JP3171391B2 - モノまたはポリクローナル抗体、およびその抗体を用いた魚卵の種の判定方法 - Google Patents

モノまたはポリクローナル抗体、およびその抗体を用いた魚卵の種の判定方法

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伸互 広石
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水中に個々の卵
に分離して浮遊している浮性卵である海洋性分離浮性魚
卵のうちの特定の魚卵の種レベルの判定を可能にするモ
またはポリクローナル抗体に関するものである。また
それらの抗体を用いて、特定の魚卵の種を判定する方法
に関するものである。以下、本明細書において「完全卵
の形態にある」とは、丸ごとの魚卵(ありのままの魚
卵、インタクト(intact)な魚卵、全卵)を意味するもの
とする。
【0002】
【従来の技術】タイ、ヒラメなどは、海洋生物資源の中
でも最重要魚種である。海水中の魚卵を採集してこれら
の魚卵の種ごとの分布や量を知ることは、魚の生態系を
知ったり、海洋生物資源を把握したりする上で重要であ
る。
【0003】一般に魚卵は、発育に伴なう卵割の進行状
況に応じていくつかのステージに分けられるが、大別す
ると、前期、中期、後期となる。前期卵は受精から胚孔
閉鎖までのもの、中期卵は胚孔閉鎖から胚体尾部が遊離
するまでのもの、後期卵は胚体尾部の遊離後から孵化ま
でのものである。孵化までに要する時間は、魚種や積算
温度などの飼育条件により異なる。
【0004】魚卵は、カタクチイワシなど一部のものを
除くと大部分のものが球形である。浮性卵の卵径は、最
小で 0.5mm程度、最大は 4.8mm程度であり、 0.7〜1.5m
m 程度、殊に 0.8〜0.9mm 前後のものが最も種類が多
い。魚卵の大きさは、同一種内でも変異があり、卵の大
きさだけで種類の分けられるものは少ない。
【0005】このように海洋調査で採集される浮性卵
は、 0.8〜0.9mm 前後の直径を持つものが多く、しかも
同時期に産卵するものが多く、同じ採集時期で数種類な
いし十数種類あるいはそれ以上の卵が混じっていること
がある。そのため大きさや形状などの形態による観察で
は、沈性、浮性、凝集、分離、油球の有無、卵膜構造、
色素の分布などを加味しても、卵の段階では種まで同定
できるものは極めて限られる。加えて、ホルマリン水溶
液や70%程度のアルコールで魚卵を保存することによ
り比較対照用の標本を作ろうとしても、経時的に変化を
起こすものがほとんどであり、一部の特殊な種類を除い
ては標本の作製自体が困難である。
【0006】魚卵の種の同定に関しては、たとえば、
「水産増殖、31巻2号(1983)、81〜87頁」
に、「冬〜春季の若狭湾沿岸に出現する無油球卵の同
定」と題する論文が掲載されている。「魚類学雑誌、3
8巻2号、1991年、199〜206頁」の「ふ化実
験による浮遊性魚卵の同定」と題する論文には、孵化実
験を併用した魚卵の種名の同定が述べられている。
【0007】そこで現在は、採集した魚卵を孵化させて
仔魚とし、その仔魚の形態学的特徴を観察して既知の知
見と比較し、種の識別を行っていた。この仔魚観察法
が、魚卵の種を同定する標準的な判定方法である。
【0008】最近、DNA分析によりヒラメ浮遊卵の識
別を行うことが報告されている。平成8年度日本水産学
会春季大会講演(平成8年3月31日〜4月4日)の
「DNA分析によるヒラメ浮遊卵の識別−魚卵識別への
新しいアプローチ−」と題する報告を参照。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】採集した魚卵を孵化さ
せ、仔魚を観察する方法は、種の判定までに時間がかか
り、簡便な方法とは言えない。また孵化試験用の魚卵は
ネット回収時の物理的衝撃により孵化率が低下するた
め、結果が過小評価となる。
【0010】DNA分析による魚卵の種の判定は、高価
な分析装置を要すること、DNAの一致、不一致に専門
知識と経験が要求されること、ホルマリン固定した試料
では時間と共にDNAが分解されるため、長く保存した
サンプルの分析が困難となることなどの問題点ないし制
約がある。
【0011】本発明は、このような背景下において、海
水中に個々の卵に分離して浮遊している浮性卵である海
洋性分離浮性魚卵のうちの特定の魚卵の種を判定するこ
とのできるモノまたはポリクローナル抗体を提供するこ
と、およびその抗体を用いて魚卵の種を迅速かつ正確に
判定する方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、「海水中に個
々の卵に分離して浮遊している浮性卵であるマダイ卵ま
たはヒラメ卵のみを完全卵の形態において認識する抗マ
ダイ卵モノクローナル抗体または抗ヒラメ卵モノクロー
ナル抗体。」をその要旨とするものである。
【0013】また本発明は、「海水中に個々の卵に分離
して浮遊している浮性卵であるマダイ卵、クロダイ卵ま
たはヒラメ卵のみを完全卵の形態において認識する抗マ
ダイ卵ポリクローナル抗体、抗クロダイ卵ポリクローナ
ル抗体または抗ヒラメ卵ポリクローナル抗体。」をその
要旨とするものである。
【0014】本発明の魚卵の種の判定方法の一つは、海
水中に個々の卵に分離して浮遊している浮性卵である
ダイ卵またはヒラメ卵のみを完全卵の形態において認識
し、他の種の魚卵を完全卵の形態において認識しない
マダイ卵モノクローナル抗体または抗ヒラメ卵モノクロ
ーナル抗体を用いて、完全卵の形態にある検体海洋性分
離浮性魚卵がマダイ卵またはヒラメ卵であるかどうか
判定することを特徴とするものである。
【0015】本発明の魚卵の種の判定方法の他の一つ
は、海水中に個々の卵に分離して浮遊している浮性卵で
あるマダイ卵またはヒラメ卵のみを完全卵の形態におい
て認識し、他の種の魚卵を完全卵の形態において認識し
ない抗マダイ卵ポリクローナル抗体、抗クロダイ卵ポリ
クローナル抗体または抗ヒラメ卵ポリクローナル抗体
用いて、完全卵の形態にある検体海洋性分離浮性魚卵
マダイ卵、クロダイ卵またはヒラメ卵であるかどうか
判定することを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。
【0017】《魚卵》海洋性分離浮性魚卵としては、 コノシロ、ウルメイワ
シ、マイワシ、サッパ、ヒラ、カタクチイワシ、ニギ
ス、キュウリエソ、ホウライエソ、ヒメ、トカゲエソ、
アカヤガラ、ゴマサバ、マサバ、タチウオ、シイラ、マ
ルアジ、マアジ、ブリ、ヒイラギ、ヒメジ、スズキ、キ
ス、メジナ、チダイ、クロダイ、マダイ、ヘダイ、タカ
ノハダイ、ワニギス、ミシマオコゼ、アオブダイ、ハオ
コゼ、コチ、ホウボウ、ヒラメ、ソウハチ、ムシガレ
イ、ホシガレイ、メイタガレイ、マガレイ、イシガレ
イ、ヤナギムシガレイ、ババガレイ、セトウシノシタ、
イトヒキダラ、スケトウダラをはじめ、多種多様の魚の
卵があげられる。本発明は、このうちのマダイ、クロダ
イ、ヒラメの卵を対象とするものである。
【0018】このうちタイについて言えば、日本沿岸で
は、マダイ、キダイ、クロダイ、チダイ、ヘダイが水産
上重要である。地域によって異なるが、マダイは、産卵
盛期が3〜6月で、卵径は0.82〜1.13mm、油径は0.19〜
0.28mmである。キダイは、産卵期が6〜7月と10〜1
1月の2回であり、卵径は0.90〜0.93mmで、径 0.2mm位
の油球を1個持つ。クロダイは、産卵期が3〜7月であ
り、卵径は0.75〜0.95mmで、径 0.2mm前後の油球1個を
備えている。チダイは、産卵期が7〜12月であり、卵
径は0.89〜0.98mm、油球径は0.19〜0.21mmである。ヘダ
イは、産卵期が4〜6月であり、卵径は1.03〜1.10mm
で、油球径は 0.2mm前後である。またヒラメについて言
えば、その産卵期は2〜7月であり、未受精卵の直径は
0.9mmで、約0.13mmの油球1個を持つ。
【0019】魚卵の直径は、 0.7〜1.5mm 程度、殊に
0.8〜0.9mm 前後のものが多いので、魚卵の採集は、た
とえば、網地の目合いが0.33mmとか0.55mmとかのものが
用いられる。曳網法は、鉛直曳き、水平曳き、傾斜曳き
などが採用される。
【0020】測点は、湾内(湾奥部、湾中央部、湾口
部)、湾外、河口域とか、沿岸寄り、中間域、沖合など
とすることが多い。
【0021】《ポリクローナル抗体の作製》 本発明の特定のポリクローナル抗体は、次に述べる免疫
工程を実施することにより得られる。場合により、後述
特定のモノクローナル抗体を混合することによっても
得られる。
【0022】〈免疫工程〉 マウス、ラットなどの哺乳動物を、予め種の知られてい
る魚卵そのものを抗原として用いて免疫する。ホルマリ
ン固定された魚卵の場合は、予め生理食塩水で洗浄して
ホルマリンを除去する。投与手段としては、腹腔内注
射、静脈注射、皮下注射などが採用され、場合により皮
内注射も採用される。最終免疫後3〜10日目に哺乳動
物の採血を行い、血清(ポリクローナル抗体)を得る。
【0023】《モノクローナル抗体の作製》 本発明の特定のモノクローナル抗体は、以下に述べるB
細胞調製工程、細胞融合工程、スクリーニング工程、ク
ローニング工程、ハイブリドーマ培養工程、さらに必要
に応じて分離精製工程の各工程を順に実施することによ
り得られる。
【0024】〈B細胞調製工程〉 マウス、ラットなどの哺乳動物を、予め種の知られてい
る魚卵を抗原として用いて免疫する。ホルマリン固定さ
れた魚卵の場合は、予め生理食塩水で洗浄してホルマリ
ンを除去する。投与手段としては、腹腔内注射、静脈注
射、皮下注射などが採用され、場合により皮内注射も採
用される。最終免疫後3〜10日目に、哺乳動物の脾臓
からB細胞を含んだ細胞懸濁液を採取する。
【0025】〈細胞融合工程〉 前工程で採取したB細胞とミエローマ細胞(骨髄腫細
胞)とをそれぞれ公知のミエローマ細胞用培地に懸濁す
る。ついで両者を混合し、適当な融合促進剤の存在下に
融合させる。B細胞とミエローマ細胞の混合比は、1:
1〜1:20とすることが多いが、必ずしもこの範囲内
に限られない。細胞融合促進剤としては、たとえば分子
量1000〜7500のポリエチレングリコールが用い
られる。
【0026】ここでミエローマ細胞としては、上述のB
細胞調製工程で用いた被免疫動物と同種の動物由来のも
ので、かつハイブリドーマ選択培地で生育できず、しか
もそれ自身が抗体を分泌しないものを用いることが好ま
しい。このようなミエローマ細胞はすでに市販されてい
るので(たとえばマウスミエローマ細胞 P3-X63-Ag8-65
3 など)、これを用いるのが簡便である。
【0027】B細胞とミエローマ細胞との細胞融合はラ
ンダムに起きるので、目的のハイブリドーマを選別する
必要がある。そこで上記操作の後、融合促進剤を洗浄除
去し、ミエローマ細胞用培地に懸濁したハイブリドーマ
の 0.1〜 0.5mlずつをたとえば96ウェルプレートに撒
き、培養する。培養中、HAT培地などの公知の選択培
地を添加し、その割合を徐々に高める。最終的には同様
にして、さらに選択培地をハイブリドーマ培地と交換す
る。このような培地交換により、ハイブリドーマ以外の
細胞は死滅する。
【0028】〈スクリーニング工程、クローニング工
程〉 ハイブリドーマのスクリーニングは、培養液中の抗体の
魚卵への反応性を調べることにより行うことができる。
【0029】反応性の確認は、免疫組織染色法や蛍光抗
体法によるのが便利であり、他の方法も採用できる。免
疫組織染色法は、後に実施例1の個所で具体例を述べ
る。蛍光抗体法によるときは、培養液の一部を魚卵に加
えてインキュベートし、洗浄し、ついで蛍光ラベルを付
した二次抗体を加えてインキュベートしたものを、蛍光
顕微鏡にて検鏡することにより判断する。
【0030】これにより、特定の種の魚卵に対するモノ
クローナル抗体を産生する複数種のハイブリドーマを同
時にスクリーニングすることができる。
【0031】スクリーニングしたハイブリドーマは、限
界希釈法によりクローン化する。これにより、目的とす
るハイブリドーマが作製できる。
【0032】〈ハイブリドーマ培養工程〉 前工程で作製したハイブリドーマを in vitro または i
n vivoで培養すれば、目的の特定のモノクローナル抗体
が生産できる。
【0033】in vitroでの培養は、たとえば数個のハイ
ブリドーマの96ウェルプレートでの培養からはじめ、
しだいに培養規模を上げることにより行うことができ、
これにより培養液中にモノクローナル抗体が分泌、蓄積
される。
【0034】また、in vivo での培養は、予めプリスタ
ン(2, 6, 10, 14−テトラメチルペンタデカン)処理し
たBALB/cマウスまたはヌードマウスの腹腔内にハ
イブリドーマを接種することにより実施でき、これによ
り10〜20日後にはモノクローナル抗体を含む腹水が
蓄積される。
【0035】〈分離精製工程〉 培養物または腹水からのモノクローナル抗体の分離精製
は、通常の物理化学的手段によって行うことができる
が、分離精製を省略して培養物または腹水のままである
いはそれを適当に希釈して用いることもでき、また簡単
な分離精製により得た粗モノクローナル抗体を用いるこ
ともできる。
【0036】《作用》 本発明の特定のモノまたはポリクローナル抗体を含む培
養液、腹水または血清を魚卵に加えてインキュベート
し、さらに試薬を加えて免疫組織染色法や蛍光抗体法に
て確認することにより、その魚卵が、モノまたはポリク
ローナル抗体に反応するかどうかが正確に判定される。
モノまたはポリクローナル抗体として種々のものを準備
すれば、その魚卵がどの種に属するものであるか(マダ
イ、クロダイ、ヒラメの卵であるかどうか)が判明す
る。ホルマリン固定した魚卵試料でも種の判別が可能で
ある。特に免疫組織染色法を採用するときは、経時的変
化のない比較対照用の標本を作製しておくことができる
ので有利である。
【0037】
【実施例】次に実施例をあげて本発明をさらに説明す
る。以下において、PBSはリン酸緩衝生理食塩水、F
CSはウシ胎児血清、PEG 4000は分子量4000のポリ
エチレングリコールのことである。
【0038】実施例1(ポリクローナル抗体/マダイ) 〈魚卵の調製〉 福井県栽培漁業センター(小浜市)で1995年6月2
日に採集されたマダイの魚卵(以下、福井後期卵とい
う)を免疫に使用した。また免疫組織染色には、免疫で
使用したものと同じ福井後期卵と、株式会社関西総合環
境センター宮津事務所で1995年4月21日に採集し
たもの(以下、宮津前期卵という)を使用した。いずれ
も、採集直後に10重量%濃度のホルマリン水溶液で固
定し、保存したものである。
【0039】〈免疫工程、マウス抗血清の調製〉 マウス抗血清は、3匹のBALB/cマウス(4週齢、
雌、静岡実験動物協同組合)に、以下のように免疫を行
うことによって作製した。
【0040】マウス1は2週間ごとに免疫を行った。1
回目の免疫では、福井後期卵懸濁液(200個/ml、P
BS)にコンプリートアジュバント(半井化学株式会社
製)を1ml加え、乳化させた後、皮下に投与して免疫を
行った。2,3回目は、福井後期卵懸濁液(200個/
ml、PBS)にインコンプリートアジュバント(半井化
学株式会社製)を1ml加え、乳化させた後、皮下に投与
して免疫を行った。
【0041】マウス2およびマウス3は、1回目の免疫
では、福井後期卵懸濁液(200個/ml、PBS)にコ
ンプリートアジュバント(半井化学株式会社製)を1ml
加え、乳化させた後、皮下に投与して免疫を行った。2
回目は、宮津前期卵懸濁液(200個/ml、BPS)に
インコンプリートアジュバント(半井化学株式会社製)
を1ml加え、乳化させた後、皮下に投与して免疫を行っ
た。2,3回目は、福井を1ml加え、乳化させた後、皮
下に投与して免疫を行った。
【0042】最終免疫から3日後に、全てのマウスの尾
静脈より採血を行い、血液を遠心分離することにより免
疫血清を得た。この血清(ポリクローナル抗体)を、マ
ウス1については25、125、250、500、10
00倍に、マウス2およびマウス3については25、1
25倍に、それぞれPBSで希釈した。
【0043】一方、同じ系統の正常マウスから採血して
得た血清を、免疫血清と同様にPBSで25倍および1
25倍に希釈したものを、陰性対照血清とした。
【0044】〈使用試薬〉 使用試薬は次の通りである。 VECTASTAIN Elite ABC MOUSE IgG KIT ・アビジンDH ・ビオチン化ペルオキシダーゼH ・ビオチン化抗マウスIgG(ウマ) ・ブロッキング用正常ウマ血清 DAB基質KIT(染色用)
【0045】〈免疫組織染色法の操作手順〉 1. ホルマリン固定された卵を蒸留水で洗浄し、約30
個を96ウェルプレートに取り、余分の水分を取り除い
た後、PBS 100μl を加え、5分間放置した。 2. PBSを取り除き、希釈したブロッキング用正常ウ
マ血清50μl を加え、20分間反応させた。 3. 正常ウマ血清を取り除き、希釈したマウス抗血清5
0μl を加え、30分間反応させた。 4. マウス抗血清を取り除き、5分間PBSで洗浄し
た。 5. ビオチン化抗マウスIgG 50μl を加え、30
分間反応させた。 6. ビオチン化抗マウスIgGを取り除き、5分間PB
Sで洗浄した。 7. ABC試薬50μl を加え、30分間反応させた。 8. ABC試薬を取り除き、5分間PBSで洗浄した。 9. ペルオキシダーゼ基質溶液50μl を加え、2〜1
0分間反応させた。 10. 反応が充分確認された後、蒸留水で洗浄することに
よって反応を停止させた。 11. 免疫染色された卵表面の観察を行った。
【0046】〈条件および結果〉 BALB/cマウスの免疫条件を表1に、種々の方法で
免疫して得られたマウス抗血清(ポリクローナル抗体)
とマダイ卵との反応性を表2に示す。表2中、++は茶色
の染色の濃さ大、+は濃さ小、−は茶色の染色がほぼま
たは全く認められないことを意味する。
【0047】
【表1】 BALB/cマウスの免疫法 マウス 免 疫 卵 アジュバント 投与部位 マウス1 1回目 福井後期卵 コンプリート 皮下 2回目 福井後期卵 インコンプリート 皮下 3回目 福井後期卵 インコンプリート 皮下 マウス2 1回目 福井後期卵 コンプリート 皮下 2回目 宮津前期卵 インコンプリート 皮下 マウス3 1回目 福井後期卵 コンプリート 皮下 2回目 宮津前期卵 インコンプリート 皮下
【0048】
【表2】 マウス抗血清とマダイ卵との反応性 反 応 性 血清 希釈倍率 福井後期卵 宮津前期卵 抗血清1 25 ++ ++ 125 ++ ++ 250 ++ ++ 500 + + 1000 − − 抗血清2 25 + + 125 + + 抗血清3 25 ++ ++ 125 ++ ++
【0049】〈考察〉 陽性反応は ・マウス1の抗血清の25倍、125倍、250倍、5
00倍希釈を福井後期卵に反応させたもの、 ・マウス1の抗血清の25倍、125倍、250倍、5
00倍希釈を宮津前期卵に反応させたもの、 ・マウス2の抗血清の25倍、125倍希釈を福井後期
卵に反応させたもの、 ・マウス2の抗血清の25倍、125倍希釈を宮津前期
卵に反応させたもの、 ・マウス3の抗血清の25倍、125倍希釈を福井後期
卵に反応させたもの、 ・マウス3の抗血清の25倍、125倍希釈を宮津前期
卵に反応させたもの、で観察された。しかしながら、マ
ウス1の抗血清の1000倍希釈を福井後期卵に反応さ
せたもの、マウス1の抗血清の1000倍稀釈を宮津前
期卵に反応させたものには、反応は認められなかった。
【0050】陰性対照を福井後期卵に反応させたもの、
陰性対照を宮津前期卵に反応させたものには、反応は認
められなかった。
【0051】結局、1000倍希釈した卵および陰性対
照以外は、全て染色されたことがわかる。
【0052】マウス1から得た抗血清は、福井後期卵を
免疫したマウス血清であるが、宮津前期卵にも反応して
いた。また1000倍希釈したものは、陰性対照とほと
んど違いが認められなかった。陽性反応は500倍まで
希釈した血清で認められたが、染色が薄かったので、血
清の希釈度は250倍までが妥当であると考えられる。
また染色の濃さを比較すると、マウス1やマウス3から
得た抗血清は、マウス2からのものよりも抗血清による
卵を濃く染色することがわかった。このことから、マウ
ス2に比べてマウス3の方が抗体価が高いことがわか
る。
【0053】免疫されたマウス3の脾臓は、陰性対照の
マウスに比べてかなり肥大しており、このことからも抗
体価の高さが予想された。免疫の回数については、マウ
ス1は3回の免疫を行ったが、マウス2およびマウス3
は共に2回の免疫で抗体を産生していたので、免疫は2
回以上行えばよいと言える。
【0054】以上のように、マダイ卵とアジュバンドと
を混合してマウスの皮下に投与すると、速やかに免疫が
成立することが明らかになった。
【0055】実施例2(ポリクローナル抗体/ヒラメ) 〈魚卵の調製〉 後述の表4の卵番号15〜18のヒラメ卵(採集直後に
10重量%濃度のホルマリン水溶液で固定し、保存した
もの)を各50個の割合で混合したものを(以下、ヒラ
メ卵という)を免疫に使用した。また免疫組織染色に
は、免疫で使用したものと同じヒラメ卵を使用した。
【0056】〈免疫工程、マウス抗血清の調製〉 マウス抗血清は、BALB/cマウス1,2,3(いず
れも、4週齢、雌、静岡実験動物協同組合)に、以下の
ように免疫を行うことによって作製した。
【0057】マウス1については、2週間ごとに免疫を
行った。1回目の免疫では、ヒラメ卵懸濁液(200個
/ml、PBS)にコンプリートアジュバント(半井化学
株式会社製)を1ml加え、乳化させた後、皮下に投与し
て免疫を行った。2,3回目は、ヒラメ卵懸濁液(20
0個/ml、PBS)にインコンプリートアジュバント
(半井化学株式会社製)を1ml加え、乳化させた後、皮
下に投与して免疫を行った。
【0058】マウス2,3については、皮下投与に代え
て腹腔内投与を行ったほかは上記に準じて免疫を行っ
た。
【0059】最終免疫から3日後に、マウスの尾静脈よ
り採血を行い、血液を遠心分離することにより免疫血清
を得た。この血清(ポリクローナル抗体)をBPSで4
00倍に希釈した。
【0060】一方、同じ系統の正常マウスから採血して
得た血清を、免疫血清と同様にBPSで400倍に希釈
したものを、陰性対照血清とした。
【0061】〈使用試薬、免疫組織染色法の操作手順〉 実施例1と同様の条件を採用した。
【0062】実施例3(ポリクローナル抗体/クロダ
イ) 実施例1に準じて、クロダイ卵に対するポリクローナル
抗体を得た。ただし、マウスに代えてラットを使用し、
後述の表4の卵番号12および13のクロダイ卵(採取
直後に10重量%濃度のホルマリン水溶液で固定し、保
存したもの)の卵膜を皮下投与して免疫した。
【0063】最終免疫から3日後に、ラットの尾静脈よ
り採血を行い、血液を遠心分離することにより免疫血清
を得た。この血清(ポリクローナル抗体)をBPSで2
00倍に希釈した。
【0064】〈条件および結果〉 マウスまたはラット抗血清(ポリクローナル抗体)と各
種の卵との反応性を表3に示す(反応に使用した卵と卵
番号については、後述の表4を参照)。表3中、+は茶
色に染色、−は茶色の染色がほぼまたは全く認められな
いことを意味する。
【0065】
【表3】 抗血清と各種の卵との反応性 ヒラメ卵に対するポリクローナル クロダイ卵に対する 反応に使用し 抗体 ポリクローナル抗体 た卵とその卵 ヒラメ卵皮下投与 ヒラメ卵腹腔内投 クロダイ卵膜皮下投 番号 マウス1の抗血清 与マウス2,3の 与ラットの抗血清 (400倍希釈) 抗血清(400倍希釈) (200倍希釈) マダイ 1 − − − − 2 − − − − 3 − − − − 4 − − − − 5 − − − − 6 − − − − 7 − − − − 8 − − − − クロダイ 9 − − − + 10 − − − + 11 − − − + 12 − − − + 13 − − − + ヘダイ 14 − − − − ヒラメ 15 + + + − 16 + + + − 17 + + + − 18 + + + − (注)ヒラメ卵腹腔内投与マウスの抗血清の欄中、左はマウス2、右はマウス3 の抗血清。
【0066】実施例4〜5(モノクローナル抗体) 〈ミエローマの調製〉 アミノプテリン抵抗性への変異を防ぐため、10μg/ml
の8−アザグアニンを含む培地中で培養したミエローマ
を使用した。
【0067】10%FCSを含むRPMI 1640 培地で培養
し、対数増殖期の細胞に培地を加えた。遠心分離(10
00rpm 、10分間)後、沈澱部分の細胞をほぐす操作
を2回繰り返し、必要量のRPMI 1640 培地を加えた。
【0068】〈脾臓細胞の調製〉 [マダイ] BALB/cマウス(4週齢、雌)の免疫を以下のよう
にして行った。まず1回目の免疫では、福井後期卵(マ
ダイ)懸濁液(200個/ml、PBS)にコンプリート
アジュバント(半井化学株式会社製)を1ml加え、乳化
させた後、皮下に投与して免疫を行った。2,3回目
は、宮津前期卵(マダイ)懸濁液(200個/ml、BP
S)にインコンプリートアジュバント(半井化学株式会
社製)を1ml加え、乳化させた後、皮下に投与して免疫
を行った。最終免疫から3日後に、マウスの尾静脈より
採血を行い、血液を遠心分離することにより免疫血清を
得た。この血清をPBSで希釈し、免疫組織染色法によ
って抗体価を調べた。抗体価の高いマウスを解剖して脾
臓を取り出した。取り出した脾臓は、シリンジのゴム先
ですりつぶした後、滅菌したメッシュを通した。次に培
地を加え、遠心分離(1600rpm 、6分間)すること
により洗浄した。上清を捨て、沈澱部分の細胞をほぐし
た。2回同じ操作を繰り返し、必要量の培地を加えた。
【0069】また、フィーダーセル用にはBALB/c
マウス(8週齢、雌)の脾臓を使用した。正常マウスの
脾臓を取り出し、免疫したマウスの脾臓と同様に洗浄
し、さらに1×106 個/mlとなるように培地に加え
た。
【0070】[ヒラメ] 実施例2で述べた卵番号15〜18のヒラメ卵の混合物
を用い、1回目の免疫では、ヒラメ卵懸濁液(200個
/ml、PBS)にコンプリートアジュバント(半井化学
株式会社製)を1ml加え、乳化させた後、皮下に投与し
て免疫を行った。2,3回目は、ヒラメ卵懸濁液(20
0個/ml、BPS)にインコンプリートアジュバント
(半井化学株式会社製)を1ml加え、乳化させた後、皮
下に投与して免疫を行った。他の操作は上記マダイの場
合と同様にして行った。
【0071】〈必要品〉 ・器具類:解剖用具、滅菌メッシュ、シャーレ、50ml
遠心チューブ、 2.5mlシリンジ、血球測定板、96ウェ
ルマイクロプレート、マイクロピペット、10mlおよび
1mlピペット、ウォーターバス、15mlおよび250ml
培養フラスコ。 ・試薬類:RPMI 1640 (GIBCO) 、FOETAL BOVINE SERUM
(GIBCO) 、ストレプトマイシン、ペニシリン、PEG 4000
(GIBCO)、HAT Supplement 100X (GIBCO) 。
【0072】〈細胞融合〉 1. RPMI 1640 培地を遠心管に入れたものとPEG 4000を
37℃で温浴した。 2. 洗浄した脾細胞を計測し、上記の培地10mlを加え
た。 3. 洗浄したミエローマを計測し、上記の培地10mlを
加えた。 4. 脾細胞とミエローマの細胞数比が10:1になるよ
うに調製し、充分混和後、培地を加え、遠心分離を行っ
た。 5. 遠心後、上清を完全に取り除き、細胞をほぐした
後、上記の PEG 4000 1mlを1分間かけて滴下した。遠
心管を軽く振り、ピペットの先で細胞の塊をほぐすよう
に撹拌しながら添加した。 6. さらに、37℃に温めておいた培地1mlを1分間か
けて滴下した。遠心管を軽く振り、ピペットの先で細胞
の塊をほぐすように撹拌しながら添加し、同じ操作を2
回繰り返した。 7. 37℃に温めておいた培地8mlを3分間かけて滴下
した。遠心管を軽く振り、ピペットの先で細胞の塊をほ
ぐすように撹拌しながら添加し、PEG 4000を取り除くた
めに遠心した(1000rpm 、10分間)。 8. 上清を完全に取り除き、細胞をほぐして37℃に温
めておいた培地24mlを加え、0.1ml/wellになるように
96ウェルプレート1枚のうち内側の60穴を使用し
た。 9. 乾燥を防ぐために滅菌蒸留水をプレートのまわりの
36穴に入れ、CO2 インキュベーター(5%CO2
37℃)で培養した。 10. 24時間後HAT培地を加え、培養を続けた。3日
ごとに上清を取り除き、新しいHAT培地を加え培養を
続け、ハイブリドーマの増殖を確認した後、徐々に10
%FCSを含むRPMI 1640 培地を添加し、培養した。
【0073】〈スクリーニング、クローニング〉 1. 増殖してきたハイブリドーマの培養上清を採取し、
先に述べた免疫組織染色法によって抗体の有無を確認し
た。 2. 目的の抗体を産生しているウェルの融合細胞をいく
つかのウェルに分け培養し、細胞数を増加させた。 3. ハイブリドーマを計測し、限界希釈法にて10個/m
lになるように稀釈した。 4. 希釈懸濁液を1個/wellになるように96ウェルプ
レートに 0.1mlずつ注入した。 5. 乾燥を防ぐために滅菌蒸留水をまわりのウェルに入
れ、CO2 インキュベーター(5%CO2 、37℃)で
培養した。 6. 増殖してきたハイブリドーマの上清を採取し、免疫
組織染色法によって抗体の有無を確認し、目的の抗体を
産生している融合細胞を培養フラスコに移し培養を続け
た。
【0074】〈結果と考察〉 マダイの場合は、細胞融合後、8日目に240ウェル中
9ウェルにハイブリドーマが見られた。さらに4日後に
は、前の9ウェルとは別に33ウェルにハイブリドーマ
が見られたので、免疫組織染色法によりこれら42株の
反応を確かめた。そのうち陽性反応が見られた6株をク
ローニングのために培養を続けた。
【0075】ヒラメの場合は、細胞融合後、8日目に2
40ウェル中7ウェルにハイブリドーマが見られた。さ
らに4日後には、前の7ウェルとは別に25ウェルにハ
イブリドーマが見られたので、免疫組織染色法によりこ
れら32株の反応を確かめた。そのうち陽性反応が見ら
れた4株をクローニングのために培養を続けた。
【0076】マダイの場合は、クローニングの後、大量
培養をした結果、陽性反応の見られた3株を採取するこ
とができた。増殖した細胞浮遊液を遠心し(1000rp
m 、10分間)、上清を用いて再度免疫組織染色法によ
って抗体の有無を確認した。免疫には福井後期卵と宮津
前期卵を用いたが、これ以外のマダイ卵にも反応が見ら
れたので、マダイに特異的な抗体、つまり抗マダイ卵モ
ノクローナル抗体(MT−1、MT−2、MT−3と命
名)が作製されたことがわかる。
【0077】ヒラメの場合は、クローニングの後、大量
培養をした結果、陽性反応の見られた2株を採取するこ
とができた。増殖した細胞浮遊液を遠心し(1000rp
m 、10分間)、上清を用いて再度免疫組織染色法によ
って抗体の有無を確認した。免疫には表4の卵番号15
〜18の卵を用い、これら全てのヒラメ卵に反応が見ら
れたので、ヒラメに特異的な抗体、つまり抗ヒラメ卵モ
ノクローナル抗体(MH−1、MH−2と命名)が作製
されたことがわかる。
【0078】採取した融合細胞は、細胞凍結用保存液を
用いて−80℃で保存した。また細胞は分注し、−20
℃で保存した。
【0079】免疫組織染色法に使用した卵を表4に、免
疫組織染色法によるモノクローナル抗体の反応性を表5
にそれぞれ示す。表4の系統の項中、「天然」とあるの
は採卵場所近海で採集し水槽飼育した親魚、マダイの欄
に「近大」とあるのは成長の早い個体を選抜交配した親
魚である。表4の場所の項中、Aは株式会社関西総合環
境センター(宮津市)、Bは福井県栽培漁業センター
(小浜市)、Cは京都府栽培漁業センター(宮津市)、
Dは九州大学農学部(福岡市)、Eは大阪府栽培漁業セ
ンター(多奈川町)、Fは日本栽培漁業協会(宮津
市)、Gは近大水研大島実験場(和歌山、串本)であ
る。
【0080】
【表4】 免疫組織染色法に使用した卵 魚種名/学名 系統 発生段階 卵の番号 場所 採取年月日 マダイ/ 近大 初期 1 A 1995.04.20 Pagrus major 近大 後期 2 A 1995.04.21 近大・天然混合 初期 3 B 1995.06.02 近大・天然混合 後期 4 B 1995.06.02 天然(5才) 初期 5 C 1996.05.31 天然(9才) 初期 6 C 1996.05.31 天然 初期 7 D 1996.06.06 近大・天然 初期・後期 8 B 1997.05.21 混合 混合 クロダイ/ 天然 初期 9 E 1995.05.11 Acanthopagrus 天然 後期 10 E 1995.05.19 schlegeli 天然 初期 11 D 1996.06.06 天然 初期(14hr) 12 E 1997.05.19 天然 後期(48hr) 13 E 1997.05.19 ヘダイ/ 天然 後期 14 D 1996.03. Sparus sarba 03-05 ヒラメ/ 天然 初期 15 F 1995.04.20 Paralichthys 天然 後期 16 F 1996.05.21 olivaceus 天然 後期 17 G 1997.01.15 天然 初期・後期混合 18 F 1997.04.23
【0081】
【表5】 免疫染色法によるモノクローナル抗体の反応性 反応に使用し 抗マダイ卵 抗ヒラメ卵 た卵とその卵 モノクローナル抗体 モノクローナル抗体 番号 MT-1 MT-2 MT-3 MH-1 MH-2 マダイ 1 + + + − − 2 + + + − − 3 + + + − − 4 + + + − − 5 + + + − − 6 + + + − − 7 + + + − − 8 + + + − − クロダイ 9 − − − − − 10 − − − − − 11 − − − − − 12 − − − − − 13 − − − − − ヘダイ 14 − − − − − ヒラメ 15 − − − + + 16 − − − + + 17 − − − + + 18 − − − + +
【0082】表5から、モノクローナル抗体MT−1、
MT−2、MT−3は、マダイにのみ特異的に反応し、
マダイに近縁のものの例としてあげたクロダイやヘダイ
には反応せず、マダイとは遠縁のものの例としてあげた
ヒラメにも反応しないことが確認された。またモノクロ
ーナル抗体MH−1、MH−2は、ヒラメにのみ特異的
に反応し、マダイ、クロダイ、ヘダイには反応しないこ
とが確認された。
【0083】実施例6〜7 スクリーニング、クローニング工程における抗体の有無
を、先に述べた免疫組織染色法に代えて下記の蛍光抗体
法により行ったほかは実施例4〜5を繰り返した。蛍光
顕微鏡による検鏡の結果は、上記の表5の結果とよく一
致していた。
【0084】上記における蛍光抗体法の操作手順は次の
通りである。 1. ホルマリン固定された卵を蒸留水で洗浄し、約30
個を96ウェルプレートに取り、余分の水分を取り除い
た後、PBS 100μl を加え、5分間放置した。 2. PBSを取り除いた後、上述のハイブリドーマの上
清、またはRPMI 1640 培地で1/50に希釈した血清1
00μl を加え、室温で2時間インキュベートした。 3. 上記の溶液を取り除いた後、PBS 100μl を
加え、これをマイクロピペットで吸引除去した。続いて
PBS 100μl を加え、これをマイクロピペットで
吸引除去した。 4. 上記洗浄操作後、PBSで1/40に希釈したフル
オレッセインイソチオシアネート(FITC)ゴートア
ンチマウス(GAM)IgG希釈液100μl を加え、
室温で2時間インキュベートした。 5. 上記と同様にしてPBSで洗浄後、蛍光顕微鏡にて
検鏡した(UV励起、100倍で検鏡)。検鏡に際して
は、できるだけ多くの検体を見て判断し、ラベリングさ
れている検体の割合、ラベリングの強弱を調べた。
【0085】実施例8 1997年5月7日に野外(若狭湾沿岸部)でプランク
トンネットを用いて採集した魚卵をホルマリン固定し、
採集した卵の種属名と卵径および油球径を正確に計測し
た。
【0086】これらの卵につき、先に述べた抗マダイ卵
モノクローナル抗体MT−1を用いて反応性を確認し
た。後述の表6および表7に示したように、+の卵の染
色され、−の卵は染色されなかった。表6および表7に
基き、採集卵の卵径と油球径との関係および染色状態を
図1に示した。図1中、黒丸は染色された卵、他の符号
は染色されなかった卵である。なお図1には、カタクチ
イワシについては図示していない。
【0087】この結果から、この時期に、この地区で採
集される油球1個で卵径0.93〜0.98mm、油球径0.22〜0.
28mmの卵(タイプ−Aの卵)は、マダイ卵であると言う
ことができる。このことは、染色に供しなかった魚卵を
育成して、孵化仔魚の形態学的特徴を観察したときに、
タイプ−Aの卵が全てマダイであることが確認され、か
つ他のタイプに属する魚卵はマダイでないことが確認さ
れたことにより裏付けられる。
【0088】
【表6】 卵番号 染色反応 種名・卵型 卵径(mm) 油球径(mm) 油球数 1 + タイプ−A 0.93 0.27 1 2 + タイプ−A 0.93 0.23 1 3 + タイプ−A 0.94 0.28 1 4 + タイプ−A 0.95 0.22 1 5 + タイプ−A 0.95 0.24 1 6 + タイプ−A 0.96 0.26 1 7 + タイプ−A 0.96 0.25 1 8 + タイプ−A 0.97 0.23 1 9 + タイプ−A 0.97 0.24 1 10 + タイプ−A 0.98 0.22 1 11 + タイプ−A 0.98 0.26 1 12 + タイプ−A 0.98 0.25 1
【0089】
【表7】 卵番号 染色反応 種名・卵型 卵径(mm) 油球径(mm) 油球数 13 − カタクチイワシ 未計測 未計測 0 14 − ネズッポ科 0.79 − 0 15 − タイプ−B 0.81 0.21 1 16 − タイプ−B 0.84 0.21 1 17 − タイプ−C 0.89 0.16 1 18 − タイプ−C 0.90 0.22 1 19 − タイプ−C 0.90 0.19 1 20 − タイプ−C 0.92 0.20 1 21 − タイプ−C 0.92 0.21 1 22 − タイプ−C 0.93 0.17 1 23 − タイプ−C 0.95 0.18 1 24 − タイプ−C 0.97 0.21 1 25 − タイプ−D 0.81 0.38 1 26 − タイプ−D 0.92 0.32 1 27 − タイプ−E 0.94 0.41 1 28 − タイプ−E 0.94 0.38 1 29 − タイプ−E 0.97 0.39 1 30 − タイプ−F 1.21 0.29 1
【0090】
【発明の効果】本発明の特定のモノまたはポリクローナ
ル抗体を用いることにより、海洋性分離浮性魚卵のうち
特定の魚卵(マダイ、クロダイ、ヒラメの卵)の種を迅
速かつ正確に判定することができる。これらの特定の
ノまたはポリクローナル抗体を用いた場合には、ホルマ
リン固定した魚卵試料でも種の判別が可能である。操作
手順さえマスターすれば、その判定には個人差がなく、
誤認を生ずるおそれもない。特に免疫組織染色法により
判定を行うときは、経時的変化のない比較対照用の標本
を作製しておくことができるので、それと比較対照して
誤りのない判定を行うことができる。
【0091】よって本発明によれば、従来困難であった
海洋性分離浮性魚卵のうち特定の魚卵の種の判定を行う
ことができ、魚類の生態系の把握、海洋生物資源の分布
や量の把握を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例8における採集卵の卵径と油球径との関
係および染色状態を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI //(C12P 21/08 C12R 1:91) (72)発明者 大西 庸介 滋賀県大津市下阪本1丁目9−1 (72)発明者 渡辺 雄二 大阪府四條畷市田原台7−2−8−102 (56)参考文献 J.Biol.Chem.,1987,V ol.262,No.35,p.17149− 117155 J.Biol.Chem.,1988,V ol.263,No.34,p.18269− 18276 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 A23L 1/31 - 1/333 A01K 61/00 C07K 16/18 G01N 33/53 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS) WPI(DIALOG)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】海水中に個々の卵に分離して浮遊している
    浮性卵であるマダイ卵またはヒラメ卵のみを完全卵の形
    態において認識する抗マダイ卵モノクローナル抗体また
    は抗ヒラメ卵モノクローナル抗体
  2. 【請求項2】海水中に個々の卵に分離して浮遊している
    浮性卵であるマダイ卵、クロダイ卵またはヒラメ卵のみ
    を完全卵の形態において認識する抗マダイ卵ポリクロー
    ナル抗体、抗クロダイ卵ポリクローナル抗体または抗ヒ
    ラメ卵ポリクローナル抗体
  3. 【請求項3】海水中に個々の卵に分離して浮遊している
    浮性卵であるマダイ卵またはヒラメ卵のみを完全卵の形
    態において認識し、他の種の魚卵を完全卵の形態におい
    て認識しない抗マダイ卵モノクローナル抗体または抗ヒ
    ラメ卵モノクローナル抗体を用いて、完全卵の形態にあ
    る検体海洋性分離浮性魚卵がマダイ卵またはヒラメ卵で
    あるかどうかを判定することを特徴とする魚卵の種の判
    定方法。
  4. 【請求項4】海水中に個々の卵に分離して浮遊している
    浮性卵であるマダイ卵またはヒラメ卵のみを完全卵の形
    態において認識し、他の種の魚卵を完全卵の形態におい
    て認識しない抗マダイ卵ポリクローナル抗体、抗クロダ
    イ卵ポリクローナル抗体または抗ヒラメ卵ポリクローナ
    ル抗体を用いて、完全卵の形態にある検体海洋性分離浮
    性魚卵がマダイ卵、クロダイ卵またはヒラメ卵であるか
    どうかを判定することを特徴とする魚卵の種の判定方
    法。
  5. 【請求項5】完全卵の形態にある検体魚卵に対する抗マ
    ダイ卵または抗ヒラメ卵モノクローナル抗体の反応性
    を、免疫組織染色法または蛍光抗体法に従って確認する
    ことを特徴とする請求項記載の判定方法。
  6. 【請求項6】完全卵の形態にある検体魚卵に対する抗マ
    ダイ卵、抗クロダイ卵または抗ヒラメ卵ポリクローナル
    抗体の反応性を、免疫組織染色法または蛍光抗体法に従
    って確認することを特徴とする請求項記載の判定方
    法。
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Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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J.Biol.Chem.,1987,Vol.262,No.35,p.17149−117155
J.Biol.Chem.,1988,Vol.263,No.34,p.18269−18276

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