JP3115622B2 - クローニング用ベクター及びそれを用いた大腸菌の選択的取得方法 - Google Patents

クローニング用ベクター及びそれを用いた大腸菌の選択的取得方法

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JP3115622B2 JP03048705A JP4870591A JP3115622B2 JP 3115622 B2 JP3115622 B2 JP 3115622B2 JP 03048705 A JP03048705 A JP 03048705A JP 4870591 A JP4870591 A JP 4870591A JP 3115622 B2 JP3115622 B2 JP 3115622B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種遺伝子や種々の用
途に用いるDNA断片のクローニング用のベクターとし
て好適な構成を有するクローニング用ベクター及びそれ
を用いた大腸菌の選択的取得方法に関する。
【0002】
【従来の技術】遺伝子工学の根幹をなすクローニング技
術とは、各種遺伝子やDNA断片を組換え技術を利用し
てクローニング用のベクターに挿入し、これを適当な宿
主に導入して培養し、宿主のDNA複製機構を利用して
その複製物(クローン)を作製する技術であり、この技
術を利用して、目的とする各種遺伝子やDNA断片、組
換えDNAなどの増幅、単離、あるいは適当な宿主中で
の外来遺伝子の発現を行うことができる。
【0003】このクローニングにおける宿主中でのクロ
ーンの生産は、クローニング用ベクターに持たせた適当
なマーカーによって確認できる。
【0004】このようなマーカーとしては、アンピシリ
ン(Amp)、テトラサイクリン(Tet)などに対す
る耐性をコードする薬剤耐性遺伝子を代表的なものとし
て挙げることができる。
【0005】このマーカー遺伝子を利用し、マーカー遺
伝子の発現している形質転換体を選択することで、目的
とするDNA断片が挿入されたクローニング用ベクター
を有する宿主(形質転換体)を選別することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
マーカー遺伝子を利用する方法は、形質転換体における
マーカー遺伝子の発現から目的とするDNA断片のクロ
ーニングを間接的に確認するにすぎないもので、マーカ
ー遺伝子を発現する形質転換体の有するクローニング用
ベクター中に目的とするDNA断片が確かに挿入されて
いるかどうかを直接確認することはできない。
【0007】従って、マーカー遺伝子を利用する方法に
おいて、例えばプラスミドをベクターとして用いた場合
には、形質転換体からプラスミドを単離し、その構造を
解析したり、単離されたプラスミドに挿入されているD
NA断片からの遺伝子産物を発現させ、それが目的とす
るものであるかどうかを確認するという作業が必要とな
る。
【0008】そこで、目的とするDNA断片のクローニ
ング用ベクターへの挿入を直接確認できる方法について
の検討が種々なされてきた。
【0009】そのような方法として、2種の薬剤耐性遺
伝子領域(Ampr 、Tetr )を有するプラスミドp
BR322のTetr 領域中の制限酵素切断部位を目的
とするDNA断片の挿入用として利用する方法が知られ
ている。
【0010】このpBR322を利用する方法では、T
etr 領域中の制限酵素切断部位を利用して目的とする
DNA断片が挿入されたプラスミドによって宿主の形質
転換をおこなうと、形質転換された宿主はTet耐性が
発現しないTet感受性になる。そこで、目的とするD
NA断片が挿入されたプラスミドを有する宿主と、目的
とするDNA断片の挿入が行われていないプラスミドを
有する宿主とを、AmpとTetをそれぞれ個々に用い
たスクリーニングで分離でき、かつ目的とするDNA断
片が挿入されたプラスミドの存在を直接確認できる。
【0011】しかしながら、この方法は、Ampでの形
質転換体のスクリーニングによって現われるAmp耐性
を示すコロニーのレプリカを、Tetでのスクリーニン
グ用の培養プレートに作製し、これを培養してAmp耐
性コロニー中でのTet感受性コロニーの選択を行うと
いう過程が必要である点において煩雑である。
【0012】この方法に対し、J.Messingら
[Gene, 33(1985) 103 〜119 ]は、レプリカの培養過
程を省略できる方法として、マーカー遺伝子としてAm
r を用いるとともに、大腸菌のラクトースオペロンの
α−相補性により、X−gal(5−ブロモ−4−クロ
ロ−インドリル−D−ガラクトピラノシド)のβ−ガラ
クトシダーゼ活性を利用した分解による青色呈色反応に
より目的とするDNA断片の挿入を確認できるクローニ
ング用のベクター−宿主系を用いる方法を開発した。
【0013】この方法では、大腸菌のβ−ガラクトシダ
ーゼのN末端を欠失したペプチドを合成する株(例えば
JM83)を宿主として用い、これにクローニング用ベ
クターとして、ラクトースオペロン(lac)領域を有
するプラスミド(例えば各種pUC)を組合せて用い、
lac領域のポリリンカーを利用して目的とするDNA
断片のクローニングを行う。
【0014】この方法において、目的とするDNA断片
の挿入が行われなかったプラスミドにより形質転換され
た宿主は、Amp含有培地で増殖でき、さらにlac領
域からβ−ガラクトシダーゼのN末端から146アミノ
酸を持つペプチドが発現補給されると、これと宿主から
合成されるN末端が欠失したβ−ガラクトシダーゼとが
互いに補い合うα−相補性によってβ−ガラクトシダー
ゼ活性が発現され、X−gal存在下でこれを増殖させ
ると、X−galの分解による青色の呈色がコロニーに
観察できる。
【0015】これに対して、lac領域のポリリンカー
部位に目的とするDNA断片が挿入されたプラスミドで
形質転換された宿主では、上述のα−相補性は成立せ
ず、X−gal存在下での増殖において青色呈色のない
白色コロニーが現われる。
【0016】従って、X−gal存在下での培養におい
て青色呈色があるかどうかによって目的としたDNA断
片の挿入を直接確認できる。
【0017】ところが、この方法では、クローニング用
の宿主がN末端を欠失したβ−ガラクトシダーゼを合成
する株に限定されてしまい、汎用性に乏しく、また操作
条件によってはコロニーの呈色状態の判別が困難である
という問題があった。
【0018】しかも、上述のpBR322を用いる方法
及びβ−ガラクトシダーゼ活性を利用する方法のいずれ
の方法も、目的とするDNA断片の挿入の直接確認に必
要な十分な形質転換体の増殖菌体量を得るための操作が
必要であり、小さなスケールでのクローニングにおいて
も作業量が多いという欠点がある。
【0019】本発明は以上述べたクローニングにおける
問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、宿主が
限定されず、より簡易なプロセスで目的とするDNA断
片のクローニング用ベクターへの挿入を直接確認できる
構成のクローニング用ベクター及びそれを用いた大腸菌
の選択的取得方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明のクローニング用
ベクターは、宿主としての大腸菌内での複製のためのオ
リジンと、誘導可能なプロモーターと、前記宿主の増殖
を阻害する膜タンパク質としてのバクテリオオプシン
コードする阻害タンパク質遺伝子と、クローニングすべ
きDNA断片挿入用の制限酵素切断部位とを有し、前記
プロモーターと前記阻害タンパク質遺伝子とが、該阻害
タンパク質遺伝子の誘導発現が該プロモーターにより行
われ、該宿主の増殖が阻害される様にバクテリオオプシ
ンが該宿主に発現する位置関係で配置されており、かつ
前記制限酵素切断部位が、該制限酵素切断部位を利用し
たクローニングすべきDNA断片の挿入により前記阻害
タンパク質遺伝子の前記プロモーターによる誘導発現が
不能となる位置に設けられている、形質転換された大腸
菌の選択的な取得を可能とするためのクローニング用ベ
クターである。また、本発明にかかる形質転換された大
腸菌の取得方法は、クローニングすべきDNA断片が挿
入され、形質転換されている大腸菌を選択的に取得する
方法であって、 (a)宿主としての大腸菌内での複製のためのオリジン
と、誘導可能なプロモーターと、前記宿主の増殖を阻害
する膜タンパク質としてのバクテリオオプシンをコード
する阻害タンパク質遺伝子と、該DNA断片挿入用の制
限酵素切断部位とを有し、前記プロモーターと前記阻害
タンパク質遺伝子とが、該阻害タンパク質遺伝子の誘導
発現が該プロモーターにより行われ、該宿主の増殖が阻
害される様にバクテリオオプシンが該宿主に発現する位
置関係で配置されており、かつ前記制限酵素切断部位
が、該制限酵素切断部位を利用した該DNA断片の挿入
により前記阻害タンパク質遺伝子の前記プロモーターに
よる誘導発現が不能となる位置に設けられているクロー
ニング用ベクターに対して、該DNA断片を該制限酵素
切断部位に挿入し、前記阻害タンパク質遺伝子の前記プ
ロモーターによる誘導発現が不能となったクローニング
用ベクターを宿主としての大腸菌に導入する工程;およ
び (b)工程(a)によって得られた形質転換されている
大腸菌を、形質転換されている大腸菌のみが増殖可能な
ように培養する工程、を有することを特徴とする。
【0021】本発明のクローニング用ベクターに用いる
宿主での複製のためのオリジンは、クローニングに用い
る宿主の種類に応じて選択される。
【0022】複製オリジンとしては、大腸菌由来のプラ
スミドの有する複製オリジンが利用でき、例えばプラス
ミドpBR322などの有する複製オリジンが利用でき
る。
【0023】本発明のクローニング用ベクターに用いる
プロモーターは、宿主の増殖を阻害するタンパク質をコ
ードする阻害タンパク質遺伝子の誘導発現を行うために
用いられるものであり、用いる宿主の種類に応じて選択
される。このプロモーターとしては、発現誘導剤の添加
により活性化されるものや、温度シフトによって活性化
されるものなど種々のタイプのものが利用できる。
【0024】プロモーターとしては、例えば、lacプ
ロモーター・オペレーター領域、trpプロモーター・
オペレーター領域、PLプロモーター・オペレーター領
域、tacプロモーターなどを利用することができる。
【0025】この誘導可能なプロモーターを利用するこ
とによって、宿主の増殖を阻害するタンパク質の発現を
外部因子を用いて制御することが可能となる。
【0026】本発明のクローニング用ベクターに用いる
阻害タンパク質遺伝子は、上記のプロモーターに、機能
的に、すなわち該プロモーターでの誘導発現が可能な位
置に連結される。この遺伝子としては、その発現によっ
て宿主の増殖を阻害できるバクテリオオプシン遺伝子が
利用される。
【0027】すなわち、HB101株、JM109株、
DH1210HP株等の大腸菌を宿主として利用する場
合は、宿主の増殖を阻害するタンパク質としてバクテリ
オオプシンが利用でき、これをコードする遺伝子[Khor
anら、Proc.Natl. Acad. Sci. U.S.A (1981) 78, 6744-
6748]をプロモーターでの発現が可能な位置に連結す
る。
【0028】バクテリオオプシンを用いた場合の宿主の
増殖阻害効果のメカニズムは詳細に解明されていない
が、発現した膜タンパク質であるバクテリオオプシンが
宿主である大腸菌の膜機能を損なうために、宿主の増殖
が阻害されるものと考えられる。
【0029】なお、この阻害タンパク質遺伝子として
は、宿主増殖の阻害活性の発現に必要なペプチド部分を
コードする領域を少なくとも有していれば良く、上記の
阻害タンパク質の全体をコードする必要はない。
【0030】また、阻害タンパク質遺伝子は、宿主増殖
の阻害効果を損なわない範囲内で、あるいは該阻害効果
を高めるために、天然の塩基配列に、配列の組換え、変
更、欠失、挿入等がなされたものであっても良い。
【0031】更に、分泌型の場合は、阻害タンパク質遺
伝子中に分泌シグナルをコードする領域を含有させて用
いる。
【0032】なお、この分泌シグナルをコードする領域
は、用いる阻害タンパク質固有のものでも、他の分泌型
タンパク質のものでも良い。また、分泌により宿主阻害
効果を発揮できるもので、その遺伝子に分泌シグナルを
コードする領域を有していないものを用いる場合は、他
の分泌型タンパク質の適当な分泌シグナルをコードする
領域を組合せて用いる。このような目的で利用できる分
泌シグナルをコードする領域としては、大腸菌で機能で
きるシグナルシークエンスが利用できる。
【0033】本発明のクローニング用ベクターにおける
クローニングすべきDNA断片挿入用の制限酵素切断部
位は、そこに目的とするDNA断片が挿入されることで
上記の阻害タンパク質遺伝子のプロモーターによる誘導
発現が不能となる位置に設けられる。
【0034】なお、この制限酵素切断部位としては、特
に制限はなく、また、2以上の制限酵素切断部位をDN
A断片挿入用として用いても良い。なお、このDNA断
片挿入用の制限酵素切断部位としては、クローニング用
ベクターの他の部分に制限酵素切断部位が存在する場合
には、それと異なる制限酵素により切断される部位を用
いると、一つの制限酵素を用いた処理で所望とする部分
のみを切断できるので都合が良い。
【0035】この制限酵素切断部位を設ける位置として
は、プロモーターから阻害タンパク質遺伝子までの領域
内の上述の効果が得られる位置を選択して用いると良
い。
【0036】そのような位置としては、例えば、 1)プロモーター領域内にある制限酵素切断部位で、そ
こに目的とするDNA断片が挿入されるとプロモーター
の機能が損なわれて、該プロモーターによる阻害タンパ
ク質遺伝子の発現が不能となるもの。 2)プロモーター領域と阻害タンパク質遺伝子との間の
領域にある制限酵素切断部位で、そこに目的とするDN
A断片が挿入されるとプロモーターによる阻害タンパク
質遺伝子の発現が阻止されるもの。 3)阻害タンパク質遺伝子領域内にあるにある制限酵素
切断部位で、そこに目的とするDNA断片が挿入される
と阻害タンパク質遺伝子の構成が崩されて、その発現が
不能となる、あるいは該領域由来のタンパク質が発現さ
れても、所定の宿主の増殖阻害活性が失われるもの。
【0037】本発明のクローニング用ベクターには、上
記の各構成要素に加えて、各種マーカー遺伝子、ターミ
ネーターなどを必要に応じて組合せて用いても良い。
【0038】また、本発明に用いる宿主としては、例え
ば、HB101株、JM109株、DH1210HP株
等の大腸菌などを挙げることができる。
【0039】
【実施例】以下実施例により本発明を更に詳細に説明す
る。
【0040】実施例1 クローニング用ベクターの構築 1−1)プロモーターを含むDNA断片の調製(図1参
照) プラスミドpUYO−1の構築 lacプロモーター(lacP)とtacプロモーター
(tacP)とが直列に配列されたプロモーター領域を
有するプラスミドpNH8a(Stratagene社
製)を、常法に従ってBamHI及びSacIで消化
し、得られたDNA断片混合物から電気泳動法により大
DNA断片を分離、回収した。
【0041】1−2)プラスミドpUYO−1の構築
(図2) プラスミドpUC19を常法に従ってBamHI及びP
stIで消化し、得られたDNA断片混合物から電気泳
動法により大DNA断片を分離、回収した。
【0042】次に、バクテリオオプシン構造遺伝子(分
泌シグナルをコードする領域を含む)を含むBamHI
−PstIDNA断片[Khorana ら,Proc. Natl. Aca
d. Sci. U.S.A.(1981) 78, 6744-6748 ]を調製し、こ
れを先に得たpUC19からのBamHI−PstID
NA断片(大断片)と常法に従ってリガーゼの存在下で
反応させた。
【0043】得られた反応物を大腸菌[JM109株、
TAKARA]に導入し、これをAmpを含む選択培地
で培養し、Amp耐性を示すコロニーを形質転換体とし
て識別した。この形質転換体を、更に単離、培養し、得
られた培養菌体からプラスミドを常法に従って単離し
て、プラスミドpUYO−1を得た。なお、目的とする
プラスミドが得られたかどうかは、コロニーハイブリダ
イゼーション及びサザーンハイブリダイゼーションにに
より確認した。
【0044】1−3)プラスミドpUYO−2の構築 以下の操作により、上記1−2)項で得たpUYO−1
のバクテリオオプシン構造遺伝子を含むBamHI−P
stIDNA断片領域の3’末端側から余分な部分を削
除し、バクテリオオプシン構造遺伝子の直後にSacI
部位を導入することによってpUYO−2を構築した。
【0045】まず、下記塩基配列を有するオリゴヌクレ
オチドA1 及びA2 ; A1 5' GGCCGCGACC AGCTAGTAAT GAGCTCTGCA 3' (配
列番号1) A2 3' CGCTGG TCGATCATTA CTCGAG 5' (配
列番号2) をDNA合成機によりそれぞれ合成し、これらを常法に
よってアニールして、2本鎖リンカーDNA断片(リン
カーI)を得た。
【0046】次に、上記1−2)項で得たpUYO−1
を常法に従ってXmaIII及びPstIで消化し、得
られたDNA断片混合物から電気泳動法によって、大D
NA断片を分離、回収した。
【0047】このXmaIII−PstIDNA断片
(大DNA断片)と、先に調製したリンカーIとを、リ
ガーゼの存在下で常法に従って反応させ、得られた得ら
れた反応物を大腸菌[JM109株、TAKARA]に
導入し、これをAmpを含む選択培地で培養し、Amp
耐性を示すコロニーを形質転換体として識別した。この
形質転換体を、更に単離、培養し、得られた培養菌体か
らプラスミドを常法に従って単離して、プラスミドpU
YO−2を得た。なお、目的とするプラスミドが得られ
たかどうかは、各種制限酵素での完全消化後の電気泳動
パターンにより確認した。
【0048】1−4)プラスミドpUYO−3の構築
(図4) 以下の操作により、上記1−3)項で得たpUYO−2
のバクテリオオプシン構造遺伝子を含むBamHI−S
acIDNA断片領域の5’末端側から余分な部分を削
除し、バクテリオオプシン構造遺伝子の直前にBamH
IとPstI部位を導入することによってpUYO−3
を構築した。
【0049】まず、下記塩基配列を有するオリゴヌクレ
オチドB1 及びB2 ; B1 5' GATCCTGCAG GAGGTTTGAA CTCATGCAGG CCCAGATCAC CGGACGT 3' (配列番号3) B2 3' GACGTC CTCCAAACTT GAGTACGTCC GGGTCTAGTG GCCTGCA GGCC 5' (配列番号4) をDNA合成機によりそれぞれ合成し、これらを常法に
よってアニールして、2本鎖リンカーDNA断片(リン
カーII)を得た。
【0050】次に、上記1−3)項で得たpUYO−2
を常法に従ってBamHI及びAcccIIIで消化
し、得られたDNA断片混合物から電気泳動法によっ
て、BamHI−AcccIIIDNA断片(大DNA
断片)を分離、回収した。
【0051】このBamHI−AcccIIIDNA断
片(大DNA断片)と、先に調製したリンカーIIと
を、リガーゼの存在下で常法に従って反応させ、得られ
た得られた反応物を大腸菌[JM109株、TAKAR
A]に導入し、これをAmpを含む選択培地で培養し、
Amp耐性を示すコロニーを形質転換体として識別し
た。この形質転換体を、更に単離、培養し、得られた培
養菌体からプラスミドを常法に従って単離して、プラス
ミドpUYO−3を得た。なお、目的とするプラスミド
が得られたかどうかは、各種制限酵素での完全消化後の
電気泳動パターンにより確認した。
【0052】1−5)プラスミドpUYO−4の構築
(図5) 前記1−4)項で得たpUYO−3を、常法に従ってB
amHI及びScaIで消化し、得られたDNA断片混
合物から電気泳動法によって、BamHI−ScaID
NA断片(小断片)を分離、回収した。
【0053】次に、この小断片と、前記1−1)項で得
た大DNA断片とを、リガーゼの存在下で常法に従って
反応させ、得られた反応物を大腸菌[JM109株、T
AKARA]に導入し、これをAmpを含む選択培地で
培養し、Amp耐性を示すコロニーを形質転換体として
識別した。この形質転換体を、更に単離、培養し、得ら
れた培養菌体からプラスミドを常法に従って単離して、
本発明のクローニング用ベクターとしてのプラスミドp
UYO−4を得た。なお、この形質転換体の識別、及び
プラスミド単離用の培養は、バクテリオオプシンが発現
しない条件、すなわち、ヒートショックを与えず、また
安全をみて30℃で培養を行った。また、目的とするプ
ラスミドが得られたかどうかは、各種制限酵素での完全
消化後の電気泳動パターンにより確認した。
【0054】実施例2 本発明のクローニング用ベクターを用いたクローニング 実施例1の1−5)項で得たpUYO−4を、SphI
で常法に従って消化し、環状プラスミドを開環してDN
A断片とした。
【0055】次に、常法に従って調製したλファージD
NAのSphI消化物から電気泳動法によって3.0k
bDNA断片と2.2kbDNA断片を分離、回収し
た。
【0056】次に、この2種のDNA断片の混合物と、
先に得たpUYO−4のSphI消化物とをリガーゼの
存在下で常法に従って反応させた後、得られた反応物を
大腸菌DH121OHP株のコンピテントセルに導入
し、30℃、60分間、SOC培地(0.005%濃度
のAmpを含む)で培養した。得られた培養菌体を、更
に2×YT培地(0.005%濃度のAmpを含む)の
プレートに植え継いで、42℃で一晩培養した。
【0057】プレートに現われたコロニーから24個の
株を選択し、各株から個々に菌体を2×YT培地に植菌
し、37℃で一晩振とう培養した。
【0058】その結果、23個の株については菌体増殖
が認められ、1つの株については菌体増殖が認められな
かった。
【0059】さらに、増殖の見られた23株の各培養液
から培養菌体をそれぞれ回収し、回収された培養菌体か
らプラスミドを常法に応じて調製し、そのSphI消化
物の電気泳動パターンを分析した。その結果、14個の
株からのプラスミドに3.0kbDNA断片が挿入さ
れ、また9個の株からのプラスミドに2.2kbDNA
断片が挿入されていることが確認できた。すなわち、D
NA断片の挿入のなかったプラスミド(self li
gation)は増殖菌体には存在しなかった。
【0060】
【発明の効果】本発明のクローニング用ベクターを用い
れば、目的とするDNAが挿入された組換えDNAを有
する宿主だけが増殖できることになるので、形質転換体
を培養するという簡易な操作だけで、目的とする組換え
DNAが得られたかどうかを直接確認することができ
る。
【0061】また、本発明のクローニング用ベクターを
用いたクローニングにおいては、ベクター断片と目的と
するDNA断片の反応物を導入した宿主の培養による形
質転換体の選択の際に、増殖菌体のコロニーの出現の有
無によって目的とするDNA断片を含む組換えDNAを
有する形質転換体の選択を容易に行うことができ、より
簡易なプロセスでのクローニングが可能となり、小さな
スケールでのクローニングもより簡便に行うことができ
る。
【0062】
【配列表】
【0063】
【配列番号】:1 配列の長さ:30 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列の特徴: 二本鎖リンカーI(XmaIII−SacIDNA断
片)調製用 配列 GGCCGCGACC AGCTAGTAAT GAGCTCTGCA 30
【0064】
【配列番号】:2 配列の長さ:22 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列の特徴: 二本鎖リンカーI(XmaIII−SacIDNA断
片)調製用 配列 GAGCTCATTA CTAGCTGGTC GC 22
【0065】
【配列番号】 3 配列の長さ:47 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列の特徴: 二本鎖リンカーII(BamHI−AccIDNA断
片)調製用 配列 GATCCTGCAG GAGGTTTGAA CTCATGCAGG CCCAGATCAC CGGACGT 47
【0066】
【配列番号】 4 配列の長さ:47 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列の特徴: 二本鎖リンカーII(BamHI−AccIDNA断
片)調製用 配列CCGGACGTCC GGTGATCTGG GCCTGCATGA GTTCAAACCT CC
TGCAG
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpNH8aからのBamHI−Sa
cIDNA断片の調製過程を示す図である。
【図2】プラスミドpUYO−1の構築過程を示す図で
ある。
【図3】プラスミドpUYO−2の構築過程を示す図で
ある。
【図4】プラスミドpUYO−3の構築過程を示す図で
ある。
【図5】プラスミドpUYO−4の構築過程を示す図で
ある。
【符合の説明】
lacP lacプロモーター領域 tacP tacプロモーター領域 Ampr アンピシリン耐性遺伝子領域 galk ガラクトースオペロン領域 BO バクテリオオプシン遺伝子領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Gene,Vol.50,No.1−3 (1986)p.3−40 J.Biol.Chem.,Vol. 262,NO.19(1987)p.9246−9254 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/70 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) JICSTファイル(JOIS) WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 宿主としての大腸菌内での複製のための
    オリジンと、誘導可能なプロモーターと、前記宿主の増
    殖を阻害する膜タンパク質としてのバクテリオオプシン
    をコードする阻害タンパク質遺伝子と、クローニングす
    べきDNA断片挿入用の制限酵素切断部位とを有し、前
    記プロモーターと前記阻害タンパク質遺伝子とが、該阻
    害タンパク質遺伝子の誘導発現が該プロモーターにより
    行われ、該宿主の増殖が阻害される様にバクテリオオプ
    シンが該宿主に発現する位置関係で配置されており、か
    つ前記制限酵素切断部位が、該制限酵素切断部位を利用
    したクローニングすべきDNA断片の挿入により前記阻
    害タンパク質遺伝子の前記プロモーターによる誘導発現
    が不能となる位置に設けられている、形質転換された大
    腸菌の選択的な取得を可能とするためのクローニング用
    ベクター。
  2. 【請求項2】 クローニングすべきDNA断片が挿入さ
    れ、形質転換されている大腸菌を選択的に取得する方法
    であって、 (a)宿主としての大腸菌内での複製のためのオリジン
    と、誘導可能なプロモーターと、前記宿主の増殖を阻害
    する膜タンパク質としてのバクテリオオプシンをコード
    する阻害タンパク質遺伝子と、該DNA断片挿入用の制
    限酵素切断部位とを有し、前記プロモーターと前記阻害
    タンパク質遺伝子とが、該阻害タンパク質遺伝子の誘導
    発現が該プロモーターにより行われ、該宿主の増殖が阻
    害される様にバクテリオオプシンが該宿主に発現する位
    置関係で配置されており、かつ前記制限酵素切断部位
    が、該制限酵素切断部位を利用した該DNA断片の挿入
    により前記阻害タンパク質遺伝子の前記プロモーターに
    よる誘導発現が不能となる位置に設けられているクロー
    ニング用ベクターに対して、該DNA断片を該制限酵素
    切断部位に挿入し、前記阻害タンパク質遺伝子の前記プ
    ロモーターによる誘導発現が不能となったクローニング
    用ベクターを宿主としての大腸菌に導入する工程;およ
    び (b)工程(a)によって得られた形質転換されている
    大腸菌を、形質転換されている大腸菌のみが増殖可能な
    ように培養する工程、 を有することを特徴とする形質転換されている大腸菌の
    選択的取得方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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J.Biol.Chem.,Vol.262,NO.19(1987)p.9246−9254

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