JP3196518B2 - 繊維強化樹脂歯車の製造方法 - Google Patents

繊維強化樹脂歯車の製造方法

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JP3196518B2
JP3196518B2 JP21003394A JP21003394A JP3196518B2 JP 3196518 B2 JP3196518 B2 JP 3196518B2 JP 21003394 A JP21003394 A JP 21003394A JP 21003394 A JP21003394 A JP 21003394A JP 3196518 B2 JP3196518 B2 JP 3196518B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は繊維強化樹脂歯車の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】繊維強化樹脂歯車は、噛合音の低減や軽
量化等の利点を有するため、近年種々の分野で多用され
つつある。繊維強化樹脂歯車の製造方法として、紡織布
に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを用い、プ
リプレグの長手方向の端縁からプリプレグをロール状に
巻回し、棒状巻回体を形成する巻回工程と、棒状巻回体
を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビティに配置し、
加圧加熱することにより、円盤状の歯車粗形材を形成す
る成形工程と、歯車粗形材の外周に歯部を形成する創歯
工程とを順に実施するものが知られている(特開平4−
8956号公報)。
【0003】また繊維強化樹脂歯車の別の製造方法とし
て、紡織布を用い、紡織布の長手方向の端縁から紡織布
をロール状に巻回し、棒状巻回体を形成する巻回工程
と、棒状巻回体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビ
ティに配置し、キャビティに液状樹脂を注入し、加圧し
つつ加熱硬化することにより、円盤状の歯車粗形材を形
成する成形工程と、歯車粗形材の外周に歯部を形成する
創歯工程とを順に実施するものが知られている(特開平
2−241729号公報)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した特開平4−8
956号公報に係る方法では、紡織布に樹脂を含浸させ
た半硬化状態のプリプレグを用いている。プリプレグは
適度なタック性即ちべたつき性をもつため、巻き戻りが
ほとんど無く、ロール状つまり断面渦巻き状に巻回して
賦形するのが比較的容易である。しかし、プリプレグを
用いる方法では、繊維強化樹脂歯車の内部にエアが残留
し易い問題がある。この場合、繊維強化樹脂歯車の強度
の信頼性の面では必ずしも充分ではない。
【0005】また上記した特開平2−241729号公
報では、紡織布をロール状に良好に巻回するのが必ずし
も容易ではない。紡織布の巻き戻り等が生じる等のため
である。本発明は上記した実情に鑑みなされたものであ
り、プリプレグに代えて紡織布等のシート状繊維集合体
を用いて繊維強化樹脂歯車を形成する方式を採用したも
のであり、各請求項の共通課題は、線材を用い、シート
状繊維集合体をロール状に巻回する際に線材を芯体とし
て用いることにより、シート状繊維集合体を良好に巻回
できるようにした繊維強化樹脂歯車の製造方法を提供す
ることにある。
【0006】請求項1の課題は、線材にこれの長手方向
に張力をかけることにより、シート状繊維集合体を良好
に巻回できるようにした繊維強化樹脂歯車の製造方法を
提供することにある。請求項2の課題は、線材をこれが
シート状繊維集合体を縫うようにシート状繊維集合体に
貫通させることにより、巻回の際において特に巻回初期
において、シート状繊維集合体と線材との外れを抑える
のに有利な繊維強化樹脂歯車の製造方法を提供すること
にある。
【0007】請求項3の課題は、線材をシート状繊維集
合体に縫製糸で縫製して一体性を高めることにより、巻
回の際において特に巻回初期においてシート状繊維集合
体と線材との外れを抑えるのに有利な繊維強化樹脂歯車
の製造方法を提供することにある。請求項4の課題は、
巻回初期において線材の長手方向の一端部の回転と他端
部の回転とを非同期にした状態で線材を回転させること
により、シート状繊維集合体の巻き始め部分を捩じり、
巻回の際において特に巻回初期において、シート状繊維
集合体と線材との外れを抑えるのに有利な繊維強化樹脂
歯車の製造方法を提供することにある。
【0008】請求項5の課題は、シート状繊維集合体の
巻回方向の中間領域から巻き始めることにより、巻回の
際において特に巻回初期においてシート状繊維集合体と
線材との外れを抑えるのに有利であり、しかも歯部の歯
元付近の強度確保に有利な繊維強化樹脂歯車の製造方法
を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る繊維強化
樹脂歯車の製造方法は、シート状繊維集合体をロール状
に巻回して棒状巻回体を形成する巻回工程と、棒状巻回
体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビティに配置
し、キャビティに樹脂を注入して歯車粗形材を形成する
成形工程、歯車粗形材に歯部を形成する創歯工程とを順
に実施する繊維強化樹脂歯車の製造方法において、巻回
工程は、並設された少なくとも2個の線材を用い、線材
でシート状繊維集合体を挟むと共に、少なくとも巻回当
初において線材にこれの長手方向に張力をかけつつ、線
材の回りでシート状繊維集合体をロール状に巻回して棒
状巻回体を形成することを特徴とするものである。
【0010】請求項2に係る繊維強化樹脂歯車の製造方
法は、シート状繊維集合体をロール状に巻回して棒状巻
回体を形成する巻回工程と、棒状巻回体を輪状に曲げた
輪状体を成形型のキャビティに配置し、キャビティに樹
脂を注入して歯車粗形材を形成する成形工程、歯車粗形
材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施する繊維強化
樹脂歯車の製造方法において、巻回工程は、少なくとも
1個の線材をこれがシート状繊維集合体を縫うようにシ
ート状繊維集合体に貫通させ、少なくとも巻回当初にお
いて線材にこれの長手方向に張力をかけつつ、線材の回
りでシート状繊維集合体をロール状に巻回して棒状巻回
体を形成することを特徴とするものである。
【0011】請求項3に係る繊維強化樹脂歯車の製造方
法は、シート状繊維集合体をロール状に巻回して棒状巻
回体を形成する巻回工程と、棒状巻回体を輪状に曲げた
輪状体を成形型のキャビティに配置し、キャビティに樹
脂を注入して歯車粗形材を形成する成形工程、歯車粗形
材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施する繊維強化
樹脂歯車の製造方法において、巻回工程は、少なくとも
1個の線材をシート状繊維集合体に縫製糸で縫製し、
なくとも巻回当初において線材にこれの長手方向に張力
をかけつつ、線材の回りでシート状繊維集合体をロール
状に巻回して棒状巻回体を形成することを特徴とするも
のである。
【0012】請求項4に係る繊維強化樹脂歯車の製造方
法は、シート状繊維集合体をロール状に巻回して巻回
し、棒状巻回体を形成するする巻回工程と、棒状巻回体
を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビティに配置し、
キャビティに樹脂を注入して歯車粗形材を形成する成形
工程、歯車粗形材に歯部を形成する創歯工程とを順に実
施する繊維強化樹脂歯車の製造方法において、巻回工程
は、並設された少なくとも2個の線材を用い、線材でシ
ート状繊維集合体を挟むと共に線材の回りにシート状繊
維集合体を巻回するものであり、巻回当初においては、
線材にこれの長手方向に張力をかけつつ、線材の長手方
向の一端部の回転と他端部の回転とを非同期にした状態
で線材を回転させることを特徴とするものである。
【0013】請求項5に係る繊維強化樹脂歯車の製造方
法は、シート状繊維集合体をロール状に巻回して棒状巻
回体を形成する巻回工程と、棒状巻回体を輪状に曲げた
輪状体を成形型のキャビティに配置し、キャビティに樹
脂を注入して歯車粗形材を形成する成形工程、歯車粗形
材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施する繊維強化
樹脂歯車の製造方法において、巻回工程は、並設された
少なくとも2個の線材を用い、シート状繊維集合体のう
ち巻回方向における中間領域を線材で挟んだ状態で、
なくとも巻回当初において線材にこれの長手方向に張力
をかけつつ、線材の回りにシート状繊維集合体を巻回し
て棒状巻回体を形成することを特徴とするものである。
【0014】
【作用及び発明の効果】本発明方法で用いる線材は、シ
ート状繊維集合体をロール状に巻回する際に芯体として
機能するものである。線材の材質は適宜選択でき、ピア
ノ線等の硬鋼系、軟鋼系、アルミ合金系、チタン合金系
等の金属、或いは、硬質樹脂等の樹脂を採用できる。ま
た線材は、シート状繊維集合体と同材質または類似した
材質のものも採用できる。場合によってはカーボン繊
維、ガラス繊維、有機繊維等を採用することもできる。
線材の断面は適宜選択でき、円形状、楕円形状が一般的
であるが、四角形状、三角形状等の角形状でも良い。線
材の断面形状により、線材の剛性を高めることもでき
る。
【0015】本発明方法では巻回終了後に棒状巻回体か
ら線材を抜き取ることが一般的である。この様に棒状巻
回体から線材を抜き取る場合には、抜き取り跡は、最終
製品である繊維強化樹脂歯車において、繊維による補強
が充分期待できない『樹脂のみの層』となることがあ
る。従って『樹脂のみの層』を避ける意味では、線材の
断面積は小さな方が好ましい。断面円形状の線材を棒状
巻回体から抜き取る場合には、線材の直径を例えば0.
1〜1mmの様に小さくできる。
【0016】本発明方法で用いるシート状繊維集合体
は、有機繊維又は無機繊維等の繊維の集合体であり、織
物布状、網状、不織布状等を適宜採用できる。繊維とし
ては、具体的にはメタ系アラミド繊維等の軟質繊維、パ
ラ系アラミド繊維、カーボン繊維、ガラス繊維等の硬質
繊維といった公知の繊維を採用できる。シート状繊維集
合体において、隣設する繊維間の間隔は適宜選択でき
る。
【0017】本発明方法で用いる樹脂は、輪状体に付着
して最終製品である繊維強化樹脂歯車のマトリツクス樹
脂を形成するものであり、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂
を採用でき、より具体的にはポリアミド樹脂、ポリエス
テル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、PES、
PEEK、PAI等を採用できる。本発明に係る成形工
程は、棒状巻回体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャ
ビティに配置し、キャビティに樹脂を注入して歯車粗形
材を形成する工程である。成形工程では、成形型のキャ
ビティを減圧または真空とした状態で液状樹脂を注入、
固化して行い得る。この場合には繊維強化樹脂歯車の内
部におけるボイドの軽減または回避に有利である。この
場合VARI(Vacuum Asisted Res
in Injection)成形法を採用できる。
【0018】本発明方法に係る創歯工程は歯車粗形材に
歯部を形成する工程であり、例えば機械加工により歯部
を形成できる。歯部は外歯、内歯のいずれでも良い。と
ころで、線材は撓み変形し易いものである。この様に撓
み変形し易い線材によりシート状繊維集合体を挟持する
ことは容易ではない。この点請求項1の方法の巻回工程
においては、線材の回りにシート状繊維集合体をロール
状に巻回する際に、線材にこれの長手方向に張力をかけ
るので、線材の剛性は確保され、線材は芯体としての機
能は確保され、線材でシート状繊維集合体を良好に挟持
することができる。
【0019】殊に、シート状繊維集合体に張力をかけこ
れを緊張させた場合であっても、線材は、シート状繊維
集合体の張力に抗して直線状に維持でき、従って線材の
大きな撓み変形を軽減または回避できる。故に請求項1
の方法によれば、線材でシート状繊維集合体を良好に挟
持することができ、シート状繊維集合体の保持性が向上
すると共に、シート状繊維集合体を密に巻回するのに有
利であり、この意味で最終製品である繊維強化樹脂歯車
の強度確保に有利である。
【0020】また請求項1の方法によれば、線材にこれ
の長手方向に張力をかけるので、断面積の小さな線材を
用いたとしても、線材の剛性、線材の芯体としての機能
は確保され、線材の回りにシート状繊維集合体をロール
状に良好に巻回することができる。この様に断面積の小
さな線材を採用できるので、線材を棒状巻回体から抜き
取る場合においては、線材の抜き取り跡である空隙を小
さくできる利点が得られる。この隙間は、強化繊維によ
る強化をあまり期待できないので、最終製品である繊維
強化樹脂歯車の強度を低下させる要因となりやすいもの
である。この様に請求項1の方法によれば、断面積の小
さな線材を採用でき、線材の抜き取り跡である空隙を小
さくできるので、最終製品である繊維強化樹脂歯車の強
度確保に有利である。
【0021】請求項2の方法の巻回工程においては、線
材をこれが縫うようにシート状繊維集合体に貫通させる
ので、線材とシート状繊維集合体との係止性が向上す
る。従って、巻回の際において特に巻回当初において、
線材とシート状繊維集合体とが外れることを軽減または
回避できる。勿論、シート状繊維集合体にかける張力を
大きくした場合であっても、線材とシート状繊維集合体
とが外れることを軽減または回避できる。よって、それ
だけ緻密に巻回を行うことができ、密な棒状巻回体が得
られ、従って最終製品である繊維強化樹脂歯車の強度確
保に有利である。勿論、請求項2の方法の巻回工程にお
いても、線材にこれの長手方向に張力をかけてシート状
繊維集合体を巻回する。少なくとも巻回当初において
は、線材に張力をかける。
【0022】請求項3の方法の巻回工程においては、線
材とシート状繊維集合体とを一体的に縫製するので、線
材とシート状繊維集合体との係止性が向上する。従っ
て、巻回の際において特に巻回当初において、線材とシ
ート状繊維集合体とが外れることを軽減または回避でき
る。勿論、シート状繊維集合体にかける張力を大きくし
た場合であっても、線材とシート状繊維集合体とが外れ
ることを軽減または回避できる。よって、それだけ緻密
に巻回を行うことができ、密な棒状巻回体が得られ、繊
維強化樹脂歯車の強度確保に有利である。
【0023】勿論、請求項3の方法の巻回工程において
も、線材にこれの長手方向に張力をかけてシート状繊維
集合体を巻回する。少なくとも巻回当初においては、線
材に張力をかける。請求項4の方法の巻回工程において
は、巻回初期においては、線材の長手方向の一端部の回
転と他端部の回転とを非同期にするので、シート状繊維
集合体を挟んだ線材が捩じれることになる。よって巻回
当初においてシート状繊維集合体も捩じれることにな
り、線材とシート状繊維集合体との係止性が向上する。
従って巻回の際において特に巻回当初において、線材と
シート状繊維集合体とが外れることを軽減または回避で
きる。勿論、シート状繊維集合体にかける張力を大きく
した場合であっても、線材とシート状繊維集合体とが外
れることを軽減または回避できる。よって、それだけ緻
密に巻回を行うことができ、繊維強化樹脂歯車の強度確
保に有利である。
【0024】勿論、請求項4の方法の巻回工程において
も、線材にこれの長手方向に張力をかけてシート状繊維
集合体を巻回する。少なくとも巻回当初においては、線
材に張力をかける。請求項5の方法の巻回工程において
は、シート状繊維集合体の長手方向の中間領域を線材で
挟んだ状態で、線材の回りにシート状繊維集合体を巻回
するので、仮にシート状繊維集合体が線材に対して滑っ
たとしても、線材とシート状繊維集合体とが外れること
を軽減または回避できる。またシート状繊維集合体の巻
回方向の端部は、繊維の連続性に乏しいため、強化繊維
による高強度化に充分ではなく、そのため該端部が最終
製品である繊維強化樹脂歯車の中間領域に位置すること
は好ましくない。この点請求項5の方法の様に、シート
状繊維集合体の長手方向の中央域を線材で挟んだ状態
で、線材の回りにシート状繊維集合体を巻回するのでシ
ート状繊維集合体の巻回方向の端部は、棒状巻回体の渦
巻きの中央には位置しないので、最終製品である繊維強
化樹脂歯車の中央域特に歯部の歯元付近にも位置せず、
従って繊維強化樹脂歯車の強度確保に有利である。勿
論、請求項5の方法の巻回工程においても、線材にこれ
の長手方向に張力をかけてシート状繊維集合体を巻回す
る。少なくとも巻回当初においては、線材に張力をかけ
る。
【0025】
【実施例】以下、本発明方法に係る各実施例にて具体的
に説明する。先ず実施例1から説明する。 (実施例1) 素材 シート状繊維集合体として、比較的軟質なメタ系アラミ
ド繊維のクロス材1を用いた。これは、最終製品である
繊維強化樹脂歯車の歯部の噛合音の低減、歯部の切削性
等の要因を考慮したものである。クロス材1の特性を表
1に示す。
【0026】クロス材1において、その長手方向に沿う
繊維1yが織りこまれ、幅方向に沿う繊維1xが織りこ
まれている。クロス材1の巾D1は235mmとした。
更に繊維強化樹脂歯車のマトリックス樹脂として、ポリ
アミド系樹脂(武田薬品工業(株)製「CPレジン」)
を用いた。
【0027】
【表1】 巻回工程 本実施例に係る巻回工程では、図1に示すように、線材
2、3として2本のピアノ線(硬鋼、直径:1mm)を
用いた。そして一方の線材2をクロス材1の上側に、他
方の線材3をクロス材1の下側に配置し、この状態で、
クロス材1の長さ方向のうちの端部1aをその厚み方向
において2本の線材2、3で挟み込む。このとき線材
2、3の長手方向の一端部2a、3aは、張力付与装置
4の線材ホルダ46aに保持されている。また線材2、
3の長手方向の他端部2b、3bは張力付与装置4の線
材ホルダ46bに保持されている。
【0028】本実施例では、線材ホルダ46aと線材ホ
ルダ46bとを互いに離間させる方向、つまり矢印X1
方向に変位させ、線材2、3にこれの長手方向に張力を
かける。これにより線材2、3の剛性が確保され、線材
2、3によりクロス材1の端部1aは良好に挟まれる。
この様にした状態で、線材ホルダ46aと線材ホルダ4
6bとを矢印A1方向に同期回転させ、線材2、3も同
方向に同期回転させ、これによりクロス材1を端部1a
からロール状つまり断面渦巻き状に巻回する。なお線材
ホルダ46a、46bの回転は適宜選択できるが、例え
ば10〜500rpm、特に60〜200rpm程度に
できる。
【0029】本実施例においては上記の様にクロス材1
を巻回する場合には、クロス材1にこれの巻回方向につ
まり矢印Y1方向に張力をかける。これによりクロス材
1の緩み、巻きしわ等が防止され、緻密な巻回が可能と
なる。本実施例で用いるクロス材1は、樹脂が含浸され
ている従来方法で用いるプリプレグとは異なり、樹脂が
ないぶん柔軟であり、より緻密な巻回が可能となる。上
記の様な巻回によりアラミド繊維のクロス材1からなる
ロール状の棒状巻回体60を得た。
【0030】そして、矢印Y1方向におけるクロス材1
の巻き取り長さが350mmとなったところで、棒状巻
回体60の終端部を縫製糸でステッチングして、棒状巻
回体60の巻き戻りのないようにした。その後に棒状巻
回体60の端部をハサミ61等の切断手段により仮想線
E1(図2参照)にそって切断した。ステッチングした
縫製糸は、クロス材1と同材質の20texアラミド繊
維とした。これにより異材質性の回避に有利である。
【0031】次いで、線材2、3を矢印X1方向に相対
移動させ、棒状巻回体60の巻き中心より線材2、3を
それぞれ引き抜いた。この場合、同時に引き抜いても良
いし、個別に引き抜いても良い。線材2、3の直径は小
さく撓み性があるため、引き抜き作業は容易になし得
る。さらに、図3から理解できる様に、この棒状巻回体
60を矢印F1方向に湾曲させて輪状にし、その端部同
士の合せ目60kを縫製糸60i(つまりクロス材1と
同材質の20texのアラミド繊維)でステッチングし
て止め、これによりリング状をなす輪状体63を得た。
【0032】この輪状体63を観察したところ、棒状巻
回体60から線材2、3を抜いた跡である微小な隙間が
存在する以外には、クロス材1の巻きシワ等の様な、大
きな繊維配向乱れにつながるような不具合は発生してい
なかった。さて図4及び図5は、本実施例で用いた線材
2、3に張力をかける張力付与装置4の一例を示す。こ
の装置4では、固定台40に立シャフト41が立設され
ており、立シャフト41に基部42が保持されている。
基部42の図略の螺孔には、横軸型の張力付与軸43の
一端側の雄螺子部43aが螺進退可能に螺合されてい
る。更に張力付与軸43の他端部側には軸受44を介し
て線材ホルダ46aが保持され、張力付与軸43の軸芯
P1の回りで回転可能とされている。軸受44はインナ
ーリング部44uとアウターリング部44vとその間に
介置された適数個の球体44wとを備えている。
【0033】線材ホルダ46aは線材2、3の長手方向
の一端部2a、3aを保持する機能をもつものである。
線材ホルダ46bは線材2、3の長手方向の他端部2
b、3bを保持する機能をもつものである。線材ホルダ
46a、46bは、差し込み口47nを備えたホルダ体
47と、ホルダ体47の螺孔47cに螺進退可能に螺合
された止め螺子48とを備えている。
【0034】ここで線材ホルダ46aの差し込み口47
nに線材2、3の長手方向の端部2a、3aを差し込ん
だ状態で、止め螺子48を螺進させれば、止め螺子48
の先端部48hで線材2、3の端部2a、3aがクラン
プ挟持され、これにより線材2、3の端部2a、3aは
線材ホルダ46aに保持される。他方の線材ホルダ46
bについても同様な形態で線材2、3の端部2b、3b
を保持できる。
【0035】この様に線材2、3を線材ホルダ46a、
46bに保持した状態で、軸受44の転動性を利用して
張力付与軸43の軸芯P1に対して線材ホルダ46a、
46bを矢印A1方向に回転させれば、クロス材1が線
材2、3を芯体としてロール状に巻回される。この際、
張力付与軸43の面取り部43wに工具等を宛てがい、
張力付与軸43を基部42に対して適宜回転させれば、
張力付与軸43の雄螺子部43aが基部42の図略の螺
孔内で螺進し、これにより張力付与軸43は矢印X1方
向に変位し、線材ホルダ46aが同方向に変位し、線材
2、3が同方向に付勢される。他方の線材ホルダ46b
についても同様である。これにより線材2、3にこれの
長手方向にそって張力をかけることができる。
【0036】なお図5(B)に示す様に線材2と線材3
との間にゴム材、発泡体等の弾性部材48xを介在させ
ることも好ましい。この場合には線材2、3の端部2
a、3aや端部2b、3bの保持性が向上する。 成形工程 本実施例に係る成形工程では、図6に示す成形型8を用
いる。成形型8は、パンチ型状の上型80と、雌型状の
下型81と、抜きピン82と、樹脂注入路であるゲート
83とを備えている。そして、2個の輪状体63を、1
40℃の成形型8の下型81のキャビティ85内へ上下
に重ねた状態で配置する。そして、輪状体63が充分に
昇温した後に、図6に示す様に下型81と上型80とを
型締めし、輪状体63を圧縮した。続いて、成形型8の
ゲート83を介してキャビティ85内を真空脱気する。
その後130℃に加熱したポリアミド樹脂を5kg/c
2 の圧力でゲート83から注入し、樹脂が固化するま
で30分間保持し、これにより歯車粗形材を成形した。
型開き後に抜きピン82を作動させて歯車粗形材をキャ
ビティ85から離型する。なお歯車粗形材中のアラミド
繊維の含有率は50vol%であるが、これに限定され
るものではなく、繊維強化樹脂歯車の種類によっては1
0〜80vol%の様に適宜変更できる。また成形工程
では輪状体63を圧縮した状態で真空脱気しているの
で、真空吸引に伴う輪状体63の繊維のずれや異常変位
を回避できる。 創歯工程 得られた歯車粗形材の外周部にカッターにより機械加工
を施して、歯切り加工を行い、繊維強化樹脂歯車9を形
成した。この繊維強化樹脂歯車9の諸元を表2に示す。
【0037】
【表2】 上記の様して得られた繊維強化樹脂歯車9の材料組織状
態を試験したところ、シート状繊維集合体で構成された
強化繊維は大きな配向乱れを起こすことなく配向してい
た。繊維強化樹脂歯車9の歯部90付近は、図7に示す
様に配向していた。即ち、図7に示す様に繊維強化樹脂
歯車9の歯部90の歯面90cにおいては『渦巻き状』
や『木の年輪状』に配向する強化繊維90hが存在して
おり、更に歯部90の軸端面90eにおいては放射方向
に配向する強化繊維90iが存在しており、周方向に配
向する強化繊維90kが存在していた。
【0038】更に強化樹脂歯車の内部組織観察を行った
ところ、ボイドが実質的にない良好な組織が得られたこ
とが確認された。更に得られた繊維強化樹脂歯車9の歯
部90の強度を試験するため、図8に示す様に隣設する
歯部90間に球状ピン98(直径:6mm)を押し込
み、歯部90が曲げ破壊する際の破壊荷重を試験した。
試験結果を図9の実施例1の欄に示す。図9に示す様に
実施例1の場合には破壊荷重は2.8KNであった。
【0039】(比較例)実施例1と同じシート状繊維集
合体としてアラミド繊維クロス、樹脂マトリックスとし
てポリアミド系樹脂を用い、従来方法にて繊維強化樹脂
歯車を製造した。即ち、この比較例では、130℃に溶
融した樹脂中へアラミド繊維クロスを浸漬させ、これに
よりプリプレグを作製した。この様に樹脂を含浸させた
プリプレグを速やかに常温まで冷却した後、約20分間
120℃に加熱して、プリプレグ中の樹脂が半硬化した
状態とした。
【0040】このプリプレグを、実施例1のクロス材1
と同様に巾235mm、長さ350mmへと切断した
後、約70℃に加熱しつつプリプレグの一端から手作業
でロール状つまり断面渦巻き状に巻き取った。これによ
り比較例に係る棒状巻回体を形成した。プリプレグは、
適度なべたつき性あるタック性を持っているため、巻戻
り等は無い。
【0041】次に、プリプレグで形成した棒状巻回体が
冷え切る前に(換言すれば、高温で柔いうちに)、速や
かに輪状に湾曲させ、棒状巻回体の端部である合せ目を
押し合せて接着(タック性による)し、そのまま常温ま
で冷却させて、輪状体とした。この輪状体を2個、実施
例1と同様に成形型8のキャビティ85内に上下に重ね
た状態で配置した。そして輪状体63が型温(約140
℃)付近まで昇温するまで待った後、徐々に上型80を
押し下げ、過剰な樹脂を絞り出しつつ圧縮し、上型80
を完全に押し下げた状態で約20分間保持し、樹脂を加
熱硬化させて、歯車粗形材を成形した。比較例の歯車粗
形材は実施例1の歯車粗形材と基本的に同様の形状、寸
法である。
【0042】得られた歯車粗形材の外周部を実施例1と
同じ形状へと機械加工して歯部を形成し、比較例に係る
繊維強化樹脂歯車とした。比較例に係る繊維強化樹脂歯
車の材料組織を調べたところ、強化繊維の大きな配向乱
れは存在しないものの、数10μm〜100μm程度の
ボイドが散在していることが確認された。
【0043】この比較例に係る繊維強化樹脂歯車を用
い、歯先曲げ破壊荷重を実施例1と同様の方法で測定し
たところ、図9の比較例の欄に示す様に破壊荷重は1.
6KNと低かった。比較例に係る繊維強化樹脂歯車にお
いても、基本的には強化繊維の配向は図7に示す形態と
同様であった。
【0044】この様に実施例1と比較例とでは強化繊維
の配向は基本的には同様であるものの、ボイドの有無に
より、1.75倍{1.75=(2.8KN/1.6K
N}もの強度差が生じる。従って、繊維強化樹脂歯車9
における補強形態として有効な渦巻き配向が持つ特徴、
特に高強度化を充分に発揮させるためには、ボイドを無
くすことがいかに重要であるかが理解できる。また、そ
れを実現する方法として、線材2、3を芯体として用い
てクロス材1のみをロール状つまり断面渦巻き状に巻回
し、真空雰囲気において樹脂を注入する方法がいかに有
効であるかが理解できる。
【0045】以上説明した様に本実施例によれば、2本
の線材2、3でクロス材1を挟み込み、線材2、3に張
力を加えた状態で、線材2、3を芯体としてクロス材1
を巻回するものであり、線材2、3の直径が小さくても
線材2、3の剛性は確保され、芯体として機能は確保さ
れ、巻回を良好になし得、密な棒状巻回体60を形成で
きる。
【0046】また線材2、3は棒状巻回体60から抜か
れるため、線材2、3の直径が小さいほど、棒状巻回体
60の中央の空隙(線材2、3の抜き跡)が小さくな
る。この空隙は、繊維強化樹脂歯車9の成形後において
強化繊維が存在しない「樹脂のみの層」を形成する場合
が多いため、繊維強化樹脂歯車9の強度確保を考慮する
と、空隙は小さいほど好ましい。かかる意味からして、
線材2、3の直径が小さいほど好ましい。しかも線材
2、3に張力をかけて強く緊張させるので、線材2、3
は小径であっても剛性は確保され、巻回の際の芯体とし
て機能できる。
【0047】本発明者が試験したところ、線材2、3の
直径が3mm以下であれば、成形型8のキャビティ85
内で輪状体63を圧縮する際に、渦巻き中心の空隙は潰
され、実質的に樹脂のみの層が発生しないことが確認さ
れた。従って線材2、3の直径は直径3mm以下が良
い。更にクロス材1のゆるみ、巻きしわ等を効果的に防
止するため、クロス材1には、その巻回方向において適
度な張力を加えることが好ましい。そのためクロス材1
にかける張力に抗する強度を線材2、3が有することが
好ましことから、線材2、3は直径0.1mm以上が好
ましい。
【0048】(実施例2)次に実施例2について説明す
る。実施例2において実施例1とは巻回工程が異なるも
のの、他の工程は実施例1と基本的に同様である。即
ち、図10に示す様に、2個の線材2、3を利用してク
ロス材1を巻き取るに際し、クロス材1の巻き始めの端
部1aに、2本の線材2、3のうちの一方の線材2をこ
れがクロス材1を縫う様にクロス材1に貫通させて係止
させる。線材2がクロス材1に貫通している状態を図1
1に模式的に示す。
【0049】この例においても線材2、3を並設する。
この場合、線材2、3にこれの長手方向に張力をかけ線
材2、3の剛性を確保する。かかる状態で、クロス材1
に矢印Y1方向の張力をかけつつ、線材ホルダ46a、
46bを矢印A1方向に同期回転させ、これによりクロ
ス材1をロール状に巻回していく。実施例2によれば、
巻回工程において、クロス材1に線材2が縫う様に貫通
しているため、クロス材1と線材2との係止性が確保さ
れる。よって、クロス材1を矢印Y1方向に引っ張る張
力の大きさを大きくした場合であっても、クロス材1が
線材2、3から脱落することを軽減または回避できる。
従って、クロス材1にかける張力の大きさを大きくで
き、緻密で確実に巻回するのに有利である。
【0050】この例においても巻回終了後に棒状巻回体
60から線材2、3を引き抜くが、引き抜きは容易であ
る。線材2、3は直径が小さいため、撓み性があるから
である。この様に形成した実施例2に係る棒状巻回体6
0を用いて、実施例1同様に成形工程、創歯工程を行
い、繊維強化樹脂歯車9を形成した。この繊維強化樹脂
歯車9についても同様に試験したところ、ボイド等の欠
陥はなかった。更に繊維の配向も良好であった。更に図
9の実施例2の欄に示す様に破壊強度は3.0KNであ
り、実施例1を上回るものであった。その理由は、クロ
ス材1の脱落のおそれを回避、軽減できるため、一層密
な棒状巻回体60を形成できるためと考えられる。
【0051】(実施例3)次に実施例3について説明す
る。実施例3において実施例1とは巻回工程が異なるも
のの、他の工程は実施例1と基本的に同様である。即
ち、図12に示す様に、2個の線材2、3を利用してク
ロス材1を巻き取るに際し、クロス材1の巻き始めの端
部1aに、2本の線材2、3を縫製糸1rにより縫製
し、クロス材1の端部1aと線材2、3とを一体化して
いる。縫製糸1rはクロス材1と同材質のものを採用で
きる。場合によっては、2個の線材2、3のうちいずれ
か一方のみを縫製糸1rで縫製してクロス材1とを一体
化することもできる。
【0052】この例においても、線材2、3にこれの長
手方向に張力をかけ、線材2、3の剛性を確保し、クロ
ス材1を巻回する。この様な実施例3によれば、クロス
材1と線材2、3とが縫製糸1rで一体的に縫製されて
いるため、クロス材1の端部1aと線材2、3との係止
性が確保される。よって、クロス材1を矢印Y1方向に
引っ張る張力の大きさを大きくした場合であっても、ク
ロス材1の端部1aが線材2、3から脱落することを軽
減または回避できる。従って、クロス材1にかける張力
の大きさを大きくでき、緻密で確実に巻回するのに有利
である。
【0053】この例においても棒状巻回体60を形成し
た後に線材2、3を引き抜くが、線材2、3は撓み性を
もつため、引き抜きは容易である。この様に形成した実
施例3に係る棒状巻回体60を用いて、実施例1同様に
成形工程、創歯工程を行い、繊維強化樹脂歯車9を形成
した。この実施例2に係る繊維強化樹脂歯車9について
も同様に試験したところ、ボイド等の欠陥はなかった。
更に繊維の配向も良好であった。更に破壊強度も良好で
あった。
【0054】(実施例4)次に実施例4について説明す
る。実施例4においては実施例1とは巻回工程が異なる
ものの、他の工程は実施例1と基本的に同様である。即
ち、図12に示す様に、クロス材1の巻き始めの端部1
aを2本の線材2、3で挟む。この状態で、一方の線材
ホルダ46aの回転と他方の線材ホルダ46bの回転と
を非同期とする。この様に非同期とした状態で線材2、
3を芯体としてクロス材1を巻き始める。この様にすれ
ば、2本の線材2、3の長手方向の一端部の回転と長手
方向の他端部の回転とは非同期であるため、2本の線材
2、3は捩じられる。これによりクロス材1の巻き始め
の端部1aも捩じりこまれる。この捩じりにより、クロ
ス材1の端部1aと線材2、3との係止性は高まる。
【0055】この例においても、線材2、3にこれの長
手方向に張力をかけ、線材2、3の剛性を確保し、クロ
ス材1を巻回する。この様な実施例4によれば、クロス
材1の端部1aと線材2、3との係止性が高まるため、
クロス材1を矢印Y1方向に引っ張る張力の大きさを大
きくした場合であっても、クロス材1の端部1aが線材
2、3から脱落することを軽減または回避できる。従っ
て、クロス材1を矢印Y1方向に引っ張る張力の大きさ
を大きくでき、緻密で確実な巻回に有利である。
【0056】なお一方の線材ホルダ46aの回転と他方
の線材ホルダ46bの回転とを非同期とするにあたって
は、一方の線材ホルダ46aを連続的に矢印A1方向に
回転させつつ、他方の線材ホルダ46bを巻回当初は所
定時間停止し、所定時間経過後に矢印A1方向に回転さ
せることにより行い得る。上記の様にして巻回初期が終
了したら、一方の線材ホルダ46aの回転と他方の線材
ホルダ46bの回転とを同期させる。これによりクロス
材1を通常通り巻回し、棒状巻回体60を形成する。
【0057】この様にして巻回が終了すれば、棒状巻回
体60から線材2、3を引き抜くが、線材2、3は撓み
性に富むため、上記した捩じれがあったとしても、線材
2、3の抜き取りは良好に達成される。この様にして形
成した実施例4に係る棒状巻回体60を用いて、実施例
1同様に成形工程、創歯工程を行い、繊維強化樹脂歯車
9を形成した。実施例2に係る繊維強化樹脂歯車9につ
いても同様に試験したところ、ボイド等の欠陥はなかっ
た。更に繊維の配向も良好であった。更に破壊強度は
3.0KNであり、実施例1を上回るものであった。
【0058】(実施例5)次に実施例5について説明す
る。実施例5においては実施例1とは巻回工程が異なる
ものの、他の工程は実施例1と基本的に同様である。即
ち、図14に示す様に、線材2、3を利用してクロス材
1を巻き取るに際し、線材2、3に張力をかけてクロス
材1の巻回方向つまり矢印Y1方向における中間領域1
zを線材2、3で挟む。この様に挟んだ状態で、クロス
材1の巻回方向つまり矢印Y1方向において張力をクロ
ス材1に作用させつつ、線材ホルダ46a、46bを矢
印A1方向に同期回転させ、これにより図15に示す様
に線材2、3の回りにクロス材1を巻回する。
【0059】この様な実施例4によれば、クロス材1を
矢印Y1方向に引っ張る張力の大きさを大きくした場合
であっても、クロス材1が線材2、3から脱落すること
を軽減または回避できる。従って、クロス材1を矢印Y
1方向に引っ張る張力の大きさを大きくでき、緻密で確
実な巻回に有利である。この様に形成した実施例5に係
る棒状巻回体60を用いて、実施例1同様に成形工程、
創歯工程を行い、繊維強化樹脂歯車9を形成した。実施
例5に係る繊維強化樹脂歯車9についても同様に試験し
たところ、ボイド等の欠陥はなかった。更に繊維の配向
も良好であった。更に図9の実施例5の欄に示す様に破
壊強度は3.4KNであり、実施例1〜4を上回るもの
であった。
【0060】ところで、強化繊維を構成するクロス材1
の巻回方向つまり矢示Y1方向における端部1aは、繊
維の連続性が乏しいので、最終製品である繊維強化樹脂
歯車9において高強度化を期待できない。従って、高強
度化が要請される歯部90の歯元の近傍に端部1aが位
置することは好ましくない。この点実施例5において
は、高強度化を期待できないクロス材1の端部1aは、
棒状巻回材60の最外周に位置させるのに有利となる。
従って最終製品である繊維強化樹脂歯車9のうち高強度
化が強く要請される歯部90の歯元の近傍に、クロス材
1の端部1aが位置すること回避するのに有利となる。
従って歯元の近傍の強度確保に有利である。
【0061】(他の例)上記した各実施例では、クロス
材1の巻回が終了して棒状巻回体60が形成されたら、
棒状巻回体60から線材2、3を抜き取ることにしてい
るが、線材2、3がクロス材1と同材質の場合には、或
いは他の事情がある場合には、線材2、3を棒状巻回体
60に残したままにして繊維強化樹脂歯車を形成するこ
ともできる。
【0062】また上記した実施例1ではクロス材1の繊
維1x、1yの配向角度は表1に示す様に0°/90°
であるが、これに限らず他の角度(例えばクロス材1の
長手方向に対して30°、35°、45°等)で配向し
ていても良い。上記した各実施例では、線材2、3に張
力をかけつつ回転させる張力付与装置として、図4及び
図5に示す装置を用いているが、これに限定されるもの
ではなく、必要に応じて適宜変更できるものである。
【0063】線材2、3の外周面に、凹部及び凸部の少
なくとも一方を形成し、線材2、3とクロス材1との係
止性を向上させることにしても良い。この場合にはクロ
ス材1の脱落回避に有利である。例えば多数本の極径小
のワイヤをロープ状に捩じることにより、1個の線材を
形成しても良い。この場合、捩じりにより線材の外表面
に凹凸が形成される。クロス材1の脱落を防止する意味
では、線材の引き抜き性も考慮しつつ、線材の外周面に
クロス材1との摩擦抵抗を高める被覆層を積層すること
もできる。上記した実施例1では線材は合計2個並設し
ているが、これに限らず合計3個、4個、5個、6個そ
れ以上であっても良い。
【0064】(付記)上記した実施例から次の様な技術
的思想も把握できる。 並設された少なくとも2個の線材の長方向の端部を差
し込み可能な差し込み口を備えた線材ホルダと、線材ホ
ルダに装備され、差し込み口に差し込まれた線材の長手
方向の端部をクランプして固定するクランプ部材と、シ
ート状繊維集合体の巻回方向において線材ホルダを回転
可能に支持するとともに線材ホルダをシート状繊維集合
体の幅方向にそって移動可能な基部とを具備する張力付
与装置。 線材にこれの長手方向に張力をかけつつ巻回工程を行
うことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の繊
維強化樹脂歯車の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の巻回工程における巻き始めの形態を
模式的に示す斜視図である。
【図2】実施例1の巻回工程における巻き終わりの形態
を模式的に示す斜視図である。
【図3】輪状体を模式的に示す斜視図である。
【図4】張力付与装置の要部を模式的に示す斜視図であ
る。
【図5】張力付与装置の要部の内部構造を示す断面図で
ある。
【図6】輪状体を成形型のキャビティ内で圧縮している
状態を模式的に示す断面図である。
【図7】繊維強化樹脂歯車の歯部付近の繊維配向を示す
構成図である。
【図8】歯部の破壊荷重を測定する試験の形態の構成図
である。
【図9】歯先破壊荷重を示すグラフである。
【図10】実施例2の巻回工程における巻き始めの形態
を模式的に示す斜視図である。
【図11】線材がクロス材を貫通している形態を模式的
に示す構成図である。
【図12】実施例3の巻回工程における巻き始めの形態
を模式的に示す斜視図である。
【図13】実施例4の巻回工程における巻き始めの形態
を模式的に示す斜視図である。
【図14】実施例5の巻回工程における巻き始めの形態
を模式的に示す斜視図である。
【図15】実施例5の巻回工程における巻き途中の形態
を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
図中、1はクロス材(シート状繊維集合体)、2、3は
線材、46a、46bは繊維ホルダ、60は棒状巻回
体、63は輪状体、8は成形型、85はキャビティ、9
は繊維強化樹脂歯車、90は歯部を示す。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シート状繊維集合体をロール状に巻回して
    棒状巻回体を形成する巻回工程と、 該棒状巻回体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビテ
    ィに配置し、該キャビティに樹脂を注入して歯車粗形材
    を形成する成形工程、 該歯車粗形材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施す
    る繊維強化樹脂歯車の製造方法において、 該巻回工程は、並設された少なくとも2個の線材を用
    い、該線材で該シート状繊維集合体を挟むと共に、少な
    くとも巻回当初において該線材にこれの長手方向に張力
    をかけつつ、該線材の回りで該シート状繊維集合体をロ
    ール状に巻回して該棒状巻回体を形成することを特徴と
    する繊維強化樹脂歯車の製造方法。
  2. 【請求項2】シート状繊維集合体をロール状に巻回して
    棒状巻回体を形成する巻回工程と、 該棒状巻回体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビテ
    ィに配置し、該キャビティに樹脂を注入して歯車粗形材
    を形成する成形工程、 該歯車粗形材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施す
    る繊維強化樹脂歯車の製造方法において、 該巻回工程は、少なくとも一個の線材をこれが該シート
    状繊維集合体を縫うようにシート状繊維集合体に貫通さ
    せ、少なくとも巻回当初において該線材にこれの長手方
    向に張力をかけつつ、該線材の回りで該シート状繊維集
    合体をロール状に巻回して該棒状巻回体を形成すること
    を特徴とする繊維強化樹脂歯車の製造方法。
  3. 【請求項3】シート状繊維集合体をロール状に巻回して
    棒状巻回体を形成する巻回工程と、 該棒状巻回体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビテ
    ィに配置し、該キャビティに樹脂を注入して歯車粗形材
    を形成する成形工程、 該歯車粗形材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施す
    る繊維強化樹脂歯車の製造方法において、 巻回工程は、少なくとも1個の線材をシート状繊維集合
    体に縫製糸で縫製し、少なくとも巻回当初において該線
    材にこれの長手方向に張力をかけつつ、該線材の回りで
    シート状繊維集合体をロール状に巻回し該棒状巻回体を
    形成することを特徴とする繊維強化樹脂歯車の製造方
    法。
  4. 【請求項4】シート状繊維集合体をロール状に巻回して
    棒状巻回体を形成する巻回工程と、 該棒状巻回体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビテ
    ィに配置し、該キャビティに樹脂を注入して歯車粗形材
    を形成する成形工程、 該歯車粗形材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施す
    る繊維強化樹脂歯車の製造方法において、 巻回工程は、並設された少なくとも2個の線材を用い、
    該線材で該シート状繊維集合体を挟むと共に該線材の回
    りに該シート状繊維集合体を巻回するものであり、巻回
    当初においては、該線材にこれの長手方向に張力をかけ
    つつ、該線材の長手方向の一端部の回転と他端部の回転
    とを非同期にした状態で該線材を回転させることを特徴
    とする繊維強化樹脂歯車の製造方法。
  5. 【請求項5】シート状繊維集合体をロール状に巻回して
    棒状巻回体を形成する巻回工程と、 該棒状巻回体を輪状に曲げた輪状体を成形型のキャビテ
    ィに配置し、該キャビティに樹脂を注入して歯車粗形材
    を形成する成形工程、 該歯車粗形材に歯部を形成する創歯工程とを順に実施す
    る繊維強化樹脂歯車の製造方法において、 巻回工程は、並設された少なくとも2個の線材を用い、
    該シート状繊維集合体のうち巻回方向における中間領域
    を線材で挟んだ状態で、少なくとも巻回当初において該
    線材にこれの長手方向に張力をかけつつ、該線材の回り
    に該シート状繊維集合体を巻回して該棒状巻回体を形成
    することを特徴とする繊維強化樹脂歯車の製造方法。
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