JP3181598U - 底部採水器 - Google Patents

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信博 山脇
浩 吉村
康宏 森井
宰 木下
淳 内田
重信 武田
利一 鈴木
有 梅澤
弥知 山田
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国立大学法人 長崎大学
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Abstract

【課題】着底と同時に閉蓋動作に移行できるようにすると共に、底部の少し上層の水を再現性良く採集できるようにした底部採水器を提供する。
【解決手段】開状態で採水容器10が海底に降下され、海底直上で蓋体12,13を閉じて採水する海底直上採水器100であって、相互に引き合う付勢力によって閉状態を維持する開閉自在な蓋体12,13を上下に有した筒状の採水容器10と、付勢力に打ち勝って蓋体12,13の開状態を維持する上下動可能な連接部材26を有して採水容器10の側面に装着された開蓋維持機構20と、面側が海底に対峙するように開蓋維持機構20の連接部材26の一端に連結された着接板30とを備え、蓋体12,13の開状態を維持するときは、連接部材26を押し下げた状態となされ、着接板30が着底すると同時に連接部材26を押し上げて開蓋維持機構20による蓋体12,13の開状態を解除する。
【選択図】図1

Description

本考案は、海山の湧昇流等の海洋観測に不可欠な海底付近の海水を採集する海底直上採水器に適用して好適な底部採水器の改良に関するものである。
近年の海洋における海水の採水は、調査・観測船(以下:調査船と呼ぶ)を停船させて、CTD(Conductivity Temperature & Depth Profiling System:以下、CTD と呼ぶ)にCarousel 採水装置(またはRosette 採水装置)を装備し、それにニスキン採水器を装着して行われる。
さらに、CTD には、海面から海底に至るまでの距離を計測しながら海底付近までの海水観測を行うことを目的とした海底高度計(以下、アルチメーターと呼ぶ)が装備されている。観測は、専用ケーブルを巻き込んだウインチを使用し、約1m/s程度(観測によって異なる。)のスピードで採水器を降下させながら海中の環境データ(深度、塩分、水温、溶存酸素、クロロフィル−a、光の透過度、濁度等)をリアルタイムで収集している。CTDは、海中の環境データに加え、アルチメーターによる海底からの距離情報もリアルタイムにモニター上で確認することができるため、海面から海底付近までの採水及び環境計測が可能となり、任意の深さでの多層採水(最大36 層)も行えるシステムである。
このCTDに関連して、特許文献1には海底採取装置が開示されている。海底採取装置は、フレーム、クリップ、ウエイト、1対の重量カップ及びワイヤーを備え、クリップがフレームに上下動自在に支持されている。ウエイトは、クリップの下に、当該クリップと一体になって上下動可能なように吊り下げられている。重量カップは、フレームに枢支され、かつ、クリップで開き状態に仮ロックされている。ワイヤーは、重量カップ等の吊り下げ及び吊り上げ時に使用される。これらを前提にして、海底採取装置によれば、ウエイト着底時に仮ロックが外れて、泥や砂等の他に礫も採集可能な構造を採っている。
また、特許文献2には地下水採水装置及び採水方法が開示されている。地下水採水装置は、底蓋、採水管及び上蓋を備え、底蓋は上部の径の方が下部の径よりも小さい円錐形を有してワイヤーに取り付けられている。採水管は底蓋が嵌装されたとき、当該底蓋の外径に等しい内径を有している。上蓋は、ワイヤーのガイド孔を有して、採水管の上部開口に装着されている。これらを前提にして、地下水採水装置によれば、採水管が水よりも比重の大きい材質で形成され、地下水を確実に封入できるという構造を採っている。
更に、特許文献3には水中試料採取器が開示されている。水中試料採取器は、筒状体、アーム、案内支持機構、弾性体、係止手段及び係止解除手段を備え、筒状体は一方が開放端とされ、水中に吊り降ろされて試料を採取する。アームは、筒状体の外周面よりも外側に設けられ、先端部に蓋体が設けられ、筒状体の開放端を閉鎖可能なされている。
案内支持機構は、蓋体が筒状体の開放端から遠く離れる位置と、その蓋体がその開放端に間隔を置いて対向する位置との間でアームを回動するように案内すると共に、その蓋体がその開放端に対向する位置に達したとき、その蓋体がその開放端に密着するまで、筒状体の軸線方向にアームを移動するように案内する。
弾性体は、案内支持機構により案内されて、蓋体が筒状体の開放端から遠く離れた位置からその蓋体が開放端に密着する位置まで、アームを移動するように付勢している。係止手段は、蓋体が筒状体の開放端から遠く離れる位置で、弾性体の付勢力に抗して、アームを係止し保持する。これらを前提にして、水中試料採取器によれば、係止解除手段が、係止手段によるアームの係止を解除することで、蓋体で筒状体の開放端を密着できるという構造を採っている。
特開昭53−057091号公報 特開平11−229748号公報 特開平02−103439号公報
ところで、従来例に係る海底直上採水器によれば、海底の少し上層の海水を採集する場合に次のような問題がある。
i.特許文献1に見られるような海面から海底に至るまでの降下距離を計測しながら海水を採集する方法によれば、潮流、海底の起伏、風浪とうねり等の要因と、水温、海水密度による測定誤差等により、海底上の5mの範囲内の採水が極めて困難であるという問題があった。
ii.特許文献2に見られるような海底を検知する機械的手段として錘を備えた採水器によれば、錘の着底から採水器の蓋体の閉動作までのタイムラグにより、錘が巻き上げた海底の堆積物が採集した海水に混入するという問題があった。
iii.特許文献3に見られるような案内支持機構を備えた地下水採水装置によれば、案内支持機構により案内されて、蓋体が筒状体の開放端から遠く離れた位置からその蓋体が開放端に密着する位置に至る蓋体の閉動作までのタイムラグ及び、蓋体の密着時、その端部が巻き上げた水底の堆積物が採集した地下水に混入するという問題が懸念される。
本考案は以上の点に鑑み創作されたもので、蓋体の閉じ機構を工夫して、着底と同時に閉蓋動作に移行できるようにすると共に、海底の少し上層の深層水を再現性良く採集できるようにした底部採水器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本考案の底部採水器は、請求項1に記載のように、蓋体を開いた状態で固定された採水容器が底部に降下され、底部直上で蓋体を閉じて採水する底部採水器であって、相互に引き合う付勢力によって閉状態を維持する開閉自在な蓋体を上下に有した筒状の採水容器と、前記付勢力に打ち勝って前記蓋体の開状態を維持する上下動可能な連接部材を有して前記採水容器の側面に装着された開蓋維持機構と、面側が底部に対峙するように前記開蓋維持機構の連接部材の一端に連結された着接板とを備え、前記蓋体の開状態を維持するときは、前記連接部材を押し下げた状態となされ、前記着接板が着底すると同時に前記連接部材を押し上げて前記開蓋維持機構による前記蓋体の開状態を解除するものである。
請求項1に係る底部採水器によれば、着底と同時に着接板が底部を検知して、機械的に蓋体の開状態を解除するので、相互に引き合う付勢力によって採水容器の上下の蓋体を閉める閉蓋動作に移行できると共に、底部から少し上層の水を再現性良く採集できるようになる。
請求項2に記載の底部採水器は、請求項1において、前記開蓋維持機構が前記採水容器に取り付け可能な基板と、U溝を有して前記基板に固定され、前記連接部材を挿抜自在に支持する1組の支持部材と、一端が固着され、他端が前記支持部材のU溝の一方の側壁を貫通して他方の側壁に係合される閂棒を有して前記連接部材の所定の位置に取り付けられた1組の閂部材と、一端が前記蓋体の所定の位置に係止され、他端が前記閂棒に係止される1組の接続部材とを有するものである。
請求項3に記載の底部採水器は、請求項2において、前記連接部材を押し下げた状態で、前記接続部材の他端が前記閂棒に挿入されて前記支持部材に係止され、前記連接部材が押し上げられると、前記閂棒が前記支持部材のU溝の他方の側壁から抜き出されて、前記接続部材の他端が前記閂棒から外れるようにしたものである。
請求項4に記載の底部採水器は、請求項1において、前記着接板には投入時の衝撃吸収用の開口部が複数設けられるものである。
請求項5に記載の底部採水器は、請求項1において、前記連接部材の他端を受け止める受け止め部材が前記基板に立設されるものである。
請求項6に記載の底部採水器は、請求項5において、前記着接板と前記連接部材との間に、当該着接板と前記採水容器の下部との間の離隔距離を調整する採水高さ調整機構を備えるものである。
請求項1〜3に係る底部採水器によれば、面側が底部に対峙するように開蓋維持機構の連接部材の一端に連結された着接板を備え、この着接板が着底すると同時に連接部材を押し上げて開蓋維持機構による蓋体の開状態を解除するものである。
この構成によって、相互に引き合う付勢力によって採水容器の上下の蓋体を閉める閉蓋動作に移行できるようになる。これにより、底部の堆積物が混入することなく、底部から少し上層の水を再現性良く採集できるようになる。
請求項4に係る底部採水器によれば、着接板に設けられた複数の開口部によって、海上投入時の波浪を吸収し、着接板が受ける衝撃を緩和でき、着接板が着底する前に連接部材を押し上げて、蓋体が閉まるといった誤動作を防止できるようになる。
請求項5に係る底部採水器によれば、基板に立設された受け止め部材によって、連接部材の鉛直方向への移動を規制できるので、閂棒が支持部材から全て抜き出るといった不具合を防止できるようになる。
請求項6に係る底部採水器によれば、着接板と連接部材との間に備えた採水高さ調整機構によって、当該着接板と採水容器の下部との間の離隔距離を調整することにより、底部から異なる高さの上層の水を再現性良く採集できるようになる。
本考案に係る実施形態としての海底直上採水器100の構成例を示す斜視図である。 海底直上採水器100の組立例(その1)を示す分解斜視図である。 海底直上採水器100の組立例(その2)を示す分解斜視図である。 海底直上採水器100の動作例(その1)を示す断面図である。 海底直上採水器100の動作例(その2)を示す断面図である。 海底直上採水器100の動作例(その3)を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら、本考案の実施の形態としての底部採水器について説明をする。まず、図1及び図2を参照して、海底直上採水器100の構成例について説明する。図1に示す海底直上採水器100は底部採水器の一例を構成し、筒状の採水容器10、開蓋維持機構20及び着接板30を備えている。
採水容器10は2つの蓋体12,13を有している。海底直上採水器100は、蓋体12,13を開いた状態で固定された採水容器10が底部、例えば、海底に降下され、その海底直上で蓋体12,13を閉じて採水するものである。採水場所となる底部は海底に限られることはなく、河川や湖沼等であってもよい。
採水容器10は、相互に引き合う付勢力によって閉状態を維持する開閉自在な蓋体12をその上部に、蓋体13をその下部に有している。採水容器10には例えば、ニスキン採水器の他、バンドーン採水器も使用される。採水容器10は、蓋体12,13の他に容器本体11(ボトル)及び付勢部材14を有している(図4参照)。
容器本体11は保温性かつ所定の内容量を有した円筒状を成し、上下部が円錐状に整形されている。容器本体11の上下部に各々開口部2,3が設けられている。容器本体11の上部の所定の位置には、空気孔栓4が設けられ、海水分析時、空気孔栓4が開放され、容器内が大気圧の状態となされる。その下部の所定の位置には、止水栓5(採水口)が設けられ、海水分析時、容器内の海水を取り出すようにされる。
付勢部材14は容器本体11の内部に収容され、付勢部材14にはシリコンゴムチューブや、耐食性のスプリングコイルが使用される。付勢部材14の一端は蓋体12に接続され、その他端は蓋体13に接続されている。採水容器10では、容器本体11の内部で付勢部材14によって、蓋体12,13が相互に引っ張られることで、蓋体12で上部の開口部2が閉じられ、蓋体13で下部の開口部3が閉じるようになっている(図6参照)。
採水容器10の側面には開蓋維持機構20が装着されている。開蓋維持機構20は付勢部材14の付勢力に打ち勝って蓋体12,13の開状態を維持する上下動可能な連接部材26を有している。連接部材26は所定の外径を有したステンレス(SUS)の丸棒や、黄銅の丸棒等から構成され、採水容器10の高さとほぼ等しい長さ又はそれ以上の長さを有している。
開蓋維持機構20は、連接部材26の他に1枚の基板21、1組の固定金具22,23、1組の可動金具24,25及び1組の接続部材27,28を有している。基板21は所定の厚み、幅、及び採水容器10の高さよりもわずか短い長さを有しており、採水容器10の側面に取り付け可能なものである。
固定金具22は支持部材の一例を構成し、図2に示すように本体部201に閉鎖用フックのU溝202を有して基板21に固定され、連接部材26を挿抜自在に支持する開口部203が設けられる。本体部201は、矩形状の金属素材から成り、図示しない例えば、4個のビスにより基板21に取り付けられる。本体部201のU溝202の一方の側壁には開孔部204が設けられ、他方の側壁には穴部205が設けられている。固定金具23も同様にして構成される。固定金具22,23には肉厚のステンレス板や、黄銅板等が使用される。
可動金具24は、閂部材の一例を構成し、図2に示すように矩形状の金属素材から成る本体部401を有している。本体部401は開口部402及び固定部403を有している。この可動金具24は、一端が本体部401に固着され、他端が突出された閂棒24aを有して連接部材26の所定の位置に取り付けられる。
本体部401は、開口部402に連接部材26が挿通され、所定の長さだけ上端が突出された状態で、固定部403で締め付けられて固定される。閂棒24aは、固定金具22の開孔部204を貫通して他方の穴部205に係合される。可動金具25も、同様にして構成される。可動金具24,25には肉厚のステンレス板や、黄銅板等が使用される。
接続部材27は、一端が蓋体12の所定の位置に係止され、他端が閂棒24aに係止される。接続部材28は、一端が蓋体13の所定の位置に係止され、他端が閂棒25aに係止される。接続部材27,28には、ステンレス製のワイヤーや、所定の太さを有したテグス(釣り糸)が使用される。接続部材27の先端にはフック27aが設けられ、接続部材28の先端にはフック28aが設けられている(図4参照)。フック27a,28aは接続部材27,28そのものの先端をフック形状に加工しても、また、別部品としてのフック27a,28aをその先端に取り付けるようにしてもよい。
海底直上採水器100によれば、連接部材26を押し下げた状態で、接続部材27のフック27aが閂棒24aに挿入されて固定金具22に係止され、接続部材28のフック28aが閂棒25aに挿入されて固定金具23に係止される。また、連接部材26が押し上げられると、閂棒24aが固定金具22のU溝202の他方の側壁から抜き出され、閂棒25aが固定金具23のU溝202の他方の側壁から抜き出されて、接続部材27のフック27aが閂棒24aから外れ、接続部材28のフック28aが閂棒25aから外れるようにした。
この例で、基板21の上部であって、連接部材26の直上となる位置には受け止め部材29が立設され、連接部材26の一端(上端)を受け止めるようになされる。受け止め部材29は、閂棒24aが固定金具22の開孔部204からが抜け出たり、閂棒25aが固定金具23の開孔部204からが抜け出たりするのを防止する機能を備えている。受け止め部材29には凸状のダボ金具や、ボルトネジ等が使用され、基板21に対して圧入又はネジ止めされる。
基板21の下部には吊り下げワイヤー80の端部保持用の固定部材70が取り付けられ、矩形状の金属素材から成る本体部71を有している。本体部71は図示しない例えば、4個のビスにより基板21に取り付けられる。ワイヤー80は、船上のクレーン等の巻き上げ機から繰り出されるものである。もちろん、ワイヤー80に代えてロープを使用してもよい。
固定部材70は、図2に示すように、本体部71の他に、ワイヤー等の押さえ板72や、植え込みボルト73、蝶ネジ74等から構成される。本体部71には、連接部材26を挿通する開口部701が設けられ、更に、ワイヤー80を保持するU溝702が設けられる他、植え込みボルト73の係合部703が設けられる。固定部材70では、U溝702にセットされたワイヤー80を押さえ板72で挟み込み、蝶ネジ74で押さえ板72を締め付けるようにしてワイヤー80等が固定される。
この例では、図1に示すように上述の連接部材26の他端に着接板30が連結されている。着接板30には、ある程度の接触(表)面積を有した平板が使用される。着接板30に平板を使用するのは、着底時、連接部材26を再現性良く押し上げられるようにするためである。着接板30の周縁部には、曲損防止用の曲げ加工が施されている。着接板30は、面側が海底に対峙し、曲げ加工を施した内側を連接部材26の一端に連結するとよい。
また、着接板30には、海上投入時の衝撃吸収用の開口部31,32が複数設けられたものを使用するとよい。この例では、連接部材26の取り付け位置を中心にしてその周囲に大小8個の開口部31,32が設けられている。着接板30の四隅に「大」の開口部31が設けられ、4つの「大」の開口部31の各々間に4つの「小」の開口部32が設けられている。この8個の開口部31,32で海上投入時の波浪を吸収し、着接板30が受ける衝撃を緩和できるようになっている。着接板30の中央部には所定の厚みを有した曲損防止用の当て板33が接合されている。
海底直上採水器100には採水容器10、開蓋維持機構20及び着接板30の他に採水高さ調整機構40及び補助部材50を備えている。採水高さ調整機構40は、着接板30と連接部材26との間に設けられ、当該着接板30と採水容器10の下部との間の離隔距離を調整可能なようになされている。
採水高さ調整機構40は管部材41(パイプ)及び、固定用のネジ部材42から構成され、採水を希望する海底からの距離を管部材41の長さで調整する。管部材41は連接部材26の下部を収容可能な所定の長さ、例えば、20cm〜150cm程度及び内径を有している。管部材41は、例えば、鉛直方向へ立設するように溶接またはボルト固定(分解して可搬を容易にする)等により当て板33に固定されている。管部材41の管壁上側部にはボルト等のネジ部材42が取り付けられている。ネジ部材42は、採水高さ調整時、管部材41に連接部材26が収容され、その後、連接部材26の下部を外部から締め付けるようにして固定される。
この例では、海底直上で蓋体12,13を閉じて採水する場合であって、管部材41の長さを最大の調整範囲として、蓋体12,13を閉じる採水位置を海底から遠ざけたり、反対に、その採水位置を海底に近づけるように調整可能となされる。これにより、海底直上の採水であっても、その採水高さを微小調整できるようになる。
上述の管部材41とベルト部材63との間には、閉鎖作動補助用の補助部材50が取り付けられている。補助部材50には2本のスプリングバネ50a,50bが使用される。もちろん、1本のスプリングバネを中央部位で折り曲げて使用してもよい。この例では、連接部材26を常に引き上げる方向に付勢するために、補助部材50の中央部が管部材41に取り付けられたボルト43の頭部等に係合され、その両端部がベルト部材63に設けられた2箇所のボルト部材51,52等に取り付けられる。補助部材50は、着接板30の着底時、連接部材26の押し上げによる蓋体12,13の閉鎖作動を補助するようになされる。これらにより、海底直上採水器100を構成する。
ここで、図2及び図3を参照して、海底直上採水器100の組立例について説明する。この例では、図1に示した海底直上採水器100を組み立てる場合を前提とし、図2に示す開蓋維持機構20を組み立てた後に、図3に示す採水容器10や、着接板30等を取り付ける場合を例に挙げる。
まず、図2に示すような開蓋維持機構20を組み立てる。この例では、幅がWで長さがL、厚さがtの基板21を準備する。基板21には採水容器10の長さにもよるが厚さt=5mm程度のステンレス(SUS)板や、黄銅板等が使用される。基板21が準備できたら、図1で説明したような固定金具22,23、受け止め部材29及び固定部材70を基板21に取り付ける。
この例で、固定金具22の本体部201には、肉厚のステンレス板や、黄銅板等の矩形状の金属素材が使用される。本体部201は放電加工等によりその角部をカットするように形成される。この角部の加工は接続部材27やそのフック27aが引っ掛からないようにするためである。更に本体部201となる金属素材に放電加工等により閉鎖用フックのU溝202及び、ボール盤等を使用して連接部材挿通用の開口部203を形成する。更に、ボール盤等を使用して、U溝202の一方の側壁に開孔部204を形成すると共に、他方の側壁に穴部205を形成する。固定金具23も同様にして形成される。
また、可動金具24も固定金具22と同様にして、本体部401には、肉厚のステンレス板や、黄銅板等の矩形状の金属素材が使用される。ボール盤等を使用して本体部401に開口部402及び固定部403を形成する。この例では、閂棒24aの一端を圧入装置等を使用して本体部401に圧入して固着し、他端を突出するように形成する。可動金具25も同様に形成する。
固定部材70の本体部71には、肉厚のステンレス板や、黄銅板等の矩形状の金属素材が使用される。本体部71となる金属素材にボール盤等により連接部材挿通用の開口部701を形成する。本体部71には開口部701の他に放電加工等により所定の位置を抉ってU溝702を形成するようにされる。植え込みボルト73は本体部71の所定の位置に植え込まれる。固定部材70には本体部71の他に、押さえ板72を介在して蝶ネジ74が植え込みボルト73に螺合するようにして係合される。
上述の固定金具22,23及び固定部材70は、本体部201,71に雌ネジを切って、基板21の裏面側から図示しない4本のビスで、各々固定するとよい。受け止め部材29には、所定の外径を有した丸棒が使用され、その一端を凸状に形成する。一方で、基板21に開孔部21aを形成し、この開孔部21aを利用して丸棒の凸状部位を圧入又はネジ螺合により基板21に係合するとよい。
基板21に固定金具22,23、可動金具24,25及び受け止め部材29,70の取り付けを終えたら、これらの金具及び部材に連接部材26を組み入れる。その組み入れ順序は、例えば、下方から順に、固定部材70の開口部701、固定金具23の開口部203、可動金具25の開口部402、固定金具22の開口部203を挿通し、及び、最後に可動金具24の開口部402に連接部材26を挿通する。
可動金具24は、当該可動金具24から所定の長さだけ、連接部材26の上端が突出した位置であって、閂棒24a及び閂棒25aが各々の本体部201の穴部205に嵌合する位置で連接部材26に固定する。可動金具25は固定金具23に合わせて、可動金具24,25の各々の本体部401は、開口部402に挿通された連接部材26を固定部403で締め付けて固定するようになされる。
これにより、閂棒24aは、固定金具22の開孔部204を貫通して他方の穴部205に対して挿抜自在に係合される。閂棒25aも、固定金具23の開孔部204を貫通して他方の穴部205に対して挿抜自在に係合される。なお、連接部材26の挿通順序は逆でもよい。これにより、開蓋維持機構20が組み立てられる。
上述の開蓋維持機構20が準備できたら、図3に示すベルト部材61〜63を使用して当該開蓋維持機構20を採水容器10に取り付ける。例えば、図3に示す曲面安定用の下地基板60を介在させて3本のベルト部材61,62,63で採水容器10の側面に開蓋維持機構20を取り付ける。開蓋維持機構20は、採水容器10において、その空気孔栓4や止水栓5等の開栓作業に邪魔にならない位置に取り付けるようにする。ベルト部材61,62,63には、採水容器10の外周囲よりも長い周長を有したステンレス又は黄銅製のウォームネジ付きベルト(バンド)が使用される。
下地基板60には所定の厚みを有した金属板が使用され、下地基板60は、その長手方向の両端部が「C」状に加工され、採水容器10の曲面に対して開蓋維持機構20の姿勢を安定化するように取り付けられる。下地基板60の一方のC状加工部位には、ワイヤー80等の上部を固定するための固定金具75が取り付けられている。固定金具75には、例えば、ステンレス製のUボルトが使用される。固定金具75は、上述の固定部材70と協働して当該海底直上採水器100の全自重及び採水後の内容水の全重さを担うようになされる。
この例では、開蓋維持機構20を採水容器10に取り付けるとき、下地基板60と基板21とを重ね合わせて採水容器10の側面に位置合わせする。その後、ベルト部材61を固定金具75に挿通して、基板21の上部から下地基板60を押さえ込むように、ベルト部材61で開蓋維持機構20の上部を採水容器10に取り付ける。他のベルト部材62,ベルト部材63は固定金具75の挿通を除き、ベルト部材61と同様にして、ベルト部材62で開蓋維持機構20の中間部位を採水容器10に取り付け、ベルト部材63で開蓋維持機構20の下部を採水容器10に取り付けるようにする。
この例では、下地基板60の他方のC状加工部位の下方に、係止部64を設け、連接部材26の所定の位置に開口された開孔部66と、当該係止部64との間に復元用のバネ65を取り付けるようになされる(図1で図示せず)。離底時、バネ65によって、連接部材26を下方に押し戻すようになされる。バネ65は省略してもよい。
上述の開蓋維持機構20の採水容器10への取り付けを終えたら、連接部材26の他端に着接板30を連結する。着接板30には、採水高さ調整機構40を備えた、ある程度の接触(表)面積を有し、かつ、海上投入時の衝撃吸収用の大・小の開口部31,32有した平板を使用するとよい。着接板30の周縁部に曲損防止用の曲げ加工を施すとよい。着接板30は、面側が海底に対峙し、曲げ加工を施した内側を連接部材26の一端に連結するようになされる。
採水高さ調整機構40には、管部材41及び固定用のネジ部材42から構成されたものを使用する。採水高さ調整機構40は着接板30と連接部材26との間に設けられる。ネジ部材42は、採水高さ調整時、管部材41に連接部材26が収容され、その後、連接部材26の下部を外部から締め付けるようにして固定される。
上述の連接部材26への着接板30の取り付けを終えたら、ベルト部材63と管部材41との間に、閉鎖作動補助用の補助部材50を取り付ける。例えば、2本のステンレス製のスプリングバネ50a,50bの各々の一端を、管部材41に取り付けられたボルト43の頭部等に係合し、その他端をベルト部材63に設けられた2箇所のボルト部材51,52等に取り付ける。これらにより、海底直上採水器100を組み立てることができる。
次に、図4〜図6を参照して、海底直上採水器100の取扱例及びその動作例について説明する。この例では、海底直上の深層水を採集する場合であって、船上のクレーン等の巻き上げ機からワイヤー80を繰り出し、当該ワイヤー80の先端部に海底直上採水器100を取り付けて深海に降下する場合を例に挙げる。
まず、図4に示す海底直上採水器100をワイヤー80の先端部に取り付ける。このとき、下地基板60に取り付けられた固定金具75にワイヤー80の先端部と挿通し、更にその先端を基板21の固定部材70に固定する。固定部材70では、ワイヤー80の先端部をU溝702にセットし、当該ワイヤー80を押さえ板72で挟み込み、蝶ネジ74で押さえ板72を締め付けるようになされる。
次に、蓋体12,13を開状態に維持するように接続部材27,28をセットして投入準備を行う。このとき、連接部材26を押し下げた状態で、接続部材27のフック27aを閂棒24aに挿入して固定金具22に係止する。また、接続部材28のフック28aを閂棒25aに挿入して固定金具23に係止する。これにより、蓋体12,13の開状態を維持できるようになる。この状態で、巻き上げ機からワイヤー80を繰り出して目標深度まで海底直上採水器100を降下させる。
この例では、図5に示すように、着接板30が着底すると同時に連接部材26を押し上げて開蓋維持機構20による蓋体12,13の開状態を解除される。このとき、開蓋維持機構20では、連接部材26が押し上げられ、可動金具24,25が上方へ移動した瞬間、閂棒24aが固定金具22のU溝202の他方の側壁から抜き出されると共に、閂棒25aが固定金具23のU溝202の他方の側壁から抜き出されて、接続部材27のフック27aが閂棒24aから開放され(外れ)、接続部材28のフック28aが閂棒25aから開放される。
フック27a,28aが開放されることで、蓋体12,13が閉鎖する。このとき、上下の蓋体12,13は、接続部材27,28によって引っ張られなくなるため、付勢部材14の付勢力によって引っ張られ、蓋体12,13が閉じるようになる。
その後、ワイヤー80を巻き上げて、図6に示す蓋体12,13が閉じた海底直上採水器100を船上へ引き上げる。このとき、離底と共に、海底から着接板30が受ける力が無くなり、連接部材26がバネ65の復元力により自動で元の押し下げた状態に戻るようになる。ワイヤー80を巻き上げて、海底直上採水器100を回収する。これにより、海底直上採水器100による海底直上の深層水の採水作業を終了する。
このように実施形態としての海底直上採水器100によれば、着底と同時に着接板30が機械的に海底を検知して、蓋体12,13の開状態を解除するので、相互に引き合う付勢力によって採水容器10の上下の蓋体12,13を閉める閉蓋動作に移行できると共に、海底から少し上層の深層水(海水)を再現性良く採集できるようになる。
海底直上採水器100によれば、着接板30に設けられた大・小の複数の開口部31,32によって、海上投入時の波浪を吸収し、着接板が受ける衝撃を緩和できるようになる。しかも、降下中の当該着接板30に加わる水圧を低減できるので、深海において、着接板30が着底する前に連接部材26を押し上げて、蓋体12,13が閉まるといった誤動作を防止できるようになる。
海底直上採水器100によれば、基板21の上部に立設された受け止め部材29によって、連接部材26の鉛直方向への移動を規制できるので、閂棒24a,25aが可動金具24,25から全て抜き出るといった不具合を防止できるようになる。
海底直上採水器100によれば、着接板30と連接部材26との間に備えた採水高さ調整機構40によって、当該着接板30と採水容器10の下部との間の離隔距離を調整することにより、底部から異なる高さの上層の深層水を再現性良く採集できるようになる。
本考案は、海山の湧昇流等の海洋観測に不可欠な海底付近の深層水を採集する海底直上採水器に適用して極めて好適である。
10 採水容器
11 容器本体
12,13 蓋体
14 付勢部材
20 開蓋維持機構
21 基板
22,23 固定金具(支持部材)
24,25 可動金具(閂部材)
26 連接部材
27,28 接続部材
29 受け止め部材
30 着接板
80 ワイヤー
100 海底直上採水器(底部採水器)

Claims (6)

  1. 蓋体を開いた状態で固定された採水容器が底部に降下され、底部直上で蓋体を閉じて採水する底部採水器であって、
    相互に引き合う付勢力によって閉状態を維持する開閉自在な蓋体を上下に有した筒状の採水容器と、
    前記付勢力に打ち勝って前記蓋体の開状態を維持する上下動可能な連接部材を有して前記採水容器の側面に装着された開蓋維持機構と、
    面側が底部に対峙するように前記開蓋維持機構の連接部材の一端に連結された着接板とを備え、
    前記蓋体の開状態を維持するときは、前記連接部材を押し下げた状態となされ、
    前記着接板が着底すると同時に前記連接部材を押し上げて前記開蓋維持機構による前記蓋体の開状態を解除する底部採水器。
  2. 前記開蓋維持機構は、
    前記採水容器に取り付け可能な基板と、
    U溝を有して前記基板に固定され、前記連接部材を挿抜自在に支持する1組の支持部材と、
    一端が固着され、他端が前記支持部材のU溝の一方の側壁を貫通して他方の側壁に係合される閂棒を有して前記連接部材の所定の位置に取り付けられた1組の閂部材と、
    一端が前記蓋体の所定の位置に係止され、他端が前記閂棒に係止される1組の接続部材とを有する請求項1に記載の底部採水器。
  3. 前記連接部材を押し下げた状態で、前記接続部材の他端が前記閂棒に挿入されて前記支持部材に係止され、
    前記連接部材が押し上げられると、前記閂棒が前記支持部材のU溝の他方の側壁から抜き出されて、前記接続部材の他端が前記閂棒から外れるようにした請求項2に記載の底部採水器。
  4. 前記着接板には投入時の衝撃吸収用の開口部が複数設けられる請求項1に記載の底部採水器。
  5. 前記着接板に取り付けられた前記連接部材の他端を受け止める受け止め部材が前記基板に立設される請求項1に記載の底部採水器。
  6. 前記着接板と前記連接部材との間に、当該着接板と前記採水容器の下部との間の離隔距離を調整する採水高さ調整機構を備える請求項5に記載の底部採水器。
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