JP3168953B2 - 電気角検出装置およびその設計方法 - Google Patents

電気角検出装置およびその設計方法

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JP3168953B2
JP3168953B2 JP24198097A JP24198097A JP3168953B2 JP 3168953 B2 JP3168953 B2 JP 3168953B2 JP 24198097 A JP24198097 A JP 24198097A JP 24198097 A JP24198097 A JP 24198097A JP 3168953 B2 JP3168953 B2 JP 3168953B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、同期モータにおけ
る電気角を検出する検出装置およびその設計方法に関
し、詳しくは回転子の回転位置の検出に専用のセンサを
用いない、いわゆるセンサレスで電気角を検出する技術
に関する。
【0002】
【従来の技術】多相交流を巻線に流し、該巻線による磁
界と永久磁石による磁界との相互作用により回転子を回
転させる同期モータで、所望の回転トルクを得るために
は、回転子の位置、即ち電気角に応じて巻線に流す多相
交流を制御する必要がある。従来、センサレスで回転子
の電気角を検出する方法としては、巻線間に高周波電圧
を加え、巻線間の電圧波形から回転子電気角を検出する
装置が提案されている。これは、永久磁石を用いた同期
モータの場合、回転子の回転により巻線間に逆起電力が
生じることを利用したものである。一方、この装置は、
回転子が停止中や低回転中には、上記起電力は生じたと
しても非常に微少であるため、精度よく電気角を検出す
ることはできなかった。
【0003】このような課題に鑑み、出願人は、回転子
が停止中または低回転中においても、精度良く回転子の
電気角を検出する装置を提案している(特開平7−17
7788)。これは、モータの巻線間に電圧を印加し、
該印加された電圧に応じて流れる電流の挙動を検出する
ことにより、電気角を検出するものである。
【0004】具体的に、電気角を検出する装置の一例を
示せば次の通りである。回転子角度に応じて磁気回路中
の磁気抵抗が変化する、いわゆる突極型の永久磁石型モ
ータの場合、回転子の電気角によって巻線のインダクタ
ンスが変化し、巻線に電圧を印加した場合の電流の挙動
が変化する。例えば、図6に示す通り、インダクタンス
が大きい程、電圧印加後、所定時間経過した時点での電
流値は小さくなる。両者の間には、理論的に求められる
関係が存在する。本出願人が提案していた上記電気角検
出装置は、かかる性質に着眼してなされたものであり、
インダクタンスと電気角との関係を予めテーブルとして
記憶しておき、検出された電流の挙動から算出されたイ
ンダクタンスに基づいて該テーブルを参照することによ
って電気角を求めるものである。上記検出装置において
電気角の検出を精度良く行うためには、印加した電圧と
該電圧に応じて流れる電流の挙動との関係を正確に把握
する必要がある。
【0005】一方、同期モータの各巻線に電圧を印加す
る方法としては、各相毎にソース側とシンク側とを一組
にして設けられたスイッチング素子による駆動回路、い
わゆるインバータのスイッチングを制御して擬似的な多
相交流を印加する方法が採られる。インバータでは、各
相のソース側とシンク側のスイッチング素子が同時にオ
ンとなり回路が短絡するのを回避するため、通常、双方
のスイッチング素子がオフとなる状態を挟んでスイッチ
ングを行っている。従って、あるタイミングであるスイ
ッチング素子をオンにする制御信号をインバータに出力
した場合、実際に該スイッチング素子がオンになるまで
には、いわゆるデッドタイムと呼ばれる時間遅れが生じ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記デッドタ
イムが生じている場合には、インバータに出力した制御
信号からモータ巻線にかかる電圧を正確に把握すること
が困難である。この結果、コイル巻線に印加した電圧に
応じて流れる電流の挙動に基づいてインダクタンスを算
出する方法では、インダクタンスを正確に算出すること
ができず、電気角の検出に誤差を生じていた。電気角の
検出誤差は、モータトルクおよび効率の低下を招き、ま
た不規則なトルク変動や振動を生じる等の弊害を生じる
おそれもあった。
【0007】通常、インバータを用いた種々の機器にお
いては、デッドタイムによる影響を抑制して所望のタイ
ミングで電圧がモータ巻線に印加されるように、デッド
タイム分だけインバータへの出力信号を時間的に早め
る、いわゆるデッドタイム補正が採られている。また、
上記電気角検出装置においては、デッドタイムがない場
合に印加されるべき電圧に対して、デッドタイムを考慮
した補正を加えることにより現実にモータ巻線に印加さ
れている電圧を求める補正を採ることも考えられてい
た。しかし、デッドタイムはスイッチング素子に応じて
バラツキがあるため、これらの補正によりその影響を除
去しようとすれば、インバータ毎に個別の補正が必要と
なり、該補正を行うことは現実的には非常に困難であっ
た。更に、デッドタイムはインバータの温度や経年変化
等によっても変化するため、これらの補正によりデッド
タイムの影響を除去する方法では、電気角の検出誤差を
実用的な範囲に抑えることが困難であった。
【0008】本発明は上記課題を解決するためになさ
れ、電流の挙動に基づいて電気角を検出する電気角検出
装置において、上記デッドタイムの影響を受けずに電気
角を検出できる技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では
次の構成を採った。本発明の第1の電気角検出装置は、
各相毎にソース側とシンク側とを一組として設けられた
スイッチング素子のスイッチングにより生成された多相
交流を巻線に流し、該巻線による磁界と永久磁石による
磁界との相互作用により回転子を回転させる同期モータ
の電気角を検出する電気角検出装置であって、前記スイ
ッチング素子のスイッチングを制御する制御信号を出力
するスイッチング素子制御手段と、該スイッチング素子
制御手段による制御信号の出力に応じて、各相のソース
側のスイッチング素子とシンク側のスイッチング素子の
少なくとも一方がオフである条件下で該スイッチング素
子をスイッチングするスイッチング素子駆動手段と、該
印加した電圧に応じて巻線の所定の相に流れる電流の挙
動を、2回のタイミングで検出する電流検出手段と、前
記スイッチング素子駆動手段によるスイッチングがソー
ス側がオンでシンク側がオフである状態とソース側がオ
フでシンク側がオンである状態との間でスイッチングが
瞬時になされた場合に検出されるべき理想的な電流の挙
動を、前記2回のタイミングで検出された電流の挙動の
相互間に存在する所定の関係に基づいて算出する理想電
流算出手段と、該理想電流算出手段により算出された電
流の挙動に基づいて、前記モータの電気角を演算する電
気角演算手段とを備えることを備えることを要旨とす
る。
【0010】ここで、スイッチングがソース側がオンで
シンク側がオフである状態とソース側がオフでシンク側
がオンである状態との間でスイッチングが瞬時になされ
た場合とは、ソース側がオンでシンク側がオフである第
1の状態からソース側がオフでシンク側がオンである第
2の状態へのスイッチングおよび第2の状態から第1の
状態へのスイッチングがそれぞれ瞬時になされた理想的
な場合を意味する。また、瞬時とは文字通りスイッチン
グに要する時間が値0であることを意味する。上記スイ
ッチング素子駆動手段はスイッチングの遅れ等を考慮し
て前記第1の状態と第2の状態の間にソース側、シンク
側の双方がオフとなる第3の状態を挟んでスイッチング
を行っているが、スイッチングが瞬時になされた理想的
な場合には、かかる第3の状態を挟まずにスイッチング
がなされることになる。
【0011】かかる構成の電気角検出装置は、モータの
コイル巻線に印加した電圧に応じて巻線の所定の挙動を
2回のタイミングで検出する。このように検出された電
流の挙動の相互間および理想的な電流の挙動との間に
は、一般に所定の関係が成立する。上記構成による電気
角検出装置における理想電流算出手段は、かかる関係に
基づき、いわゆるデッドタイムなしでスイッチングがな
された場合の理想的な電流の挙動を算出することができ
る。従って、上記構成の電気角検出装置によれば、いわ
ゆるデッドタイムの影響を除去することができ、電気角
を精度よく検出することができる。
【0012】2回のタイミングで検出された上記電流の
挙動には、理想的な電流の挙動に対する誤差が含まれて
いる。この誤差は、スイッチング素子のバラツキおよび
その温度や経年変化等に応じて変化するが、検出された
電流の挙動に存在する所定の関係は、一般にこれらの影
響を受けないものである。従って、上記構成の電気角検
出装置によれば、スイッチング素子のバラツキおよびそ
の温度や経年変化等の影響を受けることなく、いわゆる
デッドタイムの影響を除去することができる。
【0013】なお、電圧の印加は、最初に、所定の相の
電位をプラスとし他の相をマイナスとする順方向電圧を
所定期間印加し、その後所定の相の電位をマイナスとし
他の相をプラスとする逆方向電圧を印加するものとして
もよいし、順方向電圧のみを印加するものとしてもよ
い。また、順方向電圧印加中または逆方向電圧印加中に
それぞれ平均電圧を制御するためのパルスを加えるもの
としてもよい。
【0014】この場合における電流の検出は、順方向電
圧の印加が終了したときおよび逆方向電圧の印加が終了
した時に行うことが望ましいが、この他順方向電圧印加
中および逆方向電圧印加名中にそれぞれ1回行うものと
してもよいし、順方向電圧印加中または逆方向電圧印加
中に2回行うものとしてもよい。また、厳密にこれらの
電圧が印加されている期間内でなくてもよく、電圧印加
が終了した後、電流が減衰していない期間に電流を検出
するものとしてもよい。但し、実質的に電圧が印加され
ておらず、電流の挙動が変化しないような期間内におい
て2回検出しても無意味であることは当然である。
【0015】上記発明においては、電流の挙動を2回の
タイミングで検出するものとしているが、3回以上電流
を検出するものとしてもよい。この場合に、検出された
電流値に応じて、検出精度がよいと思われる2つの検出
結果を電気角の算出に用いるものとすれば、電気角の検
出精度を更に向上することができる。また、3回以上検
出された電流の挙動の中から2つの電流の挙動を1組と
して複数組選択し、各組について電気角を求め、それら
の平均をとるものとしてもよい。
【0016】ここで、上記電気角検出装置において、前
記理想電流算出手段における前記所定の関係は、前記2
回のタイミングにおいてそれぞれ検出された第1の電流
の挙動、第2の電流の挙動が各タイミングにおける理想
的な電流の挙動に対して有する誤差δ1、δ2が、電圧
の印加パターンに応じて前記各検出タイミングについて
それぞれ予め特定される係数と、検出される電流の挙動
がスイッチング素子のスイッチング1回当たりについて
生じる電流の理想的な挙動に対して有する誤差である単
位誤差との積で表される関係であり、前記理想電流算出
手段は、前記第1の電流の挙動と前記第2の電流の挙動
についての四則演算により、前記誤差δ1とδ2とを相
殺することによって前記理想的な電流の挙動を算出する
手段とすることが望ましい。
【0017】一般に、上記誤差δ1および誤差δ2は、
スイッチング素子のスイッチング1回当たりについて生
じる電流の理想的な挙動と検出される電流の挙動との誤
差を単位誤差と呼ぶとすれば、該単位誤差と所定の係数
との積で表すことができる。しかも、この所定の係数
は、コイル巻線に印加する電圧の印加パターンに応じて
予め特定することができる。かかる関係に基づいて、上
記構成の電気角検出装置は、第1の電流の挙動と前記第
2の電流の挙動についての四則演算により、前記誤差δ
1とδ2とを相殺することによって前記理想的な電流の
挙動を算出する。この結果、いわゆるデッドタイムの影
響を除去することができ、電気角を精度よく検出するこ
とができる。また、比較的単純な演算である四則演算に
よりデッドタイムの影響を除去することができるため、
短時間で処理することが可能である。
【0018】また、この場合において、前記電流検出手
段が検出する電流の挙動は、前記所定の相に流れる電流
の電流値であり、前記理想電流算出手段は、第1の検出
タイミングにおいて検出された電流値a1と、第2の検
出タイミングにおいて検出された電流値a2とを用い
て、電圧の印加パターンに応じて予め特定される既知量
である、巻線への電圧の印加を開始すべき制御信号の出
力から第1の検出タイミングまでに、前記所定の相のソ
ース側のスイッチング素子をオンにする回数と、前記所
定の相から他の相へ流れる順方向電流が流れている状態
において前記所定の相以外の相のソース側のスイッチン
グ素子をオフにする回数との総計であるnと、前記制御
信号の出力から第2の検出タイミングまでに前記スイッ
チングが行われる回数の総計であるmと、第1の検出タ
イミングにおける電流の理想値A1に応じて第2の検出
タイミングにおける電流の理想値を与える関数F(A
1)とに基づいて表される m・a1−n・a2=m・A1−n・F(A1) なる方程式またはこれと等価な数式により、第1の検出
タイミングにおける電流の理想値A1を算出する手段で
あり、前記電気角演算手段は、該理想値A1に基づいて
電気角を演算することを要旨とすることもできる。
【0019】かかる構成による電気角検出装置では、電
圧パルスを印加するための所定のスイッチング回数n,
mに応じて定められる上記方程式またはこれと等価な数
式により電流の理想値を算出する。この結果、デッドタ
イムの影響を除去して電気角を精度よく検出することが
できる。また、電流の理想値を与える数式は、上述の通
り、所定のスイッチング回数に応じて定められる比較的
単純なものである。従って、電気角を検出時に印加する
電圧をモータの運転状態等に応じて変化させる必要があ
る場合でも比較的容易にデッドタイムの影響を除去する
ことができる。
【0020】なお、第1の検出タイミングにおける電流
の理想値A1に応じて第2の検出タイミングにおける電
流の理想値を与える関数F(A1)は、電流を検出する
第1および第2のタイミングに応じて、種々定め得るも
のである。例えば、電圧の印加パターンを、最初に所定
期間、所定の相の電位をプラスとし、他の相をマイナス
とする順方向電圧を印加し、その後所定の相の電位をマ
イナスとし、他の相をプラスとする逆方向電圧を印加す
るものとした場合の関数F(A1)は、次の通りであ
る。第1の検出タイミングを順方向電圧印加を終了した
時とし、第2の検出タイミングを逆方向電圧印加を終了
した時とすると、 関数F(A1)=A1−V・t2/L となる。ここで、Vは印加される電圧値であり、t2は
逆方向電圧が印加されている時間であり、Lはコイル巻
線のインダクタンスである。また、第1の検出タイミン
グを順方向電圧の印加中とし、第2の検出タイミングを
順方向電圧の印加を終了した時とすると、 関数F(A1)=A1+V・t2/L となる。
【0021】なお、順方向電圧の印加が開始されてから
第1の検出タイミングまでの間に順方向電圧が印加され
ている時間をt1とすれば、A1=V・t1/Lなる関
係があるから、上記関数F(A1)からV、Lを消去し
た形としてもよい。また、第2の検出タイミングを、そ
こでの電流の理想値が値0となるように選択し、関数F
(A1)=0としてもよい。
【0022】さらに、具体的には、前記スイッチング素
子制御手段は、所定の相を正電位とし他の相を負電位と
する順方向電圧印加状態と、所定の相を負電位とし他の
相を正電位とする逆方向電圧印加状態がそれぞれ時間t
1だけ生じるように前記制御信号を出力する手段であ
り、前記電流検出手段は、所定の相に流れる電流につい
て前記順方向電圧印加状態の前後の変化量△a1を検出
し、前記逆方向電圧印加状態の前後の変化量△a2を検
出する手段であり、前記理想電流算出手段は、電圧の印
加パターンに応じて予め特定される既知量である、電流
の変化量△a1を検出する期間において、前記所定の相
のソース側のスイッチング素子をオンにする回数および
前記所定の相以外の相のソース側のスイッチング素子を
オフにする回数の総計nと、電流の変化量△a2を検出
する期間において、該スイッチングが行われる回数の総
計kとに基づいて表される △A1=(k・△a1−n・△a2)/(k+n) なる数式またはこれと等価な数式により前記順方向電圧
印加状態の前後の電流の変化量の理想値△A1を算出す
る手段であり、前記電気角演算手段は、該電流の変化量
△A1に基づいて電気角を演算するものとすることも可
能である。
【0023】かかる構成からなる電気角検出装置は、上
式またはこれと等価な数式に検出された電流変化量△a
1、△a2を代入することにより、順方向電圧印加状態
の前後の電流の変化量の理想値△A1を算出することが
でき、△A1の値に基づいて電気角を演算することがで
きる。この結果、デッドタイムの影響を除去して電気角
を精度良く検出することができる。また、この構成から
なる電気角検出装置によれば、電流の変化量に基づいて
電気角を検出しているため、初期電流が値0でないシフ
トした状態にあっても、電気角を精度よく検出すること
ができる。
【0024】一方、本発明の電気角検出装置の設計方法
は、同期モータの巻線の各相毎にソース側とシンク側と
を一組として設けられたスイッチング素子のスイッチン
グにより、該モータの巻線の所定の相に電圧を印加し、
該印加した電圧に応じて該所定の相に流れる電流の挙動
を用いて、該同期モータの電気角を検出する電気角検出
装置の設計方法であって、印加した電圧に応じて巻線の
所定の相に流れる電流の挙動を検出する2回のタイミン
グを設定し、各タイミングにおいて検出された電流の挙
動が該タイミングにおける理想的な電流の挙動に対して
有する誤差を、電圧の印加パターンに応じて予め特定さ
れる係数と、検出される電流の挙動がスイッチング素子
のスイッチング1回当たりについて生じる電流の理想的
な挙動に対して有する誤差である単位誤差との積で表す
数式を求め、各タイミングにおける理想的な電流の挙動
の相関を示す数式を求め、上記数式を連立方程式として
解くことにより、前記検出された電流の挙動から理想的
な電流の挙動を算出する理想電流算出式を求め、該理想
電流算出式により算出された電流の挙動を、前記モータ
の電気角の検出に用いられる前記電流の挙動とすること
を要旨とする。
【0025】先に述べた通り、電気角検出装置における
電気角の検出精度を向上するためには、デッドタイムの
影響を除去する必要があるが、この影響は、検出した電
流の挙動に基づく比較的単純な数式により除去すること
ができる。上記設計方法では、デッドタイムの影響がな
い理想的な電流の挙動と実際に検出される電流の挙動と
の間の誤差が、所定の単位誤差の関数で表されることに
鑑み、これらを該単位誤差を用いて表す。また、各検出
タイミング間に存在する相関を示す数式を求める。こう
することにより、各検出タイミングにおける理想値と単
位誤差を未知数とする連立方程式をたてることができる
ため、その理想値を求めることができる。こうして求め
られる理想電流算出式を用いれば、検出された電流の挙
動からデッドタイムの影響を除去可能な電気角検出装置
を設計することができる。なお、上記連立方程式をイン
ダクタンスを未知数として含むものとすることにより、
理想電流算出式を求めるまでなくインダクタンスを直接
求めるものとし、該算出結果を用いて電気角を算出する
ものとしてもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
(1)実施例の構成 以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて説
明する。図1は、本発明の一実施例としての電気角検出
装置を含むモータ制御装置10の概略構成を示すブロッ
ク図、図2は制御対象となっている三相同期モータ40
の概略構成を示す説明図、図3はこの三相同期モータ4
0の固定子30と回転子50との関係を示す端面図であ
る。
【0027】まず、図2を用いて、三相同期モータ40
の全体構造について説明する。この三相同期モータ40
は、固定子30と回転子50とこれらを収納するケース
60とからなる。回転子50は、外周に永久磁石51な
いし54が貼付されており、その軸中心に設けられた回
転軸55を、ケース60に設けられた軸受61,62に
より回転自在に軸支している。
【0028】回転子50は、無方向性電磁鋼板を打ち抜
いて成形した板状回転子57を複数枚積層したものであ
る。この板状回転子57は、図3に示すように、直交す
る位置に4箇所の突極71ないし74を備える。板状回
転子57を積層した後、回転軸55を圧入し、積層した
板状回転子57を仮止めする。この電磁鋼板を素材とす
る板状回転子57は、その表面に絶縁層と接着層が形成
されており、積層後所定温度に加熱され、接着層が溶融
することにより、固定される。
【0029】こうして回転子50を形成した後、回転子
50の外周面であって、突極71ないし74の中間位置
に、永久磁石51ないし54を軸方向に亘って貼付す
る。永久磁石51ないし54は、回転子50の半径方向
に磁化されており、その極性は隣り合う磁石同士が互い
に異なる磁極となっている。例えば、永久磁石51は外
周面がN極であり、その隣の永久磁石52は外周面がS
極となっている。この永久磁石51,52は、回転子5
0を固定子30に組み付けた状態では、板状回転子57
および板状固定子20を貫く磁路Mdを形成する(図3
破線参照)。
【0030】固定子30を構成する板状固定子20は、
板状回転子57と同じく無方向性電磁鋼板の薄板を打ち
抜くことで形成されており、図3に示すように、計12
個のティース22を備える。ティース22間に形成され
たスロット24には、固定子30に回転磁界を発生させ
るコイル32が巻回されている。尚、板状固定子20の
外縁部には、固定用のボルト34を通すボルト孔が設け
られているが、図3では図示を省略してある。
【0031】固定子30は、板状の板状固定子20を積
層し互いに押圧した状態として、接着層を加熱・溶融す
ることで一応固定される。この状態で、コイル32をテ
ィース22に巻回して固定子30を完成した後、これを
ケース60に組み付け、ボルト孔に固定用のボルト34
を通し、これを締め付けて全体を固定する。更に回転子
50をケース60の軸受61,62により回転自在に組
み付けることにより、この三相同期モータ40は完成す
る。
【0032】固定子30のコイル32に回転磁界を発生
するよう励磁電流を流すと、図3に示すように、隣接す
る突極および板状回転子57,板状固定子20を貫く磁
路Mqが形成される。尚、上述した永久磁石51により
形成される磁束が回転子50を径方向に貫く軸をd軸と
呼び、固定子30のコイル32により形成される磁束が
回転子50を径方向に貫く軸をq軸と呼ぶ。また、d軸
が電気的にq軸に対してなす角を電気角と呼ぶ。図4に
本実施例の三相同期モータの等価回路を示す。図4に示
す通り、電気角は等価回路におけるU相コイルと磁極の
角度に相当する。
【0033】次に、図1に従ってモータ制御装置10の
構成について説明する。モータ制御装置10は、外部か
らのトルク指令を受けて三相同期モータ40の三相
(U,V,W相)のモータ電流を制御する制御用ECU
100、三相同期モータ40のU相電流Au、V相電流
Av、W相電流Awを検出する電流センサ102、10
3、104、検出された電流の高周波ノイズを除去する
フィルタ106、107、108、検出した電流値をデ
ィジタルデータに変換する3個のアナログディジタル変
換器(ADC)112、113、114から構成されて
いる。
【0034】制御用ECU100の内部には、図示する
ように、算術論理演算を行うマイクロプロセッサ(CP
U)120、このCPU120が行う処理や必要なデー
タを予め記憶したROM122、処理に必要なデータ等
を一時的に読み書きするRAM124、計時を行うクロ
ック126等が設けられており、バスにより相互に接続
されている。このバスには、入力ポート116や出力ポ
ート118も接続されており、CPU120は、これら
のポート116,118を介して、三相同期モータ40
のU,V,Wの各相に流れる電流Au,Av,Awを読
み込むことができる。
【0035】また、制御用ECU100には、別途入力
されるトルク指令に基づいて決定されたモータの各相電
流Au,Av,Awが得られるようモータの各コイル間
に電圧を印加する電圧印加部130が、その出力部に設
けられている。CPU120からの制御出力Gu,G
v,Gw,SDが、この電圧印加部130に出力されて
おり、三相同期モータ40の各コイルに印加される電圧
を外部から制御することが可能となっている。電圧印加
部130の詳細な構成を図5に基づいて説明する。
【0036】電圧印加部130は、大きくはトランジス
タインバータ138、ソース側プリドライブ回路13
2、シンク側プリドライブ回路134およびインタフェ
ース部136から構成されている。トランジスタインバ
ータ138においては、U,V,Wの各相ごとに主電源
のソース側およびシンク側に2つのトランジスタが一組
にして接続されており(図5のTu+,Tu−,Tv
+,Tv−,Tw+,Tw−)、各トランジスタにはフ
ライホイールダイオードがそれぞれ設けられている(図
5のDu+,Du−,Dv+,Dv−,Dw+,Dw
−)。ソース側プリドライブ回路132は、トランジス
タインバータ138においてソース側のトランジスタ
(Tu+,Tv+,Tw+)にゲート信号を入力するた
めの回路であり、U,V,Wの各相ごとにトランジスタ
インバータ駆動用電源(+V,−V)のソース側とシン
ク側にそれぞれ接続された2つのトランジスタにより構
成されている。シンク側プリドライブ回路134の構成
も同様である。また、ソース側プリドライブ回路132
およびシンク側プリドライブ回路134には、制御用E
CU100からの制御信号Gu,Gv,Gwを両者に分
配して伝達するインタフェース部136が接続されてい
る。
【0037】インタフェース部136の構成を、U相を
例に説明する。制御用ECU100からの信号線は、デ
ィレイ回路Dly+およびアンドゲートAg+を介して
ソース側プリドライブ回路132に接続されている。ま
た、上記ディレイ回路Dly+に至るまでに分岐され、
インバータInv、ディレイ回路Dly−およびアンド
ゲートAg−を介してシンク側プリドライブ回路134
にも接続されている。なお、上記ディレイ回路Dly
+,Dly−は、入力される電圧がハイからローに変わ
るときには時間遅れなく信号を出力し、ローからハイに
変わる時には所定の時間(以下、デッドタイムと呼ぶ)
だけ遅れて信号を出力する特性を有しているものであ
る。
【0038】上記アンドゲートAg+,Ag−の他方の
入力には、全出力を瞬時にオフとするためのシャットダ
ウン信号(ロー・アクティブな信号である)を伝達する
線も接続されている。シャットダウン信号は、V,W相
に接続される各アンドゲートの一方にも、同様に入力さ
れる。シャットダウン信号(SD)がローである場合に
は、これらのアンドゲートの出力はすべてローとなるた
め、トランジスタインバータ138の全てのゲート信号
がローとなり、モータ40には、一切電圧が印加されな
い状態となる。シャットダウン信号は通常ハイに維持さ
れているため、制御用ECU100から電圧印加部13
0に出力された信号Gu,Gv,Gwに応じて各アンド
ゲートの出力は決まる。以下、シャットダウン信号SD
はハイが出力されているものとして説明を進める。
【0039】インタフェース部136の機能を説明す
る。制御用ECU100が、U相の信号をローからハイ
に切り替えた場合、ソース側プリドライブ回路132の
アンドゲートAg+にはディレイ回路Dly+によりデ
ッドタイム分だけ遅れて信号が出力され、その結果ソー
ス側プリドライブ回路132にデッドタイム分だけ遅れ
てハイの信号が出力される。従って、U相に上記信号が
入力されてからデッドタイム分だけ経過した後に、トラ
ンジスタインバータ138のソース側のトランジスタT
u+はオン状態となる。一方、シンク側プリドライブ回
路134には、上記信号はインバータInvで逆転して
伝達される。つまり、ディレイ回路Dly−にはハイか
らローに切り替わる信号が入力される。ディレイ回路は
先に述べた特性を有しているため、この場合は時間遅れ
なく該信号をアンドゲートAg−に出力する。従って、
シンク側プリドライブ回路134には制御用ECU10
0からの信号入力とほぼ同時にローの信号が出力され、
トランジスタインバータ138のシンク側のトランジス
タTu−はオフ状態となる。
【0040】逆にU相の信号Guをハイからローに切り
替えた場合には、その信号の入力とほぼ同時にトランジ
スタインバータ138のソース側のトランジスタTu+
がオフ状態となり、デッドタイム分だけ遅れてシンク側
のトランジスタTu−がオン状態となる。インタフェー
ス回路136は、上述のように、デッドタイムを設ける
ことにより、トランジスタインバータ138のソース側
トランジスタTu+およびシンク側トランジスタTu−
が同時にオン状態にならないようにしているのである。
V,W相についても同様である。
【0041】以上に示したモータ制御装置10の構成の
内、電流センサ102〜104、フィルタ106〜10
8、ADC112〜114、電圧印加部130および制
御用ECU100が本発明にいう電気角検出装置に相当
する。
【0042】(2)電気角検出の原理 次に、かかる構成の三相同期モータ40およびこれを制
御するモータ制御装置10において、回転子50の電気
角を検出する原理について説明する。図4に示した三相
同期モータ40の等価回路図のU相とVW相間に所定の
電圧E1をステップ関数的に加えた場合、ここに流れる
電流Auは、回路のインダクタンス成分Lにより定まる
過渡応答を示す。電圧E1はU相がプラス状態であり他
の相がマイナス状態となる方向に印加されている(これ
を順方向電圧と呼ぶ)。電圧E1を印加した際の過渡応
答の一例を示したのが、図6のグラフである。なお、回
路のインダクタンスLは、その時の回転子50の電気角
θの関数となっている。即ち、回転子50が回転してい
ない状態(静止状態)にあるとすれば、この回転子50
のd軸が電気的にq軸に対してなす角(電気角)によ
り、回路のインダクタンスLは定まる。本実施例では、
回路のインダクタンスLと電気角について、実測により
得られた関係がテーブル形式でROM122に記憶され
ている。
【0043】図4に示す等価回路において流れる電流
(以下、U相電流と呼ぶ)Au(t1)は、電圧印加
中、即ち図6の区間D1においては次式(1)の応答を
示す。 Au(t1)={1−exp(−R・t1/L)}E1/R … (1) ここで、expは、指数関数を示し、Rは回路のインピ
ーダンスを、t1は電圧印加後の経過時間を示す。ま
た、L/Rをモータの時定数Tmという。
【0044】式(1)によれば、電流の応答は厳密には
曲線状の変化を示すが、本実施例の電圧印加時間は、モ
ータ時定数Tmに比して十分小さいため、本実施例にお
いては、電流変化は図6に示す通り直線で近似して取り
扱うことができる。つまり、t1がモータ時定数Tmよ
りも十分小さいという条件下で上式(1)をテーラー展
開することにより、上式(1)は次式(2)の形で扱う
ことができる。 Au(t1)=E1・t1/L … (2)
【0045】式(1)または式(2)より、電圧印加時
の電流Au(t1)の挙動がインダクタンスLに応じて
変化することが分かる。インダクタンスが小さい場合に
は、図6に示す通り、電圧印加期間終了時点でモータ電
流は電流値Im1まで立ち上がる。これに対し、インダ
クタンスが大きい場合には、図6に示す通り、電流値I
m1よりも小さい電流値Im2までしか立ち上がらな
い。
【0046】本実施例では、かかる特性に鑑み、電圧印
加終了時にモータ巻線に流れている電流を検出する。次
にこの電流値およびその他既知の諸量を式(1)または
式(2)に代入することにより、インダクタンスLを算
出する。前述の通り、ROM122には、テーブル形式
でインダクタンスLと電気角の関係が記憶されているた
め、本実施例の電気角検出装置は、算出されたインダク
タンスLに基づいてこのテーブルを参照することによ
り、電気角を求める。なお、上述の説明では、インダク
タンスの検出を電圧印加終了時の電流値Im1,Im2
に基づいて行うものとしているが、その他電流値Auが
所定の値に達するまでに要する時間を用いるものとして
もよいし、電圧印加中(図6の区間D1)における電流
の変化率を用いるものとしてもよい。なお、上述の関係
式を用いるためには、回路に現実に電圧が印加された時
間および電圧値が既知である必要がある。
【0047】本実施例では、電気角の検出精度を高める
ため、順方向電圧を印加して電流の挙動を検出した後、
その逆方向の電圧、即ちU相をマイナス状態としV,W
相をプラス状態とする電圧(以下、逆方向電圧と呼ぶ)
を印加して電流の挙動を検出している。図7に本実施例
における電圧の印加の様子を示す。
【0048】図7のGu,Gv,Gwは、U,V,W相
について制御用ECU100から電圧印加部130に出
力される信号を表している。また、Gu+はインタフェ
ース部136のアンドゲートAg+の出力、即ちトラン
ジスタインバータ138のU相のソース側トランジスタ
Tu+のゲート信号を表し、Gu−はインタフェース部
136のアンドゲートAg−の出力、即ちトランジスタ
インバータ138のU相のシンク側トランジスタTu−
のゲート信号を表している。同様に、Gv+,Gw+は
V,W相のソース側トランジスタTu+,Tw+のゲー
ト信号を表し、Gv−,Gw−はV,W相のシンク側ト
ランジスタTu−,Tw−のゲート信号を表している。
Vu,Vv,Vwは各トランジスタのスイッチングの結
果生じるU,V,W相の電位を示している。U相電流
は、U相からV,W相に流れる方向を正方向として、モ
ータ40のコイル巻線に流れる電流の様子を示したもの
である。
【0049】最初に、理解の容易のため、先に説明した
デッドタイムがない場合について説明する。これは、図
5においてディレイ回路Dly+,Dly−が存在しな
い場合に該当し、トランジスタインバータ138の各ト
ランジスタは、制御用ECU100からの出力信号G
u,Gv,Gwに合わせて瞬時にオン・オフが切り替わ
る仮想的な場合に相当する。
【0050】制御用ECU100からGuをハイにする
信号が出力されると(図7の領域b)、その瞬間にU相
のソース側トランジスタTu+がオンとなり、シンク側
トランジスタTu−がオフとなるため、図7のVuチャ
ートに示す通り、U相の電位がハイとなる。このとき、
V,W相の電位はローであるため、コイル巻線には順方
向電圧が印加されることになり、図7のU相電流のグラ
フに点線で示した通りU相電流が流れはじめる。図7の
領域cにおいても同様の状態が維持される。
【0051】次に、制御用ECU100からGv,Gw
をハイにする信号が出力されると(図7の領域d,
e)、V,W相のソース側のトランジスタTv+,Tw
+がオンとなる結果、V,W相の電位がハイとなる。従
って、U相との電位差がなくなるが、よく知られている
通り、モータ40のコイル32にはこのとき電流を維持
しようとする、いわゆる誘導起電力が生じるため、U相
電流はそのまま維持される。厳密には、U相電流は徐々
に減衰していくが、領域d,eは非常に短期間であるた
め、電流の減衰量は無視できる。
【0052】Gv,Gwにローの信号が入力されると
(領域f,g)、その瞬間に領域b,cと同様、順方向
電圧が印加された状態となるため、U相電流値は再び上
昇する。その後、Guにローの信号が入力されると(領
域h)、U相の電位が下がり、V,W相との電位差がな
い状態となる。この場合も、領域d,eと同様、誘導起
電力によって、U相電流は維持される。
【0053】次に逆方向電圧を印加した場合について説
明する。領域jにおいて、Gv,Gwにハイの信号が入
力されると、モータ40には逆方向電圧が印加される。
従って、それまで維持されていたU相電流は減少してい
く。但し、電流値が正であるため、U相からV,W相に
電流が流れていることに変わりはない。このとき、U相
のソース側トランジスタTu+はオフとなっており、電
流が流れないため、シンク側トランジスタTu−に並列
に設けられたフライホイールダイオードDu−を経由し
て主電源のシンク側から電流が流れ出す(図5の回路図
参照)。同様にV,W相もソース側のトランジスタTv
+,Tw+に並列に設けられたフライホイールダイオー
ド(Dv+,Dw+)を経由して主電源のソース側に電
流が流れ込む。
【0054】次に、Guにハイの信号が出力されると
(領域l,m)、誘導起電力によりU相電流が維持さ
れ、Guにローの信号が出力されると(領域n,o)U
相電流は再び減少する。そして、Gv,Gwにローの信
号が出力された時点(領域p)で電流値は値0に戻る。
以上がデッドタイムがない場合の電圧および電流の様子
であり、領域hにおいて電流値を測定すれば、電圧が印
加された時間(領域b,c,f,gに相当する時間)お
よび電圧値が既知であるため、先に述べた方法によりモ
ータ40のインダクタンスを算出することができる。
【0055】なお、順方向電圧の印加中にGv,Gwに
ハイの信号を出力しているのは(領域d,e)、コイル
巻線に印加される電圧の平均値を制御するためである。
従って、印加する電圧値および時間に応じて、上記信号
の出力を削除したり、回数を増やしたりしてもよい。
【0056】以上が、本実施例における電気角検出の原
理であり、本出願人が先行技術(特開平7−17778
8)において開示した検出原理と同じものである。デッ
ドタイムの影響がない場合には、上記原理に基づいて電
気角を精度よく検出することができる。次に、本実施例
に特徴的な部分であるデッドタイムの影響を除去する処
理を含めて、電気角を検出する電気角検出装置およびそ
の設計方法について説明する。
【0057】(3)電流値に対するデッドタイムの影響 本実施例における具体的な処理方法を説明する前に、デ
ッドタイムの影響について図7を用いて説明する。デッ
ドタイムがある場合の電流の様子を図7のU相電流のグ
ラフ中に実線で示す。Guにハイの信号が出力されると
(領域b)、U相のシンク側トランジスタTu−はその
瞬間にオフとなるが(図7のGu−)、ソース側トラン
ジスタTu+はすぐにはオンとならず、デッドタイム経
過した後の領域cにおいて、初めてオンとなる(図7の
Gu+)。従って、U相電流も領域cで流れ始める。デ
ッドタイムがない場合に比べて、領域bの分(図7Vu
のハッチング部分)だけ順方向電圧が不足したことにな
る。
【0058】領域dにおいて、Gv,Gwにハイの信号
が出力されると、V,W相のシンク側のトランジスタT
v−、Tw−はその瞬間にオフとなる(図7のGv−,
Gw−)。この結果、U相とV,W相間には主電源に相
当する電圧が印加されないようになるため、U相電流は
先に述べた誘導起電力によって維持される。このとき、
V,W相に流れ込んだ電流はそれぞれソース側トランジ
スタTv+,Tw+に並列に備えられたフライホイール
ダイオードDV+,Dw+を経由して流れるのである。
上位信号の出力からデッドタイム分だけ経過した後、
V,W相のソース側トランジスタTv+,Tw+のゲー
ト信号Gv+,Gw+がハイとなるが(領域e)、引き
続きフライホイールダイオードDV+,Dw+を経由し
て電流が流れる状態には変わりない。また、この状態
は、再び、Gv,Gwにローの信号が出力され(領域
f)、V,W相のソース側のトランジスタTv+,Tw
+のゲート信号Gv+,Gw+がローとなっても変化し
ない。この信号の出力からデッドタイム経過して(領域
g)、V,W相のシンク側のトランジスタTv−、Tw
−がオンになると、U相には再び順方向電圧が印加され
ることになるため、電流値は増加する。つまり、デッド
タイムがない場合に比べて、領域fの分(図7Vv,V
wのハッチング部分)だけ順方向電圧が不足したことに
なる。
【0059】その後、Guにローの信号が出力されると
(領域h)、U相のソース側トランジスタTu+がオフ
となり、誘導起電力によりU相電流が維持される。図7
のU相電流のグラフに示す通り、デッドタイムがない場
合(点線)に比べて、電流値(実線)は低い値となって
いる。
【0060】次に逆方向電圧が印加された場合について
説明する。Gv,Gwにハイの信号が出力されると(領
域j)、図7に示す通り、V,W相のシンク側トランジ
スタGv−,Gw−はその瞬間にオフとなる。この結
果、電流はU相のシンク側トランジスタTu−に並列に
設けられたフライホイールダイオードDu−を経由して
主電源のシンク側から流れ出た電流は、V,W相のソー
ス側トランジスタTv+,Tw+に並列に設けられたフ
ライホイールダイオードDv+,Dw+を経由して主電
源のソース側に流れ込むようになる。従って、V,W相
のソース側トランジスタTv+,Tw+がオンになって
いない状態でも、U相には逆方向電圧が印加された状態
となり、電流値は減少していく。上記信号の出力からデ
ッドタイム分だけ経過した後、V,W相のソース側トラ
ンジスタTv+,Tw+がオンとなっても(領域k)、
この状態に変わりはない。
【0061】その後、Guにハイの信号が出力されると
(領域l)、その瞬間にU相のシンク側トランジスタT
u−がオフとなる。しかし、上述の通り、U相電流は既
にU相のシンク側トランジスタTu−に並列に設けられ
たフライホイールダイオードDu−を経由して流れてい
る。シンク側トランジスタTu−がオフとなってもこの
状態は変わらず、電流は減少し続ける。上記信号の出力
からデッドタイム分だけ経過した後、U相のソース側ト
ランジスタTu+がオンになると(領域m)、U,V,
W相の電位差がなくなるため、誘導起電力によりU相電
流が維持されるようになる。つまり、デッドタイムがな
い場合に比べて領域l(図7Vuのハッチング)の分だ
け順方向電圧が不足したことになる。
【0062】その後、Guにローの信号が出力されると
(領域n)、領域lと同じ状態に戻るため、U相電流は
再び減少する。この状態は、U相のシンク側トランジス
タTu−のゲート信号Gu−がハイとなっても(領域
o)変化しない。なお、領域oにおいてU相電流は負の
値となり、電流はV,W相から流出してU相に流れ込む
ようになる。従って、続いてGv,Gwにローの信号が
出力されると(領域p)、誘導起電力によりU相電流は
維持される。図7のグラフから分かる通り、デッドタイ
ムがない場合と異なり、逆方向電圧の印加が終了した時
点でU相電流値は値0にならない。
【0063】以上に説明した通り、デッドタイムがある
場合には、デッドタイムがない場合と電流の挙動が相違
するため、領域h等において検出された電流値を単純に
用いてインダクタンスひいては電気角を算出したので
は、誤差が含まれることになる。
【0064】(4)本実施例の電気角検出装置の設計方
法 本実施例における電気角検出装置の設計方法として、上
記デッドタイムの影響を除去して電気角を精度良く検出
する電気角検出装置の設計方法について説明する。最初
に、デッドタイムによりU相電流値に生じる誤差につい
て説明する。電圧が印加されている際の電流変化率(図
7におけるU相電流のグラフの傾きに相当する)は、デ
ッドタイムの有無により相違しない。従って、領域bの
終了時点でデッドタイムの有無によりU相電流に生じる
誤差を単位誤差△iとすると、図7のVuまたはVv,
Vw中に示したハッチング部分1カ所につき、△iずつ
電流値の誤差が増大していくことが分かる。図7の場合
は、領域fの終了時点でデッドタイムがある場合の電流
値はデッドタイムがない場合の電流値に比べて2・△i
だけ低くなり、領域lの終了時点では、3・△iだけ低
くなる。また、単位誤差△iは、デッドタイムをdtと
すると、先に述べた式(2)を用いて、△i=E1・d
t/Lと表すことができる。E1はコイル巻線に印加さ
れる電圧値、Lはコイル巻線のインダクタンスを表して
いる。
【0065】次に電流値を検出する2回のタイミングを
設定する。本実施例では、後のインダクタンス算出に都
合のよいタイミングを選択するものとし、第1の検出タ
イミングとして領域hにおいて電流値を検出する。第2
の検出タイミングとして逆電圧の印加を終了したタイミ
ングを選択し、領域pにおいて電流値を検出する。電流
検出のタイミングは、これらのタイミングに限定される
ものではなく、例えば、順方向電圧が印加されている途
中に2回検出するものとしてもよいし、逆方向電圧が印
加されている途中に2回検出するものとしてもよい。
【0066】上記タイミングで電流を検出する場合、第
1の検出タイミグすなわち領域hにおいて検出した電流
値をa1、第2の検出タイミングすなわち領域pにおい
て検出した電流値をa2とし、各タイミングにおいてデ
ッドタイムが存在しない場合に検出されるべき電流値
(以下、理想値と呼ぶ)をそれぞれA1、A2とする
と、先に述べた単位誤差△iを用いて表される次式
(3)の関係が成立する。 a1=A1−n・△i a2=A2−m・△i ・・・(3) ここで、nは、巻線への電圧の印加を開始すべき制御信
号の出力(領域b)から第1の検出タイミング(領域
h)までに、U相のソース側のトランジスタTu+をオ
ンにする回数(例えば、領域c)と、U相からV,W相
へ流れる順方向電流が流れている状態においてV,W相
のソース側のトランジスタTv+,Tw+をオフにする
回数(例えば、領域f)との総計である。本実施例で
は、図7に示す通り、n=2となる。領域d,eにおけ
るGv,Gwへのハイの信号入力がなければ、n=1と
なる。また、Gv,Gwへのハイの信号入力が2回以上
行われる場合には、その回数に応じてn≧3となる。一
方、mは、巻線への電圧の印加を開始すべき制御信号の
出力(領域b)から第2の検出タイミング(領域p)ま
でに前記スイッチングが行われる回数の総計である。本
実施例では、図7に示す通り、領域b,f,lが上記ス
イッチングに該当するため、m=3となる。領域pで
は、V,W相のソース側トランジスタTv+,Tw+が
オフとなっているが、U相電流が順方向に流れていない
ため、上記スイッチングには該当しない。なお、領域
l,mにおけるGuへのハイの信号入力がなければm=
nとなる。また、Guへのハイの信号入力が2回以上行
われる場合には、その回数に応じてm≧3となる。
【0067】領域h,pにおける電流の理想値A1、A
2については、先に示した式(2)に基づいて、それぞ
れ次の関係式(4)が成立する。 A1=E1・t1/L A2=A1−E1・t2/L =A1(1−t2/(t1・L)) ・・・(4) ここで、E1はコイル巻線に印加される電圧の絶対値で
あり、Lはコイル巻線のインダクタンスである。また、
t1は順方向電圧印加状態を生じるような制御信号が出
力されている時間であり、t2は逆方向電圧状態を生じ
るような制御信号が出力されている時間である。図7に
基づいて具体的に説明すれば、t1は領域b〜領域gま
での時間ではなく、これらの時間から領域d,eの時間
を引いた分に相当する時間である。また、t2は領域j
〜領域oまでの時間から領域l,mの時間を引いた分に
相当する時間である。なお、図7から分かる通り、本実
施例ではA2=0である。
【0068】上式(3)、(4)における未知数は、A
1,A2,L,△iの4つである。その他の諸量は、電
流の検出値a1,a2およびGu,Gv,Gwの信号パ
ターンから決定される値n,m,t1,t2,E1であ
るため既知である。従って、式(3)(4)中の4つの
式を連立方程式として解けば、上記4つの未知数を一義
的に算出することができる。インダクタンスの算出に最
も重要となる電流値A1について、算出結果を示せば次
式(5)となる。 A1=(m・a1−n・a2) /(m−n+n・t2/t1) ・・・(5) また、上記連立方程式(3)、(4)によれば、コイル
巻線のインダクタンスLを次式(6)の形で直接求める
ことができる。 L=E1・t1/A1 =E1・t1・(m−n+n・t2/t1) /(m・a1−n・a2) ・・・(6) 従って、インダクタンスを算出する際に、先に述べた式
(2)に代えて、検出された電流値a1,a2を用いた
上式(6)を用いるものとすれば、デッドタイムの影受
けずにインダクタンスを算出することができる。この結
果に基づいて、インダクタンスと電気角の関係を記憶し
たテーブルを参照するものとすれば、電気角をデッドタ
イムの影響なく検出できる電気角検出装置を設計するこ
とができる。
【0069】上式(4)において、第2の検出タイミン
グにおける電流の理想値A2は、第1の検出タイミング
における電流の理想値A1の関数として与えられる。該
関数をF(A1)とすれば、本実施例においては、 F(A1)=A1(1−t2/(t1・L)) である。この関数F(A1)は、電流を検出する第1お
よび第2のタイミングに応じて、種々定め得るものであ
る。例えば、第1の検出タイミングを順方向電圧の印加
中とし、第2の検出タイミングを順方向電圧の印加を終
了した時とすると、 F(A1)=A1(1+t2/(t1・L)) となる。また、A1=V・t1/Lなる関係があるか
ら、上記関数F(A1)からV、Lを消去した形とする
こともできる。F(A1)がどのような形式の関数であ
っても、上式(3)、(4)を連立させることにより、
電流の理想値A1を一義的に算出することができる。
【0070】以上説明した設計方法においては、電流値
を検出するものとしているが、その他電流の変化量を検
出するものとしてもよい。例えば、順方向電圧を印加す
る前後における電流の変化量△a1(図7の領域aから
領域hまでの電流の変化量)と、逆方向電圧を印加する
前後における電流の変化量△a2(図7の領域iから領
域pまでの電流変化量)を検出するものとしてもよい。
このとき、それぞれの電流の変化量の理想値を△A1、
△A2とすると、上式(3)(4)に代えて、次式
(7)が成立する。 △a1=△A1−n・△i △a2=△A2−k・△i △A1=E1・t1/L △A2=−E1・t2/L ・・・(7) ここで、kは電流の変化量△a2を検出する期間におい
て、U相のソース側のスイッチング素子をオンにする回
数およびV,W相以外の相のソース側のスイッチング素
子をオフにする回数の総計であり、先に示したn,mを
用いて表せばk=m−nである。この場合も、上式
(7)を連立方程式として解くことにより、電流変化量
の理想値△A1、△A2およびインダクタンスLを次式
(8)の通り、一義的に算出することができる。 △A1=(k・△a1−n・△a2) /(k+n・t2/t1) L=E1・t1/△A1 =E1・t1・(k+n・t2/t1) /(k・△a1−n・△a2) ・・・(8) 従って、インダクタンスを算出する際に、上式(5)、
(6)に代えて、上式(8)を用いるものとしても、デ
ッドタイムの影受けずにインダクタンスを算出すること
ができる。この結果に基づいて、インダクタンスと電気
角の関係を記憶したテーブルを参照するものとすれば、
電気角をデッドタイムの影響なく検出できる電気角検出
装置を設計することができる。
【0071】(5)電気角検出装置の処理内容 上で述べた設計方法により設計された本実施例における
電気角検出ルーチンについて図8を用いて説明する。図
8に示した電気角検出ルーチンは、制御用ECU100
に備えられたCPU120が実行するルーチンである。
【0072】電気角検出ルーチンが開始されると、CP
U120は、まず初期電流値a0の検出を行う(ステッ
プS100)。具体的には、U相に流れる電流値に応じ
て電流センサ102から出力される信号をフィルタ10
6およびADC112を介して入力ポート116より読
み込むのである。次にCPU120は、順方向電圧の印
加を開始する(ステップS105)。具体的には、電圧
印加部130に対し、U相電圧を制御する信号Guにハ
イの信号を出力する。電圧を印加するパターンは、図7
に示した通りである。この結果、U相には、図7のグラ
フの領域cに示した通り、電流が流れ始める。
【0073】CPU120は、この後、サンプリングタ
イムが経過するのを待つ(ステップS110)。サンプ
リングタイムは、図7の領域b〜領域gまでの時間に相
当する。フローチャートには示していないが、図7に示
すように、V,W相に平均電圧を制御するための電圧パ
ルスを出力するものとしてもよい。実際には、CPU1
20は、モータ40の種々の制御ルーチンに合わせて定
期的に割り込み処理をかけることにより、電気角検出ル
ーチンを実行している。従って、ここにいうサンプリン
グタイムとは、この割り込み間隔の整数倍で表されるタ
イミングである。なお、本実施例では、一定の時間が経
過した時点で割り込み処理をかけるものとしているが、
順方向電圧の印加開始から後で説明する電流検出までの
経過時間が特定できるものであれば、1パッケージのあ
るタスクが終了したタイミング等必ずしも一定の時間間
隔とはならないタイミングをサンプリングタイムとして
もよい。
【0074】サンプリングタイムが経過した後、CPU
120は電流値a1を検出し、順方向電圧の印加を停止
する(ステップS115)。電流値の検出と、電圧の印
加停止はいずれが先であっても構わない。また、図7に
示す通り、電圧の印加を停止してもしばらく電流値は維
持されるため、電圧の印加を停止してから電流が減衰し
ない程度の期間経過した後に電流値a1を検出するもの
としてもよい。こうしてステップS100およびS11
5において検出された電流値a0,a1により、順方向
電圧を印加する前後の電流変化量△a1(=a1−a
0)を算出することができる。
【0075】次のステップで、CPU120はU相に逆
方向の電圧を印加する(ステップS120)。具体的に
は、電圧印加部130に対し、Guにローの信号を出力
し、Gv,Gwにハイの信号を出力する。逆方向電圧の
印加は、順方向電圧の印加停止後、U相電流が減衰しな
い程度の時間を開けて開始される。この時間は、電気角
検出処理に要する時間を短縮する観点から短い程好まし
いため、ステップS115における電流値a1の検出が
順方向電圧の印加停止と同時に行える場合には、その直
後から逆方向電圧を印加するものとしてもよい。図7の
U相電流のグラフ(領域j)に示した通り、逆方向電圧
の印加の開始とともにU相電流は減少していく。
【0076】逆方向電圧の印加を開始した後、CPU1
20は、サンプリングタイムの経過を待つ(ステップS
125)。フローチャートには示していないが、図7に
示すように、U相に平均電圧を制御するための電圧パル
スを出力するものとしてもよい。サンプリングタイム
は、ステップS110と同様、CPU120が割り込み
処理を行う間隔の整数倍で表されるタイミングである。
本実施例では、後の計算の容易のため、ステップS11
0とS125におけるサンプリングタイムは同一の時間
に設定してあるが、両者は異なるものとしてもよい。
【0077】サンプリングタイムが経過した時点で、C
PU120は電流値a2を検出し、逆方向電圧の印加を
停止する(ステップS130)。電流値の検出タイミン
グと、電圧の印加停止タイミングの関係は、ステップS
115の説明で述べた種々の関係を採りうる。こうして
ステップS115およびS130において検出された電
流値a1,a2により、逆方向電圧を印加する前後の電
流変化量△a2(=a2−a1)を算出することができ
る。電流変化量△a2はこの場合、負の値となる。
【0078】次に、CPU120は検出された電流変化
量△a1,△a2を用いて電流変化量の理想値△A1を
算出する(ステップS135)。電流変化量の理想値△
A1は、上式(8)にn=2,k=1,t2=t1を代
入して得られる次式(9)に基づいて算出される。 △A1=(△a1−2△a2)/3 ・・・(9) CPU120は、この結果を用いて電気角を算出する
(ステップS140)。つまり、先に説明した式(2)
を用いてインダクタンスLを算出し、電気角とインダク
タンスを記憶したテーブルを参照することによって電気
角を求めるのである。こうして電気角を算出したところ
で、CPU120は電気角検出ルーチンを一終了する。
【0079】なお、電気角とインダクタンスを記憶した
テーブルの形式によっては、U相電流を検出しただけで
は、電気角が0〜2πの範囲で一義的に求まらない場合
もある。かかる場合には、図7に示した電気角検出ルー
チンをV相についても実行することにより電気角を検出
し、U相電流に基づく電気角の検出結果とV相電流に基
づく電気角の検出結果とを比較すれば、電気角を0〜2
πの範囲で一義的に求めることができる。
【0080】以上に示した実施例によれば、デッドタイ
ムの影響を除去して電気角を精度よく検出することがで
きる。実際に本実施例による電気角検出装置により電気
角を検出した実験結果を図9に示す。図9は、モータ4
0の回転子50がゆっくりと回転している場合におい
て、時間を横軸にとり、電気角を縦軸にとって、従来の
電気角検出装置により電気角を検出した結果を示してい
る。図9に実線で表したのこぎり刃状のグラフが検出さ
れた電気角を表している。電気角は0度から360度ま
で徐々に増大し、360度に達すると値は不連続的に0
度になるため、このようなのこぎり刃状のグラフとなる
のである。なお、実験装置としてのモータ40は厳密に
は一定の角速度で回転していないため、電気角は直線的
に増加する訳ではない。図9に点線で示したグラフは回
転角センサにより検出された電気角と電気角の真値との
誤差を表している。誤差は、図9中の横軸を0とし、検
出された電気角の方が真値よりも大きい場合には正の値
として、小さい場合には負の値として表されている。従
来の電気角検出装置による電気角の検出誤差範囲は、図
9に示した通り、大きい値となっていることが分かる。
【0081】次に同様の実験結果を本実施例の電気角検
出装置について示したものが、図10のグラフである。
図10に示す通り、本実施例の電気角検出装置により検
出された電気角の検出誤差範囲は、図9に示した誤差範
囲に比べて半分以下の値に激減していることが分かる。
このように本実施例における電気角検出装置によれば、
デッドタイムの影響を受けずに非常に精度良く電気角を
検出することができる。
【0082】また、本実施例では、2回のタイミングで
検出された電流変化量に基づいて、電流変化量の理想値
△A1を算出している(ステップS135)。つまり、
デッドタイムに応じて制御用ECU100から電圧印加
部30への信号出力を変化させる等の複雑な制御をする
ことなく、容易にデッドタイムの影響を除去することが
できる。しかも、電流変化量の理想値の算出式(9)
は、デッドタイム自身に依存する形ではないため、電圧
印加部130のインタフェース部136を構成する素子
のバラツキ、温度変化および経年変化等によりデッドタ
イムの長さが変化しても、その影響を受けずに安定して
精度良く電気角を検出することができる。さらに、電流
変化量に基づいて電気角を算出するものとしているた
め、電気角検出時に微少な電流がU相に流れている場合
や、温度ドリフト等により電流センサ102に検出誤差
が生じている場合等、初期電流値a0が値0になってい
ない場合であっても精度良く電気角を検出することがで
きる利点もある。
【0083】なお、上述の実施例においては、ステップ
S135において一旦、電流変化量の理想値△A1を求
めてから、次のステップS140で電気角を算出するも
のとしている。かかる方法を採用することにより、従来
の電気角検出装置における電気角検出ルーチンの先頭に
図8のステップS100〜S135に相当する処理を付
加するだけで容易に本実施例の電気角検出装置を実現す
ることができる。
【0084】一方、上式(8)にn=2,k=1,t2
=t1を代入して得られる次式(10)により、コイル
巻線のインダクタンスLを直接算出するものとしてもよ
い。 L =3・E1・t1/(△a1−2△a2) ・・・(10) この場合、従来の電気角検出装置における電気角検出ル
ーチンについてコイル巻線のインダクタンスを算出する
部分を上式(10)に変更する必要が生じるが、上の実
施例による電気角検出ルーチンよりもシンプルな構成で
電気角を検出することができるようになり、電気角検出
の処理速度を向上できる。
【0085】また、上記実施例においては、電流の変化
量に基づいて電気角を算出しているが、電流値に基づい
て電気角を算出するものとしてもよい。このような電気
角検出装置では、図8のフローチャートにおいて初期電
流値a0の検出(ステップS100)が不要となる。ま
た、検出された電流値a1,a2に基づいて電流変化量
△a1,△a2を算出する演算も不要となる。ステップ
S135では、式(5)にn=2,m=3,t1=t2
を代入して得られる次式(11)に基づいて、電流の理
想値A1を算出するものとすればよい。 A1=(3・a1−2・a2)/3 ・・・(11) また、式(6)にそれぞれ値を代入して、コイル巻線の
インダクタンスLを次式(12)の形で直接求めるもの
としてもよい。 L =3・E1・t1/(3・a1−2・a2) ・・・(12) このような電気角検出装置によれば、デッドタイムの影
響を受けずに精度よく電気角を検出することはもちろ
ん、先に述べた実施例に比較して電気角検出ルーチンに
おける演算量を減らすことができ、処理時間の短縮を図
ることができる。従って、初期電流値a0が値0となる
ことが保障されている場合には、かかる態様による電気
角検出装置が有効となる。
【0086】以上、本発明の種々の実施例について説明
してきたが、本発明はこれらに限定されるものではな
く、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の形態による実
施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】モータ制御装置10の概略構成を示すブロック
図である。
【図2】三相同期モータ40の概略構成を示す説明図で
ある。
【図3】三相同期モータ40の固定子30と回転子50
との関係を示す端面図である。
【図4】三相同期モータ40の等価回路図である。
【図5】電圧印加部130の構成を示す回路図である。
【図6】コイル巻線の電圧および電流の様子を示すグラ
フである。
【図7】U相に印加される電圧およびU相電流の様子を
示すグラフである。
【図8】電気角検出ルーチンの流れを示すフローチャー
トである。
【図9】従来の電気角検出装置による電気角検出結果を
比較したグラフである。
【図10】本実施例の電気角検出装置による電気角検出
結果を比較したグラフである。
【符号の説明】 10…モータ制御装置 20…板状固定子 22…ティース 24…スロット 30…固定子 32…コイル 34…ボルト 36…ボルト孔 40…三相同期モータ 50…回転子 51,52,53,54…永久磁石 55…回転軸 57…板状回転子 60…ケース 61,62…軸受 71,72,73,74…突極 100…制御用ECU 102,103,104…電流センサ 106,107,108…フィルタ 112,113,114…ADC 116…入力ポート 118…出力ポート 120…CPU 122…ROM 124…RAM 126…クロック 130…電圧印加部 132…ソース側プリドライブ回路 134…シンク側プリドライブ回路 136…インタフェース部 138…トランジスタインバータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02P 5/00,6/00,7/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 各相毎にソース側とシンク側とを一組と
    して設けられたスイッチング素子のスイッチングにより
    生成された多相交流を巻線に流し、該巻線による磁界と
    永久磁石による磁界との相互作用により回転子を回転さ
    せる同期モータの電気角を検出する電気角検出装置であ
    って、 前記スイッチング素子のスイッチングを制御する制御信
    号を出力するスイッチング素子制御手段と、 該スイッチング素子制御手段による制御信号の出力に応
    じて、各相のソース側のスイッチング素子とシンク側の
    スイッチング素子の少なくとも一方がオフである条件下
    で該スイッチング素子をスイッチングするスイッチング
    素子駆動手段と、 該印加した電圧に応じて巻線の所定の相に流れる電流の
    挙動を、2回のタイミングで検出する電流検出手段と、 前記スイッチング素子駆動手段によるスイッチングがソ
    ース側がオンでシンク側がオフである状態とソース側が
    オフでシンク側がオンである状態との間でスイッチング
    が瞬時になされた場合に検出されるべき理想的な電流の
    挙動を、前記2回のタイミングで検出された電流の挙動
    の相互間に存在する所定の関係に基づいて算出する理想
    電流算出手段と、 該理想電流算出手段により算出された電流の挙動に基づ
    いて、前記モータの電気角を演算する電気角演算手段と
    を備える電気角検出装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電気角検出装置であっ
    て、 前記理想電流算出手段における前記所定の関係は、 前記2回のタイミングにおいてそれぞれ検出された第1
    の電流の挙動、第2の電流の挙動が各タイミングにおけ
    る理想的な電流の挙動に対して有する誤差δ1、δ2
    が、 電圧の印加パターンに応じて前記各検出タイミングにつ
    いてそれぞれ予め特定される係数と、検出される電流の
    挙動がスイッチング素子のスイッチング1回当たりにつ
    いて生じる電流の理想的な挙動に対して有する誤差であ
    る単位誤差との積で表される関係であり、 前記理想電流算出手段は、 前記第1の電流の挙動と前記第2の電流の挙動について
    の四則演算により、前記誤差δ1とδ2とを相殺するこ
    とによって前記理想的な電流の挙動を算出する手段であ
    る電気角検出装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の電気角検出装置であっ
    て、 前記電流検出手段が検出する電流の挙動は、前記所定の
    相に流れる電流の電流値であり、 前記理想電流算出手段は、 第1の検出タイミングにおいて検出された電流値a1
    と、第2の検出タイミングにおいて検出された電流値a
    2とを用いて、 電圧の印加パターンに応じて予め特定される既知量であ
    る、 巻線への電圧の印加を開始すべき制御信号の出力から第
    1の検出タイミングまでに、前記所定の相のソース側の
    スイッチング素子をオンにする回数と、前記所定の相か
    ら他の相へ流れる順方向電流が流れている状態において
    前記所定の相以外の相のソース側のスイッチング素子を
    オフにする回数との総計であるnと、 前記制御信号の出力から第2の検出タイミングまでに前
    記スイッチングが行われる回数の総計であるmと、 第1の検出タイミングにおける電流の理想値A1に応じ
    て第2の検出タイミングにおける電流の理想値を与える
    関数F(A1)とに基づいて表される m・a1−n・a2=m・A1−n・F(A1) なる方程式またはこれと等価な数式により、第1の検出
    タイミングにおける電流の理想値A1を算出する手段で
    あり、 前記電気角演算手段は、該理想値A1に基づいて電気角
    を演算する電気角検出装置。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の電気角検出装置であっ
    て、 前記スイッチング素子制御手段は、所定の相を正電位と
    し他の相を負電位とする順方向電圧印加状態と、所定の
    相を負電位とし他の相を正電位とする逆方向電圧印加状
    態がそれぞれ時間t1だけ生じるように前記制御信号を
    出力する手段であり、 前記電流検出手段は、所定の相に流れる電流について 前記順方向電圧印加状態の前後の変化量△a1を検出
    し、 前記逆方向電圧印加状態の前後の変化量△a2を検出す
    る手段であり、 前記理想電流算出手段は、 電圧の印加パターンに応じて予め特定される既知量であ
    る、 電流の変化量△a1を検出する期間において、前記所定
    の相のソース側のスイッチング素子をオンにする回数お
    よび前記所定の相以外の相のソース側のスイッチング素
    子をオフにする回数の総計nと、 電流の変化量△a2を検出する期間において、該スイッ
    チングが行われる回数の総計kとに基づいて表される △A1=(k・△a1−n・△a2)/(k+n) なる数式またはこれと等価な数式により前記順方向電圧
    印加状態の前後の電流の変化量の理想値△A1を算出す
    る手段であり、 前記電気角演算手段は、該電流の変化量△A1に基づい
    て電気角を演算する電気角検出装置。
  5. 【請求項5】 同期モータの巻線の各相毎にソース側と
    シンク側とを一組として設けられたスイッチング素子の
    スイッチングにより、該モータの巻線の所定の相に電圧
    を印加し、該印加した電圧に応じて該所定の相に流れる
    電流の挙動を用いて、該同期モータの電気角を検出する
    電気角検出装置の設計方法であって、 印加した電圧に応じて巻線の所定の相に流れる電流の挙
    動を検出する2回のタイミングを設定し、 各タイミングにおいて検出された電流の挙動が該タイミ
    ングにおける理想的な電流の挙動に対して有する誤差
    を、電圧の印加パターンに応じて予め特定される係数
    と、検出される電流の挙動がスイッチング素子のスイッ
    チング1回当たりについて生じる電流の理想的な挙動に
    対して有する誤差である単位誤差との積で表す数式を求
    め、 各タイミングにおける理想的な電流の挙動の相関を示す
    数式を求め、 上記数式を連立方程式として解くことにより、前記検出
    された電流の挙動から理想的な電流の挙動を算出する理
    想電流算出式を求め、 該理想電流算出式により算出された電流の挙動を、前記
    モータの電気角の検出に用いられる前記電流の挙動とす
    る、同期モータの電気角検出装置の設計方法。
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