JP3173238B2 - トルクセンサの校正方法及びトルクセンサ - Google Patents

トルクセンサの校正方法及びトルクセンサ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はトルクセンサの校正方法
及びトルクセンサに係り、特に内燃機関の出力トルクを
検出すべく内燃機関の出力軸に磁歪膜を形成してなる非
接触磁歪式トルクセンサの出力特性を校正するトルクセ
ンサの校正方法及びトルクセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、内燃機関の出力トルクを検出
する装置として、内燃機関の出力軸のねじれを検出して
出力トルクに換算する装置が知られている。内燃機関の
出力軸は内燃機関で発生した出力トルクを駆動輪に伝達
するシャフトであり、その回転方向には、出力トルクに
応じたねじれが発生することに着目したものである。
【0003】この場合、出力軸のねじれを検出する機構
としては、出力軸に磁歪材からなる膜を形成し、その膜
の表面に発生する磁力を磁気ヘッド等を用いて検出する
非接触磁歪式トルクセンサが知られている。磁歪材が、
加えられた歪みに応じて磁化状態を変化させることか
ら、その膜(以下、磁歪膜と称す)から発せられる磁力
を基に出力軸のねじれ状態を検出しようとするものであ
る。
【0004】ところで、かかるトルクセンサにおいて
は、出力軸と磁気ヘッドとのマッチングによっては、磁
歪膜の発する磁気強度に対して磁気ヘッドから出力され
る電圧信号にバラツキが生ずる場合がある。また、内燃
機関の出力軸に磁歪膜を形成する際の環境温度とトルク
センサとして使用する際の環境温度との差に起因して、
温度歪みによる出力特性変化が生ずる場合もある。
【0005】このため、従来よりかかる構成のトルクセ
ンサを用いる場合は、一般に磁気ヘッドの組み付けが終
了した後にトルクセンサの零点調整を実行していた。例
えば、実開昭60−163334号公報は、かかる零点
調整を内燃機関の無負荷運転時に行うトルク検出装置を
開示している。
【0006】つまり、内燃機関がアイドリング状態等の
等速運転下にある場合、または停止時は、その出力軸に
はほとんど歪みが発生しないことに着目し、この状態で
磁気ヘッドから発せられる電圧信号を出力トルク“0”
時の出力信号、すなわち零点信号として把握する。そし
て、その零点信号を基準としてトルクセンサの出力特性
を校正し、品質のバラツキを吸収しようとするものであ
る。
【0007】このように、内燃機関の停止時等にトルク
センサの出力特性を校正する場合、確実に出力トルク
“0”時の磁気ヘッドの出力電圧を零点信号として検出
することができ、生産ライン上で特別に校正工程を設け
ることなくトルクセンサの校正を実施することが可能で
ある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のトルクセンサの校正方法は、トルクセンサのトルク
−出力特性を表す直線が平行に変動する場合は有効であ
るが、その傾きが変動する場合には、その変動を校正す
ることはできない。
【0009】一方、磁歪膜の特性を決定する膜圧や密度
等は微妙な条件設定の下、量産時には多少の変動を伴う
のが通常である。また、出力軸についても、材料組成比
の変動や加工精度等の問題から必ずしも均一なものを量
産することは容易ではない。つまり、上記構成のトルク
センサにあっては、これら磁歪膜や出力軸の特性変動に
伴って比較的容易にトルク−出力特性を表す直線の傾き
が変動する。
【0010】従って、上記従来のトルクセンサの校正方
法の如く零点調整だけを実行する校正方法では、量産時
に発生する特性上のバラツキの一部についてしか校正が
行われていないことになり、必ずしも適切な校正を実行
し得るものではなかった。
【0011】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので
あり、出力軸に既知のトルクT0 が加えられた状態でセ
ンサ出力を“0”とする磁歪膜を形成し、また出力トル
クが“0”の際のセンサ出力V0 を検出し、これら2つ
のトルク−出力特性点に基づいてトルクセンサのトルク
−出力特性直線を設定することにより上記の課題を解決
し得るトルクセンサの校正方法及びトルクセンサを提供
することを目的とする。
【0012】
【0013】図1は、上記の目的を達成するトルクセン
サの校正方法の原理図を示す。すなわち、図1に示すよ
うに上記の目的は、内燃機関の出力トルクを検出すべく
該内燃機関の出力軸に磁歪膜を形成してなる非接触磁歪
式トルクセンサの出力特性を校正するトルクセンサの校
正方法であって、前記磁歪膜の一部を、前記内燃機関の
出力軸に既知のトルクT1 を加えた状態で形成して、前
記出力軸にトルクT1 が加わった場合に出力が0となる
第1の領域を設ける第1の処理B1と、前記磁歪膜の他
の一部を、前記内燃機関の出力軸に既知のトルクT2
加えた状態で形成して、前記出力軸にトルクT2 が加わ
った場合に出力が0となる第2の領域を設ける第2の処
理B2と、前記内燃機関の停止中に、前記出力軸に加わ
るトルクが0である場合の前記第1の領域における前記
トルクセンサの出力V1 を測定する第3の処理B3と、
前記内燃機関の停止中に、前記出力軸に加わるトルクが
0である場合の前記第2の領域における前記トルクセン
サの出力V2 を測定する第4の処理B4と、前記第1及
び第2の処理B1,B2において用いた既知のトルクT
1 ,T2 と、前記第3及び第4の処理B3,B4におい
て測定した出力V1 ,V2 とに基づいて、 V=Vi +(|V2 −V1 |/|T2 −T1 |)*T なる直線を、前記トルクセンサの第iの領域におけるト
ルク−出力特性とする第5の処理B5とを実行してなる
トルクセンサの校正方法も有効である。
【0014】更に、内燃機関の出力トルクを検出すべく
該内燃機関の出力軸に磁歪膜を形成してなる非接触磁歪
式トルクセンサであって、前記出力軸の特定回転角位置
に対応して、該出力軸に異なる既知トルクを加えた状態
で形成した複数の磁歪膜を設けたトルクセンサは、上記
校正方法の実施に適していると共に、前記出力軸の回転
角センサとしても有用である。
【0015】
【0016】
【0017】
【作用】本発明に係るトルクセンサの校正方法におい
て、前記第1の処理B1において前記第1の領域に形成
された磁歪膜は、前記出力軸に既知のトルクT1 が加え
られた場合に磁化状態を中立とし、前記第2の処理B2
において前記第2の領域に形成された磁歪膜は、前記出
力軸に既知のトルクT2 が加えられた場合に磁化状態を
中立とする。
【0018】従って、前記出力軸に何らトルクが加えら
れていない場合、前記第1の領域の磁歪膜には、−T1
のトルクが加えられている状態に等しい磁化状態が、前
記第2の領域の磁歪膜には−T2 のトルクが加えられて
いる状態に等しい磁化状態が表れる。そして、前記第3
及び第4の処理では、このように前記出力軸に何らトル
クが印加されていない場合における前記第1の領域の状
態を表すV1 、及び前記第2の領域の状態を表すV2
測定される。
【0019】一方、これら第1の領域に形成された磁歪
膜と、第2の領域に形成された磁歪膜とは、同一の出力
軸上に同一条件下で形成された膜であり、両領域に形成
された磁歪膜の磁化状態は、前記出力軸に加えられたト
ルクの変化に対してほぼ同等の変化率を示す。
【0020】つまり、前記第1の領域における磁歪膜に
よって形成されるトルク−出力特性、及び前記第2の領
域における磁歪膜によって形成されるトルク−出力特性
は、それぞれ(0,V1 )、(0,V2 )を通り傾きの
等しい直線を示すことになる。そして、その直線の傾き
は、“|V2 −V1 |/|T2 −T1 |”として表すこ
とができる。
【0021】従って、第iの領域(i=1または2)の
磁歪膜子によって形成されるトルクセンサのトルク−出
力特性は、前記第5の処理において設定する直線、すな
わち“V=Vi +(|V2 −V1 |/|T2 −T1 |)
*T”により表される直線となる。
【0022】ところで、前記出力軸の特定回転角位置に
対応して異なる既知トルク下で形成した複数の磁歪膜を
備えるトルクセンサは、前記出力軸が回転する際、その
回転に伴ってトルクセンサの出力値を段階的に変動させ
る。従って、その変動を監視すれば、前記出力軸の回転
角を検知することが可能となる。
【0023】
【実施例】図2は、本発明に係るトルクセンサの校正方
法を適用して出力特性を校正することにより、高い検出
精度を確保し得るトルクセンサ1の一例の構成図を示
す。図2に示すトルクセンサ1は、内燃機関の出力軸2
に発生するトルクを検出すべく設けられたセンサで、図
2(A)に示すように出力軸2の外周に形成された磁歪
膜3と、磁歪膜3の磁化状態を検出する磁気ヘッド4と
で構成される。
【0024】磁歪膜3は、超磁歪材料として知られてい
るFe-Si-B 等の非晶質薄膜で形成されている。従って、
外部応力により出力軸2に歪みが生じた場合、磁歪膜3
の表面には、発生した歪みに応じた磁化状態が表れるこ
とになる。
【0025】ところで、出力軸2は、図示されない内燃
機関のクランク軸と連結して内燃機関で発生した出力ト
ルクをトランスミッションに伝達する部材であり、内燃
機関の運転中は、その回転方向に内燃機関の出力トルク
に応じたねじりモーメントが発生する。
【0026】この場合において、内燃機関の出力トルク
が図2(A)中に“T”で示す如き方向に作用したとす
ると、出力軸2には、同図中に±σで表す方向の応力が
発生し、図2(B)に示すように磁歪膜をA〜D領域に
区分した場合、A,D領域には圧縮応力が、B,C領域
には引張応力が作用することになる。そして、磁歪膜3
の表面には、A,D領域とB,D領域とで2分された磁
化状態が表れる。
【0027】上記した磁気ヘッド4は、かかる磁化状態
の変化を検出すべく設けられたものであり、図2
(A),(B)に示すように出力軸2の長手方向に平行
に配設されたコの字型導体4aと、出力軸の径方向に平
行に配設されたコに字型導体4bと、これらにそれぞれ
組み込まれた交流磁界発生回路4c及び磁界検出回路4
dとで構成される。
【0028】つまり、交流磁界発生回路4cにより、導
体4aに交流磁界が印加されると、発生した磁力線は導
体4aと磁歪膜3とで構成される閉ループ内を流通す
る。この際、磁歪膜3が均一な磁気抵抗を示せば、対称
性により導体4bが磁歪膜3と対向する2点(図(B)
中に■で示す点)における磁位は常に等しく、導体4b
内を磁束が流通することはない。
【0029】しかし、上記したように±σの応力に起因
して、磁化状態が不均一であると、当然に導体4bが磁
歪膜3と対向する2点における磁位に差異が生ずる。そ
して、その磁位差は、導体4aが発する磁界強度の変化
と共に変動し、結局導体4b内に交流磁界を発生させ
る。
【0030】従って、導体4bを流通する磁束密度の振
幅を検出すれば、その振幅が磁歪膜3の磁化状態の不均
一性を、すなわち出力軸2に伝達されているトルクTの
大きさを表すことになる。
【0031】つまり、導体4bに組み込む磁界検出回路
4dを、導体4b内を流通する磁界強度を電流値に変換
するピックアップコイルによって実現する場合、トルク
センサ1の等価回路は、図2(C)の如く表すことがで
き、内燃機関の出力トルクは磁界検出回路4dの検出す
る電流値によって代用表示されることになる。
【0032】さて、かかる構成のトルクセンサ1におい
ては、磁歪膜形成時の残留応力等に起因して無負荷状態
におけるセンサ出力Vにバラツキが生じ、また、出力軸
2の硬度誤差や磁歪膜2の特性誤差に起因して、トルク
変動に対する出力変化率にバラツキが生ずることは前記
した通りである。
【0033】本実施例のトルクセンサの校正方法は、こ
れらのバラツキを吸収して、常に適正なトルク−出力特
性を設定し、高い精度での内燃機関の出力トルク検出を
可能とする点に特徴を有している。以下、本実施例の校
正方法の手順について詳細に説明する。
【0034】図3は、出力軸2に磁歪膜3を形成する成
膜工程を説明するための概念図を示す。本実施例のトル
クセンサ1は、スパッタによって磁歪膜3を形成する方
法を採用しており、真空チャンバ10内には、スパッタ
の蒸着源11(Fe-Si-B )と、蒸着源11を適宜回転さ
せるモータ12、成膜基材である出力軸2を適当な角速
度で回転保持する機能を有するテーブル13等が設けら
れている。
【0035】また、真空チャンバ10は、外部からレー
ザ光を導く石英窓14を備えており、蒸着源11は、石
英レンズ15によって集光された後石英窓14を通って
入射するレーザ光によって励起されてイオン化する。そ
して、出力軸2に印加されたバイアス電圧によって蒸着
源11と出力軸2との間に形成された電界の作用によ
り、励起されたFe-Si-B が出力軸2表面に薄膜を形成す
る。
【0036】ところで、出力軸2を回転保持するテーブ
ル13は、図4に示すように回転モータ13aと負荷モ
ータ13bとを備えている。負荷モータ13bは、出力
軸2を保持するトルク検出軸13cで検出したトルクを
基準として、発揮する回転力をフィードバック制御する
モータである。
【0037】従って、例えばトルク検出軸13cに大き
さT0 のトルクが発生するように設定した場合、回転モ
ータ13a及び負荷モータ13bの相互作用により出力
軸2はT0 のねじりトルクが印加された状態で回転する
ことになる。つまり、出力軸2の表面には、出力軸2が
0 のねじりトルクを受けているときに何らの応力も感
じない磁歪膜3が形成されることになる。
【0038】尚、本実施例においては、上記したように
回転モータ13aと負荷モータ13bとを備える真空チ
ャンバ10内で磁歪膜3を形成する工程が前記した第1
の処理A1に相当する。
【0039】ところで、磁歪膜3に何らの歪みも発生し
ない場合は、上記したように磁気ヘッド4には何らの出
力も表れず、トルクセンサ1の出力Vは“0”となる。
言い換えれば、かかる方法によって形成された磁歪膜3
を備えるトルクセンサ1の出力Vは、出力軸2にトルク
0 が伝達されている場合に“0”となる。
【0040】一方、トルクセンサ1を内燃機関に連結し
て車両に搭載した場合、内燃機関が停止していれば出力
軸2には何らのトルクも印加されない。この場合、磁歪
膜3に形成時に印加されていたトルクT0 が出力軸2か
ら解除されたことになり、磁歪膜3には、出力軸2の復
元力に起因した歪みが発生することになる。
【0041】従って、内燃機関が停止している場合、磁
歪膜3の表面には、トルクT0 が解除されたことに基づ
く磁化状態が形成され、トルクセンサ1からは、その磁
化状態に応じた出力V0 が出力されることになる。
【0042】このように、トルクセンサ1においては、
入力トルクTとセンサ出力Vとが、(T0 ,0)及び
(0,V0 )を共に満たすことが担保されている。そし
て、このV0 は、出力軸2の硬度特性や磁歪膜3の出力
特性によって変動する値であり、個々のトルクセンサ1
の特性が反映された値である。
【0043】このため、前記第2の処理を実現すべく内
燃機関の出力トルクが“0”である状況下でセンサ出力
0 を測定し、次いで前記第3の処理として、図5に示
す如く(T0 ,0)及び(0,V0 )を通るトルク−出
力特性直線を設定すれば、トルクセンサ1の特性が適切
に設定されることになる。
【0044】従って、以後内燃機関の運転中において
は、トルクセンサ1の出力Vを測定し、その値で図5に
示す特性直線を参照することにより、精度よくトルクセ
ンサ1への入力トルク、すなわち内燃機関の出力トルク
Tを検出することが可能となる。
【0045】ところで、上記したトルクセンサ1の構成
方法は、内燃機関が停止していれば出力軸2には何らの
残留トルクも存在せず、また磁歪膜3には何らの残留磁
化も生じないことを前提としている。つまり、内燃機関
の停止中に、クランクシャフトとトランスミッションと
の間に何らかの力が作用している場合、または磁歪膜3
に残留磁化が生じている場合には、前記した第2の処理
で測定する(0,V0)として、不適切な値が測定され
る場合がある。
【0046】図6は、かかる残留応力等の影響を相殺し
得る校正方法を実現すべく構成されたトルクセンサ21
の要部を表す斜視図を示す。このトルクセンサ21は、
その磁歪膜3上に、出力軸2に既知のトルクT1 を加え
た状態で形成した第1の領域3aと、既知のトルクT2
を加えた状態で形成した第2の領域3bとを備えるもの
である。
【0047】磁歪膜3上に第1の領域3aと第2の領域
3bとを形成する方法としては、例えば図7(A)に示
すように第1または第2の領域に適合した開口部を備え
るステンレスマスクを用い、領域毎に出力軸2に加える
トルクを変える方法が適用可能である。
【0048】また、図7(B)に示すように、例えばト
ルクT1 を加えた状態で磁歪膜3を形成し、その後トル
クT2 を加えた状態で第2の領域3bに相当する部位の
みをレーザ光または遠赤外線等で加熱してアニール処理
を行うことによっても第1及び第2の領域3a,3bを
形成可能である。尚、これらの成膜工程は、前記した第
1の処理B1及び第2の処理B2に相当する。
【0049】このようにして同一の出力軸2上に、出力
軸2にトルクT1 が印加された場合に磁化状態を中立と
する第1の領域3aと、トルクT2 が印加された場合に
磁化状態を中立とする第2の領域3bとを設けた場合、
第1の領域3aと第2の領域3bとに、それぞれトルク
−出力特性を設定することが可能である。
【0050】つまり、第1の領域3aに着目すれば、出
力軸2にトルクT1 が加えられている場合にトルク出力
Vは“0”となり、また、第2の領域3bに着目すれ
ば、出力軸2にトルクT2 が加えられている場合にトル
ク出力Vは“0”となる。そして、出力軸2に何らのト
ルクも伝達されていない場合、第1の領域3aに関して
はV1 が、また第2の領域3bに関してはV2 が、それ
ぞれ出力軸2の復元力に起因したセンサ出力として表れ
る。
【0051】従って、トルクセンサ21を内燃機関に連
結し、内燃機関が無負荷状態にある場合の2種のセンサ
出力V1 及びV2 をそれぞれ測定すれば、図8に示すよ
うに(T1 ,0)及び(0,V1 )を通り第1の領域3
aに関するトルク−出力特性を表す第1の特性直線と、
(T2 ,0)及び(0,V2 )を通り第2の領域3bに
関するトルク−出力特性を表す第2の特性直線とが設定
し得ることになる。
【0052】尚、ここでV1 ,V2 を測定する工程は、
前記した第3の処理B3及び第4の処理B4に相当す
る。
【0053】ところで、第1の領域3aと第2の領域3
bとは、成膜時のトルク条件によって区分されているに
過ぎず、これら2つのトルク−出力特性は、あくまでも
同一出力軸2上に形成された磁歪膜3のトルク−出力特
性を示すものである。
【0054】つまり、トルク−出力特性を表す直線の傾
きに影響する、出力軸2の材質や加工精度、磁歪膜3の
組成成分や成膜条件等については、第1の領域3aにつ
いても第2の領域3bについても大きく変わるところは
ない。このため、図8に示す第1の特性直線と第2の特
性直線とは、グラフ上の切片が異なるのみでその傾きに
ついては同一であるとみなすことができる。
【0055】そして、これら2つの直線の傾きが同一、
すなわち両直線が平行である限り、その傾きΔV/ΔT
は、 ΔV/ΔT=|V2 −V1 |/|T2 −T1 | として表すことができる。
【0056】更に、これら2つの直線が平行である限
り、出力軸2の残留応力や磁歪膜3の残留磁化の影響で
無負荷状態におけるセンサ出力値、すなわち(0,
1 )、(0,V2 )の測定値が変動しても、|V2
1 |は一定である。
【0057】従って、第1の特性直線は、 V=V1 +(|V2 −V1 |/|T2 −T1 |)*T ・・・(1) として、また、第2の特性直線は、 V=V2 +(|V2 −V1 |/|T2 −T1 |)*T ・・・(2) として、それぞれ出力軸2の残留応力や磁歪膜3の残留
磁化の影響を受けない直線として設定される。
【0058】従って、トルクセンサ21の出力Vを第1
の領域3a上で検出した場合には、上記(1)式によ
り、また、その出力Vを第2の領域3b上で検出した場
合には、上記(2)式により、それぞれトルクセンサ2
1に伝達されている入力トルクT、すなわち内燃機関の
出力トルクを適切に逆算することができる。
【0059】この場合、上記(1),(2)式の設定処
理は、前記した第5の処理B5に相当し、かかる特性直
線に基づいてトルクセンサを校正する本方法によれば、
上記図5に示す単一の特性直線に基づいて校正を行う方
法に比べ、安定した校正精度を確保することが可能であ
る。
【0060】尚、本実施例においては、第1の領域3a
を第2の領域3bに比べて大きく設けると共に、磁気ヘ
ッド4が第1の領域3aをサーチする際に出力されるセ
ンサ出力Vと、磁気ヘッド4が第2の領域3bをサーチ
する際に出力されるセンサ出力Vとの出力差を監視し
て、第1の領域3aをサーチした際に得られた出力Vだ
けを有効なセンサ出力Vとして取り込み、上記(1)式
による変換を行うこととしている。
【0061】ところで、このように磁歪膜3上に第1の
領域3aと第2の領域3bとを備え、かつそれぞれの領
域における出力差を検知し得る構成においては、センサ
出力の変動を監視することにより、磁気ヘッド4がサー
チしている領域が如何なる領域であるかを検知すること
ができる。従って、各領域の形成位置を、出力軸2の回
転角に対応させておけば、トルクセンサ21の出力値よ
り、出力軸の回転角をある程度推定することも可能であ
る。
【0062】図9は、非接触磁歪式トルクセンサのかか
る可能性に鑑み、出力軸3の回転角センサとしても兼用
し得るセンサとして考案したトルクセンサ31の構成を
表す側面断面図を示す。尚、同図中、上記したトルクセ
ンサ1,21と同一の構成部分については、同一の符号
を付してその説明を省略する。
【0063】同図に示すように、本実施例のトルクセン
サ31は、上記したトルクセンサ21の磁歪膜3が第1
及び第2の領域3a,3bに区分されていたのに対し、
更に第3の領域3cが加設され、3つの領域に区分され
ている点に特徴を有している。この第3の領域3cは、
図10中の第3の特性直線の関係を満たすべく、出力軸
2に、既知のトルクT3 を加えて成膜した領域である。
【0064】かかる構成のトルクセンサ31において
は、出力軸2が1回転する間に磁気ヘッド4は、第2→
第1→第3→第1を1サイクルとして各領域をサーチす
ることになり、図11に示す如き出力変動(→→
→で1サイクル)が得られることになる。ここで、図
11中実線は、出力軸2に伝達される入力トルクTが小
さい場合のセンサ出力を示し、同図中破線は、入力トル
クTが上昇した際のセンサ出力を表している。
【0065】従って、第1〜第3の領域3a〜3cを形
成する位置と出力軸2の回転角とを適当に対応させ、例
えば図11に示すように回転角0°(360°)付近に
第2の領域、回転角180°付近に第3の領域を形成す
ることとすれば、出力軸2の回転角を約180°単位で
検知することが可能となる。
【0066】尚、磁歪膜3上に形成する領域の数は、3
つに限定するものでははく、より細かく回転角を検出す
る必要がある場合には、上記した第1〜第3の領域3a
〜3cに更に新たな領域を加設してもよい。
【0067】この場合、従来内燃機関の回転を検出し、
または各気筒の状態を検出すべく設けられていたクラン
ク角センサ、回転数センサ等を、このトルクセンサ31
によって代用することができる。
【0068】ところで、内燃機関は、いずれかの気筒で
圧縮工程が行われている状態で停止することが知られて
いる。このため、例えば4気筒内燃機関において♯1,
♯4気筒のピストンが下死点から上死点へ向けて移動す
る途中の特定クランク角に合わせて第2の領域3bを、
また、♯2,♯3気筒のピストンが下死点から上死点へ
向けて移動する途中の特定クランク角に合わせて第3の
領域3c形成することとすれば、トルクセンサ31の出
力に基づいて如何なる状態で内燃機関が停止しているか
を検知することが可能である。
【0069】この場合、内燃機関を再始動させるに際し
て、停止中に各気筒の状態を検知することが可能であ
り、従来一般に行われていた全気筒への見込み噴射、ま
たは気筒判別が終了するまでの燃料カットを実行するこ
となく、適切な気筒にのみ燃料供給を行うことも可能と
なるという特長も備えている。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【発明の効果】上述の如く請求項1記載の発明によれ
ば、トルクセンサの出力特性が、磁歪膜上に形成された
第1の領域及び第2の領域のそれぞれの出力特性を合わ
せ考慮した上で設定される。そして、設定されたトルク
−出力特性を表す直線の傾きは、出力軸の残留応力の有
無にかかわらず、また磁歪膜の残留磁化の有無にかかわ
らず一定である。
【0074】従って、本発明に係るトルクセンサの校正
方法は、残留応力や残留磁化に影響を受けることなく、
常時適切な校正精度を維持できるという特長を有してい
る。
【0075】更に、請求項2記載の発明は、上記した請
求項1及び2記載の発明の実施に適していると共に、内
燃機関の停止位置をも検出し得るクランク角センサとし
て、または気筒判別センサや回転数センサとしても用い
ることができ、内燃機関の部品点数低減及び始動性向上
等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトルクセンサの校正方法の原理図
である。
【図2】本発明の一実施例であるトルクセンサの校正方
法の実施に適したトルクセンサの構成及び動作を説明す
るための図である。
【図3】トルクセンサの磁歪膜を成膜する装置の概略図
である。
【図4】トルクセンサの磁歪膜の成膜方法を説明するた
めの図である。
【図5】本実施例の校正方法により設定したトルクセン
サのトルク−出力特性を表す直線を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施例であるトルクセンサの構成
方法の実施に適したトルクセンサの構成を説明するため
の図である。
【図7】本実施例のトルクセンサの磁歪膜の成膜方法を
説明するための図である。
【図8】本実施例により設定したトルクセンサのトルク
−出力特性を表す直線を示すグラフである。
【図9】本発明に係るトルクセンサの構成を表す正面断
面図である。
【図10】本実施例により設定したトルクセンサのトル
ク−出力特性を表す直線である。
【図11】本実施例のトルクセンサのセンサ出力を表す
図である。
【符号の説明】
A1,B1 第1の処理 A2,B2 第2の処理 A3,B3 第3の処理 B4 第4の処理 B5 第5の処理 1,21,31 トルクセンサ 2 出力軸 3 磁歪膜 3a 第1の領域 3b 第2の領域 3c 第3の領域 4 磁気ヘッド 13a 回転モータ 13b 負荷モータ 13c トルク検出軸

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の出力トルクを検出すべく該内
    燃機関の出力軸に磁歪膜を形成してなる非接触磁歪式ト
    ルクセンサの出力特性を校正するトルクセンサの校正方
    法であって、 前記磁歪膜の一部を、前記内燃機関の出力軸に既知のト
    ルクT 1 を加えた状態で形成して、前記出力軸にトルク
    1 が加わった場合に出力が0となる第1の領域を設け
    る第1の処理と、 前記磁歪膜の他の一部を、前記内燃機関の出力軸に既知
    のトルクT 2 を加えた状態で形成して、前記出力軸にト
    ルクT 2 が加わった場合に出力が0となる第2の領域を
    設ける第2の処理と、 前記内燃機関の停止中に、前記出力軸に加わるトルクが
    0である場合の前記第1の領域における前記トルクセン
    サの出力V 1 を測定する第3の処理と、 前記内燃機関の停止中に、前記出力軸に加わるトルクが
    0である場合の前記第2の領域における前記トルクセン
    サの出力V 2 を測定する第4の処理と、 前記第1及び第2の処理において用いた既知のトルクT
    1 ,T 2 と、前記第3及び第4の処理において測定した
    出力V 1 ,V 2 とに基づいて、 V=Vi +(|V 2 −V 1 |/|T 2 −T 1 |)*T なる直線を、前記トルクセンサの第iの領域におけるト
    ルク−出力特性とする第5の処理とを実行してなること
    を特徴とするトルクセンサの校正方法。
  2. 【請求項2】 内燃機関の出力トルクを検出すべく該内
    燃機関の出力軸に磁歪膜を形成してなる非接触磁歪式ト
    ルクセンサであって、 前記出力軸の特定回転角位置に対応して、該出力軸に異
    なる既知トルクを加えた状態で形成した複数の磁歪膜を
    設けたことを特徴とするトルクセンサ。
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