JP3221349B2 - 熱線反射膜 - Google Patents

熱線反射膜

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JP3221349B2
JP3221349B2 JP07531797A JP7531797A JP3221349B2 JP 3221349 B2 JP3221349 B2 JP 3221349B2 JP 07531797 A JP07531797 A JP 07531797A JP 7531797 A JP7531797 A JP 7531797A JP 3221349 B2 JP3221349 B2 JP 3221349B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤外線等の熱線を
反射する熱線反射膜に係わり、特に、銀系薄膜と、この
銀系薄膜を挟持する透明酸化物薄膜とからなる3層構成
の熱線反射膜の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】グロス(Groth)による米国特許第
4,327,967号明細書には、窓ガラス上に2より大きな屈
折率を有する干渉膜を形成した後、その干渉膜上に熱線
反射性金膜を形成し、さらにその上に、クロム、鉄、ニ
ッケル、チタン、またはそれらの合金の灰色化膜を形成
した、灰色の外観を有する熱線反射性窓ガラスが記載さ
れている。また、ハート(Hart)による米国特許第
4,462,883号明細書には、ガラス等の透明基体上に、銀
もしくは、銀以外の少量の金属層および、金属酸化物の
反射防止膜を積層形成した低放射性被膜が記載されてい
る。なお、この反射防止膜には、酸化スズ、酸化チタ
ン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ビスマス、また
は、酸化ジルコニウムでも良い旨記載されている。
【0003】窓ガラスおよび、太陽電池等に用いる熱線
反射膜は、可視光波長域で大きな透過性を持たなければ
ならない。また、美的理由から、熱線反射膜は低い光反
射性を持つほうが良く、無彩色すなわち、透明ないしグ
レーであることが好ましい。また、一般的に、上述した
ような高透過性の熱線反射膜は、可視光の反射を抑える
ために、例えば 1.8以上と大きな屈折率を有する金属酸
化物層に挟まれた、金属層を有するものである。なお、
金属層として、金、銀、銅等があげられるが、一般的に
は銀が用いられている。上述したように、従来法で記載
されている金属酸化物層には、酸化スズ、酸化亜鉛、酸
化インジウム、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化ジルコ
ニウムおよび酸化鉛が含まれるものである。上記銀薄膜
を酸化物で挟持する構成の多層膜が優れた可視光線透過
率と赤外線反射率を有することは公知の事実である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記記載の例以外に
も、種々の金属や酸化物、樹脂等で銀合金層を挟持した
3層構成の透明熱線反射膜が発表されているが、かかる
構成の熱線反射膜では、可視光域の透過率が低い等の問
題があり、さらに、湿度に弱く、室内放置で簡単にシミ
が発生し、この3層構成が水分存在下で破壊されてしま
うという重欠点がある。
【0005】本発明は、以上のような問題点に鑑みなさ
れたものであり、その課題とするところは、薄膜で可視
光線透過率と赤外線反射率が高く、しかも耐湿性が高
く、経時安定性に優れた熱線反射膜を提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、上
記課題を解決するために、銀系薄膜と、この銀系薄膜を
挟持する透明酸化物薄膜とからなる3層構成の熱線反射
膜において、銀系薄膜が、1.5at%(原子パーセン
ト)以上10at%(原子パーセント)以下の金元素を
含有し、かつ、透明酸化物薄膜が、酸化スズより高屈折
率の酸化物を添加した、酸化スズを基材とする非晶質で
あり、また、透明酸化物薄膜の光波長450nmでの消
衰係数(k)が0.07より小さいことを特徴とする熱
線反射膜としたものである。
【0007】3層構成の熱線反射膜において、酸化イン
ジウムなどの酸化物薄膜との結晶粒界では銀が移動しや
すく、この銀と水分の存在で酸化物との反応が除々に進
み、構成を破壊する傾向にある。同時に銀の凝集が進行
することが観察された。この傾向は、銀と固溶域の広い
金属の金属酸化物の場合が顕著であることを、本発明者
らは見い出した。酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛
単体でも3層構成の熱線反射膜において耐湿性が充分で
はない。
【0008】しかし、本発明者らは、酸化スズに、以下
に記すような金属の酸化物を 5%以上、好ましくは10%
以上添加することにより、透明酸化物薄膜は非晶質とな
るため、結晶粒界が無くなり、あるいは極めて微細な結
晶の膜となり、また銀の移動が少なくなり、3層構成の
熱線反射膜の耐湿性を大きく改善することを発見した。
添加する金属には、チタン、クロム、ジルコニウム、ハ
フニウム、ニオブ、タンタルなど高融点の遷移金属、セ
リウムなどのランタン系金属、ケイ素、ビスマス、ゲル
マニウムなどの半金属がある。これら金属は、銀合金に
対する固溶域が極めて小さいか、固溶域のない金属であ
る。これらの酸化物の添加により耐湿性が向上する。た
だし、これら銀と固溶しにくい金属の酸化物は、銀との
密着力が不十分なため、銀と固溶しやすい金属の酸化物
と混合して、3層構成の熱線反射膜に用いる透明酸化物
薄膜とする必要がある。
【0009】なお、ITO(酸化インジウムと酸化スズ
の混合酸化物)のように結晶化した酸化物では、Ag
(銀)ないしAg(銀)イオンが結晶粒界を移動しやす
く、これが〔ITO/Ag/ITO〕とした3層構成で
の劣化の引き金となる。
【0010】また、耐湿性の観点から、酸化スズ混合酸
化物に酸化ガリウムを添加した非晶質の透明酸化物を用
いることは、さらに好ましい。
【0011】上記金属酸化物の中では、チタン、ジルコ
ニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタルなどは、これら
を混合することによりスパッタレート(成膜速度)が低
下する問題がある。ケイ素は軽元素であり、屈折率が低
いため、銀系薄膜を挟持する3層構成の酸化物として用
いるには、製造面で最適光学特性を得ることが比較的難
しい。
【0012】化学的に安定で、スパッタレート(成膜速
度)が速い酸化物として、酸化スズ、酸化セリウム、酸
化ガリウムがあげられる。ただし、酸化スズ−酸化ガリ
ウムの2元系の薄膜は、分光エリプソメーターによる測
定値で、可視域短波長側の消衰係数(k)が0.07よ
り大きく、特に光波長 500nm以下の短波長(例えば光波
長 450nm)の透過率が悪くなるという問題がある。ま
た、短波長の透過率が悪いと、透過光が黄色く着色する
ものである。
【0013】酸化スズ−酸化セリウムの2元系では、こ
の透過率の問題はないが、耐湿性がやや不十分である。
本発明者らは、酸化スズ−酸化ガリウム−酸化セリウム
の3元系とすると、2元系で抱えていた問題が無くなる
ことを見いだした。
【0014】銀は、蒸着やスパッタリングなどの真空時
にかかる熱やプラズマの影響で、凝集しやすい。また、
マイグレーション等で移動しやすく、銀を用いた電子デ
バイスの信頼性を損ないやすい。特に、これは太陽電池
等で問題となるといえる。この問題を避けるために、
1.5at%(原子パーセント)以上の金元素を銀に添加す
ることが有効である。しかし、この金元素の添加量が多
くなると、3層膜の光透過率を減少させる傾向にあり、
さらに金は高価であるため、コストの点で少量添加が好
ましいといえ、例えば10at%以下が好ましいといえる。
【0015】銀薄膜への金元素の添加は、赤外線反射率
および可視光透過率を低下させることなく、移動しやす
い銀の動きを抑制するため、3層膜の耐湿性向上に有効
である。すなわち、請求項1、2の発明となる。
【0016】また、短波長域での消衰係数(k)が大き
いと、可視光の透過率が低下してしまい、好ましくな
い。このため、高屈折率の酸化物である酸化セリウム
を、透明酸化物薄膜への混合酸化物として添加した場
合、短波長域の消衰係数(k)を小さくする特異な効果
があり、可視光の透過率の低下を防ぐ意味でも好まし
い。また本発明者らは、光波長 450nmでの透明酸化物薄
膜の消衰係数(k)が0.07より小さければ、可視光
域で実用上十分な透過率を有する熱線反射膜が得られる
ことを経験的に得ているものである。すなわち、短波長
側の消衰係数(k)を0.07より小さくすることを提
案するものである。
【0017】この効果は、添加するセリウムの原子パー
セント(酸素元素をカウントせず、金属元素のみをカウ
ント)にて 3at%から次第に顕著となってくる。また、
酸化セリウムの添加量が、セリウム元素換算で40at%を
超えるとスッパタリングに用いるターゲットが割れやす
くなる。これより、セリウム元素の添加割合は 3〜40at
%の範囲が良いといえる。従って、請求項3に係わる発
明は、透明酸化物薄膜への酸化セリウムの含有割合が、
金属元素のみの原子パーセントにて 3〜40at%の範囲内
にあることを特徴とするものである。
【0018】3層膜の最上層の透明酸化物は、下にある
金属膜を外部環境(耐湿性を含む)から保護する機能を
有する必要があり、透明酸化物への酸化ガリウムの添加
は耐湿性向上に効果がある。しかし、酸化ガリウムの量
を多くしすぎると、逆に耐湿性が低下しはじめる。特
に、ガリウム元素割合で50at%付近を超えて酸化ガリウ
ムを添加した場合に、こうした傾向が強くなってくる。
従って、請求項4に係わる発明は、透明酸化物薄膜の酸
化ガリウムの含有割合が、金属元素のみの原子パーセン
トにて 3〜50at%の範囲にあることを特徴とする。
【0019】先に記述したように、信頼性向上のため、
銀系薄膜に金を 1.5at%以上添加した金銀合金を用いる
と良い。しかし、耐湿性などでより高い信頼性を求める
場合は、 3at%以上金を添加した方が良い。また、金の
添加量が10at%を超えるあたりから、その信頼性への寄
与に差が少なくなってくる。また、金は極めて高価でも
あることから、10at%を大きく超える添加は、好ましく
ない。よって、請求項5に係わる発明は、銀系薄膜の金
元素の含有割合が、 3〜10at%の範囲にあることを特徴
とするものである。
【0020】また、熱線反射膜の使用用途によっては、
可視光域での透過率よりも赤外域での反射率を優先する
場合があり、また、赤外域での反射率よりも可視光域で
の透過率を優先する場合もある。例えば、溶鉱炉の観察
窓、ビル等の住宅用窓部材等、熱線の反射を主目的とす
る使用場所においては、赤外域での反射率を優先し、ま
た、自動車の窓等、ある程度熱線を反射させクーラーの
効きを良くしたいが、それよりも、安全性等のため、光
透過率を高くして視認性を優先させたい場合には、光透
過性を優先させるものである。
【0021】請求項6に係わる発明は、これを解決する
ためなされたものである。すなわち、本発明者らは、3
層構成の熱線反射膜の銀系薄膜の膜厚を 7〜30nm、酸化
物薄膜の膜厚を35〜50nmの範囲で調整することにより、
近赤外域から赤外域まで高い反射率を保ちつつ反射率を
変えられる、また、光透過率も変えられることを見い出
したものである。なお、銀系薄膜の膜厚を変え、赤外域
での反射率を上げた場合、可視光透過率は多少損なわれ
るが、可視光透過率の低下は問題となる程度のものでは
なく、実用上十分な透過率を保つものである。これによ
り、熱線反射膜の光学特性の観点から、使用用途に応じ
て適宜膜厚を変えることで、使用用途に応じた熱線反射
膜を容易に得ることが出来るものである。
【0022】なお、本発明に用いることの可能な基板
は、透明であれば、特に限定しない。ここで透明とは、
必ずしも無色あるいはクリアである必要はない。例え
ば、ガラス、プラスチックボード、プラスチックフィル
ム等が使用でき、あるいは、接着剤等を用いた、貼り合
わせガラスとしても良く、さらに、自動車や飛行機など
の窓部材に、本発明の熱線反射膜を直接に着膜しても良
い。
【0023】また、熱線反射膜として窓部材表面に形成
する場合、膜表面に付着する油脂や指紋などの汚れが、
視認性の面で問題となる。こうした汚れ付着を少なくす
るため、フッ素樹脂、フッ素系アクリル樹脂などの撥水
性の塗膜を、熱線反射膜の表面に形成することが好まし
い。撥水性塗膜の膜厚は、可視光学特性に悪影響を与え
ないよう、例えば 0.5μm以下、より好ましくは 0.1μ
m以下の、可能な限り薄い方が良い。また、撥水性塗膜
の屈折率は、低い方が良い。
【0024】また、上記銀系薄膜と透明酸化物薄膜の成
膜方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレ
ーティング法、CVD法、ゾルゲル法等いかなる方法で
も良く、適宜選択するものである。また、スパッタリン
グにあっても、プラズマを発生させる方法が直流であっ
ても、交流であっても良い。
【0025】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施形態の例
を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】<実施例1>図1に示すように、厚さ 0.7
mmのガラス基板10上に、本発明の熱線反射膜2として、
厚さ42nmの透明酸化物薄膜21、以下に記す膜厚を有する
銀系薄膜22、および、厚さ43nmの透明酸化物薄膜23を順
次積層成膜した。成膜の際、いずれも、室温(例えば23
℃程度)から 120℃程度の基板温度の範囲内で、スパッ
タリングにて成膜し、成膜後 230℃にて1時間の熱処理
(アニーリング処理)を行った。
【0027】当(実施例1)において、透明酸化物薄膜
21および、透明酸化物薄膜23の組成は、各々スズ元素、
ガリウム元素、セリウム元素の合計量に対し、スズ元素
80at%(原子パーセント)、ガリウム元素10at%、セリ
ウム元素10at%となる量とした。なお、この混合割合
は、酸素元素をノーカウントとしている。
【0028】次いで、銀系薄膜22には、銀元素94at%
(原子パーセント)に 6at%の金元素を添加した銀合金
を出発材料とし、膜厚をそれぞれ10nm、15nm、20nmと変
えて成膜した。すなわち、当(実施例1)においては、
銀系薄膜22の膜厚を変えた3種類の熱線反射膜2を得た
ものである。
【0029】(実施例1)に係わる各熱線反射膜2を、
温度60℃、湿度95%の高温、高湿の条件下で 300時間放
置したが、各熱線反射膜2には、なんら外観変化は観察
されず、また、光反射率の低下も観察されなかった。さ
らに、耐アルカリ性、耐酸性、耐溶剤性等の耐性レベル
も実用上問題のないレベルであった。
【0030】(実施例1)に係わる各熱線反射膜2の分
光反射率を図2に、可視光域の各分光透過率を図3に示
す。なお、図中の矢印の数値は、銀系薄膜22の膜厚を示
している。また、図3においては、各波長におけるガラ
ス基板10単体のときの透過率を基準(ガラスリファレン
ス)にして、熱線反射膜2の透過率を求めたものであ
る。
【0031】図2に示すように、(実施例1)に係わる
各熱線反射膜2は、1μm以上の長波長(赤外)領域で
は高い反射率を有しており、さらに、図3に示すよう
に、 550nmでの透過率も80〜93%と高透過率であった。
ちなみに、(実施例1)に係わる各熱線反射膜2の面積
抵抗値は、 3〜 7Ω/□であり、銀系薄膜22の膜厚が厚
くなると抵抗値が低くくなり、逆に、銀系薄膜22の膜厚
が薄くなると抵抗値が高くなった。
【0032】また、図2および図3に示すように、熱線
反射膜として可視光域での透過率よりも赤外域での反射
率を優先する場合には、3層構成の熱線反射膜の銀系薄
膜の膜厚を増し、逆に、赤外域での反射率よりも可視光
域での透過率を優先する場合には、銀系薄膜の膜厚を薄
くすれば良いことが分かり、熱線反射膜の使用用途に応
じて適宜銀系薄膜の膜厚を設定することが望ましいとい
える。
【0033】<実施例2>酸化スズ単体、もしくは、酸
化スズの量が多い混合酸化物(例えば、金属元素のみの
換算で、スズ80at%−ガリウム20at%)に、酸化セリウ
ムを添加すると、光学定数である消衰係数(k)の値が
小さくなり、結果として3層構成の熱線反射膜の光学特
性に寄与する。
【0034】当(実施例2)では、この検討例として、
100nmの膜厚にて3種類の異なる組成の混合酸化物をシ
リコンウェハー、もしくは素ガラス上に成膜し、その消
衰係数(k)を分光エリプソメーターにて測定したもの
であり、以下の(表1)にその結果を示す。なお、3種
類の混合酸化物の組成は、金属元素換算のみの原子パー
セント(酸素元素はノーカウントとする)にて、 試料 スズ元素80at%、ガリウム元素10at%、セリウ
ム元素10at%、 試料 スズ元素77at%、ガリウム元素20at%、セリウ
ム元素 3at%、 試料 スズ元素80at%、ガリウム元素20at%、とし
た。
【0035】これらの混合酸化物のターゲットを用い
て、同一条件で膜厚 100nmにスパッタリング成膜し、測
定試料として分光エリプソメーターにて測定したもので
ある。
【0036】
【表1】
【0037】(表1)に示すように、セリウムを添加し
ない試料では、可視光の各波長での消衰係数(k)が
大きく、特に短波長側での値が大きい。逆に、セリウム
を 3at%添加した試料では、消衰係数(k)が小さく
なり、また、セリウムを10at%添加した試料では、消
衰係数(k)がさらに小さくなり、0.07より小さく
なった。
【0038】消衰係数(k)が大きいと、可視光の透過
率が低下してしまい、好ましくない。また、酸化スズ単
体でも、消衰係数(k)が0.07より大きく、〔酸化
スズ/銀系薄膜/酸化スズ〕の3層構成では、本発明の
ような透過率を得にくい。
【0039】酸化スズ単体、酸化スズ−酸化ガリウムの
2元系は、いずれも短波長(例えば、波長 450nm)の吸
収係数が大きく、透過光が黄色く着色する傾向がある。
しかし、以上のように、酸化セリウムを添加することに
よって、光学定数(k)が改善されることが確認でき
た。
【0040】<実施例3>本発明者らは、酸化スズ─酸
化セリウム─酸化ガリウムの3元系を選択するに先立
ち、種々の混合酸化物の検討を行ったものである。すな
わち、種々の混合酸化物を用い、ガラス基板上に〔混合
酸化物/銀系薄膜/混合酸化物〕の3層構成にて、熱線
反射膜を形成したものであり、しかる後、温度60℃、湿
度95%の雰囲気中に 100時間放置する耐湿試験を行った
ものである。以下の(表2)および(表3)に、各耐湿
試験の結果例を示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】ここで、(表2)中で試料として用いた試
料(1)、および(表3)中で試料として用いた試料
(2)〜(9)の、混合酸化物の組成を以下に記す。な
お、以下に記す混合酸化物の組成は、原子パーセント
(at%)で表しており、金属元素換算のみの原子パーセ
ント(酸素元素はノーカウントとする)としている。
【0044】試料(1) スズ元素60at%、セリウム元
素20at%、ガリウム元素20at%。 試料(2) 酸化スズ単体。 試料(3) スズ元素80at%、ジルコニウム元素20at
%。 試料(4) スズ元素80at%、インジウム元素20at%。 試料(5) スズ元素80at%、ガリウム元素20at%。 試料(6) スズ元素80at%、アルミニウム元素20at
%。 試料(7) スズ元素80at%、セリウム元素20at%。 試料(8) スズ元素80at%、タンタル元素20at%。 試料(9) スズ元素80at%、ゲルマニウム元素20at
%。 なお、上記いずれの試料においても、混合酸化物にて挟
持する銀系薄膜は、Au(金)を 1.5at%含む銀合金と
している。
【0045】(表2)および(表3)に示す耐湿試験の
評価は、透過率、反射率、外観について行ったものであ
り、このときの評価基準は、以下のようにしたものであ
る。すなわち、透過率の評価においては、ガラス基板単
体の透過率を基準(ガラスリファレンス)として、透過
率がガラス基板単体の93%以上あった場合を○、93%未
満を×とし、また、反射率の評価は反射率3%以下を
○、3%より大きい反射率は×とした。さらに、外観評
価においては、目視にてシミ発生等の変化が見られない
ものを○、目視にてシミ発生等の変化があったものを×
とし、特に顕微鏡観察でも外観変化のないものを◎とし
た。
【0046】上記(表2)に示すように、試料(1)は
本発明の熱線反射膜の組成であり、本発明の熱線反射膜
は、耐湿性試験後もなんら変化無く、きわめて良好であ
った。
【0047】試料(2)のスズ単体、および試料(5)
の酸化スズ─酸化ガリウムの試料片においては、耐湿性
試験後の外観は良好であったが、前述した(実施例2)
で示したように、大きな消衰係数(k)のため透過率が
良くなかった。また、試料(7)の酸化スズ─酸化セリ
ウムの試料片は、透過率が良いものの、耐湿性試験後
に、顕微鏡観察にて微小なシミの発生が観察され、耐湿
性に若干劣るものであった。
【0048】<実施例4>酸化スズ−酸化セリウム−酸
化ガリウムの3元系混合酸化物を用い、上記(実施例
1)と同様に、ガラス基板10上に熱線反射膜2を形成し
図1を得た。ただし、当(実施例4)では、銀系薄膜22
中の金元素の割合を変えたものである。すなわち、銀系
薄膜22には、銀に 1.5at%の金元素を添加、銀に 3.0at
%の金元素を添加、銀に 6.0at%の金元素を添加、およ
び銀に10.0at%の金元素を添加して構成した、4種類の
銀合金を各々用いた。以下の(表4)に、この金の添加
量を変えた各熱線反射膜2の、耐湿性試験の結果を示
す。なお、耐湿性試験は、上述した(実施例3)と同様
に行ったものであり、評価基準を(表4)中に記してい
る。
【0049】
【表4】
【0050】<比較例1>また、上記(実施例4)との
比較のため、上述した(実施例1)と同様に、酸化スズ
−酸化セリウム−酸化ガリウムの3元系混合酸化物を用
いて、ガラス基板10上に熱線反射膜2を形成し図1を得
た。ただし、当(比較例1)においては、銀系薄膜22に
は、銀元素 100at%、銀に 0.3at%の金元素を添加、銀
に 0.5at%の金元素を添加、および、銀に 1.0at%の金
元素を添加して構成した、4種類の銀合金を各々用いた
ものである。(実施例4)と同様に耐湿性試験を行った
結果を、上記の(表4)に合わせて記している。
【0051】上記(表4)に示すように、銀系薄膜への
金添加量が 1.5at%を超えると、良好な耐湿性を持つこ
とが確認できた。
【0052】次いで、本発明者らは、銀系薄膜への金添
加量の影響について、さらにシミュレーションを行った
ものである。すなわち、上記(実施例4)の熱線反射膜
2において、銀系薄膜22への金添加量を変えた場合の透
過率の変化を調べたものであり、その結果を、図4に示
す。なお、銀系薄膜の金元素の添加割合を、at%(原子
パーセント)にて図4中に示している。
【0053】図4に示すように、金の添加量が10at%を
超えるあたりから、 400〜 500nmの短波長側の透過率が
大きく低下しはじめる。このことより、透過率の観点か
ら、金の添加量は10at%以下が良いと、判断できる。な
お、図4のシミュレーションは、基準をair(空気)
としているものであり(airリファレンス)、ガラス
を基準とした場合(ガラスリファレンス)より、透過率
が低めとなっている。
【0054】また、本発明者らは、銀系薄膜22への金添
加量の影響について、屈折率(n)の観点からもシミュ
レーションをおこなったものである。このシミュレーシ
ョンでは、銀系薄膜への金添加量が増えるに従い、光学
定数である屈折率(n)が、光波長 350〜 550nmの領域
で増加してくることが分かった。すなわち、銀系薄膜へ
の金添加量が増えると、熱線反射膜2として、光波長35
0〜 550nmの領域で透過率が低下するものである。例え
ば、金添加量が20at%程度になると、 450nm(青色)の
透過率が80%前後となるものである。このことより、銀
系薄膜への金の添加量は20at%以下が良く、さらにコス
ト(金は銀の 100倍位の高価格)を考えると、好ましく
は10at%以下が良いといえる。
【0055】以上、本発明の実施例につき記述を行った
が、本発明の実施形態は、上述した図面および記述に限
定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき、種々の
変形を行っても構わないことは言うまでない。例えば、
熱線反射膜としてグレーの色調としたい(透過率を下げ
たい)場合や、高い赤外線反射率としたい場合には、銀
系薄膜の膜厚を厚く、例えば15〜30nmに設定すれば良
い。
【0056】
【発明の効果】上記請求項1〜6に係わる発明によれ
ば、3層の極めて簡単な構成でありながら、赤外線反射
に必要な高い反射率と可視光域での高い透過率とを確保
しながら、高信頼性の熱線反射膜を提供できることにな
った。また、本発明によれば、高屈折率の酸化物を用い
るとともに、吸収係数を小さくした酸化物を用いて最適
化したため、従来にない高い屈折率の熱線反射膜を提供
できる。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱線反射膜の一実施例を示す断面図。
【図2】本発明の熱線反射膜の分光反射率の一例を示す
グラフ図。
【図3】本発明の熱線反射膜の分光透過率の一例を示す
グラフ図。
【図4】銀系薄膜への金添加量を変えた場合の熱線反射
膜の分光透過率の例を示すグラフ図。
【符号の説明】
2 熱線反射膜 10 ガラス基板 21 透明酸化物薄膜 22 銀系薄膜 23 透明酸化物薄膜

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銀系薄膜と、この銀系薄膜を挟持する透明
    酸化物薄膜とからなる3層構成の熱線反射膜において、 銀系薄膜が、1.5at%(原子パーセント)以上10
    at%(原子パーセント)以下の金元素を含有し、か
    つ、透明酸化物薄膜が、酸化スズより高屈折率の酸化物
    を添加した、酸化スズを基材とする非晶質であり、ま
    た、透明酸化物薄膜の光波長450nmでの消衰係数
    (k)が0.07より小さいことを特徴とする熱線反射
    膜。
  2. 【請求項2】上記透明酸化物薄膜が、酸化スズ、酸化セ
    リウム、酸化ガリウムを含有する混合酸化物からなるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の熱線反射膜。
  3. 【請求項3】上記透明酸化物薄膜の酸化セリウムの含有
    割合が、金属元素のみの原子パーセント(酸素元素をカ
    ウントしない)にて、 3〜40at%(原子パーセント)の
    範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の
    熱線反射膜。
  4. 【請求項4】上記透明酸化物薄膜の酸化ガリウムの含有
    割合が、金属元素のみの原子パーセント(酸素元素をカ
    ウントしない)にて、 3〜50at%(原子パーセント)の
    範囲にあることを特徴とする請求項1、2または3に記
    載の熱線反射膜。
  5. 【請求項5】上記銀系薄膜の金元素の含有割合が、 3〜
    10at%(原子パーセント)の範囲にあることを特徴とす
    る請求項1、2、3または4に記載の熱線反射膜。
  6. 【請求項6】上記銀系薄膜の膜厚を 7〜30nmの範囲に
    て、また、上記透明酸化物薄膜の膜厚を35〜50nmの範囲
    にて調節することで、熱線反射率および可視光透過率を
    所望の値とすることを特徴とする請求項1、2、3、4
    または5に記載の熱線反射膜。
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