JP3177852B2 - 薄膜磁気ヘッド - Google Patents

薄膜磁気ヘッド

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JP3177852B2 JP15855691A JP15855691A JP3177852B2 JP 3177852 B2 JP3177852 B2 JP 3177852B2 JP 15855691 A JP15855691 A JP 15855691A JP 15855691 A JP15855691 A JP 15855691A JP 3177852 B2 JP3177852 B2 JP 3177852B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高密度記憶装置であるハ
ードディスク(以下、HDという)に用いる薄膜磁気ヘッ
ドに関する。
【0002】
【従来の技術】HDに用いる薄膜磁気ヘッドは、磁気デ
ィスクの磁気記録密度を高くするため薄膜技術によって
形成され、通常、セラミック基板上の下部磁性層と上部
磁性層との間に、磁気ギャップを有する、上部および下
部の磁性層と両磁性層間を通り磁気回路と交差する所定
巻数のコイルを形成する銅膜と、コイル相互間および、
コイルと上部,下部磁性層間を電気的に絶縁する絶縁層
を積層して構成される。
【0003】図3は上記のように構成した薄膜磁気ヘッ
ドによりトランスデューサ素子11を形成した従来のHD
用薄膜磁気ヘッドの外観を示した斜視図である。なお、
12はスライダ面である。
【0004】薄膜磁気ヘッドの電磁変換特性は、ヘッド
コアを構成する磁性膜の磁気特性に大きく依存し、薄膜
磁気ヘッドが使用されるのは一般に、数MHzから数十
MHzの高周波領域であるため、この周波数領域での磁
気特性が重要となってくる。特に、ヘッドコアの磁路方
向の透磁率は薄膜磁気ヘッドの電磁変換特性に大きく影
響する。
【0005】そのため、薄膜磁気ヘッドではトラック幅
方向が磁化容易軸となるように、磁性膜に単軸磁気異方
性を付与している。従って、トラック方向は磁化困難軸
となり励磁時の磁化反転は磁化回転により行われ、磁壁
移動により行なわれる磁化反転よりも高速となる。
【0006】また、薄膜磁気ヘッドの大きな課題として
“ウイグル”及び“ポプコンノイズ”等の問題がある。
【0007】ウイグルは再生波形に波形ひずみが発生す
る現象であり、1979年IBMのJonesにより初めて
報告された。このウイグル現象は固定磁気ディスク装置
において信号読み取りエラーを引き起こす要因となる。
これは、読み出し時の出力に時間的遅れ成分、及び変動
を伴うことがその発生の主な原因とされている。
【0008】時間的遅れ成分が発生する原因は、高周波
駆動時における磁化反転が全て磁化回転によって行なわ
れず、磁壁移動によって行なわれる成分が存在するため
であると考えられる。それを避けるため磁化反転の成分
を全て磁化回転のみによって行なわせるには、磁壁が高
周波励磁により容易に動かないように固定する必要があ
る。
【0009】磁壁が高周波励磁により容易に移動しない
ように固定するために、磁性層のコアのエッジにくさび
形の切込みを入れたり、コアの表面に磁化容易軸に平行
に溝を形成したり、コアの形状を野球のホームベース状
にするなどの試みが成されている。
【0010】しかし、これらの方法に拠っても完全に磁
壁の移動を固定することは困難であり、また、くさび形
の切込みやコア表面の溝は磁性層の実効透磁率を低下さ
せる原因となる。
【0011】また、磁性膜の磁歪が大きい場合、磁性膜
自身や磁性膜に加わる応力によって磁化が変化し磁壁が
不安定になりウイグルが発生する。これを防止するため
に磁性膜の磁歪を負にしたり、磁歪の絶対値を小さくす
る試みが成されている。磁歪の値を制御するには磁性膜
の組成を制御する方法と、磁性膜の結晶構造を制御する
方法とがある。
【0012】磁歪を1×10~6以下に制御するためにはパ
ーマロイ(Fe‐Ni)の場合、組成を±0.2重量%に制御
しなければ成らない。また、磁歪が1×10~6以下に入る
組成は結晶構造により変化するので、組成と結晶構造の
両方を制御する必要がある。しかし、これらの方法によ
ってもウイグルを完全に無くすことは困難である。
【0013】また、ポプコンノイズはデータを書き込ん
で直ちにデータを読み込む時に発生するスパイク状のノ
イズである。セクターサーボ方式の固定ディスク装置で
は読み込みエラーの発生原因となる。これは、書き込み
電流によって励磁された磁壁が緩和過程で何等かの原因
でピンニングされ、その後遅れて緩和状態に戻る時に観
測されるノイズであると考えられる。
【0014】磁壁がピンニングされる原因としては磁性
層の磁歪が大な場合、書き込み時の発生磁界やコイルの
発熱による絶縁層の膨張で磁性層に対して外部応力がか
かり、磁壁を拘束することが考えられる。
【0015】ポプコンノイズの対策としては磁性層の磁
歪を絶縁値で5×10~7以下にしたり1×10~6以下の負の
磁歪に設定したりする方法や、コイルの比抵抗を小さく
したり断面積を大きくすることによりコイルの抵抗を小
さくして、発熱を抑える方法が試みられている。
【0016】しかしながら、前述したように磁性層の磁
歪を1×10~6以下に制御するためにはパーマロイ(Fe‐
Ni)の場合、組成を±0.2重量%に制御しなければ成ら
ない。また、コイルの比抵抗を小さくしたり断面積を大
きくすることも技術的に限界がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高密度記憶
装置であるHDに用いる薄膜磁気ヘッドにおける上述の
ような諸問題を解決して電磁変換特性にすぐれ、ウイグ
ル及びポプコンノイズなどのノイズを無くした薄膜磁気
ヘッドの提供を目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、薄膜磁気ヘッ
ドにおいて、基板と、基板上に設けられた下部磁性層
と、下部磁性層の上にギャップ層を介して設けられた上
部磁性層と、下部磁性層と上部磁性層との間に設けられ
たコイル層とを備え、下部磁性層と上部磁性層の少なく
とも一方を、Fe‐Ni系合金であって、異方性磁界(H
k)が4から8 Oeの間にあり内部応力が引張り応力で、
引張り応力の大きさが、5×10 8 ないし1×10 10 dyn/cm 2
である金属材料で形成し、また、Fe‐Ni系合金に含ま
れるNiは82.5ないし83.7重量%とし、さらに、上部磁
性層上に保護層を設け、保護層の表面を平坦化する。
【0019】
【作用】本発明によれば、下部磁性層と上部磁性層の
なくとも一方、Fe‐Ni系合金を使用し、異方性磁界
(Hk)が4から8 Oeの間にあるようにし、内部応力が
引張り応力で、引張り応力の大きさが5×108ないし1
×1010dyn/cm2である金属材料を使用し実効的異方性を
制御することにより、ウイグル及びポプコンノイズなど
のノイズを発生しないハードディスクに用いられる薄膜
磁気ヘッドをることができる。
【0020】
【実施例】図1は本発明の一実施例を説明する薄膜磁気
ヘッドの積層断面図である。以下、この図を用いて本発
明の薄膜磁気ヘッドの詳細を説明する。
【0021】まずAl23‐TiC(アルチック)などの材
料により作成されたセラミック基板1の上に、高周波ス
パッタリングによりAl23の下地絶縁層2を10ないし2
0μm形成させ、その上にバイアススパッタリング法によ
り下部磁性層3,4を形成した。
【0022】スパッタリング条件はターゲット組成Fe1
7.5重量%ないしNi82.5重量%、基板温度100℃、スパ
ッタリング時のスパッタリングガスはArガスにN2ガス
5%添加し全ガス圧を4×10~3Torrとした。基板バイア
ス電圧−100V、膜形成速度780Å/minとした。
【0023】このようにして形成された膜の組成を多属
性効用分析機(EPMAU)で分析した結果はFe16.8重
量%ないしNi83.2重量%であった。
【0024】図2は上述のようにして製造した磁性薄膜
のB−Hカーブを示す図である。測定の結果、Hcは0.8
Oe、Hkは7.5 Oeであった。一般の磁性薄膜のHkは
4 Oe以下になると保護膜の応力等により異方性が崩れ
る原因となる、また、8 Oe以上になると実効透磁率が
下がってくるためヘッドの出力が低下する。従って、H
kは4から8 Oeの間にとるのが適切である。この膜の
磁歪を測定した結果、Ni組成が82.5重量%から83.7重
量%の間で0から−1×10~6であった。
【0025】また磁歪が−1×10~6を超えるとウイグル
やポプコンノイズの原因となるためNi組成は82.5重量
%から83.7重量%の間にとる必要がある。この膜の内部
応力を測定した結果、4×109dyn/cm2の引張り応力であ
った。
【0026】また、応力が1×1010dyn/cm2以上になる
と基板との密着性が低下し、剥離の原因となる5×108d
yn/cm2以下になると実効的異方性が小さくなるためノイ
ズの発生原因となる。
【0027】図1に戻り下部磁性層3,4の形成後に、
磁性層とコイル間及びコイル6とコイル7の間を電気絶
縁するためにレジストによる絶縁層5を形成する。この
時レジストは真空で250℃で2時間のベーキングを行な
い完全に硬化させる。
【0028】次に、電気メッキ法により第1層目のコイ
ル6を必要ターン数積層する、電気メッキの電極膜とし
てはスパッタリング法による銅薄膜を使用する。メッキ
浴としては硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴等が使用できる
が、本発明では硫酸銅浴によりコイルを形成した。
【0029】次に、コイル6とコイル7の間の電気絶縁
のためにレジストによる絶縁層5を形成し真空ベーキン
グを行う。この上に、第2層目のコイル7を第1層と同
様な方法で形成する。さらに、コイル7と上部磁性層
8,9の間を電気絶縁するためにレジストによる絶縁層
5を形成し、真空ベーキングを行う。
【0030】次に、上部磁性層8,9を下部磁性層3,
4と同様に形成して磁気回路として、最後に高周波バイ
アススパッタリング法によりAl23の保護層10を40な
いし70μm形成した。この後、保護層10の表面を平坦化
し、形状加工により図3のようなスライダチップに構成
し、薄膜磁気ヘッドを得る。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば高密
度記憶装置であるハードディスクに用いる薄膜磁気ヘッ
ドにおいて、電磁変換特性にすぐれ、ウィグル及びポプ
コンノイズなどのノイズ発生がなくなるので、今後、ま
すます発展する情報分野で記憶装置として本発明の薄膜
磁気ヘッドに用いて大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を説明する薄膜磁気ヘッドの
積層構造を示す断面図である。
【図2】本発明の磁気膜のB−Hカーブを示す図であ
る。
【図3】薄膜磁気ヘッドのスライダチップを示す斜視図
である。
【符号の説明】
1…セラミッ基板、 2…下地絶縁層、 3,4…下
部磁性層、 5…絶縁層、 6,7…コイル、 8,9
…上部磁性層、 10…保護層、 11…トランスデューサ
素子、 12…浮上スライダ面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−71112(JP,A) 特開 平3−12016(JP,A) 特開 昭63−313311(JP,A) 特開 平4−146509(JP,A) 特開 平2−236808(JP,A) 特開 平3−252908(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、前記基板上に設けられた下部磁
    性層と、前記下部磁性層の上にギャップ層を介して設け
    られた上部磁性層と、前記下部磁性層と前記上部磁性層
    の間に設けられたコイル層とを備え、 前記下部磁性層と前記上部磁性層の少なくとも一方を、
    Fe‐Ni系合金であって、異方性磁界(Hk)が4から8
    Oeの間にあり内部応力が引張り応力で、前記引張り
    力の大きさが5×108ないし1×1010dyn/cm2である
    材料形成したことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】 Fe‐Ni系合金に含まれるNiは82.5な
    いし83.7重量%としたことを特徴とする請求項1記載の
    薄膜磁気ヘッド。
  3. 【請求項3】 上部磁性層上に保護層を設け、前記保護
    層の表面を平坦化したことを特徴とする請求項1記載の
    薄膜磁気ヘッド。
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