JP3223520B2 - 防菌防カビ性を有する建築用基材 - Google Patents

防菌防カビ性を有する建築用基材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】[発明の背景]
【産業上の利用分野】本発明は、防菌防カビ性を有する
建築用基材に関し、さらに詳しくは防菌防カビ性を有す
る、水と反応してアルカリ性を呈するセメント、石膏な
どの建築用基材に関する。
【0002】
【従来の技術】一般住宅、集合住宅、一般オフィスビ
ル、ホテルなどでは、構造的な気密性の向上および暖房
器具の普及などによって結露が生じやすく、また建築材
料に含まれる水分によってカビが生育しやすい環境がし
ばしば見られる。このような環境の中でカビは、室内装
飾として使用される壁紙、塗料、接着剤などに含まれて
いる有機化合物を栄養源として生育している。
【0003】これまでに知られている防菌防カビ対策と
しては、建築物の内装工事を行う際の塗料または接着剤
などに防菌防カビ剤を混入することが行われている。使
用される防菌防カビ剤としては、2−(4−チアゾリ
ル)−ベンズイミダゾール(特開昭54−127960
号公報)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチル
スルホニルピリジン(特開昭51−106158号公
報)、トリオルガノスズ(特開昭57−133150号
公報、特開昭57−96044号公報)などが知られて
いる。
【0004】しかしながら、これら資材に混入できる防
菌防カビ剤の絶対量には制限があるなどのため、十分な
防菌防カビ活性を付与できないでいるのが現状であっ
た。さらに、これらの防菌防カビ剤は一般家庭で最もカ
ビの被害が目立つ浴室内の目地、一方が外部に面した壁
の内側に施された内装の壁紙、床面に敷かれた絨毯など
においてはほとんど防菌防カビ効果をあげることができ
なかった。
【0005】一方、現在まで、セメント、石膏、目地材
などの建築用基材へ防菌防カビ剤を混入して建築用基材
自体に防菌防カビ性を付与したとの報告はなされていな
い。それは、これらの建築用基材自体に防菌防カビ性を
付与するためには前記した内装工事用の資材に比べてさ
らに大量の防菌防カビ剤を混入しなければならないこと
が一般的に想像され、また防菌防カビ剤の添加には建築
用基材の物性そのものに悪影響をおよぼす可能性が存在
したからである。さらにこれらの建築用基材の多くはそ
の成形過程、硬化過程または保存状態などにおいて水と
反応してアルカリ性を呈するものが多く、このアルカリ
性によって防菌防カビ剤が分解などされ、防菌防カビ活
性が消失してしまうと考えられていたからである。事
実、本発明者らは現在広く使用されている防菌防カビ剤
の多くがこれら建築用基材への混入によって殆ど防菌防
カビ活性を示さなくなってしまうことを確認している。
【0006】[発明の概要]
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、水と
反応してアルカリ性を呈する建築用基材であって防菌防
カビ性を有するものを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によるによる建築
用基材は、水と反応してアルカリ性を呈する建築用基材
であって、下記の一般式(I)で表される化合物を添加
してなることを特徴とするもの、である。
【化2】 (式中、X、XおよびXは、同一または異なって
いてもよく、それぞれ塩素、臭素またはヨウ素原子を表
し、RおよびRは、同一または異なっていてもよ
く、それぞれ水素原子または低級アルキル基を表し、R
は、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルカノイルオ
キシまたはイミダゾリル基を表し、そしてnは1〜4の
整数を表す。)
【0008】従来、大量の防カビ剤の混合が必要であり
かつその防カビ剤添加の効果が期待されていなかった水
と反応してアルカリ性を呈する建築用基材において、一
般式(I)で表される化合物が強い防カビ活性と幅の広
い抗カビスペクトルを有効に発揮するものであったこと
は思いがけないことであった。
【0009】[発明の具体的説明]本発明による防カビ
性を有する建築用基材は、前記一般式(I)で表される
化合物を含有してなるものである。前記一般式(I)で
表される化合物は公知化合物であり(特公昭53−20
006号公報、特公昭53−20484号公報、特公昭
56−33373号公報、特公昭63−7170号公
報、特公昭63−41375号公報、特公平1−322
20号公報、特公平2−20636号公報、特開昭57
−112341号公報参照)、市販もしくは公知の製造
法またはそれに類似する製造法によって容易に入手可能
である。
【0010】前記一般式(I)において、低級アルキル
基、低級アルコキシ基および低級アルカノイルオキシ基
中のアルキル基部分は、好ましくは直鎖または分枝状の
〜6アルキル基、より好ましくはC1〜3アルキル
基を表す。本発明において好ましい化合物群としては、
、XおよびXがヨウ素または臭素であり、R
およびRが水素原子またはメチル基であり、Rが水
酸基、メトキシ基、エトキシ基またはイミダゾリル基で
あり、nが1または2であるものが挙げられる。特に、
好ましい化合物の具体例としては、2,2,3−トリヨ
ードアリルアルコール、3−ブロモ−2,3−ジヨード
アリルアルコール、3−クロロ−2,3−ジヨードアリ
ルアルコール、3−ブロモ−2,3−ジヨードアリルメ
チルエーテル、2,2,3−トリヨードアリルメチルエ
ーテル、2,2,3−トリヨードアリルエチルエーテ
ル、1−(2´,3´,3´−トリヨードアリル)イミ
ダゾールなどが挙げられる。
【0011】本発明において防カビ活性が付与される建
築用基材とは、例えば成形過程、硬化過程または保存状
態などにおいて水と反応してアルカリ性を呈するもので
ある。具体例としてはカルシウム化合物(例えば、炭酸
カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなど)
を主成分とし、水と反応することによって硬化するする
ものであり、タイル用目地材、大理石用目地材、テラゾ
ー用目地材などの目地材、ポルトランドセメント、コン
クリートパネル、セメントモルタル、セメントフィラ
ー、セメント系吹付材、スレートボード、生コンクリー
トなどのセメント材料、石膏などが挙げられる。これら
の建築用基材は水と反応するとき(例えば成形過程、硬
化過程または保存状態において)、アルカリ性を呈し、
そのアルカリ性は通常pH8.0〜13.0、場合によ
ってはpH12.0〜13.5を呈する。前記のような
高アルカリ領域においては、多くの防菌防カビ剤は加水
分解などにより分解され、その活性を失ってしまう。一
方、前記一般式(I)で表される化合物は、前記のよう
な高アルカリ領域、特にpH10以上、においても安定
してその活性を発揮する。
【0012】前記建築用基材への一般式(I)で表され
る化合物の添加は、成形過程または硬化過程の前の行
う。すなわち、一般式(I)で表される化合物は、粉末
状の建築用基材にまたは水と混合され未だ成形または硬
化されていない建築用基材に添加される。十分混合され
た後、その混合物は成形または硬化過程に付される。ま
た、成形されたが未だ硬化されていない前記建築用基材
の表面に塗布、吹き付けなどすることによって、一般式
(I)で表される化合物をその表面付近のみに含有させ
ることも可能である。一般式(I)で表される化合物の
添加量は、建築用基材の種類、それが用いられる態様に
よって適宜決定できるが、乾燥状態の建築用基材100
重量部に対して、0.01〜30.0重量部、好ましく
は0.1〜5.0重量部程度である。
【0013】本発明による建築用基材は、従来その建築
用基材が用いられた方法及び態様と同様にして利用する
ことが可能である。すなわち、タイルの目地材、ビルの
主要構造部分を構成するコンクリート、パネル工法また
はツーバイフォー工法などに用いるコンクリートパネ
ル、スレートボード、石膏ボード、耐火ボード、生コ
ン、モルタル、プラスターなどの形で利用できる。これ
らの建築用基材はそれ自体で防菌防カビ活性を有するも
のであることから、これらの基材の上に接して施される
内装資材へのカビの付着、生育を防止することができ
る。さらに室内装飾に限らず、外壁にあってもカビの付
着、生育を阻止でき、また、土壌と接触する部分におい
ては土壌中の微生物による腐食を抑制することができ
る。また、前記一般式(I)は従来防カビ剤としての用
途を本来有しているものでもあるが、ハロゲン原子を有
しているためか、紫外線などによって着色してしまうこ
とがあった。そのため使用場所、使用方法などが制限さ
れるものであった。しかし、本発明においては、多くの
場合、紫外線に晒されにくい場所にある建築用基材であ
るので着色は実用上ほとんど問題とならないため、有利
である。
【0014】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。また、前記一般式(I)で表される化合物は、前記
した通り、既知化合物であり、微生物防除剤、殺ダニ
剤、水中防汚塗料、製紙用スライム防除剤、害虫忌避
剤、防蟻剤、殺菌剤および防カビ剤としての用途が知ら
れている(特公昭50−2731号公報、特開昭57−
116002号公報、特開昭57−64602号公報、
特開昭57−193401号公報、特公昭58−220
82号公報、特開昭59−227960号公報、特開昭
59−227959号公報、特開昭61−254502
号公報、特開昭62−238203号公報、特開昭63
−44504号公報、特開平1−125303号公報、
特公平2−3761号公報、特開平2−49217号公
報参照)。これらの抗微生物作用のメカニズムについて
は明らかではないが、これらの既知化合物の挙動の類似
は明らかである。従って、これら一般式(I)で表され
る化合物の中で入手の容易な2,3,3−トリヨードア
リルアルコールを下記実施例において用いた。
【0015】実施例1 目地材 目地材に、トリヨードアリルアルコールを添加し、一般
家庭で最も良く分離される菌種の標準菌株に対する防カ
ビ効果を確認した。ます、市販の目地材(日立化成工業
株式会社製、NSメジセメント)100重量部に対して
トリヨードアリルアルコールを0.1重量部、0.5重
量部または1.0重量部、そして水を添加して練り、耳
たぶ程度のかたさとした後、2.5cm四方、2mmの厚さ
に成形し試験片とした。試験片調製時の目地材のpHは
12.3であった。この試験片を下記実験に用いるまで
炭酸ガスインキュベーターに保存したところ、pHは
8.8となった。この試験片を、90mm径のシャーレ中
央におき、ポテトデキストロース寒天培地25mlを加え
て固化させた。固化した寒天上に各試験菌の胞子懸濁液
(1.0×10個/ml)0.1mlを塗布し、28℃で
7日間インキュベートした。7日後にシャーレ上に生じ
た生育阻止帯の面積のシャーレ全体の面積に対する割合
を求め、それを生育阻止率とした。その値は次の第1表
に示される通りである。
【0016】 第1表 トリヨードアリルアルコールの生育阻止率 生育阻止率(%) 菌名 株 0.1重量部 0.5重量部 1.0重量部 クラドスポリウム IFO-31677 57.8 100.0 100.0 アルテルナリア IFO-31805 50.0 100.0 100.0 ウロクラディウム IFO-9210 51.1 100.0 100.0 オウレオバシディウム IFO-6353 70.0 100.0 100.0 トリコデルマ IFO-31137 0.0 100.0 100.0フォーマ IFO-5287 26.7 100.0 100.0
【0017】実施例2 セメント セメントに、トリヨードアリルアルコールを添加し、前
記実施例1と同様の菌株に対する防カビ効果を確認し
た。ます、市販のセメント(家庭化学工業社製、防水セ
メント)100重量部に対してトリヨードアリルアルコ
ールを0.1重量部、0.5重量部または1.0重量
部、そして水を添加して練り、耳たぶ程度のかたさとし
た後、2.5cm四方、2mmの厚さに成形し試験片とし
た。試験片調製時のセメントのpHは12.8であっ
た。この試験片を下記実験に用いるまで炭酸ガスインキ
ュベーターに保存したところ、pHは8.9となった。
この試験片を、実施例1と同様にして、その生育阻止率
を求めた。その値は次の第2表に示される通りである。
【0018】 第2表 トリヨードアリルアルコールの生育阻止率 生育阻止率(%) 菌名 株 0.1重量部 0.5重量部 1.0重量部 クラドスポリウム IFO-31677 56.5 100.0 100.0 アルテルナリア IFO-31805 59.8 100.0 100.0 ウロクラディウム IFO-9210 52.3 100.0 100.0 オウレオバシディウム IFO-6353 68.3 100.0 100.0 トリコデルマ IFO-31137 20.1 100.0 100.0フォーマ IFO-5287 32.8 100.0 100.0
【0019】実施例3 石膏 石膏に、トリヨードアリルアルコールを添加し、前記実
施例1と同様の菌株に対する防カビ効果を確認した。ま
す、市販の石膏(和気産業販売、石膏)100重量部に
対してトリヨードアリルアルコールを0.1重量部、
0.5重量部または1.0重量部、そして水を添加して
練り、耳たぶ程度のかたさとした後、2.5cm四方、2
mmの厚さに成形し試験片とした。試験片調製時の石膏の
pHは7.8であった。この試験片を、実施例1と同様
にして、その生育阻止率を求めた。その値は次の第3表
に示される通りである。
【0020】 第3表 トリヨードアリルアルコールの生育阻止率 生育阻止率(%) 菌名 株 0.1重量部 0.5重量部 1.0重量部 クラドスポリウム IFO-31677 68.3 100.0 100.0 アルテルナリア IFO-31805 75.3 100.0 100.0 ウロクラディウム IFO-9210 72.6 100.0 100.0 オウレオバシディウム IFO-6353 89.1 100.0 100.0 トリコデルマ IFO-31137 52.8 100.0 100.0フォーマ IFO-5287 60.4 100.0 100.0
【0021】比較例1 実施例1と同様の目地材100重量部に、トリヨードア
ルコール(TIAA)、2−(4−チアゾリル)−ベン
ゾイミダソール(TBZ)または2,3,5,6−テト
ラクロロイソフタロニトリル(TCIN)を0.5重量
部添加して、実施例1と同様の試験片を調製した。試験
片調製時の目地材のpHは添加した防カビ材に関係なく
12.5であった。この試験片を炭酸ガスインキュベー
ターに保存したところ、pHは8.4となった。この試
験片を、実施例1と同様にして、90mm径のシャーレ中
央におき、ポテトデキストロース寒天培地25mlを加え
て固化させた。固化した寒天上に各試験菌の胞子懸濁液
(1.0×10個/ml)0.1mlを塗布し、28℃で
7日間インキュベートした。7日後に、菌株の生育が抑
制される程度を評価した。その結果は次の第4表に示さ
れる通りである。
【0022】 第4表 各種防カビ剤の目地材中での防カビ活性 菌名 株 TIAA TCIN TBZ クラドスポリウム IFO-31677 − ++ ++ アルテルナリア IFO-31805 − +++ +++ ウロクラディウム IFO-9210 − +++ +++ オウレオバシディウム IFO-6353 − ++ +++ トリコデルマ IFO-31137 − ++ +++フォーマ IFO-5287 − +++ +++
【0023】比較例2 実施例2と同様のセメント100重量部に関して、比較
例1と同様の方法によってその防カビ活性を比較した。
その結果は次の第5表に示される通りである。 第5表 各種防カビ剤のセメント中での防カビ活性 菌名 株 TIAA TCIN TBZ クラドスポリウム IFO-31677 − ++ +++ アルテルナリア IFO-31805 − +++ +++ ウロクラディウム IFO-9210 − +++ +++ オウレオバシディウム IFO-6353 − ++ +++ トリコデルマ IFO-31137 − ++ +++フォーマ IFO-5287 − +++ +++
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C04B 24/00 C04B 24/00 24/02 24/02 24/12 24/12 Z E04B 1/62 E04B 1/62 Z (72)発明者 蓮 池 寛 神奈川県茅ケ崎市本村2丁目8番1号 東陶機器株式会社 茅ケ崎工場内 (72)発明者 高 橋 一 雄 神奈川県茅ケ崎市本村2丁目8番1号 東陶機器株式会社 茅ケ崎工場内 (56)参考文献 特開 昭58−36958(JP,A) 特開 昭49−1720(JP,A) 特開 昭58−105971(JP,A) 実開 昭63−34132(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 2/00 - 32/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水と反応してアルカリ性を呈する建築用基
    材であって、 下記の一般式(I)で表される化合物を添加してなるこ
    とを特徴とし、 水と反応して呈するアルカリ性のpHが10以上であ
    る、建築用基材。 【化1】 (式中、 X、XおよびXは、同一または異なっていてもよ
    く、それぞれ塩素、臭素またはヨウ素原子を表し、 RおよびRは、同一または異なっていてもよく、そ
    れぞれ水素原子または低級アルキル基を表し、 Rは、水酸基、低級アルコキシ基、または低級アルカ
    ノイルオキシ基を表し、そしてnは1〜4の整数を表
    す。)
  2. 【請求項2】一般式(I)で表される化合物を0.01
    〜30重量部添加してなる、請求項1記載の建築用基
    材。
  3. 【請求項3】一般式(I)で表される化合物が2,3,
    3−トリヨードアリルアルコールである、請求項1また
    は2に記載の建築用基材。
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