JP3150982B2 - 火花点火システム用の磁心−コイルアセンブリー - Google Patents

火花点火システム用の磁心−コイルアセンブリー

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 関連出願の引照 本出願は、1995年10月5日に出願された米国仮特許出
願第60/004,815号の利益を主張するものである。
1.発明の分野: 本発明は、内燃機関用火花点火システム、より詳細に
は内燃機関システムの性能を改善し、かつ火花点火用変
成器(tranformer)の磁気部品を小型化する火花点火シ
ステムに関する。
2.先行技術の説明 火花点火式内燃機関では、燃料と空気の混合物に点火
する点火プラグのギャップ間にアークを形成するのに必
要な高い電圧を発生させるために、一般にフライバック
変成器(flyback tranformer)が用いられる。この火花
点火事象のタイミングは、燃費を最良にし、かつ環境に
有害なガスの排出を少なくするのに決定的に重要であ
る。点火事象が遅すぎると、エンジンの出力損失および
効率損失が生じる。点火事象が早すぎると、デトネーシ
ョン(しばしば“ピング(ping)”または“ノック”と
も呼ばれる)が起き、その結果、有害な過早点火、続い
てエンジン損傷が生じる可能性がある。適正な点火タイ
ミングはエンジンの速度および負荷に依存する。最適性
能を得るためには、エンジンの各シリンダーは異なるタ
イミングを必要とする場合が多い。シリンダー毎に点火
タイミングを異ならせることは、点火プラグそれぞれに
火花点火用変成器を設置することにより達成できる。
エンジン効率を改善し、かつ不適性な火花点火タイミ
ングに伴う問題のいくつかを軽減するために、ある種の
エンジンにはマイクロプロセッサー制御システムが設置
された。これには、エンジン速度、取込み空気の温度お
よび圧力、エンジン温度、排気ガスの酸素含量などのた
めのセンサー、ならびに“ピング”または“ノック”を
検知するためのセンサーが含まれる。ノックセンサー
は、本質的には電気機械的変成器であり、その感度は全
範囲のエンジン速度および負荷にわたってノックを検知
するには不十分である。マイクロプロセッサーによる適
正な火花点火タイミングの判定で、必ずしも最適なエン
ジン性能が得られるとは限らない。より良い“ノック”
検知法が要望されている。
低温のエンジン(cold engine)の初期操作中、なら
びにアイドリング(idle)およびオフ・アイドリング
(off−idle)操作中に、不均衡に多量の有害ガスが排
出される。研究によれば、これら2つのエンジン操作状
態中に点火事象それぞれにつき点火プラグの高速多点点
火を行う(multi−sparking)と、有害な排気ガスの排
出が減少することが示された。したがって、非常に速や
かに充電および放電させ得る火花点火用変成器を得るこ
とが望ましい。
高電圧電線を排除して火花点火用変成器を点火プラグ
の末端に直接取り付けるコイル−対−点火プラグ(coil
−per−spark plug:CPP)点火方式が、内燃機関の火花
点火タイミングを改善する方法として受け入れられつつ
ある。CPP点火方式の一例に、1989年7月11日付けの米
国特許第4,846,129号(以下、“新特許”)に開示され
るものがある。火花点火用変成器の物理的直径は、点火
プラグを取り付ける同エンジン管にぴったり嵌入するも
のでなければならない。新特許で期待したエンジン診断
目標を達成するために、その特許権者はフェライト磁心
を用いる間接法を開示している。火花点火用変成器の磁
気性能は、エンジン操作全体をとおして燃焼室内の点火
条件を感知するのに十分なことが理想的である。的確な
エンジン診断には、明らかに、新しいタイプの点火用変
成器が必要である。
エンジンのミスファイアリングは、有害排気ガスの排
出を増加させる。燃焼室内の点火プラグ絶縁体が適切に
加熱されない低温始動(cold start)の回数が多いと、
絶縁体にすすが沈着するため、ミスファイアリングがも
たらされる可能性がある。導電性すすは、点火事象に利
用できる電圧上昇を低下させる。電圧をきわめて急速に
上昇させる火花点火変成器は、すすの付着によるミスフ
ァイアリングを最小限に抑えることができる。
欧州特許出願公開第A−26−871号明細書には、一般
に、複数の磁心素子をもつ電磁誘導デバイスに用いる磁
心構造体が開示されている。しかし、新特許に開示され
る点火およびエンジン診断システムの操作を成功させる
のに必要な火花点火性能を達成し、同時に点火プラグへ
のすすの付着によるエンジンミスファイアリングの発生
率を低下させるためには、火花点火用変成器の磁心材料
は一定の透磁率を有するものでなければならず、操作中
に磁気飽和してはならず、かつ磁気損失が低くなければ
ならない。これらの必要な特性の組み合わせのため、適
した磁心材料の入手可能性は狭められる。自動車用火花
点火システムの目標経費を考えると、磁心材料として考
えられ得る候補にはケイ素鋼、フェライトおよび鉄系非
晶質金属がある。実用変成器の磁心に常用されている従
来のケイ素鋼は安価であるが、その磁気損失が高すぎ
る。磁気損失の低い比較的細いゲージのケイ素鋼は高価
すぎる。フェライトは安価であるが、それらの飽和磁気
誘導は普通0.5T未満であり、磁心の磁気誘導がゼロに近
ずくキュリー温度は200℃付近である。この温度は、火
花点火用変成器の操作上限温度が約180℃と推定される
ことを考えると、低すぎる。鉄系非晶質金属は磁気損失
が低く、1.5Tを越える高い飽和磁気誘導をもつが、かな
り高い透磁率を示す。火花点火用変成器に適する水準の
透磁率を達成しうる鉄系非晶質金属が要望される。
発明の概要 本発明は、急速な電圧上昇を生み、かつ点火事象の電
圧分布を的確に表す信号を発生させる、コイル−対−点
火プラグ(CPP)火花点火用変成器のための磁心を提供
するものである。この磁心は、低い鉄損(core loss)
および低い透磁率(約100〜300)を示す非晶質強磁性材
料から構成される。このような磁性は燃焼サイクルでの
プラグの高速ファイアリングに特に適する。すすの付着
によるエンジンのミスファイアリングは最小限に抑えら
れる。さらに、コイルからプラグへのエネルギーの伝達
が高い効率で行われ、その結果、排気後に磁心内に残る
エネルギーはごく少量となる。この効率の高いエネルギ
ー伝達により、磁心をして点火事象の電圧分布を的確に
監視するのを可能にする。磁心材料を巻いて円筒状に
し、それに一次巻線および二次巻線を乗せて環状(toro
idal)変成器を形成すると、発生する信号からは、より
高い磁気損失を示す磁心によって発生せしめられるもの
よりはるかに的確な点火電圧分布図が得られる。
本発明による磁心は高い磁気誘導を示す非晶質金属を
ベースとするもので、それには鉄系合金がある。2種の
基本的形状の磁心を開示する。それらはギャップ付きと
ギャップなしである。ギャップ付き磁心(gapped cor
e)は、連続磁気路内で不連続な磁気断面をもつ。この
ような磁心の例は、一般にエアギャップとして知られる
細いスリットを備えた環状磁心である。ギャップ付き構
造は、必要な透磁率が巻きつけたままの磁心自体の透磁
率よりかなり低い場合に採用される。磁気路のエアギャ
ップ部分が全透磁率を低下させるのである。ギャップな
しの磁心はエアギャップ付き磁心のものと同様な透磁率
をもつが、それは物理的に連続し、環状磁心に一般にみ
られるものと同様な構造をもつ。ギャップなし磁心内に
エアギャップが見掛け上均一に分配されて存在すること
が、“分配ギャップ型磁心”という用語の起源である。
本発明のギャップ付き磁心は、約1kHzの周波数で測定
して約100〜約300の全透磁率をもつ。磁心原料は100〜3
00の水準よりはるかに高い透磁率をもつ可能性がある
が、特殊な処理により、その透磁率を、鉄系非晶質合金
に必要な他の性質に悪影響を及ぼすことなく、目的範囲
内にまで低下させることができる。火花点火のための10
kVを越える出力電圧が、120アンペア回数未満の一次巻
線と約110〜160アンペア回数未満の二次巻線で達成され
る。
本発明のギャップなし磁心は、鉄合金をベースとする
非晶質金属で作成され、磁心の透磁率が約1kHzの周波数
で測定して100〜300となるように処理される。渦電流損
を減少させることによりギャップなし磁心の効率を改善
するために、比較的短い円筒を巻いて加工し、末端と末
端を重ねて、目的とする大きさの磁心を得る。分配ギャ
ップ型磁心からの磁束漏れはギャップ付き磁心からの漏
れよりはるかに少なく、周囲に放射される高周波による
望ましくない妨害がより少ない。さらに、ギャップなし
磁心には閉鎖磁気路が伴うので、SN比(signal−to−no
ise ratio)がギャップ付き磁心のものより大きく、こ
のためギャップなし磁心は、エンジン燃焼過程を診断す
るための信号変成器として用いるのに特に適したものと
なる。火花点火のための10kVを越える二次巻線出力電圧
は、ギャップなし磁心によれば120アンペア回数(amper
e−turns)未満の一次巻線および約110〜160アンペア回
数未満の二次巻線で達成される。
図面の簡単な説明 以下に示す本発明の好ましい態様の詳細な説明および
添付の図面を参照すれば、本発明がより十分に理解さ
れ、かつ他の利点も明らかになるであろう。
図1、2および3は、電源を入れ、次いで切った場合
の一次電流の典型的な増加を示すもので、それぞれ、一
次電圧は変成器のスイッチが入った接地側(switched g
rounded side)にあり、より高い電圧は二次側にある。
好ましい態様の説明 鋳造したままの状態での飽和磁気誘導が1.5Tを越える
鉄系非晶質金属より構成される磁心を製造した。磁心
は、円筒高さ約80mm、外径および内径それぞれ約17およ
び12mmの円筒形のものであった。外部磁界を付与せずに
これらの磁心を熱処理した。一部の磁心には、円筒体の
軸に沿って磁心の一部を切り取ることによりエアギャッ
プを導入した。円筒高さ全体を約80mmに維持して、一部
の磁心をそれぞれ約40および16mmの小円筒磁心高さとな
るように2および5区分にセグメント化した。各磁心に
それぞれ一次および二次コイルとして銅線を数回および
110〜160回巻きつけた。電線が磁心に接近しないよう
に、磁心にプラスチックのカバーをかけた。次いで、高
電圧誘電統合性(high voltage dielectric integrit
y)を得るために、この変成器の巻線と磁心をエポキシ
樹脂中に真空注封(vaccume−cast)した。一次コイル
に電流を供給し、25〜100マイクロ秒以内で急速に100ア
ンペアを越える水準にまで蓄積した。
図1の曲線は、スイッチを切る約85マイクロ秒前に電
流蓄積が始まることを示す(図1でt=−85μsecに対
応)。電流が急上昇する間、一次巻線の電圧は図2に示
すようにゼロに近い。t=0で一次電流を切ると、磁束
が大きく変化し、二次コイルに大きな電圧が発生する。
一次コイルおよび二次コイルの電圧分布は、それぞれ図
2および3の曲線で表される。これらの電圧分布は、慣
用される型のオシロスコープを用いて容易に表示され
る。二次コイルの高圧は一般に5マイクロ秒未満の短期
間で発生することが注目される。したがって、本発明の
磁心では、10kVを越える高電圧を100マイクロ秒未満の
時間間隔で反復発生させることができる。この特色は、
前記の高速多点点火作用を達成するのに要求されるもの
である。さらに、二次巻線に発生する急速な電圧上昇に
より、すすの付着により生じるエンジンのミスファイア
リングが少なくなる。
前記の火花点火事象に関連する利点のほか、本発明の
磁心−コイルアセンブリーはエンジン診断デバイスとし
て有用である。本発明の磁心は磁気損失が少ないので、
図2の一次電圧分布は図3に示すように二次巻線に起き
ていることを忠実に反映する。それぞれの火花点火後
に、図2に示されるような一次電圧を適切な点火特性に
つき分析し、次いで得られたデータを点火システム制御
装置に供給する。しかして、本発明の磁心−コイルアセ
ンブリーでは、磁心がフェライト材料で構成される新特
許に開示されるシステムで必要とされる追加の磁性元素
(magnetic element)が排除される。
以下の実施例は、本発明をより良く理解できるように
するために与えられるものである。本発明の原理および
実施を説明するために提示した具体的な技術条件、材
料、割合および報告されたデータは例示であって、本発
明の範囲を限定するものと解すべきではない。
実施例1 幅約80mm、厚さ約20μmの非晶質鉄系リボンを、機械
加工したステンレス鋼マンドレルに巻きつけた。12mmの
内径をマンドレルにより設定し、外径を17mmになるよう
に選定した。最終円筒磁心重量は約50〜60gであった。
これらの磁心を430〜450℃の窒素雰囲気において浸漬時
間2〜16時間で焼きなましした。焼きなましした磁心
に、太ゲージの絶縁銅線を一次コイルとして2〜4回巻
きつけ、細ゲージの絶縁銅線を二次コイルとして150回
巻きつけた。この磁心−コイルアセンブリーをエポキシ
樹脂により注封した。この構造につき、二次電圧を一次
電流の関数として測定した。それを下記の表Iに示す。 表 I 一次電流(アンペア回数) 二次電圧(kV) 40 4.8 80 9.0 120 12.8 160 16.0 200 18.8 240 20.4 280 22.0 12および22kVを越える二次電圧が、それぞれ約120お
よび280アンペア回数の一次電流で得られた。
実施例2 実施例1に挙げた方法に従って、高さ40mmの円筒磁心
2個を作成し、それらを並列に配置して高さ80mmの磁心
1個を形成した。実施例1の磁心−コイルアセンブリー
と同様に一次コイルと二次コイルを巻きつけた。一次電
流に対して得られた二次電圧を下記の表IIに示す。 表 II 一次電流(アンペア回数) 二次電圧(kV) 40 4.2 80 8.4 160 14.2 240 18.5 320 21.6 400 23.1 14および23kVを越える二次電圧が、それぞれ約160お
よび400アンペア回数の一次電流で得られた。
実施例3 実施例1の方法に従って、高さ15.6mmの環状磁心5個
を作成し、組み立てて高さ約80mmの円筒磁心1個を形成
した。この磁心−コイルアセンブリーは、二次コイルが
138回巻きである以外は、実施例1のものと実質的に同
じであった。二次電圧を一次電流の関数として下記の表
IIIに示す。 表 III 一次電流(アンペア回数) 二次電圧(kV) 40 5.4 80 10.2 160 17.8 240 22.4 320 25.6 360 26.1 10および26kVを越える二次電圧が、それぞれ約80およ
び360アンペア回数の一次電流で得られた。
実施例4 実施例1に挙げた寸法をもつ、高さ80mmの円筒磁心を
作成し、350℃で2時間、熱処理した。熱処理後に磁心
の一部を切り取ることにより、円筒軸に沿ってエアギャ
ップを導入した。磁心の金属部分に一次コイルおよび二
次コイルを巻きつけた。磁心−コイルアセンブリーの他
の部分は実施例1のものと実質的に同じであった。一次
電流に対して得られた二次電圧を下記の表IVに示す。 表 IV 一次電流(アンペア回数) 二次電圧(kV) 40 4.9 80 9.6 120 14.4 160 19.4 200 22.5 240 26.3 260 27.3 14および27kVを越える二次電圧が、それぞれ約120お
よび260アンペア回数の一次電流で得られた。
以上、本発明をかなり詳細に説明したが、このような
詳細事項に固執する必要はなく、当業者は容易にさらに
変更および修正することができ、そしてそれらすべてが
請求の範囲に定めた本発明の範囲に含まれると解すべき
である。
フロントページの続き (72)発明者 シルガイリス,ジョン アメリカ合衆国ニュージャージー州 07009,シーダー・グローブ,ザ・グレ ン 41 (72)発明者 グリムス,ドナルド アメリカ合衆国オハイオ州45840,フィ ンドリー,ウエスト・マックファーソ ン・アベニュー 126 (56)参考文献 Proceed.of IEEE79 [11],(1991−11),pp.1608− 1622 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 30/00 - 38/42

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】低電圧励磁のための一次コイルおよび点火
    プラグへ供給される高電圧出力のための二次コイルを有
    する磁心を含んで成る、少なくとも1個の燃焼室を有す
    る火花点火式内燃システムに点火事象を発生させるため
    の磁心−コイルアセンブリーにおいて、 (a)該磁心−コイルアセンブリーは鉄系のものであ
    り、そしてニッケルおよびコバルトを含めて金属元素、
    ホウ素および炭素を含めてガラス形成性元素、ならびに
    ケイ素を含めて半金属元素をさらに含み、ここで該磁心
    は非晶質の磁性合金の熱処理により加工されたものであ
    り、 (b)該磁心−コイルアセンブリーは、次の: (i)該二次コイルにその励磁後短時間以内に高い電圧
    を発生させ、そして (ii)該燃焼室内の火花点火条件を検知して該点火事象
    を制御する 能力を備えている ことを特徴とする、上記の磁心−コイルアセンブリー。
  2. 【請求項2】磁心がセグメント状磁心を含む、請求項1
    に記載の磁心−コイルアセンブリー。
  3. 【請求項3】二次コイルの出力電圧が、25〜100マイク
    ロ秒以内に、約120アンペア回数未満の一次電流で10kV
    を越える電圧に、200〜300アンペア回数の一次電流で20
    kVを越える電圧に達する、請求項1に記載の磁心−コイ
    ルアセンブリー。
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