JP3240323B2 - 補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法 - Google Patents

補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、補強材と安定化
材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法に関する。この発明
の超伝導磁石は、単体あるいは、これを利用した製品、
例えば、リニアモーター用の超伝導磁石、発電機用の超
伝導磁石、加速器用の超伝導磁石、粒子検出用の超伝導
磁石、物性測定用の高磁場超伝導磁石といった強磁場を
発生させることが求められる用途に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】現在、一般的な超伝導磁石は、ニオブチ
タン合金に代表される合金系超伝導線材を用いて作製さ
れた磁石、ニオブ3スズ化合物に代表される化合物系超
伝導線材を用いて作製された磁石、又はそれらの両方を
用いる磁石の3種類があり、それぞれの特徴を生かして
適宜使い分けられている。
【0003】合金系超伝導線材は、化合物系超伝導線材
に比べて機械的特性が良好であり、降伏応力が250 から
300 MPa までは超伝導特性を損なうことがない。また、
曲げ歪に対しても2 %程度までは十分に耐えることがで
きる。このため、合金系超伝導線材を巻線として磁石を
作製するときには張力をかけながら、隙間なく巻くこと
が可能であるため作製が容易であり、これまで超伝導磁
石の大部分はこの合金系線材を用いて作製されてきた。
【0004】しかしながら、この合金系超伝導線材は、
超伝導特性、なかでも臨界磁界や高磁場中での臨界電流
が化合物系超伝導線材ほど良好ではないため、線材を用
いて作製した超伝導磁石が発生させる磁場の強さは、化
合物系超伝導線材を用いた磁石に比べて劣っている。例
えば、合金系超伝導線材のなかで最も多用されているニ
オブチタン合金線材を用いた超伝導磁石は、4.2 Kの液
体ヘリウム温度で8 〜9 T(1 Tは10000 ガウス)、1.
8 Kの超流動ヘリウム温度においても11〜12Tの磁場を
発生させることが限界である。したがって、これ以上の
強磁場を発生させることが求められる高分解能の核磁気
共鳴(MRI)磁石や物性測定用の高磁場磁石などの用
途においては、合金系超伝導線材を用いた超伝導磁石で
は要求特性を満足し得ない。
【0005】一方、化合物系超伝導線材は、合金系超伝
導線材に比べて臨界磁場が高く、例えば、代表的なニオ
ブ3スズ線材を用いた磁石は、発生磁場限界が4.2 Kの
液体ヘリウム温度で約18T、また、1.8 Tの超流動ヘリ
ウム温度で約21Tであり、合金系超伝導線材の使用限界
をはるかに上回る。そのため、上述したような12T以上
の高磁場を発生させるための磁石に好適である。しかし
ながら、化合物系超伝導線材は、金属間化合物であるが
故に機械的応力に対して脆弱であり、降伏応力で150 MP
a が特性の限界で設計値的には100 MPa が利用限界、曲
げ歪で0.2 %程度が設計限界である。したがって、化合
物系超伝導線材から超伝導磁石を得るには、合金系超伝
導線材のように線材に張力を付与しつつ巻線にする製造
方法を用いるのは極めて困難であった。
【0006】化合物系超伝導線材を巻線に用いた磁石を
製造するには、通常、巻線加工に伴う歪が化合物系超伝
導線材に導入されるのを回避するために、あらかじめ未
反応状態の超伝導化合物原料をコイル状に巻き、この状
態で熱処理を実施してニオブとスズとを反応させること
により、コイル形状のままニオブ3スズ化合物を形成さ
せ(ワインド・アンド・リアクト法)、しかる後に線材
の不要な動きを止めてコイル形状を固定するためにエポ
キシ樹脂を線材の間隙に真空下で含浸させていた。した
がって、化合物系超伝導磁石の作製には、コイルを均一
に熱処理するための設備・技術が必要であり、また、真
空含浸などのための特殊な処理設備も必要であった。特
に大口径のコイルを必要とされる用途に用いられる磁石
を製造する場合には、大型の熱処理炉や大型の真空含浸
設備が必要となっていた。
【0007】なお、歪に弱いこれまでのニオブ3スズ線
材に対して、あらかじめ熱処理した線材をコイル状に巻
いて磁石を製造する超伝導磁石技術は存在していた。こ
れは、ダブルパンケーキ巻線法と呼ばれるコイル作製技
術である。しかしながら、この方法は、製造時に許容さ
れる歪が、使用する線材の特質に依存してやはり0.2%
以下に制限されるために、内径の大きな超伝導磁石にな
らざるを得ず、また、磁石の形状にも制限があった。更
に、製造の際には大きな張力をかけることができないこ
とに変わりはなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従
来、化合物系超伝導磁石は、ダブルパンケーキ巻線法を
除いてワインド・アンド・リアクト法で製造され、かか
る方法では、巻線状態でニオブ3スズ化合物を生成させ
るための特殊な熱処理装置を必要とし、また、熱処理後
にも歪や応力が加わらないように、慎重な取り扱いが必
要とされていた。また、線材を固着させるためのエポキ
シ樹脂の真空含浸装置も必要であった。
【0009】したがって、物性測定用の強磁場大口径磁
石、加速器用の超伝導磁石、リニアモーター用の超伝導
磁石、発電機用の超伝導磁石、粒子検出用の超伝導磁石
などのように、大口径で強磁場を発生させることが要求
される磁石には、化合物系超伝導線材を用いて強磁場化
を図ることが切望されているにもかかわらず、化合物系
超伝導磁石は従来、磁石が大型化してしまうこと、ま
た、磁石が発生する電磁力にコイルが耐え得るために線
径の太い超伝導線材を用いざるを得ないのに、線径の太
い線材ではコイルの巻き径をますます大きくしなければ
ならないこと、更に、製造が困難であること等の問題か
ら、適用されていないのが現状であった。
【0010】また、加速器用等の大口径超伝導磁石は、
設備が大型化するため、できるだけコンクト化するこ
とが望まれているところである。また、液体ヘリウムを
使わない冷凍機を実現するための冷却超伝導磁石は、超
伝導磁石の小型軽量化が必須条件である。したがって、
超伝導磁石は、製造が容易であることのみならず、小型
化、軽量化が要請されている。更に、磁石の用途によっ
ては、磁石形状についてパンケーキ形状ばかりなく、複
雑な形状に製造できることが求められる場合がある。ま
た、磁石に使用する線材は、その磁石が発生する電磁力
に耐えられるだけの強度が必要とされる。
【0011】この発明は、このような化合物系超伝導線
材を用いた超伝導磁石が抱える問題を有利に解決するも
ので、磁石素材として化合物系超伝導線材を用いた場合
であっても、合金系超伝導線材を用いた場合と同様、簡
便かつ取り扱い容易に磁石を製造することのでき、しか
も磁石の小型化、軽量化は勿論のこと、複雑形状への適
応も可能な、超伝導磁石の新規な製造方法を提案するこ
とを目的とする。
【0012】
【0013】
【課題を解決するための手段】発明者は、従来の銅を安
定化材とした極細多芯ニオブ3スズ線材の銅を銅ニオブ
やアルミナ分散銅などの補強安定化で置き換えた高強
度の補強安定化ニオブ3スズ線材の開発に成功した。こ
の線材を巻線に用いて磁石を製造する際には、線材が巻
線時の曲げ加工に耐える強度を持っているために、合金
系超伝導磁石の製造方法と同様に、超伝導体が形成され
ている線材を、張力の付与下にコイル状に巻線加工する
ことにより、磁石を製造することができる。
【0014】この発明は、上記の知見に立脚するもので
ある。すなわち、この発明は、化合物系超伝導体を覆う
安定化材として、補強材と安定化材とを兼ねた、銅ニオ
ブ、アルミナ分散銅、銅銀合金及び銅タンタル繊維のう
ちから選ばれる補強安定化材を用いてなる補強安定化超
伝導線材を、あらかじめ熱処理により超伝導物質とした
後、張力の付与下にコイル状に巻いて成形することを特
徴とする補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造
方法である。この発明において、コイル状に巻く際の付
与張力は50〜100 MPa 程度とすることが好ましい。
【0015】また、この発明において、補強安定化超伝
導線材としては、外寸法 0.3〜2 mmの丸線又は角線とす
るのが有利である。 また、コイル状に巻く際には、エポ
キシ樹脂を塗布して各線材を接着成形すること好まし
い。
【0016】
【発明の実施の形態】この発明においては、超伝導磁石
のコイルとして、化合物系超伝導体を覆う安定化材とし
て、従来用いられていた銅安定化材の代わりに、補強材
と安定化材とを兼ねた、銅ニオブ、アルミナ分散銅、銅
銀合金及び銅タンタル繊維のうちから選ばれる補強安定
化材を用いてなる補強安定化超伝導線材を用いる。かよ
うな補強安定化材を使用した超伝導線材は、高安定性を
維持しつつ高強度をそなえていて、例えば、ニオブ3ス
ズの生成熱処理条件である約 700℃で10日間ほどの熱処
理が施されても、超伝導体がニオブ3スズである補強安
定化超伝導線材は、0.3mmから2mmの細線のままで 250
から300 MPa までの降伏応力を有し、0.5 %までの曲げ
歪まで許容できる。これは、従来の化合物系超伝導線材
が 150 MPaの降伏応力、0.2 %の歪が限界であるのに比
較して格段に優れている。したがって、かかる0.3 mmか
ら2mm直径の細い線径で高強度安定を有する補強安定
化ニオブ3スズ線材を用いることにより、新しい超伝導
磁石の作製が可能となる。
【0017】すなわち、ニオブ3スズ線材を、合金系超
伝導線材と同様に、あらかじめ熱処理した線材としてコ
イルに巻くことができる(リアクト・アンド・ワインド
法)。これまでのような銅を安定化材とした線材では、
この銅が焼鈍軟化されてしまうような熱処理条件である
約700 ℃で10日間のニオブ3スズ生成反応を実施した後
であっても、この発明で用いる補強安定化超伝導線材
は、機械的に強く、降伏応力で250 から300 MPa という
特性を有するため、巻線張力をかけながらコイルに巻く
ことができる。高張力巻線方式によって磁石を作製する
ことが可能となり、このために、合金系線材と同様にソ
レノイド密巻きの手法がニオブ3スズ線材で可能とな
り、このまま超伝導磁石とすることが可能となる。
【0018】しかも、エポキシ樹脂を巻線時に塗布し、
各線材を接着固定することにより、コイルを成形するこ
とができる。このエポキシ樹脂の塗布は、従来技術にお
けるエポキシの真空含浸と同等の効果を有する。したが
って、大型の化合物系超伝導磁石を製造する場合であっ
ても、従来のように未反応の超伝導体原料をコイル上に
巻線加工する必要はなく、特殊な真空熱処理炉やエポキ
シ真空含浸炉が不要となる。これは、特にコイルが大型
になる場合には過大な設備の必要がなくなるので、この
発明の磁石が有利である。
【0019】なお、既に述べたように、歪に弱いこれま
でのニオブ3スズ線材に対しても、リアクト・アンド・
ワインド法によってもゆるいパンケーキ巻きコイルを作
製する超伝導磁石技術は存在していた。これは、ダブル
パンケーキ巻線法と呼ばれるコイル作製技術である。し
かしながら、この方法は、使用する線材の特質により製
造時に許容される歪が、やはり0.2 %以下に制限される
ために、非常に薄いテープによるダブルパンケーキ巻き
を行う必要があった。そのため、電磁力に弱いために補
強方法に難点があり、線材に機械的な強さを持たせる
と、曲げ歪に制限されるために内径の大きな超伝導磁石
になるという問題点があったのである。
【0020】この点、この発明の磁石は、上記線材を用
いることにより、0.3 mmから2 mm直径の丸線又は角線の
ままで機械的にも強いため、、0.5 %までの曲げ歪の制
限でリアクト・アンド・ワインド法が適用できる。そし
て、線材はテープ状ではなく、丸線又は角線であるか
ら、超伝導磁石の形状が自由に設計でき、パンケーキ巻
きのようなコイル寸法や形状の規制がない。したがっ
て、これまでニオブ3スズ系超伝導磁石では困難とされ
ている複雑な形状の超伝導磁石、例えば加速器などのダ
イポールコイルなどにも適用できる。
【0021】ニオブ3スズに高張力巻線技術が適用でき
ると、電磁力に見合った巻線技術が、超伝導特性にも反
映させることができる。ニオブ3スズは歪に敏感である
ために700 ℃で熱処理されたものが 4.2Kで使用される
とき、1000℃の温度差による熱収縮を受け、4.2 Kでは
伝導特性を劣化させている。この熱収縮応力を巻線
張力による応力および電磁応力とバランスさせること
可能となり、超伝導特性を応力緩和によって向上させる
ことができる。これまでは、ニオブ3スズに大きな巻線
張力を加えることができなかったため、この手法は不可
能であった。この発明によれば、ニオブ3スズ線材の超
伝導特性も高張力で制御できるようになる。
【0022】以下、この発明をより詳細に説明する。こ
の発明の磁石に用いる補強安定化超伝導線材は、超伝導
体を覆う安定化材として通常用いられている高純度銅
を、他の補強安定化材に置換してなるものである。
【0023】この超伝導体には、公知の化合物系超伝導
体を使用することができ、ニオブ3スズを代表例とし
て、これにチタン、タンタル、ハフニウム、ガリウムの
1種又は2種以上を添加することもできる。また、一部
実用になっているニオブ3アルミやバナジウム3ガリウ
ムなどのA15 型化合物系超伝導体などを使用することが
できることはいうまでもない。
【0024】また、補強安定化材としては、銅ニオブ合
金、アルミナ分散銅、銅銀合金、銅タンタル繊維があ
る。これらの補強安定化材は、高純度銅に比べて強度が
高いため、線材にしたときに高強度の線材が得られる。
また、ニオブ3スズを生成するための熱処理である約 7
00℃で1日以上の熱処理を行うと、安定化材として従来
用いられてきた銅は焼鈍されてしまう結果、機械的な耐
力が 50MPa程度になってしまうが、この発明で用いる補
強安定化材は、かかる熱処理を施しても 250 MPa以上の
耐力を保持する。そして、補強安定化材を用いた線材で
は、0.5 %程度までの歪に対して許容できる。
【0025】かかる銅ニオブ合金の好適な組成範囲はCu
−10wt%NbないしCu−40wt%Nbである。アルミナ分散銅
の場合には、分散させるアルミナの好適な比率はおよそ
0.5〜0.7 wt%である。
【0026】この発明の磁石に用いる超伝導線材を製造
するには、いわゆるブロンズ法を用いることができ、極
細多心線で外寸法0.3 〜2 mmの線材を製造することがで
きる。このブロンズ法は、ニオブ3スズを生成反応させ
る際に、銅が反応の触媒的な役割を果たすことが発見さ
れたことに基づき、ニオブの周りに配置したスズを直接
ニオブと反応させるのではなく、銅を介して反応させる
方法である。かくして、CuとSnとが合金化され、CuSn、
すなわちブロンズとなった方がNbと反応しやすくなり、
多くのニオブ3スズが作製できる方法である。なお、注
意しなければならないことは、安定化のための銅をスズ
で汚さないようにするため、スズの拡散を防止するため
のバリアとしてのタンタル層を設けて、反応中の安定化
銅を守っていることである。このようなブロンズ法を、
そのまま転用できる。
【0027】外寸法は0.3 〜2 mmの範囲が好適である。
従来、大口径磁石に用いられる超伝導線材は、巨大な電
磁力に耐え得るべく線径を太くしており、3mmから5mm
の導体が用いられていた。しかしながら、かかる線径3
mmから5mmの線材では、曲げ歪を0.2 %に制限されると
巻き径が1500mmから2500mmになってしまう問題がある。
この点、この発明では、外寸法を0.3 〜2 mmの細線とし
ても十分な耐力をそなえており、しかも、0.5 %の曲げ
歪を許容することから、60mmから400 mm以上の巻き径と
することが可能となる。
【0028】図1に、補強安定化材として銅ニオブ(CuN
b)を用いた銅ニオブ/ニオブ3スズ(CuNb /Nb3Sn)線材
の4.2 Kにおける臨界電流と引張応力との関係を、比較
のための従来の銅/ニオブ3スズ(Cu /Nb3Sn)線材の場
合と共にグラフに示す。なお、用いた線材の特性は、以
下のとおりである。 線材の直径 1.0 mm Cu/CuNb/非Cu比 0.41/0.63/1.0 フィラメント直径 4.0 μm フィラメント数 7849 ブロンズ比 3.9 バリア材 Ta Nb芯線への添加元素 Ti
【0029】同図から、CuNb/Nb3Sn 線材は、応力が20
0 MPa 〜300 MPa という従来の線材では臨界電流が半分
以下になるほどの応力が付与される場合であっても、臨
界電流は低下しないことが明らかである。
【0030】図2に、化合物系超伝導線材の断面写真を
示す。同図(a) はCuを安定化材として用いた銅/チタン
添加ニオブ3スズ (Cu/(Nb,Ti)3Sn) 線材であり、同図
(b)は、この発明の磁石に適合する、CuNbを補強安定化
材として用いた銅ニオブ/チタン添加ニオブ3スズ (Cu
Nb/(Nb,Ti)3Sn) 線材である。
【0031】かかる補強安定化超伝導線材は、所定の熱
処理にて超伝導体を形成させたのち、コイル状に巻いて
超伝導磁石を成形する。この巻線工程の際には、あたか
も合金系超伝導線材のように、例えば50〜100MPa の張
力を付与しつつ、成形することができる。ここに、補強
安定化超伝導線材が外寸法 0.3〜2 mmの丸線又は角線で
あるため、従来の化合物系超伝導テープ材とは異なり、
取り扱いが容易であり、多様なコイル形状に成形するこ
とができる。また、コイル状に巻く際、エポキシ樹脂を
塗布して各線材を接着して成形することにより、真空含
浸などの設備が不要なのは既に述べたとおりである。
【0032】より好ましくは、コイル状に巻く際、巻線
張力を制御する。具体的には、熱収縮応力を巻線張力
による応力および電磁応力とバランスさせるようにす
る。超伝導磁石は、通常は内コイルに大きな電磁力が作
用し、外コイルに向かうほどその電磁力が弱くなる。ま
た、磁石が発生する磁場を効率よく発生されるためにコ
イルは多数に分割されている。そこで、内側コイルは張
力巻きができる最小限の巻き張力で巻くことにより、大
きな電磁力が作用することに対処させて、その電磁力と
巻き張力の合計が図1の臨界電流が最も大きいところに
なるようにさせる。外側コイルでは、逆に巻線張力を大
きくして小さな電磁力との合計をやはり臨界電流が最も
大きいところになるように各分割したコイルごとにでき
るようにする。かくして、超伝導特性を一層向上させる
ことができる。
【0033】この発明を用いることにより、以下のよう
な磁石に用いて好適である。大口径超伝導磁石は大型化
するためにコンパクト化が望まれているが、この発明に
従い、補強安定化ニオブ3スズ線材を用いることで、二
分の一から三分の一までのコンパクト化が可能となる。
【0034】液体ヘリウムを使わない冷凍機冷却超伝導
磁石は、超伝導磁石の小型軽量化が必須条件である。大
口径強磁場磁石は、補強安定化ニオブ3スズ線材を用い
ることで、コンパクトに作製でき、冷凍機冷却超伝導磁
石へ適用可能となる。
【0035】大口径超伝導磁石をニオブ3スズ線材で作
製するためには、コンパクトに作製するために巻線後に
熱処理する製法しかなかった。このために、大型コイル
を熱処理するための大型熱処理炉が必要であったが、補
強安定化ニオブ3スズ線材を用いた超伝導磁石は、巻線
前に線材のみ熱処理することになり、コイルが入るよう
な大型熱処理炉は不要である。
【0036】大口径超伝導磁石のような大型コイルをエ
ポキシの真空含浸をすることは極めて困難なことである
が、補強安定化ニオブ3スズを高張力巻線で超伝導磁石
を作製する場合)値は、巻線時にエポキシで接着しなが
ら作製できるため、真空含浸炉は不要である。巻線張力
制御によって、分割された超伝導磁石の最適化が可能と
なる。
【0037】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、化合物系
超伝導磁石において、使用する線材に補強材と安定化材
とを兼ねた補強安定化超伝導線材を用いることから、リ
アクト・アンドワインド法により超伝導磁石を製造する
ことができ、特殊な真空熱処理炉やエポキシ真空含浸炉
が不要となる。また、線材はこれまでの2.5 倍の曲げ径
に対応する0.5 %までの曲げ加工をすることができるた
め、コイル形状を比較的自由に設計することができる。
したがって、物性測定用の大口径超伝導磁石、加速器用
の超伝導磁石、リニアモーター用の超伝導磁石、発電機
用の超伝導磁石、粒子検出用の超伝導磁石などのよう
に、大口径で強磁場を発生させることが要求される磁石
などに特に有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に用いるCuNb/Nb3Sn 補強安定化超伝
導線材における臨界電流と引張応力との関係を、比較の
ための従来のCu/Nb3Sn 線材の場合と比較して示すグラ
フである。
【図2】化合物系超伝導線材の断面写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−289112(JP,A) 特開 平10−27707(JP,A) 特開 平6−224037(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 6/06 H01F 7/22 H01F 7/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化合物系超伝導体を覆う安定化材とし
    て、補強材と安定化材とを兼ねた、銅ニオブ、アルミナ
    分散銅、銅銀合金及び銅タンタル繊維のうちから選ばれ
    る補強安定化材を用いてなる補強安定化超伝導線材を、
    あらかじめ熱処理により超伝導物質とした後、張力の付
    与下にコイル状に巻いて成形することを特徴とする補強
    材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法。
  2. 【請求項2】 コイル状に巻く際、補強安定化超伝導線
    材に対する付与張力が、50〜100 MPa であることを特徴
    とする請求項1記載の超伝導磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 補強安定化超伝導線材が、外寸法 0.3〜
    2mmの丸線又は角線である請求項1または2記載の超伝
    導磁石の製造方法。
  4. 【請求項4】 コイル状に巻く際、エポキシ樹脂を塗布
    して各線材を接着して成形することを特徴とする請求項
    1,2または3記載の超伝導磁石の製造方法。
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