JP3154468B2 - 受音方法及びその装置 - Google Patents

受音方法及びその装置

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JP3154468B2 JP6314096A JP6314096A JP3154468B2 JP 3154468 B2 JP3154468 B2 JP 3154468B2 JP 6314096 A JP6314096 A JP 6314096A JP 6314096 A JP6314096 A JP 6314096A JP 3154468 B2 JP3154468 B2 JP 3154468B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主としてコンサ
ートホールや拡声通信会議等の残響音場において、複数
のマイクロホンを用いて焦点(注目すべき点)の音を受
音する場合、各マイクロホンの出力信号に焦点から各マ
イクロホンまでの距離に応じて時間遅延を与え、それぞ
れのマイクロホンの出力和を取り出す、遅延和アレーと
呼ばれる受音方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1は2組の円周配置マイクロホンアレ
ーを持つ、遅延和アレーの原理を説明する図であると共
に、この発明の構成を示す図でもある。図1において、
1 ,12 は円周配置マイクロホンアレー、21 ,22
はマイクロホン保持フレーム、31 ,32 ,…,3m
m+1 ,3m+2 ,…3M はマイクロホン、41 ,42
…4M は遅延器、51 ,52 ,…5M は乗算器、61
2 ,…6N は加算器である。
【0003】図1に示した遅延器41 ,42 ,…4
M は、次式で示される遅延量Dikを受信信号に付加す
る。 Dik=D0 −τik i=1,2,…M ; k=1,2,…N ……… (1) τik=rik/c ……… (2) ただし、Mはマイクロホンの数、Nはマイクロホンアレ
ーの焦点の数、rikはk番目の焦点からi番目のマイク
ロホンまでの距離、cは音速を表す。D0 はD ikの値が
小さすぎて、遅延特性をディジタルフィルタで実現する
際の精度が低下するのを防ぐために付加する固定遅延量
である。
【0004】ここで、目的とする音源からの目的信号を
s(t) と表す。このとき、i番目のマイクロホンで受音
される目的信号をxsi(t) と表せば、音波の距離減衰1
/r siおよび伝搬時間τsiを用いて、 xsi(t) =(1/rsi)s(t−τsi) ……… (3) と表せる。ただし、rsiは目的音源から各マイクロホン
までの距離、τsi=rsi/cは伝搬時間を表す。
【0005】各受音信号xsiに対して、遅延器4i にお
いて遅延Dikを付加する。その結果はxsi(t−Dik
となり、式(1),(3)より xsi(t−Dik)=(1/rsi)s(t−τsi−D0 +τik) …… (4) となる。ここで、目的音源がk番目の焦点位置にあると
すると、rsi=rik,τ si=τikとなり、 xsi(t−Dik)=(1/rik)s(t−D0 ) …… (5) となる。この式から分かるように、各遅延器41
2 ,…4M からの出力xsi(t−Dik),i=1,
2,…,Mは、マイクロホン番号iによらず同位相の信
号となっていることが分かる。言い換えると、この遅延
操作によって焦点位置から到来する信号の時間差が補正
され、同相化されることが分かる。そして、同相化した
信号を乗算器51 ,52 ,…5M で乗算し、加算器
1 ,62 ,…6N において加算することで、焦点から
到来する音は強調される。一方、焦点とは異なった方向
から到来する音は、τikとは異なる伝搬時間τNiをもっ
て受音される。従って、式(5)で表されるDikによる
遅延操作では信号は同相化されず、遅延器の出力は時間
的にずれた波形となっており、これを加算しても強調効
果は小さい。以上の結果、遅延和アレーは、焦点方向に
対してのみ感度が高い指向特性を形成する。
【0006】さて、この従来形の第1の遅延和アレーに
おいて、焦点から離れた点であっても、その付近にマイ
クロホンが配置されていると、その点に対する感度が上
昇し、その点の付近に雑音源が存在するとSN比が劣化
するという問題があった。即ち非焦点位置における感度
上昇の問題である。この問題に対しては「焦点から離れ
た位置のマイクロホンの出力は使わない、または焦点か
ら離れた位置のマイクロホン出力を加算するときの荷重
を小さくする。」と言う方針で解決が試みられた。その
結果、乗算器51 ,52 ,…5M において、焦点から各
マイクロホンの距離のm乗の逆数により重み付けを行え
ば非焦点位置で感度が上昇することを防止できることが
示された(特願平6−219941「受音方法及びその
装置」)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この従来の第
2の方法では次に述べるような問題があった。即ち、焦
点位置の音源に対する感度差が発生した。具体的にはマ
イクロホンアレーに近い位置の焦点に対する感度は上昇
し、遠い位置の焦点に対する感度は低下した。次に、こ
のことを実験データに基づいて説明する。
【0008】実験では、室容積が86m3で残響時間が0.
2秒の部屋において、図1に示した2組のマイクロホン
アレー(マイクロホン総数:M=32個)を天井から吊
り下げた。そして、マイクロホンアレーから下方1.1m
の平面上に28箇所の焦点を設定した。具体的には、横
2m,縦4.8mの平面上に横0.67m×縦0.8mの格子
を描き、4×7=28箇所にマイクロホンアレーの焦点
を設定した。この格子平面の横方向をX座標、縦方向を
Y座標とする。次に、第1の焦点ps1(X,Y座標=
〔2,2〕)または、第2の焦点ps2(X,Y座標=
〔3,3〕)の位置にスピーカを設置し、ホス雑音を同
一の音量で発生させた。そして、上記28箇所に焦点を
形成した場合のマイクロホンアレーの出力信号y1 (t)
,y2 (t) ,…,y28(t) のパワーを測定し、yk (t)
ごとにその結果を等高線で示した。ただし、乗算器5
1 ,52 ,…5M の各マイクロホンゲイン(乗算係数)
ikは、従来の第2の方法〔特願平6−219941
「受音方法及びその装置」〕に示したように、焦点から
各マイクロホンまでの距離rikの逆数により重み付けさ
れている(gik=1/rik)。
【0009】図5は、音源を第1の焦点ps1に設置した
場合のy1 (t) より求めたパワー分布であり、図6は、
音源を第2の焦点ps2に設置した場合のy2 (t) より求
めたパワー分布である。両図からも明らかなように、マ
イクロホンアレーの出力は、音源のある焦点位置で最も
高い。しかし、音源を第1の焦点ps1に配置した場合の
出力パワーの値は約−24dBであり(図5)、音源を第
2の焦点ps2に配置した場合の出力パワーの値は約−2
8dBである(図6)。即ち、音源位置がps1とps2とで
は約4dBのレベル差が生じていることが分かる。このよ
うに、従来法においては、音源から出る音の大きさが同
じであっても、音源の置かれる焦点位置によってアレー
の出力レベルが異なるという問題点があった。この問題
点は実用上は、(i)位置の異なる話者に焦点を向けた
ときの音量変化、(ii) 音源位置の検出に対する障害、
という問題点を生じる。
【0010】本発明の目的は、従来の遅延和アレー装置
が持つ前記欠点を解決し、音源の存在する焦点位置にか
かわらず、同じレベルで高い信号対雑音比の信号を収音
することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1の発明は、焦点からの音を複数のマイク
ロホンを用いて受音する方法であって、第i番目のマイ
クロホンの出力信号に対して、前記焦点から第i番目の
マイクロホンまでの距離に応じて時間遅延を与えると共
に、前記距離の累乗値の逆数を乗算し、それらの乗算し
た信号を加算し、加算した信号に含まれる焦点位置に置
かれた音源の直接音成分のパワーと残響音成分のパワー
の和に応じて加算結果を正規化した後出力する。
【0012】(2)請求項2の受音装置は、焦点からの
音を受音する複数のマイクロホン(i=1,2,…,
M)と、それらの各マイクロホンの出力信号に、前記焦
点から各マイクロホンまでの距離(ri )に応じて遅延
させる遅延手段と、前記各マイクロホンの出力信号を前
記距離(ri )の累乗値の逆数(ri -m)を乗算する乗
算手段と、前記乗算手段および遅延手段により処理され
た各マイクロホンの出力信号を加算する加算手段と、加
算した信号に含まれる焦点位置に置かれた音源の直接音
成分のパワーと残響音成分のパワーの和に応じて該信号
の正規化を行う正規化手段とより構成される。
【0013】(3)請求項3の発明は、前記(2)にお
いて、遅延手段による遅延時間Di(i=1,2,…,
M)が、Di =D0 −τi ; τi =ri /c (D0
は固定遅延、cは音速)に設定されている。 (4)請求項4の発明は、前記(2)および(3)にお
いて、正規化手段における正規化係数√Cは、室内の臨
界距離をrC とすると、 √C=√〔{Σj=1 M (1/rj m+1)}2+(1/rc 2){Σj=1 M (1
/rj 2m) }〕 と設定されている。
【0014】(5)請求項5の発明は、前記(2),
(3)および(4)において、複数の焦点の各々に対応
する複数の前記正規化した信号から所望の音源位置を判
定する手段と、その判定結果に基づいて該複数の信号か
ら一つまたは、複数の信号を選択して出力する手段とを
設けたものである
【0015】
【発明の実施の形態】
(1)問題の解析 上記の問題点を定量的に解析する。図1において、2組
の円周配置マイクロホンアレーにM個のマイクロホンを
取付け、遅延Dikを付加してk番目の位置に焦点を形成
した場合を考える。音源がk番目の焦点位置に置かれた
とき、マイクロホンの出力信号は式(5)より次式で表
される。
【0016】 yk (t) =Σi=1 M iksi(t−Dik) =Σi=1 M (gik/rik)s(t−D0) …… (6) 従来の第2の方法では、式(6)において、マイクロホ
ンの出力信号の信号対雑音比を高くするために、各マイ
クロホンゲイン(乗算係数)gikをk番目の焦点からi
番目のマイクロホンまでの距離rikのm乗の逆数rik -m
(ただし、1≦m≦3)として重み付けを行っていた。
そこで、gik=1/rik m を式(6)に代入して次式が
得られる。
【0017】 yk (t) =Σi=1 M (1/rik m+1)s(t−D0) …… (7) 従って、k番目の位置に焦点を形成し、その焦点位置に
音源がある場合のマイクロホンアレーの出力の絶対値の
2乗平均値(パワー)は次式で表せる。 |yk (t) |2 AV=|Σi=1 M (1/rik m+1)s(t−D0)|2 AV =|Σi=1 M (1/rik m+1)|2 |s2(t−D0)|AV …… (8) (8)式の添字AVは時間平均を表す。8(式)の結果
から、マイクロホンアレーの出力パワーは、焦点位置に
依存して|Σi=1 M (1/rik m+1)|2 に比例して変化
することが分かる。
【0018】(2)問題の解決方法 そこで、音源のある焦点位置にかかわらず、一定のマイ
クロホン出力の得られる方法について提案する。式
(8)より、マイクロホンアレーの出力パワー|y
k (t) |2 AV は、焦点からマイクロホンまでの距離の関
数である|Σi=1 M (1/rik m+1)|2 の項と、音源信
号の関数である|s2(t−D0)|AV の項で与えられ
る。ここで|s2(t−D0)|AVは音源信号パワーを表
し、音源のある焦点位置にかかわらず一定値である。従
って、|yk (t) |2 AVが焦点位置によらず一定値とす
るためには、式(8)を1/|Σi=1 M (1/rik m+1)
2 で正規化すればよいことが分かる。そして、そのた
めには各マイクロホンゲイン(乗算係数)gikを次式の
ように設定すればよい。
【0019】
【数1】 ただし、Mはマイクロホン数、Nはマイクロホンアレー
の焦点の数を表す。式(6)に式(9)で新たに定義さ
れたマイクロホンゲインgikを代入して、yk (t) のパ
ワーを計算すると、次式が得られる。
【0020】
【数2】 式(10)より明らかなように、音源のある焦点の位置
にかかわらず、マイクロホンアレーの出力信号パワー
は、音源信号のみの関数である|s2(t−D0)| AVとな
り、一定となる。 (3)残響が多い室内への適用 上記(2)項の問題の解決方法に従い、図1に示す2組
の円周配置マイクロホンアレーを用いて、音源検出の実
験を残響のない自由空間にて行った。音源がk番目の焦
点位置にある場合、マイクロホンアレーの信号対雑音比
が最大で、かつ出力パワーが一定となるように、マイク
ロホンゲインgikを式(9)に従って設定した。その結
果、残響のない自由空間においては、音源がある焦点位
置にかかわらず、マイクロホンアレーの信号対雑音比が
最大で、かつ出力パワーが一定となり、良好な音源検出
が実現できた。しかし、この方法では残響の多い室内で
の音源検出はうまくいかなかった。そこで、室内の臨界
距離rC の考えを導入し、マイクロホンゲインgikを次
式のように工夫した。
【0021】ここで、室内の臨界距離rC とは、音源の
直接音パワーと残響音パワーとが等しくなるまでの距離
を言う。この臨界距離rC は、rC =√(0.0032V
/T)で与えられる。ここで、Vは室容積、Tは室内の
残響時間を表す。さて、残響成分を考慮すれば、式
(3)で表された各マイクロホンの受音信号 xsi(t) は
次式のように表される。
【0022】 xsi(t) =(1/rsi)s(t−τsi) +vi (t) …… (11) ただし、vi (t) はi番目のマイクロホンで受音される
残響成分を表す。式(11)で表された各受音信号に対
して遅延Dikと荷重係数(乗算係数)gik(=1/rik
m ) を乗じて総和をとった出力信号yk (t) は式(6)
と同様に、 yk (t) =Σi=1 M iksi(t−Dik) =Σi=1 M (1/rik m) {1/rik)s(t-D0)+vi (t−Dik) } …… (12) ここで、目的信号の直接音成分s(t−D0 )と各マイ
クロホンで受音された残響成分vi (t−Dik),i=
1,2,…,Mがそれぞれ無相関であると仮定する。即
ち、 〔s(t−D0)・vi (t−Dik)〕AV=0 i=1,2,…,M; 〔vi (t−Dik)・vj (t−Djk)〕AV=0 j=1,2,…,M …… (13) と仮定する。また、各残響音成分のパワーは等しくこれ
をPq と仮定し、目的信号のパワーをPS と表す。即
ち、 Pq =|vi 2(t−Dik)|AV ; PS =|s2(t−D0)|AV …… (14) このとき、アレー出力yk (t) のパワー(2乗平均)を
計算すると、 |yk (t) |2 AV=|Σi=1 M {(1/rik m+1)s(t-D0)+(1/rik m) ×vi (t−Dik) }|2 AV =|Σi=1 M (1/rik m+1)|2 |s2(t-D0)|AV +|Σi=1 M (1/rik 2m) |〔vi 2 (t−Dik) 〕AV =|Σi=1 M (1/rik m+1)|2 Ps+|Σi=1 M (1/rik 2m) |Pq …… (15) となる。ここで、残響音のパワーは臨界距離rC におけ
る直接音のパワーに等しいので、 Pq =(1/rC 2)PS …… (16) が成立する。これより、 |yk (t) |2 =〔{Σi=1 M (1/rik m+1)}2 +(1/rc 2 ) ×{Σi=1 M (1/rik 2m)}〕Ps …… (17) となる。即ち、残響成分を考慮したアレー出力のパワー
は、焦点とマイクロホン間距離rjKと臨界距離rC を用
いれば、 Ck ={Σj=1 M (1/rjk m+1)}2 +(1/rc 2 ) ×{Σj=1 M (1/rjk 2m)} …… (18) に比例することが分かった。この式より、アレーの出力
パワーはrjKの値に依存する。即ち、焦点位置に依存す
ることが分かる。これを防ぐためには、荷重係数gik
√Ck で正規化すれば良い。即ち、gikを新たに gik=(1/√Ck ) (1/rik m ) …… (19) と定めればよい。このとき出力パワーは、 |yk (t) |2 AV=|(1/ √Ck ) Σi=1 M {(1/rik m+1)s(t−D0) +(1/rik m ) vi (t−Dik) }|2 AV =(1/Ck )[{Σj=1 M (1/rjk m+1)}2 +(1/rc 2) ×{Σj=1 M (1/rjk 2m) }〕PS =PS …… (20) となり、焦点位置に依存しなくなることが分かる。
【0023】上記式(18)に示した正規化係数CK
第1項は、(1/rik m ) を荷重係数としたときのアレ
ー出力に含まれる焦点位置に置かれた音源の直接音成分
のパワーを表し、第2項は残響音成分のパワーを表す。
自由空間などのように残響が小さい音場では臨界距離r
c は∞となり、式(18)の第2項は零となって式(1
9)と式(9)で表した自由空間における荷重係数は一
致することが分かる。なお、式(19)において1/√
k は全てのiに対して共通であるので、gik=1/r
ik m とおいて合成したyk (t) を√Ck で除して正規化
を行っても全く等価となる。
【0024】(4)実施例 図1および図4は、本発明の実施例を示す。ただし、こ
の発明では図1の乗算係数gikは前記提案済みのものと
異なり、gik=(1/√Ck )(1/rik m )とされ
る。ここでCk は定数である。図4は自動音源位置検出
機能を有する遅延和アレー(請求項5)の構成図であ
る。図4において、8はマイクロホンがM個のマイクロ
ホンアレー、9は遅延部および乗算部、10は加算部、
11は音源位置検出部、12は信号選択部、13はマイ
クロホンアレーの出力信号である。図4の装置は以下の
ように動作する。
【0025】先ず最初にマイクロホンアレー8で音場内
の音を受音する。次に、この受音信号に対して、第k番
目の位置(ただし、k=1,2,…N)に焦点を形成す
る信号処理(遅延和)を行う。具体的には、第k番目の
焦点位置から発生して受音された信号が全て同位相で加
算される様に、音源から各マイクロホンまでの距離r ik
に応じて時間遅延を9の遅延部で与える(ただし、i=
1,2,…M)。さらに、焦点位置にかかわらず、出力
パワーが一定となるように、9の乗算部で式(19)で
示したマイクロホンゲインgikを入力信号に掛ける。1
0の加算部では、M個の入力信号を加算し、出力y
k (t) を合成する。同様に、k=1,2…,NとしてN
個の焦点位置ps1,ps2,…,psN に焦点を結んだとき
の出力y1 (t),y2 (t) ,…,yN (t) を合成する。
【0026】これらN個の出力信号は、それぞれ11の
音源位置検出部および12の信号選択部に入力される。
11の音源位置検出部では、N個の出力信号y1 (t) ,
2(t) ,…,yN (t) を用いて音源位置検出を行う。
音源位置検出の方法には色々な方法が考えられるが、こ
こでは、y1 (t),y2 (t) ,…,yN (t) の中でも最も
パワーが大きい信号ykmax(t) に対応する焦点番号k
max を音源の存在する焦点位置と判断する。次に音源位
置検出部で検出した音源の存在する焦点番号kma x は、
信号選択部12に入力される。信号選択部12では、音
源位置検出部11からのkmax を用い、出力信号y
1 (t) ,y2 (t) ,…,yN (t) の中からykm ax(t) を
選択して受音装置の出力とする。
【0027】以上説明した図4の実施例においては、最
も大きな音がする音源が目的とする音源と考え、これに
焦点を向けることで、高いSN比の受音を実現するもの
であった。このようなシステムにおいて、対象とする音
場内に複数の音、例えば目的信号源と雑音源が存在する
場合には、的確に目的信号源の位置を見いだすことが重
要である。しかし、従来の遅延和アレーの方法では、焦
点位置によって感度が異なる(アレーに近い焦点位置に
対する感度が上昇する)ため、雑音源(空調装置など)
がアレーの近くにある場合には、出力パワーが大きくな
り、その結果、実際には雑音源のパワーが小さいもので
あるにもかかわらず、これを目的信号源と誤判断してし
まう場合が発生していた。これに対して、本発明を適用
した場合には、焦点位置によらず音源から発生する音の
大きさを正確に計測することが可能となるため、最大の
音を発する音源位置を的確に把握し、その位置に焦点を
向けることで良好な高SN比受音が可能となる。
【0028】(5)実験結果 実験では、室容積が86m3で残響時間が0.2秒の室内に
おいて、図1に示した2組の円周配置マイクロホンアレ
ー(マイクロホン総数:M=32個)を天井から吊り下
げた。そして、マイクロホンアレーから下方1.1mの平
面上に28箇所の焦点を設定した。具体的には、横2
m,縦4.8mの平面上に横0.67m×縦0.8mの格子を
描き、4×7=28箇所にマイクロホンアレーの焦点を
設定した。この格子平面の横方向をX座標、縦方向をY
座標とする。次に、第1の焦点ps1(X,Y座標=
〔2,2〕)または、第2の焦点ps2(X,Y座標=
〔3,3〕)の位置にスピーカを設置し、ホス雑音を同
一の音量で発生させた。そして、上記28箇所に焦点を
形成した場合のマイクロホンアレーの出力信号y1 (t),
2(t) ,…,y28(t) のパワーを測定し、その結果を
等高線で示した。ただし、乗算器51 ,52 ,…5M
各マイクロホンゲインgikは、本発明の方法である式
(19)のように重み付けされている(ただし、m=1
とした)。
【0029】図2は、音源を第1の焦点ps1に設置した
場合のy1 (t) より求めたパワー分布であり、図3は、
音源を第2の焦点ps2に設置した場合のy2 (t) より求
めたパワー分布である。両図からも明らかなように、マ
イクロホンアレーの出力は、音源のある焦点位置で最も
高い。また、音源を第1の焦点ps1に配置した場合の出
力パワーの値は約−22dBであり、音源を第2の焦点ps
2に配置した場合も同様に、出力パワーの値は約−22
dBであった。このように、音源位置がps1にある場合と
ps2にある場合とでは、共に本アレーシステムの出力の
パワーが等しいことが分かる。このことより、音源の焦
点位置にかかわらず、同じレベルのマイクロホン出力が
得られていることが確認できた。
【0030】本発明は、各マイクロホン出力の重み係数
として、音源から各マイクロホンまでの距離のm乗の逆
数(ri -m) (ただし、1≦m≦3)〔特願平6−21
9941「受音方法及びその装置」〕に加え、(18)
式のCk の平方根で正規化を行うことを特徴としたもの
である。このことにより、残響の多い室内においても、
音源のある焦点位置にかかわらず、高い感度でかつ同一
音量のマイクロホン出力を得ることができる。
【0031】なお、上記の正規化は、(1/rik m ) を
荷重係数としたときのアレー出力に含まれる焦点位置に
置かれた音源の直接音成分と残響音成分のパワー和に基
づいて正規化を行うことが重要である。従って、CK
式(18)そのものでなくとも同等の値をとる近似量を
用いても本発明と同等の効果を実現することができる。
【0032】
【発明の効果】以上述べたように、コンサートホールや
拡声通信会議等の残響音場で、音声や楽音を複数のマイ
クロホンを用いて収音する場合、各マイクロホンの出力
信号が全て同位相で加算される様に、音源から各マイク
ロホンまでの距離ri に応じて時間遅延を与え、かつ、
音源と各マイクロホンまでの距離のm乗の逆数r
i -m(ただし、1≦m≦3)と、式(18)のCK の平
方根で、各マイクロホンの出力信号を正規化して出力和
を取り出せば、残響の多い室内においても、音源のある
焦点位置にかかわらず、高い感度でかつ一定音量の目的
音を収音することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例および従来の受音装置の構成
を示すブロック図。
【図2】式(19)の乗算係数を用いた図1の発明装置
において、焦点ps1に音源がある場合の出力信号y
1 (t) を用いて求めたパワー分布の一例を示す図。
【図3】式(19)の乗算係数を用いた図1の発明装置
において、焦点ps2に音源がある場合の出力信号y
2 (t) を用いて求めたパワー分布を示す図。
【図4】請求項5の実施例を示すブロック図。
【図5】乗算係数gik=1/rik m (しかしm=1)と
した図1の従来の装置において、焦点ps1に音源がある
場合の出力信号y1 (t) を用いて求めたパワー分布を示
す図。
【図6】乗算係数gik=1/rik m (しかしm=1)と
した図1の従来の装置において、焦点ps2に音源がある
場合の出力信号y2 (t) を用いて求めたパワー分布を示
す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−84392(JP,A) 特開 平5−95550(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04R 3/00 320 H04R 1/40 320

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焦点からの音を複数のマイクロホンを用
    いて受音する方法であって、第i番目のマイクロホンの
    出力信号に対して、前記焦点から第i番目のマイクロホ
    ンまでの距離に応じて時間遅延を与えると共に、前記距
    離の累乗値の逆数を乗算し、それらの乗算した信号を加
    算し、加算した信号に含まれる焦点位置に置かれた音源
    の直接音成分のパワーと残響音成分のパワーの和に応じ
    て加算結果を正規化した後出力することを特徴とする受
    音方法。
  2. 【請求項2】 焦点からの音を受音する複数のマイクロ
    ホン(i=1,2,…,M)と、それらの各マイクロホ
    ンの出力信号に、前記焦点から各マイクロホンまでの距
    離(ri )に応じて遅延させる遅延手段と、前記各マイ
    クロホンの出力信号を前記距離(ri )の累乗値の逆数
    (ri -m)を乗算する乗算手段と、前記乗算手段および
    遅延手段により処理された各マイクロホンの出力信号を
    加算する加算手段と、加算した信号に含まれる焦点位置
    に置かれた音源の直接音成分のパワーと残響音成分のパ
    ワーの和に応じて該信号の正規化を行う正規化手段とよ
    り成る受音装置。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記遅延手段による
    遅延時間Di (i=1,2,…,M)が、 Di =D0 −τi ; τi =ri /c (D0 は固定遅
    延、cは音速) に設定されていることを特徴とする受音装置。
  4. 【請求項4】 請求項2および3において、前記正規化
    手段における正規化係数√Cは、室内の臨界距離をrC
    とすると、 √C=√〔{Σj=1 M (1/rj m+1)}2+(1/rc 2){Σj=1
    M (1/rj 2m) }〕 と設定されていることを特徴とする受音装置。
  5. 【請求項5】 請求項2、3及び4において、複数の焦
    点の各々に対応する複数の前記正規化した信号から所望
    の音源位置を判定する手段と、その判定結果に基づいて
    該複数の信号から一つまたは、複数の信号を選択して出
    力する手段とを設けたことを特徴とする受音装置。
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