JP3215058B2 - 演奏支援機能付楽器 - Google Patents

演奏支援機能付楽器

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JP3215058B2
JP3215058B2 JP29389496A JP29389496A JP3215058B2 JP 3215058 B2 JP3215058 B2 JP 3215058B2 JP 29389496 A JP29389496 A JP 29389496A JP 29389496 A JP29389496 A JP 29389496A JP 3215058 B2 JP3215058 B2 JP 3215058B2
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一志 西本
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株式会社エイ・ティ・アール知能映像通信研究所
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、演奏者の楽器演
奏を支援するためのシステムに関し、特に、ジャズなど
における即興演奏を容易に行なうための演奏支援システ
ムを搭載する演奏支援機能付楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の演奏支援システムとしては、独奏
者の伴奏を行なうシステムがほとんどであった。この伴
奏システムは、以下の手順に従って独奏者に対する伴奏
を行なっていた:(1)プリプロセサ段階;独奏者の演
奏を入力し、ピッチ抽出などの前処理を行なって、この
入力された演奏に対応する音高または音符を検出する;
(2)マッチャー段階;この前処理により求められた音
符または音高と楽譜とを比較し、それらの間の対応関係
を調べて、独奏者が楽譜上のどこを演奏しているかを認
識する;(3)アカンパニーメント段階;マッチャー段
階で求められた独奏者の楽譜上の位置情報を用いて伴奏
をこの独奏者の演奏に合わせるように伴奏の演奏データ
をスケジューリングする。この場合、予め演奏すべき楽
譜は与えられており、この楽譜上の音符列において独奏
者の演奏に合わせて演奏すべき楽譜位置を指摘する;
(4)シンセシス段階;スケジューリングされた伴奏パ
ートの演奏をシンセサイザにより演奏する。
【0003】すなわち、この伴奏システムにおいては、
独奏者の演奏に合わせて、予め定められた楽譜上の音符
を追跡して、演奏している。
【0004】また、演奏そのものを支援する機能を有す
るものも提案されているが、この場合の演奏支援は、各
演奏時点におけるコードそのものから得られる「コード
トーン」を演奏インタフェースにマッピングするだけで
ある。たとえば「コード」がDm7の場合には、「コー
ドトーン」として、D/F/A/Cがキーボード上の鍵
盤に演奏者が認識可能にマッピングされる。演奏者がこ
のマッピングされたコードトーンに従って演奏を行な
う。ここで、符号“/”は、コードトーンの区切りを示
す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の演奏支援システ
ムは、ほとんどが上述のような伴奏支援システムであ
り、独奏演奏を支援するシステムは極めて少なく、ま
た、既存のこのような独奏演奏支援システムは以下のよ
うな問題点を持っていた。
【0006】コードトーンを演奏入力インタフェースに
マッピングする場合、コードトーン(音)のみが一義的
にマッピングされる。したがって、たとえばコードがD
m7の場合、使用すべきスケール(音階)がD−dor
ian(ドリアン)であるのかD−natural m
inor(ナチュラル・マイナー)であるのかの区別は
行なうことはできず、演奏の自由度は低く、演奏が単調
なものとなる。また、コードがG7などの場合、使用さ
れるスケールとしてはG−altered(オルター
ド)のような音列がマッピングされることがないため、
ジャズ的な複雑な音を使用した演奏を実現することはで
きない。また、各コードトーンが割当てられる演奏ポジ
ションは、各コードごとに異なるために、ある特定の機
能を持つ音を自由に選んで演奏することができない。
【0007】また、「ビ・バップ」などのジャズの場
合、即興演奏が特に重要な位置を占める。すなわちジャ
ズの演奏に当たっては、既存フレーズ(テーマ)に対す
る表情付けのみならず、自己の感性に基づく新たなフレ
ーズの創造が必要となる(即興演奏)。この新たなフレ
ーズの創造は、無原則に行なわれるのではなく、一般に
かなりまとまった形に構築されている理論に基づく制約
の枠内で行なわれる。このような理論としては、バーク
リー音学院で構築された「バークリー理論」が有名であ
り、このような理論的制約に従って演奏を行なうことが
ジャズらしい演奏を生み出す。したがって、演奏者は演
奏している曲のコード進行およびテーマと同時に、常に
複雑な理論的知識を念頭に置きながらこれらすべてをリ
アルタイムに即興演奏に反映させていく必要がある。こ
のような即興演奏では、単に楽譜上の音符を追跡するだ
けでは即興演奏を行なうことはできず、また単に一義的
にコードトーンを入力インタフェースにマッピングする
だけでも対応することはできない。
【0008】さらに、ジャズ演奏においては、他者との
インタラクションの問題がある。複数の演奏者で演奏す
る場合、自己のソロ演奏(独奏)の場合であっても、必
ず他の演奏者の伴奏を聞いてそれに応じた演奏を行なう
必要がある。すなわち、演奏者は、音自体および身振り
または場の雰囲気を通じて他の演奏者と、場合によって
は観客ともインタラクションを行ないながらその情報を
自己の演奏に反映させて、自己の演奏のみならずバンド
全体としてのまとまりのある表現をするような即興演奏
を構築する必要がある。このようなインタラクションを
考慮して演奏支援を行なうシステムはまだ存在していな
い。
【0009】それゆえ、この発明の目的は、即興演奏に
ついての理論的知識がほとんどない場合においても、常
に理論的に正しい音を用いて自由度の高い演奏を行なう
ことのできる演奏支援機能付楽器を提供することであ
る。
【0010】この発明の他の目的は、他の演奏者との調
和の取れた演奏を容易に行なうことのできる演奏支援機
能付楽器を提供することである。
【0011】この発明のさらに他の目的は、演奏者の感
性に従った演奏を容易に行なうことのできる演奏支援機
能付楽器を提供することである。
【0012】この発明のさらに他の目的は、複雑な音列
も容易に演奏することのできる操作性に優れた演奏支援
機能付楽器を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
演奏曲のコード情報を入力し、この入力したコード情報
の時系列的な推移状況を解析して各コードに対して使用
可能な音列を割当てる楽曲解析手段と、複数の演奏ポジ
ションを有し、演奏者からのこれら複数の演奏ポジショ
ンを介しての演奏入力情報を受ける演奏入力手段と、楽
曲解析手段からの各コードに対して割当てられた音列情
報に従って、各コードについて対応の音列に含まれる使
用可能な音高を複数の演奏ポジションに対してそれぞれ
割当てる音高割当手段と、演奏入力手段からの演奏入力
情報と音高割当手段により割当てられた音高割当情報と
に従って、音高情報を生成しかつこの生成した音高情報
を可聴音に変換して出力する音生成手段を備える。
【0014】請求項に係る発明は、さらに、音高割当
手段が、各コードについて対応の音列において同一機能
を有する音高を演奏入力手段の複数の演奏ポジションの
同じ演奏ポジションへ割当てる手段を含む。
【0015】請求項に係る発明は、請求項1の音高割
当手段が、1つのコードに対し複数の音列の割当が可能
なとき、予め定められた規則に従ってこの時系列コード
情報の解析結果に従って1つの種類の音列を選択し、こ
の選択された音列に含まれる各音高を複数の演奏ポジシ
ョンの予め定められた演奏ポジションに割当てる手段を
含む。
【0016】請求項に係る発明は、演奏曲のコード情
報を入力し、この入力したコード情報の時系列的な推移
状況を解析して、各コードに対して使用可能な音列を割
当てる楽曲解析手段と、複数の演奏ポジションを有し、
演奏者からのこれら複数の演奏ポジションを介しての演
奏入力情報を受ける第1の演奏入力手段と、楽曲解析手
段からの各コードに対して割当てられた音列情報に従っ
て、各コードについて第1の演奏入力手段の複数の演奏
ポジションに対し使用可能な音列に含まれる各音高をそ
れぞれ割当てる音高割当手段と、複数の演奏ポジション
を有し、これら複数の演奏ポジションを介して入力され
た演奏ポジションに対する音高情報を生成する少なくと
も1個の第2の演奏入力手段と、この第2の演奏入力手
段から与えられた音高情報を受け、第1の演奏入力手段
へ割当てられる使用可能な音列のうち、予め定められた
規則に従って、この第2の演奏入力手段からの入力され
た音高と非調和的な音高を含む音列選択されないよう
に音高割当手段の音高割当を制限する手段と、第1の演
奏入力手段からの演奏入力情報と音高割当手段により割
当てられた音高情報とに従って、第1の演奏入力手段の
複数の演奏入力ポジションからの演奏入力情報に対応す
る音高情報を可聴音に変換して出力する手段を備える。
【0017】請求項に係る発明は、演奏曲のコード情
報を入力し、このコード情報の時系列的な推移状況を解
析して、各コードに対して複数の音列群のうち使用可能
な音列を割当てる楽曲解析手段を含む。これら複数の音
列群の各音列に対しては感性情報が予め定められた規則
に従って割当てられている。
【0018】請求項に係る発明は、さらに、複数の演
奏ポジションを有し、演奏者からの複数の演奏ポジショ
ンを介しての演奏入力情報を受ける演奏入力手段と、感
性情報を入力するための入力手段と、楽曲解析手段によ
り1つのコードに対し複数の音列が割当てられたとき、
この入力手段から入力された感性情報と各音列に割当て
られている感性情報とに従って使用可能音列を決定し、
この決定された使用可能音列に含まれる各音高を複数の
演奏ポジションにそれぞれ割当てる音高割当手段と、こ
の演奏入力手段の複数の演奏ポジションを介しての演奏
者からの演奏入力情報とこの音高割当手段により割当て
られた音高情報とに従って演奏入力情報に対応する音高
情報を可聴音に変換して出力する手段を含む。
【0019】請求項に係る発明は、演奏曲のコード情
報を入力して、このコード情報の時系列的な推移状況を
解析し、各コードに対して複数の音列群から使用可能な
音列を割当てる楽曲解析手段を含む。これら複数の音列
群の各音列に対しては、感性情報が割当てられている。
【0020】請求項に係る発明は、さらに、複数の演
奏ポジションを有し、演奏者からのこれら複数の演奏ポ
ジションを介しての演奏入力情報を入力する第1の演奏
入力手段と、複数の演奏ポジションを有し、これら複数
の演奏ポジションを介しての演奏入力情報を入力しかつ
対応の音高情報を生成する第2の演奏入力手段と、感性
情報入力手段と、楽曲解析手段の解析結果と第2の演奏
入力手段からの音高情報とに従って使用可能な音列のう
ちこの第2の演奏入力手段からの音高情報と調和する音
列を選択して第1の演奏入力手段の複数の演奏ポジショ
ンへ各音高を割当てる手段を含む。この割当手段は、各
コードに対し使用可能となる音列に含まれる同一機能の
音高を第1の演奏入力手段の複数の演奏ポジションの同
じ演奏ポジションに割当てる手段を含む。
【0021】請求項1の発明に従えば各コードに対して
使用可能な音列を割当て、この音列に含まれる各音高を
演奏入力手段の複数の演奏入力ポジションにそれぞれ割
当てており、したがって、演奏者は演奏時における音高
の推移についての理論的知識を全く知らない場合におい
ても、常に理論的に正しい音を用いて演奏を行なうこと
ができる。また、各コードに対して使用可能な音列は、
コード情報の時系列的な推移状況の解析結果に基づいて
生成されており、各コードに対して必要な機能を有する
音を容易に用いることができ、コード進行感を強く表現
することもまた逆にコード進行感を意図的にぼかす演奏
をも容易に実現することができ、演奏の自由度が大幅に
増加する。
【0022】また、請求項の発明に従えば、さらに、
たとえ楽曲の進行に従ってコードが変化しても同一機能
を有する音高は複数の演奏ポジションの同じ演奏ポジシ
ョンへ常に割当てられており、演奏者は、常に複数の演
奏ポジションの各演奏ポジションが有する機能を一義的
に意識するだけでその変移を意識することなく必要とさ
れる音を用いることができる。また、同じ演奏ポジショ
ンへ同一機能の音高が割当てられるため、G-alteredの
スケールのような複雑な音列もすべて単純な演奏ポジシ
ョンに配置することが可能となり、楽器の操作性が改善
される。
【0023】請求項に係る発明に従えば、1つのコー
ドに対し複数の音列の割当が可能なときには、1つの音
列を選択して各演奏ポジションにそれぞれの音高を割当
てており、この音列選択は、予め定められた規則に従っ
て行なわれており、複数の音列が1つのコードに対して
衝突することがなく、正確な演奏を行なうことができ
る。
【0024】請求項に係る発明に従えば、他者の演奏
する音高と非調和的な音高を含む音列を排除しており、
伴奏者との調和のとれた演奏を意識することなく正確に
行なうことができる。
【0025】請求項に係る発明に従えば、感性情報に
従って各コードに割当てられる音列を選択しており、演
奏者の表現したいイメージを理論的な情報に基づくこと
なく容易に実現することができ、演奏者の感性的なイメ
ージに見合った演奏を実現することができる。
【0026】請求項に係る発明に従えば、常に理論的
に正しい音を使用して演奏者相互の演奏の衝突を回避し
つつ演奏者の感性に合った演奏を容易に実現することが
可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
[演奏環境の全体構成]図1は、この発明の演奏支援機
能付楽器を用いる演奏環境の全体の構成を概略的に示す
図である。図1に示す構成においては、リード楽器演奏
者、バッキング(伴奏)演奏者およびリズム演奏者の3
名の演奏者による演奏を想定する。すなわち、図1にお
いて、この演奏環境は、リード楽器用としての1台の音
源なしMIDI(ミュージカル・インスツルメンタル・
デジタル・インタフェース)楽器1と、伴奏用としての
1台の音源付MIDI楽器2と、リズム用としての1台
の音源付シーケンサ4と、この音源なしMIDI楽器1
の演奏を支援するためのワークステーション3とを含
む。図1においては、MIDI楽器1および2として
は、一例としてキーボードが示される。このキーボード
1および2の白鍵および黒鍵の演奏ポジションからの演
奏者の情報入力により、対応の音高情報が生成される。
【0028】MIDIシーケンサ4は、予め演奏する曲
のベースラインおよびドラムパターンがプログラムされ
ており、演奏者はこのシーケンサ4からのリズムに従っ
て演奏を行なう。シーケンサ4からのタイミングクロッ
クは、MIDI入力MI1を介してMIDI楽器(以
下、キーボードと称す)1へ与えられ、またMIDIT
HRU端子MTHを介してキーボード1からキーボード
2へこのタイミングクロックが伝達される。
【0029】ワークステーション3へは、キーボード1
からMIDI OUT端子MO1を介してキーボード1
からのノート(音符)情報を主とするMIDI情報(演
奏ポジション操作による演奏入力情報)が与えられ、ま
たキーボード2からはMIDI OUT端子MO2aか
ら演奏入力情報が与えられる。このキーボード2からの
演奏入力情報は、LINE OUT端子MO2bを介し
て通常のオーディオ信号の形でアンプ/スピーカ6へ与
えられる。キーボード2は、音源を備えており、この演
奏ポジションとしての白鍵/黒鍵を操作することによ
り、その演奏入力情報に対応する音高情報がアンプ/ス
ピーカ6により増幅されて可聴音として生成される。
【0030】ワークステーション3へは、キーボード1
からのMIDI情報、キーボード2からのMIDI情
報、およびシーケンサ4からのタイミングクロックが与
えられ、このワークステーション3に含まれる演奏支援
システムは、このシーケンサ4からのクロックに同期し
て処理を進める。
【0031】ワークステーション3に搭載される演奏支
援システムは、このキーボード1からの演奏入力情報を
処理し、その処理結果の音高情報をサウンドモジュール
5へ与え、サウンドモジュール5は、このワークステー
ション3からMIDI OUT端子MO3を介して与え
られる音高情報を音情報に変換してアンプ/スピーカ6
へ与える。このアンプ/スピーカ6へは、シーケンサ
4、キーボード2からの音情報も与えられており、した
がってアンプ/スピーカ6から、リズム、リード演奏お
よびバッキング演奏に対応する音情報が同時に生成され
る。
【0032】[演奏支援システムのモジュール構成]図
2は、図1に示すワークステーション3に搭載される演
奏支援システムのモジュール構成を概略的に示す図であ
る。図2において、この演奏支援システム20は、曲デ
ータデータベース10に格納された曲データを解析し、
その解析結果に従って演奏支援を行なう。
【0033】曲データデータベース10においては、各
演奏曲それぞれについて、曲のコード進行およびテーマ
のメロディが一定のフォーマットで記述された曲データ
が格納される。この曲データデータベース10に格納さ
れる曲データから、演奏すべき曲に対応する曲データを
選択し、演奏支援システム20へ与える。
【0034】演奏支援システム20は、曲データデータ
ベース10から与えられる曲データを解析し、各コード
に対して使用可能な音列(スケール)を決定する自動ア
ナリーゼ22と、この自動アナリーゼ22からの解析結
果に従って各コードについて使用可能なスケールの音高
を演奏ポジションとしてのキーボード1の鍵へ割当てか
つキーボード1からの演奏入力情報をこの割当てられた
音高情報に変換して出力する音高割当部24と、演奏者
からのスケール選択指示および/またはキーボード2を
介して与えられる伴奏者の音高情報とに従って、各コー
ドに対して使用することのできるスケールを決定するイ
ンタラクション支援部26を含む。
【0035】音高割当部24は、自動アナリーゼ22に
より与えられた解析結果に従って各コードに対して使用
可能な音列情報を格納する解析結果格納テーブル24a
と、この解析結果格納テーブル24aに格納された使用
可能な音列に含まれる音高をキーボード1の演奏ポジシ
ョンに割当てる音高変換部24bを含む。図2において
は、コードFに対する各演奏ポジションとしての鍵への
音高割当の対応が一例として示される。この演奏ポジシ
ョンへの音高割当については後に詳細に説明する。
【0036】インタラクション支援部26は、各スケー
ルに対して使用可能なテンションをたとえばテーブル形
態で格納するスケール/テンション対応情報格納部26
aを含む。このインタラクション支援部26は、1つの
コードについて使用可能なスケールが複数個存在する場
合、このキーボード2からの音高情報に従って、伴奏者
が、テンションの音高を使用する場合には、そのテンシ
ョンノートと衝突しないテンションノートを有するスケ
ールを選択して、音高割当部24の解析結果格納テーブ
ル24aへ与える。
【0037】またこのインタラクション支援部26は、
キーボード1を演奏するリード演奏者からのたとえばジ
ョイスティックを介してのスケール選択指示に従って複
数のスケールが存在する場合対応のスケールを選択し
て、解析結果格納テーブル24に格納された使用可能な
スケールのうちの対応のスケールを選択する。これによ
り、リード演奏者の演奏に対しこのリード演奏者の主観
的特徴を反映させることができる。次に各部の構成につ
いて説明する。
【0038】[自動アナリーゼ]図3は、図2に示す自
動アナリーゼ22のモジュール構成を概略的に示す図で
ある。図3において、自動アナリーゼ22は、曲演奏の
前に曲データデータベース10から与えられる曲データ
のコード情報を順次入力し、そのコード情報の時系列的
な推移状況を解析するコード進行解析部22aと、コー
ド進行解析部22aからのコード推移情報に従ってルー
ルテーブル22bを参照し、この対応のコード情報にお
いて使用可能なスケールを決定するスケール決定部22
cを含む。ルールテーブル22bには、一例として、こ
のジャズの即興演奏における理論的知識として広く知ら
れている「バークリー理論」に従ったルールが格納され
ている。コード進行解析部22aは、このコードの推移
状況に従って、その調性が長調であるのか短調であるの
か、などの文脈を解析する。スケール決定部22cは、
このコード推移の文脈情報をもとにしてルールテーブル
22bを参照し、コード情報に対して利用可能なスケー
ルを決定する。
【0039】たとえば、今、コード列Dm7/G7/C
M7において、コードDm7に対するスケールを決定す
ることを考える。この場合、調性はC長調であり、この
ような調性におけるコードDm7は、IIm7であり、
したがってコードDm7に対して使用可能なスケール、
すなわち音列は、D−dorianと決定される。も
し、B♭の調性でコードDm7が使用されている場合、
このコードDm7はIII♭7のコードであるため、こ
のコードDm7で使用可能なスケールはD−phryg
ianと決定される。
【0040】したがって、このスケール決定部22cに
より決定されるスケールは、コード推移を解析してお
り、各演奏位置で使用可能な音列は、単にその時点にお
けるコードに含まれるコードトーンのみではない。たと
えば、コードDm7においては、コードトーンはD/F
/A/Cであり、一方、スケールD−dorianの場
合には、トーンD/E/F/G/A/B/Cとなり、コ
ードトーン以外のトーンも含む。これにより、即興演奏
時における演奏の自由度が拡張され、またルールテーブ
ル22bに含まれるルールに従って使用可能な音列が決
定されており、理論的に正確な音高を利用することがで
きる。
【0041】図4は、自動アナリーゼ22の具体的解析
結果を示す図である。図4においては、ジャズのスタン
ダード曲である「枯れ葉」の冒頭8小節のコード進行お
よび各コードに対して使用可能なスケールを示す。図4
において8小節のコードは、Cm7/F7/B♭M7/
E♭M7/Am7♭5/D7/Gm7/G7である。こ
れらの各コードについて上述のようなバークリー理論に
従って使用可能なスケールが決定される。図4に示すス
ケール決定においては、1つのコードに対し複数の選択
肢が存在するコードは、ドミナント7th(属7)のコ
ードに限定される。ドミナント7thのコードは、図4
においては、コードF7,D7およびG7である。
【0042】コードF7は、前後のコード推移状況か
ら、メジャー調性であり、6種類の使用可能なスケール
が与えられる。これらの6種類のスケールは、「mix
olidian(ミキソリディアン)」、「lydia
n 7th(リディアン7度)」、「whole to
ne(ホールトーン)」、「combinationd
im.(コンビネーションディミニシュド)」、「al
tered(オルタード)」、および「hmp5dow
n(ハーモニックマイナーパーファクト5度ダウン)」
である。一方、第6小節および第8小節におけるコード
D7およびG7に対しては、その調性がマイナーであ
り、「mixolidian」のスケールを除く5種類
のスケールが与えられる。残りのメジャー7度またはマ
イナー7度のコードに対しては1つのスケールのみが決
定される。複数のスケールが選択肢として与えられたと
きには、予め定められた規則または演奏者の指示に従っ
て1つのスケールが選択される。このスケール選択につ
いては後に説明する。
【0043】この図4に示すように、コード進行を解析
し、コードの時系列的な推移を解析して、ルールテーブ
ルを参照して使用可能なスケールを決定することによ
り、即興演奏時において、理論的知識が何らない場合に
おいても、常に理論的に正確な音高を用いて演奏を行な
うことができる。
【0044】[音高割当部のモジュール構成]図5は、
図2に示す音高割当部24のモジュール構成を概略的に
示すブロック図である。図5において、音高割当部24
は、自動アナリーゼ22からの解析結果を各コード情報
と対応のスケール情報とをリンクして格納する解析結果
格納部34aと、コード進行に合わせて、この解析結果
格納部34aに格納された各コードに対するスケールを
予め定められた規則に従って選択する(複数のスケール
が1つのコードに対して存在するとき)使用スケール選
択部34bと、この使用スケール選択部34bにより選
択された使用スケールに含まれる音高をキーボード1の
各鍵に予め定められた規則に従って対応付けるポジショ
ン/音高対応付部34cと、図1に示すキーボード1か
らの音高情報を入力し、この入力した音高情報をポジシ
ョン/音高対応付部34cの対応付けに従って変換して
音高情報を生成する音高情報生成部34dを含む。解析
結果格納部34aは、図2に示す解析結果格納部24a
に対応し、ポジション/音高対応付部34cが図2に示
す演奏ポジション/音高対応付部24bに対応する。
【0045】使用スケール選択部34bは、図1に示す
MIDIシーケンサ4からのタイミング信号に従って、
各小節の区切りを検出して、コード進行を監視し、各演
奏時点におけるコードおよび対応のスケールを選択す
る。この使用スケール選択部34bにおける、1つのコ
ードに対し複数のスケールが存在するときに1つのスケ
ールを選択する構成については後に詳細に説明する。
【0046】ポジション/音高対応付部34cは、キー
ボード1の各鍵に対し各コードの同一機能を有する音高
が常に同じ鍵に割当てられるように演奏ポジション
(鍵)と音高とを対応付ける。このポジション/音高対
応付部34cによる同じ機能を有する音高を同じ鍵に割
当てる理由について以下に説明する。
【0047】ここで、まず「機能」という用語について
説明する。たとえばD−dorianのスケールの場
合、このDという音は、このスケールD−dorian
において根音(ルート音)という「機能」を有してい
る。以下、このスケールD−dorianにおいて、E
が2度、Fが3度、Gが4度、Aが5度、Bが6度、お
よびCが7度という「機能」を有する。たとえば3度お
よび7度の音(このスケールD−dorianにおいて
は音FおよびC)はコードの「色」を決定する音であ
り、音楽的機能を有している。ここで、コードの「色」
とは、短調であるのか、長調であるのか、またはドミナ
ント7thであるのかメジャー7thであるのかなどの
コードの雰囲気を示す。なお、D−ionianのスケ
ールの場合、3度はF♯、7度はC♯となる。したがっ
て、厳密にいうと、音DおよびFの間隔は短3度音程、
音DおよびCの間隔は短7度音程であるのに対し、音D
およびF♯の間隔は長3度音程となり、また音Dおよび
C♯の間隔は長7度音程となる。したがって同じ3度お
よび7度の音といっても、実際の音の間隔は各スケール
により異なる。しかしながら、いずれの場合において
も、この3度および7度の位置にある音がそのコード
(Dm7であるのかDM7であるのか)を決定する役割
を有している。このように、各スケールにおける「機
能」を表現する意味で「3度(III)」、「7度」の
表現を行なう。当然、2度、4度および6度などもそれ
ぞれにある音楽的機能を有している。
【0048】この図5に示すポジション/対応付部34
cは各スケールにおいて同じ機能を有する音高をキーボ
ード1の各鍵(演奏ポジション)の同じ演奏ポジション
へ割当てる。たとえば図6(A)に示すように、C−d
orianのスケールの場合、含まれる音列はC/D/
E♭/F/G/A/B♭である。また、図6(B)に示
すように、F−alteredのスケールの場合、それ
に含まれる音列は
【0049】
【数1】
【0050】である。このようなスケールは、ジャズま
たはフュージョン以外で使用されることはほとんどな
く、一般には馴染みが薄い。したがって、ジャズ初心者
に対しいきなりこのようなスケールに含まれる音列のみ
を与えて即興演奏を要求したとしても、実行は非常に困
難であり、演奏が速いテンポで行なわれる場合には、こ
の音列の変化に追従することも困難となる。
【0051】そこで、ポジション/音高対応付部34c
を用いて、使用可能なスケールに応じてキーボード1に
音の再割当を行なう。
【0052】図7は、この図5に示すポジション/音高
対応付部34cにおけるキーボード1の各鍵と各スケー
ルに含まれる音列との対応付けを示す図である。図7に
示すように、ポジション/音高対応付部34cは、キー
ボード1の「ドレミファソラシド」にそれぞれ対応する
白鍵1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、…に
対しそれぞれこのスケールに含まれるルート音(根
音)、2度の音、3度の音、4度の音、5度の音、6度
の音、7度の音、…を割付ける。すなわち白鍵に対し、
ほぼ常に同じ機能を有する音が割付けられる。黒鍵につ
いては、各黒鍵の右隣の白鍵に割当られている音の半音
下の音が割当てられる。たとえば、図7において、黒鍵
1aaに対しては、白鍵1bに割当てられた2度の音の
半音下の音が割当てられる。このポジション/音高対応
付部34cにおいては、演奏時に各コードの進行に従っ
てコードが変化したときに同時にリアルタイムに対応付
けが行なわれる。
【0053】この図7に示すようなキーボードの鍵と音
との対応付けを行なうことにより、演奏中のどの時点に
おいても、演奏者がキーボード1において「ドレミファ
ソラシド」と白鍵1a〜1g、…のみを弾けば、そのと
きのコードに対して、使用可能なスケールに含まれる音
が演奏される。したがって、各鍵に割当てられた各スケ
ールにおける機能は固定されているため、演奏者は演奏
中に弾くべきスケールを想定する必要がなくなり、基本
的に白鍵のみを使用して演奏することにより、常に理論
的にほぼ正しい音を使用して演奏を行なうことができ
る。
【0054】本実施の形態においてスケール決定のため
に用いられる「バークリー理論」においては、「アボイ
ドノート」と呼ばれる音が指定されている。このアボイ
ドノートは、スケールの中に含まれるにもかかわらず使
用をできるだけ避けた方がよい(少なくともその音を長
く伸ばしたりすべきではない。)音を示す。この音を避
ける理由は、その音がその時点におけるコードの機能
(ドミナントなど)を阻害する傾向があるためである。
このようなアボイドノートは多くの場合スケールにおけ
る4度の位置に現れる。逆に、コードトーンのうち特に
3度および7度の機能を有する音はほとんどの場合、そ
の時点におけるコードの機能を強く主張するいわゆる
「コードの色」を出す音であり、これらの音を強調する
ことにより曲のコード進行感を生み出すことができる。
一方、同じコードトーンにおいても1度の音(ルート
音)は単純すぎるため、多用するとジャズらしい複雑さ
が薄れる。このジャズらしい複雑さは、9度、11度、
および13度のテンションノートの使用により得ること
ができる。このように、スケール内の音はそれぞれが独
自の機能を有し、1つのスケール内ではどの位置にある
音がどのような機能を有するかは予めほぼ定められてい
る。したがって、図7に示すように、各コードに対し、
各スケールの同じ機能を有する音はキーボード1の同じ
鍵に割当てることにより、キーボードの各鍵に割当てら
れる機能をコードが変化しても一定とすることができ、
容易に演奏を行なうことができる。すなわち、キーボー
ド1の「ドレミファソラシド」の鍵1a〜1gには、各
時点におけるスケールの音列が割当てられており、した
がってド、ミ、ソおよびシの鍵盤1a、1c、1eおよ
び1gに、その時点におけるコードトーン(1度、3
度、5度、および7度の音)が割当てられ、その他の白
鍵にアボイドノートまたはテンションノートが割当てら
れる。したがって、第4度の音が割当てられるファの鍵
1dを使用する際には、あまり長く音を出さないように
注意しながらそのフレーズを「ミ」の鍵1cまたは
「シ」の鍵1gを終着目標として構成することにより、
コードの色を有するフレーズを容易に生み出すことがで
きる。
【0055】ジャズにおいては、スケール内の音の半音
下の音を装飾音としてしばしば用いられる。黒鍵の音
が、その右隣の白鍵の音の半音下として割当てているた
め、容易に装飾音を生成することができる。
【0056】以上のように、このポジション/音高対応
付部34cで、キーボード1の各鍵に対し同じ機能を有
する音が同じ鍵に割当てられるように対応付けを行なう
ことにより、演奏者は即興演奏時におけるフレーズを容
易に作り出すことができる。
【0057】図5に示す音高情報生成部34dは、ポジ
ション/音高対応付部34cにより対応付けられた鍵と
音との対応関係に基づいて、キーボード1からの音高情
報(鍵操作情報)を入力し、そのキーボード1からの入
力された音高情報をそのときのコードの対応の音に変換
して音高情報を生成する。たとえば、キーボード1から
の音高情報が白鍵1aの操作を示す場合には、音高情報
生成部34dは、そのときのスケールのルート音を示す
音高情報を生成する。この音高情報生成部34dからの
音高情報は図1に示すサウンドモジュールへ与えられ
る。
【0058】なお、この音高割当部において、コードの
切換部すなわち小節の区切りは、シーケンサからのタイ
ミングクロックに従って行なわれるとして説明してい
る。この場合、曲データに含まれるメロディ情報とシー
ケンサからのリズム生成基準となるクロック信号とに基
づいて、各小節の区切りが検出され、その小節の区切り
の検出に従ってコード変換すなわちスケール切換えが行
なわれるように構成されってもよい。1小節中で複数の
コードが使用される場合もある。このような場合にも対
処するには曲データに、あるコードが何拍続くのかを示
す情報を含ませる。この情報とシーケンサからのクロッ
ク信号とによりコードの切換わりは容易に検出できる。
【0059】[自動アナリーゼの変更例]図8は、アナ
リーゼ22の変更例の構成を示す図である。図8におい
て、アナリーゼ22に含まれるコード進行解析部22a
の要部の構成が示される。図8において、コード進行解
析部22aは、コード情報を受け、この時系列的に配列
されるコードにおけるルート音の音高(または音程)の
変化の大きさおよび変化方向を検出するコード変化検出
部32aと、このコード変化検出部32aからの変化が
大きいことを示す情報に従ってコード情報を参照データ
としてコードテーブル32cを検索して対応のコード情
報を求め、その検索後のコード情報で元のコード情報を
置き換えるコード交換部32bを含む。このコード交換
部32bにより交換されたコード情報に従って図3に示
すコード進行解析部22aにおいて時系列的なコード情
報の推移が解析されて交換後のコードに対応するスケー
ルが決定される。
【0060】図7に示すように、キーボード1の各鍵に
対しては、スケールにおけるこの予め定められた機能を
有する音がそれぞれ割当てられる。この場合、スケール
切換わり時に音高が大きく飛ぶことが考えられる。たと
えば、コードがDm7→G7→CM7と変化する場合、
図7に示すドの鍵1aを押している場合、実際に出力さ
れる音は、D→G→Cと変化する。この音の変化を曲の
進行に応じて意識している場合または比較的音高の上下
動が激しいフレーズを演奏している場合には、この切換
わり時の音高の飛びはあまり違和感を生じさせない。し
かしながら、音が単調に上昇または下降するようなフレ
ーズを演奏するときにこのような音高の飛びが生じると
違和感が感じられ、特に、音高の上昇中に音高が低くな
ったりまた逆に音が下降中にある音高が高くなるときに
この違和感は強く感じられる。
【0061】コード変化検出部32aは、このような違
和感を感じさせるようなスケール切換えを検出し、コー
ド交換部32bは、そのような違和感を感じさせる音高
の飛びが生じるときには、コードテーブル32cを参照
して、違和感を小さくするコードに交換する。たとえ
ば、上述のようなコード進行の場合、CメジャーでのI
Im7→V7→IM7というコード進行は、ジャズにお
いては非常に多く出現するが、このコードV7の前後で
大きく音高の飛びが生じる。そこで、この変化検出部3
2aで音高の飛びが生じることを検出し、コード交換部
32bにおいて、図7に示すドの鍵1aに、Cメジャー
スケールでのII♭の音が来るようにスケールをずらし
て割当てる。コードV7とコードII♭7は、コードの
色を出す3度および7度の音の組合せが同じとなり、代
理コードとして使用することが可能である。このような
交換可能なコードはコードテーブル32cにテーブルの
形で格納される。すなわち、Cメジャースケールにおい
てコード進行がIIm7→II♭7→IM7にコードが
置き換えられる。この結果、図7に示すドの鍵1aの音
は、II→II♭→I(D→D♭→C)と半音ずつ降下
するだけであり、大きな音高の飛びは生じない。
【0062】このコード交換が行なわれた後にコード進
行の解析を行なうことにより、各コードに対して理論的
に正しいスケールを選択することができる。
【0063】図9は、図8に示すコード変化検出部42
aおよびコード交換部32bの動作を示すフロー図であ
る。以下、この図8および図9を参照してコード交換動
作について説明する。
【0064】まず、コード変化検出部32aへは、対象
コードに隣接するコード情報がともに与えられ、対象コ
ードと隣接コードのルート音の距離の測定が行なわれる
(ステップS1)。時間的に前のコードと対象コードと
の測定距離とこの対象コードと時間的に後のコードとの
測定距離の符号が同じであるか否かの判定が行なわれる
(ステップS2)。これらの2つの測定距離の符号が同
じ場合には、音高は同じ方向に変化しており、コード変
換は行なう必要がなく、ステップS3においてこの対象
コードが選択される。
【0065】一方、時間的に前後するコードと対象コー
ドの距離の符号が異なる場合、音高の飛びが生じている
可能性がある。そこで、これらの2つの測定距離の情報
がともに予め定められたしきい値よりも大きいか否かの
判定が行なわれる(ステップS4)。少なくとも一方の
距離がしきい値よりも小さい場合には、音高に飛びは生
じないと判定され、ステップS3へ戻り、対象コードが
選択される。
【0066】ステップS4において、2つの測定距離が
ともにしきい値よりも大きいと判定されると、コードテ
ーブルへ対し、この対象コードおよび対象コードの変化
方向を示す符号を参照データとしてコードテーブルを検
索する(ステップS5)。この符号は、時間的に後のコ
ードに近づくような変化方向を示す符号が選択される。
このコードテーブル検索により、複数の候補コードが検
索される。ここで、コードテーブル32cにおいては、
対象コードおよび符号に対し、複数の候補コードがテー
ブル形態で格納されている。これは、単に、隣接コード
がどのようなコードであるかはコード進行状況において
異なるため、すべてに対処するためにはコードテーブル
32cの規模が大きくなるためである。
【0067】次いで、検索された複数の候補コードから
両側のコードに対し最小距離を与えるコードを検出する
(ステップS6)。このステップS6においては、元の
コードよりも飛びの小さなコードを代理コードとして採
用し、複数存在する場合には、符号および距離を考慮し
て代理コードが定められる。たとえば、以下の処理が行
なわれる。複数の候補コードそれぞれのルート音と両側
のコードのルート音との距離が測定される。距離の変化
方向が同じであり、かつ距離がともにしきい値よりも小
さいコードが選択された場合にはその候補コードが交換
すべき代理コードとして選択される。このような候補コ
ードが複数存在する場合には、両側のコードに対しての
距離の差の小さい候補コードが代理コードとして選択さ
れる。
【0068】次いで、選択された対象コードまたは検出
された代理コードがコード情報として出力される(ステ
ップS7)。このステップS7において出力されたコー
ド情報は、次いでコード進行解析部でコードの時系列的
な進行状況が解析される。
【0069】次いで、すべてのコードに対する処理が行
なわれた場合には終了し、依然未処理のコードが残って
いる場合には再びステップS1へ戻る(ステップS
8)。
【0070】上述のように、対象コードの時間的に前後
するコードのルート音の距離を測定しその距離の符号を
見ることにより、音高の飛びが生じる可能性を判定す
る。次いで、両側コードに対して最小距離を与えかつ同
一方向に変化する距離を与える(可能な場合)コードを
代理コードとして検出することにより、音高の飛びのな
いコード進行を実現することができる。
【0071】なおこのコード交換は、自動アナリーゼ2
2において行なわれずに、音高割当部24においてリア
ルタイムに実行されてもよい。すなわち、音高割当部2
4において、各コード列に対し、この図9に示す処理と
同様の処理を施す。対象コードに対し、代理コードが用
いられる場合には、この対象コードのルート音と代理コ
ードのルート音との距離だけ、この対象コードに割当て
られたスケールの各音を同一方向に同じ距離だけ移動さ
せてキーボード1の各鍵にシフト後の音高を割当てる。
この場合、コードの進行が音高の飛びを生じさせないよ
うに更新されているため、仮に、理論通りのスケールが
与えられない場合においても、このスケールが音高の飛
びを生じさせない方向に移動させられているため、特に
問題は生じない。
【0072】[インタラクション支援部の構成]図10
は、インタラクション支援部26の構成を概略的に示す
図である。図10において、インタラクション支援部2
6は、伴奏演奏者からのキーボード2を介して与えられ
る音高情報を受け、演奏コード格納部41に格納される
現在演奏中のコード情報に従って伴奏された音高情報が
いずれのテンションノートを含むかを判別するテンショ
ン判別部40と、このテンション判別部40により判別
されたテンションノートに従ってテンション/スケール
テーブル43を参照し、使用可能な音列すなわちスケー
ルを識別するスケール識別部42と、スケール識別部4
2で識別された使用可能なスケール情報に従って、使用
可能スケール格納部45に格納される使用可能スケール
から採用のスケールを選択し、この選択された採用スケ
ール情報を音高割当部へ与えるスケール選択部44を含
む。この図10において、破線ブロックで示す構成要素
44および45が、図5に示す使用スケール選択部に対
応する。使用可能スケール格納部45へは、現在演奏中
のコードに対して使用可能なスケールが図5に示す解析
結果格納部から読出されて格納される。
【0073】テンション判別部40は、この演奏コード
格納部41に格納された演奏コード情報に従ってルート
音を識別し、そのルート音を基準として伴奏演奏者から
与えられる音高情報の機能を識別し、その識別した機能
に基づいて、伴奏演奏者が演奏した音高がテンションノ
ートであるか否かおよびテンションノートである場合ど
のテンションノートであるかを判別する。
【0074】テンション/スケールテーブル43には、
図11に示すようなスケールと各スケールに対して使用
可能なテンションノートの対応関係が格納される。図1
1において、○で示すノートが対応のスケールにおいて
使用可能なテンションノートである。通常、ジャズにお
いて使用されるテンションは、♯9th(9度)、9t
h、♯9th、♯11th、♭13th、および13t
hの6種類ある。
【0075】スケール識別部42は、このテンション判
別部40により判別されたテンションノート(機能で表
わされる)を参照データとしてテンション/スケールテ
ーブル43を検索し、使用可能なスケールを識別する。
たとえば、テンション判別部40において、テンション
ノート♭9thおよび♭13thを伴奏者が用いている
と判別された場合には、スケール識別部42は、この両
者のテンションノートを使用可能なテンションノートと
して含むスケールaltered(オルタード)および
hmp5down(ハーモニック・マイナー・パーフェ
クト・5度・ダウン)を選択する。2つのスケールが採
用可能なスケールとして選択された場合には、このうち
1つのスケールが選択される(このルールについては後
に説明する)。
【0076】スケール選択部44は、このスケール識別
部42から与えられた採用可能スケール情報に従って、
使用可能スケール格納部45から採用スケールを選択
し、音高割当部へ与える。このスケール選択部44から
音高割当部へ与えられる採用スケール情報には、ルート
音情報が含まれている。
【0077】ジャズの演奏においては、あるコードにお
いてどのテンションノートを使用するかは演奏者にほぼ
任されており、非常に自由度が高い。したがって、複数
の演奏者がいる場合、テンションの衝突が生じるときが
ある。たとえば、演奏者の1人が9thのテンションノ
ートを使用している際に、別の演奏者が♭9thのテン
ションノートを使用している場合、このような短2度間
隔の音の重なりは極端に不調和な響きとなるため、通常
避けるべきである。この図10に示す構成を用いること
により、伴奏演奏者がどのテンションを使用しているか
を検出し、そのテンションと衝突しないテンションを持
つスケールを採用することができ、テンションの衝突に
よる不快な不協和音の発生を防止することができる。
【0078】このスケール選択動作は各演奏時点におい
て伴奏演奏者の演奏音高に従ってリアルタイムに実行さ
れる。したがって、1つのコードの演奏期間(または1
小節期間)において複数回スケールの変更が行なわれる
こともある。
【0079】[変更例]図12は、この不協和音発生防
止部の変更例の構成を示す図である。図12において、
インタラクション支援部26は、伴奏演奏者からキーボ
ード2を介して与えられるバッキング音高情報を、現ル
ート音情報格納部51に格納された現在演奏中のコード
のルート音情報に基づいて演奏ポジション情報に変換す
る音高/ポジション変換部50と、キーボード1から与
えられる演奏ポジション情報と音高/ポジション変換部
50から与えられる演奏ポジション情報とを受けて、音
の衝突が生じているか否かを判定する音衝突判定部52
と、音衝突判定部52による音衝突検出に応答して起動
され、音高/ポジション変換部50からの演奏ポジショ
ン情報を参照データとしてテンション/スケールテーブ
ル43を参照して、採用可能スケールを識別する採用可
能スケール識別部54と、この採用可能スケール識別部
54からの採用可能スケール情報に従って、使用可能ス
ケール格納部45に格納された使用可能スケールから採
用すべきスケールを決定して、採用スケール情報を音高
割当部へ与える採用スケール決定部56を含む。
【0080】音高/ポジション変換部50は、現ルート
音情報格納部51に格納される現ルート音とバッキング
音高情報との距離を測定し、このバッキング音高を演奏
ポジション情報すなわち機能情報に変換する。音衝突判
定部52は、演奏ポジション情報とこの音高/ポジショ
ン変換部50からの演奏ポジション情報の距離が所定の
条件(たとえば短2度間隔)であるか否かの判定を行な
い、そのルールが乱されたときに音の衝突が生じている
と判定する。この演奏ポジション情報およびバッキング
音高情報が和音の形態でそれぞれ与えられているときに
は、各演奏ポジションについての距離の測定に基づいて
音の衝突の判定が行なわれる。
【0081】採用可能スケール識別部54は、音の衝突
が生じていると音衝突判定部52において判定されたと
きにのみ音高/ポジション変換部50からの演奏ポジシ
ョン情報を参照データとして、そのバッキング音高情報
と不協和音を生じないスケールを採用可能スケールとし
て検索する。採用スケール決定部56は、この採用可能
スケール識別部54からの採用可能スケール情報(ルー
ト音情報は含まれておらず、どのスケール(音階)が用
いられるかのみが示される)にしたがって使用可能スケ
ール格納部45に格納された使用可能スケールを参照
し、対応のスケールを採用スケールとして決定する。こ
の採用スケール決定部56からの採用スケール情報に
は、ルート音情報が含まれている。
【0082】この図12に示す構成の場合においては、
伴奏演奏者の演奏する音高とキーボード1を演奏するリ
ード演奏者の演奏する音高との音の衝突が生じたときに
のみスケールの変換を行なっている。音の衝突が生じな
い場合には、採用スケール決定部56は、予め定められ
た規則に従って使用可能スケール格納部45に格納され
たスケールを採用する。
【0083】[感性的音列選択部の構成]図13は、感
性的音列選択部の構成を概略的に示す図である。この感
性的音列選択部は、感性情報入力インタフェース60か
ら与えられる感性情報に従って使用すべきスケールを選
択する。この感性的音列選択部は、インタラクション支
援部26に含まれる。
【0084】感性的音列選択部は、感性情報入力インタ
フェース60から与えられる感性情報に従って指定され
た感性を判定する感性判定部62と、各スケールに対
し、予め定められた感性情報を記憶する感性情報データ
ベース61と、この感性判定部62からの感性情報に従
って感性情報データベース61を参照し、指定された感
性に対応するスケールを検索し、使用すべき候補スケー
ルを決定する候補スケール決定部64を含む。この候補
スケール決定部64は、感性判定部62からの感性情報
が、現在のスケールに対して、相対的な感性、たとえば
「より明るく」という情報を示すときには、現在スケー
ル情報格納部63に格納される現在採用されているスケ
ール情報を基準として、指定された候補スケールを決定
する。したがって、たとえば「より明るく」という感性
情報が与えられたときには、この現在のスケールに割当
てられている「明るさ」を示す感性よりもより明るい感
性を与えるスケールが候補スケールとして決定される。
この場合、感性判定部62により判定される感性が各ス
ケールに対し、1対1に対応している場合には、この現
在スケール情報格納部63は特に設ける必要はない。
【0085】感性的音列選択部は、さらに、候補スケー
ル決定部64からの候補スケール情報に従って使用可能
スケール格納部65に格納されている現在のコードに対
して使用可能なスケールから候補スケールに対応するス
ケールを選択して使用スケール情報として音高割当部へ
与える使用スケール決定部66を含む。使用スケール決
定部66は、この使用可能スケール格納部65に、候補
スケール決定部64により決定されたスケールが存在し
ない場合には、指定された感性により近いスケールを選
択して使用スケール情報を生成する。
【0086】図14は、感性情報データベース61に格
納されるデータベースの構成の一例を示す図である。図
14においては、6つのスケール「mixolidia
n(ミキソリディアン)」、「lydian7th(リ
ディアン7度)」、「whole tone(ホールト
ーン)」、「combination dim.(コン
ビネーション・ディミニシュド)」、「altered
(オルタード)」、および「hmp5down(ハーモ
ニック・マイナー・パーファクト5度ダウン)」それぞ
れに対し、感性情報Sa、Sb、Sc、Sd、Seおよ
びSfが与えられている。
【0087】図14においては、この感性情報として、
「明るい印象」および「暗い印象」の印象の明暗に応じ
た一軸情報が一例として示される。概ね、スケールmi
xolidianおよびlydian7thは明るい印
象を与え、スケールalteredおよびhmp5do
wnは暗い印象を与え、スケールwhole tone
およびcombination diminished
は中間的(無調)な印象を与える。この一般的な印象に
従って図14に示すように、各スケールに対し印象度を
示す感性情報を付す。
【0088】この図14に示すような一軸情報の場合、
感性情報入力インタフェース60としては、ジョイステ
ィックが用いられ、このジョイスティックの変化方向お
よび変化の割合に応じて指定された感性が特定されて、
対応のスケールが指定される。このジョイスティックの
変化方向および距離の大きさに従って択一的にスケール
が選択されてもよく、また単にこのジョイスティックの
変化方向に従って現在コードを基準として「より明る
く」または「より暗く」という感性情報が入力される構
成であってもよい。
【0089】また印象の明暗のような一軸のみの感性を
用いるのではなく、「しなやかさ」などの他の印象を与
える感性情報が複数個用いられてもよい。複数種類の感
性情報が用いられる場合、各感性情報それぞれについて
候補スケールが判定される。
【0090】図15は、この図13に示す感性音列選択
部の動作を示すフロー図である。以下、この図13ない
し図15を参照して感性情報に従った音列(スケール)
選択動作について説明する。
【0091】まず、演奏が始まると、感性判定部62
は、感性情報入力インタフェース60から感性情報が入
力されたか否かを判定する(ステップS20)。感性情
報入力インタフェース60から感性情報が入力されてい
ない場合には、複数のスケールが存在する場合には、所
定の規則に従って1つのスケールが選択される(ステッ
プS21)。この所定の規則としては、コード進行がメ
ジャー進行の場合には、スケールlydian7thが
選択され、コード進行がマイナー進行の場合には、スケ
ールhmp5downが選択される。このコード進行が
メジャーであるかマイナーであるかは、自動アナリーゼ
における各コードに対するスケール選択時に決定され
る。複数のスケールが存在する場合、メジャー進行の場
合には、6つのスケールが選択され、マイナー進行の場
合には5つのスケールが選択されている。したがってこ
の自動アナリーゼによるスケール決定動作時に、各コー
ドに対しコード進行がメジャーであるかマイナーである
かを示すフラグを付けておけば、このようなマイナー/
メジャー指示フラグを見ることにより、複数のスケール
存在時において1つのスケールを選択することができ
る。1つのスケールしか使用可能でない場合には、1つ
のスケールが選択される。
【0092】感性判定部62は、感性情報入力インタフ
ェース60から感性情報が入力されたと判定すると、そ
の指定された感性を判定する(ステップS22)。この
感性の指定は、たとえば感性情報入力インタフェース6
0が前述のごとくジョイスティックの場合には、そのジ
ョイスティックの操作処理に応じて感性が識別される。
この感性情報入力インタフェース60からの入力感性情
報が相対的な感性情報を示している場合(より明るくま
たはより暗く)、候補スケール決定部64は、現在スケ
ール情報可能部63に格納された現在スケールを基準と
して、感性情報データベース61を参照し、指定された
感性情報に対応するスケールを候補スケールとして決定
する(ステップS23)。この場合、感性情報インタフ
ェース60が、その感性情報が択一的に感性を指定する
場合(最も明るくなど)、候補スケール決定部64は、
現在スケール情報格納部63を参照することなく、感性
情報データベース61を検索して、その指定された感性
に対応するスケールを選択する。
【0093】使用スケール決定部66は、この候補スケ
ール決定部64からの候補スケール情報を受けると、現
在のコードに対して使用可能なスケールのうち対応のス
ケールを検索する(ステップS24)。この使用可能ス
ケール格納部65に格納された使用可能スケールにおい
て、対応のスケールが存在する場合には、その対応のス
ケールが選択される(ステップS25)。一方、たとえ
ばスケールmixolidianが現在使用中のスケー
ルのときに「より明るく」という感性情報が入力された
場合には対応のスケールは存在しない。このような場合
および使用可能スケールが1つしか存在しない場合に
は、この候補スケールに最も近いスケール(1つしかな
い場合には1つのスケール)が選択される(ステップS
26)。この使用スケール決定部66により選択された
スケールが対応のコードの演奏時に採用されるスケール
であるとして、音高割当部へ与えられる(ステップS2
7)。以降この処理動作が、演奏がすべて終了するまで
繰返し実行される。
【0094】なお、感性情報入力インタフェース60と
しては、上述のようなジョイスティックに代えて、テン
キーのような専用の情報入力ボードが用いられてもよ
い。また、演奏者の演奏入力インタフェースの操作状
態、演奏者の姿勢および/または表情などの種々の情報
がスケール選択用感性情報として用いられてもよい。
【0095】上述のような感性情報に従ってスケールを
選択することにより、演奏者の表現したいイメージを、
表現することが可能となる。
【0096】[インタラクション支援部の他の構成]図
16は、この発明に従う演奏支援機能付楽器のテンショ
ン衝突防止および感性的音列処理機能を備えるインタラ
クション支援部の構成を概略的に示す図である。この図
16に示す構成は、図13に示す感性的音列処理部の構
成と図12に示すテンション衝突防止処理部の構成の組
合せに相当する。これらの図面において示される構成要
素と図16に示される構成要素と対応する部分には同一
の参照番号を付す。
【0097】図16において、テンション衝突防止処理
部は、伴奏演奏者からのバッキング音高情報を受けて、
現ルート音情報格納部51に格納されるルート音を基準
として、このバッキング音高の演奏ポジション(機能)
を示す情報に変換する音高/ポジション変換部50と、
演奏者からの演奏ポジション情報と音高/ポジション変
換部50からの演奏ポジション情報とを受け、その演奏
ポジションの距離を判定することにより、音高の衝突が
生じているか否かを判定する音衝突判定部52と、音衝
突判定部52からの衝突検出時に起動され、テンション
/スケールテーブル43を音高/ポジション変換部50
からの演奏ポジション情報を参照データとして検索し
て、採用可能スケールを検出する採用可能スケール識別
部54を含む。これらの部分の構成は図12に示す構成
と同じである。
【0098】テンション衝突防止処理部は、さらに、こ
の採用可能スケール識別部54からの採用可能スケール
情報に従って、現コードに対して使用可能スケール情報
が格納される使用可能スケール格納部73へアクセス
し、採用可能スケール以外のスケールを消去するスケー
ル更新部70を含む。スケール更新部70は、採用可能
スケール識別部54から採用可能スケール情報が与えら
れない場合、すなわちテンションの衝突が生じない場合
には、使用可能スケール格納部73へはアクセスしな
い。したがって使用可能スケール格納部73に格納され
たスケール情報は、テンションノートの衝突が生じた場
合にのみ書替えられる(コード変換時は別である)。
【0099】感性的音列処理部は、感性情報入力インタ
フェース60から与えられる感性情報を受けて、指定さ
れた感性を判定する感性判定部62と、感性判定部62
からの指定感性情報に従って感性情報データベース61
を検索し、現在のスケール情報を現在スケール情報格納
部63から読出してこの現在スケールを基準として候補
スケールを決定する候補スケール決定部64と、候補ス
ケール決定部64からの候補スケール情報に従って使用
可能スケール格納部73へアクセスし、対応のスケール
を検出する使用スケール決定部75を含む。この使用ス
ケール決定部75は、図15に示す動作フローと同様の
動作を行なう。これにより、候補スケール決定部64か
らの候補スケールに対応するスケールが使用可能スケー
ル格納部73に格納されていない場合には、この候補ス
ケールに最も近いスケールが選択されて使用スケール情
報として音高割当部へ与えられる。一方、感性情報入力
インタフェース60からの感性情報が与えられない場合
には、候補スケール決定部64は動作せず、何ら情報を
使用スケール決定部75へは与えない。この状態におい
ては、使用スケール決定部75は、現在のコードのコー
ド進行がマイナーであるかメジャーであるかに従って使
用可能スケール可能部73から1つのスケールを選択す
る。コード進行がメジャー進行の場合には、スケールl
ydian7thが選択され、コード進行がマイナー進
行の場合には、スケールhmp5downが選択され
る。使用可能スケール格納部73のスケールがスケール
更新部70により更新されている場合には、その対応す
るスケールが存在しない場合、使用スケール決定部75
は、その進行コードに応じて決定されたスケールに最も
近いスケールを選択する。
【0100】この図16に示す構成を利用することによ
り、演奏者相互の音の衝突を回避しつつ、演奏者の感性
に応じた演奏を実現することができる。
【0101】[演奏入力インタフェースの変更例]図1
7は、この発明に従う演奏入力インタフェースの変更例
の構成を概略的に示す図である。図17において、演奏
入力インタフェース17は、演奏者が特定することので
きる複数の領域79a〜79を備える。これらの領域7
9a〜79gの各々には、演奏ポジションが割当てら
れ、各領域に対しルート音(ROOT)、2度(2n
d)、3度(3rd)、4度(4th)、5度(5t
h)、6度(6th)および7度(7th)の音が割当
てられる。この領域79a〜79gを演奏者が特定する
と、その特定された領域に応じて演奏ポジションを示す
情報すなわち音の機能に対応する演奏ポジション情報が
生成される。この領域79a〜79gは、空間的な領域
であってもよく、またディスプレイ画面上の2次元領域
であってもよい。すなわち、演奏入力インタフェースと
しては、キーボードに限定されず、MIDI信号を生成
することができるともに、演奏ポジションを特定するこ
ともできるものであればよい。
【0102】この図17に示す演奏ポジションを有する
演奏入力インタフェースは、また、以下の効果を実現す
る。先に図6(B)に示したコードF−altered
は、以下のようなコードトーンを含む。
【0103】
【数2】
【0104】したがって、「通常のキーボードなどの鍵
盤楽器においては「ミ」の鍵に機能「III」ではなく
「♯IX」が割当てられ、「ファ」の鍵に機能「II
I」が割当てられる。したがって、コードF−alte
redの場合、機能の「各鍵への固定的割当」という特
徴が損なわれる。しかし、図17のような構成を用いれ
ば、鍵配列の影響を受けないため全てのコードについて
演奏ポジションの厳密な機能固定を実現できる。
【0105】図18は、この演奏入力インタフェースの
変更例の具体的構成を示す図である。図18において
は、演奏入力インタフェースは、人の腕に取付けられた
磁気センサ80aおよび80bと、これらの磁気センサ
80aおよび80bからの位置情報に従って、空間的な
領域における位置を検出する位置検出手段82と、この
位置検出手段82により検出された位置情報を演奏ポジ
ション情報に変換して出力する演奏ポジション識別部8
4を含む。この磁気センサ80aおよび80bは、たと
えば人の両腕がともに限られた状態がルート音のポジシ
ョンに対応付けられ、両肘を90°曲げた状態が3度の
演奏ポジションに、両肘を180°曲げて前腕および上
腕が接触した状態を7度の演奏ポジションに割当てる。
すなわち位置検出手段82は、各磁気センサ80aおよ
び80bの検出する位置情報に従って人の腕の状態を示
す情報を生成し、演奏ポジション識別部84は、この位
置検出手段82からの腕の状態を示す情報に従って演奏
ポジションを識別する。
【0106】なお、この図18に示す構成においては、
磁気センサ80aおよび80bが用いられているが、人
の腕の状態を測定するために1つの磁気センサのみが用
いられ、1つの腕の位置に従って演奏ポジションが特定
される構成が用いられてもよい。
【0107】また、トランペットなどのように、吹奏楽
器を用いる場合、「バルブの組合せ+歌口における唇お
よび吐気の強さ」の組合せが演奏ポジションに対応付け
ることができる。このトランペットを演奏入力インタフ
ェースとして用いる場合、以下の利点を得ることが考え
られる。すなわち、トランペットの場合、通常、3つの
バルブの組合せと吐気の強さによりさまざまな音高が生
成される。したがって、初心者の場合、バルブを「この
ように操作すれば音が連続的に上昇するはず」という直
観的な操作はない。したがってこのような楽器を使用す
れば、音高の連続上昇・連続下降の期待感が弱くなるた
め、音高の飛びが生じても違和感は小さくなると考えら
れる。したがってこのようなインタフェースを利用する
場合、音高の飛びを抑制するために、代理コードを使用
するという処理が不要となることが考えられる。
【0108】[他の用途]上述の説明においては、ジャ
ズの即興演奏を支援することを目的として、「バークリ
ー理論」に従って各コードに対する使用可能なスケール
を選択している。この場合、ドミナント7thのコード
に対してのみ複数のスケールが使用可能としている。し
かしながら、この場合、各コードに対し複数のスケール
を使用することが可能となるように構成されてもよい。
また、ジャズの即興演奏において別の理論が用いられて
もよい。
【0109】さらに、ジャズの即興演奏のみならず、他
のジャンルの曲においても、コードが与えられたとき
に、使用可能な音列(スケールに限定されない)が予め
定められる場合には、本発明の構成は適用可能である。
【0110】
【発明の効果】以上のように、この発明に従えば、コー
ド進行時において使用可能な音列のみを決定しているた
め、演奏者はその創造性に従って自由な即興演奏を行な
うことができ、習熟するにつれて、よりよい演奏を行な
うことができ、単なる演奏支援のみでなく、メロディ楽
器とリズム楽器の中間的な性格を持つ新たな楽器、すな
わちほぼリズム楽器を扱う感覚で「音高」を気にするこ
となく演奏を行なうことができ、然も単に音の「機能」
のみを意識することによりある程度のメロディを演奏す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従う演奏支援機能付楽器を用いる演
奏環境の構成を概略的に示す図である。
【図2】この発明に従う演奏支援システムの構成を概略
的に示す図である。
【図3】図2に示す自動アナリーゼの構成を概略的に示
す図である。
【図4】この発明に従う自動アナリーゼにより解析され
たコードに対する使用可能なスケールの一例を示す図で
ある。
【図5】図2に示す音高割当部の構成を概略的に示す図
である。
【図6】この発明において用いられる各スケールの音列
の具体例を示す図である。
【図7】図5に示すポジション/音高対応付部の処理操
作を示す図である。
【図8】図3に示す自動アナリーゼの変更例の構成を概
略的に示す図である。
【図9】図8に示す自動アナリーゼのコード交換の動作
を示すフロー図である。
【図10】図2に示すインタラクション支援部の構成を
概略的に示す図である。
【図11】図10に示すテンション/スケールテーブル
に格納されるテーブルの構成の一例を示す図である。
【図12】図10に示すインタラクション支援部の変更
例の構成を概略的に示す図である。
【図13】この発明に従うインタラクション支援部の感
性的音列選択部の構成を概略的に示す図である。
【図14】図13に示す感性情報データベースに格納さ
れるスケールと感性情報との対応関係の一例を示す図で
ある。
【図15】図13に示す感性的音列選択部の動作を示す
フロー図である。
【図16】この発明に従うインタラクション支援部の他
の構成を概略的に示すブロック図である。
【図17】この発明に従う演奏入力インタフェースの変
更例の構成を概略的に示す図である。
【図18】この発明に従う演奏入力インタフェースの変
更例の具体的例を示す図である。
【符号の説明】
1,2 キーボード 3 ワークステーション 4 シーケンサ 5 サウンドモジュール 6 アンプ/スピーカ 10 曲データデータベース 20 演奏支援システム 22 自動アナリーゼ 24 音高割当部 24a 解析結果格納部 24b 演奏ポジション/音高割当部 26 インタラクション支援部 26a スケール/テンション対応情報格納部 22a コード進行解析部 22c スケール決定部 22b ルールテーブル 34a 解析結果格納部 34b 使用スケール選択部 34c ポジション/音高対応付部 34d 音高情報生成部 32a コード変化検出部 32b コード交換部 32c コードテーブル 40 テンション判別部 41 演奏コード格納部 42 スケール識別部 43 テンション/スケールテーブル 44 スケール選択部 45 使用可能スケール格納部 50 音高/ポジション変換部 51 現ルート音情報格納部 52 音衝突判定部 54 採用可能スケール識別部 56 採用スケール決定部 60 感性情報入力インタフェース 61 感性情報データベース 62 感性判定部 63 現在スケール情報格納部 64 候補スケール決定部 65 使用可能スケール格納部 66 使用スケール決定部 70 スケール変更部 73 使用可能スケール格納部 75 使用スケール決定部 79a〜79g 演奏ポジションに対する領域 80a,80b 磁気センサ 82 位置検出手段 84 演奏ポジション識別部
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−36698(JP,A) 特開 平2−83591(JP,A) 特開 平5−61465(JP,A) 特開 平6−348271(JP,A) 特開 平2−29791(JP,A) 特開 平1−302398(JP,A) 特開 平6−318079(JP,A) 特開 平1−246585(JP,A) 実開 平1−169280(JP,U) 実開 平1−105995(JP,U) 実開 平6−16996(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10H 1/38 G10H 1/00 101 - 102 G10H 1/18

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 演奏曲のコード情報を入力して、前記コ
    ード情報の時系列的な推移状況を解析して各コードに対
    し使用可能な音列を割当てる楽曲解析手段、複数の演奏
    ポジションを有し、演奏者からの前記複数の演奏ポジシ
    ョンを介しての演奏入力情報を受ける演奏入力手段、
    よび前記楽曲解析手段からの各コードに対して割当てら
    れた音列情報に従って、各コードについて前記複数の演
    奏ポジションに対し使用可能な音高をそれぞれ割当てる
    音高割当手段を備え、前記音高割当手段は、各コードに
    ついて対応の音列において同じ機能を有する音高を前記
    複数の演奏ポジションのうちの同じ演奏ポジションへ割
    当てる手段を含み、さらに前記演奏入力手段からの前記
    複数の演奏ポジションを介しての演奏入力情報と前記音
    高割当手段の音高割当情報とに従って、音高情報を生成
    しかつ該生成した音高情報を可聴音に変換して出力する
    音生成手段を備える、演奏支援機能付楽器。
  2. 【請求項2】 前記音高割当手段は、1つのコードに対
    し複数種類の音列の割当が可能なとき、予め定められた
    規則に従って前記時系列コード情報の解析結果に従って
    1つの種類の音列を選択し、該選択音列に含まれる音高
    各々を前記複数の演奏ポジションの予め定められた演奏
    ポジションに割当てる手段を含む、請求項1記載の演奏
    支援機能付楽器。
  3. 【請求項3】 演奏曲のコード情報を入力し、前記コー
    ド情報の時系列的な推移状況を解析して各コードに対し
    て使用可能な音列を割当てる楽曲解析手段、 複数の演奏ポジションを有し、演奏者からの前記複数の
    演奏ポジションを介しての演奏入力情報を受ける第1の
    演奏入力手段、 前記楽曲解析手段からの各コードに対して割当てられた
    音列情報に従って、各コードについて前記第1の演奏入
    力手段の複数の演奏ポジションに対し、使用可能な音列
    に含まれる音高をそれぞれ割当てる音高割当手段、 演奏情報を入力するための複数の演奏ポジションを有
    し、これら複数の演奏ポジションを介して入力される演
    奏情報に対応する音高情報を生成するための少なくとも
    1個の第2の演奏入力手段、 前記第2の演奏入力手段からの入力音高情報を受け、前
    記第1の演奏入力手段へ割当てる使用可能な音列から予
    め定められた規則に従って前記第2の演奏入力手段から
    の入力音高と非調和的となる音高を含む音列を選択しな
    いように前記音高割当手段の音高割当動作を制限するた
    めの制限手段、および前記第1の演奏入力手段からの操
    作された演奏ポジションを介して入力される演奏入力情
    報と前記音高割当手段が割当てた音高情報とに従って、
    前記第1の演奏入力手段を介して入力された演奏情報に
    対応する音高情報を可聴音に変換して出力する手段を備
    える、演奏支援機能付楽器。
  4. 【請求項4】 演奏曲のコード情報を入力し、前記コー
    ド情報の時系列的な推移状況を解析して各コードに対し
    て予め定められた複数の音列群から使用可能な音列を割
    当てる楽曲解析手段、 複数の音列群各々の音列に対し感性情報を割当てる手
    段、 感性情報を入力するための入力手段、 前記コードに対し複数の音列群が割当てられたとき、前
    記入力手段から入力された感性情報と各音列に対して割
    当てられた感性情報とに従って使用可能音列を決定する
    手段、 複数の演奏入力ポジションを有し、演奏者からの前記複
    数の演奏入力ポジションを介しての演奏入力情報を受け
    る演奏入力手段、 前記決定手段により決定された使用可能音列の音高を前
    記複数の演奏ポジションに割当てるための割当手段、お
    よび前記演奏入力手段から入力される演奏入力情報およ
    び前記音高割当手段により割当てられた音高情報に従っ
    て、対応の音高情報を可聴音に変換して出力する手段を
    備える、演奏支援機能付楽器。
  5. 【請求項5】 演奏曲のコード情報を入力し、前記コー
    ド情報の時系列的な推移状況を解析して各コードに対し
    て複数の音列群から使用可能な音列を割当てる楽曲解析
    手段を備え、前記複数の音列群の各音列には、予め定め
    られた規則に従って感性情報が割当てられており、 複数の演奏ポジションを有し、演奏者からの前記複数の
    演奏ポジションを介しての演奏入力情報を入力する第1
    の演奏入力手段、 複数の演奏ポジションを有し、これら複数の演奏ポジシ
    ョンを介しての演奏入力情報を入力し、対応の音高情報
    を生成する第2の演奏入力手段、 感性情報入力手段、および前記楽曲解析手段の解析結果
    と前記第2の演奏入力手段からの音高情報と前記感性情
    報入力手段から入力された感性情報とに従って前記使用
    可能な音列から前記第2の演奏入力手段からの音高情報
    と調和し、かつ前記入力された感性情報に対応する感性
    情報を有する音列を選択して前記第1の演奏入力手段の
    複数の演奏ポジションへ選択音列に含まれる各音高を割
    当てる音高割当手段を備え、前記音高割当手段は、各コ
    ードに対して使用可能となる音列の同一機能の音高は前
    記第1の演奏入力手段の複数の演奏ポジションの同じ演
    奏ポジションに割当てる手段を含む、演奏支援機能付楽
    器。
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