JP3195545B2 - 高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油 - Google Patents

高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転がり軸受装置を
有する高速切削器の前記転がり軸受装置のための潤滑油
に関するものである。詳しくは、本発明は、医療分野や
食品分野などで使用されている高速切削器(エアーター
ビンハントピース)、特にその主要な構成要素である転
がり軸受要素に適用される新規かつ高性能の潤滑油に関
するものである。更に詳しくは、本発明は、生体安全性
(生体に関する為害性が少ないこと。)に優れ、環境保
全性(安全性)に優れ、かつ耐久性のある潤滑系を実現
することができる高速切削器(エアータービンハンドピ
ース)に使用される新規かつ高性能の転がり軸受装置用
の潤滑油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高速切削器は、概略的には、各種の切削
用工具を固定保持する回転軸、前記回転軸を回転駆動さ
せるための回転駆動装置、及び前記回転軸を回転自在に
支承する軸受部、とから構成されるものである。
【0003】この種の高速切削器として、例えば医療歯
科用の高速切削器(エアータービンハンドピース)を示
すことができる。そして、前記した医療歯科用高速切削
器(エアータービンハンドピース)の軸受部は、ボール
(転動体)を使用した玉軸受機構を有するものとエアー
ベアリングを使用した(無接触型の)空気軸受機構を有
するものとが知られている。
【0004】例えば、歯科用のエアータービンハンドピ
ースの軸受機構に注目すると、ボールベアリングタービ
ン型、及びエアーベアリングタービン型の2種類のエア
ータービンハンドピースが知られている。なお、前者の
ボールベアリングタービン型のものは約20〜40万r
pm程度の高速回転の機種であり、後者のエアーベアリ
ングタービン型のものは約30〜50万rpm程度の超
高速回転の機種であるということができる。前記したボ
ールベアリングタービン型、及びエアーベアリングター
ビン型の機種の回転数は、一般的な値であり、例えば本
発明者らが先に提案した歯科用エアータービンハンドピ
ース(特願平6−36404号、U.S.Patent No.5,562,
446)は、ボールベアリングタービン型のものであるが
超高速回転を実現することができる高性能のものであ
る。
【0005】ここで、従来技術及び本発明の理解を助け
るために、本発明の潤滑油が適用される一つの応用機
器、即ち、歯科用の高速切削器(歯科用エアータービン
ハンドピース)の構造について説明する。
【0006】図1〜図2は、歯科用エアータービンハン
ドピースの構造を説明する図である。なお、図1は、全
体構造を説明する図(斜視図)であり、図2は、特にヘ
ッド部とネック部の内部構造を説明する図(斜視図)で
ある。
【0007】図1に示されるように、歯科用エアーター
ビンハンドピース(A)は、エアータービンのロータ軸
(駆動軸)に固定保持される切削工具(B)(5)を有
するヘッド部(H)とグリップ部(G)からなるもので
ある。そして、前記グリップ部(G)のネック部(N)
は、前記ヘッド(H)に連接されると共に、ヘッド部
(H)内に配設されたエアータービンに加圧空気を供
給、排出する手段を内部に有するものである。
【0008】図2は、歯科用エアータービンハンドピー
ス(A)のヘッド部(H)とネック部(N)の内部構造
を示す。図示されるように、ヘッド部(H)において、
ヘッド(1)のチャンバー(11)の内部に周縁部にタ
ービンブレード(2)を有するタービンロータ軸(3)
が配設されると共に、前記タービンロータ軸(3)はヘ
ッド(1)の内部において軸受部(4)を介して回転自
在に支承される。前記ヘッド(1)は、ヘッド本体部
(12)とキャップ部(13)からなる。そして、前記
ヘッド本体部(12)の内部に、前記タービンロータ軸
(3)を回転自在に支承するための軸受部(4)が配設
される。タービンロータ軸(3)の軸心穴には、切削工
具(5)が固定保持され、治療行為が行なわれる。な
お、切削工具(5)の周側部には、切削工具(5)を軸
心穴中に把持するためのチャック(51)が配設されて
いる。軸受部(4)は、内輪(41)、外輪(42)、
転動体(43)及び保持器(44)からなるボールベア
リング方式のもので構成されている。なお、軸受部
(4)の外周や側部には、求軸心のためのO−リングや
軸剛性を高めるための公知のウェーブワッシャなどを配
設しても良いものである。ネック部(N)には、そのネ
ック本体部(6)がチャンバー(11)内に配設された
タービンブレード(2)に加圧空気を供給するための給
気路(7)と給気口(71)、及びチャンバー(11)
内の加圧空気を排出するための排気路(8)(9)と排
気口(81)、(91)を有するもので構成される。
【0009】前記図2に示される歯科用エアータービン
ハンドピース(A)の内部構造において、加圧空気の給
気・排気手段は、本発明者らが、先に提案したものであ
り(特願平6−36404号、U.S.Patent No.5,562,44
6)、従来技術においては全く見られない新しい構成の
ものである。このため、図2には、前記した各要素(部
材)を説明するための参照符号に加えて他の参照符号
(記号)も示されている。これらの参照符号(記号)の
説明は省略するが、図2により従来の歯科用エアーター
ビンハンドピースの構造を容易に理解することができ
る。なお、図2に示される本発明者らが先に提案した給
気・排気手段をもつ歯科用エアータービンハンドピース
(A)は、従来の転がり軸受装置を内蔵するハンドピー
スのカテゴリーに属するものではあるが、極めて高速の
回転、従って大トルクが得られることは先に説明した通
りである。
【0010】前記したボールベアリング式の歯科用エア
ータービンハンドピースにおいて、その軸受部は、ミニ
チュア型軸受部により構成されている。そして、前記タ
ービンロータ軸は、毎分20〜40万回転程度で高速回
転するため、軸受部内部の温度も高くなり、かつ軸受部
にかかる応力も大きなものとなる。このため、前記した
過酷な条件のもとで使用される軸受部用の潤滑油の品
質、特性の管理は極めて重要である。
【0011】また、前記したボールベアリング式の歯科
用エアータービンハンドピースは、口腔内で使用される
ため、使用前に軸受部に潤滑油をスプレー、あるいは滴
下して使用され、別言すれば稀薄潤滑の環境下において
使用され、かつ滅菌消毒のために高圧高温処理(オート
クレーブ処理ともいわれ、その処理条件は、例えば蒸気
圧2.4kgf/cm2、温度135℃、時間5分である。)さ
れる。このため、前記軸受部で使用する潤滑油は、耐酸
化性など過酷な使用条件を満足する特性を有するものが
要求されている。
【0012】従来、前記した歯科用エアータービンハン
ドピースなどの高速切削器の転がり軸受部の潤滑油とし
て、各種のものが使用されている。例えば、潤滑油をフ
ロンやLPGを用いてスプレー方式により供給すること
が広く行われており、前記した潤滑油としてパラフィン
等の精製鉱油系のものが知られている。前記した潤滑油
は、典型的には石油系のものであり、石油を各種留分に
分留精製し、これに必要な酸化防止剤などの添加剤を配
合して調製されたものである。なお、前記した潤滑油の
基油成分は、天然の鉱油系のもののほか、グリコール、
エステル、低分子量のポリオレフィンなどの合成系のも
のも知られている。
【0013】このほか、動物油や植物油の食用油も精密
機械、工作機械、船舶機関などの潤滑油として使用され
ることが知られている。しかしながら、前記食用油は、
一般的には鉱油系潤滑油に10〜20重量%配合して使
用されるものである。なお、前記食用油は、耐酸化性に
問題があるため、各種の酸化安定剤(酸化防止剤)を併
用して使用されるのが常態である。
【0014】最近、歯科用エアータービンハンドピース
の前記した過酷な使用条件を考慮して耐熱性に優れ、従
って滅菌消毒(オートクレーブ処理)が可能であり、か
つ潤滑性に優れたフッ素化オイルを含浸させた保持器
(リテーナ、retainer)を有する歯科用エアータービン
ハンドピースが、特公平5−43884号、実開平7−
10553号に提案されている。なお、前記保持器(リ
テーナ)は、ポリイミド樹脂の粉末体を焼結して得た多
孔質体からなるものである。前記した提案の歯科用エア
ータービンハンドピースは、フッ素化オイルが不活性で
あり、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性に優れ、高温に晒さ
れても固体状劣化物を生成しないという特性を有してお
り、これらの特性を保持器(リテーナ)に利用したとい
うことができる。
【0015】また、特開平6−165790号は、直接
的には、以下に概略説明する歯科用エアータービンハン
ドピースの軸受装置における玉軸受の冠型保持器(リテ
ーナ)に関するものであるが、前記保持器に潤滑油を含
浸する態様を開示している。即ち、前記特開平6−16
5790号に開示の歯科用エアータービンハンドピース
において、玉軸受の保持器(リテーナ)は、 (i).内部に布製の繊維層を有する合成樹脂製筒体の一側
に玉保持用ポケットが形成されるとともに、前記ポケッ
トの開口側端面に面取り部が形成された冠型保持器であ
って、かつ、 (ii).前記保持器の繊維層に潤滑油が含浸されたこと、
を特徴とするものである。前記特開平6−165790
号に開示の玉軸受の冠型保持器(リテーナ)は、前記
(i)の構成により回転バランスを良くし、保持器と外輪
の接触による保持器の摩耗や回転トルクの増大を防止し
ようとするものである。なお、前記特開平6−1657
90号において、潤滑油の具体的な構成については不明
である。また、前記特開平6−165790号は、従来
技術の説明において、ハウジング内に食用油を注油する
態様を説明しているが、ここでいう食用油の具体的な構
成も不明である。本発明者らは、前記特開平6−165
790号に開示の潤滑油は、当業界の技術水準からみ
て、従来から提案されて来ている潤滑油の域を出るもの
ではないと考えている。
【0016】更に、特開平6−212179号は、歯科
用エアータービンのベアリングに対する潤滑油の補給回
数を少なくするために、潤滑油にセラミック粉末を混入
させることを開示している。これは、潤滑油内にセラミ
ック粉末を混入しておくと、潤滑油の持ちが良くなると
いう知見をベースにした提案である。
【0017】前記した従来から提案されている各種の潤
滑油は、転がり軸受機構を有する医療歯科用エアーター
ビンハンドピースなどの高速切削器におけるそれらの適
用を可能にするためには、種々の改善すべき課題を有す
ものである。例えば、前記した流動パラフィンなどの鉱
油系または合成油系の潤滑油、あるいはこれらに食用油
を配合した潤滑油は、生体為害性や環境保全性の観点か
ら、改善すべき点が残されているものである。
【0018】また、前記特公平5−43884号及び実
開平7−10553号に提案されているパーフルオロポ
リエーテル(PFPE)やパーフルオロポリアルキルエ
ーテル(PFAE)などのフッ素化オイルは、耐熱性、
耐薬品性、耐溶剤性に優れ、高温に晒されても固体状劣
化物を生成しないため、高速切削器(エアータービンハ
ンドピース)の潤滑油として好ましいものであるが、環
境破壊の観点や生体為害性の観点から改善すべき点が残
されているものである。
【0019】更に、前記特開平6−165790号は、
繊維層を有するフェノール樹脂製の成形体で構成される
軸受装置の保持器(リテーナ)に潤滑油を含浸させるこ
とを開示し、かつ前記潤滑油として食用油の使用を示唆
しているが、詳しくは後述するが、一般の食用油は、大
半が乾性油であり、油が乾燥すると樹脂状の固体とな
り、耐久性のある軸受用の潤滑油としては不適当なもの
である。
【0020】一般の食用油は、前記したように、大半が
乾性油であり、酸化され易く、そのために合成の酸化防
止剤を添加配合して使用するのが常態である。前記乾性
油を主体とし、かつ酸化防止剤を配合した食用油系の潤
滑油においては、前記酸化防止剤と軸受装置系から溶出
する金属との反応生成物が生体為害性物質となる場合が
あることに留意しなければならない。
【0021】また、前記特開平6−212179号は、
潤滑油にセラミック粉体を混入させ、潤滑油の持ち(ラ
イフタイム)を良くし潤滑系への補給回数を低減化しよ
うとするものであるが、高速回転系の医療歯科用切削器
(エアータービンハンドピース)においては、軸受のレ
ース(保持器)やボールが前記セラミック粉体により削
られて生体に有害な金属を溶出したり、あるいは稀薄潤
滑環境下において潤滑油が少なくなると軸受機構に致命
的な損傷を与えることになる。
【0022】前記したように、高速切削器、例えば医療
歯科用の高速切削器(エアータービンハンドピース)に
おいて使用される従来の転がり軸受装置用の潤滑油は、 (i).生体安全性(生体に対する為害性が少ないこ
と。)、 (ii).環境の保全性(安全性)、 (iii).耐熱性(オートクレーブ処理による滅菌消毒が可
能であること。)、 (iv).耐久性のある潤滑系、などの面から評価すると課
題を残すものである。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記した従
来技術の問題点に鑑み、創案されたものである。なお、
本発明の直接の契機は、本発明者らが先に提案した高性
能、超高速回転のボールベアリングタービン型の歯科用
エアータービンハンドピース(特願平6−36404
号、U.S.Patent No.5,562,446)に対して、優れた特性
の潤滑油が存在していなかったことにあった。本発明
は、生体安全性など前記した評価項目に対して優れた特
性を有する潤滑油を提案するものである。特に、本発明
は、医療歯科用高速切削器(ボールベアリング式エアー
タービンハンドピース)において、超高速回転による大
きなトルクアップのもとで使用することができること、
耐熱性に優れていること、別言すれば、高温高圧のオー
トクレーブ処理による滅菌消毒が可能であること、かつ
長期に安定して使用することができること、という要求
を満たす新規な潤滑油を提供するものである。
【0024】別言すれば、本発明は、ボールベアリング
式の20万rpm以上、更には30万rpm以上の医療
歯科用エアータービンハンドピースなどの高速切削器に
おいて、回転数を低下させず、かつ耐久性のある潤滑系
を実現することができる高速切削器の主要な構成要素で
ある転がり軸受装置のための新規かつ高性能な潤滑油を
提供するものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明は、高速切削器の転がり軸受装置のための潤滑油に
おいて、前記潤滑油が、特定の植物性不乾性油で構成さ
れたこと、あるいは、特定の植物性不乾性油と吸油性の
合成樹脂粒子を含有したもので構成されたことを特徴と
する高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油に関するもの
である。
【0026】前記したように、本発明の最大の特徴点
は、回転軸を回転自在に支承する転がり軸受部を不可欠
の構成要素として有する高速切削器、例えば、医療歯科
用の高速切削器(エアータービンハンドピース)におい
て、その軸受部に適用される潤滑油の新規な構成にあ
る。
【0027】即ち、本発明の最大の特徴点は、エアータ
ービン翼が固定された回転軸を回転自在に支障する外輪
と内輪、転動体(ボールベアリング)、及び金属製また
は耐熱樹脂性の保持器(リテーナ)からなる転がり軸受
要素を有する高速切削器(エアータービンハンドピー
ス)の前記軸受要素に適用される潤滑油を、従来の鉱油
系や合成油系などの潤滑油に代えて、生体安全性や環境
保全性に優れるとともに、耐熱性(オートクレーブ処理
による滅菌消毒が可能であること。)や耐久性に優れた
植物油の中の不乾性油で構成した点にある。
【0028】以下、本発明の技術的構成及び実施態様に
ついて詳しく説明する。
【0029】まず、本発明の最大の特徴点である潤滑油
を植物油、なかでも植物性不乾性油で構成するという点
について詳しく説明する。
【0030】植物油は、大別すると下記の三種に分類す
ることができる。 (i).不乾性油(Nondrying oil) これは、薄層にして空気中で乾燥(酸化)しても膜状物
(樹脂状固体)を形成しない油である。この種の不乾性
油は、分子中の二重結合が二以上(以下、多価とい
う。)の不飽和脂肪酸の量が少なく、オレイン酸(1分
子当り二重結合一個)のグリセリド(グリセリンエステ
ル)が主成分であり、従って、ヨウ素価(油の不飽和度
を示す尺度。Iodine value) は100以下である。この
種の不乾性油の代表例は、オリーブ油、落花生油、オレ
イソル油などがある。
【0031】(ii).半乾性油(Semidrying oil) これは、前記した不乾性油と後述する乾性油の中間的性
質を示す油である。なお、ヨウ素価は100〜130の
ものである。この種の半乾性油の代表例は、菜種油、ゴ
マ油、綿実油などがある。
【0032】(iii).乾性油(Drying oil) これは、薄層にして空気中で乾燥(酸化)すると膜(樹
脂状固体)を形成する油である。この種の乾性油は、不
飽和度の高い脂肪酸(例えば、リノール酸は二重結合が
二個、リノレン酸は二重結合が三個ある。)のグリセリ
ドからなり、これが空気中の酸素を吸収して、酸化重合
して膜状物を容易に形成する。なお、前記乾性油のヨウ
素価は、130以上のものである。この種の乾性油の代
表例は、アマニ油、桐油などがある。
【0033】前記した各種の植物油のうち、不乾性油
は、薄層にして乾燥(酸化)しても膜状物(樹脂状固
体)を生成しない油脂(高級脂肪酸のグリセリンエステ
ル)であり、耐熱性(オートクレーブ処理により滅菌消
毒が可能なこと)や耐久性に優れているため、高速切削
器(エアータービンハンドピース)の軸受装置用潤滑油
として好適なものである。
【0034】本発明は、高速切削器(エアータービンハ
ンドピース)の軸受装置用潤滑油として、植物油のうち
の不乾性油を採用するものである。以下、前記植物性不
乾性油として代表例であるオリーブ油(Olive Oil)に
ついて詳しく説明する。
【0035】オリーブ油は、オリーブ(Olea Europae
a)の果実から製造される油脂(グリセリンエステル)
であり、その成分は大別すると下記の3種に分類するこ
とができる。 (i).不飽和樹脂酸、 (ii).飽和樹脂酸、 (iii).各種の微量成分。
【0036】オリーブ油の不飽和樹脂酸は、一般に一価
及び二価以上(多価)のもので構成される。以下、オリ
ーブ油の不飽和樹脂酸の種類と含有量を示す。 1).オレイン酸(一価)…………………56.0〜83.0% CH3(CH27CH=CH(CH27COOH 2).リノール酸(多価)………………… 3.5〜20.0% CH3(CH24CH=CHCH2CH=CH(CH27COOH 3).パルミトオレイン酸(一価)……… 0.3〜3.5% CH3(CH25CH=CH(CH27COOH 4).リノレン酸(多価)………………… 0.0〜1.5% CH3CH2CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH(CH27 COOH 5).ガドレイン酸(一価)……………… 0.0〜0.05% CH3(CH29CH=CH(CH27COOH
【0037】前記したように、オリーブ油は、一価の不
飽和脂肪酸であるオレイン酸を多く含有するものであ
る。また、オリーブ油は、リノール酸などの多価の不飽
和脂肪酸を少量、含有している。前記したように、多価
の不飽和脂肪酸は酸化しやすいものであるが、オリーブ
油は、後述するように微量成分としてトコフェロール類
(ビタミンE)を含有しているため、前記トコフェロー
ル類(ビタミンE)の抗酸化作用によりリノール酸など
の多価不飽和脂肪酸の酸化劣化が防止され、オリーブ油
全体は、耐酸化性に優れている。
【0038】次に、オリーブ油の飽和脂肪酸成分につい
て説明する。以下、オリーブ油の飽和脂肪酸の種類と含
有量を示す。 (1).パルミチン酸 CH3(CH214COOH ……7.5〜20.0% (2).ステアリン酸 CH3(CH216COOH ……0.5〜3.5% (3).ミリスチン酸 CH3(CH212COOH ……0.0〜0.05% (4).アラキジン酸 CH3(CH218COOH ……0.0〜0.05% (5).ベヘニン酸 CH3(CH220COOH ……0.0〜0.05% (6).リグノセリン酸 CH3(CH222COOH ……0.0〜0.05% 前記したことから判るように、オリーブ油は高コレステ
ロール血症の原因となる飽和脂肪酸の含有量が少ないも
のであるということができる。
【0039】次に、オリーブ油の各種微量成分について
説明する。以下、オリーブ油の各種微量成分の種類と前
記成分の特性や機能について説明する。 .不ケン化物 (a).ステロール類、 (b).炭化水素類 ・スクアレン ・芳香族炭化水素(これは、固有の感覚的特性、即ち香
りや風味を与える。) (c).トコフェロール類(酸化防止機能) ・α−トコフェロール(ビタミンE)(黒変と重合防
止) ・β、γ、δ−トコフェロール(重金属の存在によって
起こる酸敗の防止) (d).トリテルペン・アルコール類 ・シクロ・アルテノール ・エルトロ・ジオール (e).脂溶性のビタミン類 ・ビタミンA、D(抗酸化作用) .燐脂質、葉緑素及び誘導体 (a).燐脂質 (b).葉緑素(抗酸化作用) .フェノール化合物 (a).フェノール化合物(抗酸化作用) (b).ポリフェノール(抗酸化作用) 前記したことから判るように、オリーブ油は、他の不乾
性油や乾性油と比較して、油脂の酸化に抗して作用する
各種の微量成分の含有量が高く、耐熱性(オートクレー
ブ処理による滅菌消毒が可能である。)や耐久性に優れ
た潤滑油となるのである。
【0040】次に、本発明の高速切削器(エアータービ
ンハンドピース)の転がり軸受装置用の潤滑油を構成し
得る他の植物性不乾性油について、説明する。 (i).前記したオリーブ油以外の植物性不乾性油として、
落花生油(ArachisOil)がある。落花生油は、落花生
(Arachis Hypogaea)の種子に40〜50%含まれてお
り、その種子から搾られて製造される。 (ii).前記したオリーブ油以外の植物性不乾性油とし
て、オレイソル油がある。オレイソル油は、不乾性油で
はないリノール酸(多価)を多く含有するヒマワリの突
然変異種から製造される。今日、農業化学者の努力によ
りオレイン酸(一価の不飽和脂肪酸)を多く含む突然変
異種のヒマワリを育てることに成功しており、この突然
変異種からオレイソルと命名された油が製造されてい
る。オレイソル油は、前記したオリーブ油と同様の不乾
性油である。
【0041】本発明の高速切削器(エアータービンハン
ドピース)の転がり軸受装置用の潤滑油を構成し得る植
物性不乾性油と植物性半乾性油及び他の食用油との違い
を下記の表1に示す。表1において、オリーブ油、落花
生油、及びオレイソル油は、本発明を実施するのに有用
な植物性不乾性油であり、他のものは比較対照例の植物
性半乾性油及び乾性油を示している。なお、表1の注釈
は、次の通りである。 (1).オレイン酸を主とし、パルミトオレイン酸を含む。 (2).リノール酸。 (3).リノレン酸。 (4).パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリス
チン酸から成る。 表1中、(*)印は、比較対照例の植物油である。
【0042】
【表1】
【0043】表1から、次の点が明らかである。 (i).植物性不乾性油は、酸化しにくい1価の不飽和脂肪
酸が多い。 (ii).植物性不乾性油は、酸化しやすい2価〜3価の不
飽和脂肪酸、即ち多価の不飽和脂肪酸が少ない。 (iii).植物性不乾性油は、抗酸化作用を有するトコフェ
ロール類(ビタミンEなど)の対多価不飽和脂肪酸比が
高い。
【0044】本発明の高速切削器(エアータービンハン
ドピース)の転がり軸受装置用の潤滑油を構成し得る植
物性不乾性油(オリーブ油、落花生油、オレイソル油な
ど)において、遊離の脂肪酸(飽和、不飽和)の合計含
有量が少ないほど、潤滑特性に優れている。この点は、
本発明者らの植物性不乾性油の潤滑特性の改善を検討し
ている過程で見い出されたものであり、後述するように
実証データにより裏付けされている。
【0045】前記した植物性不乾性油中の遊離した脂肪
酸(以下、遊離脂肪酸ということがある。)について、
以下に説明を加える。一般に、油脂(牛脂、豚脂、バタ
ーなどの脂肪、及び菜種油、桐油、アマニ油などの脂肪
油)は、高級脂肪酸のグリセリンエステルで構成されて
いる。即ち、本発明の実施において有用な植物性不乾性
油において、各種の脂肪酸(飽和、不飽和)は、下式
(1)で示されるエステルとして存在するものである。脂
肪酸の3分子+グリセリンの1分子→トリグリセリドの
1分子(エステル)…………(1)
【0046】しかしながら、前記植物性不乾性油中には
グリセリン(Grycerol, CH2OH-CHOH-CH2OH)と結合して
いない各種の脂肪酸(遊離脂肪酸)も含んでいる。前記
した遊離脂肪酸の合計含有量の度合を遊離酸度で示す
と、この値が低いほど酸度が低くなり、かつ粘度も高粘
度側にシフトするため、遊離酸度の低い植物性不乾性油
は転がり軸受装置用潤滑油として耐久性に優れたものと
なる。前記した遊離酸度に基づいて、オリーブ油の品質
を分類したのが下記の表2である。表2より高級なオリ
ーブ油ほど遊離酸度が低く、後述するように優れた潤滑
特性を示す(表3参照)。なお、オリーブ油などの植物
性不乾性油の遊離酸度を低くする方法としては、例え
ば、以下の方法を採用すればよい。即ち、オリーブ油に
5〜10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱する
と、けん化されてグリセリンと脂肪酸ナトリウム塩が生
成し、生成したグリセリンは遊離脂肪酸とエステル結合
する。その後、遠心分離などによって油脂分を分離除去
すれば、遊離酸度の低いオリーブ油が得られる。また、
表2中、オリーブ油の各種グレード名は、アメリカのゴ
ールデンイーグルオリーブプロダクツ社製のオリーブ油
の商品名である。
【0047】
【表2】
【0048】本発明の高速切削器(エアータービンハン
ドピース)の転がり軸受装置用の潤滑油において、主剤
である植物性不乾性油(オリーブ油、落花生油、オレイ
ソル油など)に対する添加成分として、吸油性のある合
成樹脂体粒子は、高速回転の環境下にある潤滑系に対し
て優れた特性を付与することができる。本発明者らにお
いて、植物性不乾性油の特性を損ねることなく転がり軸
受装置用潤滑油の保持力を向上させる上で、アクリル酸
エステル系の架橋化した重合体(以下、単に架橋重合体
という。)などの吸油性のある合成樹脂(吸油性架橋重
合体)粒子は極めて有効である、という知見を見いだし
ている。
【0049】以下、前記した本発明の実施に有用な植物
性不乾性油の特性改善に好ましい吸油性の架橋重合体に
ついて説明する。なお、前記した吸油性架橋重合体それ
自体は、特開平5−337367号あるいは特公平3−
143996号などにより当業界において公知のもので
ある。また、いうまでもないことであるが、前記吸油性
架橋重合体が高速回転系の転がり軸受装置において、優
れた特性を付加することは本発明者らによりはじめて見
い出されたものである。
【0050】前記した吸油性架橋重合体は、潤滑油の主
剤である植物性不乾性油の溶解度パラメーター(Solubi
lity Parameter,SP 値)が6〜9であり、相溶性の観点
から同程度のSP値を有するものが好ましい。即ち、本
発明の植物性不乾性油を主剤とした潤滑油において、S
P値が9以下の吸油性架橋重合体を添加配合することが
好ましい。
【0051】前記した吸油性架橋重合体は、一般的に
は、 (i).SP値=9以下の重合体を調製することができる分
子中に1個の重合性不飽和基を有する単量体(A) ……
……90〜99.9重量%、 (ii).分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有す
る架橋性単量体(B)………0.1〜10重量%、を共重
合させることにより、調製することができる。
【0052】前記した単量体(A)は、 (1).少なくとも1個のC2〜C30の脂肪酸炭化水素基を
有し、かつ、 (2).アルキル(メタ)アクリレート、アルキルアリール
(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミ
ド、アルキルアリール(メタ)アクリルアミド、脂肪酸
ビニルエステル、アルキルスチレン、及びα−オレフィ
ンの残基、からなる群より選ばれる少なくとも1種の重
合性不飽和単量体で構成されるものである。
【0053】前記した架橋性単量体(B)は、エチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、1.3−ブチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)
アクリレート、N,N´−メチレンビスアクリルアミ
ド、N,N´−プロピレンビスアクリルアミド、グリセ
リントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパ
ントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、など
が例示される。
【0054】前記した吸油性架橋重合体は、分子中に2
個の重合性不飽和基を有する単量体、具体的には、ジエ
ン系単量体を採用することによっても調製することがで
きる。この種のジエン系単量体を採用した吸油性架橋重
合体として、ブタジエン、イソプレン、シクロベンタジ
エン、1.3−ベンタジエンの重合体及びその水素化
物、あるいは、前記したジエン類とスチレン類やブチレ
ンなどのα−オレフィン類などの他の重合性単量体との
共重合体及びその水素化物などを例示することができ
る。なお、重合性単量体としては前記したものを使用す
ればよい。また、前記した吸油性架橋重合体は、エチレ
ンと他のオレフィンとの架橋化した共重合物により構成
されたものであってもよいものである。エチレンと共重
合される他のオレフィンとしては、プロピレン、ブチレ
ン、ペンテンなどがあり、また架橋性単量体としては前
記したものを使用すればよい。
【0055】前記した吸油性架橋重合体は、平均粒径が
0.5〜2000μmの粒状物であり、植物性不乾性油
に対し所望の配合量で配合される。この種の吸油性架橋
重合体として、日本触媒社製のアクリル酸エステル系の
オレオソープPW−190、PW−170(商品名)を
使用することができる。
【0056】次に、本発明の植物性不乾性油を主体とし
た潤滑油が適用される軸受装置、特にリテーナ(軸受装
置の保持器)について説明する。本発明において、前記
リテーナとしては、フェノール樹脂系のものやポリイミ
ド樹脂系のものなどが使用できる。以下、後者のポリイ
ミド樹脂系のリテーナについて説明する。
【0057】本発明において、ポリイミド樹脂(以下、
PI樹脂と略記する。)は、芳香族カルボン酸と芳香族
アミンを縮重合して得られる主鎖にイミド結合を有する
樹脂(熱可塑ものであっても、あるいは熱硬化性のもの
であってもよい。)であって、耐熱性、耐薬品性、機械
的性質、電気的特性に優れたものである。なお、本発明
において、PI樹脂は、主鎖にイミド結合及びアミド結
合を有するポリアミドイミド樹脂(以下、PAI樹脂と
略記する。)を包含するものであると理解されるべきで
ある。
【0058】本発明において、前記リテーナを構成する
PI樹脂及びPAI樹脂は、市販されているものが好都
合に使用することができる。例えば、市販されているP
I樹脂及びPAI樹脂としてその化学構造式を含めて以
下のものを例示することができる。 (i).PI樹脂: (1).オーストリア国レンジング社製、P84−HT(下
記化1で示されるもの。なお、化1において、Rはアル
キレン基を表わす。) (2).東レ社製、TI−3000(下記化2で示されるも
の。) (3).宇部興産社製、UIP−S(下記化3で示されるも
の。) (4).デュポン社製、ベスペル(下記化2で示されるも
の。) (5).三井東圧化学社製、オーラム(下記化4で示される
もの。) (6).その他、米国ヒューロン社製、メルディン810
0,900などがある。 (ii).PAI樹脂: (1).アモコ社製、トーロン4000TF(下記化5で示
されるもの。なお、化5において、Arはフェニレン基
を表わす)。
【0059】
【化1】
【0060】
【化2】
【0061】
【化3】
【0062】
【化4】
【0063】
【化5】
【0064】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により更に
詳しく説明する。特に、歯科用エアーハンドピースの転
がり軸受装置に適用される本発明の植物性不乾性油を主
体とした潤滑油と他の公知の各種の潤滑油を比較し、本
発明の潤滑油の優位性を検討した。本発明の実施例にお
いて試験に供した歯科用エアーハンドピース(図1〜図
2参照)の転がり軸受装置の構成は、次の通りである。 (i).外輪内径 ………… 6.350mm (ii).内輪内径 ………… 3.175mm (iii).幅 ………………… 2.380mm の寸法を有する開放形のミニアチュア型玉軸受であり、
かつ冠形リテーナを有するものである。そして、前記転
がり軸受装置を歯科用エアータービンハンドピースに装
着し、給気圧2.5kgf/cm2、給気量26リットル/分
で約40万rpmの条件で試験した。
【0065】即ち、歯科用エアータービンハンドピース
(図1〜図2参照)を使用して本発明の植物性不乾性油
を主体とした潤滑油と他の公知の各種の潤滑油を前記条
件で試験した。試験結果を下記の表3に示す。
【0066】表3における注釈は、次の通りである。 (1)<耐熱性試験(耐オートクレーブ;回)> (株)モリタ製作所製のオートクレーブ装置「アルフィ
ー」を使用し、耐オートクレーブ性を歯科用エアーター
ビンハンドピースの回転が不安定になり回転効率が1割
(10%、約4万rpm)低下する時点までの回数で示
す。なお、オートクレーブ装置「アルフィー」での処理
条件は、蒸気圧2.4kgf/cm2(235Pa)、温度135
℃、時間5分である。 (2)<軸受耐久性(連続運転;hrs)> 歯科用エアーハンドピースの潤滑系に最初に潤滑油を適
用し、その後は無給油かつ約40万rpmの条件で連続
運転を行い、軸受耐久性を回転が不安定になり回転数が
1割(10%、約4万rpm)低下するまでの時間で示
す。
【0067】表3に示される各種リテーナ(軸受装置の
保持器)は、次のことを意味する。 (i).バルクPI/PAI・R…………これは、ポリイミ
ド(PI)系または、ポリアミドイミド(PAI)系の
無孔性(バルク状)のリテーナを意味する。なお、前記
バルクPI・Rは、デュポン社製のベスペルSP−1を
リテーナ形状に加工したものである。また、前記バルク
PAI・Rは、帝人アモコエンジニアリングプラスチッ
クス社製のトーロン4203をリテーナ形状に加工した
ものである。
【0068】(ii).多孔質P・R………これはフェノー
ル樹脂系のリテーナを意味する。なお、前記多孔質P・
Rは、パイプ状に多重巻きされた織布に対して真空状態
で織布の間にフェノール樹脂を含浸し、加熱成形し、そ
の後リテーナ形状に加工したものである。
【0069】(iii).多孔質PI/PAI・R…………こ
れは、ポリイミド(PI)系または、ポリアミドイミド
(PAI)系の粉末の焼結体からなる多孔質リテーナを
意味する。なお、前記多孔質PI・Rは、宇部興産社製
UIP−Sを成形圧力4000kgf/cm2 で圧縮成形
し、窒素雰囲気中で400℃にて焼結し、これをリテー
ナ形状に加工したものである(気孔率:体積比約13
%)。また、前記多孔質PAI・Rは、米国アモコ社製
トーロン4000TFを平均粒径20μmに分級整粒
し、予備成形圧2800kgf/cm2 で圧縮成形し、次い
で300℃で焼結し、これをリテーナ形状に加工したも
のである(気孔率:体積比約14%)。
【0070】表3において、 (i).パラフィン油(流動パラフィン)は、既存歯科治療
関連メーカー製スプレー剤を使用した。 (ii).フッ素化オイルは、イタリアのAusimonte S.P.A社
製FOMBLINを使用した。 (iii).アクリル酸エステル系吸油性重合体は、日本触媒
社製PW−170を使用した。
【0071】
【表3】
【0072】
【発明の効果】表3に示されるように、高速回転系の歯
科用切削器(エアータービンハンドピース)などの高速
切削器に適用される本発明の植物性不乾性油を主体とし
た潤滑油は、生体安全性(生体為害性)、環境保全性
(安全性)、耐熱性(耐オートクレーブ)、及び軸受耐
久性の点で総合的に優れていることがわかる。また、フ
ッ素化オイル系より安価であるため、経済性にも優れた
ものである。更に、植物油として不乾性油以外の半乾性
油や乾性油、及びパラフィン油(流動パラフィン)は、
空気中135℃、175時間放置するテストにおいて、
激しい色調変化が見られる。別言すれば、これら各種の
油は、耐酸化性に劣るものである。なお、前記テストに
おいて、オリーブ油及び落花生油などの不乾性油は色調
変化を示さなかった。
【0073】更に、本発明の高速回転系の歯科用エアー
タービンハンドピースに適用される植物性不乾性油を主
体とした潤滑油は、微生物による分解が速く、排水の暫
定水質基準(総理府令)から評価してみても従来の鉱油
類より好ましいものである。なお、前記排水の暫定水質
基準によれば、排水の許容限度は、従来の鉱油類は、5
mg/リットルであるのに対し、植物油脂類は、30m
g/リットルである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の潤滑油が適用される高速回転系の歯
科用エアータービンハンドピースの斜視図である。
【図2】 図1の歯科用エアータービンハンドピースの
ヘッド部(H)とネック部(N)の断面図であり、前記
ヘッド部(H)及びネック部(N)の構造を説明する図
である。
【符号の説明】
A ………… 歯科用エアータービンハンドピース H ………… ヘッド部 G ………… グリップ部 N ………… グリップ部(G)のネック部 B ………… 切削工具 1 ………… ヘッド 11 ………… チャンバー 12 ………… ヘッド本体部 13 ………… キャップ部 2 ………… タービンブレード 3 ………… タービンロータ軸 4 ………… 軸受部 41 ………… 内輪 42 ………… 外輪 43 ………… 転動体(ボール) 44 ………… 保持器(リテーナ) 5 ………… 切削工具 6 ………… ネック部(N)の本体部 7 ………… 給気路 71 ………… 給気口 8、9 ………… 排気路 81、91 ………… 排気口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C10N 30:10 C10N 30:10 40:02 40:02 (56)参考文献 特開 平6−165790(JP,A) 特開 平8−209179(JP,A) 特開 平4−103694(JP,A) 特開 平7−26285(JP,A) 特開 平3−143996(JP,A) 特開 平4−154895(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C10M 101/04 C10M 143/00 - 149/22

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高速切削器の転がり軸受装置のための潤
    滑油において、前記潤滑油が、植物性不乾性油であっ
    て、かつ、 (i).1分子当り1個の不飽和結合を含む少なくとも1種
    の一価の不飽和脂肪 酸、60重量%以上、 (ii).1分子当り少なくとも2個の不飽和結合を有する
    多価の不飽和脂肪酸、 30重量%以下、 とから成る植物性不乾性油で構成されたこと、 を特徴と
    する高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  2. 【請求項2】 植物性不乾性油が、トコフェロール類の
    含有量が10重量%以下のもので構成される請求項第1
    項に記載の高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  3. 【請求項3】 植物性不乾性油が、オリーブ油、落花生
    油、及びオレイソル油からなる群より選ばれた少なくと
    も1種のものである請求項第1項または第2項に記載の
    高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  4. 【請求項4】 植物性不乾性油が、グリセリンと結合し
    ていない飽和及び不飽和脂肪酸(遊離脂肪酸)の含有量
    が5重量%以下のもので構成される請求項第3項に記載
    の高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  5. 【請求項5】 植物性不乾性油が、吸油性の合成樹脂粒
    子を含有したものである請求項第1項〜第4項のいずれ
    か1つに記載の高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  6. 【請求項6】 吸油性の合成樹脂粒子が、 (A).溶解度パラメータ(sp値)を9以下とする単量体
    を主成分とし、かつ分子中に1個の重合性不飽和基を有
    する単量体………90〜99.9重量%、 (B).分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する
    架橋性単量体…………0.1〜10重量%、 からなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体で
    構成される請求項第5項に記載の高速切削器の転がり軸
    受装置用潤滑油。
  7. 【請求項7】 単量体(A) が、少なくとも1個のC3
    30の脂肪族炭化水素基を有し、かつアルキル(メタ)
    アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレー
    ト、アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルアリー
    ル(メタ)アクリルアミド、脂肪酸ビニルエステル、ア
    ルキルスチレン、及びα−オレフィンの残基からなる群
    より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和基を有する
    ものである請求項第6項に記載の高速切削器の転がり軸
    受装置用潤滑油。
  8. 【請求項8】 吸油性の合成樹脂粒子が、ジエン系単量
    体を重合して得られるジエン系架橋重合体で構成される
    請求項第5項に記載の高速切削器の転がり軸受装置用潤
    滑油。
  9. 【請求項9】 エアータービン翼が固定された回転軸を
    回動自在に支承するための外輪、内輪、転動体及び保持
    器(リテーナ)からなる転がり軸受要素を有する高速切
    削器の転がり軸受装置のための潤滑油であって、かつ前
    記保持器(リテーナ)に滴下または含浸させて使用する
    潤滑油において、前記潤滑油が、植物性不乾性油であっ
    て、かつ、 (i).1分子当り1個の不飽和結合を含む少なくとも1種
    の一価の不飽和脂肪 酸、60重量%以上、 (ii).1分子当り少なくとも2個の不飽和結合を有する
    多価の不飽和脂肪酸、 30重量%以下、 とから成る植物性不乾性油で構成されたこと、 を特徴と
    する高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  10. 【請求項10】 高速切削器が、ボールベアリング式の
    医療歯科用のエアータービンハンドピースである請求項
    第9項に記載の高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  11. 【請求項11】 植物性不乾性油が、トコフェロール類
    の含有量が10重量%以下のもので構成される請求項第
    9項に記載の高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  12. 【請求項12】 植物性不乾性油が、オリーブ油、落花
    生油、及びオレイソル油からなる群より選ばれた少なく
    とも1種のものである請求項第9項に記載の高速切削器
    の転がり軸受装置用潤滑油。
  13. 【請求項13】 植物性不乾性油が、グリセリンと結合
    していない飽和及び不飽和脂肪酸(遊離脂肪酸)の含有
    量が5重量%以下のもので構成される請求項第12項に
    記載の高速切削器の転がり軸受装置用潤滑油。
  14. 【請求項14】 植物性不乾性油が、吸油性の合成樹脂
    粒子を含有したものである請求項第9項〜第13項のい
    ずれか1つに記載の高速切削器の転がり軸受装置用潤滑
    油。
  15. 【請求項15】 吸油性の合成樹脂粒子が、 (A).溶解度パラメータ(sp値)を9以下とする単量体
    を主成分とし、かつ分子中に1個の重合性不飽和基を有
    する単量体………90〜99.9重量%、 (B).分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する
    架橋性単量体…………0.1〜10重量%、 からなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体で
    構成される請求項第14項に記載の高速切削器の転がり
    軸受装置用潤滑油。
  16. 【請求項16】 単量体(A) が、少なくとも1個のC3
    〜C30の脂肪族炭化水素基を有し、かつアルキル(メ
    タ)アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレ
    ート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルアリ
    ール(メタ)アクリルアミド、脂肪酸ビニルエステル、
    アルキルスチレン、及びα−オレフィンの残基からなる
    群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和基を有す
    るものである請求項第15項に記載の高速切削器の転が
    り軸受装置用潤滑油。
  17. 【請求項17】 吸油性の合成樹脂粒子が、ジエン系単
    量体を重合して得られるジエン系架橋重合体で構成され
    る請求項第14項に記載の高速切削器の転がり軸受装置
    用潤滑油。
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