JP3142406B2 - プレス成形性に優れた樹脂複合型制振アルミニウム板 - Google Patents

プレス成形性に優れた樹脂複合型制振アルミニウム板

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JP3142406B2
JP3142406B2 JP05004975A JP497593A JP3142406B2 JP 3142406 B2 JP3142406 B2 JP 3142406B2 JP 05004975 A JP05004975 A JP 05004975A JP 497593 A JP497593 A JP 497593A JP 3142406 B2 JP3142406 B2 JP 3142406B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プレス成形性に優れた
制振アルミニウム板(本願で言うアルミニウム板とはア
ルミニウム合金板を含む。以下アルミニウム板という)
に関するものである。本発明は制振アルミニウム板は、
自動車用パネル類、家電製品、建築材料、その他、機械
部品類等に使用され、重量の増加を最小限に抑え、か
つ、振動を低減し、さらには騒音の発生を抑制するのに
好適の材料である。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車、家電製品、情報通信機器
等の高級化、高機能化に伴って振動、騒音のレベルの低
減、抑制が強く求められる傾向にある。また、室内外の
環境改善を目的として、騒音、振動が規制される傾向も
見られるようになってきている。
【0003】このような傾向に対して、騒音源や振動源
となる金属材料に制振性能、即ち騒音を発生する部材自
体の振動エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換し、
振動速度あるいは、振動振幅を減衰させて音響放射を低
減する機能を付与し、さらにその機能を向上を図ること
が要請されている。一方では、自動車の軽量化による排
気ガスの低減、家電製品等の小型化の動きは、ますます
強まる傾向にあり、材料自体の軽量化を図ることも要請
されている。従って、これらの要請を共に満足させるよ
うな、制振性能に優れ、製品の軽量化を可能とする材料
の提供が要望されている。
【0004】このような要望に対して、まず制振性の優
れた材料として従来から金属層間に粘弾性を有する中間
層を挟み込んだ複層構造の複合型制振材料が提案されて
いる。そして、この複合型制振材料は、自動車のオイル
パン、エンジンカバー、家電機器、その他の機械部品等
の振動を低減すべき部材や構造部材において検討され、
採用されている。
【0005】一般に、このような複合型制振材料の制振
性能は、その中間層を構成する粘弾性中間層の性能に依
存している。この制振性能を損失係数で表わすと、損失
係数はある一定温度でピーク特性を示し、このピーク特
性温度の近傍で使用するのが最も効果的であることが、
知られている。従って、使用環境に応じて中間層の粘弾
性組成物が選定されるのが一般的である。
【0006】従来、このような複合型制振材料の粘弾性
中間層を構成する粘弾性組成物としては、ポリエステル
単体(特開昭50−143880号公報)あるいはポリ
エステルに可塑剤を添加したもの(特開昭51−937
70号公報)ポリウレタンフォーム単体(特開昭51−
91981号公報)あるいはポリアミド単体(特開昭5
6−159160号公報)、エチレン−酢酸ビニル共重
合単体(特開昭57−34949号公報)ポリビニルブ
チラール又はポリビニルブチラールとポリ酢酸ビニルと
の組成物に可塑剤、粘着付与物質を配合したもの(特公
昭55−27975号公報)イソシアネートプレポリマ
ーとビニルモノマーの共重合体(特公昭52−2655
4号公報)、又は、特公昭39−12451号公報、特
公昭45−34703号公報、特公昭62−74645
号公報に示される共重合体等が知られている。
【0007】一方、自動車の軽量化の要請に関しては、
近年特にアルミニウム板の車体パネルへの適用が検討さ
れ、実用化されている。そこで、制振性能を有した軽量
化材料としては、アルミニウム板を表皮材とした樹脂複
合型制振材料が有望視される。しかし、軽量化を目的と
して複合型制振材料の表皮材にアルミニウム板を用いた
場合、アルミニウム板のプレス成形性が鋼板に比べて低
いため、上記従来の粘弾性組成物で製造される制振アル
ミニウム板では、制振鋼板の場合に比べて、プレス成形
性の低下が避けられない。
【0008】アルミニウム板において、プレス成形性を
向上させるためには、アルミニウム板の機械的特性値で
ある延性、r値、n値等を向上させることが、効果的で
あることが認められているが、複合型制振材料の表皮材
としてアルミニウム板を用いた時には、単板の時に比べ
て、延びが低下するため、プレス成形性の方が劣化して
しまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、粘弾
性樹脂組成物を中間層とする制振アルミニウム板におい
て、制振性に影響を与えることなくプレス成形性を向上
させることのできる粘弾性樹脂組成物を用いてプレス成
形性に優れた複合型制振アルミニウム板を提供するもの
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、本発明の
目的を達成すべく樹脂複合型制振アルミニウム板におい
てアルミニウム板の構成および粘弾性樹脂組成物の特性
について鋭意検討を行なった結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、2枚のアルミニウム板とその中
間に粘弾性の樹脂層からなる樹脂複合型制振アルミニウ
ム板において、表裏の表皮材が0.3〜3.0mm厚のア
ルミニウム板からなり、表皮アルミニウム板によって拘
束される中間粘弾性樹脂層の厚みが0.01〜0.2mm
であり、かつ、プレス成形温度における中間粘弾性樹脂
層の弾性率が3.5×106 〜3.5×108 dyne
/cm2 であることを特徴とする、プレス成形性に優れた
樹脂複合型制振アルミニウム板である。
【0011】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、表皮に使用されるアルミニウム板、板厚0.3〜
3.0mmの範囲でなければならない。表皮材の板厚が
0.3mm未満になるとプレス成形時にシワが発生しやす
くなり好ましくない。また表皮材の板厚が3.0mm超に
なるとアルミニウム板の剛性が高くなり過ぎ、プレス成
形時に表皮材の残留歪によって樹脂が剥離しやすくなる
ため好ましくない。
【0012】なお、本発明に使用されるアルミニウム板
の種類は、問わない。また、アルミニウム板の表面は、
樹脂の密着性を向上させる目的で、陽極酸化処理、クロ
メート処理、あるいはシランカップリング剤処理、チタ
ネートカップリング剤処理等の各種表面処理を施しても
良い。本発明に用いられる中間粘弾性樹脂の厚みは、
0.01〜0.2mmの範囲が最も好ましい。樹脂層の厚
みが0.01〜0.2mmの範囲を外れると接着力が低下
してしまいプレス成形時に剥離してしまう恐れがあるた
め、好ましくない。
【0013】中間粘弾性樹脂層のプレス成形時における
弾性率は3.5×106 〜3.5×108 dyne/cm
2 の範囲にあることを必要とする。中間粘弾性樹脂層の
弾性率が3.5×106 dyne/cm2 未満になるとプ
レス成形品のフランジ部、およびボディー部のシワが大
きくなる。また、中間粘弾性樹脂層の弾性率が3.5×
108 dyne/cm2 超になると、プレス成形品のポン
チ肩部においてワレが発生しやすくなり、深い絞り加工
ができなくなる。
【0014】本発明に用いられる中間粘弾性樹脂層とし
ては、制振性能向上の点から非晶性であることが望まし
い。樹脂としては、例えば非晶性ポリエステル、ポリイ
ソブチレン、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、ポリ
ウレア、非晶性ポリアミド、非晶性ポリアミドイミド、
ポリイミド、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビ
ニル系樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、あるいは、各
種樹脂をブレンドしたものや、共重合体等が挙げられ
る。樹脂の弾性率を3.5×106 〜3.5×108
yne/cm2 の範囲におさめる目的で樹脂中に可塑剤、
あるいは、無機粉末成分、架橋剤等の各種添加剤を添加
してもよい。
【0015】
【作用】本発明の樹脂複合型制振アルミニウム板は、優
れた制振性能はいうまでもなく、従来アルミニウム単板
においても困難であったプレス成形を可能とする、非常
に優れた成形性を有するものである。このように非常に
優れたプレス成形性が得られる理由として、樹脂の弾性
率を通常の樹脂より低くすることによって表裏板間に剪
断方向のズレが生じ、アルミニウム板の応力集中が分散
緩和されるためではないかと考えられる。
【0016】樹脂の弾性率が下がりすぎると表裏板間の
ズレが大きくなり過ぎシワ発生等により片側の板に応力
が集中してしまうため破断するものと考えられる。
【0017】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 実施例1 以下の条件により、プレス成形性に及ぼす樹脂の弾性率
の影響を調査した。試験片は、0.6mm厚の1100番
系アルミニウム板に樹脂固形分30wt%の樹脂溶液を
乾燥後0.025mm厚になるようにバーコーターで塗布
し200℃で3分間熱風乾燥した後、同様にして樹脂を
塗布したもう1枚のアルミニウム板と樹脂面どうしを貼
り合わせ、圧力5kgf/cm2 、温度200℃の条件で
ホットプレスすることによって作成した。
【0018】作成した制振板を外径104mm(絞り比
2.08)、105mm(絞り比2.10)、109mm
(絞り比2.18)、110mm(絞り比2.20)の円
盤状に打抜き加工し、円筒型プレス成形試験を行った。
プレス試験は、ポンチ径50mmφ、ポンチ肩R4mm、ダ
イス肩R8mmの金型条件で、成形速度300mm/mi
n、シワ押さえ圧力600kgfで防錆潤滑油を塗布し
て最大深絞り成形高さを測定した。なお、本テストでは
成形高さ40mm以上は絞りぬけとなるため結果を示す表
において「≧40」と表現した。
【0019】樹脂の弾性率は室温度(20℃)、1Hz
における動的弾性率を測定した値を用いた。プレス成形
試験結果を表1に示す。同表より明らかなように、本発
明によるものは優れたプレス成形性能を有している。
【0020】
【表1】
【0021】実施例2 次に、表皮材としてのアルミニウム板の板厚がプレス成
形性に及ぼす影響を調査した。試験材の作成方法および
試験評価は、実施例1と同様であるが、表皮材のアルミ
ニウム板の板厚を0.01,0.2,0.3,3.0mm
と変化させた。樹脂は、ポリエステルエポキシ系で弾性
率が3.1×108 dyne/cm2 のものを用い、樹脂
厚を0.05mmとした。
【0022】プレス成形試験の結果を表2に示すが、ア
ルミニウム板の板厚が0.3〜3.0mmにおいて良好な
プレス成形性能を示す。
【0023】
【表2】
【0024】実施例3 実施例1と同様な方法で、板厚0.6mmのアルミニウム
板で拘束される中間層としてポリエステルエポキシ系の
弾性率が3.1×108 dyne/cm2 の樹脂を用い
て、樹脂厚みを0.005〜0.22mmに変化させた制
振アルミニウム板を作成し、プレス試験を行った。その
結果を表3に示す。表3のプレス成形評価結果から明ら
かなように,中間樹脂層の厚みが0.01〜0.20mm
において良好なプレス成形性能を示す。
【0025】
【表3】
【0026】実施例4 アルミニウム板の単板(板厚1.0mm)のプレス成形性
およびアルミニウム板2枚(板厚はそれぞれ0.6mm)
を単に重ね合せて拘束なしの条件でプレス成形性をそれ
ぞれ評価した。その結果を表4に示す。表4から明らか
なように、アルミニウム板の単板および未接着の2枚板
は上記した本発明によるものと比較してプレス成形性能
がかなり劣る。言いかえれば、本発明の構成とする樹脂
複合型アルミニウム板とすることによって、従来のアル
ミニウム板単板で困難であった深絞り成形を可能とす
る。
【0027】
【表4】
【0028】
【発明の効果】実施例および比較例より明らかなよう
に、アルミニウム板によって拘束された中間樹脂層の弾
性率、樹脂厚、および表皮材となるアルミニウム板の厚
みを最適な範囲に収めることによって、非常に優れたプ
レス成形性を実現することができるので、本発明の樹脂
複合型アルミニウム板は、軽量な制振材料として極めて
有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野口 修 東京都中央区日本橋室町4丁目3番18号 スカイアルミニウム株式会社内 (72)発明者 阿部 佑二 東京都中央区日本橋室町4丁目3番18号 スカイアルミニウム株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−236951(JP,A) 特開 平4−43027(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08 F16F 15/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2枚のアルミニウム板とその中間に粘弾
    性の樹脂層からなる樹脂複合型制振アルミニウム板にお
    いて、表裏の表皮材が0.3〜3.0mm厚のアルミニウ
    ム板からなり、表皮アルミニウム板によって拘束される
    中間粘弾性樹脂層の厚みが0.01〜0.2mmであり、
    かつ、プレス成形温度における中間粘弾性樹脂層の弾性
    率が3.5×106 〜3.5×108 dyne/cm2
    あることを特徴とする、プレス成形性に優れた樹脂複合
    型制振アルミニウム板。
JP05004975A 1993-01-14 1993-01-14 プレス成形性に優れた樹脂複合型制振アルミニウム板 Expired - Lifetime JP3142406B2 (ja)

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