JP3144408U - 堰堤構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】越流による深掘れを回避し、魚道を確保することのできる石積堰堤を提供する。
【解決手段】河川を横切ってその横断方向に構成される堰堤の下流側に、堰堤の天端付近から河床まで石を空積みすることにより傾斜部が設けられる床固め構造を有する堰堤構造であって、前記床固め構造はその表面に巨石が配され、その巨石と河床との間に前記巨石よりも小さい岩石が詰められて構成されており、前記巨石は、略平面形状の部分が外側に向けられるとともに楔形状の部分を内側に向けて配されることを特徴とする堰堤構造とする。
【選択図】図1

Description

本考案は、河川を横切って築かれる堰堤に係わり、詳細には河水の浄化作用を有して自然景観を損ねず、魚の遡上を妨げることもない環境保全に有用な石積堰堤に関する技術に関するものである。
一般に、堰堤はその使用目的によって貯水堰堤、取水堰堤、砂防堰堤などに分類され、堤体の材料面ではコンクリート堰堤、アース堰堤、ロックフィル堰堤などに分類されるが、近年その多くはコンクリートにより構築される。しかし、その種のコンクリート堰堤は水圧に対して強靭な耐力壁を形成するものの、自然環境との調和性に乏しく、その構築によって景観を損ねるという問題がある。また、ロックフィル(石塊)堰堤は、自然の岩石を多用するので景観を損ねることはないが、使用する岩石は水圧によって崩落せぬようモルタルなどの目地充填剤を介して練積みされ、しかも堤体の内部や上流面にはコンクリートなどによる遮水壁が設けられるので、これもコンクリート堰堤と同じく河川水域の環境や生態系などに悪影響を及ぼすという難点がある。
この問題点を解決するために、特許文献1や特許文献2に示す巨石を空積みして構成する堰堤構造が提案された。これらの発明は上流側と下流側に石積み部分が構築され、その石積み部分は巨石を斜め下向きにして積重ねることにより構成され、その中込部分には小型の小岩石を詰めることによって構築されている。これによれば、河川の浄化機能を有して景観を損なわずに河川下流域の水害を防止することができ、有効であった。
特開2003-64634号公報 特開2003-138546号公報
しかしながら、上記の石積堰堤は越流する水脈により、その下流側の川底が抉れるという問題点があった。川底が抉れ、深掘れが生じると、石積堰堤の崩壊に繋がる危険がある。また、石積堰堤の法面は60〜80度とされるため、川を魚が遡ろうとしても、乗り越えることができないという問題点もあった。
加えて、特許文献1では下流側にスロープ部を設けることが開示されているものの、枠や留め具を用いねばならず、煩雑であるとともに、環境破壊にも繋がるおそれがある。また、上流側の水面が石積み堰堤の天端よりも低いため、魚が遡上できないという問題点がある。
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は越流による河床の深掘れを回避し、魚道を確保することのできる石積堰堤を提供することにある。
河川を横切ってその横断方向に構成される堰堤の下流側に、堰堤の天端付近から河床まで石を空積みすることにより傾斜部が設けられる床固め構造を有する堰堤であって、前記床固め構造はその表面に巨石が配され、その巨石と河床との間に前記巨石よりも小さい岩石が詰められて構成されており、前記巨石は、略平面形状の部分が外側に向けられるとともに楔形状の部分を内側に向けて配されることを特徴とする堰堤構造を提供することにより、前記課題を解決する。
また、上記堰堤構造において、特に堰堤の天端を上流側河床と同一高さで構成することにより、魚の遡上を可能にせしめる。
本考案によれば、堰堤の天端から緩い勾配の床固め構造を設けることにより、越流が床固め構造を構成する巨石の上を流れ、あるいはその巨石と川底との間に詰められる小岩石の間隙部を伝わって流れることにより、水流の勢いで堰堤の下流側の川底に深堀れが生じることがない。
また、本考案は勾配が緩く設定されていることから、魚が遡上することも可能であり、環境に配慮した堰堤構造を提供することが可能となる。
以下、図面を用いて詳細に説明する。図1は本考案の断面図である。図2は平面図、図3は一部拡大図、図4は正面図である。
本考案の堰堤構造1は堰堤21と、その下流側に構成される床固め構造22とから構成される。堰堤21は河川に直交してその横断方向に連続して構築され、洪水時などには下流域への土石流の落下を抑制する。この堰堤21は既設のコンクリート堰堤であることが好ましい。堰堤21の天端は、土砂が停滞するのを防ぐため、また、魚の遡上を妨げないために同一高さに設定することが好ましい。なお、河床よりも若干高く設定されても差し支えないが、せきのような構造物の場合は、別途魚道を設けることが好ましい。堰堤21は河川の流れ方向に沿う縦断面が台形状をなす重力型堰堤であり、その壁面には所定の法勾配が付けられる。
床固め構造22は、堰堤1の天端付近(天端とは堰堤の頂部の面をいう)から下流側の河床まで、石を空積みすることにより形成される傾斜部からなるものである。床固め構造22は巨石3と巨石よりも小型の岩石4により構成される。巨石3は自然石の地肌をそのまま活かした堅硬な野面石であり、大きいものは数トン級の石塊で成り、小型のものでも数百キロの石塊が用いられる。これらの巨石3は堰堤21の天端付近から下流側の河床までの傾斜部表面に形成され、モルタルなどの充填材を介さずに、略平面の部分を外側(上)に、楔形の部分を内側(下)に向けて巨石3が設けられる。略平面の部分を外側にすることにより、床固め構造22の表面を水が流れるようにするためであり、楔形の部分を内側に向けるのは、図3に示すようにその間隙部に小岩石4を詰めて、堅固な構造とするためである。
図4に示すように、床固め構造22の傾斜部は堰堤21の天端よりも少し低い位置から設けられることが望ましい。水流や土砂を停滞させないようにするためである。
巨石3と河床との間には、前記巨石3よりも小さい岩石4が詰められて構成される。これらの石の相互間には、複雑な間隙が形成されるので、水中に浮遊する懸濁物質を捕捉して下流域の水質浄化を図ることができる。小岩石4は小口のもので数十センチ以下、重量にして百キロ以下程度の自然石であり、これには玉石、割石、栗石、そのほか雑石などが用いられる。これらの小岩石4は、巨石2の間に詰め込まれるだけで巨石2と同じく相互間にモルタルなどを充填せずして空積みされる。なお、既設の堰堤21の下流側には水流によって抉れた深掘れが生じている場合がある。これらの部分にも小岩石4を詰めることができる。
床固め構造22の傾斜部の勾配は魚の遡上を妨げることがないよう、5〜30度、より好ましくは12〜15度に構成されることが好ましい。
ここで、以上のような堰堤構造1を構築するには、既設のコンクリート堰堤21の下流側に、床固め構造22の側面部を構成する巨石群3をクレーン等で吊りながら配置する。このとき、巨石3が安定するように河床を掘削してもよい。そしてその内部に小岩石4を詰め込みながら床固め構造22の傾斜部の表面に巨石3を配置する。なお、堰堤21に近い部分から構築しても構わないし、河床に近い部分から構築していっても構わない。巨石3を配置してからも、石積みが堅固となるよう、バールなどを用いて巨石3を一部持ち上げ、その間隙に小岩石4を詰めるようにして、安定化を図ることができる。
次に、この堰堤構造1を実施した場合の様子について説明する。越流は堰堤21の天端を乗り越えて床固め構造22に達する。床固め構造22の表面に設けられる巨石3は略平面で面積の大きい面が上になるように設けられているので、水の多くは巨石の表面を伝って下流へと流れていく。また、一部の水は巨石3と巨石3の間から床固め構造の内部へと浸水し、小岩石4の間隙部を通って、河床へと達し、下流へと流れていく。このように小岩石が濾過材としての役割を果たし、水質浄化機能をも有する。
また、巨石3と巨石3の間から床固め構造の内部へと浸水した水も、さらに下流の巨石3と巨石3との間から放出するので、水中の溶存酸素が増し、これによって水中に生息する好気性微生物が繁殖して水中懸濁物質の分解を促進するという好循環サイクルを形成することができる。
土砂もこれらの堰堤構造内を通過して下流に常時適量ずつ供給されるので、これが上流側に堆積せず、下流の環境や生態系が保全される。床固め構造22は総石造りであるから、自然環境に調和して景観を損ねない。
既設の堰堤21は図5に示すように、河川の横断方向の一部にせきが設けられていても構わない。この場合、そのせきの口の下面Bよりも下部から床固め構造22を構成することができる。この場合の床固め構造22は、上述した方法と同様に構築することができる。
本考案に係る堰堤構造の断面図である。 本考案に係る堰堤構造の平面図である。 本考案に係る床固め構造の一部拡大図である。 本考案に係る堰堤構造の正面図である。 本考案に係る実施例1の堰堤構造の正面図である。
符号の説明
1 堰堤構造
21 堰堤
22 床固め構造
3 巨石
4 小岩石

Claims (2)

  1. 河川を横切ってその横断方向に構成される堰堤の下流側に、堰堤の天端付近から河床まで石を空積みすることにより傾斜部が設けられる床固め構造を有する堰堤構造であって、前記床固め構造はその表面に巨石が配され、その巨石と河床との間に前記巨石よりも小さい岩石が詰められて構成されており、前記巨石は、略平面形状の部分が外側に向けられるとともに楔形状の部分を内側に向けて配されることを特徴とする堰堤構造。
  2. 前記堰堤の天端が上流側河床と同一高さで構成されていることにより、魚の遡上を可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の堰堤構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013011135A (ja) * 2011-06-30 2013-01-17 Otegumi:Kk 魚道
JP2018199898A (ja) * 2017-05-25 2018-12-20 塚本建設株式会社 河川構造

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