JP3189277B2 - 熱線遮へいガラス - Google Patents

熱線遮へいガラス

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JP3189277B2 JP30455490A JP30455490A JP3189277B2 JP 3189277 B2 JP3189277 B2 JP 3189277B2 JP 30455490 A JP30455490 A JP 30455490A JP 30455490 A JP30455490 A JP 30455490A JP 3189277 B2 JP3189277 B2 JP 3189277B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、高い可視光線透過率と低い可視光線反射率
を有し、かつ、太陽輻射エネルギーの一部を遮へいする
ガラスに関し、とりわけ自動車や建築物の窓ガラスとし
て有用な熱線遮へい性能を有するガラスに関する。
[従来の技術] 高い可視光線透過率を有し、太陽輻射エネルギーの一
部を遮へいするガラスとしては、ガラス板の上に透明誘
電体膜、金属窒化物膜、透明誘電体膜が順次被覆された
ものが開示されている(SPIE.vol.324(1982)52)。そ
して、前記の自ら赤外線に対して反射を示す金属窒化物
の膜としては化学周期律表第4A族の化学的に安定なチタ
ニウム、ジルコニウム、ハフニウムの窒化物が知られて
おり、これらの金属窒化物膜を透明誘電体膜ではさんだ
三層構成の被膜がガラス板上に被覆された熱線遮へいガ
ラスがある [発明が解決しようとする課題] しかしながら従来の技術では、熱線遮へいガラスは、
積層された膜に入射する可視光線の光干渉作用により、
赤、赤紫あるいは黄などの強い干渉色を呈し、ガラス自
身の色とは外観色が異なるようになるので、自動車の窓
ガラスとしてはデザイン上好ましくないという問題があ
る。自動車の窓ガラスとして使用される熱線遮へい性能
を有する膜は、太陽の直射光の流入を減らすことにより
暑さを低減して快適性を向上させるとともに、自動車の
デザイン上の要求からガラス自身の色、とりわけガラス
面の色がガラスの色と大きく異ならないことが要求され
る。
本発明は、ガラス自身の透過色、反射色を実際上ほと
んど変えずに、高い可視光線透過率と低い可視光線反射
率と大きい熱線遮へい性能を合わせ有し、窓ガラスとし
て使用するに際しては複層ガラスや合わせガラスにする
必要がなく、すなわち単板で使用できる耐久性を有する
熱線遮へいガラスを提供するにある。
[課題を解決するための手段] 本発明の熱線遮へいガラスは、ガラス板上に第1層と
して、酸化第2錫膜、酸化ジルコニウム膜、窒化珪素
膜、五酸化タンタル膜、シリコンと酸素と窒素とを含む
可視光線波長域で透明な誘電体膜、シリコンと炭素と酸
素と窒素とを含む可視光線波長域で透明な誘電体膜のい
ずれか1種で厚みが50〜100nmの透明誘電体膜が被覆さ
れ、前記第1層の上に633nmの波長における屈折率が2.2
以上、厚みが20〜80nmの透明誘電体膜が第2層として被
覆され、前記第2層の上に633nmの波長における屈折率
が1.46〜2.1、厚みが30〜80nmの透明誘電体膜が第3層
として被覆された熱線遮へいガラスである。
本発明のガラス板上に被覆される第1層の膜の厚み、
第2層および第3層として被覆される膜の屈折率および
厚みは、上記の範囲内である必要がある。上記範囲内に
限定することにより、可視光線に対して高透過率で、太
陽光線に含まれる近赤外域の波長の熱線に対して高い反
射率を有するようになり、さらに熱線遮へいガラスの色
調を、用いるガラス板のそれと実質的に同じにすること
ができる。
第1層、第2層および第3層の膜の厚みは、それぞれ
単独で定められるものでなく、互いに関連して可視光線
透過率や熱線遮へい性能を考慮して定められる。前記範
囲内で各層の膜の屈折率と厚みを調整することにより、
自動車の窓ガラスとして要求される可視光線透過率が70
%以上の可視光線に対して高透過率の熱線遮へい性のガ
ラスとすることができる。第1層の膜の厚みが50nmより
小さくても、100nmより大きくても、また第2層の高屈
折率の膜の厚みが20nmより小さくても、80nmより大きく
ても、さらに第3層の膜の厚みが30nmより小さくても、
80nmより大きくても、着色が感じられる外観をもつか、
近赤外域での反射率が減じて熱線遮へい性能が低下して
しまう。
第1層の膜の厚み、第2槽、第3層の膜の屈折率およ
び厚みを前記範囲内で定めることにより、熱線遮へいガ
ラスの色度座標のx、yの値と、用いるガラス板の色度
座標のx,yの値の差Δx,Δyのそれぞれを、0.03以下と
することができる。これにより、熱線遮へいガラスと熱
線遮へいガラスに用いるガラス板の外観色の違いを感じ
させない値にすることができる。
肉眼で色調が同じように感じられるのは、前記のΔx,
Δyの値が同時に0.03以下であることが実験的に知られ
ており、本発明にかかる熱線遮へいガラスは、Δx,Δy
がともに0.03以下としたことを特徴とする。
上記のΔx,Δyの値をより小さくし、すなわち熱線遮
へいガラスとその熱線遮蔽へいガラスに用いるガラス板
との色調の差をより小さくするためには、第1層の膜の
厚みを55〜70nm、第2層の膜の厚みを30〜50nm、第3層
の膜の厚みを45〜60nmとすることが好ましい。
熱線遮へいガラスの被膜の耐摩耗性は、被覆される最
上層の膜の耐摩耗性に大きく依存する。単板で用いられ
得る耐摩耗性を有する熱線遮へいガラスとするには、最
上層すなわち屈折率が1.46〜2.1の第3層の透明誘電体
膜を、酸化第2錫膜,酸化ジルコニウム膜,五酸化タン
タル膜,二酸化珪素膜,酸化アルミニウム膜、五酸化ニ
オブ膜,酸化ニッケル膜、窒化珪素膜のいずれか1種と
することが好ましい。
また、単板で用いられ得る耐摩耗性を有する熱線遮へ
いガラスとするには、最上層すなわち第3層の屈折率が
1.46〜2.1の透明誘電体膜を、錫、ジルコニウム、タン
タル、ビスマス、ニオブおよびシリコンの群から選ばれ
た1種と、酸素と、窒素とを含む非晶質膜とすることが
好ましい。前記の非晶質膜は、酸化第2錫膜,酸化ジル
コニウム膜,五酸化タンタル膜,酸化ビスマス膜、五酸
化ニオブ膜,二酸化珪素膜の酸素の一部を窒素に置換す
ることにより得られる可視域で透明な非晶質膜であり、
膜中に含まれる酸素の量は膜中の窒素の量よりも多く含
むようにされる。すなわち、前記の被膜の組成を化学式
SnOxNy,ZrOxNy,TaOxNy,BiOxNy、NbOxNy,SiOxNyで表す
と、xがyより大きくなるように定められる。
また、単板で用いられ得る耐摩耗性を有する熱線遮へ
いガラスとするには、最上層すなわち第3層の屈折率が
1.46〜2.1の透明誘電体膜を、タンタル、アルミニウ
ム、ニオブおよびニッケルからなる群から選ばれた1種
とシリコンと酸素と窒素とを含む非晶質膜とすることが
好ましい。
これらの非晶質膜は、それぞれ化学式TaSiXOYNZ,AlSi
XOYNZ,NbSiXOYNZ,NiSiXOYNZで表され、膜中の酸素と窒
素については、膜中に含まれる前記の群から選ばれる元
素の1種とシリコンと結合して膜を透明にするに必要な
量を含むように調整され、また膜中の酸素に対する窒素
の量は膜を非晶質にするように膜中に導入される。
また、単板で用いられ得る耐摩耗性を有する熱線遮へ
いガラスとするには、最上層すなわち第3層の屈折率が
1.46〜2.1の透明誘電体膜を、シリコンと炭素と酸素と
窒素とを含む非晶質膜とすることが好ましい。この膜の
化学式はSiCXNYOZで表され、膜中のSiおよびCと化学結
合して膜を可視域で透明にするのに必要な量の酸素と窒
素を含むように調整される。
また、単板で用いられ得る耐摩耗性を有する熱線遮へ
いガラスとするには、最上層すなわち第3層の屈折率が
1.46〜2.1の透明誘電体膜を、ジルコニウムまたはタン
タルのいずれか1種と、硼素と、酸素と、窒素とを含む
非晶質膜とすることが好ましい。膜中の酸素量はジルコ
ニウムと硼素あるいはタンタルと硼素を酸化して透明に
するに必要な量を含むように調整される。
本発明の熱線遮へいガラスの第2層とすることができ
る膜としては、屈折率が2.2以上であればとくに限定さ
れるものでないが、酸化第2チタン膜や酸化第2チタン
を主成分とする膜やチタニウムの酸窒化物の膜などが例
示でき、とりわけ最も大きい屈折率が得られる酸化第2
チタン膜が、熱線遮へい性能を大きくする上で好まし
い。
本発明の熱線遮へいガラスの第1層とすることができ
る膜は、酸化第2錫膜、酸化ジルコニウム膜、窒化珪素
膜、五酸化タンタル膜、シリコンと酸素と窒素とを含む
可視光線波長域で透明な誘電体膜、シリコンと炭素と酸
素と窒素とを含む可視域で透明な誘電体膜である。
前記の第1層、第2層および第3層の透明誘電体膜
は、いずれも可視光線の波長域で透明で、電気的には絶
縁性である。被膜中に含まれる酸素や窒素の量をやや少
なくすることにより、可視光線の透過率を実質的に低下
させない範囲で可視域の光の吸収が生じるようにしても
用いることができる。
また、熱線遮へい性能をより大きくするために、前記
第1層と第2層の間に10nmを越えない厚みのチタニウ
ム、ジルコニウム、クロムまたはハフニウムの窒化物か
らなる吸収膜を設けることができる。前記吸収膜は、そ
れ自身で近赤外線より長波長の熱線を反射するととも
に、可視光線の波長域で光線の一部を吸収する。
また、前記吸収膜を設けても、得られる熱線遮へいガ
ラスの外観色調は、用いるガラス板の外観色調と大きく
変わることなく熱線遮へい性能をより大きくすることが
できる。前記金属の窒化物からなる吸収膜は、可視域で
光の一部を吸収するため、その厚みは10nmを越えると、
可視光線の透過が低下し窓ガラスとしては暗くなる。し
たがって、10nmを越えない範囲で厚みが調整される。
一方、吸収膜の厚みが薄いと熱線遮へい性能を大きく
する効果が得られにくくなるので、吸収膜の厚みは4nm
以上にすることが好ましい。
また、上記のチタニウム、ジルコニウム、クロムまた
はハフニウムの窒化物からなる吸収膜は、前記第2層と
第3層の間に設けることもでき、第1層と第2層の間お
よび第2層と第3層の間に同時に設けることもできる。
前記吸収膜は、光学的には可視光線の一部を吸収し近
赤外線の一部を反射し、電気的には10kΩ/平方以上の
面積抵抗をもっている。
本発明にかかる第1層、第2層および第3層の膜の厚
み、必要により前記の金属窒化物からなる吸収膜の厚み
を適当に定めることにより、可視光線透過率が70%以上
で、色調が用いるガラス板と色調と大きく変わらず、か
つ、可視光線の反射率が低い熱線遮へいガラスとするこ
とができる。
本発明の透明誘電体膜や吸収膜は、公知のスパッタリ
ング法やアーク蒸着法やイオンプレーテイング法などに
より被覆することができる。
本発明の熱線遮へいガラスに用いられるガラスとして
は、透明であればとくにガラスの組成によって限定され
るものでない。フロート法で製造された透明ガラス板や
ブロンズ、グレー、ブルーなどの着色剤を含有する着色
ガラス(たとえば、日本板硝子(株)製商品名ブロンズ
ペーンなど)を用いることができる。
[作用] 本発明の熱線遮へいガラスの第1層と第2層と第3層
の透明誘電体膜は、光学干渉作用により可視光線透過率
を高く保持したまま、太陽輻射エネルギーの一部を反射
する。さらに反射光および透過光による外観色は、用い
るガラス板の外観色とはその差が小さい。また本発明に
かかる第1層と第2層、あるいは第2層と第3層の間に
設けられる吸収膜膜は、可視光線の一部を吸収し、か
つ、近赤外域の光線を一部反射することにより、太陽輻
射エネルギーの遮へい性能を高める。
「実施例」 以下に本発明を実施例に基づいて説明する。第1図
は、本発明の熱線遮へいガラスの実施例の部分断面図で
ある。第1図(a)では、ガラス板6の上に第1層とし
て透明誘電体膜2が被覆され、その上に第2層として透
明誘電体膜3が被覆され、さらにその上に第3層として
透明誘電体膜4が被覆されている。第1図(b)は、第
1図(a)の熱線遮へいガラスの第1層と第2層の透明
誘電体膜の間に吸収膜5が被覆されたものである。第1
図(c)は、第1図(a)の熱線遮へいガラスの第2層
と第3層の透明誘電体膜の間に吸収膜5が被覆されてい
る。第2図(a),(b)は、それぞれ実施例1、2の
分光反射特性を示す図、第3図は比較例の分光反射特性
を示す図である。
実施例1 4つの20インチ×5インチサイズのマグネトロンカソ
ードを有するインライン式スパッタリング装置を用い、
そのうちの2つのカソードに、錫のターゲットとチタニ
ウムのターゲットをそれぞれ設置した。表面を洗浄した
300mm×300mmの大きさで厚みが4mmの着色ガラス(日本
板硝子(株)製商品名ブロンズペーン)をスパッタリン
グ装置の真空槽内の基板ホルダにセットし、クライオポ
ンプで真空槽内を7×10-4Paまで排気した。アルゴン20
体積%、酸素80体積%の混合ガスを真空槽内に導入し、
圧力を0.33Paに調節した。錫のターゲットに直流電源か
らカソード電圧400V、カソード電流5Aを印加し、所定時
間スパッタリングをおこないガラス上に65nmのSnO2膜を
被覆した。次に真空槽内の雰囲気をアルゴン40体積%、
酸素60体積%の混合ガスにほぼ完全に置換し、圧力を0.
4Paに調整し、チタニウムターゲットにカソード電圧480
V、カソード電流8Aを直流電源から印加し、所定時間ス
パッタリングをおこない、SnO2膜の上に50nmのTiO2膜を
被覆した。最後に真空槽内の雰囲気をアルゴン20体積
%、酸素80体積%の混合ガスにほぼ完全に置換し、圧力
を0.40Paに調整した。その後錫のターゲットにカソード
電圧400V、カソード電流5Aを直流電源から印加し、所定
時間スパッタリングをおこない、TiO2膜の上に50nmのSn
O2膜を被覆した。得られたサンプル1の光学特性を第1
表〜第3表に示した。またこのサンプルの硫酸とカセイ
ソーに対する耐薬品性、煮沸耐久性、耐摩耗性を測定し
て、その結果を第4表にまとめて示した。
第1表、第2表および第3表から、サンプル1は熱線
遮へい性能を有し、かつ、可視光線を70%以上透過する
ガラスであって、用いたガラス板との色調の差Δx,Δy
の両者が反射光、透過光とも0.03より小さく、ガラス板
と色調が大きく変わらないことが分かる。またこのサン
プル1の第2図(a)に示された分光反射曲線では、青
および赤の色の反射が抑えられているのが分る。さらに
上記のいずれの耐久試験を行っても光学特性の変化は小
さく、膜の剥離や目立ったキズの発生は認められなかっ
た。
実施例2 実施例1と同じ装置の基板ホルダに、300mm×300mmの
サイズで厚さ4mmの着色ガラス(日本板硝子(株)製商
品名ブロンズペーン)をセットし、クライオポンプで7
×10-4Paまで真空槽内を排気した。アルゴン20体積%、
酸素8 0体積%の混合ガスを真空槽内に導入し、圧力を0.33Pa
に調節した。錫のターゲットに直流電源からカソード電
圧400V、カソード電流5Aを直流電源から印加して所定時
間スパッタリングをおこないガラス板上に65nmのSnO2
を被覆した。その後、真空槽内をアルゴン40体積%、酸
素60体積%の混合ガスにほぼ完全に置換し、圧力を0.40
Paに調整した。そしてチタニウムのターゲットにカソー
ド電圧480V、カソード電流8Aを直流電源から印加し、さ
らに真空槽内をアルゴン94体積%、窒素6体積%の混合
ガスにほぼ完全に置換し、圧力を0.4Paに調整した。チ
タニウムのターゲットにカソード電圧390V、カソード電
流3Aを直流電源から印加し、TiO2膜の上にチタニウムの
窒化物の膜を5nm被覆した。最後に、雰囲気ガスをアル
ゴン20体積%、酸素80体積%の混合ガスにほぼ完全に置
換し、圧力を0.33Paに調整した。そして錫のターゲット
にカソード電圧400V、カソード電流5Aを直流電源から印
加し、チタニウムの窒化物の膜の上に46nmのSnO2膜を被
覆した。
得られたサンプル2の光学特性を、第1表、第2表、
第3表にに示した。またこのサンプル2の硫酸およびカ
セイソーダの耐薬品性、煮沸耐久性、耐摩耗性を測定し
て、第4表にまとめて示した。第1表、第2表、第3表
から、サンプル2は、熱線遮へい性能を有し、かつ、可
視光線を70%以上透過するガラスであって、用いたガラ
ス板との色調の差Δx,Δyの両者が反射光、透過光とも
0.03より小さく、ガラス板と色調が大きく変わらないこ
とが分かる。またこのサンプル2の第2図(b)に示さ
れた分光反射曲線では、青および赤の色の反射が抑えら
れているのが分る。さらに上記のいずれの耐久試験を行
っても光学特性の変化は小さく、膜の剥離や目立ったキ
ズの発生は認められなかった。ガラス板自身との色調と
大きく変わらないことが分かる。また第2図(b)に示
したこのサンプルの分光反射曲線は、青および赤の色の
反射が抑えられていることが分る。さらに上記のいずれ
の耐久試験を行っても光学特性の変化は小さく、膜の剥
離や目立ったキズの発生は認められなかった。
実施例3〜26 実施例1で用いた装置で、ターゲット材料、スパッタ
リング電源の種類(直流電源または高周波電源)、ター
ゲットに印加する電流(直流電源使用の場合)または電
力(高周波電源使用の場合)、真空槽へのガス導入量を
選び、第1表に示す膜構成の被膜が被覆されたサンプル
3〜26の熱線遮へいガラスを製作した。熱線遮へい膜を
構成する膜の被覆条件を第5表にまとめて示す。
得られたサンプル3〜26の光学特性を第1表、第2
表、第3表に示した。サンプ3〜26の硫酸とカセイソー
ダに対する耐薬品性、煮沸耐久性、耐摩耗性を測定し
て、その結果を第4表にまとめて示した。
第1表、第2法、第3表から、サンプル3〜26はいず
れも熱線遮へい性能を有し、かつ、可視光線を70%以上
透過するガラスであって、用いたガラス板との色調の差
Δx,Δyの両者が反射、透過とも0.03より小さく、ガラ
ス板と色調が大きく変わらないことが分かる。
さらに上記の酸、アルカリ、煮沸のいずれの耐久試験
を行っても光学特性の変化は小さく、膜の剥離や目立っ
たキズの発生は認められなかった。
比較例 実施例1と同じ装置の基板ホルダに300mm×300mmのサ
イズで厚さ4mmの着色ガラス(日本板硝子(株)製ブロ
ンズペーン)をセットし、クライオポンプで7×10-4Pa
まで真空槽内を排気した。アルゴン20体積%、酸素80体
積%の混合ガスを真空槽内に導入し、圧力を0.33Paに調
整した。錫のターゲットにカソード電圧400V、カソード
電流5Aを直流電源から印加し、所定時間スパッタリング
をおこないガラス上に62nmのSnO2膜を被覆した。その
後、真空槽内をアルゴン94体積%、窒素6体積%の混合
ガスにほぼ完全に置換し、圧力を0.40Paに調整した。そ
してチタニウムのターゲットにカソード電圧480V、カソ
ード電流8Aを直流電源から印加し、SnO2膜上にチタニウ
ムの窒化物の膜を6nm被覆した。最後に、アルゴン20体
積%、酸素80体積%の混合ガスを真空槽内に導入し、圧
力を0.33Paに調整した。そして錫のターゲットにカソー
ド電圧400V、カソード電流5Aを直流電源から印加し、チ
タニウムの窒化物の膜の上に62nmのSnO2膜を被覆した。
得られた比較サンプル1の光学特性を第1表、第2表、
第3表に示した。またこのサンプルの硫酸とカセンソー
ダに対する耐薬品性、煮沸耐久性、耐摩耗性を測定し
て、その結果を第4表にまとめて示した。
第1表、第2表および第3表から、比較サンプル1は
熱線遮へい性能を有するものの、反射光によるΔyは、
膜面側およびガラス面側でそれぞれ0.0816および0.0360
で、外観色が異なって見える上限の値である0.030より
も大きいことが分かる。比較サンプルと比較サンプルに
用いたガラス板を肉眼で比較観察したところ、色調に明
らかな差が認められた。第3図は、この比較サンプルの
分光反射曲線を示すもので、赤色の波長域(波長600nm
付近)の反射が増加し、強い赤色を呈していることが分
かる。
[発明の効果] 本発明によれば、ガラス板自身の色調をほとんど変え
ることなく、可視光線透過率が高く、かつ、熱線遮へい
性能を有するガラスを得ることができる。
また、本発明の熱線遮へいガラスは、単板で使用し得
る耐久性を有しているため、窓ガラスとして使用するに
あたっては複層ガラスや中間膜で貼り合わせられた安全
ガラスにする必要がない。したがって、自動車の窓ガラ
スとして用いると、デザイン上不都合な色調不良が生じ
ることがなく、また車輌の重量を増加させることなく、
室内に流入する太陽輻射エネルギーを低減することがで
きる。
さらに、本発明の熱線遮へいガラスの被膜の電気抵抗
は大きいので、アンテナ線条を組み込んだ自動車用窓ガ
ラスとして用いてもアンテナの受信感度を低下させるこ
とがない。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の熱線遮へいガラスの部分断面図、第2
図は本発明の実施例1および2の分光反射特性を示す
図、第3図は比較例の分光反射特性を示す図である。 1……熱線遮へいガラス、2……第1層の透明誘電体
膜、3……第2層の透明誘電体膜、4……第3層の透明
誘電体膜、5……吸収膜、6……ガラス板。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−208837(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 15/00 - 23/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス板上に第1層として、酸化第2錫
    膜、酸化ジルコニウム膜、窒化珪素膜、五酸化タンタル
    膜、シリコンと酸素と窒素とを含む可視光線波長域で透
    明な誘電体膜、シリコンと炭素と酸素と窒素とを含む可
    視光線波長域で透明な誘電体膜のいずれか1種で厚みが
    50〜100nmの透明誘電体膜が被覆され、前記第1層の上
    に633nmの波長における屈折率が2.2以上で厚みが20〜80
    nmの透明誘電体膜が第2層として被覆され、前記第2層
    の上に633nmの波長における屈折率が1.46〜2.1で厚みが
    30〜80nmの透明誘電体膜が第3層として被覆されたこと
    を特徴とする熱線遮へいガラス。
  2. 【請求項2】前記第3層の透明誘電体膜が、酸化第2錫
    膜、酸化ジルコニウム膜、五酸化タンタル膜、二酸化珪
    素膜、酸化アルミニウム膜、五酸化ニオブ膜、窒化珪素
    膜のいずれか1種であることを特徴とする特許請求の範
    囲第1項に記載の熱線遮へいガラス。
  3. 【請求項3】前記第3層の透明誘電体膜が、錫、ジルコ
    ニウム、タンタル、ビスマス、ニオブおよびシリコンの
    群から選ばれた1種と、酸素と、窒素とを含む非晶質膜
    であることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の
    熱線遮へいガラス。
  4. 【請求項4】前記第3層の透明誘電体膜が、タンタル、
    アルミニウム、ニオブおよびニッケルからなる群から選
    ばれた1種と、シリコンと、酸素と、窒素とを含む非晶
    質膜であることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記
    載の熱線遮へいガラス。
  5. 【請求項5】前記第3層の透明誘電体膜が、シリコンと
    炭素と酸素と窒素とを含む非晶質膜であることを特徴と
    する特許請求の範囲第1項に記載の熱線遮へいガラス。
  6. 【請求項6】前記第3層の透明誘電体膜が、ジルコニウ
    ムまたはタンタルのいずれか1種と、硼素と、酸素と、
    窒素とを含む非晶質膜であることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項に記載の熱線遮へいガラス。
  7. 【請求項7】前記第1層と前記第2層の間に10nmを超え
    ない厚みのチタニウム、ジルコニウム、クロムまたはハ
    フニウムのいずれかの金属の窒化物からなる吸収膜が設
    けられたことを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし
    第6項のいずれかの項に記載の熱線遮へいガラス。
  8. 【請求項8】前記第2層と前記第3層の間に10nmを超え
    ない厚みのチタニウム、ジルコニウム、クロムまたはハ
    フニウムのいずれかの金属の窒化物からなる吸収膜が設
    けられたことを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし
    第6項のいずれかの項に記載の熱線遮へいガラス。
  9. 【請求項9】可視光線透過率が70%以上となるように前
    記第1層、第2層および第3層の厚みが選ばれたことを
    特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第8項のいずれ
    かの項に記載の熱線遮へいガラス。
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