JP3215149U - エアレーション機能付きパン用発酵種の培養装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】パン用発酵種の培養装置において培養槽内部にエアレーションを施し、パン用発酵種に含まれる発酵菌の増殖と、乳酸菌の繁殖抑制を効率的、かつ的確に行う事が可能な培養装置を提供する。【解決手段】空気供給部11と、空気流量制御部12と、散気管部13と、培養槽14とを含んだパン用発酵種の培養装置10において、散気管部13は培養槽14の内部に挿通されており、所定圧力・所定流量の圧搾空気が、空気供給部11から空気流量制御部12を通して散気管部13に供給され、散気管部13は、培養槽14の中でエアレーションを発生させる。散気管部13は、空気流量制御部12に接続された端部からの遠端部が閉じられたパイプ形状であって、その外周側面の全面に亘って、直径10〜20μmの微細孔が穿かれており、外周側面上における微細穴の設置密度は、隣接している微細孔の間の距離が10〜20μmである。【選択図】図1
Description
本考案は、酵母菌などのパン用発酵種を撹拌し、これに適宜加熱・冷却処理を加え、その発酵を促して、芳醇なパン用発酵種を熟成する培養装置に関するものである。
製パン業界においては、パン用発酵種を大量に熟成するための培養装置が広く用いられている。このような培養装置では、リキッド状のパン用発酵種を撹拌しつつ、これを適宜加熱・冷却しながら熟成させるものである。そして係る発酵種にはイースト菌などの酵母菌が一般的に使用されて来た。
しかしながら、近年の自然食品ブームの高まりから、イースト菌などの人工酵母ではなく、例えば、ルバン種などのいわゆる天然酵母を使用するパンが好まれるようになって来た。通常、このような天然酵母には、発酵菌だけでなく発酵菌と乳酸菌の双方が含まれており、イースト菌などの人工酵母に較べて酵母菌の含有割合が低下する傾向にある。
それ故、パン生地の発酵にイースト菌ではなく天然酵母を使用すると、イースト菌を使用した場合にくらべてパン生地の発酵度が低下し、パン生地の膨らみが減少してしまうというデメリットが生じていた。しかし、天然酵母を使用すると、これに含まれた乳酸菌の作用によってパンの風味が増し、さらに発酵熟成されたパンの日持ちも長くなるという大きなメリットが得られる。
そのため、パン生地の発酵に天然酵母を用いる場合には、これに含まれる発酵菌と乳酸菌の割合を微妙な値に保つことが重要とされる。すなわち、天然酵母中の発酵菌の割合が減少すると、発酵・熟成されたパンの風味は増すものの、パンのふくらみは減少してパンの食感が損なわれてしまう。
一般に、天然酵母に含まれる発酵菌は好気性であり、乳酸菌は嫌気性であると言われている。したがって、パン用発酵種の培養中にこれに空気を混ぜ入れ、嫌気性である乳酸菌の繁殖を抑制しつつ、好気性の発酵菌の増殖を助長すれば、風味が豊かで、かつ、ふっくらとしたパンを製造することができる。このような目的を達成すべく、例えば、特許文献1の発明に示されるような技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1に示された従来技術は、発酵・熟成中のパン生地をミキサー中で混練しながら、その中にエアコンディション装置を用いてエアを吹き込み、パン生地に対する空気供給を行う方式である。このような方式では発酵種に十分に空気が行き渡らず、乳酸菌の繁殖抑制と、発酵菌の増殖という目的を効果的に達成することが困難であった。
本考案は、このような従来からの課題を解決することを目的としたものであって、パン用発酵種の培養装置において培養槽内部にエアレーションを施し、パン用発酵種に含まれる発酵菌の増殖と、乳酸菌の繁殖抑制を効率的、かつ的確に行うことが可能な培養装置を提供することを目的とする。
本考案の第1の観点によるパン用発酵種の培養装置は、上述の目的を達成するため、空気供給部と、空気流量制御部と、散気管部と、培養槽とを含み、
前記散気管部は、前記培養槽の内部に挿通されており、所定圧力・所定流量の圧搾空気が、前記空気供給部から前記空気流量制御部を通して前記散気管部に供給され、
前記散気管部は、前記培養槽の中でエアレーションを行うことを特徴とする。
前記散気管部は、前記培養槽の内部に挿通されており、所定圧力・所定流量の圧搾空気が、前記空気供給部から前記空気流量制御部を通して前記散気管部に供給され、
前記散気管部は、前記培養槽の中でエアレーションを行うことを特徴とする。
また、本考案の第2の観点によるパン用発酵種の培養装置は、上記第1の観点において、前記散気管部はパイプ形状であって、前記空気流量制御部に接続された端部からの遠端部が閉じられており、その外周側面の全面に亘って、直径10乃至20μmの微細孔が穿かれており、前記外周側面上における前記微細孔の設置密度は、隣接する微細孔の距離が10乃至20μmであることを特徴とする。
また、本考案の第3の観点によるパン用発酵種の培養装置は、上記第2の観点において、
前記空気供給部は、空気コンプレッサと、空気圧レギュレータと、濾過特性の異なる複数のエアフィルタと、を含むことを特徴とする。
前記空気供給部は、空気コンプレッサと、空気圧レギュレータと、濾過特性の異なる複数のエアフィルタと、を含むことを特徴とする。
また、本考案の第4の観点によるパン用発酵種の培養装置は、上記第2の観点において、前記空気流量制御部は、制御用電磁弁と、空気流量計と、を含むことを特徴とする。
以上の解決手段を備えた本考案によれば、パン用発酵種の熟成中に適量な空気を、その中に、エアレーションによって直接供給することができるので、発酵種として天然酵母を使用した場合でも、これに含まれる発酵菌を効率的に増殖させ、同時に乳酸菌の繁殖を抑制することが可能となる。それ故、係る発酵種を用いてパン生地を発酵させると、風味豊かでふっくらとした食感のパンを得ることができるのである。
本考案に基づくパン用発酵種の培養装置を実現するための最良の形態である実施例について、本考案の明細書に添付された各図面を参照しつつ以下に説明を行う。先ず、本実施例に基づくパン用発酵種の培養装置10(以下、単に「本装置」という)の構成ブロック図を図1に示す。
図1に示されるように、本装置は主に、空気供給部11、空気流量制御部12、散気管部13、及び培養槽14を含んでいる。そして、空気供給部11は、エアコンプレッサ111、空気圧レギュレータ112、エアフィルタ113〜115から構成されている。また、空気流量制御部12は、制御用電磁弁121と、空気流量計122から構成されている。
先ず、空気供給部11の構成について同図に基づき説明を行う。エアコンプレッサ111は、汎用的な圧搾空気供給用のエアコンプレッサであり、数メガパスカル程度の圧力の圧搾空気を作り出すことができるものであれば、その方式や構造の如何を問わず使用することができる。
エアギュレータ112は、本装置におけるエアレーション発生時の圧力を定常的に保つものであって、本実施例においては、0.05〜0.7メガパスカル程度の範囲内で圧搾空気の圧力を制御する。なお、係る圧力値は、エアレーションを行うパン用発酵種の量や、その種類などの実際の仕様態様に応じて、適宜変更されることは言うまでもない。
エアフィルタ113は、空気圧の大まかな調整と、圧搾空気中に含まれる粒径0.3μm程度までの、比較的に大きな粒径の粉塵粒子を濾過する働きを有する。また、エアフィルタ114は、圧搾空気中に含まれるそれ以下の粉塵粒子(粒径0.01μm程度までの、例えば空気中の油微粒子など)を濾過・吸収する働きを有している。
さらに、エアフィルタ115は、圧搾空気中から臭気や有害ガス成分を除去するものであり、主に、活性炭などの匂い微粒子の吸着素材が用いられている。本装置では、このような三段構えの空気清浄化機構を備えているので、クリーンで衛生的な圧搾空気によって、パン用発酵種に対するエアレーションを実施することができる。
なお、本考案に用いられるエアフィルタの数は、本実施例の図1に示される段数に限定されるものではなく、さらに清浄な圧搾空気によるエアレーションが必要な場合は、係るエアフィルタの段数を増加させるようにしても良い。また、本装置が設置される環境がクリーンルームに近いような清潔・清浄な場合には、逆に、エアフィルタの段数を減らすことも考慮することができる。
次に、空気流量制御部12の説明を行う。制御用電磁弁121は、空気供給部11から散気管部13に供給される圧搾空気の流量制御、或いは導通/遮断を、電磁弁の開閉制御によって行う部位である。係る電磁弁の制御は、本装置に実装されるコントロールパネル(図示せず)から、本装置のオペレータによって手動で行われるようにしても良いし、本装置に実装或いは付設されるシーケンサ装置(図示せず)から、時間経過に伴って自動的に制御が為されるようにしても良い。
一般に、リキッド状のパン用発酵種の熟成は、培養槽14の槽内において、撹拌や加熱或いは冷却の各処理を加えながら、数時間に亘り経時的に行われることが常であるため、パン用発酵種に加えられるエアレーションは、このようなシーケンサ装置を利用した自動的なシーケンシャル制御によって行う事が好ましい。
空気流量計122は、空気流量制御部12を通って、散気管部13に供給される圧搾空気の流量を示すエアゲージである。因みに、本実施例においては、1分間に10〜30リットル程度の空気流量を、エアレーション発生用としてパン用発酵種に供給することが好ましい。また、係るエアゲージによる空気流量の測定値変化を、前述のシーケンサ装置にフィードバックさせて、より細やかなエアレーション制御を行うことも可能である。
一方、散気管部13は、空気流量制御部12に接続された端部からの遠端部が閉塞された径20〜30φ程度のパイプ状の部材であり、培養槽14の中に入れられたリキッド状のパン用発酵種に浸して使用される。したがって、その鉛直方向の長さは、本装置に使用される培養槽14の大きさ(深さ)に応じて、適宜決定されるものであることは言うまでもない。
なお、リキッド状のパン用発酵種には有機酸成分が含まれている場合もあるため、散気管部13の材質は、対腐食性を考慮しステンレス鋼材(SUS316鋼材)を使用している。また、同様の目的から、散気管部13の構成素材としてセラミック管を用いることも可能であるが、その機械的強度や脆弱性を勘案した場合、前述のステンレス鋼材を使用することがより好適である。
散気管部13の外周部側面には、添付図の図2に示されるように、その一面に亘って微細孔が設けられている。すなわち、空気流量制御部12から供給された圧搾空気は、散気管部13の外周表面にある微細孔から放出され、リキッド状のパン用発酵種の中でエアレーションが行われるのである。
本実施においては、微細孔の直径は10〜20μmであり、散気管部13の外周部側面上の微細孔の設置密度は、隣接する微細孔の間の距離が10〜20μmに設定されている。また、散気管部13は、空気流量制御部12から容易に取り外すことができる構造となっていて、その洗浄や掃除を極めて簡単に行うことが可能であり、その衛生状態を良好に保つことができる。
培養槽14は、一般的に用いられるパン用発酵種の培養槽であって、当該培養槽内には回転シャフトが挿通され、当該回転シャフトには培養槽内の材料を混練・撹拌するための羽根状の撹拌ブレードが設けられている(何れも図示せず)。なお、回転シャフトの他端には回転駆動用のモーター(図示せず)が連結されており、当該モーターによって撹拌ブレードを所定の回転数で回転させ、培養槽内にあるパン用発酵種の混練・撹拌が行われることになる。
また、培養槽14には、培養の過程において必要に応じ、パン用発酵種に対して冷却や加熱処理を加えるため、冷却や加熱用のクーラーやヒーターなどの機器が備えられている。但し、これらの機器は本考案の骨子には直接的な関係がないため、係る機器についての説明は省略する。
続いて、本装置の運用方法について説明を行う。本装置の使用に当たり、先ず培養槽14の中にリキッド状のパン用発酵種を注入する。その後、前述の撹拌ブレードにて注入物の撹拌を行いつつ、圧搾空気を空気供給部11から空気流量制御部12を介して、散気管部13に導通させて、その表面からエアレーションを発生させる。
パン用発酵種の発酵・熟成の過程において、上記の撹拌処理やエアレーションは連続して実施するようにしても良いし、或いは静止インターバルをおいて間欠的に行うようにしても良い。また、発酵・熟成の過程において、エアレーションの空気流量を段階的に変化させるようにしても良い。なお、同過程において、必要に応じて前述の冷却或いは加熱処理が加えられることは言うまでもない。
前述のように、本装置の散気管部13は、その空気流量制御部12から容易に着脱自在な構造となっており、培養槽14の蓋部分に設けられた挿通穴(図示せず)を通して培養槽14の内部に挿通させる仕組みとなっている。これによって、機種の異なる培養槽や、パン用発酵種以外の、他の食品に関する発酵種用の培養装置にも本装置を取り付けることが可能であり、本装置の汎用的利用性を高められるようになっている。
以上に説明したように、本装置を用いれば、発酵・熟成中のパン用発酵種に十分な空気量を正確、かつ均一に供給することができるので、パン用発酵種にルバン種などの天然酵母を用いても、これに含まれる乳酸菌の繁殖を抑え、発酵菌の含有割合が増加した芳醇なパン用発酵種を育成することができる。
なお、本考案の実施形態は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、例えば、各々の実施例を構成する各部位の形状や配置或いはその素材等は、本考案の趣旨を逸脱することなく、現実の実施態様に即して適宜変更ができるものであることは言うまでもない。
以上に説明した本考案の構成は、製パン業界をはじめとして、その他各種の発酵種を使用する食品業界においてその利用が可能である。
10 … エアレーション機能付き培養装置
11 … 空気供給部
12 … 空気流量制御部
13 … 散気管部
14 … 培養槽
111… エアコンプレッサ
112… エアレギュレータ
113… エアフィルタ
114… エアフィルタ
115… エアフィルタ
121… 制御用電磁弁
122… 空気流量計
131… 微細孔
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Claims (4)
- 空気供給部と、空気流量制御部と、散気管部と、培養槽とを含んだパン用発酵種の培養装置であって、
前記散気管部は、前記培養槽の内部に挿通されており、所定圧力・所定流量の圧搾空気が、前記空気供給部から前記空気流量制御部を通して前記散気管部に供給され、
前記散気管部は、前記培養槽の中でエアレーションを発生させることを特徴とするエアレーション機能付きのパン用発酵種の培養装置。 - 前記散気管部は、前記空気流量制御部に接続された端部からの遠端部が閉じられたパイプ形状であって、その外周側面の全面に亘って、直径10乃至20μmの微細孔が穿かれており、前記外周側面上における前記微細穴の設置密度は、隣接している微細孔の間の距離が10乃至20μmであることを特徴とする、請求項1に記載のパン用発酵種の培養装置。
- 前記空気供給部は、エアコンプレッサと、空気圧レギュレータと、濾過特性の異なる複数のエアフィルタと、を含むことを特徴とする請求項2に記載のパン用発酵種の培養装置。
- 前記空気流量制御部は、制御用電磁弁と、空気流量計と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のパン用発酵種の培養装置。
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