JP3177537B2 - セメント系複合材料 - Google Patents

セメント系複合材料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は精密機械などの素材と
なるセメント系の複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、アルミナセメントやポルトラン
ドセメントなどの水硬性セメントは、圧縮強度が大き
く、加工時に加熱の必要がないなどの長所があるため、
ビル、橋梁等大型構造物の素材として汎用されており、
近年、このような水硬性セメントに軽量、高強度の補強
材として、炭素繊維などの繊維材料が添加されるように
なってきている。
【0003】しかし、水硬性セメントは、水和反応によ
って徐々に結晶し硬化するものであって、寸法の経時変
化が大きく、また、この反応終了時まで水を必要とする
ため、乾燥後の表面及び内部に多数の微細孔を残すこと
となる。このようなセメントの多孔質性は、荷重下にお
けるセメント内部に応力集中を招いてセメントを曲げ力
に対して弱くし、また吸水性の点からも精密機械材料と
して使用し得ない要因となっていた。
【0004】本願の発明者らは上記従来のセメント系複
合材料の防水性および機械的強度を改良するべく、先に
水硬性セメントと繊維材料との混合成形物に合成樹脂を
含浸し、硬化したセメント系複合材料を提案した(特願
平2−153318号)。
【0005】この提案において用いる繊維材料として
は、炭素繊維等の短繊維(繊維長3mm)が挙げられてい
るが、その混合割合を炭素短繊維/アルミナセメントの
重量比で0.005〜0.1として粘度を下げ、成型体
中に多量の気泡を残さないようにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した短繊
維を配合したセメント系複合材料は、連続繊維、不織布
または編織布で補強した場合に比べて機械的強度、特に
曲げ強度に劣るという問題点がある。具体的には、短繊
維配合のセメント系複合材料は、JISK6911の曲
げ強度の試験方法に基づいて、平均曲げ強度7.5kgf
/mm2 以上を達成できないものであった。
【0007】この発明は、上記したセメント系複合材料
の問題点を解決し、補強材に短繊維を用いた精密機械材
料として、機械的強度に信頼性があり、7.5kgf/mm
2 以上の曲げ強度を有するセメント系複合材料とするこ
とを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、水硬性セメントと水と繊維長
0.5mm以下の短繊維との配合重量比が水/セメント比
で0.8〜2.5でありかつ短繊維/セメント比で0.
15〜0.60である混合成型物に、合成樹脂を含浸
し、硬化したセメント系複合材料としたのである。
【0009】または、水硬性セメントと水と繊維長0.
5mmを越え3mm以下の短繊維との配合重量比が水/セメ
ント比で0.8〜1.7でありかつ短繊維/セメント比
で0.15〜0.3、または水/セメント比で1.7を
越え2.5以下でありかつ短繊維/セメント比で0.1
5〜0.6である混合成型物に、合成樹脂を含浸し、硬
化した構成を採用することもできる。また上記した水硬
性セメントがアルミナセメントであり、かつ短繊維が炭
素短繊維であってよい。
【0010】
【作用】この発明に係るセメント系複合材料は、水硬性
セメントに所定量の水を配合すると共に、所定繊維長の
短繊維を所定量配合したので、混合成型時に流動性が充
分であり脱泡が効率よく行なわれる。したがって、内部
に気泡の残存量が少なく、外力に対する内部応力の集中
が軽減されたものになると共に、短繊維の補強効果も相
まって機械的強度に優れ、また合成樹脂の含浸によって
防水性も兼備したものとなる。
【0011】
【実施例】まず、この発明における水硬性セメントは、
水和反応によって常温の水中または空気中で硬化する水
硬性セメントであればよい。このような水硬性セメント
としては、たとえばポルトランドセメント、水硬性石
灰、ローマンセメント、天然セメント、アルミナセメン
ト、混合ポルトランドセメント、石灰混合セメントその
他の混合セメント類が挙げられる。
【0012】この発明に用いる短繊維の材料は、金属、
セラミックス、有機繊維などその材質を限定することな
く、たとえば、鋼繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アラミ
ド繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミ
ド繊維、アクリル繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊
維、窒化ケイ素繊維、ボロン繊維、ウィスカー、アモル
ファス金属繊維、チラノ繊維、チタン酸カリウム繊維な
どが挙げられる。
【0013】上記の短繊維長は、3mm以下である。なぜ
なら繊維長が長いほど、硬化後の曲げ強度は向上する
が、3mmを越える繊維長では混合物の流動性(フロー
値)が急激に低下して、作業性、成型性に劣ると共に、
成型体内部に気泡が残留し易くなって好ましくないから
である。
【0014】この発明に用いる合成樹脂は、特に限定す
るものではなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ポリマ
ーブレンドしたものなどを広く用いることができる。し
かし、通常、常温硬化型のセメントが高アルカリ性であ
ることから、長期間安定した強度を保つためには、耐ア
ルカリ性の樹脂が望ましい。このような合成樹脂として
は、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ナイロン系樹脂、
アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、
ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。一方、ポリエステ
ル系樹脂やセルロース系樹脂は、耐アルカリ加水分解性
が劣るため、望ましくない。
【0015】次に繊維長0.5mm以下の短繊維を用いた
場合の水および短繊維のセメントに対する配合割合につ
いて説明する。
【0016】この場合、前記混合物の水/水硬性セメン
トの配合割合(以下、W/Cと略記する)は重量比で
0.8〜2.5である。なぜなら0.8未満の少量では
セメントの水和反応による凝結が充分でなく、また、流
動性に乏しくなって脱泡が充分に行なえないからであ
る。また、2.5を越えて多量の水分が存在すると、流
動性が過剰で成型が困難となり、実用性にも欠けるから
である。
【0017】一方、短繊維/水硬性セメントの配合割合
(以下、F/Cと略記する)は、重量比で0.15〜
0.60である。なぜなら、上記所定範囲外の短繊維量
では、硬化後の材料に所期の曲げ強度が得られないから
である。
【0018】次に、繊維長0.5mmを超え3mm以下の短
繊維を用いた場合の水および短繊維のセメントに対する
配合割合について説明する。
【0019】W/Cが0.8〜1.7の場合のF/Cは
0.15〜0.3であり、W/Cが1.7を越え2.5
以下の場合のF/Cは0.3〜0.6である。すなわ
ち、この条件は、前記した繊維長0.5以下の短繊維を
用いた条件から、W/Cが0.8〜1.7でありかつF
/Cが0.3〜0.6の条件を除外した場合に一致す
る。この所定条件を除外する理由は、同条件下では水硬
性セメントが凝結不能となって混合成型物が得られない
からであり、その他のF/CとW/Cの範囲を採用する
理由は、前記した繊維長0.5mm以下の短繊維を用いた
場合と全く同様である。
【0020】上記した材料から複合材料を製造するに
は、まず、水硬性セメントと所定量の短繊維を充分に混
和し、その後、型枠中で所定量の水と混合するか、また
は別途、水と混合した後、型枠内に流し込む。そして、
乾燥による表面クラックを防ぐため、型ごと、湿潤デシ
ケーターに入れ、一昼夜放置して硬化させることが望ま
しい。この後、これを脱型し、更に水和反応による結晶
化を促進するために、その成型体を水中に入れ、40℃
程度の恒温槽中で数日間放置する。この後、成型体を水
中から取り出し、水洗した後、100〜150℃程度で
1時間、恒温槽中で乾燥する。更に、別に準備した硬化
剤等の添加剤を混ぜ合わせた合成樹脂溶液に前記成型体
を投入し、これを加圧あるいは減圧あるいは両方が行な
える容器中にいれ、合成樹脂溶液が硬化しない程度に加
温して液粘度を下げ、加圧あるいは減圧あるいは両方を
組み合わせて、成型体にポリマーを含浸させる。この
後、被含浸物を取り出し、合成樹脂の硬化に最適な温度
条件で加熱し硬化を行なう。
【0021】[実施例1〜19]アルミナセメント(電
気化学工業社製:アルミナセメントスーパーS−2)
(以下、ACと略記する)と炭素短繊維(日本カーボン
社製:NF−C0.5、繊維長0.5mm)(以下、CF
0.5 と略記する)を表1に示すCF0.5 /ACの配合重
量比で混和した後、上部開放の長方体型枠(縦95mm、
横60mm、高さ20mm)に充填した。その後、水(以
下、Wと記す)を表1に示すW/ACの配合割合で型枠
内に注入し混和して、そのまま一昼夜、湿潤デシケータ
中に静置した。これを脱型した後、成型体を水中に浸漬
し、40℃の恒温層中で4日間放置した。この後、成型
体を水中から取り出し、水洗いした後、150℃で1時
間、恒温槽中で乾燥した。
【0022】エポキシ主剤(油化シェルエポキシ社製:
エピコート807)100に対し、硬化剤(油化シェル
エポキシ社製:エピキュアEMI−24)2重量部を混
合した液中に先の成型体を投入し、オートクレーブ中で
60℃、約10torrの真空度で30分放置した後、
同じ容器内で約18kgf/cm2 の窒素雰囲気加圧下で3
0分放置し、エポキシ樹脂の含浸を行なった。この後、
被含浸物を取り出し、恒温槽中で、60℃で8時間、更
に150℃で2時間の加熱を行ない、目的の短繊維強化
セメント系複合材料を得た。
【0023】上記複合材料を10mm幅のビーム材に切り
出し、JISK6911の複合材料の試験方法に基づ
き、支点間距離80mm、荷重速度3mm/分で3点曲げ試
験を行ない、平均曲げ強度σ(kgf/mm2 )を求めた。
この結果は○;σ≧9、□;8≦σ≦9、△;σ<8で
3段階に評価し、表1および図1中にそれぞれ記号で示
した。
【0024】
【表1】
【0025】[比較例1〜9]配合重量比を表2に示す
割合とする以外は、実施例1〜19と全く同様にして短
繊維強化セメント系複合材料を得た。得られた複合材料
に対し、前記した試験方法と全く同様にして、平均曲げ
強度を求め、結果を表2および図1中に記号で示した。
なお、セメントが凝結しなかった場合については×印で
示した。
【0026】
【表2】
【0027】[実施例20〜38]実施例1〜19の炭
素短繊維に代えて繊維長3mmの炭素短繊維(日本カーボ
ン社製:NF−C3)(以下、CF3 と略記する)を用
い、表3に示す配合割合とする以外は同実施例と全く同
様にしてセメント系複合材料を製造した。得られた複合
材料について前記した試験方法と全く同様にして平均曲
げ強度を求め、結果を☆;σ≧11.5、●;7.5≦
σ<11.5、◇;σ<7.5で3段階に評価し、ま
た、セメントが凝結不能であったものについて、×印と
して、これらを表3および図2中に示した。
【0028】
【表3】
【0029】表1、表2および図1の結果から明らかな
ようにCF0.5 /ACが0.15〜0.6であり且つW
/ACが0.8〜2.5の領域(図中破線で示す)であ
れば平均曲げ強度が7.5〜8kgf/mm2 以上のセメン
ト系複合材料が得られ、特にW/ACが1.5〜2.0
でありかつCF0.5 /ACが0.4〜0.5の領域(図
中鎖線で示す)で最も高強度のものが得られた。なお、
図中□印の全平均曲げ強度は8.4kgf/mm2 であり平
均の弾性率は1400kgf/mm2 であり、△印の全平均
曲げ強度は6.9kgf/mm2 であり、平均の弾性率は2
100kgf/mm2 であった。
【0030】[比較例10〜19]配合重量比を表4に
示す割合とする以外は実施例20〜38と全く同様にし
てセメント系複合材料を得た。得られた複合材料に対
し、前記した試験方法と全く同様にして平均曲げ強度を
求め、結果を表4および図2中に記号で示した。なお、
セメントが凝結しなかった場合については×印で示し
た。
【0031】
【表4】
【0032】表3、表4および図2の結果から明らかな
ように、W/ACが0.8〜1.7でありかつCF3
ACが0.15〜0.3、またはW/ACが1.7を越
え2.5以下でありかつCF3 /ACが0.15〜0.
6である領域(図中破線で示す)であれば、平均曲げ強
度が7.5kgf/mm2 以上のセメント系複合材料が得ら
れ、特にW/ACが1.3〜2.5でありかつCF3
ACが0.25〜0.3の領域(図中鎖線で示す)であ
れば、最も高強度のものが得られた。なお図中の●印の
全平均曲げ強度は9.0kgf/mm2 であり、平均の弾性
率は2400kgf/mm2 であり◇印の全平均曲げ強度は
5.6kgf/mm2 であり、平均の弾性率は2100kgf
/mm2 であった。
【0033】
【効果】この発明は以上説明したように、セメント系複
合材料の混合成型物の水/水硬性セメントの配合割合お
よび短繊維/水硬性セメントの配合割合を所定範囲とし
たものであるあら、成型体内部に応力集中を招く空隙が
なくなり、また、表面の微細孔からは、合成樹脂が充分
に含浸されて機械的強度が向上し、精密機械材料として
一層信頼性ある7.5kgf/mm2 以上の曲げ強度を有す
るセメント系複合材料となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】水/セメント比および繊維長0.5mmの短繊維
/セメント比で表わす配合割合と、平均曲げ強度との関
係を示すグラフ
【図2】水/セメント比および繊維長3mmの短繊維/セ
メント比で表わす配合割合と、平均曲げ強度との関係を
示すグラフ

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水硬性セメントと水と繊維長0.5mm以
    下の短繊維との配合重量比が水/セメント比で0.8〜
    2.5でありかつ短繊維/セメント比で0.15〜0.
    60である混合成型物に、合成樹脂を含浸し、硬化して
    成るセメント系複合材料。
  2. 【請求項2】 水硬性セメントと水と繊維長0.5mmを
    越え3mm以下の短繊維との配合重量比が水/セメント比
    で0.8〜1.7でありかつ短繊維/セメント比で0.
    15〜0.3、または水/セメント比で1.7を越え
    2.5以下でありかつ短繊維/セメント比で0.15〜
    0.6である混合成型物に、合成樹脂を含浸し、硬化し
    て成るセメント系複合材料。
  3. 【請求項3】 水硬性セメントがアルミナセメントであ
    り、かつ短繊維が炭素短繊維である請求項1または2記
    載のセメント系複合材料。
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