JP3121001B2 - Tl系酸化物超伝導体の製造方法 - Google Patents

Tl系酸化物超伝導体の製造方法

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JP3121001B2 JP02297212A JP29721290A JP3121001B2 JP 3121001 B2 JP3121001 B2 JP 3121001B2 JP 02297212 A JP02297212 A JP 02297212A JP 29721290 A JP29721290 A JP 29721290A JP 3121001 B2 JP3121001 B2 JP 3121001B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、タリウム(Tl)系の酸化物超伝導体の製
造方法に関する。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題] 近年、Tl−Ba−Ca−Cu−O系の酸化物超伝導体が100K
以上という高い超伝導転移温度(臨界温度)を有するこ
とが発表されて以来、Tl系の酸化物超伝導体に関する研
究が盛んに行われている。しかし、Tl系の酸化物超伝導
体では、組成が同一であるにもかかわらず、臨界温度が
大幅に異なる化合物の報告が数多くなされている。特
に、組成がTl2Ba2CuO6であると報告されている化合物で
は、臨界温度が80Kのものから、0Kでも超伝導特性を示
さないものまで各種報告されている。
しかし、Tl系酸化物超伝導体において、製造方法と臨
界温度との関係は未だ把握されておらず、臨界温度が所
望の範囲内にあるTl系酸化物超伝導体を確実に製造する
ことができないという問題点がある。
この発明は、このような実情に鑑みてなされたもので
あって、各組成において、臨界温度が夫々所望の範囲内
にあるTl系酸化物超伝導体を確実に製造することができ
るTl系酸化物超伝導体の製造方法を提供することを目的
とする。
[課題を解決するための手段及び作用] この発明に係るTl系酸化物超伝導体の製造方法は、Tl
系酸化物超伝導体を構成する金属元素が所定の割合で調
合された混合原料を酸素含有雰囲気において800乃至950
℃で焼成する工程と、この工程で得られた焼結体を酸素
含有雰囲気中で徐冷する工程と、この徐冷工程完了後に
真空中で又は不活性ガス雰囲気中で再加熱して前記焼結
体が所定温度に至った際に前記焼結体を急冷する工程と
を有することを特徴とする。
本発明者らは、前述した臨界温度のばらつきが、原料
焼結後の冷却速度の相違による結晶構造中への酸素の取
込み量の下に基づくものと考え、Tl2Ba2CuO6の化合物に
ついて確認実験を行った。その結果、冷却速度が10℃/
分程度の場合は超伝導特性を示さないが、冷却速度を速
くするとそれに応じて化合物内の酸素量が少なくなり、
超伝導特性を示すようになること、及びその臨界温度も
順次高くなることが確認された。
また、本発明者らは、原料焼結後10℃/分で冷却処理
した組成がTl2Ba2CuO6である化合物を流量120ml/分の酸
素気流中で5℃/分の速度で昇温しながら、その熱重量
変化を調べた。第16図はその結果と重量損失から算出し
た単位格子当りの酸素減少個数を示したものである。こ
の図から明らかなように、重量変化は200℃付近から始
まり、400℃で0.10%、500℃で0.17%、600℃で0.3%、
700℃で0.52%、800℃で1.32%の重量損失が認められ
た。なお、重量変化は、600℃付近からその変化量が徐
々に大きくなっており、この温度付近からは、酸素の放
出だけでなくTlの蒸発も生じているものと思われる。
更に、Tl2Ba2Ca2Cu3O10についても同様に熱重量変化
を調べた。第17図はその結果を示したものである。この
図から明らかなように、400℃付近から微量の重量損失
が始まり、800℃付近でしだいに損失量が顕著となり、9
00℃では急激な重量損失が観察される。
本発明では、このような事実に基づき、熱処理条件を
規定すると共に、急冷処理を行うことにより上記目的を
達成するものである。
この発明はTl系の超伝導酸化物であればその全てに適
用可能であるが、上述した Tl2Ba2CuO6、 Tl2Ba2Ca2Cu3O10で代表される Tl2Ba2Can-1CunO2n+4に対し特に有効である。すなわ
ち、 Tl2Ba2Can-1CunO2n+4に本発明の熱処理を施すことによ
り、 Tl2Ba2Can-1CunO2n+4-y(yは0<y<1の範囲内)で
表され、高い臨界温度を有する酸化物超伝導体を有効に
製造することができる。
Tl2Ba2Can-1CunO2n+4で表現される物質は、ホール量が
多量であるため、酸素量が減少することにより高い臨界
温度を得ることができる。
また、本発明は、 TlBa2Can-1CunO2n+3に適用することもでき、この場合に
は、 TlBa2Can-1CunO2n+3-yで表され、 TlBa2Can-1CunO2n+3よりも高い臨界温度を有する酸化物
超伝導体を得ることができる。すなわち、TlBa2Can-1Cu
nO2n+3から酸素を欠乏させることにより、より臨界温度
の高い酸化物超伝導体を得ることができる。これは、こ
の出願の出願人が先に出願した特願昭1−236174に記載
されている TlBa2CaCu2O7なる酸化物超伝導体のCaサイトの一部を適
量のYで置換したときに臨界温度が上昇する現象と実質
的に同一の作用に基づくものである。すなわち、Caサイ
トのYによる置換は、この物質におけるCuの平均原子価
を下げる作用をなし、この作用は TlBa2Can-1CunO2n+3から酸素を欠乏させることによって
も達成されるからである。なお、nが2の場合、すなわ
ち、 TlBa2CaCu2O7-yの構造において臨界温度が最大となるy
の値は、化学量論的には、Cuの平均原子価が2.3程度と
なる0.2前後である。
以下、この発明について詳細に説明する。
混合原料としては、Tl系酸化物超伝導体を構成する各
金属元素の酸化物を混合したものを用いることが望まし
く、その混合比率は、各金属の比率が、原子比で目的と
する酸化物超伝導体の組成比と実質的に同一になるよう
にする。
焼成は、上述のように酸素含有雰囲気において800乃
至950℃で行うが、その時間は短いほうが望ましく、数
分乃至数十分間の範囲が適当である。
焼結体の急冷は、焼結体の結晶構造中に取込まれる酸
素量を制御するためのものであり、酸素含有雰囲気中で
の焼結体の徐冷工程において、徐冷工程で一旦室温まで
冷却した後、再加熱し、焼結体が所定温度に至った際に
行なってもよい。なお、再加熱による昇温は、徐冷工程
において焼結体の結晶構造中に取り込まれた酸素を放出
させるための処理であり、この発明においてはこの処理
を真空中又は窒素等の不活性ガス雰囲気中で行う。望ま
しくは、窒素等からなるガス雰囲気のガス圧を高くす
る。その理由は、ガス圧を高くすればするほどTlの蒸発
を抑制することができ、結晶が分解する温度をより高温
側にシフトさせることができるので、結晶構造中からよ
り多くの酸素を放出させることができるからである。焼
結体の焼結構造中に取込まれる酸素量は前述した第16図
及び第17図に示されているように、温度によって異なっ
ているので、この急冷処理により結晶構造中の酸素量は
固定され、また、これによって臨界温度もほぼ定まる。
従って、このような工程により製造されるTl系酸化物
超伝導体の臨界温度は、徐冷速度で制御した場合より
も、はるかに高い精度で設定されることになる。
[実施例] 以下、この発明の実施例について説明する。
実施例1 出発原料としてTl2O3,BaO2,及びCuOの微粉末を用い、
これらを混合して原子比でTl:Ba:Cu=2:2:1の混合粉末
原料を作製した。この場合に、Tlは有毒であるから、こ
れらの作業をグローブボックス内で行った。
次に、このような混合粉末原料を約200kg/cm2の圧力
で成形し、直径10mm、厚さ1〜1.5mmのペレット状の試
料を6個作製した。
その後、Tlの高反応性に鑑み、試料をTlと反応しにく
い金箔でゆるく包み、またTlの有毒性のため、石英管内
で更に二重のトラップを付けて流量120ml/分の酸素気流
中890℃で5分間焼成し、次いで10℃/分の速度で冷却
した。
その結果、Tl2Ba2CuO6なる組成の酸化物が合成され
た。
合成された試料を流量120ml/分の窒素気流中で5℃/
分の速度で昇温し、夫々200℃、300℃、400℃、500℃、
600℃、700℃に達した時点で即座にこれら試料を液体窒
素中に投入して急冷した。その結果、200℃に加熱後急
冷したものは超伝導特性を示さなかったが、他の試料に
ついてはTl2Ba2CuO6-y超伝導酸化物が生成された。
第1図乃至第5図は、四端子法により各急冷試料の抵
抗率の温度変化を測定した結果を示す図である。第1図
は300℃に昇温した後急冷したもの、第2図は400℃に昇
温した後急冷したもの、第3図は500℃に昇温した後急
冷したもの、第4図は600℃に昇温した後急冷したも
の、第5図は700℃に昇温した後急冷したものを示す。
各試料の臨界温度は、これらの図における抵抗率変化
曲線から次のようにして求めた。先ず、抵抗変化率曲線
の直線部を延長し、その延長部分がOK軸(縦軸)と交差
する点の値を基準に、その50%のポイントをOK軸上にプ
ロットする。次に、適当な温度軸、例えば100K軸と前記
抵抗変化率曲線の直線部あるいはその延長線とが交差す
る点を基準に、その50%のポイントを100K軸上にプロッ
トする。そして、OK軸上にプロットした点と、100K軸上
にプロットした点とを結ぶ直線と抵抗率変化曲線とが交
わる点の温度をミッドポイントとして求め、これを臨界
温度Tcとする。同様の作業を90%のポイント及び10%の
ポイントについても行い、夫々、オンセットポイント及
びエンドポイントとした。
このようにして、300℃乃至700℃から急冷した各試料
の臨界温度を求めた結果を第6図に示す。第6図中、黒
丸はミッドポイントを示し、その上下のバーは夫々オン
セットポイント及びエンドポイントを示す。この図に示
すように、各試料の臨界温度は、急冷温度の低い順か
ら、夫々、28K(オンセットポイント31K、エンドポイン
ト27K、以下カッコ内同じ)、63K(64K、61K)、77K(8
0K、74K)、83K(86K、82K)、78K(83K、73K)であっ
た。すなわち、300℃以上の温度に加熱し、液体窒素で
急冷した場合には、30K乃至85K程度の臨界温度を有する
超伝導体が合成できることが確認された。なお、第7図
に示す熱重量曲線においては、重量減少すなわち酸素欠
乏状態が250℃から生じているが、このことを考慮する
と加熱温度が00℃よりも低くても超伝導性を示す可能性
があると考えられる。急冷前の加熱温度が400℃よりも
低い場合に超伝導特性を示さないのは、液体窒素では急
冷速度が遅いためであり、この条件で超伝導特性を示す
ようにするためには、液体窒素の沸点よりも低い沸点を
有する冷媒、例えば液体ヘリウムで急冷すればよい。
実施例2 出発原料としてTl2O3,BaO2,CaO及びCuOの微粉末を用
い、これらを混合して原子比でTl:Ba:Ca:Cu=2:2:1:2の
混合粉末原料を作製した。実施例1と同様に、Tlの有毒
性に鑑みて原料混合をグローブボックス内で行った。
次に、このような混合粉末を実施例1と同様にして成
形し、ペレット状の試料を9個作製した。
その後、実施例1と同様、試料を金箔でゆるく包み、
石英管内で更に二重のトラップを付けて流量120ml/分の
酸素気流中885℃で90分間焼成し、次いで10℃/分の速
度で冷却した。
その結果、TlBa2CaCu2O7なる組成の酸化物が合成され
た。この酸化物は超伝導特性を示し、抵抗率の温度変化
から求めた臨界温度は80Kであった。
合成された試料を流量120ml/分の窒素気流中で5℃/
分の速度で昇温し、所定温度(100℃、150℃、200℃、3
00℃、400℃、500℃、600℃、650℃、700℃)に至った
後、その温度で続けて30分間アニールし、その後これら
試料を液体窒素中に投入して急冷した。この結果、TlBa
2CaCu2O7−δ酸化物超伝導体が生成された。
これら急冷試料について抵抗率の温度変化及びDC磁化
率の温度変化を測定した。その結果の一部を第7図及び
第8図に示す。第7図は焼成したままの試料及び400℃
から急冷した試料についての抵抗率の温度変化を測定し
た結果を示す図であり、第8図は焼成したままの試料並
びに400℃から急冷した試料及び500℃から急冷した試料
についてのDC磁化率の温度変化を測定した結果を示す図
である。これらの図に示すように、いずれの試料も特定
温度で抵抗率又はDC磁化率の急激な変化がみられ、超伝
導特性を示すことが確認された。他の温度から急冷した
試料についても同様に抵抗率及びDC磁化率の変化を測定
した結果、いずれも特定温度で急激な抵抗率又はDC磁化
率の変化がみられ、超伝導特性を示すことが確認され
た。
これらの結果に基づいて、実施例1で示した方法で、
各温度から急冷した試料及び焼成したままの試料の臨界
温度を求めた。その結果を第9図に示す。第9図中、黒
丸及び上下のバーは第6図と同様である。この図に示す
ように、焼成したままの試料及び100℃乃至700℃から急
冷した10個の試料の臨界温度は、急冷温度の低い順か
ら、夫々、80K(オンセットポイント87K、エンドポイン
ト77K、以下カッコ内同じ)、80K(87K、77K)、80K(8
7K、77K)、97K(100K、93K)、99K(102K、95K)、103
K(107K、100K)、109K(114K、107K)、106K(110K、9
7K)、93K(105K、84K)、97K(106K、82K)であった。
すなわち、急冷温度が150℃までは、臨界温度は焼成し
たままの試料と同様であったが、200℃以上で臨界温度
が上昇し、500℃において109Kという極めて高い臨界温
度が得られることが確認された。
次に、TlBa2CaCu2O7の窒素気流中での熱重量変化を調
べた。その結果を第10図に示す。この図に示すように、
200℃から微量の重量損失が始まり、500℃付近で損失量
が次第に増加し、600℃以上で急激な重量損失が観察さ
れる。600℃までの比較的微量の重量損失は酸素の放出
に対応するものであるが、600℃以上における急激な重
量損失は酸素の放出の他に、TlBa2CaCu2O7の分解が生じ
ていることに起因しているものと推測される。この第10
図と上述の第9図とを合わせて考慮すると、TlBa2CaCu2
O7が200℃以上の温度から急冷されることにより酸素欠
損状態が室温まで持ち来され、この酸素欠損の存在によ
り臨界温度が上昇するものと結論される。
第11図に酸素欠損量と臨界温度との関係を示す。第11
図中、白丸は上述の熱重量変化から酸素欠損量を求めた
ものであり、黒丸は急冷の前後の重量差から計算したも
のである。なお、酸素欠損量は単位格子当りの酸素の減
少個数で示している。この図に示すように、酸素欠損量
が増加するに従って臨界温度が上昇し、酸素欠損量が0.
035の時に臨界温度が最大の110Kを示すことが確認され
た。これは上述した500℃から急冷した試料にほぼ対応
する。
実施例3 出発原料としてTl2O3,BaO2,CaO及びCuOの微粉末を用
い、これらを混合して原子比でTl:Ba:Ca:Cu=2:2:2:3の
混合粉末原料を作製した。実施例1と同様に、Tlの有毒
性に鑑みて原料混合をグローブボックス内で行った。
次に、このような混合粉末を実施例1と同様にして成
形し、ペレット状の試料を5個作製した。
その後、実施例1と同様、試料を金箔でゆるく包み、
石英管内で更に二重のトラップを付けて流量120ml/分の
酸素気流中880〜890℃で1〜1.5時間焼成し、次いで10
℃/分の速度で冷却した。
その結果、TlBa2Ca2Cu3O9なる組成の酸化物が合成さ
れた。この酸化物は超伝導特性を示し、抵抗率の温度変
化から求めた臨界温度は105Kであった。
合成された試料を流量120ml/分の窒素気流中で5℃/
分の速度で昇温し、所定温度(200℃、300℃、400℃、5
00℃、550℃)に至った後、その温度で続けて30分間乃
至1時間アニールし、その後これら試料を液体窒素中に
投入して急冷した。その結果、 TlBa2Ca2Cu3O9−δが生成された。
これら急冷試料について、交流帯磁率法により磁化率
の温度変化を測定した。その結果を第12図に示す。この
図に示すように、200℃乃至550℃から急冷した試料の臨
界温度は、急冷温度の低い順から、夫々105K、113K、11
8K、120K、113Kであった。すなわち、急冷温度が200℃
までは、臨界温度は焼成したままの試料と同様であっ
た。300℃以上で臨界温度が上昇し、500℃において120K
という極めて高い臨界温度が得られることが確認され
た。
実施例4 出発原料としてTl2O3,BaO2,SrCO3,CaO及びCuOの微粉
末を用い、Tl2Ba1.6Sr0.4CuO6−δの組成比に基づいて
混合し、粉末原料を作製した。実施例1と同様に、Tlの
有毒性に鑑みて原料混合をグローブボックス内で行っ
た。
次に、このような混合粉末を実施例1と同様にして成
形し、ペレット状の試料を6個作製した。
その後、実施例1と同様、試料を金箔でゆるく包み、
石英管内で更に二重のトラップを付けて流量120ml/分の
酸素気流中880℃で12分間焼成した。
その結果、Tl2Ba1.6Sr0.4CuO6なる組成の酸化物が合
成された。
合成された試料を流量120ml/分の窒素気流中で5℃/
分の速度で昇温し、所定温度(300℃、400℃、500℃、6
00℃、650℃、700℃)に至った後、その温度で続けて1
乃至2時間アニールし、その後これら試料を液体窒素中
に投入して急冷した。その結果、 Tl2Ba1.6Sr0.4CuO6−δ酸化物超伝導体が生成された。
これら急冷試料について、交流帯磁率法により磁化率
の温度変化を測定した。その結果を第13図に示す。この
図に示すように、300℃乃至700℃の各温度から急冷した
試料の臨界温度は、急冷温度の低い順から、夫々26K、3
0K、60K、65K、45K、43Kであった。すなわち、急冷温度
600℃において臨界温度が最大となり、その値が65Kであ
ることが確認された。
実施例5 出発原料としてTl2O3,BaO2,SrCO3,CaO及びCuOの微粉
末を用い、Tl2Ba2-xSrxCuO6−δの組成比に基づいて混
合し、粉末原料を作製した。実施例1と同様に、Tlの有
毒性に鑑みて原料混合をグローブボックス内で行った。
次に、このような混合粉末を実施例1と同様にして成
形し、ペレット状の試料を作製した。
その後、実施例1と同様、試料を金箔でゆるく包み、
石英管内で更に二重のトラップを付けて流量120ml/分の
酸素気流中870〜890℃で12分間焼成した。
これにより、Tl2Ba2-xSrxCuO6で表わされる組成の酸
化物を合成した。
第14図はSr固溶量xと格子定数a及びcとの関係を示
す図である。この図に示すように、固溶量xの増加に伴
い格子定数が変化することが確認された。そしてxが0
〜1.6間で単相試料が得られることが確認された。
xが0≦x≦1.6の範囲の試料を窒素気流中、100乃至
800℃の温度で、1乃至5時間アニールし、その後これ
らの試料を液体窒素中に投入して急冷した。これによ
り、 Tl2Ba2-xSrxCuO6−δが生成された。
x=0.8の試料について、交流帯磁率法により磁化率
の温度変化を測定した。急冷温度が650℃までは磁化率
の急激な変化は見られず超伝導体が生成されていなかっ
たが、急冷温度が700℃では第15図に示すように、磁化
率の急激な変化が見られ、臨界温度が37Kの超伝導体が
生成されていることが確認された。
なお、これら実施例の組成の材料に限らず他の組成の
Tl系酸化物であっても、同様の処理により超伝導物質を
得ることができる。例えば、 Tl0.5Pb0.5Sr2CuO5なる組成の酸化物を合成した後、100
〜900℃で1〜10時間窒素アニールし、その後急冷する
ことにより、 Tl0.5Pb0.5Sr2CuO5−δで表わされる超伝導物質を得る
ことができる。
[発明の効果] この発明によれば、臨界温度が所望の範囲内にあるTl
系酸化物超伝導体を製造することができる。
この発明に係る酸化物超伝導体は、ジョセフソン接合
を有するジョセフソン素子及びSQUID(超伝導量子干渉
計)、超伝導発電機に適用することが期待され、またエ
ネルギ損失の少ない超伝導電力貯蔵、さらにはエネルギ
損失の少ない送電ケーブル等の多方面の超伝導機器の実
用化に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
第1図乃至第5図はこの発明の実施例1に係る方法によ
り作成した試料の交流帯磁率法による磁化率の温度変化
を示す図、第6図は第1図乃至第5図の結果から求めた
臨界温度と急冷前加熱温度との関係を示す図、第7図は
この発明の実施例2で作製した試料の抵抗率の温度変化
を示す図、第8図はこの発明の実施例2で作製した試料
のDC磁化率の温度変化を示す図、第9図はこの発明の実
施例2の試料の臨界温度と急冷前加熱温度との関係を示
す図、第10図はTlBa2CaCu2O7の窒素気流中における熱重
量変化を示す図、第11図はTlBa2CaCu2O7の酸素欠損量と
臨界温度との関係を示す図、第12図はこの発明の実施例
3で作製した試料の交流帯磁率法による磁化率の温度変
化を示す図、第13図はこの発明の実施例4で作製した試
料の交流帯磁率法による磁化率の温度変化を示す図、第
14図はTl2Ba2-xSrxCuO6−δにおけるxの値と格子定数
との関係を示す図、第15図はこの発明の実施例5で作製
した試料の交流帯磁率法による磁化率の温度変化を示す
図、第16図はTl2Ba2CuO6の熱重量変化を示す図、第17図
はTl2Ba2Ca2Cu3O10の熱重量変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菊地 昌枝 仙台市太白区三神峯2丁目11番5号 (72)発明者 庄野 安彦 仙台市青葉区吉成3丁目12番12号 (72)発明者 小林 典男 仙台市泉区長命ケ丘2丁目16番11号 審査官 三崎 仁 (56)参考文献 特開 平3−122018(JP,A) 特開 平3−232759(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00,15/00 C04B 35/00,35/64

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Tl系酸化物超伝導体を構成する金属元素が
    所定の割合で調合された混合原料を酸素含有雰囲気にお
    いて800乃至950℃で焼成する工程と、この工程で得られ
    た焼結体を酸素含有雰囲気中で徐冷する工程と、この徐
    冷工程完了後に真空中で又は不活性ガス雰囲気中で再加
    熱して前記焼結体が所定温度に至った際に前記焼結体を
    急冷する工程とを有することを特徴とするTl系酸化物超
    伝導体の製造方法。
  2. 【請求項2】前記不活性ガスは窒素であることを特徴と
    する請求項1に記載のTl系酸化物超伝導体の製造方法。
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