JP3199469B2 - 水処理薬剤の水中濃度の測定方法およびその装置 - Google Patents

水処理薬剤の水中濃度の測定方法およびその装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、水処理薬剤の水中濃
度の測定方法およびその装置に関する。さらに詳しく
は、スケール防止又は金属の腐食防止のために水系に添
加された有機ホスホン酸等の有機燐酸系化合物の濃度を
連続的に測定する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】化学工場や製鉄工場などには、多くの冷
却水やボイラ水系があり、それぞれの系で腐食、スケー
ル、スライムなどの障害防止に各種水処理剤が添加され
ている。これらの薬剤は、腐食やスケール等が発生し問
題となっている冷却水系やボイラ水系に1〜数百mg/l
という低添加量の添加で有効な効果を発揮するが、その
有効濃度は、各水系により異なる。各水系の有効濃度を
ジャーテスター等の試験機で確認し、その濃度が維持さ
れるように水系にパルスポンプ等を使用して添加されて
いる。その濃度が有効濃度より高くなると経済的な損失
となり、また、有効濃度より低いと腐食やスケール障害
を防止することができず好ましくない。そのためこれら
薬剤の適切な濃度を常時管理する必要がある。
【0003】これらの薬剤は、上記のように低添加量で
添加されるため、その濃度の測定に際しては、精度の高
い分析方法が必要とされる。これらの水処理薬剤のう
ち、有機ホスホン酸等の有機燐酸系化合物は、ペルオキ
ソ二硫酸カリウムや過塩素酸等の分解用試薬を添加した
あと、高圧蒸気滅菌器等を用いて加熱することにより、
有機燐酸系化合物を無機の燐酸イオンに分解して、その
燐酸イオンを吸光光度による光学分析法により測定する
方法が、高精度で分析できるためJISやASTMで規
格化されている(JIS K 0101-1991 参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記JISの分析方法
は、オートクレーブ等の加熱装置が必要となり、連続的
測定や自動的測定ができないという問題点を有してい
た。また、測定時間が長くかかり、即時的対応が要求さ
れる現場においては、その対応の遅れにより各種障害の
発生の原因ともなっていた。
【0005】そこで、これらの薬剤の濃度を連続的、自
動的に即時測定することができる装置及び方法が求めら
れていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明の発明者らは、
この現状に鑑み研究の結果、この発明を完成させた。か
くして、この発明によれば、水処理薬剤として、ニトリ
ロトリメチルホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチ
ルホスホン酸、トリメチレンジアミンテトラメチルホス
ホン酸、1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸、1,
1−アミノエタン−ジホスホン酸、アミノメチルホスホ
ン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン
酸およびビスポリ−2−カルボキシエチルホスフィン酸
から選択される有機燐酸系化合物を含有する工程水に、
該水処理薬剤の分解用試薬を添加し、紫外線を照射して
水処理薬剤を分解し、さらに発色試薬を添加して発色さ
せ、その吸光度を測定することにより、工程水中の水処
理薬剤の量を自動的に測定することを特徴とする水処理
薬剤の水中濃度の測定方法が提供される。
【0007】この発明の水処理薬剤としては、金属腐食
防止剤、スケール防止剤、スライム防止剤等が挙げら
れ、具体的には、ニトリロトリメチルホスホン酸、エチ
レンジアミンテトラメチルホスホン酸、トリメチレンジ
アミンテトラメチルホスホン酸、1,1−ヒドロキシエ
タンジホスホン酸、1,1−アミノエタン−ジホスホン
酸、アミノメチルホスホン酸、2−ホスホノブタン−
1,2,4−トリカルボン酸、ビスポリ−2−カルボキ
シエチルホスフィン酸等の有機燐酸系化合物が挙げられ
る。
【0008】この発明の分解用試薬としては、過硫酸の
アンモニウム塩またはアルカリ金属塩、過酸化水素、過
塩素酸等の酸化剤が挙げられる。この分解用試薬の量
は、通常、有機燐酸系化合物含有工程水に対して5〜3
0g/lが適当である。この発明においては、分解用試
薬を添加した水処理薬剤を含有する工程水に該薬剤を分
解させるに十分な量の紫外線を紫外線ランプ等を用いて
照射する。この場合の紫外線の波長は240〜380nm
が好ましく、その強度は500μW/cm以上が好まし
い。この紫外線の照射は、上記工程水をガラス、シリコ
ン、テフロン、ポリエチレン又はポリプロピレン等の紫
外線透過性材料よりなる配管に注入して行われ、その強
度によって影響されるが、通常、500〜2000μW
/cmの強度で30〜120分の間で行われる。紫外線
ランプの形状は、円柱状であっても、前面照射状であっ
てもさしつかえなく必要があれば、2個以上の紫外線ラ
ンプを設けてもよい。また、配管の形状もとくに制限は
なく、紫外線の照射を充分受けやすくするために、その
表面積が大きな方が好ましい。その形状としては、蛇
管、出入口を有する円筒状中空配管又は偏平直方体状配
管が挙げられ、特に好ましい形状は、円柱状の紫外線ラ
ンプを配管が螺旋状に覆っている形状である。
【0009】上記操作により、有機燐酸系化合物が無機
燐酸イオンに分解される。つづいて、モリブデン青法と
して公知の発色試薬が添加され、その後、発色がピーク
になるまで、通常20〜30分回流し、出入口を有する
フローセル付の分光光度計に流入させる。ここで、その
吸光度を連続的に測定し、予め作成した検量線から有機
燐酸系化合物の濃度を測定する。
【0010】この測定結果に基づき、パーソナルコンピ
ューター等を介して水処理薬剤注入用ポンプを制御し
て、その濃度を適切に調整することができる。さらに、
この発明によれば、水処理薬剤として、ニトリロトリメ
チルホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホ
ン酸、トリメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、
1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸、1,1−アミ
ノエタン−ジホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、2
−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸および
ビスポリ−2−カルボキシエチルホスフィン酸から選択
される有機燐酸系化合物を含有する工程水を採取する手
段、該水処理薬剤の分解用試薬を添加する手段、紫外線
を照射して水処理薬剤を分解する手段、発色試薬を添加
して発色させる手段、およびその吸光度を測定する手段
がこの順に連続的に備えてなることを特徴とする水処理
薬剤の水中濃度の測定装置が提供される。
【0011】この発明の水処理薬剤を含有する工程水を
採取する手段は、例えば自給式の送液ポンプにより、管
径1〜10mmの送液管中へ、水処理薬剤を含有する工程
水が採取される手段である。この時、工程水が連続的に
送液管中に送液されるよう、該ポンプを制御することが
好ましい。ついで、該水処理薬剤の分解用試薬を添加す
る手段は、例えば、分解試薬槽からローラポンプによ
り、管径約1〜10mmの分岐接続配管を介して、該送液
管路に分解用試薬が注入される手段である。
【0012】紫外線を照射して水処理薬剤を分解する手
段は、例えば、円柱状の紫外線ランプの円周に螺旋状に
配設された紫外線透過性材料よりなる蛇管に導入され、
該薬剤を分解させるに十分な量の紫外線が紫外線ランプ
より、蛇管の側面より照射される手段である。ここで、
紫外線ランプは通常市販のものが適用され、その円柱の
径は2〜5cmが好ましく、蛇管の断面は中空で、円筒、
楕円または矩形状のものが好ましい。さらに好ましくは
円筒形状である。これらの肉厚は0.5〜2mmが好まし
く、断面外径は円筒のときは約5mm、楕円のときは長径
が約7mm、短径が約3mm、矩形のときは長辺が約7mm、
短辺が約3mmのものが好ましい。
【0013】他の紫外線を照射して水処理薬剤を分解す
る手段は、例えば出入口を有する円筒状中空配管(図2
参照)や扁平直方体配管(図3参照)である。その形状
は特に限定されないが、断面の厚さは約1〜10mmのも
のが好ましい。また、上記蛇管、円筒状中空配管や扁平
直方体配管の側面と紫外線ランプの距離は短いほど好ま
しく、通常約1〜20mmのものが好ましい。
【0014】さらに、発色試薬を添加して発色させる手
段は、例えば、約0.5lの発色試薬槽から、ローラ
ンプより、管径1〜10mmの分岐接続配管を介して、発
色試薬が注入され、管径1〜10mmの回流管において発
色がピークになるまで回流される手段である。ついで、
その吸光度を測定する手段は、例えば、回流水が導入さ
れる上下に出入口を有するフローセルと、発光体、干渉
フィルター付受光体によりその吸光度が測定される手段
である。
【0015】吸光度を測定された工程水は、排出管(1
3)により排出される。以下、図に基づいてこの発明を
説明する。図1は、この発明の構成説明図、図2及び図
3は、紫外線照射部分の変形部分図である。水処理薬剤
を含有する工程水を送液ポンプ(2)により送液管路
(1)に注入し、分解試薬槽(4)からポンプ
(2’)により分岐接続配管(3)を介して、該送液管
路(1)に分解試薬が注入される。分解試薬を注入
された工程水は、円柱状の紫外線ランプ(5)の円周に
螺旋状に配設された紫外線透過性材料よりなる蛇管
(6)に導入され、該薬剤を分解させるに十分な量の紫
外線が紫外線ランプ(5)より照射される。水処理薬剤
が分解された工程水に、発色試薬槽(7)からポンプ
(2")により分岐接続配管(3’)を介して、発色試
薬が注入され回流管(8)において発色がピークになる
まで回流される。その後、上下に出入口を有するフロー
セル(9)に導入され、発光体(10)、干渉フィルタ
ー付受光体(11)及び吸光度メーター(12)を有す
る既存の吸光光度計によりその吸光度が測定される。吸
光度を測定された工程水は、排出管(13)により排出
される。測定された吸光度は、予め測定された検量線に
よりパーソナルコンピューター等を介して水処理薬剤の
濃度が算出される。
【0016】
【実施例】製鉄工場の開放系循環冷却水に各種濃度のス
ケール防止剤を添加した工程水を調製し、この発明の測
定装置を用いてその濃度を測定した。同じ工程水をJI
SK 0101-1991 第185〜188に記載のペルオキソ二硫酸
カリウム分解法を用いて同様にその濃度を測定した。両
者の測定結果を図4に示す。
【0017】用いたスケール防止剤は、1,1−ヒドロ
キシエタンジホスホン酸を9重量%含有する薬剤であ
る。送液管路(1)は内径5mm、分岐接続配管(3)は
内径3mm、分岐接続配管(3’)は内径4mm、回流管
(8)は内径5mmのシリコンチューブであり、蛇管
(6)は内径5mmのガラス管である。また、用いた紫外
線ランプのピーク波長は254nm、その強度は1000
μW/cm2で、70分間照射した。回流時間は、20分
とした。
【0018】用いた分解用試薬は、過硫酸カリウムの
1.4%溶液であり、有機燐酸系化合物含有工程水に対
して、固形分として8g/lになるように添加した。発
色試薬は、JIS K 0101-1991.43.1.1.(1)(d)
によるモリブデン酸−アスコルビン酸混合溶液であり、
有機燐酸系化合物含有工程水に対して250ml/lに
なるように添加した。
【0019】
【発明の効果】この発明によれば、各種水処理薬剤とし
て各種水系に添加されている有機燐酸系化合物の水中に
おける濃度を、連続的、自動的かつ即時に分析すること
ができる。その結果に基づき、その注入量を制御するこ
とができ、有効量の薬剤濃度が維持できるため、その結
果、各種障害をより経済的に防止することができるとい
う効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す構成説明図である。
【図2】紫外線照射部分の変形部分図である。
【図3】紫外線照射部分の変形部分図である。
【図4】本発明の方法とJIS法で測定したホスホン酸
濃度の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1 送液管路 2,2’,2'' ポンプ 3,3’ 分岐接続配管 4 分解試薬槽 5 紫外線ランプ 6 蛇管 6’ 円筒状中空配管 6'' 偏平直方体状配管 7 発色試薬槽 8 回流管 9 上下に出入口を有するフローセル 10 発光体 11 干渉フィルター付受光体 12 吸光度メーター 13 排出管
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G01N 33/18 G01N 33/18 Z (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 21/77 C02F 1/00 C02F 5/00 C02F 5/14 G01N 31/22 122 G01N 33/18

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水処理薬剤として、ニトリロトリメチル
    ホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン
    酸、トリメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、
    1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸、1,1−アミ
    ノエタン−ジホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、2
    −ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸および
    ビスポリ−2−カルボキシエチルホスフィン酸から選択
    される有機燐酸系化合物を含有する工程水に、該水処理
    薬剤の分解用試薬を添加し、紫外線を照射して水処理薬
    剤を分解し、さらに発色試薬を添加して発色させ、その
    吸光度を測定することにより、工程水中の水処理薬剤の
    量を自動的に測定することを特徴とする水処理薬剤の水
    中濃度の測定方法。
  2. 【請求項2】 紫外線を照射して水処理薬剤を分解する
    方法が、紫外線透過性材料より形成された蛇管、円筒状
    中空配管または扁平直方体配管に、該工程水を流通さ
    せ、その側面より紫外線を照射する方法である請求項
    記載の測定方法。
  3. 【請求項3】 水処理薬剤として、ニトリロトリメチル
    ホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン
    酸、トリメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、
    1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸、1,1−アミ
    ノエタン−ジホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、2
    −ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸および
    ビスポリ−2−カルボキシエチルホスフィン酸から選択
    される有機燐酸系化合物を含有する工程水を採取する手
    段、該水処理薬剤の分解用試薬を添加する手段、紫外線
    を照射して水処理薬剤を分解する手段、発色試薬を添加
    して発色させる手段、およびその吸光度を測定する手段
    がこの順に連続的に備えてなることを特徴とする水処理
    薬剤の水中濃度の測定装置。
  4. 【請求項4】 紫外線を照射して水処理薬剤を分解する
    手段が、紫外線透過性材料より形成された蛇管、円筒状
    中空配管または扁平直方体配管に、該工程水を流通さ
    せ、その側面より紫外線を照射する手段である請求項
    記載の測定装置。
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