JP3201517B2 - 格子電極による板材の高周波誘電加熱接着方法 - Google Patents

格子電極による板材の高周波誘電加熱接着方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】テーブルの天板、ドアー、ク
ローゼットの扉などを加工する方法として、木製の枠や
芯板の表面に合板、化粧板などの表面材を接着して一定
の厚みの製品を加工する方法が知られている。本発明
は、このように枠、芯板(パーチクルボードやMDF)
などの芯材表面に表面材を高周波誘電加熱によって接着
する方法の改良に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】芯材の表面に表面材を接着する方法に
は、芯材と表面材の間に接着剤を介在させて、ホットプ
レスやコールドプレスによって接着する方法の他、高周
波誘電加熱によって芯材に表面材を加熱接着する方法が
知られている。この、高周波誘電加熱による方法には、
図1,図2に示すように一定ピッチごとにプラス電極4
とマイナス電極5を同一平面上に交互に配列した格子電
極を用い、隣接する電極間の高周波誘電加熱によって芯
材と表面材の間にある接着剤を発熱させて接着する方法
がある。同様の技術は、例えば特開昭59−16750
に開示されている。また、特開平3−236937に
は、二つのローラーに挟圧されて移動する被加工材の表
面材に接近させて高周波印加用の電極を配置し、芯材と
表面材を連続的に加熱接着する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】格子電極によって、芯
材と表面材の間に介在させた接着剤を誘電加熱によって
加熱する方法では、芯材を形成する木材よりも接着剤の
方が誘電体損失係数が高いため木材よりも接着剤がより
選択的に自己発熱をするため、効率よく短時間で能率的
に加熱接着することができる。ところが、この方法では
必ずしも接着剤全体が均一に加熱されるものではなく、
電極からの距離によって加熱温度にバラつきを生じると
ともに、電極近くの表面材が他の部分よりも高温に加熱
される傾向がある。これにより、表面材の材質、例えば
塩化ビニール材などの誘電体損失係数の高いものによっ
ては、図6に示すように電極の位置に沿って微妙な筋模
様Aが形成されることがまれにある。また、連続的に被
加工材を移動させる方法では接着剤が加熱硬化し、接着
性能がでるまでの間安定したプレス圧にて芯材と表面材
を押圧することができないため、接着状態が均一になら
ず接着不良が起こり易いという欠点がある。
【0004】上記従来技術の欠点に鑑み、本発明は格子
電極を用い、連続処理ではない全面的な押圧状態下で、
格子電極により高周波誘電加熱する加熱接着方法におい
て、表面材に光沢、質感の変化などによって筋模様Aが
形成されることがあるという従来方法の欠点を解決する
ことを目的とするものである。すなわち、表面材の過加
熱を防止し、表面材に筋模様が形成されないか、例え多
少の筋模様が形成されるとしても、これが目立たないよ
うに芯材と表面材を充分な接着強度にて接着加工するこ
とができる方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、芯材1と表面
材2の間に接着剤3を介在させて重ねた被加工材の上か
ら、プラス電極1及びマイナス電極2を同一平面上に交
互に配列した格子電極を当接させ、隣接するプラス電極
とマイナス電極間の高周波誘電加熱によって接着剤を発
熱させる。従来の格子電極による加熱は、一回の通電に
よって隣接する電極間の接着剤を十分に発熱させ加熱接
着を完了させるものである。ところが、この方法では電
極近くの接着剤3や表面材2に過加熱の部分を生じる。
本発明は格子電極に対して加熱接着が完了するよりも短
い時間の通電を複数回行う。すなわち、格子電極と表面
材2の当接位置を間歇的に変更し、複数回高周波誘電
熱によって接着を完了させる。
【0006】上記方法では、一回の加熱によって被加工
材、特に表面材2の電極周辺部分の加熱温度が低くな
り、過加熱による表面材2の状態変化が少なくなるとと
もに、仮に表面材2に加熱の影響で多少の状態変化を生
じることがあったとしても、この状態変化は軽微であっ
て、形成される筋模様A'はその変化が少ないとともに間
隔が細かくなり、外観上目立たなくなる。また、接着剤
の加熱温度が均一化されて、過加熱や加熱不足の部分を
生じることなく安定した接着状態を実現することができ
ることになる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明格子電極による板材
の高周波誘電加熱接着方法の具体的な態様を添付の図面
に基づいて説明する。図5は、被加工材の一例を示す分
解斜視図であって、方形枠状(板状であってもよい)の
芯材1の表裏両面に接着剤3を介在させて表面材2,2
を加熱接着し、ドアーや家具の扉として加工するもので
ある。芯材1に接着する表面材は、用途によって任意で
あるが、例えば化粧合板が用いられる。この化粧合板
は、通常その表面に合成樹脂コーティング層を備えてい
るものが多い。
【0008】図1、図2は格子電極による板材の高周波
誘電加熱接着装置の一例を示す略図で、図1は搬送され
る被加工物の上面に一定間隔Pを隔てて棒状のプラス電
極4とマイナス電極5を交互に配置し、隣接するプラス
電極4とマイナス電極5の間の高周波誘電加熱によって
接着剤3を発熱させ、芯材1と表面材2を加熱接着する
ものである。プラス電極4とマイナス電極5には高周波
発振装置6が接続され高周波誘電加熱させる。図2は、
被加工物の上下両面においてそれぞれプラス電極4とマ
イナス電極5で形成する格子電極を配置し、芯材1の上
下両面に表面材2,2を同時に加熱接着するものであ
る。
【0009】図3は、電極と被加工材の関係を示す部分
拡大図である。格子電極を用いた高周波誘電加熱におい
ては、隣接するプラス電極4とマイナス電極5との間に
あって、誘電体損失係数が高い接着剤3の層がより選択
的に加熱され、接着剤3が内部発熱して芯材1と表面材
2が加熱接着される。この際、接着剤3の層が発熱する
と同時に、電極に接近した表面材の一部に斜線で示す高
温領域7を生じる。この状態で、接着が完了するまで加
熱すると、高温領域7は過加熱状態となる。したがっ
て、例えば、表面材が塩化ビニール樹脂その他の合成樹
脂材などによってコーティング層が形成されたものであ
ると、過加熱によって表面の光沢や材質感に変化が発生
したり、表面の微細な凹凸状態に変化をきたし、図6に
示すように外観上一定間隔Pごとに筋模様Aが発生する
ことがある。
【0010】そこで、高温領域7の温度が表面材2に筋
模様を発生させるに至るまでに、すなわち表面材2の一
部が過加熱されるまでに電極と表面材2の当接位置を変
更する。図示例では、接着が完了するまでに芯材1と表
面材2とで構成される被加工材を、電極の間隔Pの二分
の一だけ移動させ、改めて誘電加熱を行う。この加熱に
よって、接着剤3の層が再度加熱されるが、接着剤3の
層は先にある程度加熱されていたものであるから、少し
の加熱によって接着が完了する。すなわち、複数回の高
周波誘電加熱によって全面をなるべく均一に加熱し、接
着を完了させる。
【0011】図3に基づいて説明すると、プラス電極4
とマイナス電極5により高周波誘電加熱すると、両電極
間の接着剤3の層が発熱すると同時に、電極の付近に斜
線で示す高温領域7が発生する。この高温領域7の温度
が過加熱にならない範囲の加熱時間の後、被加工材を電
極の間隔Pの二分の一だけ移動させ、改めて高周波加熱
する。すなわち、高温領域7の前方 1/2Pの所に先の加
熱によって発生した高温領域7'が位置することになる。
なお、図3においては、間歇的な被加工材の移動ピッチ
を 1/2Pとし、二回に分けた通電で加熱接着が完了する
ようにしているが、被加工材の材質や高周波加熱の条件
に応じて、被加工材の移動ピッチを例えば、 1/3Pや 1
/4Pとし、三回、四回に分けた通電で加熱接着が完了す
るようにすることもできる。
【0012】図3に示す高温領域7及び7'の加熱温度
は、従来の方法に比較して低くなるため過加熱になるの
をなるべく回避し、表面材2に生じる変化を少なくする
ことができる。もっとも、その変化は表面材の材質によ
って異なるものであり、例え高温領域7及び7'の表面状
態に多少の変化を生じ、薄い筋模様A'を生じることがあ
っても、図4に示すように薄い筋模様A'の間隔は 1/2P
の細かい間隔となり、かつ変化そのものが軽微となるた
め外観上目立つようなものではなくなり、従来の方法に
よって製造された製品に比較して格段に改善されること
になる。
【0013】格子電極には、図示例のようにプラス電極
とマイナス電極を等間隔に配置するものの他、全てが一
定間隔ではなく規則的な所定間隔に配列されるものもあ
る。このような格子電極において、格子電極と表面板の
当接位置を変更する時には、全てあるいはできるだけ多
くの電極の当接位置が、先の当接位置と重ならないよう
にするのが好ましい。また、例え等間隔の格子電極であ
っても、その当接位置を必ずしも等分の一ずつ移動させ
る必要はなく、要は当接位置を間歇的に変更することが
できればよい。
【0014】格子電極と表面材の当接位置を変更する方
法として、電極間隔の異なる格子電極によって、複数工
程の高周波加熱で加熱接着を行わせることもできる。こ
の具体的方法としては、例えばリンク機構などによって
電極間隔を変更できるようにした一つの格子電極を用
い、電極間隔を変更する複数工程で加熱接着を完了させ
る方法や、一つの高周波加熱装置において電極間隔の異
なる複数の格子電極をセットしておき、格子電極を切替
えた複数工程によって加熱接着を完了させる方法、ある
いは電極間隔の異なる格子電極をセットした複数の高周
波加熱ステーションを配置し、被加工材を別のステーシ
ョンに移動させる複数工程によって加熱接着を完了させ
る方法などが考えられる。
【0015】
【発明の効果】請求項1記載の、本発明格子電極による
板材の高周波誘電加熱接着方法によれば、従来の方法に
比較して、完成した製品の表面に過加熱の影響による変
化によって電極に沿った明瞭な筋模様Aが形成されるこ
とがない。また仮に、加熱の影響によって製品表面に多
少変化が生じるとしても、この変化は不明瞭な筋模様A'
となるとともに、形成される筋模様A'の間隔が小さく表
れ、外観上不必要な筋模様と認識されることがなく、従
来の方法によって加工された製品に比較して、その品質
を格段に向上させることができる。
【0016】請求項2記載の発明によれば、被加工材の
表面材に過加熱を生じる部分が発生せず、過加熱による
製品の表面に筋模様が発生することをより効果的に回避
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】格子電極によって芯材の片面に表面材を重着す
る板材の加熱接着装置の一例を示す概略図、
【図2】格子電極によって芯材の両面に表面材を重着す
る板材の加熱接着装置の一例を示す概略図、
【図3】本発明方法に係る格子電極による加熱接着の状
態を示す部分拡大図、
【図4】本発明方法によって加工した製品の状態を示す
斜視図、
【図5】芯材に表面材を重着する製品の一例を示す分解
斜視図、
【図6】従来の方法によって加工された製品の状態を示
す斜視図。
【符号の説明】
1…芯材、 2…表面材、 3…接着剤、 4…プラス
電極、 5…マイナス電極、 6…高周波発振装置、
7,7'…高温領域、 A,A'…筋模様。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B29L 9:00 (72)発明者 山本 康二 大阪市天王寺区上汐6丁目3番12号 山 本ビニター株式 会社内 (56)参考文献 特開 昭59−16750(JP,A) 特開 平6−206205(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B27M 1/00 - 3/06 C09J 5/06 B29C 65/00 - 65/82 B29L 9:00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】芯材に接着剤を介在させて表面材を重ねた
    被加工材の上からプラス電極とマイナス電極を同一平面
    上に交互に配列した格子電極を当接させ、隣接するプラ
    ス電極とマイナス電極間の高周波誘電加熱によって接着
    剤を発熱させて芯材と表面材を加熱接着する方法におい
    て、格子電極と表面材の当接位置を間歇的に変更し、一
    回の高周波誘電加熱では電極近くの表面材が過加熱され
    ない時間内の加熱を行い、電極と表面材の異なる当接位
    置における複数回の高周波誘電加熱によって、芯材と表
    面材の加熱接着を完了することを特徴とする格子電極に
    よる板材の高周波誘電加熱接着方法。
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