JP3113908B2 - 表面皮膜の剥離・密着性測定方法 - Google Patents

表面皮膜の剥離・密着性測定方法

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JP3113908B2
JP3113908B2 JP09312289A JP31228997A JP3113908B2 JP 3113908 B2 JP3113908 B2 JP 3113908B2 JP 09312289 A JP09312289 A JP 09312289A JP 31228997 A JP31228997 A JP 31228997A JP 3113908 B2 JP3113908 B2 JP 3113908B2
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由樹 村松
聖治 黒田
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科学技術庁金属材料技術研究所長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、表面皮膜
の剥離・密着性測定方法に関するものである。さらに詳
しくは、この出願の発明は、構造材料の表面改質等のた
めに形成された溶射皮膜の密着性評価法等として有用
な、非接触による表面皮膜の剥離・密着性測定方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】構造材料等としての基板材料
の表面には、耐熱、耐食、耐摩耗性の向上等の目的のも
とに、セラミックス、金属、合金等の皮膜による被覆が
施される場合がある。この皮膜はたとえばプラズマ溶射
などの手段により形成される。しかしながら、このよう
な基板表面の皮膜については、その剥離の的確な検出、
そして密着性の評価のための方法が必ずしも確立されて
いないのが現状である。
【0003】たとえば従来の皮膜の密着性評価法として
円柱の端面に皮膜を形成し、その表面に対向させて
円柱を接着し、両円柱を引張って皮膜が剥離する時の
界荷重を測定する引張り試験法や、皮膜表面にダイヤモ
ンドなどの硬質の圧子を押しつけて引っかき、皮膜に割
れが生じる時の押しつけ荷重を測定するスクラッチ試験
法などがある。しかし、これらは、いずれも接触式の評
価法であ一方、剥離を生じる限界ひずみの測定法と
して曲げ試験やカップ試験のように基板に変形を与
え、皮膜に亀裂が生じた位置・時点を目視で検出する方
法がある。だが、この方法には目視検出という限界があ
り、構造材表面の皮膜の密着性の評価手法としては信
性の点で問題がある。
【0004】また、上記方法において、AE(音響放
出)信号を検出する方法もあるが、この方法では、損傷
部位の特定が容易ではないという問題がある。そこでこ
の出願の発明は、以上のような従来の接触式、あるいは
非接触式の皮膜の密着性評価法の問題点を解消し、非接
触式で、しかも的確に皮膜の剥離発生を検出し、ひずみ
量の測定により皮膜の密着性の評価も可能な、新しい表
面皮膜の剥離・密着性測定方法を提供することを課題と
している。
【0005】
【課題を解決するための手段】この出願は、上記の課題
を解決するものとして、基板表面に形成された皮膜の剥
離を非接触で検出する方法であって、基板に対して所定
の外力や熱を加え、基板に既知のひずみを生じさせ、皮
膜表面にレーザー光を照射し、スペックル相関法により
皮膜のひずみを測定し、得られる基板と皮膜のひずみ曲
線において、皮膜のひずみが基板のひずみに追従しなく
なる時点を皮膜の剥離発生として検出し、この時点の基
板のひずみ量を基板の限界ひずみ量とし、これをもって
皮膜の密着性を評価することを特徴とする表面皮膜の剥
・密着性測定方法(請求項1)を提供する。
【0006】また、この出願は、皮膜を形成していな
ずみが未知の基板にひずみを生じさせ、レーザー光を
照射しスペックル相関法により基板に発生するひずみ
を測定し、測定したひずみを基板の既知のひずみとする
こと(請求項2)を好ましい態様として提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】この出願の発明の表面皮膜の剥離
・密着性測定方法においては、上記の通り、非接触式の
スペックル相関法により皮膜のひずみを測定する。スペ
ックル相関法は、物体表面のひずみを非接触で測定でき
る方法であり、物体表面の測定点にレーザービームを照
射したときに乱反射するレーザービームとの相互干渉に
より観察面上に生じる不規則な斑紋(レーザースペック
ルと呼ばれる)の移動・変化より物体表面のひずみを測
定するものである。このスペックル相関法は、一般的に
は、たとえば山口、町田「レーザースペックルひずみ計
の開発」、非破壊検査vol.30(1981)、No.8、p.564 を参
考にすることができる。
【0008】そして、この出願の発明の表面皮膜の剥離
・密着性測定方法では、基板に外力や熱膨張によって
知のひずみを生じさせ、皮膜のひずみをスペックル相関
法により測定する。このとき得られる基板と皮膜のひず
み曲線において、ひずみ量の増加にともなって皮膜のひ
ずみが基板のひずみに追従しなくなる時点を皮膜の剥離
発生として検出する。また、この時点の基板のひずみ量
を基板の限界ひずみ量とし、これをもって皮膜の密着性
を定量的に評価する。
【0009】たとえば、この出願の発明の表面皮膜の剥
・密着性測定方法においては、後述する実施例にも示
すように、表面に皮膜が形成された基板の任意の箇所に
(すなわち、局所的に)急峻な温度分布を生じさせ、こ
れによる基板と皮膜の膨張率の差に基づく応力により剥
離試験を行い、皮膜に発生するひずみをその場測定する
ことにより、皮膜の剥離発生を検出し、皮膜の剥離と加
えたひずみ量との関係を定量的に評価することでき
る。ひずみの測定位置を変更または増加させることによ
り皮膜の剥離範囲の特定も可能である。
【0010】なお、実際の構造物にこの出願の発明の表
面皮膜の剥離・密着性測定方法を適用するに当たって、
基板が複雑な形状を持ち、外力や熱によるひずみを簡単
に求めることができず、未知である場合には、皮膜なし
の状態で局所的に外力または熱を加え、基板にひずみを
生じさせ、これを上記の通りのスペックル相関法によっ
て測定し、得られるひずみを既知のひずみとして用い、
皮膜の密着性評価の基準とする
【0011】測定対象については特に制限はな、たと
えば、基板は、金属(合金を含めて)、セラミックス、
金属・セラミックス複合材、樹脂、樹脂と金属および/
またはセラミックスとの複合材等とすることができ
た、皮膜、セラミックス、金属(合金も含めて)
脂、またはこれらの複合材の任意ものとすることができ
この皮膜は、たとえばプラズマ溶射法、塗布法、焼
結法、またはその他種方法によって形成することが
できる
【0012】基板および皮膜に加える外力は、たとえば
物理的な衝撃や曲げ、または熱的な応力等とすることが
できる。以下実施例を示し、この出願の発明の表面皮膜
の剥離・密着性測定方法についてさらに詳しく説明す
る。
【0013】
【実施例】実施例1 図1に 示したように、SUS304ステンレス矩
(60×120×4mm)の片側全面に大気中溶射(セラ
ミックス系皮膜、ZrO2 −8Y2 3 、膜厚0.3m
m)を行い試験片とし、その基板側中央を60mmの
長さにティグ・アークで加熱した(アーク電流40〜1
00A、熱源移動速度120mm/min、加熱方向は
板の長手方向)。そして皮膜側の中央加熱線直下
Arイオンレーザーを照射(照射スポット径約2.
5mm)スペックル相関法により皮膜のひずみを連続
的に測定した。また、これとは別に同一寸法の溶射
施していない試験片に同一条件において加熱し
面中央に発生するひずみを測定し、皮膜のひずみと比較
した。
【0014】図2は、皮膜が完全に剥落した場合(アー
ク電流100A)の皮膜のひずみ曲線を基板のひずみ曲
線とともに示している。皮膜のひずみ曲線には明瞭な乱
高下が認められる。また、この乱高下に先立ち、皮膜の
ひずみ曲線は基板のひずみ曲線から離れ始めている。
の時点の基板のひずみ量を基板の限界ひずみ量とする。
なお、光学顕微鏡観察から、皮膜のひずみ曲線が基板の
ひずみ曲線から離れ始めた時点で皮膜の剥離が発生した
ことが確認された。また、ビデオカメラによる観察か
ら、皮膜のひずみ曲線の乱高下は皮膜の完全な剥離に対
応していることが確認された。 (実施例2) 実施例1と同様の方法により試験し、アーク電流70A
の場合について評価した。
【0015】図3図4は、各々、皮膜と基板の両ひず
み曲線を示しているひずみ曲線の間には皮膜の剥
離を示すずれが現れている。だが、目視によっては明瞭
皮膜の剥離発生を確認することはできなかった
方、加熱後室温に冷却し皮膜の加熱部ポンチを介し
てハンマーで打撃したところ、皮膜は直ちに剥落した。
このことから皮膜の剥離が発生していたことが確認され
た。なお、皮膜の非加熱部では同様の処置を行っても
落は全く生じなかった。
【0016】また、図5に示したように、加熱前および
加熱後の皮膜付き試験片より短冊形の曲げ試験片を精密
カッターにより切り出し4点曲げ試験を実施した(皮
膜側下側すなわち引張り側)ところ、70Aでの
加熱部を含む試験片はれを含まない試験片、および
の実施例3に示す40Aでの加熱部を含む試験片より早
い時期に音とともに明瞭に皮膜が剥離または剥落した。 実施例3 実施例1と同様の方法により試験し、アーク電流40A
の場合について評価した。
【0017】図6、図7は、各々、皮膜と基板の両ひず
み曲線を示しているひずみ曲線には大きな差は生じ
ていない。皮膜の剥離は生じていなかった。
【0018】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この出願の発
明により、非接触式の測定として可能であって、 (1)的確な皮膜の剥離と密着性測定することができ
る、 (2)基板に加えるひずみが未知の場合にも皮膜の剥離
と密着性測定することができる、 (3)任意の場所の皮膜の剥離と密着性測定すること
ができる、 (4)測定の位置に特別な処置を必要としない、 (5)剥離範囲の特定も可能、 (6)既に存在する剥離の検出も可能、という優れた効
果が奏せられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】施例における試験方法とひずみ測定について
示した図である。
【図2】実施例1のひずみ曲線を示した図である。
【図3】実施例2のひずみ曲線を示した図である。
【図4】実施例2のひずみ曲線の長時間の経緯を示した
図である。
【図5】実施例2および3にいて点曲げ試験とそ
結果を示した図である。
【図6】実施例3のひずみ曲線を示した図である。
【図7】実施例3のひずみ曲線の長時間の経緯を示した
図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−223727(JP,A) 特開 平9−243580(JP,A) 特開 平3−51750(JP,A) 村松由樹、黒田聖治、H.G.グロ ス、”レーザースペックル法による溶接 部の相変態途上のひずみ検出−レーザ− スペックルによるひずみ測定法の溶接へ の適用(第3報)−”、溶接学会論文 集、社団法人溶接学会、平成8年11月5 日、第14巻、第4号、p.741−747 村松由樹、黒田聖治、入江宏定、”高 温連続変形体の動的歪のその場測定に関 する基礎的研究”、科学技術庁金属材料 技術研究所研究報告集、科学技術庁金属 材料技術研究所、平成6年3月25日、第 15巻、p.163−172 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 19/00 - 19/10 G01N 3/00 - 3/62 G01N 25/00 - 25/72 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板表面に形成された皮膜の剥離を非接
    触で検出する方法であって、基板に対して所定の外力や
    熱を加え、基板に既知のひずみを生じさせ、皮膜表面に
    レーザー光を照射し、スペックル相関法により皮膜のひ
    ずみを測定し、得られる基板と皮膜のひずみ曲線におい
    て、皮膜のひずみが基板のひずみに追従しなくなる時点
    を皮膜の剥離発生として検出し、この時点の基板のひず
    み量を基板の限界ひずみ量とし、これをもって皮膜の密
    着性を評価することを特徴とする表面皮膜の剥離・密着
    性測定方法。
  2. 【請求項2】 皮膜を形成していないひずみが未知の基
    板にひずみを生じさせ、レーザー光を照射し、スペック
    ル相関法により基板に発生するひずみを測定し、測定し
    たひずみを基板の既知のひずみとする請求項1記載の表
    面皮膜の剥離・密着性測定方法。
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村松由樹、黒田聖治、H.G.グロス、"レーザースペックル法による溶接部の相変態途上のひずみ検出−レーザ−スペックルによるひずみ測定法の溶接への適用(第3報)−"、溶接学会論文集、社団法人溶接学会、平成8年11月5日、第14巻、第4号、p.741−747
村松由樹、黒田聖治、入江宏定、"高温連続変形体の動的歪のその場測定に関する基礎的研究"、科学技術庁金属材料技術研究所研究報告集、科学技術庁金属材料技術研究所、平成6年3月25日、第15巻、p.163−172

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