JP3160050U - サーモエレメント及びサーモエレメントを使用した自動混合水栓 - Google Patents

サーモエレメント及びサーモエレメントを使用した自動混合水栓 Download PDF

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Abstract

【課題】ワックスの膨張収縮を利用したサーモアクチュエータにおいて、ワックスの熱伝導を改善し、ワックスを密封する密封部材の劣化を防止し、応答性がよく耐久性が良いサーモエレメントを提供する。【解決手段】底のある円筒形のケース1と、ケースの開口部を覆いピストン6が貫通する孔を有するガイド部材5と、ケースに充填され温度変化により膨張収縮するワックス混合体2と、ケース内にワックス混合体を密封する弾性密封部材3等と、ワックス混合体の膨張収縮で弾性密封部材が変形することにより軸方向に移動するピストン6とを備えてサーモエレメントを構成する。さらに、ワックス混合体は、ワックスに炭素繊維を融解混合したワックス混合体とすることで、ワックス混合体の内部で炭素繊維同士が結合されて、熱伝導が良くなる。【選択図】図1

Description

本考案は、温度変化によるワックスの膨張収縮を利用したサーモアクチュエータであるサーモエレメントに関する。
従来から、温度センサとしてワックス等の熱膨張体を用いたサーモエレメントが用いられている。サーモエレメントは、温度によるワックスの体積変化をピストンの軸線方向の直線運動に変換する。サーモエレメントは、図1に示すダイアフラムタイプ、図2に示すスリーブタイプ等がある。
図1に示すダイアフラムタイプのサーモエレメントは、底のある円筒形状のケース1に、円筒形のガイド部材5が固定される。ケース1内にワックス2が充填され、ワックス2の上端面は、弾性密封部材のダイアフラム3により封止されている。ガイド部材5の基端部内の当接面5aと、ダイアフラム3の上側との間には変形自在な非圧縮性流動体からなるガム状流体4が充填されている。ガイド部材5のガイド筒部5b内には、ガム状流体4の上に、ラバーピストン7、保護板8、ピストン6が設けられている。
環境温度が上昇するとワックス2が膨張し、ダイアフラム3が上方に膨出し、ダイアフラム3の上方に配置されたガム状流体4を押し上げる。ガム状流体4は変形しガイド筒部5bに進入して、ラバーピストン7、保護板8を介して、ピストン6を上方へ押し上げる。温度が下降するとワックス2が収縮し、ピストン6に印加された負荷(図示せず)によりピストン6が押し下げられる。こうして、温度変化によりピストン6がガイド部材5から上方へ出入する。
本明細書においては、上とは図面の上方向、下とは図面の下方向を言うものとする。
図2に示すスリーブタイプのサーモエレメントは、底のある円筒形状のケース1にワックス2が充填され、ワックス2の上端部は弾性密封部材のスリーブ9により密封されている。スリーブ9の中央部にピストン6を挿入するためのピストン挿入孔が形成されている。スリーブ9の上側は、押さえ板10により、ケース1に固定される。ケース1の上端部には、円筒形のガイド部材5が設けられ、ガイド部材5の基端部は、ケース1の上端部に固定される。スリーブ9のピストン挿入孔内から、ガイド部材5を貫通してピストン6が設けられている。
環境温度が上昇するとワックス2が膨張し、ワックス2がスリーブ9を押し潰し、スリーブ9に挿入されているピストン6を上方へ押し出す。温度が下降するとワックス2が収縮し、ピストン6に印加された負荷(図示せず)により、ピストン6は下方へ押し戻される。こうして、温度変化によりピストン6がガイド部材5の上下方向に出入する。
ダイアフラムタイプとスリーブタイプのサーモエレメントに共通する問題として、ワックスの熱伝導が悪いという問題がある。一般に、熱伝導を良くするため銅箔等熱伝導の良い金属小片をワックスに混合している。ワックスに混合する金属の形態は、粉末、チップ、箔等が考えられ、これらを総称して小片という。しかし、ワックスに金属小片を混合しても、十分な熱伝導を得ることができない。特に、低温でワックスが固形状の状態から温度上昇するときは、ワックスの外側から順次軟化し熱伝達される。
ワックスの熱伝導が悪いと、ケースの温度が上昇し、ケース内面近傍のワックスが融解し膨張しても、内部のワックスは固形状態のままである。ダイアフラムタイプの場合は、図3に示すようにケース内面近傍のワックス2aが融解し、内部の固形状態のワックス2bでダイアフラム3を押し上げることになるので、ダイアフラム3の劣化を促進させる。
スリーブタイプタイプの場合は、図4に示すようにケース内面近傍のワックス2aが融解しても、内部の固形状ワックス2bに阻害されスリーブ9を押し潰せないので、ピストン6を絞り出すことが出来ない。そのため、ケース内が高圧化し、応答が遅れる。また、スリーブが劣化する。
サーモエレメントの用途として、自動混合水栓がある。自動混合水栓により湯と水を混合した混合水はシャワー等で直接肌に浴びる場合があるので、混合水の温度が高いと、火傷などを起こす危険性がある。そのため、混合水は、湯、水の圧力、温度の変化、開閉、湯量操作等の使用状況の変化によらず、常に任意の一定の温度を維持しなければならない。自動混合水栓は、浴室で使用するので、温度変化を検知し、自力で伸縮し、混合水温度を制御できるワックスを使用したサーモエレメントが制御器として最適であるが、混合水の温度が開閉時に大きく変化するなどの問題がある。
本考案者は、ワックスの熱伝導を改良するため、ワックスに金属小片と、ワックスの融点以上の融点を有する低融点合金を融解混合したワックス混合体を使用するサーモエレメントを開発した(特許文献1)。
しかし、特許文献1のワックス混合体は、金属小片と、ワックスの融点以上の融点を有する低融点合金はワックスに分散しにくく、混合する量に限度があり、高価になる。また、ワックスの融解温度に応じて、融点の異なる低融点合金を使用する必要がある。
また、本考案者は、特許文献1において、構造が単純で耐久性に優れ、応答性が良いサーモエレメントとして、従来のダイアフラムとガム状流体とを1つの弾性密封部材の肉厚封止部材としたサーモエレメントを開発した。肉厚封止部材は、従来のサーモエレメントを密封しながら変形するダイアフラムの機能と、ピストンを押し出すガム状流体の両方の機能を果たす。肉厚封止部材は、変形容易で、非圧縮性である。そのため、従来のラバーピストン、保護板が不要で、構造が簡単なサーモエレメントを得ることができた。
図5は、特許文献1の肉厚封止部材20を使用したサーモエレメントの縦断面図である。サーモエレメントは、底のある円筒形状のケース1と、ケース1の一端部に係合する円筒形のガイド部材5と、ガイド部材の内側に摺動自在に保持されたピストン6と、ケース1にワックス2を封入し、ピストン6を出入りさせるため、ガイド部材と前記ワックスの間に配置された肉厚封止部材20とを備える。
肉厚封止部材20は、ゴム状弾性体で形成され、中央部にピストン6の一端部を挿入するピストン挿入孔が形成され、外周部のリブと、リブからピストン挿入孔に向かって肉厚が次第に厚くなる肉厚部とを有する。温度変化によりワックス2が膨張すると、肉厚封止部材20が変形して、ピストン6を押し上げるようになっている。
図5の肉厚封止部材20は、上面とピストン挿入孔の内面20aを高硬度のゴム材で形成し、他の部分20bを低硬度のゴム材で形成してある。
従来から、ワックスの熱伝導を改良するため、ワックスに熱伝導性の良いカーボンブラックを融解混合することは試みられていたが、ワックスの熱伝導が大きく改善されることはなかった。この原因としては、カーボンブラックは金属片と同様に粒子状でありアスペクト比が小さく、またワックスと混合しにくい。そのため、カーボンブラック同士の繋がりが出来にくく、ワックスを間に介して熱伝導されるため、熱伝導を改良するため混合する材料によらず、熱伝導が大きく改善されることはないものと思われる。
特許文献2は、熱可塑性樹脂に炭素繊維を混練したソリが少ない複合材組成物を示す。熱可塑性樹脂は、製造した後の使用状態では再度溶融することはない。従来サーモエレメントのワックスに炭素繊維を混合することは行われてこなかった。サーモエレメントのワックスは、使用中温度の上昇下降に伴って、溶融(膨張)と固化(収縮)を繰り返し、熱伝導性が変わりやすい。サーモエレメントのワックスは、熱容量が小さく、環境温度の変化により迅速に体積変化し、ピストンを押し出す必要がある。そのため、熱伝導を改良するため、サーモエレメントのワックスに炭素繊維を混合する場合、一般の熱可塑性樹脂に炭素繊維を添加する場合より、求められる熱伝導性が厳しい。
従って、更に溶融と固化の繰り返しによって、熱伝導性が変わらないワックスの熱伝導を改良したサーモエレメントが求められている。
また、更に耐久性の優れたサーモエレメントが求められている。
特許第3971452号 特開2005ー325345号公報
本考案の目的は、ワックスの熱伝導を改良した製造が容易で安価なサーモエレメントを提供することである。
本考案の他の目的は、耐久性に優れたサーモエレメントを提供することである。
(炭素繊維混合)
本考案者は、炭素繊維を、ワックスに融解混合したところ、ワックスの熱伝導が飛躍的によくなることを見出した。これは、炭素繊維同士が絡み合い連結された状態となり、熱伝導性の良い炭素繊維中を熱伝導するためと考えられる。又炭素繊維同士が絡み合うので、溶融と固化を繰り返しても、ワックスと炭素繊維は分離し難い。
ワックスに融解混合する炭素繊維は、繊維径が細く、アスペクト比が大きく、分散性の良い炭素繊維が適している。特に、気相法炭素繊維は、繊維径がきわめて細く、アスペクト比が非常に大きく、分散性が良いので適している。
本考案は、底のある円筒形のケースと、前記ケースの開口部を覆いピストンが貫通する孔を有するガイド部材と、前記ケースに充填され温度変化により膨張収縮するワックス混合体と、前記ケース内に前記ワックス混合体を密封する弾性密封部材と、前記ワックス混合体の膨張収縮で前記弾性密封部材が変形することにより軸方向に移動するピストンとを備えるサーモエレメントであって、
前記ワックス混合体は、ワックスに炭素繊維を融解混合したワックス混合体であることを特徴とするサーモエレメントである。
これにより、ワックス混合体の熱伝導が良くなる。これは、ワックス混合体の内部で炭素繊維同士が結合されて、熱伝導が飛躍的に良くなったと考えられる。そのため、サーモエレメントのケースに充填されたワックスの外部と内部の温度差が小さくなり、ワックス全体がほぼ均一に融解膨張し、ダイアフラム、スリーブ等の密封部材に対して均一に圧力をかけるので、ダイアフラムの劣化、応答遅れを防止することができる。
前記炭素繊維は、繊維径20nm〜50μm、アスペクト比5〜1000、重量比でワックス1に対し0.005〜3.0融解混合されることが好ましい。
この範囲の炭素繊維は、ワックスの流動性を悪くすることは少なく、またワックスを密封する部材としてのダイアフラムを傷つけにくい。
前記炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維であることが好ましい。
又は、前記炭素繊維は、気相法炭素繊維であることが好ましい。
気相法炭素繊維は、繊維径がきわめて細く、アスペクト比が非常に大きく、分散性が良いので、ワックス中に均等に分散し、熱伝導が良くなる。
前記気相法炭素繊維は、繊維径20〜200nm、アスペクト比10〜1000であることが好ましい。
前記炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維と気相法炭素繊維の両方を含んでも良い。
気相法炭素繊維がワックス中に均等に分散するので、ピッチ系炭素繊維とワックス間の熱伝導を良くし、ワックスの熱伝導が良くなる。
前記ワックス混合体は、ワックスに混合する炭素繊維の繊維長さにより、
A:150μm以下、
B:150μm〜400μm、
C:400μm以上の3グループに分け、
前記A、B、Cの中から長さの異なる2種類、又は3種類の炭素繊維を混合したワックス混合体であることが好ましい。
繊維長さの長い炭素繊維と繊維長さの短い短繊維を混合して使用すると、長い繊維のみを混合した場合より良い熱伝導性を得ることができる。
前記ワックス混合体は、ワックスに混合する炭素繊維を種類と繊維長さにより、
A:繊維径200nm以下、アスペクト比10以上の気相法炭素繊維、
B:繊維径50μm以下、繊維長さ400μm以下、
C:繊維径50μm以下、繊維長さ400μm以上の3グループに分け、
前記A、B、Cの中から2種類又は、3種類の炭素繊維を混合したワックス混合体であることが好ましい。
前記Aは気相法炭素繊維であり、前記B、Cは気相法炭素繊維に限定されない。
また、前記ワックス混合体は、金属小片又はカーボンブラックと、炭素繊維を混合したものでも良い。金属小片としては、銅箔、Al箔等を用いることができる。
こうすると、炭素繊維が金属小片同士を結合し、ワックス混合体の熱伝導が良くなる。
前記弾性密封部材は、ダイアフラム、又はスリーブであることが好ましい。
即ち、前記サーモエレメントはダイアフラムタイプサーモエレメントであり、前記弾性密封部材は、前記ケースに前記ワックス混合体を密封し、前記ワックス混合体とガム状流体の間に設けられたダイアフラムであることが好ましい。
又は、前記サーモエレメントはスリーブタイプサーモエレメントであり、前記弾性密封部材は、前記ケースに前記ワックス混合体を密封し、中央部に前記ピストンの一端部を挿入するピストン挿入孔が形成されたスリーブであることが好ましい。
前記弾性密封部材は、非圧縮性のゴム状弾性体で成形され、前記ガイド部材と前記ワックス混合体の間に配置されて、前記ケースとの間で前記ワックス混合体を密封し、中央部に前記ピストンの一端部を支持するピストン挿入孔が形成され、外周部から前記ピストン挿入孔に向かって次第に肉厚が厚くなる肉厚部を有する肉厚封止部材でもよい。ここに、肉厚封止部材は、ダイアフラムタイプのサーモエレメントのダイアフラムとガム状流体を複合した部材である。
炭素繊維を混合したワックスサーモエレメントを、自動混合水栓の混合水温度を制御する制御器として使用したところ、前述した使用条件が変化しても、混合水の温度は一定となり良好な自動混合水栓が得られた。
本考案のサーモエレメントは、ワックスに炭素繊維を融解混合したワックス混合体を使用するので、ワックス混合体の熱伝導が格段に良くなる。そのため、サーモエレメントに充填されたワックス混合体の外部と内部の温度差が小さくなり、ワックス全体がほぼ均一に融解膨張する。そのため、ダイアフラム、スリーブ等の弾性密封部材に対して均一に圧力をかけるので、ダイアフラム、スリーブ等の劣化、応答遅れが解消される。
ダイアフラムタイプのサーモエレメントの縦断面図。 スリーブタイプのサーモエレメントの縦断面図。 ワックスが部分融解した状態を示すダイアフラムタイプのサーモエレメントの縦断面図。 ワックスが部分融解した状態を示すスリーブタイプのサーモエレメントの縦断面図。 特許文献1のサーモエレメントの縦断面図。
(炭素繊維混合)
本考案の第1の態様は、サーモエレメントのワックスに熱伝導の良い炭素繊維を融解混合し、ワックスの熱伝導率を向上させたものである。サーモエレメントの形状は、図1に示すダイアフラムタイプ、図2に示すスリーブタイプである。また、図5(特許文献1)の肉厚封止部材タイプにも使用することができる。
炭素繊維を融解混合したワックス混合体について説明する。
サーモエレメントの膨張体として、通常はパラフィンワックスを用いる。用途に応じた膨張特性を得るため、予め融解温度の異なる数種類のワックスを混合融解して用いる。ワックスの熱伝導を改善する為に、炭素繊維を混合する。
炭素繊維にはPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などがある。ピッチ系炭素繊維は熱伝導がよいので、ワックスに混合して熱伝導を良くするのに適している。
気相法炭素繊維は、繊維径がきわめて細く、アスペクト比が非常に大きく、分散性が良いので、特に本考案に適している。
気相法炭素繊維は、高温雰囲気下で不活性ガス中に、触媒となる鉄と共にガス化された有機化合物を吹き込むことにより製造することができる。
気相法炭素繊維について更に説明する。気相法炭素繊維は、他の炭素繊維と比較して、繊維径がnmオーダと極細で、アスペクト比が大きく、嵩密度が0.1以下(通常の炭素繊維の嵩密度は2.2)と小さい。ワックスに気相法炭素繊維を重量比で僅かに混合すると(嵩密度が小さいので体積比では大きい)、熱伝導が向上する。又、気相法炭素繊維は分散性が良いので、ワックスが炭素繊維の細かい隙間まで浸透した状態で混合され、炭素繊維とワックスの間の熱伝導がよくなると考えられる。
本考案に使用する炭素繊維は、以下の物性値を有するものが好ましい。
(1) 繊維径:20nm〜50μm
(2) アスペクト比:5〜1000
(3) 重量混合比:ワックス1に対して炭素繊維0.005〜3.0
一般に、ワックスに混合する炭素繊維の繊維径が大きくなると、ワックスの流動性が悪くなり、また繊維が硬くなりダイアフラム等のワックスに隣接する部材を傷つけやすい。
炭素繊維のアスペクト比が小さいと、繊維同士のつながりができにくく、十分な熱伝導を得ることができない。アスペクト比が大きく繊維長が長いと炭素繊維同士が絡み合って接触しやすく、熱伝導性が良くなり、ワックスと分離しにくくなり有利である。
炭素繊維の重量混合比が小さいと、熱伝導を改善する効果が少ない。重量混合比が大きいと、ワックスの割合が少なくなり、ワックス混合体の熱による膨張収縮が小さくなる。
繊維長さの長い炭素繊維と繊維長さの短い短繊維を混合して使用すると、長い繊維のみを混合した場合より良い熱伝導性を得ることができる。
ワックスに加える炭素繊維の繊維長さにより熱伝導性がどのように変わるかについての実験を行った。
炭素繊維を長さにより3グループに分けた。
A:長さ150μm以下
B:長さ150〜400μm
C:長さ400μm以上
ワックスに対する炭素繊維の充填比率を体積比で同一にして、ワックスにA、B、Cの内1種類の炭素繊維を加えて、ワックス混合体を作成し、その熱伝導を比較した。
その結果、Aの炭素繊維を混合したものは、従来の金属箔を添加したものと比較して、熱伝導が劣り、Bは同程度、Cは良好であった。
次にA、B、Cの内2又は3種類の炭素繊維を加えて、ワックス混合体を作成し、その熱伝導を比較した。
A、B、Cの炭素繊維を単独で加えるよりも、AとB、AとC、BとCの様に長さの違う2種類、またはA、B、Cの3種類を混合した方が熱伝導は良くなった。
これらの結果より、長い炭素繊維同士が絡み合い接触して、短い炭素繊維とともに熱伝導を担っているものと推測される。
次に、ワックスに炭素繊維を混合してワックス混合体とし、次にワックス混合体を型に入れてペレットを成形する方法について説明する。
(混合)
ワックスに炭素繊維を混合する方法は、加熱式ニーダーに小隗状のワックスと炭素繊維を投入し、ワックスが融解する温度まで加熱し、ワックスを液状化して炭素繊維と混合する。又は、ワックスを粉末状にしてワックスと炭素繊維を粉末状で混合した後、加熱式ニーダーで加熱しワックスを液化にして混合しても良い。
混合機としては、高せん断力が掛かると炭素繊維が破断するので、高せん断力のかからない混合機を使用することが好ましい。加熱式ニーダーの他に加熱式タンブラーミキサー、加熱式V型ミキサー等を使用することができる。
ワックスを液状化して炭素繊維と混合した後、冷却し、ワックス混合体のペレットまたはインゴットを成形する。
(成形)
このようにして製造されたワックス混合体のペレットまたはインゴットを融解する温度より低い温度に加熱し、加圧押出機で型に圧入する。型の内径は、使用するサーモエレメントのケースの内径に合わせ、型に圧入したワックス混合体をそのままサーモエレメントのケースに入れて使用することができる大きさとする。ワックス混合体の型への注入量は使用するサーモエレメントのケースに入れる所定のワックス高さに合わせて調節する。
型への圧入には加圧押出機の外にスクリュー押出機等を使用することができる。
炭素繊維は非常に細いため、型に圧入するとき型内に空気を巻き込みやすい。そのため、ワックス混合体のペレットに気泡が入らないように型に圧入する必要がある。そのため、型の側壁に空気抜き用の小径の孔を開け、型内の空気抜きをするとよい。空気抜き用の孔径は0.5〜1mm程度が良い。
別の成形方法は、加熱式ニーダー等で成形したワックス混合体のペレットを加熱して融解し、液状化したワックス混合体をサーモエレメントのケースに直接滴下する。この方法では、押出機を使用しない。
(実施例1)
炭素繊維として、ピッチ系炭素繊維(Bグループ)を使用した。軟化点72℃のワックスに従来の銅箔と同一の体積比で充填したピッチ系炭素繊維を加熱式ニーダーで混合した。ワックスの融点より高温になるまで加熱(90℃)し混合した。ワックス混合体を冷却しペレットを成形した。このワックス混合体をダイアフラムタイプのサーモエレメントに使用したところ、温度変化に対するサーモエレメントの応答性が従来の銅箔を混合したものより良くなった。スリーブタイプのサーモエレメントに使用した場合も、良い応答性が得られた。
(実施例2)
炭素繊維として、気相法炭素繊維(Aグループ)とピッチ系炭素繊維(Bグループ)の2種類を使用して、実施例1と同様の工程でワックス混合体のペレットを成形した。この種類の異なる炭素繊維を含むワックス混合体を使用して、実施例1と同様にサーモエレメントを作成し、実施例1より応答性の良いサーモエレメントが得られた。
(実施例3)
炭素繊維として、ピッチ系炭素繊維(Bグループ)と(Cグループ)の2種類を使用して、実施例1と同様の工程でワックス混合体のペレットを成形した。この長さの異なる炭素繊維を含むワックス混合体を使用して、実施例1と同様にサーモエレメントを作成し、実施例2と同様の応答性の良いサーモエレメントが得られた。
上記実施例3のワックス混合体を用い自動混合水栓のサーモエレメントを製作し、自動混合水栓に使用したところ、使用条件が変化しても混合水の温度変化が少なく良好な結果が得られた。サーモエレメントの応答性を良くすることで、自動混合水栓から出る混合水の温度変化が少なくなることが分かった。
本考案は、ダイアフラムタイプ、スリーブタイプのサーモエレメントを例としているが、サーモエレメントの種類はこれに限るものではない。本考案の炭素繊維を混合したワックス混合体は、肉厚封止部材タイプのサーモエレメント、その他のサーモエレメントにも使用することができる。
本考案のサーモエレメントは、温度センサ、サーモアクチュエータとして使用することができる。
1 ケース
2 ワックス(ワックス混合体)
3 ダイアフラム
4 ガム状流体
5 ガイド部材
5a 当接面
5b ガイド筒部
6 ピストン
6d ピストン外径
7 ラバーピストン
8 保護板
9 スリーブ
10 押さえ板
20 肉厚封止部材
20a 高硬度のゴム材
20b 低硬度のゴム材
21 溝

Claims (11)

  1. 底のある円筒形のケースと、前記ケースの開口部を覆いピストンが貫通する孔を有するガイド部材と、前記ケースに充填され温度変化により膨張収縮するワックス混合体と、前記ケース内に前記ワックス混合体を密封する弾性密封部材と、前記ワックス混合体の膨張収縮で前記弾性密封部材が変形することにより軸方向に移動するピストンとを備えるサーモエレメントであって、
    前記ワックス混合体は、ワックスに炭素繊維を融解混合したワックス混合体であることを特徴とするサーモエレメント。
  2. 前記炭素繊維は、繊維径40nm〜50μm、アスペクト比5〜1000、重量比でワックス1に対し0.005〜3.0融解混合される請求項1に記載のサーモエレメント。
  3. 前記炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維である請求項1に記載のサーモエレメント。
  4. 前記炭素繊維は、気相法炭素繊維である請求項1に記載のサーモエレメント。
  5. 前記気相法炭素繊維は、繊維径20〜200nm、アスペクト比10〜1000である請求項4に記載のサーモエレメント。
  6. 前記炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維と気相法炭素繊維の両方を含む請求項1に記載のサーモエレメント。
  7. 前記ワックス混合体は、ワックスに混合する炭素繊維を繊維長さにより、
    A:150μm以下、
    B:150μm〜400μm、
    C:400μm以上の3グループに分け、
    前記A、B、Cの中から長さの異なる2種類、又は3種類の炭素繊維を混合したワックス混合体である請求項1に記載のサーモエレメント。
  8. 前記ワックス混合体は、ワックスに混合する炭素繊維を種類と繊維長さにより、
    A:繊維径200nm以下、アスペクト比40以上の気相法炭素繊維、
    B:繊維径50μm以下、繊維長さ400μm以下、
    C:繊維径50μm以下、繊維長さ400μm以上の3グループに分け、
    前記A、B、Cの中から2種類又は、3種類の炭素繊維を混合したワックス混合体である請求項1に記載のサーモエレメント。
  9. 前記サーモエレメントはダイアフラムタイプサーモエレメントであり、前記弾性密封部材は、前記ケースに前記ワックス混合体を密封し、前記ワックス混合体とガム状流体の間に設けられたダイアフラムであるか、又は
    前記サーモエレメントはスリーブタイプサーモエレメントであり、前記弾性密封部材は、前記ケースに前記ワックス混合体を密封し、中央部に前記ピストンの一端部を挿入するピストン挿入孔が形成されたスリーブである請求項1〜8の何れか1項に記載のサーモエレメント。
  10. 前記弾性密封部材は、非圧縮性のゴム状弾性体で成形され、前記ガイド部材と前記ワックス混合体の間に配置されて、前記ケースとの間で前記ワックス混合体を密封し、中央部に前記ピストンの一端部を支持するピストン挿入孔が形成され、外周部から前記ピストン挿入孔に向かって次第に肉厚が厚くなる肉厚部を有する肉厚封止部材である請求項1〜8の何れか1項に記載のサーモエレメント。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載のサーモエレメントを使用した自動混合水栓。
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