi
nの条件で混合ノズルを用いて混合しシリカヒドロゾル
を得た。この時の温度は約50℃であった。該シリカヒ
ドロゾルは約5分でゲル化しシリカヒドロゲルを得た。
次いで該シリカヒドロゲルを篩いを用いて約10mmに
粉砕した後、90℃pH9.5の条件で2Hr水熱処理
した後、洗浄した。さらに洗浄したシリカヒドロゲル
を、MgSiF6 5.0wt%水溶液に30min浸漬
した後、箱形乾燥機を用いて200℃、60minで乾
燥した。乾燥したシリカゲルをジェットミルを用いて粉
砕し、シリカゲルパウダーを得た。この時の比表面積、
細孔容積、メジアン細孔径を表1に示す。また、このシ
リカゲルパウダーを500mmHgの差圧下において、
5Cのロ紙を用いて、直径120mmのヌッチェで1リ
ットルの5%スラリーを濾過するのに要する時間を同じ
く表1に示す。
【0029】比較例1 ケイ酸ナトリウムSiO2 25wt%、モル比3.3と
硫酸H2 SO4 42wt%を、ケイ酸ナトリウム流量約
15リットル/min硫酸流量約7.0リットル/mi
nの条件で混合ノズルを用いて混合しシリカヒドロゾル
を得た。この時の温度は約50℃であった。該シリカヒ
ドロゾルは約5分でゲル化しシリカヒドロゲルを得た。
次いで該シリカヒドロゲルを篩いを用いて約10mmに
粉砕した後、90℃pH9.5の条件で24Hr水熱処
理した後、洗浄した。さらに洗浄したシリカヒドロゲル
は、浸漬処理無しで、箱形乾燥機を用いて200℃、6
0minで乾燥した。乾燥したシリカゲルをジェットミ
ルを用いて粉砕し、シリカゲルパウダーを得た。この時
の、比表面積、細孔容積、メジアン細孔径を表1に示
す。また、このシリカゲルパウダーを500mmHgの
差圧下において、5Cのロ紙を用いて、直径120mm
のヌッチェで1リットルの5%スラリーを濾過するのに
要する時間を同じく表1に示す。
【0030】比較例2 シリカヒドロゲルを、90℃pH9.5の条件で48H
r水熱処理した後、洗浄した以外は比較例1と同様にし
て、シリカゲルパウダーを得た。この時の、比表面積、
細孔容積、メジアン細孔径を表1に記載する。また、こ
のシリカゲルパウダーを500mmHgの差圧下におい
て、5Cのロ紙を用いて、直径120mmのヌッチェで
1リットルの5%スラリーを濾過するのに要する時間を
同じく表1に記載する。
【0031】
【表1】
【0032】実施例1〜4に示すように、本発明の低い
比表面積とコントロールされた構造性を有するシリカゲ
ルは、フッ素化合物で処理することにより得られ、これ
らのシリカゲルは、優れた濾過性を有する。一方、シリ
カヒドロゲルを水熱処理することで得られた比較例1及
び2のシリカゲルは、濾過性に劣るか、又は細孔性状
(吸着性)に劣るものであった。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−27098(JP,A) 特開 平1−230421(JP,A) 特開 平5−208808(JP,A) 特開 昭58−26023(JP,A) 特開 平5−177132(JP,A) 特開 昭48−70698(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 33/00 - 33/193 CA(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケイフッ化マグネシウム(MgSi
    6)を2wt%以上含有する水溶液中にシリカヒドロ
    ゲルを浸漬し、次いで乾燥してシリカゲルとするシリカ
    ゲルの製造方法であって、 前記シリカゲルは、BET比表面積が50〜300m2
    /gであり、かつメジアン細孔径が8〜200Åである
    ことを特徴とする製造方法。
  2. 【請求項2】 フッ化ナトリウム(NaF)を1wt%
    以上含有する水溶液中にシリカヒドロゲルを浸漬し、次
    いで乾燥してシリカゲルとするシリカゲルの製造方法で
    あって、 前記シリカゲルは、BET比表面積が50〜300m2
    /gであり、かつメジアン細孔径が8〜200Åである
    ことを特徴とする製造方法。
  3. 【請求項3】 前記シリカゲルは、細孔容積が0.1〜
    2.5cc/gであり、かつ平均2次粒子径が1〜20
    0μmである請求項1又は2に記載のシリカゲルの製造
    方法。
  4. 【請求項4】 前記シリカゲルは、濾過助剤用シリカゲ
    ルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項
    記載のシリカゲルの製造方法。
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