JP3217649B2 - 高周波電力伝送ケーブル - Google Patents

高周波電力伝送ケーブル

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は照明器具の電源側と負荷
側の光源(ランプ)との間、或いは制御用の電源側と回
転数が制御される誘導負荷のモーター側との間に接続さ
れて用いられ、特に周波数が200KHz 程度までの高
周波電力を伝送するのに好適な高周波電力伝送ケーブル
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電源側から負荷である照明器具の光源側
や回転数が制御される誘導負荷のモーター側へ高周波電
力を伝送するための配線材として、従来より商用周波数
で用いられている2.0mmφ,1.6mmφの器具用
600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル(以下VVケ
ーブルと記す)が一般的に多用されていた。この理由
は、家庭用配線材としてのVVケーブルは電流容量が2
0A〜30Aであり、太さも適度で取扱い易く、配線作
業性にも優れているほか安価なためである。なお、図8
にはVVケーブルの一般的な等価回路を示してある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、VVケーブ
ルを高周波電力伝送用の配線材として用いた場合の最大
の欠点は、伝送損失が大きくなるという点にあった。こ
の原因としては、VVケーブルにより高周波電力を伝送
した場合には、特に特性インピーダンスの影響による伝
送損失が大きくなるためであることが知られている。
【0004】従って、VVケーブルを高周波電力伝送用
配線材として用いた場合には、前述したように高周波電
力伝送時の伝送損失があるためにVVケーブルの配線長
が制限されてしまうという大きな難点があった。このた
め、VVケーブルを高周波電力伝送用の配線材に用いる
場合は、高周波電源と光源または高周波電源とモーター
を一体化し、高周波電源を負荷である光源やモーターの
直ぐ近くに設置する等の方策を講じる必要があり、使用
上極めて不便であるばかりか、実用に際しての余裕度も
極めて狭いといった難点があった。
【0005】ところで、図8の等価回路で示されるケー
ブルの伝送損失を小さくするための手段としては、導
体自体の電気抵抗を小さくすること。導体間の静電容
量を小さくすること。交流に対する絶縁性を高めるこ
と。特定の条件のもとで、導体の相互誘導係数(イン
ダクタンス)を大きくすること。等の手段が知られてお
り、これらの手段をそれぞれ密接に関連させて対応する
必要があることが確認されている。また、高周波電力伝
送時のVVケーブルによる伝送損失を低減する手段とし
て、のようにVVケーブルを構成する導体自体の断面
積を出来るだけ大きくする手段もとられていたが十分な
効果は得られていなかった。
【0006】一方、近年、省エネルギーを目的として各
種電気機器を高周波電源により稼働させる傾向が強まっ
てきているが、高周波電源を伝送するのに用いることの
できる配線材としては前述したように配線長に制限のあ
るVVケーブルしかなく、従来のVVケーブルのままで
は高周波電力を有効に活用できないといった難点があっ
た。
【0007】本発明の目的は、高周波電力伝送時の伝送
損失を小さくするための手段を加味しながら鋭意研究す
ることにより、前述したような難点を解消することがで
きるほか、VVケーブルに比較して高周波電力伝送用の
配線材としての伝送損失を極めて小さく抑えることが出
来、配線長を長くすることのできる高周波電力伝送用ケ
ーブルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】内部電極4と、外部電極
2と、前記内部電極4と外部電極2の間に設けられた絶
縁層3と、前記外部電極2の外周に設けられた絶縁皮膜
1とを具備してなる同軸構造の高周波電力伝送ケーブル
であって、前記内部電極4と外部電極2とを0.813
mmφ〜2.057mmφの導体(AWG20〜AWG
12)に対応する断面積0.519mm2 〜3.325
mm2 の導体で構成するとともに、前記内部電極4と外
部電極2の導体断面積の比を0.8〜1.2に設定せし
め、かつ前記絶縁層3の厚さを0.5mm〜0.2mm
で構成する。また、少なくとも前記内部電極4を複数本
の単線からなる撚り線または束線により構成するとよ
い。
【0009】
【作用】内部電極および外部電極を構成する導体それぞ
れの断面積をAWG20〜AWG12に対応した導体の
断面積としたことで、内部電極および外部電極を構成す
る導体の断面積が大きくなり、各電極導体自体の電気抵
抗を小さくすることができる。また、内部電極と外部電
極を構成する各導体の電気抵抗、内部電極と外部電極を
構成する各導体の断面積の比、内部電極と外部電極間の
間隔等を適宜選択して同軸構造のケーブルを構成するこ
とにより、導体の相互誘導係数(インダクタンス)が大
きくなり、高周波電力伝送時の伝送損失が低減される。
【0010】
【実施例】以下、本発明を図に沿って説明する。図1は
本発明の一実施例を示す高周波電力伝送ケーブルの断面
図であり、図2は本発明の高周波電力伝送ケーブルの等
価回路図、図3は本発明による高周波電力伝送ケーブル
のインダクタンス成分のみの等価回路図、図4は本発明
による高周波電力伝送ケーブルとVVケーブルの特性を
測定するための回路図、図5は本発明の高周波電力伝送
ケーブルとVVケーブルの特性図である。
【0011】本発明の高周波電力伝送ケーブルは、図1
に図示する如く同軸構造のケーブルである。図におい
て、4は37本のスズメッキ銅線(線径0.26mm
φ)を撚ってピッチ60mmで集合撚りしてなる撚り線
導体により形成した内部電極である。そして、この内部
電極4の外周には、低誘電率で熱可塑性プラスチック樹
脂のポリエチレン樹脂が厚さ0.4mmで押し出し被覆
されてなる絶縁層3が形成されている。
【0012】また、絶縁層3の外周には断面積の大きさ
が0.12mm2 で60本持ちのスズメッキ銅線および
断面積の大きさが0.12mm2 で7本持ちのスズメッ
キ銅線16羽で構成したシールド編組からなる外部電極
2が形成されている。さらに、外部電極2の外周には塩
化ビニル樹脂を厚さ0.4mmで押し出し被覆してなる
絶縁皮膜1が形成され、外径4.5mmφの高周波電力
伝送ケーブルが形成される。
【0013】ここで、実施例における内部電極4と外部
電極2の導体の断面積の大きさの比は1:1であり、各
導体の断面積の大きさはそれぞれ2.0mm2 である。
また、各導体の断面積2.0mm2 の大きさはAWG1
6(アメリカ・ワイヤ・ゲージ)の導体の断面積の大き
さとほぼ等しく形成されている。
【0014】このように、本発明の高周波電力伝送ケー
ブルは、内部電極4および外部電極2の導体の断面積の
大きさを出来るだけ大きくするとともにも、内部電極4
と外部電極2の間に設けられる絶縁層3をポリエチレン
樹脂等の低誘電率熱可塑性プラスチック樹脂で出来るだ
け厚さが薄くなるよう構成したことにより、VVケーブ
ルに比べて高周波電力伝送時における伝送損失を大幅に
低減させることができた。
【0015】なお、内部電極4は銅線等の単心導体で構
成してもよく、外部電極2は銅チューブで構成したり、
銅テープを巻回して構成することも可能であるほか、単
心あるいは複数本の導体を横巻きして構成してもよく、
絶縁皮膜1はポリエチレン樹脂の押し出し被覆により形
成してもよいことはいうまでもない。
【0016】一方、図4は高周波電源8を各種配線材1
1を用いて負荷L側に伝送した時の配線材11の伝送特
性を測定するための回路図であり、図5には本発明によ
る高周波電力伝送ケーブルの伝送特性AとVVケーブル
の伝送特性Bが図示されている。なお、図5の横軸には
高周波電力の伝送距離Dが、縦軸には入力電圧値を10
0とした時に、伝送距離Dにおいて出力される電圧値の
入力電圧値に対する割合を示してある。
【0017】そして、例えば、配線材11にVVケーブ
ルを用いて12V,40KHzの高周波電力を20m伝
送した場合、伝送特性Bからは入力電圧値に対する出力
電圧値の割合が40パーセントになることが理解され
る。また、配線材11に本発明の高周波電力伝送ケーブ
ルを用いた場合には、伝送特性Aから明らかなように入
力電圧値に対する出力電圧値の割合が88パーセントと
なって伝送特性が大幅にアップしていることが理解され
る。従って、本発明の高周波電力伝送ケーブルを高周波
電力伝送用配線材として用いれば、VVケーブルに比較
して明らかに高周波電力伝送時の伝送損失を小さくする
ことができ、高周波電力を伝送するにあたって極めて顕
著な効果を得ることができる。
【0018】なお、内部電極4および外部電極2を構成
する導体の断面積の大きさの上限と下限をAWG20〜
AWG12の導体の断面積の大きさに限定した理由は、
本発明の高周波電力伝送ケーブルが従来からの製造装置
で製造可能でかつ安価に得られるほか、VVケーブルと
同様の電流容量を有する同軸構造のケーブルが得られる
等のメリットを有しているからである。
【0019】図2には、本発明の高周波電力伝送ケーブ
ルを高周波電力伝送用ケーブルとして用いた場合の電気
的な等価回路を示してある。図において、電力送電側に
高周波電力を入力した時の等価回路のインピーダンスは
インダクタンスL1,L2,L3とコンデンサC1,C
2,C3および抵抗R1,R2,R3の合成インピーダ
ンスとなる。また、抵抗R1,R2,R3により生じる
伝送損失は抵抗R1,R2,R3の各抵抗値に対応した
値で周波数には無関係である。
【0020】一方、インダクタンスL1,L2,L3お
よびコンデンサC1,C2,C3により生じる伝送損失
は周波数に対する依存性が高く、周波数が高くなるにつ
れて伝送損失も大きくなる。しかしながら、本発明の高
周波電力伝送ケーブルにおいては、周波数が200KH
z 程度まではインダクタンスL1,L2,L3による伝
送損失がほとんどで、コンデンサC1,C2,C3によ
る伝送損失を無視することができた。
【0021】そこで、伝送損失に対する影響の大きいイ
ンダクタンスL1,L2,L3のみの電気的な等価回路
を図3に示した。図3の等価回路において、高周波にお
いて損失される磁界エネルギーWは次のような式で表わ
すことができる。 W=I2 ×(L4+L5+2M12)×1/2 なお、L4とL5は自己インダクタンスであり、Iは回
路に流れる電流、M12は相互インダクタンスを表わし
ている。また、相互インダクタンスM12はL4とL5
を流れる電流のつくる磁束が加わる時は正になり、本発
明の同軸構造の高周波電力伝送ケーブルのように磁束が
打ち消し合う時には負となる。従って、磁界エネルギー
の損失Wを減少させるには、相互インダクタンスM12
の符号を負とするほか、相互インダクタンスM12の定
数を出来るだけ大きくすればよいことが理解される。な
お、相互インダクタンスM12の定数を大きくするには
自己インダクタンスL4またはL5から発生する磁束が
他方のコイルと鎖交する割合を増加させればよいことが
知られており、内部電極4と外部電極2の間の絶縁層3
の厚さを出来るだけ薄くする必要性も理解される。
【0022】図6には、本発明の高周波電力伝送ケーブ
ル6を配線材として用いた照明システムの構成が示され
ており、互いに離れて設置された複数の照明器具5(蛍
光灯等)に対し、高周波電源8をケーブル6を用いて同
時に供給するよう構成されている。また、図7には、本
発明の高周波電力伝送ケーブル6を配線材として用いた
モーター制御システムの構成が示されており、スピード
コントロールボックス9により制御された高周波電源8
がケーブル6によりモーター10に供給されるよう構成
されている。
【0023】
【発明の効果】本発明の高周波電力伝送ケーブルによれ
ば、簡便な手段により高周波電力伝送時の伝送損失が小
さな高周波電力伝送ケーブルを得ることができた。この
結果、電気機器の照明器具やモーター等の負荷とこれら
を稼働するための高周波電源を遠く離れた場所に設置す
ることが可能となり、これらの電気機器を従来のものに
比較してより大幅に小型化,軽量化することが出来た。
また、これら電気機器の小型化,軽量化により、配線時
の作業性が大幅に向上したほか、高周波電源により稼働
される電気機器の使用範囲が拡大し、高周波電力が有効
に活用されるようになって省エネルギーが図られる。等
その産業上の効果は大きなものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波電力伝送ケーブルの一実施例を
示す断面図である。
【図2】本発明の高周波電力伝送ケーブルの等価回路図
である。
【図3】本発明の高周波電力伝送ケーブルのインダクタ
ンス成分のみの等価回路図である。
【図4】本発明の高周波電力伝送ケーブルとVVケーブ
ルの特性を測定する回路図である。
【図5】本発明の高周波電力伝送ケーブルとVVケーブ
ルの特性図である。
【図6】本発明の高周波電力伝送ケーブルを用いた照明
システムの構成図である。
【図7】本発明の高周波電力伝送ケーブルを用いたモー
ター制御システムの構成図である。
【図8】VVケーブルの等価回路図である。
【符号の説明】 1 絶縁皮膜 2 外部電極 3 絶縁体 4 内部電極 5 照明器具 6 高周波電力伝送ケーブル 7 商用電源 8 高周波電源 9 スピードコントロールボックス 10 モーター 11 配線材 R1,R2,R3 抵抗 L1,L2,L3 インダクタンス C1,C2,C3 コンデンサ L4,L5 自己インダクタンス M12 相互インダクタンス L 負荷 R4,R5,R6 導体の電気抵抗 L6,L7,L8 導体のインダクタンス C4,C5 導体間の静電容量 G1,G2 導体間の漏洩抵抗

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部電極4と、外部電極2と、前記内部
    電極4と外部電極2の間に設けられた絶縁層3と、前記
    外部電極2の外周に設けられた絶縁皮膜1とを具備して
    なる同軸構造の高周波電力伝送ケーブルであって、 前記内部電極4と外部電極2とを0.813mmφ〜
    2.057mmφの導体(AWG20〜AWG12)に
    対応する断面積0.519mm2 〜3.325mm2
    導体で構成するとともに、前記内部電極4と外部電極2
    の導体断面積の比を0.8〜1.2に設定せしめ、かつ
    前記絶縁層3の厚さを0.5mm〜0.2mmとしたこ
    とを特徴とする高周波電力伝送ケーブル。
  2. 【請求項2】 少なくとも前記内部電極4を複数本の単
    線からなる撚り線または束線により構成したことを特徴
    とする請求項1記載の高周波電力伝送ケーブル。
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