JP3157192U - スキー板 - Google Patents

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孝司 里村
孝司 里村
川村 祐一
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Abstract

【課題】滑降時の滑走スピードの制御が容易で安全に操作できるスキー板を提供する。【解決手段】スキー板1の滑走面1bを含む裏面部1aに1以上の順制動パターン3及び1以上の逆制動パターン5を設ける。順制動パターン3は、滑走面1bに前端1dから後端1eに向かう順方向FDの力が作用するときには制動力を発揮せず、滑走面1cに順方向FDとは逆の方向に向かう逆方向RDの力が作用するときに制動力を発揮する。逆制動パターン5は、滑走面1aに逆方向RDの力が作用するときには制動力を発揮せず、滑走面1aに順方向FDの力が作用するときに制動力を発揮する。【選択図】図1

Description

本考案は、滑走方向と逆方向に制動力を発揮するスキー板に関するものである。
人の手の入っていない雪山では、深雪や起伏に富んだ斜面を含む過酷な状況でスキーを操作しなければならない。特開平10−263134号公報[特許文献1]に開示されたスキー板では、このような過酷な状況でもスキーの操作性を容易にするため、上りの斜面における登坂時の後滑りを抑制しかつ下りの斜面における滑降時の滑走の障害とならないようにスキーに制動力を付与する制動溝がスキー板の滑走面に形成されている。
特開平10−263134号公報
しかしながら、従来のスキー板では、スキーの滑走方向と逆方向には制動力を発揮できるものの、スキーの滑走方向に制動力を発揮するように滑降時の操作性を制御する配慮はなされていない。そのため、従来の制動溝を備えるスキー板は、下りの急斜面では滑降時の滑走スピードの制御が難しく、スキーを操作するスキーヤーの技量によっては行動範囲が制限されていた。
本考案の目的は、滑降時の滑走スピードの制御が容易なスキー板を提供することにある。
本考案の他の目的は、ビギナーでも安全に操作できるスキー板を提供することにある。
本考案のスキー板は、1以上の順制動パターンと1以上の逆制動パターンとを備えている。順制動パターンは、滑走面にスキー板の前端から後端に向かう順方向の力が作用するときには制動力を発揮せず、滑走面に順方向とは逆の方向に向かう逆方向(スキー板の後端から前端に向かう方向)の力が作用するときに制動力を発揮するようにスキー板の滑走面を含む裏面部に形成されている。言い換えると順制動パターンは、スキー板の滑走方向(前述の逆方向に相当)にスキー板が移動する際に移動の抵抗とならないように機能し、滑走方向とは反対の方向(前述の順方向に相当)にスキー板が移動する際に移動の抵抗となるように機能する。
これに対して、逆制動パターンは、滑走面に順方向の力が作用するときに制動力を発揮し、滑走面に逆方向の力が作用するときには制動力を発揮しないようにスキー板の滑走面を含む裏面部に形成されている。言い換えると逆制動パターンは、スキー板が滑走方向(前述の逆方向に相当)に移動する際に移動の抵抗となるように機能し、滑走方向とは反対の方向(前述の順方向に相当)に移動する際に移動の抵抗とならないように機能する。すなわち、逆制動パターンが制動力を発揮する方向(スキー板が移動する際の抵抗となる方向)は、順制動パターンが制動力を発揮する方向と反対の方向になる。
本考案では、このような順制動パターン及び逆制動パターンが滑走面に設けられているため、例えば上りの斜面をスキー板で登るときにはスキー板の後滑りを抑制し、下りの斜面をスキー板で滑り降りるときには、滑走スピードが速くなり過ぎるのを抑制することが可能になる。そのため、滑走スピードが加速し易い下りの急斜面でも、滑走スピードを自然と制動できるため、スキーの行動範囲を広げることができ、ビギナーも安心してスキーを楽しむことができる。
なお、逆制動パターンの総面積(逆制動パターンが1つの場合は順制動パターンの面積)が順制動パターンの総面積(順制動パターンが1つの場合は逆制動パターンの面積)よりも大きくなると、滑走方向への抵抗が滑走方向と反対の方向への抵抗よりも大きくなって、逆制動パターンの存在が本来の滑走機能を低下させる。そのため、1以上の順制動パターンの総面積は、1以上の逆制動パターンの総面積よりも大きくするのが好ましい。具体的には、逆制動パターンの総面積は、順制動パターンの総面積の55〜75%にするのが好ましい。順制動パターンの総面積に対して、逆制動パターンの総面積が55%を下回ると、滑走の抵抗が不十分で滑走スピードの制動が不十分になり、75%を上回ると滑走の抵抗が大きくなり過ぎるため滑走スピードを思うように上げることができない問題が生じる。
順制動パターンの形状および逆制動パターンの形状は任意である。例えば、順制動パターンの形状は、逆方向に向かうに従って滑走面が含まれる仮想面からの距離が長くなるように傾斜する順傾斜面を備える形状にすることができる。「滑走面が含まれる仮想面」とは、通常の滑走状態において、雪の表面と接触するスキー板の滑走面の大部分が含まれる仮想の面である。この順傾斜面のスキー板の前端側に位置する端部(仮想面からの距離が最も長くなる部分)と滑走面との間には段差が形成される。言い換えると、順制動パターンは、このような順傾斜面と段差とを備える凹部としてスキー板の滑走面を含む裏面部に形成される。順制動パターンをこのような形状にすると、順方向(スキー板の前端から後端に向かう方向)の力が作用するときは、順傾斜面の端部に位置する段差及び順傾斜面が大きな抵抗となることはない。そして逆方向(スキー板の後端から前端に向かう方向)の力が作用するときは、滑走面と順傾斜面との間の段差が大きな抵抗となる。そのため、特に斜面をスキー板で登るときに、スキーの後滑りを抑制することができる。
これに対して、逆制動パターンの形状は、順方向に向かうに従って滑走面が含まれる仮想面からの距離が長くなるように傾斜する逆傾斜面を備えた形状にすることができる。逆傾斜面のスキー板の後端側に位置する端部(仮想面からの距離が最も長くなる部分)と滑走面との間には段差が形成される。言い換えると、逆制動パターンは、このような逆傾斜面と段差とを備える凹部としてスキー板の滑走面を含む裏面部に形成される。逆制動パターンをこのような形状にすると、逆方向(スキー板の後端から前端に向かう方向)の力が作用するときは、逆傾斜面の端部に位置する段差及び逆傾斜面が大きな抵抗となることはない。そして順方向(スキー板の前端から後端に向かう方向)の力が作用するときは、滑走面と順傾斜面との間の段差が大きな抵抗となる。そのため、特にスキー板で斜面を下る際の滑走スピードの増加を抑制することができる。
なお、順制動パターンの順傾斜面の形状および逆制動パターンの逆傾斜面の形状も任意である。順傾斜面及び逆傾斜面をスキー板の表面部側に向かって凸となる弧状を呈する輪郭形状とすると、順傾斜面および逆傾斜面と滑走面との間に形成される段差または凹部の容積を可能な限り大きくすることができる。
また、順制動パターンおよび逆制動パターンとして、上述の順傾斜面および逆傾斜面をスキーの裏面部に形成する代わりに、ある一定方向に外力が作用する場合にはこの一定方向と逆の方向に抵抗力を発揮し、かつこの一定方向と逆の方向に外力が作用する場合にはこの一定方向に抵抗力を発揮しない表面を厚み方向に有するシール材を用いてもよい。このようなシール材を順制動パターンとして用いる場合は、抵抗力を発揮する方向が上述の順方向(スキー板の前端から後端に向かう方向)となり、抵抗力を発揮しない方向が上述の逆方向(スキー板の後端から前端に向かう方向)となるように、シール材をスキー板の裏面部に取り付ければよい。またシール材を逆制動パターンとして用いる場合は、抵抗力を発揮する方向が上述の逆方向(スキー板の後端から前端に向かう方向)となり、かつ抵抗力を発揮しない方向が上述の順方向(スキー板の前端から後端に向かう方向)となるように、シール材をスキー板の裏面部に貼り付ければよい。なお、1以上の順制動パターンおよび/または1以上の逆制動パターンは、1枚のシール材からなる1つのパターンとして構成しもよく、複数枚のシール材からなる複数のパターンとして構成してもよい。
1以上の順制動パターンと1以上の逆制動パターンは、これらのパターンによって得ようとする効果に応じて様々に配置することができる。例えば、1以上の順制動パターンが形成される順制動エリアと、1以上の逆制動パターンが形成される逆制動エリアとを適宜に組み合わせてもよい。順制動エリアは、1以上の順制動パターンの存在により、スキー板で斜面を登るときに抵抗となる抵抗効果を発揮し、逆制動エリアは、スキー板で斜面を下るときに抵抗となる抵抗効果を発揮する。
一般に、スキーの初心者は、下り斜面では、スキー板の滑走スピードが加速し易いこと、または恐怖心を抱くこと等の理由から、下りの斜面ではいわゆる後傾姿勢(スキー板の後方側に荷重がかかった状態)になり易い。特に下りの急斜面ともなれば、初心者に限らず中級者や上級者でも後傾姿勢になる傾向がある。このような後傾姿勢では、雪面からスキー板への荷重がスキー板の滑走面の後端側に偏るため、荷重抵抗が小さくなって滑走スピードが加速し易くなる。すなわち、後形姿勢になればなるほど(荷重抵抗が小さくなればなるほど)、滑走スピードが増加し易くなる。そこで、逆制動エリアを滑走面の長手方向の中心よりも後端寄りの領域に形成することにより、後傾姿勢で滑降した場合に、滑走面の後端寄りに存在する逆制動パターンが、抵抗効果を発揮して、下り斜面で制動が容易になる。逆制動エリアを形成する位置は、滑走面の長手方向の中心よりも後端寄りの位置でも、特に滑走面の後端に近い端部領域に形成するのが好ましい。このような位置に逆制動エリアを設けると、滑走面の後端側の端部に偏った荷重が加わった場合でも、滑走面の後端に近い端部領域に形成された逆制動パターンが、抵抗効果を発揮する。そのため、下りの急斜面のような後傾姿勢になり易い状況でも、滑走スピードが速くなり過ぎないように制御することができる。
一方、上りの斜面では、前傾姿勢(スキー板の前方側に荷重がかかった状態)になり易い。このような前傾姿勢では、雪面への荷重がスキー板の滑走面の前端側に偏るため、滑走面の前端寄りに後滑りを抑制する手段を設けるのが好ましい。そこで、順制動エリア及び逆制動エリアは、滑走面の長手方向に沿って前端側から、順制動エリア、逆制動エリアの順に形成する。すなわち、滑走面の前端寄りの位置に順制動エリアを設け、滑走面の後端寄りの位置に逆制動エリアを設ける。このようにすると、斜面を登る場合のように雪面への荷重がスキー板の滑走面の前端側に偏り易い状況でも、滑走面の前端寄りに設けられた順制動エリアが抵抗効果を発揮して、後滑りを確実に抑制することができる。
上述のように、滑走面の前端側に順制動エリアを設け、滑走面の後端側に逆制動エリアを設けた場合は、比較的傾斜が急な斜面では、順制動エリアが上りの斜面で機能し、逆制動エリアが下りの斜面で機能する。しかしながらある程度スキー技術が上達すると、スキーヤーは極端な後傾姿勢及び前傾姿勢を取ることがない。そのため上級者になればなるほど、滑走面の前端側または後端側のいずれか一方に偏った荷重がかからないようになるため、滑走面の前端寄りの位置に順制動エリアを設け、滑走面の後端寄りの位置に逆制動エリアを設けるだけでは、抵抗効果を十分に発揮できない。そこで、上級者向けには、順制動エリア及び逆制動エリアは、滑走面の長手方向に沿って交互に形成するのが好ましい。このような構成にすると、この滑走面に交互に形成された順制動エリアと逆制動エリアとが、斜面の傾斜角度の緩急に拘わらず、バランス良く制動力を発揮することができる。そのため、スキーの後滑りを抑制し、かつ滑走スピードを適宜に抑制することができる。
なお、上述した逆制動パターンの総面積と順制動パターンの総面積との関係と同様の理由から、逆制動エリアの総面積は、順制動エリアの総面積の55〜75%にするのが好ましい。
順制動エリアは、1以上の順制動パターン列が順制動エリアに含まれるように構成し、逆制動エリアは、1以上の逆制動パターン列が逆制動エリアに含まれるように構成してもよい。順制動パターン列は、スキー板の長手方向と直交する幅方向に2以上の順制動パターンを並べて構成し、逆制動パターン列は、スキー板の長手方向と直交する幅方向に2以上の逆制動パターンを並べて構成することができる。このような順制動パターン列及び逆制動パターン列を順制動エリア及び逆制動エリアに設けると、必要とする後滑り抑制の程度及び滑走スピードの低減の程度に応じて、順制動パターン列及び逆制動パターン列の数を適宜に選択すればよいので、設計が容易になる。また、滑走面上に順制動パターン及び逆制動パターンを規則的に形成することができるため、スキー板の滑走面に美観を付与することができる。
(A)及び(B)は、本考案の実施の形態に係るスキー板の一例を示す平面図および底面図である。 図1(B)において、1つの順制動パターンを拡大して示した図である。 図1(B)において1つの逆制動パターンを拡大して示した図である。 図1(B)のIV−IV線切り欠き断面図である。 図1(B)は、V−V線切り欠き断面図である。 本考案の実施の形態に係るスキー板の他の一例を示す図である。 本考案の実施の形態に係るスキー板のさらに他の一例を示す図である。
以下、本考案を実施するためのスキー板の一例を詳細に説明する。図1(A)及び図1(B)は、本考案の実施の形態に係るスキー板の一例を本体部分とするスキーの平面図および底面図である。図2は、図1(B)において、1つの順制動パターンを拡大して示した図である。図3は、図1(B)において1つの逆制動パターンを拡大して示した図である。図4は、図1(B)のIV−IV線切り欠き断面図である。図5は、図1(B)は、V−V線切り欠き断面図である。図1(A)及び(B)に示すスキーでは、スキー板1の表面部の長手方向のほぼ中央部に公知のベンディング機構2が取り付けられている。また、図1(B)に示すように、スキー板1の裏面部1bの大部分は、スキー板1の滑走面1cを構成する。滑走面1cの幅方向のほぼ中央には、スキーの横滑りを抑制するため、前端1dから後端1eに向かって延びる公知の溝4が形成されている。そしてスキー板1の裏面部1bの滑走面1c及び溝4が形成されていない部分に、複数の順制動パターン3及び複数の逆制動パターン5が形成されている。
順制動パターン3の形状は、任意である。本例では、順制動パターン3の形状は、図2及び図4に示すような形状になっている。具体的には、図2に示すように、スキー板1の前端1dから後端1eに向かう方向を順方向FDとし、スキー板1の後端1eから前端1dに向かう方向(順方向FDとは逆の方向に向かう方向)を逆方向RDとした場合に、順制動パターン3の形状は、逆方向RDに向かうに従って滑走面1cを含む仮想面VSからの距離d1が長くなるように傾斜する傾斜面3a(順傾斜面)を備える形状になっている。なお、滑走面1cを含む仮想面VSは、図4に示すように、滑走面1cに対して順制動パターン3が形成されていない部分と、順制動パターン3が形成されている部分であって滑走面1cとほぼ面一となる実際には存在しない面とからなる仮想面である。本例では、順制動パターン3の傾斜面3aは、図4に示すように、仮想面VSを基準に逆方向RDに向かって傾斜するテーパを構成する。そのため、仮想面VSからの距離d1が最も長くなる部分3b(スキー板1の前端1d側に位置するテーパの端部)には、仮想面VS(滑走面1c)と傾斜面3aとの段差を構成する壁面3cが構成される。
さらに、順制動パターン3の輪郭形状は、傾斜面3aが逆方向RDに向かって凸となる弧状を呈する輪郭形状にするのが好ましい。具体的には、図1、図2及び図4に示すように、順制動パターン3の壁面3cが、仮想面VSに対してほぼ直交しかつスキー板1の底面から見たときに弧状を呈し、かつ傾斜面3aが仮想面VSから弧状の壁面3c(端部3b)に向かって放射状に傾斜する形状になっている。すなわち、順制動パターン3は、このような放射状に傾斜するテーパ(傾斜面3a)と弧状の段差(壁面3c)とを備える凹部6としてスキー板1の裏面に形成される。
このような順制動パターン3により、滑走面1cに順方向FDの力が作用するときには、順制動パターン3の傾斜面3a(仮想面VSを基準に逆方向RDに向かって傾斜するテーパ)が大きな抵抗となることはなく、滑走面1cに逆方向RDの力が作用するときには、順制動パターン3の壁面3c(仮想面VSと傾斜面3aとの段差)が大きな抵抗となる。すなわち、順制動パターン3は、スキーの滑走方向(逆方向RD)に図1のスキーが移動する際に制動力を発揮しないように機能し、スキーの滑走方向とは反対の方向(順方向FD)にスキーが移動する際に制動力を発揮するように機能する。
逆制動パターン5の形状も、任意である。本例では、逆制動パターン5の形状は、図5に示すように、順方向FDに向かうに従って仮想面VSからの距離d2が長くなるように傾斜する傾斜面5a(逆傾斜面)を備える形状になっている。逆制動パターン5の傾斜面5aは、仮想面VSを基準に順方向FDに向かって傾斜するテーパを構成する。その結果、仮想面VSからの距離d2が最も長くなる部分5b(スキー板1の後端1e側に位置するテーパの端部)には、仮想面VS(滑走面1c)と傾斜面5aとの間に段差を構成する壁面5cが構成される。
さらに、逆制動パターン5の輪郭形状は、傾斜面5aが順方向FDに向かって凸となる弧状を呈する輪郭形状になっている。具体的には、図1、図3及び図5に示すように、逆制動パターン5の壁面5cが、仮想面VSに対してほぼ直交し、スキー板1の底面から見たときに順方向FDに向かって凸となる弧状を呈し、かつ傾斜面5aが仮想面VSから弧状の壁面5c(端部5b)に向かって放射状に傾斜する形状になっている。すなわち、逆制動パターン5は、このような放射状に傾斜するテーパ(傾斜面5a)と弧状の段差(壁面5c)とを備える凹部8としてスキー板1の底面に形成される。つまり、逆制動パターン5の形状は、順制動パターン3とスキー板1の長手方向に180°反転したほぼ面対称の形状になっている。
このような形状の逆制動パターン5は、滑走面1cに順方向FDの力が作用するときには、逆制動パターン5の壁面5c(仮想面VSと傾斜面5aとの段差)が大きな抵抗となり、滑走面1cに逆方向RDの力が作用するときには、傾斜面5a(仮想面VSを基準に順方向FDに向かって傾斜するテーパ)が大きな抵抗となることはない。すなわち、逆制動パターン5は、スキーの滑走方向(逆方向RD)にスキーが移動する際に制動力を発揮するように機能し、スキーの滑走方向とは反対の方向(順方向FD)に図1のスキーが移動する際に制動力を発揮するように機能する。言い換えると、逆制動パターン5が制動力を発揮する方向は、順制動パターン3が制動力を発揮する方向と反対の方向になる。その上本例では、傾斜面3a(順傾斜面)の輪郭形状が逆方向RDに向かって凸となる弧状を呈する輪郭形状になっており、傾斜面5a(逆傾斜面)の形状が順方向FDに向かって凸となる弧状を呈する輪郭形状になっているため、傾斜面3aおよび傾斜面5aを構成するテーパの面積を小さくしながら、仮想面VSとテーパ(傾斜面3a及び5a)との間に形成される壁面3c及び壁面5c(段差または凹部6および8の容積)を可能な限り大きくすることができる。
順制動パターン3の総面積は、逆制動パターン5の総面積よりも大きくするのが好ましい。具体的には、逆制動パターン5の総面積を順制動パターン3の総面積の55〜75%にするのが好ましい。本例では、スキー板1の滑走面1cに、相互にほぼ同一の面積を有するテーパ(傾斜面3a)を備える40個の順制動パターン3が形成され、順制動パターン3のテーパ(傾斜面3a)とほぼ同一面積のテーパ(傾斜面5a)を備える26個の逆制動パターン5が形成されている。これを各パターン(テーパ)の総面積の比に換算すると、逆制動パターン5(傾斜面5a)の総面積は、順制動パターン3(傾斜面3a)の総面積の約65.0%になる。このように、順制動パターン3の総面積を逆制動パターン5の総面積よりも大きくすると、逆制動パターン5の数が順制動パターン3の数に対して相対的に少なくなるため、スキーの滑走方向(逆方向RD)への抵抗が滑走方向と反対方向(順方向FD)への抵抗よりも大きくなる(逆制動パターン5がスキー本来の滑走機能の低下)を防ぐことができる。
ここで、逆制動パターンの総面積を順制動パターンの総面積の55〜75%とする根拠を説明するため、以下の実施例1〜3及び比較例1及び2について滑走試験を行った。実施例1〜3及び比較例1及び2には、順制動パターン及び逆制動パターンとして傾斜面3a及び傾斜面5aを有する順制動パターン3及び逆制動パターン5が形成されたスキー板を用いた。滑走試験は、傾斜角度約7°、長さ300mの斜面にて、スキー板の自重70kg、初速度0km/hの条件で、実施例1〜3及び比較例1及び2を直線的に滑走させ、スキー板の滑走性(滑走時間及び静止位置)を比較した。滑走試験は、滑走性の程度に応じて、○:良好、×:不良、△:やや不良、の3段階の評価で行った。実施例1〜3及び比較例1及び2の条件および評価を表1に示す。
Figure 0003157192
表1より、実施例1〜実施例3は、いずれも良好な滑走性を示した(○の評価)。これに対して、比較例1では、スキーの滑走方向(逆方向RD)に対する制動力が小さく(△の評価)、比較例2では、スキーの滑走方向(逆方向RD)に対する制動力が大きくなり過ぎる結果となった。この結果から、本考案では、順制動パターンの総面積に対する逆制動パターンの総面積の最適比率を55〜75%とした。
本例では、得ようとする効果に応じて順制動パターン3および逆制動パターン5を様々に配置することができる。例えば、スキー板1の裏面部1bのうち、順制動パターン3が形成されるエリアを順制動エリア7とし、逆制動パターン5が形成されるエリアを逆制動エリア9とするスキー板1を構成する。順制動エリア7は、複数の順制動パターン3の存在により、スキーの滑走方向(逆方向RD)と反対方向(順方向FD)に抵抗力を発揮し、逆制動エリア9は、複数の逆制動パターン5の存在により、滑走方向(逆方向RD)に抵抗力を発揮する。このような条件の下、逆制動エリア9が、滑走面1cの後端1e側に形成されている。より好ましくは、滑走面1cの長手方向の中心よりも後端1e寄りの領域1fに逆制動エリア9を形成する。本例のように、逆制動エリア9を滑走面1cの長手方向の中心よりも後端1e寄りの領域1fに形成すると、スキーヤーが後傾状態で滑降した場合(滑走面1cに順方向FDの力が作用するとき)でも、滑走面1cの後端1e側に存在する逆制動パターン5が制動力を発揮することができる。特に後端1eに近い端部領域1eに逆制動エリア9を設けると、滑走面1cの後端1e側の端部1dに偏った荷重が加わった場合でも、滑走面1cの後端1e側の端部1dに形成された逆制動パターン5が、制動力を発揮することができる。
なお、図1(B)に示すように、本例のスキー板1では、順制動エリア7及び逆制動エリア9が、滑走面1cの長手方向に沿って前端1d側から後端1e側に向かって順制動エリア7、逆制動エリア9の順に形成されている。本例のように、滑走面1cの前端1d側に順制動エリア7を設け、滑走面1cの後端1e側に逆制動エリア9を設けることによって、上りの斜面のような雪面への荷重がスキー板1の滑走面1cの前端1d側に偏り易い状況でも、滑走面1cの前端1d側に存在する順制動パターン3が制動力を発揮するように機能するため、上り斜面での後滑りを確実に防ぐことができる。
なお、上述のように、順制動パターン3の総面積を逆制動パターン5の総面積よりも大きくするのと同様に、順制動エリア7の総面積を逆制動エリア9の総面積よりも大きくするのが好ましい。具体的には、逆制動エリアの総面積を順制動エリアの総面積の55〜75%にするのが好ましい。本例では、順制動エリア7に40個の順制動パターン3(相互に同一面積の傾斜面3aを有する)が形成され、逆制動エリア9に26個の逆制動パターン5(それぞれ順制動パターンと同一面積の傾斜面5aを有する)が設けられており、逆制動エリア9(滑走面1cの一部及び順制動パターン3の傾斜面3a)の総面積は、順制動エリア7の総面積(滑走面1cの一部及び逆制動パターン5の傾斜面5a)の約61.5%となっている。
なお、図1(B)に示すように、順制動エリア7は、1以上の順制動パターン列11が順制動エリア7に含まれるように構成し、逆制動エリア9は、1以上の逆制動パターン列13が逆制動エリア9に含まれるように構成するのが好ましい。本例では、スキー板1の長手方向と直交する幅方向に2個の順制動パターン3が並んで構成された20本の順制動パターン列11が滑走面1cの順制動エリア7に含まれている。また、スキー板1の長手方向と直交する幅方向に2個の逆制動パターン5が並んで構成された13本の逆制動パターン列13が滑走面1cの逆制動エリア9に含まれている。本例のように順制動パターン列11及び逆制動パターン列13を順制動エリア7及び逆制動エリア9に設けると、必要とする後滑りの抑制及び滑走スピードの制御の程度に応じて、スキー板1の滑走面1cに形成する順制動パターン3の数及び逆制動パターン5の数を適宜選択すればよい(スキー板1の設計が容易になる)。その上、滑走面1c上に順制動パターン3及び逆制動パターン5を規則的に形成することができるため、スキー板1の滑走面1cに美観を付与することができる。
本例では、上述のように順制動エリア7に20本の順制動パターン列11が含まれており、また、逆制動エリア9に13本の逆制動パターン列13が含まれているため、「順制動エリア7に含まれる順制動パターン列11を2以上とし、逆制動エリア9に含まれる逆制動パターン列13を1以上とする」条件を満たしている。
図6は、本考案の他の実施の形態に係るスキー板を本体部分とするスキーの底面図である。図6に示す他の一例では、図1(B)で説明した本実施の形態と同様の部分について、図1(B)で付した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。また、図6に示す他の一例において、図1(A)及び図2〜図5に相当する部分については、図6に示す他の一例と構成が同一であるため図示を省略する。この図6に示す他の一例では、順制動エリア107及び逆制動エリア109が、滑走面1cの長手方向に沿って交互に形成されている。具体的には、図6に示すように、4個の順制動パターン103が形成された順制動エリア107a〜107j(10個の順制動エリア107)が、滑走面1cの長手方向に沿って(滑走面101cの前端101dから後端101eに向かって順番に)設けられている。一方、2個の逆制動パターン105が形成された逆制動エリア109a〜109i(9個の逆制動エリア109)が、順制動エリア107a〜107jの隣り合う2個の順制動エリア間にそれぞれ挟まれるように、滑走面1eの長手方向に沿って(滑走面101cの前端101dから後端101eに向かって順番に)設けられている。さらに、滑走面101cの後端101e側には8個の逆制動パターン105が形成された逆制動エリア109j(1個の逆制動エリア)が最も後端101e側に設けられた順制動エリア107jと隣接するように設けられている。このように図6に示す他の一例では、スキーヤーがスキー板1に対して垂直状態で滑走する場合でも、スキー板1の滑走面1cに交互に形成された順制動エリア107(順制動エリア107a〜107j)と逆制動エリア109(逆制動エリア109a〜109j)とが、傾斜の緩急に拘わらず上りまたは下りの斜面あるいは平坦な場所に応じて、バランス良く制動力を発揮することができる。
なお、上述のように、順制動エリア107(順制動エリア107a〜107j)と逆制動エリア109(逆制動エリア109a〜109j)とを滑走面1cの長手方向に沿って交互に形成する場合でも、順制動エリア107に含まれる順制動パターン列11を2以上とし、逆制動エリア109に含まれる逆制動パターン列13を1以上とするのが好ましい。図6に示す他の一例では、逆制動エリア109jに4本の逆制動パターン列113が含まれている点を除き、順制動エリア107a〜107jにそれぞれ2本の順制動パターン列111が含まれているのに対して、逆制動エリア109a〜109jにはそれぞれ1本の逆制動パターン列113が含まれている。順制動エリア107と逆制動エリア109とを滑走面1cの長手方向に沿って交互に形成する場合に、順制動パターン列111の数と逆制動パターン列113の数とをこのような比率にすることにより、雪面からスキー板101への荷重が滑走面101cのどの部分に加わっても、順制動エリア107による制動力と逆制動エリア109による制動力とをバランス良く発揮することができる。
なお、図6に示す他の一例では、逆制動エリア109のうち逆制動エリア109a〜109jにそれぞれ1本の逆制動パターン列113が含まれているのに対して、最も後端101e側に位置する逆制動エリア109jだけが4本の逆制動パターン列113を含んで構成されている。このようにしたのは、図6に示す他の一例においても、スキーが下りの斜面を滑降する際にスキーヤーが後傾姿勢になった場合に(雪面から荷重がスキー板1の後端101e側に偏って加わった場合に)、滑走スピードが速くなり過ぎないようにするためである。
図7は、本考案のスキー板のさらに他の一例を示す図である。図7の例では、図1(B)で説明した本実施の形態と同様の部分について、図1(B)で付した符号の数に200の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。この例では、スキー板201の裏面部201bの逆制動エリア209に、逆制動パターン205として樹脂製のシール材(シール材215)が取り付けられている。シール材215は、厚み方向に表面215a及び裏面(図示せず)を有する1枚のシート状部材で構成されている。シール材215の表面215aは、ある一定方向に外力が作用する場合にはこの一定方向と逆の方向に抵抗力を発揮し、この一定方向と逆の方向に外力が作用する場合にはこの一定方向には抵抗力を発揮しない機能を有する。シール材215の裏面には、接着材が塗布されて形成された図示しない接着層が設けられており、シール材215はこの裏面の接着層を介してスキー板201aの裏面部201bに貼り付けられている。
この例では、シール材215が逆制動パターン205として機能するため、上述の抵抗力を発揮する方向が逆方向RDとなり、抵抗力を発揮しない方向が順方向FDとなるように、シール材215がスキー板201の裏面部201bに貼り付けられている。なお、順制動パターン203は、図1(B)、図2および図4に示す例と同様に、順制動パターン3の傾斜面3aと同様の傾斜面を有する順制動パターンとしてスキー板201の裏面部201bに形成されている。このように、傾斜面を有する順制動パターンとシール材で構成された逆制動パターンを組み合わせても、傾斜面を有するパターンだけで順制動パターンと逆制動パターンを構成した場合と同様の効果を得ることができる。なお、この例では、シール材が逆制動パターンのみに用いられているが、シール材を順制動パターンと逆制動パターンの両方に用いてもよく、またシール材を順制動パターンのみに用いてもよい。また、本例のように順制動パターンおよび/または逆制動パターンとしてシール材を用いる場合は、順制動パターン(順制動エリア)の総面積に対する逆制動パターン(逆制動エリア)の総面積の比率は、傾斜面を有するパターンだけで順制動パターンと逆制動パターンを構成した場合と同様の効果が得られるように適宜変更すればよい。
以上説明した、順制動パターン、順制動エリア、順制動パターン列、逆制動パターン、逆制動エリア及び逆制動パターン列のそれぞれの形状、大きさ、位置、範囲及び配置間隔等は、図1〜図7に示すものに限定されるものでない。すなわち本考案は、本考案の目的及び効果を達成するものである限り、上記の実施の形態に限定されるものでないのは勿論である。
本考案によれば、1以上の順制動パターン及び1以上の逆制動パターンが設けられているため、上りの斜面または平坦な場所では(歩行時には)スキーの後滑りを抑制し、下りの斜面でも(滑走時または滑降時には)滑走スピードが速くなり過ぎないようにスキーを制御することが可能になる。そのため、スキーの行動範囲を広げることができ、ビギナーも容易にスキーを操作することができる。
1 スキー板
1b,101b 裏面部
1c,101c 滑走面
1d,101d 前端
1e,101e 後端
1f,101f 後端寄りの領域
1e,101e 端部領域
FD 順方向
RD 逆方向
3 順制動パターン
3a 傾斜面(順傾斜面)
5 逆制動パターン
5a 傾斜面(逆傾斜面)
7 順制動エリア
9 逆制動エリア
11,111 順制動パターン列
13,113 逆制動パターン列

Claims (11)

  1. 滑走面に前端から後端に向かう順方向の力が作用するときには制動力を発揮せず、前記滑走面に前記順方向とは逆の方向に向かう逆方向の力が作用するときに制動力を発揮する1以上の順制動パターンと、
    前記滑走面に前記順方向の力が作用するときに制動力を発揮し、前記滑走面に前記逆方向の力が作用するときには制動力を発揮しない1以上の逆制動パターンとが、前記滑走面を含む裏面部に形成されていることを特徴とするスキー板。
  2. 前記1以上の順制動パターンの総面積が、前記1以上の逆制動パターンの総面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のスキー板。
  3. 前記逆制動パターンの総面積が前記順制動パターンの総面積の55〜75%である請求項2に記載のスキー板。
  4. 前記滑走面には、前記順制動パターンが形成される順制動エリアと、前記逆制動パターンが形成される逆制動エリアとが形成され、
    前記逆制動エリアが前記滑走面の長手方向の中心よりも後端寄りの領域に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスキー板。
  5. 前記逆制動エリアが前記滑走面の後端に近い端部領域に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のスキー板。
  6. 前記順制動エリア及び前記逆制動エリアは、前記滑走面の長手方向に沿って前記前端側から前記順制動エリア、前記逆制動エリアの順に形成されている請求項4または5に記載のスキー板。
  7. 前記順制動エリアと前記逆制動エリアとが、前記滑走面の長手方向に沿って交互に形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のスキー板。
  8. 前記逆制動エリアの総面積が前記順制動エリアの総面積の55〜75%である請求項6または7に記載のスキー板。
  9. 前記順制動パターンは、前記逆方向に向かうに従って前記滑走面が含まれる仮想面からの距離が長くなるように傾斜する順傾斜面を備えており、
    前記逆制動パターンは、前記順方向に向かうに従って前記滑走面が含まれる仮想面からの距離が長くなるように傾斜する逆傾斜面を備えている請求項1乃至8のいずれか1項に記載のスキー板。
  10. 前記順傾斜面の輪郭形状は、前記逆方向に向かって凸となる弧状を呈しており、前記逆傾斜面の輪郭形状は前記順方向に向かって凸となる弧状を呈している請求項9に記載のスキー板。
  11. 前記順制動エリアには、前記長手方向と直交する幅方向に2以上の順制動パターンが並んで構成される1以上の順制動パターン列が含まれており、
    前記逆制動エリアには、前記長手方向と直交する幅方向に2以上の逆制動パターンが並んで構成される1以上の逆制動パターン列が含まれている請求項4乃至8に記載のスキー板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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RU2540870C1 (ru) * 2013-11-26 2015-02-10 Аскат Ахметович Азнабаев Лыжа

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