JP3142838B2 - 記録再生方法 - Google Patents

記録再生方法

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JP3142838B2
JP3142838B2 JP11250892A JP25089299A JP3142838B2 JP 3142838 B2 JP3142838 B2 JP 3142838B2 JP 11250892 A JP11250892 A JP 11250892A JP 25089299 A JP25089299 A JP 25089299A JP 3142838 B2 JP3142838 B2 JP 3142838B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記録・再生方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気テープ、磁気ディスク等の記
憶装置がコンピュータ等の外部記憶装置として広く用い
られてきた。これは磁気ヘッドと称される微小領域磁気
検出器を磁気テープや磁気ディスクに密着させ、磁気テ
ープや磁気ディスクに記録された磁束を検出するもので
ある。この最大の問題点は磁気ヘッドを記憶媒体に密着
させなければならないということであった。このために
再生速度や磁気テープ、磁気ディスク等の寿命が大きく
制約されていた。また、記憶容量も磁気ヘッドのピック
アップ部分の大きさによって制約されていた。近年、光
ディスクが開発された。これは極めて細く集束されたレ
ーザ光をプロ−ブとして、ディスク上に記録された凹凸
を読み取るもので、上記磁気ヘッドが必要な記憶装置の
抱えていた問題点が大きく改善された。しかしながら、
現在のところ何度も書き込みのできる光ディスクは成功
していない。光ディスクを書き込み可能のものとするた
めに、磁気光学効果(ファラデー効果等)を利用した光
磁気ディスクも研究されているが、実用化には到ってい
ないのが現状である。
【0003】記録の手段として磁束もしくはその他の磁
気的な効果を用いることの利点は、記録することが比較
的容易でしかも長期にわたって安定に記録が残留するこ
とにある。しかしながら、上記の磁気的な効果を用いた
記録を再生することは難しい。その理由は、磁気ヘッド
等を記録媒体に密着させることによって記録された磁束
等を検出することは簡単な方法であるが、この方法には
前述の通り様々な問題点がある。
【0004】以上のような問題点を改善する方法とし
て、光や電子線等をプローブとして用い、書き込み、読
みだしをおこなうことが望まれている、しかし例えば、
磁束(静磁場)と電磁場とは相互作用しないため、光の
みで磁束を検出することは不可能である。
【0005】現在考案されている光磁気ディスク装置で
は磁束と光の間に物質を介して間接的な相互作用をおこ
なわせることによって磁束の検出を試みている。
【0006】しかし、この相互作用は比較的弱く、様々
な技術的課題を抱えている。
【0007】一方、スピン角運動量と磁場は相互作用す
るのでこれを利用して磁束の有無を検出することも可能
である。しかしながら、電子(スピン角運動量2分の1
を有する)は、物質にたいして磁気的な相互作用よりも
電気的な相互作用の方がはるかに大きく、これをもって
磁気的な記録を読みだすことは実際不可能である。中性
子は物質とは電気的な相互作用をおこなわないので磁気
的な記録の検出は可能であるかも知れない。しかし、実
用的でない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上の方式はいずれ
も、局所的な磁束等を局所的に検出することを前提にし
ているため上記のような解決不可能な問題を抱えること
になる。そこで本発明では局所的な磁束等を全体もしく
は比較的大きな部分から、変動として検出することを課
題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成させるため、超伝導体または磁性体を有する記録媒体
に磁場を与える工程と、部分的に光、電子線または粒子
線を与える工程とにより、前記記録媒体中に前記磁場に
より磁化された部分を作り出すことにより記録する方法
とした。
【0010】
【発明の実施の形態】先ず超伝導体または磁性体を有す
る記録媒体に磁場を与える方法を以下に記す。
【0011】超伝導体を有する記録媒体に磁場を与える
には、記録媒体を超伝導臨界温度以下に冷し、下部臨界
磁場以下の強さの磁場を与える方法と、超伝導臨界温度
以下に冷やして下部臨界磁場以上の強さの磁場を加える
方法がある。
【0012】本願発明で磁性体を有する記録媒体に磁場
を与えるとは、単に磁性体に一定方向の磁場を与える以
外に、磁性体を予めある一定の方向に磁化させておき、
その後に前記の方向と異なる方向に磁場を与えることも
含むものである。
【0013】超伝導体を有する記録媒体に下部臨界磁場
以下の強さの磁場を加える方法と下部臨界磁場以上の強
さの磁場を加える方法との2通りの方法があるが,この
違いは、予め記録媒体を磁化させておくか、あるいは磁
化させておかないかの違いである。超伝導体に下部臨界
磁場以上の磁場を与えた場合には、超伝導体は磁化され
磁束を持つことになる。下部臨界磁場以下の強さの磁場
を与えた場合には、超伝導体の中は、磁束が入り込まな
い状態となるため、超伝導体は磁束を持たないことにな
る。
【0014】次に部分的に光、電子性または粒子線を与
える工程を説明する。
【0015】この工程で情報が記録媒体に記録される。
つまり磁束が存在する部分と存在しない部分を記録媒体
中に作ることで情報を記録する、あるいは磁束の向きを
異ならせて存在させ、情報として記録するのである。
【0016】前記した超伝導体を有する記録媒体におい
て、下部臨界磁場以上の強さの磁場を与えられたもの
は、超伝導体内に磁束が入り込んでいるため、ここで部
分的に光、電子線または粒子線が与えられると、与えら
れたところの超伝導体は臨界温度以上に加熱される、あ
るいは光が吸収されることによって磁束を保持すること
ができなくなり、その部分の磁束は消失する。これによ
り光等が与えられた部分の磁束は消え、光等が与えられ
なかった部分の磁束が残り、それが記録となる。
【0017】超伝導体を有する記録媒体において、下部
臨界磁場以下の強さの磁場を与えて磁束を記録媒体中に
保持することができるものは、記録媒体中に多数の穴を
持った超伝導体を有する場合である。このような記録媒
体に対して、部分的に光、電子線または粒子線が与えら
れると、与えられたところの超伝導体は、臨界温度以上
に達し常伝導状態となり、その部分に存在する穴に磁束
が侵入し、その部分は光や電子線等を与えなくなった
後、超伝導状態が回復しても磁束は穴の中に存在し、そ
の結果、光等の照射部分には磁束が残り、光等の与えら
れなかった部分には磁束が存在しないという状態を作り
出すことができ、これを記録として残すことができるの
である。
【0018】磁性体に磁場を与えた状態で光、電子線ま
たは粒子線を与えると、与えられた部分がキュリー点
(強磁性転移温度)以上に熱せられ、これが冷却される
過程で与えられた磁場の向きに磁化されるのである。そ
の結果、予め記録媒体中の磁性体をある方向に磁化させ
ておき、次に記録工程で、磁化された方向と異なる方向
に磁場を与え、部分的に光、電子線または粒子線を与え
てやると初期の磁化の方向とは異なる方向にその部分の
みを磁化させることができる。また予め記録媒体中の磁
性体をある方向に磁化させておかなくても、記録の工程
で、ある方向の磁場を加えておいて、部分的に光、電子
線または粒子線を与えてやれば、部分的に磁化した磁性
体を記録媒体中に作ることができ、光等が与えられた部
分は磁化し、光等が与えられなかった部分は、磁束がな
いという状態を記録として残すことができるのである。
【0019】次に上記のように記録した情報を再生する
ために本発明は、磁化された部分を有する超伝導体また
は磁性体を有する記録媒体に光、電子線または粒子線を
与えることにより、磁化された部分の磁束に変化を与
え、前記磁束の変化を検出することとした。
【0020】記録媒体が超伝導体を有するものである場
合記録は、前記したように磁束が存在するかしないかで
行われているから、磁束の存在を磁束を変化させること
で検出した。
【0021】磁束に変化を与えるために、記録媒体に
光、電子線または粒子線を与えた。磁束の存在する部分
に光等が与えられると、その部分が非超伝導状態とな
り、磁束が消失するのである。このときの磁束の消失を
検出するのである。
【0022】記録媒体に光、電子線または粒子線を与え
る段階で磁場を加えてもよい。
【0023】記録媒体が磁性体を有するものである場
合、記録は磁束が存在するか、しないかでされている場
合と、磁束の方向を異ならせて存在させることでされて
いる場合があるが、いずれの場合でも記録されている磁
束に変化を起こさせてその変化を検出するものである。
【0024】その方法は、記録媒体中に磁束の存在の有
無で記録がされている場合は、光、電子線または粒子線
を記録媒体に与え、磁束の存在している部分の磁束を消
失させることで、磁束に変化を与え、その磁束の変化を
検出し、また記録媒体中に磁束の方向を異ならせて存在
させることで記録がされている場合には、記録として残
っている磁束の何れか一方の磁束の向きに合わせた磁場
を与えつつ光、電子線または粒子線を与えることで磁束
の方向に変化を起こさせ、その変化を検出する。
【0025】磁束の変化を検出する手段としては、超高
感度磁力計、コイル、磁気ヘッド、等が挙げられる。な
かでも超高感度磁力計の1つである超伝導量子干渉素子
は磁束量子の1つ(大きさは10-1wb)が検出できるので
微小な磁束の変化の検出には好ましい。しかし、磁束の
変化の速度が十分大きくなければ、通常のコイルでも十
分に検出できる。
【0026】
【実施例】以下本発明の実施例を詳細に説明する。 [実施例1]本発明に使用する記録・再生装置はプロー
ブとして使用する光、電子線もしくはその他の粒子線を
発生する装置と磁束検出用コイルもしくは超高感度磁力
計等の磁束の変化を検出する手段、磁束が記録される磁
性体や超伝導体からなる記録ディスクと、磁場発生装置
からなる。記録ディスク上には磁性体もしくは超伝導体
の島状の粒子(これをビットという)が形成されてい
て、その大きさは、例えば1μm×1μm×10μmの長
方形である。検出用コイルとこのビットとの距離は、で
きるだけ短い方が好ましい。しかしながら、記録媒体と
接触等の為に摩耗しないような距離は保たれているもの
とする。具体的には、 100μm以下とする。プローブと
してレーザ光を用いた例を図2に示す。
【0027】次に動作原理を説明する。ここでは超伝導
体をビットとして記録媒体に使用した例について述べ
る。
【0028】まず最初に臨界温度以下に冷却された超伝
導体ビット(14)からなる記録ディスクに超伝導体の下部
臨界磁場以上の外部磁場(15)が印加される。ここでは外
部磁場をビットの長軸方向(長方形をしたビットの長い
辺の方向)に加えた(図2(a) )。
【0029】すると超伝導体の中に磁束が量子化された
状態で、外部磁場の大きさに応じて、何本か侵入する。
外部磁場を切っても侵入した磁束は超伝導体ビットの中
に残る(図2(b) )。
【0030】情報の記録は、必要な個所を集束したレー
ザ光や電子線あるいは粒子線(23)等で照射することによ
って行う。このときの照射は,ビットの長軸方向に移動
させながら行う。しかしこの照射を、長軸方向とは直角
の方向、つまり長方形をしたビットの短い辺の方向に移
動して行なってもよい。このとき光はビットのすべてに
照射されている必要がある。熱的な作用や光による作用
等によって超伝導性が破壊されるとそれまで超伝導体内
に捕捉されていた磁束が無くなる。すなわち、この状態
では、 1・記憶状態・・・磁束なし 0・非記憶状態・・磁束あり という2つの状態が存在することになる。
【0031】次に読みだし(再生)の原理について説明
する。再生も記録と同様に外部磁場のない状態でおこな
う。上記の方法によって情報の記録のなされたディスク
は、いわば一つの磁石と同じである。もしこのディスク
から磁束を一つ消し去れば、その分”磁石”の磁束が減
るわけである。この減少が関知できれば、レーザ光や電
子線、粒子線の照射された箇所に磁束が保持されていた
かどうかわかる。この減少を関知する手段としてコイル
を用いた。すなわち、ファラデーの法則より、
【0032】
【数1】 ここでΦはコイルを貫く磁束でVはコイルに生じる電圧
である。通常の強磁性体では、磁束の変化する速度は余
りにも遅く、10-3秒程度であるが、超伝導体が常伝導体
に転移する(したがって、超伝導体の中に磁束が侵入す
る)速度は10-9秒以下であるため、たとえΦの変化が磁
束量子 (〜10-15wb)程度の大きさであっても、一巻コイ
ルで10-6Vの信号が得られる。これは通常の増幅器等を
用いれば十分検出可能な大きさである。多重巻コイルで
あればさらに信号電圧は大きくなる。
【0033】1つのビットに存在する磁束の量はせいぜ
い10-14wb である。ビットが1μm×1μm×10μmの
長方形をしていて、磁束がその長軸方向に在るとする
と、その磁気モーメントは10-19wb ・ m である。このビ
ットの周囲に一巻コイルを置き、そのビットとの最も近
い距離に10μmとするとこのコイルを横切る磁束は、約
2×10-15wb である。もし、ビットに光や電子線等を照
射して、ビットを常伝導体化してやれば、ビットの磁束
がなくなり、その結果、コイルを横切る磁束の変化は約
2×10-15wb となり、ファラデーの電磁誘導の法則より
コイルに電圧が生じる。超伝導体が光の照射によって常
伝導体に変化する速度は10-9秒以下であるので、コイル
には10-6V程度の電圧が生じる。
【0034】この段階で、 というように再生がなされる。また、通常のコイルの代
わりに、超伝導量子干渉素子を用いれば、超伝導−常伝
導転移が十分遅くて、電磁誘導による電圧が小さすぎる
場合にも、磁束量子(10-15 wb)を検出することができ
る。
【0035】本実施例の場合全てのビットに対し、光や
電子線等を照射してそこに磁束が存在していたか否かを
調べることになる。そのため、記憶ディスク上の全ての
ビットが光や電子線の照射のために磁束を失った状態に
なる。しかし、これは・他の補助的な記憶装置を用い
て、その場で記憶しなおすことが可能である。
【0036】ここでは酸化物超伝導体薄膜にBi2Sr2CaCu
2O8 薄膜を用いて作製された記録ディスクを使用した場
合について図1に示す。
【0037】酸化物超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8 薄膜(膜厚
は約1μm)を通常のスパッタリング方によって酸化マ
グネシウム単結晶 (100)面基板上(50mm×50mm×2mm)
に作製した。この超伝導体膜はきわめて平坦な膜であ
り、粒界らしきものは認められなかった。X線解析法に
よってこの超伝導体膜はc軸が基板に対して垂直である
ことがわかった。また、磁化率測定から、90K以下で超
伝導を示すことがわかった。
【0038】この酸化物超伝導体薄膜を通常のフォトリ
ソグラフィー法によってエッチングし、1μm×1μm
×10μmの長方形を多数島状に形成して記録ビット(14)
とした。この記録ディスク(12)を図1のように多数の臨
界温度以下の77Kに冷やし、更に超伝導体の下部臨界磁
場以上の比較的強い外部磁場(15)(例えば0.05T)をか
けて超伝導体の中に磁束を侵入させた。磁場の向きは超
伝導体ビット(14)の長軸方向であった。このビットにエ
ネルギー密度103W/cm2のHe-Ne レーザ光を(13)を照射し
た。この程度のパワーでも超伝導体を常伝導体に転移さ
せることが可能であり、また、超伝導体に対する熱的な
損傷は全くなかった。
【0039】次に、記録された情報の再生をおこなっ
た。書き込みのときと同じパワー密度のレーザ光を照射
し、それによって変化する磁束の量を検出用コイル(11)
によって検出した。その結果、記録の際にレーザ光が照
射された箇所に関しては磁束の変化は検出されなかった
が、レーザ光の照射されなかった(非記憶状態だった)
箇所に関しては、磁束の変化(減少)があることが認め
られた。
【0040】[実施例2]次に、強磁性体(ニッケル)
薄膜を記録ディスクとして用いた場合について述べる。
【0041】ニッケル薄膜は真空蒸着法によってガラス
基板(50mm×50mm×1mm)上に成膜された。膜厚は約1
μmであった。これを高エネルギー紫外レーザ光でエッ
チングして、1μm×1μm×10μmの長方形の多数の
ニッケル薄膜ビットを基板上に作製した。
【0042】まず記録方法について述べる。
【0043】装置を図3に示す。記録ディスク(36)、電
子線源である電子銃(32)等は全て真空槽に置かれてい
る。
【0044】最初に個々のニッケル薄膜ビットは全て、
図3中の第1の外部磁場(39)の向きに磁化さている。第
2の外部磁場は(39)と垂直な方向(38)にかけられる。第
2の外部磁場(38)の大きさは10-3Tであった。この状態
で電子ビーム(ビーム径は約1μm×10μm)(34)を照
射した。電子ビーム(34)によって、キュリー点(約380
℃)以上に熱せられたニッケルは冷却の過程で第2の外
部磁場の向きに磁化される。これで”記録”の状態にな
る。
【0045】すなわち、 1(記憶状態)・・磁化が(39)に垂直 0(非記憶状態)・・磁化が(39)に平行 という二つの状態が存在することになる。
【0046】次に再生について述べる。このとき外部磁
場はやはり(39)に垂直に第3の磁場としてかけられてい
る状態で再生はなされる。記録ディスク(36)に電子ビー
ム(34)を照射すると、既に電子ビーム(34)を照射された
(書き込まれた電子ビーム箇所)の磁化の変化は無い
が、電子ビームの照射されていなかった箇所(書き込ま
れていなかった箇所)に関しては、ニッケルビットの磁
化が(39)に垂直になるため、これが検出用コイル(35)に
関知される。
【0047】すなわち、 信号無し→磁化は(39)に垂直であった。→1 信号有り→磁化は(39)に平行であった。→0 1つのニッケルビットに残留していた磁束による磁気モ
ーメントは10-18wb ・ mであり、10μmはなれたコイル
の外側に出ている磁束の量は約10-13wb である。電子ビ
ーム(34)によって加熱され、磁化が消えるのに要する時
間は10-8秒と見積もられる。従って検出用コイル(35)に
は約10-5Vの電圧が生じる。これは十分検出可能な大き
さの電圧である。
【0048】電子線の照射によって書き込まれたもとも
と”空”だった(非記憶状態だった)箇所には、再び、
外部磁場を(39)の向きにして電子ビーム(34)を照射して
やれば、”空”の状態(すなわち、磁化の向きが(39)に
平行な状態)に戻る。
【0049】実際に動作させてみたところ、上記の説明
と矛盾しない結果が得られた。この場合、1つのビット
を再生するのに要する時間は10-7秒以下であることが確
かめられた。また、記録容量の密度は約107/cm2であっ
た。
【0050】以上のことから、この記憶装置が記憶・再
生の動作ができることが確かめられた。電子ビームを使
用する場合には真空装置が必要であるため、記録ディス
クの交換等に大変な手間がかかるが、記録ディスク数枚
を真空中に封じ切ってしまい、コンピュータ等の補助記
憶装置として使用することが可能である。 [実施例3]本実施例で使用する装置は図4に示すよう
にプローブとしてレーザ光(41)を発生するレーザ(42)
と、超高感度磁束計として超伝導量子干渉素子(SQID)(4
3)、磁束が記録される超伝導体から記憶ディスク(44)、
及び磁場発生装置(45)及び制御系(46)からなる。
【0051】次にこの装置の動作原理を説明する。まず
外部磁場の存在下でレーザ光(41)のビームによって情報
を書き込む。それは光照射や電子照射、単なる超伝導臨
界温度以上の温度上昇等による超伝導体の破壊と磁束の
侵入である。書き込みの原理はどうであれ、この場合に
は、磁場中でのビーム照射によって磁束が保持され、磁
場が無い場合でのビーム照射には磁束は保持されず、既
に保持していた磁束はなくなることが必要である。以上
で書き込み動作が終了する。
【0052】次に読みだし(再生)の原理について説明
する。再生は外部磁場のない状態でおこなう。上記の方
法によって書き込みのなされたディスクは、いわば一つ
の磁石と同じである。もしこのディスクから磁束を一つ
消せば、その分”磁石”の磁束が減るわけであるから、
この減少が関知できれば、磁束が保持されていたかどう
かがわかる。
【0053】この微小な磁束の変化の検出には超高感度
な磁力計が必要である。この場合磁束量子の1つ(大き
さは10-1Wb)が検出できる超伝導量子干渉素子(SQUID)
を使用することが望まれる。
【0054】実際の再生の動作について説明する。
【0055】光や電子線・粒子線のビームを外部磁場の
ない状態で記憶ディスクに照射すると、それまで保持さ
れていた磁束がなくなる。この磁束の損失は直ちに、超
高感度磁力計によって検出され再生信号となる。
【0056】記録された情報を一度だけ読み取るのであ
ればこのまま動作を進めてもよいが、何度でも読み取る
必要のある場合には、ビーム照射によって消された磁束
をもう一度ディスクに書き込む必要がある。これは再
び、外部磁場をかけた状態でビームを照射することによ
ってなされる。この動作は、一つの情報を読み取るたび
におこなっても、また、いくつかの情報もしくは一つの
ディスクの情報を読みだした後、それらの情報を別の記
憶装置に一時的に記憶させておいて、まとめて情報の消
されたディスクに書き込んでもなんら問題とはならな
い。この動作をわかりやすくフローチャートにしたのが
図5である。
【0057】ここでは酸化物超伝導体薄膜を図6のよう
に加工した記憶ディスクについて述べる。酸化物超伝導
体Bi2Sr2CaCu2O8 薄膜(膜厚は約 0.1μm)を通常のス
パッタリング法によって酸化マグネシウム単結晶(100)
面基板上(50mm×50mm×2mm)に作製した。超伝導体膜は
きわめて平坦な膜であり、粒界らしきものは認められな
かった。X線解析法によってこの超伝導体膜はc軸が基
板に対して垂直であることがわかった。また、磁化率測
定から、90K以下で超伝導を示すことがわかった。
【0058】この酸化物超伝導体薄膜(64)を通常のフォ
トリソグラフィー法によってエッチングし、図6に示さ
れるように直径約2μmの孔(63)を一列に多数有する縦
3μmの短冊状に加工した。この記憶ディスクを超伝導
体の臨界温度以下に冷やし、更に超伝導体の下部臨界磁
場以下の弱い外部磁場(62)(図6においては紙面の表か
ら裏への方向)をかけてもこの孔(63)の中には磁束は侵
入できない。これは超伝導体の持つ完全反磁性のためで
ある。ところがこの超伝導の孔(63)の周囲の一部にレー
ザ光(61)や電子線等を照射すれば、加熱によって、ある
いは光の吸収によって、もしくは高エネルギー電子によ
って超伝導体の超伝導対が破壊され、超伝導状態でなく
なり、磁束が孔(63)の中に侵入する。この侵入した磁束
は、レーザ光や電子線の照射が終了し、超伝導状態が回
復しても孔の中に存在し続ける。
【0059】実験は図4に示されるような装置を用いて
おこなった。超伝導体からなる記憶ディスク(44)を液体
窒素によって77Kに冷却し、10-3Tの磁場をかけ、He-N
e レーザ光(41)を直径約1μmに集光して照射した。パ
ワー密度は103 W/cm2 であった。この程度のパワーでも
超伝導体をその臨界温度の90K以上に上げることが可能
であり、また、超伝導体に対する熱的な損傷は全くなか
った。
【0060】これで「記録」の状態になる。
【0061】すなわち 1(記憶状態)・・磁束あり 0(非記憶状態)・・磁束なし という二つの状態が存在することになる。
【0062】次に、記憶された情報の再生をおこなっ
た。外部磁場のない状態で、書き込みのときと同じパワ
ー密度のレーザ光を照射し、それによって変化する磁束
の量を酸化物超伝導体Bi2Sr2Ca2Cu3O10 薄膜を用いたSQ
UID によって測定した。このSQUID の作製方法について
は以下の如く作製した。
【0063】酸化マグネシウム単結晶基板(84)(60mm×
60mm×2mm)上に図7に示すように通常のスパッタリング
法によって超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8 薄膜(71)(膜厚は約
0.1μm)を成膜した。超伝導体膜はきわめて平坦な膜
であり、粒界らしきものは認められなかった。X線解析
法によってこの超伝導体膜はc軸が基板に対して垂直で
あることがわかった。これを図7に示されるようにフォ
トリソグラフィー法によって幅10μmの長方形の線状に
エッチングした。次に図7のAおよびA’で示される部
分に図8(a) に示すようにレーザ光(81)を超伝導体膜(8
2)に照射して、幅約10μmの部分を溶融させた(図8
(a) )。さらに酸素分圧0.05atm のアルゴン─酸素混合
気体( 全圧1atm) 中、 850℃で0.5 時間アニールして溶
融した部分を再結晶化させた。再結晶化した部分は多結
晶(83)になっており、粒界が超伝導線の方向に対して垂
直に入っていた(図8(b) および(c) )。以上の操作に
よってSQUID が作製できた。このSQUID は77Kでも動作
することが確かめられた。図7中(72)は電極を示す。
【0064】その結果、磁束の減少が観測され、記憶の
再生が可能であることが確かめられた。
【0065】[実施例4]本実施例における記憶装置は
プローブとして光、電子線、もしくはその他の粒子線を
発生する装置、ここではレーザ(91)と超高感度磁力計、
磁束が記録される磁性体や超伝導体からなる記憶ディス
ク(92)、および時は発生装置及びロックインアンプ(94)
からなる。プロープとしてレーザ光、超高感度磁力計と
して通常のコイル(93)を用いた例を図9に示す。
【0066】次にこの装置の動作原理を説明する。ま
ず、外部磁場の存在下でプローブのビームによって情報
を書き込む。それは例えば記憶ディスクが超伝導体を利
用するものであったならば、光照射や電子照射、単なる
超伝導臨界温度以上の温度上昇等による超伝導体の破壊
と磁束の侵入であるし、強磁性体の場合には、強磁性転
移温度以上への温度上昇と磁場中冷却による磁化であ
る。書き込みの原理はどうであれ、この場合には、磁場
中でのビーム照射によって磁束が保持され、磁場が無い
場合でのビーム照射には磁束は保持されず、既に保持し
ていた磁束はなくなることが必要である。以上で書き込
み動作が終了する。
【0067】次に読みだし(再生)の原理について説明
する。再生も外部磁場の存在下で行なう。上記の方法に
よって書き込みのなされたディスクは、いわば一つの磁
石と同じである。もしこのディスクにさらに磁束を一つ
書き込めば、その分”磁石”の磁束が増えるわけである
から、この増加が関知できれば、レーザ光や電子線、粒
子線の照射された箇所に磁束が保持されていたかどうか
がわかる。この微小な磁束の変化の検出には超高感度な
磁力計が必要である。磁束量子の1つ(大きさは10-1w
b)が検出できる超伝導量子干渉素子(SQUID) を使用す
ることが望まれるしかしながら、磁束の変化の速度が十
分大きければ、通常のコイルでも十分に検出できる。
【0068】次に実際の再生の動作について説明する。
例として超伝導体で作られた記憶ディスクの場合につい
て述べる。光や電子線・粒子線のビームを外部磁場の存
在下で記憶ディスクに照射すると、それまで磁束があっ
たところには更なる磁束は入り込めず、全体の変化はな
いが、磁束がなかったところには新たに磁束が侵入し、
全体の磁束に変化が生ずる。この磁束の変化はただち
に、超高感度磁力計によって検出され再生信号となる。
記録された情報を一度だけ読み取るのであればこのまま
動作を進めてもよいが、何度でも読み取る必要のある場
合には、ビーム照射によって”情報”を消してやる必要
がある。それは簡単で、外部磁場のない状態でビームを
照射することによってなされる。この動作は、一つの情
報を読み取るたびにおこなっても、また、いくつかの情
報もしくは一つのディスクの情報を読みだした後、それ
らの情報を別の記憶装置に一時的に記憶させておいて、
まとめて情報の消されたディスクに書き込んでもなんら
問題とはならない。この動作をわかりやすくフローチャ
ートにしたのが図10である。
【0069】ここでは酸化物超伝導体薄膜を用いて作製
された記憶ディスクを使用した場合について述べる。酸
化物超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8 薄膜(膜厚は約 0.1μm)
を通常のスパッタリング法によって酸化マグネシウム単
結晶(100) 面基板上(50mm×50mm×2mm)に作製した。
超伝導体膜はきわめて平坦な膜であり、粒界らしきもの
は認められなかった。X線解析法によってこの超伝導体
膜はc軸が基板に対して垂直であることがわかった。ま
た、磁化率測定から、90K以下で超伝導を示すことがわ
かった。
【0070】この酸化物超伝導体薄膜を通常のフォトリ
ソグラフィー法によってエッチングし、直径約2μmの
孔を有する多数の細線円(線幅約0.2 μm)に加工し
た。この記憶ディスク超伝導体の臨界温度以下に冷や
し、更に超伝導体の下部臨界磁場以下の弱い外部磁場を
かけてもこの孔の中には磁束は侵入できない。これは超
伝導体の持つ完全反磁場性のためである。ところがこの
超伝導の孔の周囲の一部にレーザ光や電子線等を照射す
れば、加熱によって、あるいは光の吸収によって、もし
くは高エネルギー電子によって超伝導体が破壊され、超
伝導状態でなくなり、磁束の孔の中に侵入する。特に光
の吸収による超伝導の破壊は10-9以下の短い時間に起こ
り、磁束が侵入する。この侵入した磁束は、レーザ光や
電子線の照射が終了し、超伝導状態が回復しても孔の中
に存在し続ける。
【0071】実験は図1に示されるような装置を用いて
行った。超伝導体からなる記憶ディスクを液体窒素によ
って77Kに冷却し、10-3Tの磁場をかけ、He-Ne レーザ
光を直径約1μmに集光して照射した。パワー密度は10
3W/cm2であった。この程度のパワーでも超伝導体を常伝
導体に転移させることが可能であり、また、超伝導体に
対する熱的な損傷は全くなかった。
【0072】次に、記憶された情報の再生を行った。外
部磁場10-3Tで、書き込みのときと同じパワー密度のレ
ーザ光を照射し、それによって変化する磁束の量を検出
用コイル(1000回巻)によって検出した。その結果、記
録の際にレーザ光が照射された箇所に関しては磁束の変
化は検出されなかったが、レーザ光の照射されなかった
(”空”だった)箇所に関しては、磁束の変化(増加)
があることが認められた。
【0073】この結果、記憶の再生が可能であることが
確かめられた。
【0074】[実施例5]強磁性体(ニッケル)薄膜を
記憶ディスクとして用い、酸化物超伝導体の超伝導量子
干渉素子(SQUID) を磁束変化の検出手段として用いた場
合について述べる。
【0075】図11は本実施例に使用した装置を示す図
であり、電子ビーム(101)、SQID(112)、記憶ディスク(1
13)、制御系(114)からなる。
【0076】ニッケル薄膜は真空蒸着法によってガラス
基板(50mm×50mm×1mm)上に成膜された。薄膜は約0.
1 μmであった。これを高エネルギー紫外レーザ光でエ
ッチングして、一辺の長さが約0.2 μmの多数のニッケ
ルの正方形を基板上に作製した。
【0077】まず記録の方法について述べる。記憶ディ
スク(113)、電子線源(111)SQUID(112)は全て真空中に置
かれている。最初に個々のニッケル正方形は全て、図1
1中のBの向きに磁化されている。これに逆の磁場(11
1)(ビーム径は約0.1μm) を照射した。電子ビームに
よってキュリー点(約380 ℃)以上に熱せられたニッケ
ルは冷却の過程でB' の向きに磁化させる。これで”記
憶”の状態になる。
【0078】次に再生について述べる。磁束の検出手段
として酸化物高温超伝導体を用いたSQUIDを使用した。
この作製方法については『実施例3』に記してある。SQ
UIDは液体窒素によって冷却した。外部磁場の向きはB'
である。記憶ディスクに電子ビームを照射すると、既
に電子ビームを照射された(書き込まれた)箇所に関し
ては図12(a) のような、電子ビームの照射されていな
い(”空”の)箇所に関しては、図12(b) のような磁
束の変化の時間依存性が見られた。図12中時間の原点
が電子線照射開始である。図12(a) で最初磁束が減少
するのは、電子線によって加熱されて常磁性化するため
で、後に磁束が増加するのは冷却によって磁化するため
であると説明できる。一方、図12(b) に関しても、最
初電子線の加熱によって常磁性化するが、”空”の箇所
にはB’の向きとは逆の磁化が存在していたため初めか
ら、磁束は増加する。さらに冷却の過程において今度は
B’の向きに磁化される。この曲線を時間について積分
してやれば、全体の磁束の変化が判る。図12(a) の場
合には積分値はゼロであり、図12(b) の場合にはそれ
はゼロではない。
【0079】電子線の照射によって書き込まれた”空”
の箇所には、再び、外部磁場をBの向きにして電子ビー
ムを照射してやれば、”空”状態に戻る。
【0080】以上のことから、この記憶装置が記憶・再
生の動作ができることが確かめられた。この場合、記憶
の集積度は実に109 という高密度なものである。
【0081】[実施例6]本実施例における記録・再生
装置は図13に示されるように検出用コイル(131) 、磁
性体薄膜(132)、基板(133)、レーザ光(134)、レーザ光
源(135)よりなる。ただし磁束の変化の検出手段として
は、通常のコイルの他に、検出感度のよい超伝導量子干
渉素子を用いてもよい。超伝導量子干渉素子ではなく
て、コイルを磁束の検出手段として用いる場合には空芯
では、信号が小さすぎて読み取れないので、フェライト
等の強磁性体を芯とする。しかし、再生の速度が極めて
速く、信号周波数が10MHz 以上になるとフェライトは強
磁性体として動かなくなる。そのような領域では超伝導
量子干渉素子等を用いる必要がある。その場合には1GH
z程度の信号であっても読み取れる。磁気ディスクの磁
性材料としては、一般には強磁性体が用いられるが、磁
気的なヒステリシス特性を示す第2種超伝導体を用いて
もよい。特に超伝導体の場合には光による超伝導性の破
壊の時間は10-10 秒以下という超高速であるため、記録
・再生の高速化が期待される。特に近年発見された、酸
化物高温超伝導体は従来の超伝導体とは異なり、液体窒
素温度でも超伝導性を示す材料であり磁性材料として将
来性がある。
【0082】次にこの記録・再生装置の動作原理を説明
する。記録時には、検出用コイル(131) によって磁場が
発生するが、その磁場の強さは磁気ディスクの磁性体が
磁化するには十分小さいものとする。この状態でレーザ
光が磁性体に照射され、磁性体はそのキュリー温度以上
に加熱される。レーザ光の照射が終了し、磁性体が冷却
する際に検出用コイル(131) の磁場によってレーザの照
射された部分の磁性体はコイルの磁場の向きに磁化して
いる。これで記録が終了する。
【0083】再生時には、やはりレーザ光が磁性体に照
射される。しかし、このときには外部磁場はかかってい
ないか、かかっていたとしても、記録のときの磁場の向
きとは異なる向き(記録磁場の逆方向や記録磁場の垂直
方向)にかかっている。レーザ光による加熱によって磁
性体の磁化は無くなる。この磁化の消失による時間は、
レーザ光の強度に依存するが、10-8秒以下が可能である
と見積もられる。実際には、そのような速い動きであっ
てもコイルの磁場のフェライトの特性から、レーザを照
射されて、磁束の残った磁性体表面の残留磁束密度を0.
1 T(この値は、強磁性体としては普通の値であ
る。)、磁束の残っている磁性体表面の面積をレーザの
ビーム径程度として10-12m2 、磁気ディスクの磁性体層
の厚さを10-6mとすれば、この磁化した部分の磁性体の
もつ磁気モーメントは10-19wb・m程度である。磁性体と
コイル(この場合は磁芯のフェライト)との距離が、コ
イル(フェライト)の半径に比べて十分大きければ、磁
化した磁性体による磁束のうち、コイルを透過する磁束
の量は、〜μm/dである。ただし、mは磁化した磁性
体による磁気モーメント、dは磁性体とコイル(フェラ
イト)との距離、μはフェライトの比透過率である。d
はこの場合、磁気ディスクとヘッドの接触を避けるとい
うことから、10-6m 以上が必要である。10-5m もあれば
十分である。μの値は周波数依存性があるが、10MHz
程度では100 程度である。従ってコイルを貫く磁束の量
は10-12wb 程度である。再生の際にレーザ光が照射され
て磁化が消え、それまでコイルの中に存在していた10
-12wb 程度の磁束がなくなってしまう。このため、ファ
ラデー電磁誘導の法則からコイルに起電力が生じる。コ
イルの巻数を100 、コイルを貫いていた磁束がなくなる
時間を10-7秒(10MHz に対応)とすれば、起電力は10
-3V程度である。
【0084】このレーザ照射は磁気ディスクの全ての部
分に対してなされ、磁束の変化が検出できれば記録があ
った("1") 、磁束の変化が検出できなければ記録はなか
った("0") 、と判断される。
【0085】磁性体として第2種超伝導体を用いる場合
には上記とはやや異なった記録方法を用いなければなら
ない。第2種超伝導体は下部臨界磁場以下の磁場下では
磁束が内部に侵入せず、またこれを加熱して非超伝導体
としたのち、磁場中冷却しても、磁束は外部に排除され
てしまう。従って上記で説明したような記録方法は適用
できない。第2種超伝導体を磁性体として使用するに
は、まず初期状態として、磁束が侵入した場合を作り出
しておく必要がある。すなわち、磁気ディスクに下部臨
界磁場(例えば、イットリウム−バリウム−銅系酸化物
高温超伝導体では、77Kで数10ガウス)以上の磁場を与
えることによってディスクは磁束を保持する。また、磁
気ディスクの構成も、連続的な超伝導体の膜ではなく、
基板上に微小な独立した超伝導体を形成することが必要
である。記録は磁場の無い状態でおこなう。レーザ光等
を照射することによって、非超伝導体化せしめ、磁化を
なくす。
【0086】すなわち、 1・・レーザ照射・・磁化なし 0・・レーザ照射・・磁化あり 再生時には磁気ディスクの全ての部分にレーザ光を照射
して、磁化の変化があるか否かを調べる。
【0087】このとき、前述の方法とは逆に、 磁化の変化なし・・1 磁化の変化あり・・0 となることに注意する必要がある。
【0088】初期状態において超伝導体に捕捉されてい
る磁束は、超伝導体の面積を10-12m 2 とすれば、10-14w
程度である。超伝導体の厚さを10-6m とすれば、超伝導
体から10-5m 上方にあるコイルを突き抜ける磁束は、10
-15wb である。超伝導体に捕らわれていた磁束が無くな
るまでに必要な時間は、最短で10-10 秒程度(それ以下
も可能と考えられる)であるのでコイルが100 巻(ただ
し、周波数が大きいので空芯)であれば、10-3Vの起電
力が得られる。また、超伝導量子干渉素子は10 -15wb の
磁束の変化が検知できるので電磁誘導起電力によらずと
も再生は可能である。
【0089】ここでは酸化物超伝導体薄膜を用いて作製
された記録ディスクを使用した場合について述べる。酸
化物超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8 薄膜(膜厚は約1μm)通
常のスパッタリング法によって酸化マグネシウム単結晶
(100) 面基板上(50mm×50mm×2mm)に作製した。超伝
導体膜はきわめて平坦な膜であり、粒界らしきものは認
められなかった。X線解析法によってこの超伝導体膜は
c軸が基板に対して垂直であることがわかった。また、
磁化率測定から、90k以下で超伝導を示すことがわかっ
た。
【0090】この酸化物超伝導体薄膜を通常のフォトリ
ソグラフィー法によってエッチングし、1μm×1μm
×1μmの立方体に加工した。この記録ディスクを超伝
導体の臨界温度以下の77Kに冷やし、更に超伝導体の下
部臨界磁場以上の比較的強い磁場(例えば0.05T)をか
けて超伝導体の中に磁束を侵入させた。磁場の向きは基
板に垂直であった。
【0091】図13のように、この立方体超伝導粒にパ
ワー密度103w/cm2のHe-Ne レーザ光(134) (ビーム径約
1μm)を照射した。この程度のパワーでも超伝導体を
常伝導体に転移させることが可能であり、また、超伝導
体に対する熱的な損傷は全くなかった。
【0092】次に、記録された情報の再生をおこなっ
た。書き込みのときと同じパワー密度のレーザ光を照射
し、それによって変化する磁束の量を検出用コイル(コ
イルの巻数 100、厚さ10μm、内径100 μm)によって
検出した。その結果、記録の際にレーザ光が照射された
箇所に関しては磁束の変化は検出されなかったが、レー
ザ光の照射されなかった("0"だった) 箇所に関しては、
磁束の変化(減少)があると認められた。
【0093】この結果、記録の再生が可能であることが
確かめられた。
【0094】[実施例7]強磁性体(ニッケル)薄膜を
記録ディスクとして用いた場合について述べる。
【0095】ニッケル薄膜は真空蒸着法によってガラス
基板(50mm×50mm×1mm)上に成膜された。膜厚は約1
μmであった。
【0096】まず記録の方法について述べる。装置の概
略は図13に示される。コイル(131)(100 巻、磁芯はNi
-Zn フェライト、内径0.1mm )によって磁性体表面で約
10-4Tの磁場を与えつつ、レーザ光(パワー密度103w/c
m2、ビーム径約1μm)を磁性体に照射した。レーザ光
によってキュリー点(約380 ℃)以上に熱せられたニッ
ケルは冷却の過程で外部磁場の向きに磁化される。これ
で”記録”の状態になる。
【0097】次に再生について述べる。磁場の無い状態
で記録のときと同じ条件のレーザ光を照射し、磁束の変
化が在るか否かを調べたところ記録の段階で既にレーザ
光を照射された(書き込まれた)箇所に関しては磁化の
変化は無いが、レーザ光の照射されていなかった箇所
(書き込まれていなかった箇所)に関しては、磁束の変
化が検出コイルに関知された。
【0098】この場合、レーザ光を100MHzで変調させ
て調べたところ、1 つの情報を生かすのに要する時間は
10-7秒以下であることが確かめられた。また、記録容量
の密度は約108/cm2であった。
【0099】以上のことから、この記録装置が記録・再
生の動作ができることが確かめられた。
【0100】[実施例8]本実施例は超伝導体を有する
記録媒体に電流を流す工程と、部分的に光、電子線また
は粒子線を与える工程とにより、前記記録媒体中に磁束
を保持させることとしたものである。
【0101】本実施例は、これまでの実施例が記録に磁
場を用いる方法であるのに対して記録及び再生の際に、
外部磁場を用いない方法である。
【0102】実施例3と同様の方法により酸化物超伝導
体薄膜を図6に示すように加工して、これを記録ディス
クとして用いた。まず記録の方法であるが、図14に示
されるプロセスからなる。最初、超伝導体薄膜に電流(1
41) が流されている。そこへレーザ光もしくは電子線
(図14(b) 中の円で示される部分)が照射されると、
超伝導電流はその部分を避けて流れる。レーザ光もしく
は電子線の照射が終了したら、それまでレーザ光もしく
は電子線の当たっていた部分にも超伝導電流が流れる
が、このときには左右両方向から超伝導電流が流れてい
ることに注意しなければならない。外部電流(141) を切
ると、図14(b) のように閉じた電流が流れ、孔の中に
磁束が捕らわれる。
【0103】再生の際には実施例3と同様に記録のとき
とおなじ レ−ザ光もしくは電子線を照射することによ
って、閉じた永久電流を破壊することによって、磁束を
消滅させればよい。また、再生と同時に書き込みをおこ
なう場合(図5参照)には、上記の記録方法と同様に電
流を超伝導体薄膜に流して、記録の動作をおこなえばよ
い。この場合に外部磁場が必要ないのは言うまでもな
い。
【0104】このようにして磁場を用いずに記憶・再生
することも可能である。この方法が『実施例3』に比べ
て優れている点は、情報の集積度を簡単に上げられると
いうことである。例えば、孔の一辺の大きさが0.1 μm
とすれば、この孔に1 つの磁束量子が存在した場合、そ
の孔の中の磁束密度は約0.1 Tにもなる。このことは逆
に、外部磁場をかけて孔の中に磁束を入れる場合には、
外部磁場は少なくとも0.1 Tなければならないというこ
とである。0.1 Tという磁場を発生させるにはかなり大
掛かりな装置が必要である。
【0105】
【発明の効果】本発明は、記録媒体とその媒体に記録を
与えたり、または読み出したりする手段である、レーザ
光や電子線等あるいはコイルというような手段が記録媒
体と接触しないため、本発明による記録・再生方式は従
来のものとは全く方式の異なる画期的なものである。特
に、記録および再生の動作に際し、従来の磁気ヘッドに
よる記録・再生方式と異なり、記録媒体と検出手段との
間の相対運動が無いため、摩耗等の問題がなく、また、
記録・再生の速度が非常に大きくできる。また、高集積
化が可能で、例えば、記録・再生のプローブとして集束
電子ビームを使用すれば、1cm2に1010個の情報を記録
・再生することができる。特に記録の検出に超高感度磁
力計として酸化物高温超伝導体を用いたSQUID を使用す
れば、装置の冷却は液体窒素でも十分である。このこと
は例えば、液体窒素冷却によるスーパーコンピュ−ター
等の記憶装置としては問題なく利用できるということを
意味している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施するための記録装置の構成図。
【図2】 本発明の記録の原理を示す図であり、(a) は
外部磁場を加えた図。(b) は磁化の様子を示す図。(c)
は記録の様子を示す図。
【図3】 本発明を実施するための記録装置。
【図4】 本発明の記憶装置の構成図。
【図5】 記録再生の動作を示す図。
【図6】 酸化物超伝導体を短冊状に加工した図。
【図7】 酸化物超伝導体を用いたSQUID の例を示す
図。
【図8】 SQUID の弱結合部の作製手順を示す図。(a)
はレーザ照射を示し、(b) はアニール後の断面を示し、
(c) はアニール後を上から見たところを示したものであ
る。
【図9】 本発明の記憶装置の構成図。
【図10】 記録再生の動作を示す図。
【図11】 本発明の記憶装置の構成図。
【図12】 磁束の変化の時間依存性を定性的に説明し
た図。(a) は既に記憶状態にあった場合を示し、(b) は
記憶状態に無かった場合を示す。
【図13】 本発明の記録装置の構成図。
【図14】 外部磁場を使わない記録方法を示す図。
【符号の説明】
11 検出用コイル 12 記録ディスク 13 レーザ光 14 記録ビット(超伝導体) 15 外部磁場 21 基板 22 検出用コイル 23 レーザ光 31 真空槽 32 電子銃 33 偏向コイル 34 電子ビーム 35 検出用コイル 36 記録ディスク 37 磁場発生用磁石 38 第2の外部磁場 39 第1の外部磁場 41 レーザ光 42 レーザ 43 SQUID 44 記憶ディスク 45 磁場発生装置 46 制御系 61 レーザ光 62 外部磁場 63 孔 64 超伝導体薄膜 71 酸化物超伝導体線 72 電極 82 酸化物超伝導体膜 83 多結晶化した酸化物超伝導体膜 84 基板 91 レーザ 92 記憶ディスク 93 検出用コイル 94 ロックインアンプ 111 電子ビーム 112 SQUID 113 記憶ディスク 114 制御系 131 検出用コイル 132 磁性体薄膜 133 記録媒体(光学的に透明) 134 レーザ光 135 レーザ 141 電流
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/00 G11B 11/00 G11B 9/00 G11C 11/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】超伝導体もしくは磁性体を有する記録媒
    に記録された情報を再生する記録再生方法であって、磁場の中で前記記録媒体に光、電子線もしくは粒子線を
    照射し、前記記録媒体の一部の磁化の向きを反転させ、
    前記磁化の向きの反転による磁束の変化を 検出すること
    により前記情報を再生することを特徴とする記録再生方
    法。
  2. 【請求項2】超伝導体もしくは磁性体を有する記録媒
    に記録された情報を再生する記録再生方法であって、 前記記録媒体に光、電子線もしくは粒子線を照射し、前
    記記録媒体の磁化された部分の磁化を消去し、前記磁化
    の消去による磁束の変化を検出することにより前記情報
    を再生することを特徴とする記録再生方法。
  3. 【請求項3】超伝導体もしくは磁性体を有する記録媒
    に記録された情報を再生する記録再生方法であって、磁場の中で 前記記録媒体に光、電子線もしくは粒子線を
    照射し、前記記録媒体の磁化された部分の磁化を消去
    し、前記磁化の消去による磁束の変化を検出することに
    より前記情報を再生することを特徴とする記録再生方
    法。
  4. 【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれか一におい
    て、前記磁束の変化の検出は磁気ヘッドにより行われる
    ことを特徴とする記録再生方法。
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