JP3239516B2 - 面発光半導体レーザー - Google Patents

面発光半導体レーザー

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JP3239516B2
JP3239516B2 JP04327993A JP4327993A JP3239516B2 JP 3239516 B2 JP3239516 B2 JP 3239516B2 JP 04327993 A JP04327993 A JP 04327993A JP 4327993 A JP4327993 A JP 4327993A JP 3239516 B2 JP3239516 B2 JP 3239516B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、面発光半導体レーザ
ーに関する
【0002】
【従来の技術】面発光レーザーは、二次元集積化が可能
なことや、ウエハ状態で動作チェックを行うことができ
ることなどにより注目を集めており、活発に研究が行わ
れている。この面発光レーザーは、そのレーザー共振器
構造の点から、垂直共振器型、水平共振器型および曲が
り共振器型の三種類に大別される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
垂直共振器型の面発光レーザーでは通常、出力はμWレ
ベルからせいぜい数mWレベルであり、それ以上の高出
力化は望めない。また、信頼性に関してもこれまでに報
告例がなく、今後、並列光演算素子などへの応用を考え
ると問題となる(例えば、Jpn.Appl.Phys.18,2329(197
9) およびAppl.Phys.Lett.55(3),221(1989))。
【0004】一方、従来の水平共振器型の面発光レーザ
ーや曲がり共振器型の面発光レーザーでは、外部に45
度の反射鏡を形成したり、内部に45度の反射鏡や回折
格子を形成したりすることにより面発光を実現している
が、外部の反射鏡を用いた場合にはその面積分だけ面発
光レーザー1個当たりの占有面積が大きくなるため集積
化する場合に不利であり、また、レーザー構造と同時に
反射鏡や回折格子を形成すると製造プロセスが複雑にな
ってしまうという問題がある(例えば、Appl.Phys.Let
t.57(20),2048(1990)、Appl.Phys.Lett.50(24),1705(19
87)および"Conf.on Lasers and Electro-Optics(CLE
O)",402(1989))。
【0005】従って、この発明の目的は、製造プロセス
が簡単でしかも集積化する場合にも有利な面発光レーザ
ーを実現することができる半導体レーザーを提供するこ
とにある。
【0006】この発明の他の目的は、高出力かつ高信頼
性の面発光レーザーを実現することができる半導体レー
ザーを提供することにある。
【0007】この発明のさらに他の目的は、任意のコヒ
ーレンス性やビーム形状を有するレーザー光が得られる
面発光レーザーを実現することができる半導体レーザー
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明の第1の発明は、水平共振器構造を有し、
動作時にこの水平共振器内に発生する光場の中に散乱体
(7)が非周期的に設けられている面発光半導体レーザ
ーである。
【0009】この発明の第2の発明は、第1の発明によ
面発光半導体レーザーにおいて、散乱体は活性層の近
傍に設けられている面発光半導体レーザーである。
【0010】この発明の第3の発明は、第1の発明によ
る面発光半導体レーザーにおいて、散乱体は溝である
発光半導体レーザーである。
【0011】この発明の第4の発明は、第1の発明によ
る面発光半導体レーザーにおいて、散乱体は高屈折率の
材料から成る面発光半導体レーザーである。
【0012】この発明の第5の発明は、第1の発明によ
る面発光半導体レーザーにおいて、光場の光を基板
(1)と反対側に反射させるための第1の反射鏡(2)
が設けられている面発光半導体レーザーである。
【0013】この発明の第6の発明は、第2の発明、第
3の発明、第4の発明または第5の発明による半導体レ
ーザーにおいて、水平共振器の反射端面に第2の反射鏡
(9)が設けられている半導体レーザーである。
【0014】
【作用】第1および第2の発明による面発光半導体レー
ザーによれば、動作時に水平共振器内に発生する光場の
、例えば活性層の近傍に散乱体(7)が非周期的に
けられているので、この散乱体(7)により光場の光を
散乱させることができる。従って、この散乱光のうち基
板と反対側に出射する光を用いることにより、さらには
残りの散乱光をも反射鏡などを用いて基板と反対側に出
射させるようにすることにより、従来の水平共振器型の
面発光レーザーや曲がり共振器型の面発光レーザーのよ
うに45度反射鏡や回折格子を用いないでも面発光を実
現することができる。そして、45度反射鏡や回折格子
を形成しないで済むため、簡単な製造プロセスで面発光
レーザーを製造することができるとともに、面発光レー
ザー1個当たりの占有面積を小さくすることができるこ
とにより集積化する場合に有利である。さらに、散乱体
(7)の形状、大きさ、数などを適当に選択することに
よって、任意のコヒーレンス性やビーム形状を有するレ
ーザー光を得ることができ、多様な用途に対応すること
ができる。
【0015】また、水平共振器構造を有することによ
り、従来の垂直共振器型の面発光レーザーに比べて高出
力かつ高信頼性の面発光レーザーを実現することができ
る。
【0016】第3の発明および第4の発明による半導体
レーザーによれば、エッチング技術やエピタキシャル成
長技術により、散乱体を容易に形成することができる。
【0017】第5の発明による半導体レーザーによれ
ば、散乱体により散乱された光場の光のうち基板(1)
側に散乱された光を第1の反射鏡(2)により基板
(1)と反対側に反射させることができるため、基板面
と垂直方向に効率良くレーザー光を取り出すことができ
る。さらに、共振器内で発生する自然放出光も、第1の
反射鏡(2)により反射されて活性層に戻される。これ
らによって、低しきい値電流密度、低しきい値電流およ
び低消費電力の面発光レーザーを実現することができ
る。
【0018】第6の発明による半導体レーザーによれ
ば、水平共振器の反射端面に第2の反射鏡(9)が設け
られていることにより、水平共振器の反射端面から光場
の光が出射するのを有効に防止することができる。これ
によって、散乱体により散乱された光場の光を基板面と
垂直方向に効率良く取り出すことができ、従って低しき
い値電流密度、低しきい値電流および低消費電力の面発
光レーザーを実現することができる。
【0019】
【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参
照しながら説明する。なお、実施例の全図において、同
一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0020】図1はこの発明の一実施例による面発光レ
ーザーを示す。
【0021】図1に示すように、この実施例による面発
光レーザーにおいては、n型半導体基板1上に、低屈折
率の半導体膜2aと高屈折率の半導体膜2bとが交互に
積層された分布反射型(Distributed Bragg Reflector,
DBR)半導体多層膜2、n型クラッド層3、活性層
4、p型クラッド層5およびp型キャップ層6が順次設
けられている。そして、n型クラッド層3、活性層4お
よびp型クラッド層5により、ダブルヘテロ(DH)構
造の水平共振器が形成されている。
【0022】後述のように、DBR半導体多層膜2は高
効率の面発光を実現するための反射鏡として用いられる
ものであるが、高い反射率を得るための低屈折率の半導
体膜2aと高屈折率の半導体膜2bとの一層当たりの最
適な膜厚di は、真空中の光の波長をλ、半導体の屈折
率をnとすると、次式で示される。 di =(2m+1)×(λ/4n) (m=0、1、2、3、…) (1) (1)式の条件を満たす膜厚di を有する低屈折率の半導
体膜2aと高屈折率の半導体膜2bとを交互に積層する
ことにより、反射率が高いDBR半導体多層膜2を得る
ことができる。ここで、低屈折率の半導体膜2aと高屈
折率の半導体膜2bとは、10層以上、すなわち5周期
以上積層するのが好ましい。
【0023】この実施例による面発光レーザーにおいて
は、p型クラッド層5に、後述のように光の散乱体とな
る縦方向(基板面に垂直な方向)の溝7が形成されてい
る。この溝7は、活性層4の直上までの深さを有し、か
つ、水平共振器の一端から他端にわたって形成されてい
る。
【0024】また、p型キャップ層6のうち溝7の周辺
の部分は除去されており、この除去部における溝7以外
の部分のp型クラッド層5の表面には、例えばSi3
4 膜のような誘電体膜から成る反射防止膜8が形成され
ている。この反射防止膜8の膜厚d´は、この反射防止
膜8を形成する材料の屈折率をn´とすると、 d´=λ/(4n´) (2) に選ばれる。
【0025】さらに、この実施例による面発光レーザー
の基板面に垂直な側面には、 (1)式と同様な条件を満足
する膜厚を有する低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電
体膜とが交互に積層された高反射率の誘電体多層膜9が
形成されている。
【0026】一方、n型半導体基板1の裏面にはn側の
オーミック電極10が形成され、p型キャップ層6上に
はp側のオーミック電極11が形成されている。
【0027】次に、上述のように構成されたこの実施例
による面発光レーザーの製造方法について説明する。
【0028】図1に示すように、まず、例えば有機金属
化学気相成長(MOCVD)法や分子線エピタキシー
(MBE)法により、n型半導体基板1上に、DBR半
導体多層膜2、n型クラッド層3、活性層4、p型クラ
ッド層5およびp型キャップ層6を順次エピタキシャル
成長させる。
【0029】次に、p型キャップ層6の所定部分をエッ
チング除去して図1に示すような形状とした後、この除
去部に露出したp型クラッド層5の所定部分を活性層4
の直上までエッチング除去して溝7を形成する。この溝
7を形成するためのエッチングは、例えば反応性イオン
エッチング(RIE)法のようなドライエッチング法や
ウエットエッチング法により行うことができる。
【0030】次に、溝7の周辺の部分のp型クラッド層
5上に反射防止膜8を形成した後、p型キャップ層6上
にp側のオーミック電極11を形成するとともに、n型
半導体基板1の裏面にn側のオーミック電極10を形成
する。
【0031】次に、このようにしてレーザー構造が形成
されたn型半導体基板1を例えばバー状に劈開し、この
劈開面に誘電体多層膜9を形成した後、このバーをチッ
プ化する。なお、劈開を行う代わりに、ドライエッチン
グやウエットエッチングを行ってもよい。
【0032】以上のようにして、図1に示すような面発
光レーザーが完成される。
【0033】次に、この実施例による面発光レーザーの
動作原理について説明する。
【0034】いま、図1に示すようにx、y、z軸をと
り、マクスウェル方程式より、n型クラッド層3、活性
層4およびp型クラッド層5から成るDH構造の水平共
振器内に発生する光場の光の電界ベクトル成分Ey を求
めると、次式のようになる。ただし、活性層4の厚さ方
向の中心にx軸の原点をとり、また、活性層4の厚さを
dとする。 Ey =A exp(−κ(x−(d/2))) (x>d/2) Ey =B cos(ky x)+C sin(ky x)(d/2≧x≧−d/2) (3) Ey =D exp(κ(x+(d/2))) (x<−d/2) ここで、A、B、C、Dは定数、ky は波数ベクトルの
y成分である。また、κはky とκ2 +ky 2 =(n2
2 −n1 2 )k0 2 (ただし、n1 はn型クラッド層3
およびp型クラッド層5の屈折率、n2 は活性層4の屈
折率、k0 は真空中の光の波数)なる関係を有する量で
ある。
【0035】(3)式は、n型クラッド層3およびp型ク
ラッド層4では減衰解を有し、活性層4では振動解を有
することを意味する。
【0036】ここで、 (3)式に基づいて光強度|Ey
2 の分布を計算により求めた結果の一例を示すと、図2
に示すようになる。ただし、この計算においては、活性
層4として厚さ80nmのGaAs層(n2 =3.56
6)を用い、n型クラッド層3およびp型クラッド層5
としてそれぞれn型AlGaAs層およびp型AlGa
As層を用いた(n1 =3.287)。この場合、発振
されるレーザー光の波長は860nmである。
【0037】図2から明らかなように、n型クラッド層
3、活性層4およびp型クラッド層5から成るDH構造
の水平共振器が活性層4に関してx軸方向に対称な屈折
率分布を有することを反映して、活性層4の近傍に光場
が存在する。この場合、光強度|Ey 2 の分布の半値
幅は0.23μmであり、また、光強度|Ey 2 がそ
のピーク値の1/e2 (eは自然対数の底)になるとこ
ろでの分布の全幅で光場の大きさを示すとすると、それ
は約0.6μmになる。
【0038】この実施例による面発光レーザーにおいて
は、p型クラッド層5に形成された溝7は、活性層4の
近傍の光場の中に入っている。この溝7は、典型的に
は、活性層4から〜0.8μm以内の距離のところに形
成される。この場合、この溝7は光場の光に対する散乱
体として働く。すなわち、図3に示すように、動作時に
オーミック電極10、11の間に順方向電流を流すこと
により共振器内に発生する光場の光は、溝7により任意
の方向に散乱される。この溝7による散乱光のうちn型
半導体基板1と反対側(図3中、上方)に散乱された光
は、そのまま上面から出射される。また、溝7による散
乱光のうちn型半導体基板1側(図3中、下方)に散乱
された光は、反射鏡としてのDBR半導体多層膜2によ
りn型半導体基板1と反対側に反射され、従って上面か
ら出射されることになる。以上により、n型半導体基板
1と反対側に効率良くレーザー光を取り出すことができ
る。そして、これによって、水平共振器を用いて面発光
を実現することができる。
【0039】この場合、水平共振器の反射端面には高反
射率の誘電体多層膜9が形成されているため、この水平
共振器の反射端面から光が出射されるのを防止すること
ができる。また、溝7の上方の部分のp型キャップ層6
が除去されていることから、n型半導体基板1と反対側
に出射されるレーザー光がp型キャップ層6で吸収され
るのを防止することができる。さらにまた、溝7の周辺
の部分のp型クラッド層5上には反射防止膜8が形成さ
れているので、p型クラッド層5の上面の反射率を小さ
くすることができる。これらにより、n型半導体基板1
と反対側にレーザー光を一層効率良く取り出すことがで
きる。そして、これによって、面発光レーザーのしきい
値電流密度およびしきい値電流の低減を図ることがで
き、従って面発光レーザーの低消費電力化を図ることが
できる。
【0040】また、この実施例による面発光レーザーに
よれば、反射鏡としてのDBR半導体多層膜2を有する
ことにより、水平共振器内に発生する自然放出光がこの
DBR半導体多層膜2で反射されて活性層4に戻される
ため(いわゆるフォトンリサイクリング)、これによっ
ても従来の面発光レーザーに比べてしきい値電流密度の
低減を図ることができる。
【0041】さらに、この実施例による面発光レーザー
は、水平共振器構造を有することから、従来の垂直共振
器型の面発光レーザーに比べて、出力および信頼性の向
上を図ることができる。また、この実施例による面発光
レーザーは、従来の水平共振器型の面発光レーザーや曲
がり共振器型の面発光レーザーのように45度反射鏡や
回折格子を用いていないことから、製造プロセスが簡単
である上に、面発光レーザー1個当たりの占有面積を小
さくすることができることにより集積化する場合に有利
である。
【0042】さらにまた、光場の光に対する散乱体とし
て働く溝7の形状、大きさ、数などを適切に設計するこ
とにより、レーザー光のコヒーレンス性やビーム形状な
どのレーザー特性を任意に変えることができる。
【0043】次に、この実施例による面発光レーザーの
特性の測定結果の一例について説明する。ただし、この
測定には図4に示すような構造を有する面発光レーザー
を用いた。図4中、符号12は、図1においては図示さ
れていない絶縁膜を示す。また、図4においては、図1
に示されている反射防止膜8および誘電体多層膜9の図
示を省略した。
【0044】図4において、n型半導体基板1としては
n型GaAs基板、n型クラッド層3としては厚さ1.
5μmのn型Al0.45Ga0.55As層、活性層4として
は厚さ80nmのGaAs層、p型クラッド層5として
は厚さ1.5μmのp型Al0.45Ga0.55As層、p型
キャップ層6としてはp型GaAs層を用いた。DBR
半導体多層膜2としては、低屈折率の半導体膜2aとし
ての厚さ65.5nmのAl0.45Ga0.55As層と高屈
折率の半導体膜2bとしての厚さ59.5nmのGaA
s層とを20周期積層したものを用いた。このDBR半
導体多層膜2の反射率としては、〜90%が得られた。
DBR半導体多層膜2、n型クラッド層3、活性層4、
p型クラッド層5およびp型キャップ層6は、いずれも
MOCVD法により形成した。また、溝7としては、p
型クラッド層5を活性層4の直上〜0.2μmの深さま
でRIE法により基板面に対して垂直にエッチングする
ことにより形成された幅6μmの溝を用いた。さらに、
水平共振器の反射端面は劈開により形成し、この反射端
面に誘電体多層膜9としてAl2 3 膜とSi膜とを4
周期積層したものを形成した。この誘電体多層膜9の反
射率としては、約98%が得られた。この図4に示す面
発光レーザーの共振器長Lは300μmであり、ストラ
イプ幅Sは100μmである。
【0045】図4に示す面発光レーザーの光出力−電流
特性(L−I特性)の測定結果の一例を図5に示す。図
5より、光出力として十数mWが得られていることがわ
かる。この光出力の値は従来の垂直共振器型の面発光レ
ーザーに比較して数倍程度高い。また、図5より求めら
れるしきい値電流から計算されるしきい値電流密度は〜
0.7kA/cm2 であり、この値は通常の水平共振器
型の半導体レーザーのしきい値電流密度と同程度または
それ以下である。
【0046】図6は図4に示す面発光レーザーの遠視野
像(Far Field Pattern 、FFP)の測定結果の一例を
示す。図6の横軸の角度の定義を図7に示す。図6から
わかるように、ストライプ幅Sが100μmと大きいに
もかかわらず、FFPの半値全角は約26度になり、こ
れは同程度の広い発光面積を有する従来の垂直共振器型
の面発光レーザーで得られる半値全角の値〜10度に比
べて大きい。ここで、発光面積が広い従来の垂直共振器
型の面発光レーザーで得られる半値全角が小さいのは、
回折の効果がなくなることにより、出射されるコヒーレ
ンス性の高い光の波面が平面波に近くなるからである。
これに対して、図4に示す面発光レーザーで得られる半
値全角が従来の垂直共振器型の面発光レーザーで得られ
る半値全角に比べて大きいのは、空間的コヒーレンス性
が減少しているためであると考えられる。そして、この
ように図4に示す面発光レーザーが従来の垂直共振器型
の面発光レーザーとコヒーレンス性が異なるのは、溝7
による散乱光を用いて面発光を得ているためと考えら
れ、従って溝7の形状、大きさ、数などを変えることに
よって任意のコヒーレンス性を有するレーザー光を得る
ことができる。このような任意のコヒーレンス性を有す
るレーザー光が得られる面発光レーザーは、例えば、ス
ペックルノイズを小さくしたディスプレイ用の光源など
に用いることができる。
【0047】図1または図4に示す面発光レーザーにお
いては、四角柱状の水平共振器を用いているが、水平共
振器としては面発光の方向を軸とする柱状のものであれ
ば任意の形状のものを用いることができる。例えば、図
8Aに示すような三角柱状の水平共振器、図8Bに示す
ような円柱状の水平共振器、図8Cに示すような六角柱
状の水平共振器、さらには図8Dに示すような不規則な
断面形状を有する柱状の水平共振器を用いることができ
る。
【0048】さらに、散乱体として用いられる溝の断面
形状も、図9Aに示すような円、図9Bに示すような三
角形、図9Cに示すような十字形、図9Dに示すような
四角形、図9Eに示すような星形、図9Fに示すような
不規則な形など、任意の形状でよい。
【0049】また、光場の光に対する散乱体としては、
例えば、溝7中にp型クラッド層5を形成する材料より
も屈折率の大きい材料を埋め込んだものを用いてもよ
い。より詳細には、n1 <ns ≦n2 を満足する屈折率
s を有する材料を溝7中に埋め込むことにより散乱体
を構成してもよい。例えば、活性層4がGaAs層であ
り、n型クラッド層3およびp型クラッド層5がそれぞ
れn型AlGaAs層およびp型AlGaAs層である
場合、溝7中に埋め込む材料としては、n型クラッド層
3およびp型クラッド層5をそれぞれ形成するn型Al
GaAs層およびp型AlGaAs層よりもAl組成比
が小さいAlGaAs層を用いることができる。
【0050】さらに、上述の実施例においては、溝7を
エッチングにより形成しているが、エッチングを用いず
にこの溝7を形成するようにしてもよい。一例として、
選択成長を利用して溝7を形成する方法を図10に示
す。
【0051】この方法によれば、まず、図10Aに示す
ように、n型半導体基板1上にDBR半導体多層膜2、
n型クラッド層3、活性層4およびp型クラッド層5を
順次エピタキシャル成長させる。この時点におけるp型
クラッド層5の厚さは、最終的に必要な厚さの途中の厚
さにする。
【0052】次に、図10Bに示すように、p型クラッ
ド層5上の散乱体としての溝の形成予定領域上に、例え
ばSiO2 膜のような誘電体膜から成る所定形状のマス
ク13を形成する。このマスク13を形成する誘電体膜
の厚さをλ/(4n´)に設定することにより、このマ
スク13を図1に示す反射防止膜8としても使用するこ
とができる。
【0053】次に、図10Cに示すように、マスク13
を成長マスクとして用いて、このマスク13で覆われて
いない部分の表面に、残りの厚さのp型クラッド層5お
よびp型キャップ層6を選択的にエピタキシャル成長さ
せる。これによって、散乱体としての溝7を活性層4直
上の設計位置に再現性良く形成することができる。
【0054】次に、図10Dに示すように、水平共振器
の反射端面となる側面を例えばRIE法によるエッチン
グや劈開などにより形成した後、この側面に反射鏡とし
て誘電体多層膜(図示せず)を形成する。
【0055】上述の実施例による面発光レーザーにおけ
るn型クラッド層3、活性層4およびp型クラッド層5
から成るDH構造の水平共振器は、AlGaAs/Ga
Asヘテロ接合のほか、例えばAlGaInP/GaI
nPヘテロ接合やInP/GaInAsPヘテロ接合な
どの各種のIII−V族化合物半導体による半導体ヘテ
ロ接合、さらにはII−VI族化合物半導体による半導
体ヘテロ接合により形成するようにしてもよい。なお、
InP/GaInAsPヘテロ接合により水平共振器を
形成する場合、n型半導体基板1としては通常はn型I
nP基板が用いられる。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、光場の中に散乱体が設けられていることにより、製
造プロセスが簡単であり、集積化する場合に有利であ
り、しかも任意のコヒーレンス性やビーム形状を有する
レーザー光が得られる面発光レーザーを実現することが
できる。また、水平共振器構造とすることにより、高出
力かつ高信頼性の面発光レーザーを実現することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による面発光レーザーを示
す断面図である。
【図2】この発明の一実施例による面発光レーザーにお
ける面発光の方向の光強度分布の一例を示すグラフであ
る。
【図3】この発明の一実施例による面発光レーザーにお
ける面発光の原理を説明するための略線図である。
【図4】この発明の一実施例において光出力−電流特性
の測定を行った面発光レーザーを示す斜視図である。
【図5】図4に示す面発光レーザーについて測定された
光出力−電流特性の一例を示すグラフである。
【図6】図4に示す面発光レーザーについて測定された
遠視野像の一例を示すグラフである。
【図7】図6に示すグラフの横軸の角度の定義を示す略
線図である。
【図8】この発明による面発光レーザーにおいて用いら
れる水平共振器の他の例を示す斜視図である。
【図9】この発明による面発光レーザーにおいて散乱体
として用いられる溝の断面形状の他の例を示す平面図で
ある。
【図10】この発明による面発光レーザーにおいて散乱
体として用いられる溝の形成方法の他の例を説明するた
めの断面図である。
【符号の説明】
1 n型半導体基板 2 DBR半導体多層膜 3 n型クラッド層 4 活性層 5 p型クラッド層 6 p型キャップ層 7 溝 8 反射防止膜 9 誘電体多層膜
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−32979(JP,A) 特開 昭56−96887(JP,A) 特開 平3−270189(JP,A) 特開 昭62−248283(JP,A) 特開 平1−120881(JP,A) 特開 平3−257888(JP,A) 実開 昭57−130455(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 5/00 - 5/50

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水平共振器構造を有し、動作時にこの水
    平共振器内に発生する光場の中に散乱体が非周期的に
    けられていることを特徴とする面発光半導体レーザー。
  2. 【請求項2】 上記散乱体は活性層の近傍に設けられて
    いることを特徴とする請求項1記載の面発光半導体レー
    ザー。
  3. 【請求項3】 上記散乱体は溝であることを特徴とする
    請求項1記載の面発光半導体レーザー。
  4. 【請求項4】 上記散乱体は高屈折率の材料から成るこ
    とを特徴とする請求項1記載の面発光半導体レーザー。
  5. 【請求項5】 上記光場の光を基板と反対側に反射させ
    るための第1の反射鏡が設けられていることを特徴とす
    る請求項1記載の面発光半導体レーザー。
  6. 【請求項6】 上記水平共振器の反射端面に第2の反射
    鏡が設けられていることを特徴とする請求項1記載の面
    発光半導体レーザー。
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