JP3172420B2 - 耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板およびその製造方法

Info

Publication number
JP3172420B2
JP3172420B2 JP34235895A JP34235895A JP3172420B2 JP 3172420 B2 JP3172420 B2 JP 3172420B2 JP 34235895 A JP34235895 A JP 34235895A JP 34235895 A JP34235895 A JP 34235895A JP 3172420 B2 JP3172420 B2 JP 3172420B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
ultra
thickness
rolling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP34235895A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09184045A (ja
Inventor
周作 高木
和哉 三浦
古君  修
隆史 小原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP34235895A priority Critical patent/JP3172420B2/ja
Publication of JPH09184045A publication Critical patent/JPH09184045A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3172420B2 publication Critical patent/JP3172420B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として自動車用
部品などの使途に用いられ、とくに自動車が走行中に万
一衝突した場合に、優れた耐衝撃性が求められる部位の
素材として好適に用いられる、板厚1.2mm未満の極
薄熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、地球環境保全の機運が高まってき
たことを背景として、自動車からのCO 2 排出量の低減の
一環として、自動車車体の軽量化が求められている。こ
うした軽量化の方法としては、鋼板の高強度化による板
厚の低減が有効であると考えられている。さらに、最近
の自動車車体の設計思想に基づけば、単なる鋼板の高強
度化のみでなく、走行中に万一衝突した場合において、
耐衝撃性に優れた鋼板、すなわち高歪速度で変形した場
合に高い変形抵抗を有する鋼板の開発が、自動車の安全
性の向上をもたらすとともに、車体の軽量化の実現に有
効に寄与するものとして注目されている。一方、近年の
使用材料のコストダウン指向により、従来から用いられ
ていた冷延鋼板に替えて、熱延鋼板とりわけ板厚1.2mm
未満の極薄熱延鋼板を採用しようとする傾向が高まりつ
つある。このような状況から、自動車の安全性向上とコ
ストダウンの観点から、耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板
が開発が熱望されている。
【0003】ところで、従来、自動車用鋼板の材質強化
は、フェライト単相組織では、主としてSi, Mn, Pとい
った置換型元素を添加することによる固溶強化、あるい
はNb,Ti といった炭窒化物形成元素を添加することによ
る析出強化による方法が一般的であった。例えば、特開
昭56−139654号公報等では、極低炭素鋼に加工性、時効
性を改善するためにTi、Nbを含有させ、さらにP等の強
化成分を加工性を害しない範囲で含有させて高強度化を
図った鋼板を提案している。また、例えば特開昭59−19
3221号公報には、極低炭素鋼にSiの添加によって高強度
化を図る方法の提案がなされている。
【0004】しかし、このような方法での鋼板の高強度
化では、自動車ボディの板厚をある程度減少させること
はできても、上記した耐衝撃性を本質的に改善するもの
ではない。なぜなら、これらの提案は、鋼板強度の指標
である降伏強度あるいは引張強度を、歪速度が10-3〜10
-2(s-1) と極めて遅い、いわゆる静的な評価方法のみに
基づいて求めているが、実際の自動車ボディの設計で
は、このような静的な強度よりもむしろ、衝突時の安全
性を考慮した、歪速度が10〜104 (s-1) の衝撃的な変形
を伴う、いわゆる動的な評価方法に基づく強度の方が重
要となるからである。従って、静的強度のみに着目して
開発されている、上述した従来の各提案は、自動車車体
の軽量化に対して根本的な指標たり得ないという問題が
あった。なお、特開平7-90482 号公報には、耐衝撃性を
向上させるという観点から、マルテンサイトとフェライ
トとの2相組織鋼板が提案されている。しかし、この技
術は2相組織鋼では穴拡げ性が悪く、伸びフランジ成形
が必要な部分には適用しにくいという問題があった。
【0005】一方、熱延鋼板を製造するために、従来か
ら行われていた一般的な熱間圧延方法は、厚さ100mm 〜
300mm のスラブを厚さ20mm〜60mmに粗圧延し、その後さ
らに厚さ10mm以下に仕上圧延するものであった。この熱
間圧延方法により、1.2mm 未満の最終板厚まで圧延する
ためには、以下に述べるような要因により、操業を困難
にするのみならず製品品質の低下を招き実用化されるま
でに至っていなかった。すなわち、板厚が極薄になる
と、圧延中、特に鋼板の表層部、端部の温度低下が大き
くなり、鋼板の全長、全幅にわたって所定の温度範囲
(Ar3変態点以上)で仕上圧延を行うことが非常に困難
になる。この仕上圧延温度を確保するためには圧延速度
を上げればよいが、形状の制御が困難になるうえ、圧延
負荷が大となる。そのため、極薄熱延鋼板の形状を制御
するための方法が、例えば特開昭63-260604 号公報に提
案されている。この方法は、被圧延材の先端部を仕上板
厚より厚く所定の長さにわたり圧延した後、走間ゲージ
変更により仕上板厚まで減厚して後続部の圧延を行うも
のである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開昭63-260604 号公報に開示の方法では、オフゲージに
よる歩留まり落ちが6%にもなり、コストアップを避け
られないという問題があった。また、極薄熱延鋼板の圧
延においては、仕上圧延の圧下率が大きくなるため、圧
延ロールに噛み込ませることが困難となる。この噛み込
み不良を回避するために、粗圧延後の板厚を薄くする
と、仕上げ圧延中の鋼板の温度降下が一層大きくなり、
仕上圧延温度の確保が難しくなる。また、仕上げ圧延時
に鋼板の先頭部分の圧下率を小さくして板厚を厚くする
と、製品の歩留まりが低下する。なお、一般的な板厚の
熱延板で、フェライト粒径を細かくする技術について
は、従来からいくつかの提案があり、例えば特開平7-25
8796号公報には、仕上げ熱延の終盤から急冷を開始する
ことにより、表面から 100μmまでの表層を10μm以下
の粒径に抑制する方法が開示されている。しかしなが
ら、この熱延中の急冷は、熱延終了温度を所定の温度範
囲に安定して制御するのに不利であり、設備配置上の困
難も抱えている。そのうえ、このような方法を、極薄の
鋼板に適用したとしても、全板厚にわたって粒度番号12
以上に細粒化することは不可能であるという問題があっ
た。以上説明したように、従来の技術では、板厚1.2mm
未満の極薄熱延鋼板を、歩留り低下を招くことなく、安
価に製造することができないという問題があった。まし
て、このような従来の技術により、前述したごとき耐衝
撃性を備えた極薄熱延鋼板を、安価に製造することがで
きないという問題があった。
【0007】そこで、本発明の目的は、穴拡げ性を低下
させることなく、高歪速度下での耐衝性に優れる板厚
1.2mm 未満の極薄熱延鋼板を開発することにある。また
本発明の他の目的は、穴拡げ性を低下させることなく、
高歪速度下での耐衝性に優れる板厚1.2mm 未満の極薄
熱延鋼板を、歩留り良く安価に製造するための製造技術
を確立することにある。本発明の具体的な目的は、穴拡
げ率75%以上を有し、静動比=動的降伏応力(歪速度10
(s−1) での降伏応力)/静的降伏応力( 歪速度10
−3(s−1) での降伏応力)で定義される静動比が1.6
以上で、高歪速度変形(歪速度10(s−1) )時の30
%歪みまでの吸収エネルギーが200 MJ/m以上もし
くは破断までの吸収エネルギーが320 MJ/m以上で
ある、板厚が1.2mm 未満の極薄熱延鋼板とその製造技術
を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上掲の目的
の実現に向け鋭意研究した結果、化学組成、熱間圧延方
法とその条件、圧延後の冷却条件、巻き取り条件等を適
正に制御することにより、板厚1.2mm 未満の極薄熱延鋼
板の組織をフェライトの結晶粒度番号12以上の細粒フェ
ライト単相とし、成形加工に好適な表面性状を得ること
が可能となり、上記の課題を解決できることを知見し
た。すなわち、本発明は、下記の内容を要旨構成とする
ものである。
【0009】 (1) C:0.0001〜0.02wt%、Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、金
属組織がフェライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフ
ェライト単相組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以
下、かつ板厚が1.2 mm未満である耐衝撃性に優れる極薄
熱延鋼板。
【0010】 (2) C:0.0001〜0.02wt%、Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含み、かつ B:0.0001〜0.01wt%、Ti:0.001 〜2.0 wt%、 Nb:0.0005〜1.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織がフェ
ライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフェライト単相
組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以下、かつ板厚が
1.2mm 未満である耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板。
【0011】 (3) C:0.0001〜0.02wt%、Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含み、かつ Cr:0.001 〜2.0 wt%、Ni:0.001 〜2.0 wt%、 Mo:0.001 〜2.0 wt%、Cu:0.001 〜2.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織がフェ
ライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフェライト単相
組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以下、かつ板厚が
1.2mm 未満である耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板。
【0012】 (4) C:0.0001〜0.02wt%、Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含み、かつ B:0.0001〜0.01wt%、Ti:0.001 〜2.0 wt%、 Nb:0.0005〜1.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、さ
らに Cr:0.001 〜2.0 wt%、Ni:0.001 〜2.0 wt%、 Mo:0.001 〜2.0 wt%、Cu:0.001 〜2.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織がフェ
ライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフェライト単相
組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以下、かつ板厚が
1.2mm 未満である耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板。
【0013】(5) 上記(1) 〜(4) のいずれか1つに記載
の極薄熱延鋼板を製造するに当たり、それぞれに記載さ
れた成分組成の鋼素材を900 〜1250℃に加熱し、粗圧延
によりシートバーとなし、次いでこのシートバーを先行
するシートバーと接合し、圧延速度900 m/min 以上、
圧延終了温度Ar3変態点〜(Ar3変態点+50℃)および
圧下率95%以上の条件で潤滑しながら板厚1.2mm 未満ま
で仕上圧延し、その後0.5 秒以内に冷却速度50℃/sec
以上で450 ℃以下に冷却し、コイルに巻き取ることを特
徴とする極薄熱延鋼板の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
(1) 以下、この発明において、鋼の化学成分を上記のよ
うに限定した理由を説明する。 C:0.0001〜0.02wt% Cは、プレス成形性の指標である伸び、r値の向上の観
点から低減させることが望ましいが、その含有量が0.00
01wt%に満たないと、耐二次加工脆性の劣化や溶接部の
強度低下をもたらし好ましくない。一方、C含有量が0.
02wt%を超える場合は、フェライト単相にするためのC
固定化のためのTi,Nb を過剰に添加しなければならず好
ましくない。したがって、C含有量は0.0001〜0.02wt
%、好ましくは0.0003〜0.008 wt%の範囲とする。
【0015】Si:0.01〜2.0 wt% Siは、目標とする強度レベルに応じて必要量添加すれば
よいが、2.0wt %を超えて添加すると、鋼板が硬化して
成形性が低下するほか、表面処理性も顕著に劣化する。
したがってSi含有量の上限は2.0 wt%とする。また、0.
01wt%未満とするには製造コストが上昇するため、下限
を0.01wt%とする。
【0016】Mn:0.1 〜3.0 wt% Mnは、プレス成形性の指標である伸び、r値の向上の観
点から低減させることが望ましいが、0.1 wt%よりも少
ない場合には、自動車用材料として充分な強化効果が得
られない。一方、3.0 wt%を超えて添加すると、鋼板が
著しく硬化し、成形性が低下する。従って、Mn含有量
は、0.1 〜3.0 wt%、好ましくは0.3 〜1.5 wt%の範囲
とする。
【0017】P:0.01〜0.15wt% Pは、鋼の強化に有用な元素であり、少なくとも 0.01
wt%の添加が必要である。一方、0.15 wt%を超えて添
加すると、熱延母板を顕著に硬化させて成形性の低下を
招き、また表面処理性も顕著に劣化させる。したがっ
て、Pの含有量の上限を0.15wt%とする。
【0018】S:0.010 wt%以下 Sは、その含有量を低減することにより、鋼中の析出物
が減少して加工性が向上する。このような効果は、S量
を0.010 wt%以下とすることで得られる。なお、0.0001
wt%未満とするには非常に製造コストがかかるため、下
限は0.0001wt%程度に止めるのが好ましい。
【0019】Al:0.001 〜0.05wt% Alは、0.05wt%以下の添加で加工性を改善するが、0.00
1 wt%未満になると介在物が増加し、それに伴って加工
性を低下させる。従って、Alの含有量を0.001〜0.05wt
%の範囲とする。
【0020】B:0.0001〜0.01wt% Bは、耐2次加工脆性を向上させるのに有用な元素であ
り、その効果は0.0001wt%以上の添加で現れる。一方、
0.01wt%を超えて添加するとその効果は飽和するので、
0.0001〜0.01wt%、好ましくは0.0002〜0.0020の範囲と
する。
【0021】Ti:0.001 〜2.0 wt% Tiは、成形性の改善に有用な元素であり、その効果は0.
01wt%以上の添加で現れるが、2.0 wt%を超えて添加し
てもその効果は飽和し、製造コストの上昇を招くので、
0.01〜2.0 wt%、好ましくは0.01〜1.5 の範囲とする。
【0022】Nb:0.0005〜1.0 wt% Nbは、オーステナイトの再結晶温度を高め、オーステナ
イト中に圧延歪みを蓄積しやすくし、フェライト粒径を
細かくする元素である。その効果は 0.0001 wt%以上の
添加で現れるが、1.0 wt%を超えて添加してもその効果
は飽和するので、0.0001〜1.0 wt%、好ましくは0.001
〜0.1 の範囲とする。
【0023】Cr:0.001 〜2.0 wt% Crは、鋼の強化に有用な元素であり、目標とする強度レ
ベルに応じて必要量添加すればよい。その効果は0.001
wt%以上の添加により現れるが、2.0 wt%を超えて添加
しても飽和し、製造コストも高くなる。従って、Crの含
有量を0.001 〜2.0 wt%、好ましくは0.01〜1.0 の範囲
とする。
【0024】Ni:0.001 〜2.0 wt%、 Niは、鋼の強化に有用な元素であり、目標とする強度レ
ベルに応じて必要量添加すればよい。その効果は0.001
wt%以上の添加により現れるが、2.0 wt%を超えて添加
しても飽和し、製造コストも高くなる。従って、Niの含
有量を0.001 〜2.0 wt%、好ましくは0.01〜1.0 の範囲
とする。
【0025】Mo:0.001 〜2.0 wt% Moは、鋼の強化に有用な元素であり、目標とする強度レ
ベルに応じて必要量添加すればよい。その効果は0.001
wt%以上の添加により現れるが、2.0 wt%を超えて添加
しても飽和し、製造コストも高くなる。従って、Moの含
有量を0.001 〜2.0 wt%、好ましくは0.01〜1.0 の範囲
とする。
【0026】Cu :0.001 〜2.0 wt% Cuは、鋼の強化に有用な元素であり、目標とする強度レ
ベルに応じて必要量添加すればよい。その効果は0.001
wt%以上の添加により現れるが、2.0 wt%を超えて添加
しても飽和し、製造コストも高くなる。従って、Cuの含
有量を0.001 〜2.0 wt%、好ましくは0.01〜1.0 の範囲
とする。
【0027】(2) 本発明にかかる極薄熱延鋼板において
は、前述したように、金属組織をフェライト結晶粒度番
(JIS)12以上のフェライト単相組織で、表面の酸
化層の厚さを3μm以下とする必要がある。その理由
は、優れた穴拡げ性を確保するためには、先ず金属組織
をフェライト単相組織とする必要があるからである。ま
た、フェライト結晶粒度番号(JIS)を12以上にする
のは、12未満の粗粒になると動的強度の低下を招き、十
分な耐衝撃性が得られないからである。図1に、耐衝撃
性の指標として用いた高歪速度(歪速度10(s−1)
)引張変形時の伸び−応力曲線から求めた吸収エネル
ギーに及ぼすフェライト結晶粒度番号の影響を示す。こ
こに、上記吸収エネルギーは図2に定義する値である。
なお、図1の製造条件は実施例にて後述する。さらに、
鋼板表面の酸化層厚さを3μm以下とするのは、極薄鋼
板の生産性は鋼板表面の酸化層を除去する酸洗スピード
により決まり、高生産性を達成するためには表面の酸化
層厚さを3μm以下にすることが必要であること、ま
た、酸洗しないで加工する場合に酸化層の剥落がほとん
どなく、成形後の耐衝撃性に有利であることによる。
【0028】(3) 次に、本発明に係る極薄熱延鋼板は、
鋼スラブを900 〜1250℃に加熱し、粗圧延によりシート
バーとなし、次いでこのシートバーを先行するシートバ
ーと接合し、圧延速度900 m/min 以上、圧延終了温度
Ar3変態点〜(Ar3変態点+50℃)および圧下率95%以
上の条件で潤滑しながら板厚1.2mm 未満まで仕上圧延
し、その後0.5 秒以内に冷却速度50℃/sec 以上で450
℃以下に冷却し、コイルに巻き取ることによって製造さ
れる。以下に各製造条件について説明する。
【0029】・圧延加熱温度 圧延加熱温度が900 ℃未満では仕上圧延温度をAr3変態
点以上の温度で行うことができず、フェライト域圧延と
なり、粗大な結晶粒になりフェライト結晶粒度番号を12
以上にすることができなくなる。一方、1250℃を超える
とフェライトの結晶粒度が大きくなり、同様にフェライ
ト結晶粒度番号を12以上にすることができなくなる。し
たがって、加熱温度は900 〜1250℃の範囲とする。
【0030】・仕上げ圧延 上記温度範囲に加熱したスラブを粗圧延してシートバー
とし、このシートバーを仕上げ圧延する。このとき、シ
ートバーを先行するシートバーと接合し、潤滑しながら
仕上圧延するのは、次の理由による。まず、潤滑するの
は、仕上圧下率上昇に伴うロールの負荷の増加を軽減す
るためである。また、シートバーを接合するのは、仕上
板厚が板厚1.2mm 未満の板は、圧延ロール出側で張力が
かかっていないとホットランテーブル上で板が波打ち、
形状が悪くなること、また、潤滑を行うと板が滑って効
率的な圧延ができないことを防止するためである。この
ようにして圧延すれば、従来歩留まりの悪かった板の先
端、後端の歩留まりを向上させることが可能になる。ま
た、圧延速度を900 m/min 以上にするのは、圧延中の
温度降下量を抑制して、仕上げ圧延終了温度をAr3変態
点〜(Ar3+50℃)に保つために必要であるからであ
る。
【0031】仕上げ圧延終了温度をAr3変態点〜(Ar3
+50℃)とするのは、圧延終了温度がAr3変態点未満
ではフェライト域圧延となり、粗大な結晶粒になりフェ
ライト結晶粒度番号12以上の細粒にならないからであ
り、(Ar3+50℃)を超えるとフェライトに変態する
前のオーステナイト粒への歪みの蓄積が足りず、変態後
のフェライト粒度番号が同様に12以上にならないからで
ある。また、仕上圧下率が95%未満の場合も同様の理由
でフェライト粒度番号が12以上にならない。よって、仕
上圧延の圧延終了温度をAr3変態点〜(Ar3+50
℃)、圧下率95%以上とする。
【0032】・圧延後の冷却と巻き取り 板厚1.2 mm未満の極薄鋼板におけるフェライト結晶粒径
を制御するうえで、前記の板厚へ仕上げ圧延した直後に
急冷することが極めて重要である。仕上げ圧延終了後、
0.5 秒以内に冷却速度50℃/sec 以上で450 ℃以下に冷
却するのは、圧延終了後0.5 秒を超えるまで放冷すると
オーステナイト中に蓄えられた歪みが開放され、所定の
フェライト結晶粒度を得られないからであり、また、冷
却速度が50/sec 未満でも同様の理由で所定のフェライ
ト結晶粒度を得られなくなるからであり、さらに、冷却
停止温度が450 ℃を超えるとフェライト粒の粗大化を招
き、所定のフェライト結晶粒度を得られないからであ
る。なお、冷却停止温度が余りに低いと均一冷却が難し
く、材質のばらつきが大きくなるので、その下限は300
℃とするのが望ましい。このほか、鋼板表面の酸化層
(スケール)厚みを3μm以下に抑制するためにも、特
に仕上げ圧延終了後の0.5 秒以内に冷却速度50℃/sec
以上で450 ℃以下に冷却することは有効である。
【0033】なお、本発明による極薄熱延鋼板における
効果は、これを素材とした表面処理鋼板においても、同
様に付与できる。また、以上の説明では、専ら自動車用
の用について述べたが、本発明による技術は、高歪速度
下での強度を要求される他の用途にも同様に有効である
ことはいうまでもない。
【0034】
【実施例】
・実施例 表1に示す化学組成の鋼を、転炉にて溶製した。これら
成分の鋼片を、表2に示す各条件で、加熱して粗圧延を
行い25〜35mmのシートバーとし、次いでこのシー
トバーを先行するシートバーと接合し、各条件の圧延速
度、圧延終了温度および圧下率で潤滑(潤滑油使用)し
ながら仕上圧延し、冷却、巻き取りを経て、表3に示す
板厚の極薄鋼板とした。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】得られたこれらの熱延鋼板の厚み方向で中
央の位置について組織観察を行い、フェライト結晶粒度
(JIS)を測定するとともに、鋼板表面の酸化層の厚
さを組織写真により測定した。また、得られたこれらの
熱延鋼板から、平行部の幅5mm、長さ10mmの引張
試験片を採取し、歪速度が103 (s-1) と10-3(s-1) の引
張試験を行い、それぞれの降伏応力から静動比を求め
た。また、図2の定義に従って、(歪速度103 (s -1) )
時の30%歪みまでの吸収エネルギーと破断までの吸収エ
ネルギーを求めた。さらに、穴広がり率を測定し、伸び
フランジ性の指標とした。測定したこれらの特性値を、
表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】本発明法により、いずれも、フェライト結
晶粒度番号が12以上で形状の良好な極薄鋼板が歩留り良
く製造できた。その特性は、表3に示す結果から明らか
なように、静動比が1.6 以上で、30%歪みまでの吸収エ
ネルギーが200 MJ/m3 以上もしくは破断までの吸収エ
ネルギーが320 MJ/m3 以上の、優れた耐衝撃性を有
し、しかも穴拡がり率も75%以上の良好な伸びフランジ
性を有していることが判る。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
鋼板の化学組成、スケール厚および結晶粒度が適正に制
御したフェライト組織にすることによって、従来よりも
静動比に優れ、伸びフランジ性などの成形加工にも優れ
た極薄の熱延鋼板を製造することが可能となる。しかも
本発明法によれば、この鋼板を歩留り良く安定して製造
できるので生産性も改善でき、安価な熱延鋼板が製造可
能になる。したがって、本発明に従う極薄熱延鋼板を自
動車用に適用することによって、プレス成形性を損なう
ことなく、自動車車体の軽量化と安全性の向上を、一層
経済的に達成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高歪み速度変形時の吸収エネルギーとフェライ
ト結晶粒度番号との関係を示す図である。
【図2】高歪み速度変形時における吸収エネルギーを定
義する図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/58 C22C 38/58 (72)発明者 小原 隆史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (56)参考文献 特開 平4−337037(JP,A) 特開 平7−70696(JP,A) 特開 平7−166292(JP,A) 特開 平7−18375(JP,A) 特開 平6−271978(JP,A) 特開 平7−3381(JP,A) 特開 平7−268456(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 301 C21D 8/02 C21D 9/46 C22C 38/06 C22C 38/54 C22C 38/58

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.0001〜0.02wt%、 Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、金
    属組織がフェライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフ
    ェライト単相組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以
    下、かつ板厚が1.2 mm未満である耐衝撃性に優れる極薄
    熱延鋼板。
  2. 【請求項2】 C:0.0001〜0.02wt%、 Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含み、かつ B:0.0001〜0.01wt%、 Ti:0.001 〜2.0 wt%、 Nb:0.0005〜1.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残
    部はFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織がフェ
    ライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフェライト単相
    組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以下、かつ板厚が
    1.2mm 未満である耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板。
  3. 【請求項3】 C:0.0001〜0.02wt%、 Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含み、かつ Cr:0.001 〜2.0 wt%、 Ni:0.001 〜2.0 wt%、 Mo:0.001 〜2.0 wt%、 Cu:0.001 〜2.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残
    部はFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織がフェ
    ライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフェライト単相
    組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以下、かつ板厚が
    1.2mm 未満である耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板。
  4. 【請求項4】 C:0.0001〜0.02wt%、 Si:0.01〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜3.0 wt%、 P:0.01〜0.15wt%、 S:0.010 wt%以下、 Al:0.001 〜0.05wt% を含み、かつ B:0.0001〜0.01wt%、 Ti:0.001 〜2.0 wt%、 Nb:0.0005〜1.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、さ
    らに Cr:0.001 〜2.0 wt%、 Ni:0.001 〜2.0 wt%、 Mo:0.001 〜2.0 wt%、 Cu:0.001 〜2.0 wt% から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残
    部はFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織がフェ
    ライト結晶粒度番号(JIS)12以上のフェライト単相
    組織で、表面の酸化層の厚さが3μm以下、かつ板厚が
    1.2mm 未満である耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれか1項に記載の極薄
    熱延鋼板を製造するに当たり、それぞれの項に記載され
    た成分組成の鋼素材を900 〜1250℃に加熱し、粗圧延に
    よりシートバーとなし、次いでこのシートバーを先行す
    るシートバーと接合し、圧延速度900 m/min 以上、圧
    延終了温度Ar変態点〜(Ar変態点+50℃)および
    圧下率95%以上の条件で潤滑しながら板厚1.2mm 未満ま
    で仕上圧延し、その後0.5 秒以内に冷却速度50℃/sec
    以上で450 ℃以下に冷却し、コイルに巻き取ることを特
    徴とする極薄熱延鋼板の製造方法。
JP34235895A 1995-12-28 1995-12-28 耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3172420B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34235895A JP3172420B2 (ja) 1995-12-28 1995-12-28 耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34235895A JP3172420B2 (ja) 1995-12-28 1995-12-28 耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09184045A JPH09184045A (ja) 1997-07-15
JP3172420B2 true JP3172420B2 (ja) 2001-06-04

Family

ID=18353112

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP34235895A Expired - Fee Related JP3172420B2 (ja) 1995-12-28 1995-12-28 耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3172420B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6221179B1 (en) * 1997-09-11 2001-04-24 Kawasaki Steel Corporation Hot rolled steel plate to be processed having hyper fine particles, method of manufacturing the same, and method of manufacturing cold rolled steel plate
JP3039862B1 (ja) * 1998-11-10 2000-05-08 川崎製鉄株式会社 超微細粒を有する加工用熱延鋼板
KR100435435B1 (ko) * 1999-11-01 2004-06-10 주식회사 포스코 초극박 열연강판 생산겸용 연속열간압연장치 및 이를이용한 초극박 열연강판의 제조방법
JP5391607B2 (ja) * 2008-08-05 2014-01-15 Jfeスチール株式会社 外観に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
UA109963C2 (uk) 2011-09-06 2015-10-26 Катана сталь, яка затвердіває внаслідок виділення часток після гарячого формування і/або загартовування в інструменті, яка має високу міцність і пластичність, та спосіб її виробництва
CN112368425B (zh) * 2018-07-06 2024-03-05 日本制铁株式会社 表面处理钢板和表面处理钢板的制造方法
CN113070341B (zh) * 2021-03-18 2023-04-14 鞍钢股份有限公司 一种降低热连轧低碳钢薄板制耳率的轧制方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09184045A (ja) 1997-07-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8926772B2 (en) Method of producing austenitic iron/carbon/manganese steel sheets having a high strength and excellent toughness and being suitable for cold forming, and sheets thus produced
KR100334948B1 (ko) 높은 동적 변형저항을 가진 우수한 가공성 고강도 강판 및 그제조방법
JP3551064B2 (ja) 耐衝撃性に優れた超微細粒熱延鋼板およびその製造方法
JP3386726B2 (ja) 超微細粒を有する加工用熱延鋼板及びその製造方法並びに冷延鋼板の製造方法
JP3572894B2 (ja) 耐衝突特性と成形性に優れる複合組織熱延鋼板およびその製造方法
JP3231204B2 (ja) 疲労特性にすぐれる複合組織鋼板及びその製造方法
JP3253880B2 (ja) 成形性と耐衝突特性に優れる熱延高張力鋼板およびその製造方法
JP3478128B2 (ja) 延性及び伸びフランジ成形性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法
JPH11193439A (ja) 高い動的変形抵抗を有する良加工性高強度鋼板とその製造方法
JP2001220647A (ja) 加工性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP2001226741A (ja) 伸びフランジ加工性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JPH1161327A (ja) 耐衝突安全性と成形性に優れた自動車用高強度鋼板とその製造方法
JPH10259448A (ja) 静的吸収エネルギー及び耐衝撃性に優れた高強度鋼板並びにその製造方法
JP3172420B2 (ja) 耐衝撃性に優れる極薄熱延鋼板およびその製造方法
JP2001226744A (ja) 焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法
JP5070864B2 (ja) 熱延鋼板及びその製造方法
JP4205893B2 (ja) プレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法
JP5034296B2 (ja) 歪時効硬化特性に優れた熱延鋼板およびその製造方法
JP4670135B2 (ja) 歪時効硬化特性に優れた熱延鋼板の製造方法
KR20230049120A (ko) 핫 스탬프용 강판 및 그 제조 방법, 그리고, 핫 스탬프 부재 및 그 제조 방법
JP3538990B2 (ja) 耐衝撃性に優れる高張力熱延鋼板およびその製造方法
JP2621744B2 (ja) 超高張力冷延鋼板およびその製造方法
JP3169293B2 (ja) 耐衝撃性に優れた自動車用薄鋼板およびその製造方法
JP2001040451A (ja) プレス成形用熱延鋼板
JP4474952B2 (ja) 高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees