JP3221889B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体電解質としてTC
NQ錯体を用いた固体電解コンデンサの製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】表面に陽極酸化皮膜を有する弁作用金属
からなる陽極体電極と該電極に対向して構成された陰極
用電極との間に固体電解質を介在させてなる従来の固体
電解コンデンサにおいては、固体電解質として二酸化マ
ンガンが用いられてきた。
【0003】しかしながら、この方法は二酸化マンガン
を電極上に形成させる際に、一般に陽極体電極を硝酸マ
ンガン溶液に浸漬させた後、加熱分解を行なうため、陽
極酸化皮膜が損傷をうけること、加えて二酸化マンガン
による陽極酸化皮膜の皮膜修復性が乏しいという欠点が
あった。
【0004】これらの欠点を補う方法としてTCNQ錯
体などの有機半導体を固体電解質として用いた固体電解
コンデンサが出現している。この含浸方法に関する代表
的な例として特開昭57-173928号公報に記載されている
ようにTCNQ錯体を含む有機半導体を加熱融解により
液化させ、分解にいたるまでの間に素子を入れ、急冷固
化させるものである。
【0005】しかしながら、この方法によれば、用いる
TCNQ錯体は融解点と分解点を有し、かつその温度間
隔がある程度なければ含浸性が極端に悪くなる。TCN
Q錯体の分解点はTCNQの昇華温度の290℃付近であ
り、融解点と分解点の温度幅をもたせるためには、どう
しても融解温度を下げることになる。
【0006】一方において、固体電解コンデンサには耐
熱性が要求されており、特にチップ製品については面実
装時に半田ディップ、リフロ−の温度に耐えられる電解
質でなくてはならず、従来の融解含浸法に適したTCN
Q錯体では上記の耐熱性に耐えられるものは、かなり困
難である。即ち耐熱性に優れたTCNQ錯体は融解点も
高く分解点との温度差も少なくなるので含浸性が極端に
悪くなる。逆に含浸性を良好にしようとすれば融解点が
低温側になるので耐熱性が極端に悪くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題点
を解決することである。即ち耐熱性錯体は融解点が高く
分解点との差が充分なくて含浸が不可能であったが本発
明により可能ならしめ、また電極表面とTCNQ錯体の
接合性が強固となりコンデンサのtanδの改良を図っ
たものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の具体的手法とし
ては、(1)陽極用電極が拡大された表面及び該表面に
陽極酸化皮膜を有する弁作用金属もしくは該金属の合金
よりなると共に固体電解質としてTCNQ錯体を用いる
固体電解コンデンサの製造方法において、TCNQとド
ナ−材塩と支持電解質との溶液に該陽極用電極を浸漬
し、アノ−ド電解反応によりTCNQ錯体を陽極用電極
上に生成、析出させることにより含浸させることを特徴
とする固体電解コンデンサの製造方法。 (2)弁作用金属がアルミニウムまたはその合金である
ことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ
の製造方法である。本発明の方法において使用する弁作
用金属とは、その酸化物が電気絶縁体(誘電体)となる
金属のことであって、周期表の3族、4族及び5族金属
を指し、例えばAl、Ti、Zr、Hf、Ta、Nbな
どであるが、特にAlがコスト的に安価で又電解エッチ
ング処理などにより表面積拡大が容易で高い静電容量が
得られるなどの点で好適に使用される。該金属の合金と
は、Al−Ti、Al−Zr、Al−Hf、Al−T
a、Al−Nb、などと、AlとTi、Zr、Hf、T
a、Nbの複数組合せ合金などがある。また、ドナ−材
とは、TCNQ錯体において安定な対カチオンを与える
物質であって、電子供与物質が使用される。好適なドナ
−材の例は、キノリン、イソキノリン、インド−ル、キ
ナゾリン、キノキサリン、カルバゾ−ル、アクリジン、
フェナントリジン、フェナジン、あるいはその誘導体の
比較的沸点の高い芳香族アミン類である。ドナ−材塩と
は、ドナ−材の塩のことであり、4級塩及びプロトン酸
塩の両者を包含する。ドナ−材の4級塩は、例えばドナ
−材とハロゲン化アルキルとの反応により調製される。
ハロゲン化アルカリとしては、炭素数1〜16、特に1
〜10の直鎖状または分枝鎖状アルキルの塩化物、臭化
物または沃化物を使用しうるが、特にアルミもしくはア
ルミ合金での含浸に適し、反応が効率よく進行する点
で、沃化物が望ましい。また、ドナ−材の4級化塩の対
イオンとして、ハロゲンイオン以外に、硫酸イオン、ス
ルホン酸イオンも使用しうる。また、ドナ−材のプロト
ン酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スル
ホン酸塩、燐酸塩、硝酸塩などが挙げられる。
【0009】本発明の基本的な考えは、液状のTCNQ
錯体原料を用いて電着法によりコンデンサの陽極用電極
上に固体のTCNQ錯体を析出させることにより、TC
NQ錯体を該電極に効率よく含浸させることにある。19
70年代後半より有機電気化学の著しい発展は、様々な分
野に多大な貢献をしているが、本発明もこうした背景よ
り見いだされたものである。即ち有機電解では、電解溶
液−支持電解質−電極の組合せ選択により活性反応種の
反応制御が可能になってきたからである。TCNQ錯体
の電極生成反応はTCNQの電解酸化でのラジカル生成
とドナ−材との有機合成反応との抱き合わせによって起
こると考えた。そこで本発明者は各種検討を繰り返し電
極上で導電性錯体が生成できる条件を見いだすに至っ
た。
【0010】即ち、陽極用電極として例えばエッチング
処理で表面が拡大され、該表面に酸化皮膜の誘電体皮膜
が形成された弁作用金属からなるものを用い、電極での
電子移動過程での挙動に着目しながら、TCNQ錯体生
成反応が生起する条件を探索した。その結果、上記のよ
うに、TCNQとドナ−材塩と支持電解質との溶液に該
陽極用電極を浸漬し、アノ−ド電解反応により、TCN
Q錯体を該電極上に析出させることにより良好なものが
得られることが判明した。この際、溶媒としては、TC
NQ及びドナ−材塩の比較的溶け易いものが好ましく、
特に塩化メチレン、アセトニトリルなどの使用が好まし
い。この反応の実施にあたっては、支持電解質を用い
、好適な支持電解質としては、パラトルエンスルホン
酸などを例示しうる。
【0011】
【実施例1】以下、本発明の具体的実施例について述べ
る。厚さ90μmの高純度アルミニウム箔(純度99.99%)
を交流により電解エッチングを行い、約80倍に拡大され
た表面積を有する電極箔を作製し、中性燐酸溶液にて20
V化成を行い、誘電体皮膜を形成させた。(電極A)
【0012】上記電極を、ノルマルオクチルキノリン+
沃化物と過剰のTCNQ及びパラトルエンスルホン酸と
を塩化メチレンに溶かした溶液中に浸漬させ、電流5m
Aで5時間定電流アノ−ド反応をおこなわせた。次いで
乾燥させた後コロイダルカ−ボンを塗布形成し、さらに
銀ペ−ストで陰極リ−ドを取り出しエポキシ樹脂で外装
し、10V33μFの固体電解コンデンサを作製した。
また比較のため、現在行なわれている融解含浸法も行い
特性調査を行なった。
【0013】
【実施例2】厚さ40μmのAl90Zr10合金箔を超急冷
法により作製し、芯材として99.99%アルミ箔70μm厚み
のものを用い、三層クラッド電極箔を作製した。その後
電解エッチングを行い、CV積として約4000μFV/cm
2 を有する電極箔とし、中性燐酸溶液にて20V化成を行
い、誘電体皮膜を形成させた。(電極B)
【0014】上記電極を、Nメチル1,10オルトフェ
ナントロリン+ 沃化物と過剰のTCNQ及びパラトルエ
ンスルホン酸とを塩化メチレンに溶かした溶液中に浸漬
させ、電流10mAで5時間定電流アノ−ド反応をおこ
なわせた。次いで乾燥させた後コロイダルカ−ボンを塗
布形成し、さらに銀ペ−ストで その後コロイダルカ−
ボンを塗布形成し、さらに銀ペ−ストで陰極リ−ドを取
り出しエポキシ樹脂で外装し、10V100μFの固体
電解コンデンサを作製した。また比較のため、現在行な
われている融解含浸法も行い特性調査を行なった。
【0015】実施例1の結果を表1に、実施例2の結果
を表2にそれぞれ示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【発明の効果】表1、表2に示したように、本発明によ
って処理された製品はtanδの改良に加え、静電容量
の増大に見られるように含浸性も向上されている。また
従来の融解含浸法と比較しても良い特性を示している。
また従来の融解含浸法では不可能であった融点を持たな
いTCNQ錯体でも含浸が可能となり、工業的かつ実用
的価値大なるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 9/028

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極用電極が拡大された表面及び該表面
    に陽極酸化皮膜を有する弁作用金属もしくは該金属の合
    金よりなると共に固体電解質としてTCNQ錯体を用い
    る固体電解コンデンサの製造方法において、TCNQと
    ドナ−材塩と支持電解質との溶液に該陽極用電極を浸漬
    し、アノ−ド電解反応によりTCNQ錯体を陽極用電極
    上に生成、析出させることにより含浸させることを特徴
    とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 【請求項2】 弁作用金属がアルミニウムまたはその合
    金であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コ
    ンデンサの製造方法。
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