JP3129898B2 - 複合ロールの鋳造方法 - Google Patents

複合ロールの鋳造方法

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JP3129898B2 JP05308101A JP30810193A JP3129898B2 JP 3129898 B2 JP3129898 B2 JP 3129898B2 JP 05308101 A JP05308101 A JP 05308101A JP 30810193 A JP30810193 A JP 30810193A JP 3129898 B2 JP3129898 B2 JP 3129898B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダクタイル鋳鉄からな
る内層の強靱性が劣化し難い複合ロールの鋳造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、ロール材質の高性能化に伴って、
単体ロールに代わって、優れた圧延特性と耐事故性・耐
折損性とを兼備させた複合ロールが使用されるようにな
ってきた。かかる複合ロールの鋳造方法として、高合金
ロール材からなる外層を遠心力鋳造した後、その内面に
強靱性のあるダクタイル鋳鉄溶湯を鋳込み、外層内面を
少し溶け込ませて、外層の内面に強靱性内層を溶着鋳造
する方法がある。かかる方法によると、内層を溶着する
際、外層の高合金成分が内層に溶け込んで、内層の強靱
性を劣化させるという問題があった。かかる問題を解消
するため、外層を鋳造後、外層内面にアダマイト材質の
中間層を鋳造し、更にその内面に内層を鋳造することも
行われている。かかる中間層の形成により、外層からの
高合金成分の内層への混入は中間層を成形しない場合に
比して半分程度に軽減される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、小形のロール
では、胴部直径の制約から中間層を形成することが困難
な場合がある。また、溶湯の種類として外層材、内層材
の他に中間層材が必要である。尚、中間層を設けること
なく、外層からの成分の混入を軽減するためには、内層
材の鋳込みタイミングを遅らせればよいが、溶着不良が
発生する恐れがある。
【0004】本発明はかかる問題に鑑みなされたもの
で、中間層を形成することなく、強靱な内層が得られる
複合ロールの鋳造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の複合ロールの鋳
造方法は、高合金ロール材からなる外層を遠心力鋳造し
た後、該外層を内有する遠心力鋳造用金型を用いて静置
鋳造用鋳型を構成し、前記外層内に内層形成用ダクタイ
ル鋳鉄溶湯を鋳込み、外層の内面に凝固層が形成された
後、残部の溶湯を排出すると共に新たにダクタイル鋳鉄
溶湯を注入し、前記凝固層と新たに注入されたダクタイ
ル鋳鉄溶湯の凝固層とからなる内層を外層内面に鋳造形
成する方法である。
【0006】尚、本発明において使用する外層材として
は、ハイス系鋳鉄材や高クロム鋳鉄材など、各種の耐摩
耗性を有する高合金ロール材を使用することができる。
ハイス系鋳鉄材の組成例(wt%)を下記に示す。これ
は、特開平4−176840号公報に開示されているも
のである。 C :1.0 〜3.0 %、 Si:0.1 〜2.0 %、 Mn:
0.1 〜2.0 %、Cr:3.0 〜10.0%、 Mo:0.1 〜6.
0 %、 W :1.5 〜10.0%、V、Nbの一種又は二種の
合計:3.0 〜10.0%、 残部実質的にFe また、ロール内層材として好ましいダクタイル鋳鉄溶湯
の組成例(wt%)を下記に示す。
【0007】C :2.8 〜4.0 %、 Si:1.0 〜4.0
%、 Mn:0.2 〜1.0 %、P :0.1 %以下、 S
:0.06%以下、 Cr:0.05〜0.5 %、Ni:0.3
〜3.0 %、 Mg:0.01〜0.6 %、 残部実質的にFe
【0008】
【作用】外層の内面にダクタイル鋳鉄溶湯の凝固層が形
成された後、残部のダクタイル鋳鉄溶湯を排出すると共
に新たな内層形成用ダクタイル鋳鉄溶湯を注入するの
で、外層の高合金成分が混入した、先に注入したダクタ
イル鋳鉄溶湯(先注溶湯という。)により内層が形成さ
れるおそれがなく、外層成分が混入した先注溶湯の凝固
層の一部が溶かし込まれるものの、外層の合金成分の混
入が抑制された、後に注入されたダクタイル鋳鉄溶湯
(後注溶湯)により内層を鋳造形成することができる。
従って、中間層を形成することなく、外層成分混入率を
著しく軽減する(通常、3%以下)ことができ、ダクタ
イル鋳鉄の強靱性劣化を可及的に抑制することができ
る。なお、後注溶湯の鋳込みタイミングは、先注溶湯の
凝固層が厚くなるほど、後注溶湯の凝固部分が少なくな
るので、先注溶湯の凝固層が形成された時点で速やかに
後注溶湯を注入するのがよい。
【0009】
【実施例】
実施例1 内寸法φ400×長さ1000mmの遠心力鋳造用金型を
用いて、表1の組成の外層用ハイス系鋳鉄材を、外層鋳
込み厚さ50mmとして横型遠心力鋳造した。外層の凝固
完了後、図1に示すように、下部砂型2に外層10を内
有した遠心力鋳造用金型1を立設し、その上に押し湯部
用砂型3を載置して静置鋳造用鋳型を構成し、同表に示
した内層用ダクタイル鋳鉄材溶湯11を1200kg押
し湯部用砂型3の上部開口より上注鋳造した。
【0010】
【表1】
【0011】次に、下部砂型2を介して鋳型内に連通し
た注入管4(陶管と砂型)の管内溶湯が凝固して詰まる
ことがないように、管内溶湯量と同量のダクタイル鋳鉄
溶湯(約100kg)を注入管4の上部開口より1分半
の間隔で8回鋳造し、9回目に(先注後12分経過後)
1000kgの内層溶湯を注入管4より下注鋳造し、鋳
型内の先注溶湯を継続的に押湯部用砂型3に付設した排
出樋5から排出した。
【0012】内層が凝固した後、型ばらしし、表面より
5mm(直径で10mm)を加工後、超音波装置を用い
て外層厚さを測定したところ41〜44mmであった。す
なわち6〜9mm再溶融したことが分かる。このロールを
1050℃から焼入し、550℃での焼戻した後、内層
中心部から引張試験片を採取し、引張試験を行うと共
に、白銑化元素について内層成分を分析した。その結果
を表2に示す。同表より、外層成分の混入量はごくわず
かであり、機械的性質も良好であることが分かる。
【0013】
【表2】
【0014】上記実施例と比較するため、従来例として
表1に示した外層材溶湯を用いて外層を遠心力鋳造し、
実施例と同様にして該外層を内有した遠心力鋳造金型を
用いて静置鋳造用鋳型を構成し、同表の内層用ダクタイ
ル鋳鉄材溶湯を1100kg上注鋳造し、内層材溶湯の
下注鋳造を実施することなく、複合ロールを鋳造した。
【0015】また、比較例として、表1に示した外層材
溶湯を用いて外層を遠心力鋳造し、実施例、従来例と同
様にして静置鋳造用鋳型を構成し、3000kgの内層
用ダクタイル鋳鉄材溶湯を連続的に下注鋳造し、その内
の1800kgを排出樋5からオーバーフローさせて複
合ロールを製造した。従来例、比較例のロールの内層中
心部から引張試験片を採取し、引張試験を行うと共に、
白銑化元素について内層成分を分析した。その結果を実
施例と共に表2に併せて示す。表2より、従来例の外層
成分混入率は実施例の3倍以上であることが分かる。一
方、比較例については、注入した内層溶湯量が実施例と
同量であるにもかかわらず、実施例の2倍以上の混入が
認められ、引張強度についても実施例より20%以上低
いものあった。
【0016】実施例2 内寸法φ836×長さ2620mmの遠心力鋳造用金型を
用いて、下記のハイス系鋳鉄材により外層75mmを横型
遠心力鋳造した。 ・外層材組成(wt%) C :2.03%、 Si:0.67%、 Mn:
0.76% P:0.022%、 S:0.019%、 Ni:
0.05% Cr:5.86%、 Mo:3.30%、 W :
4.00% V :4.96%、 Co:4.13%、 残部実
質的にFe 外層の凝固完了後、図2に示すように、下部砂型2Aの
上に外層10を内有した遠心力鋳造用金型1を立設して
静置鋳造用鋳型を構成し、下記に示したダクタイル鋳鉄
材(内層材)溶湯11を上部開口より上注鋳造した。 ・内層材組成(wt%) C :3.38%、 Si:2.33%、 Mn:
0.34% P:0.055%、 S:0.010%、 Ni:
0.51% Cr:0.23%、 Mo:0.16%、 Mg:
0.058% 残部実質的にFe 内層材を鋳造し、15分経過後、下部砂型2Aの湯道に
連通する金型端部に開設された排出口に装着された栓6
を抜いて鋳型内の溶湯を排出した後、直ちに栓6を再装
着し、再び新たな内層材溶湯を上注鋳造した。
【0017】内層が凝固した後、型ばらしし、外層厚さ
を測定したところ65〜68mmであった。すなわち7〜
10mm再溶融したことが分かる。また、内層の外層成分
混入率を調べたところ1%以下であった。このロールを
1050℃から焼入し、550℃での焼戻した後、内層
から引張試験片を採取し、同試験に供したところ、引張
強度710MPa、伸び2.15%であった。
【0018】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、外層の内面
に内層形成用ダクタイル鋳鉄溶湯の凝固層が形成された
後、残部のダクタイル鋳鉄溶湯を排出すると共に新たな
ダクタイル鋳鉄溶湯を注入するので、外層の合金成分の
混入が著しく軽減された、後に注入されたダクタイル鋳
鉄溶湯により内層を鋳造形成することができ、内層の溶
着の際のダクタイル鋳鉄の強靱性劣化を可及的に抑制す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における内層鋳造状態を示す静置鋳造用
鋳型の断面図である。
【図2】本発明における内層鋳造状態を示す他の静置鋳
造用鋳型の断面図である。
【符号の説明】
1 遠心力鋳造用金型 10 外層 11 ダクタイル鋳鉄(内層材)溶湯
フロントページの続き (72)発明者 中井 豊 兵庫県尼崎市西向島町64番地 株式会社 クボタ 尼崎工場内 (72)発明者 長谷川 達彦 兵庫県尼崎市西向島町64番地 株式会社 クボタ 尼崎工場内 (72)発明者 渡部 誠 兵庫県尼崎市西向島町64番地 株式会社 クボタ 尼崎工場内 (56)参考文献 特開 平7−207411(JP,A) 特開 平5−311319(JP,A) 特開 昭62−176657(JP,A) 特開 昭61−26758(JP,A) 特開 昭59−163068(JP,A) 特開 昭56−41062(JP,A) 特開 昭56−41061(JP,A) 特開 平1−241307(JP,A) 特開 平5−285509(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 19/16 B21B 27/00 B22D 13/02 502

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高合金ロール材からなる外層を遠心力鋳
    造した後、該外層を内有する遠心力鋳造用金型を用いて
    静置鋳造用鋳型を構成し、前記外層内に内層形成用ダク
    タイル鋳鉄溶湯を鋳込み、外層の内面に凝固層が形成さ
    れた後、残部の溶湯を排出すると共に新たにダクタイル
    鋳鉄溶湯を注入し、前記凝固層と新たに注入されたダク
    タイル鋳鉄溶湯の凝固層とからなる内層を外層内面に鋳
    造形成する複合ロールの鋳造方法。
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