JP3164475B2 - 瘻孔検定用具 - Google Patents

瘻孔検定用具

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、瘻孔部への人工肛門装
具の取付けを容易かつ確実にするために用いる瘻孔検定
用具、詳しくは人工肛門装具を装着する前にシート状皮
膚保護材を貼付するに当たり、予め瘻孔部の寸法や皺の
発生状況を観察して常に適正な処置を採ることができる
瘻孔検定用具に関する。
【0002】
【従来の技術】人工肛門は、例えば直腸癌、潰瘍性大腸
炎、ヒルシュスプルング病等の原因により大腸切除手術
を受けた後、糞便を排泄物として絶えず又は断続して流
出させるために患者の腹部に設けた排泄孔(以下、「瘻
孔」という)である。このような瘻孔には肛門括約筋が
なく、便や腸液が不隨意にしかも不定期に排泄される関
係で瘻孔周辺を常に清潔に保つことが困難となる。この
ため、瘻孔周辺に皮膚炎や発赤、びらん等の炎症が発生
し易くなる。
【0003】通常、人工肛門保有者は袋状の便受袋やカ
ップ状の便受器のような人工肛門装具を瘻孔に装着し、
この装具によって排便を処理している。これらの装具に
は受口部に粘着剤が塗布されているため、直接に瘻孔部
へ貼布することもできるが、一般には瘻孔周囲の皮膚を
排泄物などの刺激やそれに基づく上記のような炎症の被
害から保護するため、シート状の皮膚保護材を予め瘻孔
部に張りつけ、その上に装具を貼布する方法が採られて
いる。
【0004】皮膚保護材としては、カラヤゴム、特殊合
成ゴム、あるいは特殊なプラスチックなどの材料で構成
された各種のものが市販されており、皮膚に密着して瘻
孔部を炎症から護ると共に人工肛門装具の受入口を強固
に瘻孔周辺部に粘着させることができる比較的厚手の円
盤または矩形状のシートである。使用に当たっては、シ
ート状皮膚保護材に瘻孔に対応する穴を開けて瘻孔周辺
部に粘着するが、瘻孔の形状、寸法は各患者によって個
人差があるため、使用者は各自の瘻孔に適合するように
穴を形成しなければならない。
【0005】ところが、皮膚保護材は厚くて丈夫な材質
で形成されている関係で、瘻孔にぴったり合うように孔
を開けることは専門の医療従事者でも甚だ困難である。
皮膚保護材に形成した穴が瘻孔の大きさや周辺の皺に適
合せず、貼布したシートと瘻孔周辺部の皮膚の間が正常
に密着していないと、排泄物が溜まる隙間が生じて皮膚
の刺激が起こるようになる。この状態が長時間に亘って
継続すると瘻孔周辺部に炎症が生じ、また排泄物が漏れ
たりして人工肛門患者を悩ます結果を招く。そのうえ、
皮膚保護材には一般に水性物質に触れると軟化したり溶
解する物質も含まれているので、排泄物が一部でも漏れ
出すと皮膚保護材と皮膚との間に液体の通路ができて粘
着効力を弱化させ、経時的に密着性がなくなって皮膚保
護材が脱落するという最悪の事態が発生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のような不都合な
事態を避けるためには、瘻孔周辺部の状況、例えば瘻孔
の形状と大きさ、皺の凹凸状況などを予め細部に亘って
検知し、皮膚保護材に開口する孔の形状や大きさを各患
者の瘻孔の実態に合わせ、同時に皺などによる凹状個所
には皮膚保護ペースト剤を埋め込む等の適切な処置が必
要となる。しかしながら、現状では医療従事者の経験と
感に頼ることが多く、瘻孔の状況を予め観察、計測する
ための検定用具は存在しない。
【0007】本発明の目的は、シート状皮膚保護材の正
常な貼布を助け、人工肛門装具を容易かつ確実に装着す
るために人工肛門の瘻孔形態を簡易な手段で予め観察、
計測することができる瘻孔検定用具を提供することにあ
る。
【0008】
【発明が解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による瘻孔検定用具は、中心部に円形状の中
心穴を有し、該中心穴の周辺肉厚部から縁部にかけてテ
ーパー断面状に薄肉化した形状の透明円板からなること
を構成上の特徴とする。
【0009】本発明の瘻孔検定用具は、透明なプラスチ
ック、ゴムあるいはガラス等の材質で形成することがで
き、中心穴の周辺肉厚部から外縁部にかけて両面もしく
は片面がテーパー断面状に薄肉化する形状に設計され
る。また、透明円板の面に円板中心からの距離目盛を表
示しておくことが好ましい。
【0010】
【作用】本発明の瘻孔検定用具は、テーパー断面状を呈
する傾斜面側を患者の瘻孔部分に押し当てて使用され
る。この際、用具の傾斜面は中心部から周面に向かって
皮膚を押し拡げるように瘻孔部分に接触するから、瘻孔
およびその周辺部の状態を鮮明に透視することができ
る。したがって、瘻孔検定用具の中心穴を瘻孔に合致さ
せて上部から観察することにより、シート状の皮膚保護
材を瘻孔部分の皮膚に貼布したときの状況、すなわち皮
膚保護材に開口すべき穴の患者にとって最も適切なサイ
ズ、および皮膚保護材を瘻孔に貼布したときに瘻孔周辺
部に発生するであろう皺や凹状隙間の発生状況が容易に
検知される。透明円板面に目盛表示した瘻孔検定用具を
用いる場合には、瘻孔の寸法が容易に計測することが可
能となり、瘻孔の形状を適宜な筆記具で透明円板の上面
に図形として描写することもできる。
【0011】このようにして予め観察、計測したデータ
を基に皮膚保護材に穴を開口し、皺等による凹状部分の
発生が予測される個所には皮膚保護ペースト剤で埋め込
んだうえで皮膚保護材を貼布することにより、常に正常
な密着状態で瘻孔部位にシート状皮膚保護材を展着する
ことができ、長期間に亘り皮膚の炎症や排泄物の漏洩を
生じることなしに安定して人工肛門装具を装着すること
が可能となる。
【0012】なお、医療従事者が人工肛門患者の瘻孔に
最も適合する瘻孔検定用具を選定するような場合には、
予め中心穴の寸法形状の異なる複数の瘻孔検定用具を準
備しておき、この中から適宜に選択することもできる。
【0013】
【実施例】以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体
的に説明するが、本発明の構成態様は実施例に限定され
るものではない。
【0014】図1は本発明の瘻孔検定用具を示した平面
図で、1は用具本体を構成する透明円板、2は透明円板
1の中心部に穿設された中心穴、3は中心穴2の周辺肉
厚部である。透明円板1は、透明性のプラスチック、ゴ
ムあるいはガラス等で構成されるが、その透明度は瘻孔
検定用具を肌に接した際に皮膚の組織が透視できる程度
の透明度があれば本発明の使用目的に支障はない。具体
的な材質としては、プラスチック製とする場合には例え
ばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチロール樹
脂、塩化ビニル樹脂等が使用でき、ゴム製とする場合に
はシリコーンゴムが有効に使用される。透明円板の寸法
は、概ね直径70〜100mm、最大厚み5〜20mm程度
にすることが好ましい。
【0015】中心穴2の形状は円形状で、図1に示すよ
うな長円形に限らず真円形、楕円形など適宜な形状に形
成することができ、また中心穴2の寸法は患者の瘻孔と
同等に設計することが好ましい。通常は長円形または楕
円形の場合には30×40mm程度、真円形の場合には直
径30〜40mm程度が標準であるが、瘻孔のサイズは患
者によって異なるため、直径12〜50mm程度の範囲で
複数段階のサイズを整えておくことが好適である。
【0016】透明円板1の面には、円盤中心からの距離
目盛4を表示しておくと瘻孔の形状や大きさの計測に便
宜である。距離目盛4の表示は、図1のように定間隔の
短線表示のほか、定間隔の点あるいは同心円など使用に
便宜なように自由に設定すればよい。
【0017】透明円板1は中心穴2の周辺肉厚部3から
外縁部にかけてテーパー断面状に薄肉化した形状を呈し
ており、この傾斜形状において患部に押し当てた際に瘻
孔およびその周辺部の状態を鮮明に観察することが可能
となる。このテーパー断面形状は、図2に示すように片
面のみがテーパー断面状に傾斜し、一方の面がフラット
な形状、あるいは図3のように両面がテーパー断面状に
傾斜する形状とすることができる。
【0018】使用に当たっては、透明円板1の傾斜面側
を患者の瘻孔に合せて押し当てると比較的肉厚で固く不
透明な皮膚保護材を瘻孔に貼布した状況を肉眼で観察可
能な状態で再現できる。このため、肌と密着させた状態
で観察、計測することにより皮膚保護材を瘻孔に貼布し
た際の不具合事項、例えば瘻孔と皮膚保護材に開口すべ
き穴とが合致する大きさ、形状等が適確に特定でき、ま
た瘻孔周辺に発生する皺等の窪みの状況が把握できるか
ら予め適切な処置を施すことができる。
【0019】また、人工肛門造設術においても術者が瘻
孔を形成すべき腹部肌に透明板1の傾斜面を押し当てる
ことにより、瘻孔形成後における皺などの窪み発生を予
知することができ、瘻孔に最適な腹部位置を選定するこ
とが可能となる。
【0020】
【発明の効果】以上のとおり、本発明の瘻孔検定用具を
使用することにより、従来、医療従事者が経験と感に頼
っていた人工肛門装具を瘻孔部分に装着する場合の困難
性を効果的に解消することができ、人工肛門造設術にお
いて最も適切な腹部位置に瘻孔を形成できるから、人工
肛門患者にとって快適な生活が保証される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の瘻孔検定用具の一実施例を示した平面
図である。
【図2】本発明に実施態様を示した図1の中心断面図で
ある。
【図3】本発明の別の実施態様を示した図1の中心断面
図である。
【符号の説明】
1 透明円板 2 中心穴 3 周辺肉厚部 4 距離目盛
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭61−52370(JP,U) 特公 平6−71470(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61F 5/445

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中心部に円形状の中心穴を有し、該中心
    穴の周辺肉厚部から外縁部にかけてテーパー断面状に薄
    肉化した形状の透明円板からなることを特徴とする瘻孔
    検定用具。
  2. 【請求項2】 中心穴の周辺肉厚部から外縁部にかけて
    両面もしくは片面がテーパー断面状に薄肉化する請求項
    1記載の瘻孔検定用具。
  3. 【請求項3】 透明円板の面に円板中心からの距離目盛
    が表示されている請求項1記載の瘻孔検定用具。
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