JP3112586B2 - 車両懸架装置 - Google Patents

車両懸架装置

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JP3112586B2
JP3112586B2 JP04322052A JP32205292A JP3112586B2 JP 3112586 B2 JP3112586 B2 JP 3112586B2 JP 04322052 A JP04322052 A JP 04322052A JP 32205292 A JP32205292 A JP 32205292A JP 3112586 B2 JP3112586 B2 JP 3112586B2
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克也 岩崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ショックアブソーバの
減衰係数を制御する車両の懸架装置に関し、特に、ばね
上加速度からばね上速度を求め、これに基づき減衰係数
制御を行うものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、減衰係数制御を行う車両懸架装置
として、例えば、特開昭63−57308号公報に記載
されたものが知られている。
【0003】この従来装置は、車体のばね上上下加速度
のばね上共振周波数帯域成分を抽出するバンドパスフィ
ルタと、ばね下共振周波数帯域成分を抽出するバンドパ
スフィルタとを有し、両成分値の少なくとも一方が基準
値よりも高い時には減衰力をハードに制御し、両成分値
が共に基準値より低い時には減衰力をソフトに制御する
構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
従来装置では、ばね上共振周波数帯域の成分に基づいて
減衰制御を行なうものであるため、ばね上共振周波数よ
りも高周波側では、実際のばね上加速度とバンドパスフ
ィルタ処理後の信号との間に位相ずれが生じ、しかも、
ばね上共振周波数より高周波側の制御ゲインが高くなる
ため、ばね上共振周波数より高周波側では、実際のばね
上の挙動にふさわしくない制御力が生じ、車両の乗り心
地を悪くするという問題点があった。
【0005】本発明は上記のような従来の問題点に着目
してなされたもので、ばね上共振周波数帯域での路面入
力に対する減衰制御効果を損なうことなく、高周波路面
入力時の乗り心地悪化を防止することができる車両懸架
装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明請求項1記載の車両懸架装置では、図1のク
レーム対応図に示すように、車体と各車輪との間に介在
され、減衰係数変更手段aにより減衰係数を任意に変更
可能に形成されたショックアブソーバbと、車体のばね
上上下方向加速度を検出するばね上加速度検出手段c
と、このばね上加速度検出手段cで得られるばね上加速
度を積分してばね上速度を求めるばね上速度演算手段d
と、このばね上速度演算手段dから得られるばね上速度
に基づき、ショックアブソーバbの減衰係数を制御する
減衰係数制御手段eとを備えた車両懸架装置において、
前記ばね上加速度およびばね上速度の信号伝達経路の途
中に、車両のばね上共振周波数帯域よりも低周波側の周
波数帯域に設定されているバンドパスフィルタfを設け
た構成とした。
【0007】なお、請求項2に示すように、前記バンド
パスフィルタを、ばね上共振周波数よりも低い所定の周
波数をカットオフ周波数とするローパスフィルタと、該
ローパスフィルタのカットオフ周波数よりもさらに低い
周波数をカットオフ周波数とするハイパスフィルタとで
構成することもできる。
【0008】
【作用】本発明の車両懸架装置では、ばね上加速度検出
手段が検出した車体のばね上加速度を、ばね上速度演算
手段で積分してばね上速度を求め、減衰係数制御手段で
は、このばね上速度に基づき、ショックアブソーバの減
衰係数を制御する。
【0009】この時、ばね上加速度は、請求項1記載の
発明ではバンドパスフィルタにより、また、請求項2記
載の発明ではハイパスフィルタおよびローパスフィルタ
により減衰係数制御手段に入力される時点で、車両のば
ね上共振周波数帯域よりも低周波側の周波数帯域のばね
上速度信号に変換されることから、特にばね上共振周波
数より高周波側では、制御ゲインが小さくなっており、
このため、実際のばね上加速度と減衰係数制御手段に入
力されるフィルタ処理されたばね上速度信号との間に位
相ずれが生じても、減衰制御への影響を小さく抑えるこ
とができる。
【0010】従って、ばね上共振周波数帯域での路面入
力に対する減衰制御効果を損なうことなしに、高周波路
面入力時における車両の乗り心地悪化を防止することが
できる。
【0011】
【実施例】本発明実施例を図面に基づいて説明する。ま
ず、本発明実施例の車両懸架装置の構成について説明す
る。
【0012】図2は、本発明実施例の車両懸架装置を示
す構成説明図であり、車体と各車輪との間に介在され
て、4つのショックアブソーバSA(SA1 ,SA2
SA3,SA4 )が設けられている。そして、各ショッ
クアブソーバSAの近傍位置の車体に上下方向の加速度
を検出する上下加速度センサ(以後、上下Gセンサとい
う)1(11 ,12 ,13 ,14 )が設けられている。
そして、運転席の近傍位置には、各上下Gセンサ1から
の信号を入力して、各ショックアブソーバSAのパルス
モータ3に駆動制御信号を出力するコントロールユニッ
ト4が設けられている。
【0013】以上の構成を示すのが図3のシステムブロ
ック図であって、コントロールユニット4は、インタフ
ェース回路4a,CPU4b,駆動回路4cを備え、前
記インタフェース回路4aには、各上下Gセンサ1から
の信号が入力される。
【0014】次に、図4は、ショックアブソーバSAの
構成を示す断面図であって、このショックアブソーバS
Aは、シリンダ30と、シリンダ30を上部室Aと下部
室Bとに画成したピストン31と、シリンダ30の外周
にリザーバ室32を形成した外筒33と、下部室Bとリ
ザーバ室32とを画成したベース34と、ピストン31
に連結されたピストンロッド7の摺動をガイドするガイ
ド部材35と、外筒33と車体との間に介在されたサス
ペンションスプリング36と、バンパラバー37とを備
えている。
【0015】次に、図5は前記ピストン31の部分を示
す拡大断面図であって、この図に示すように、ピストン
31には、上部室Aと下部室Bとを連通する貫通孔31
a,31bが形成されていると共に、各貫通孔31a,
31bをそれぞれ開閉する圧側減衰バルブ20および伸
側減衰バルブ12とが設けられている。また、ピストン
ロッド7の先端に螺合されたバウンドストッパ41に
は、ピストン31を貫通したスタッド38が螺合して固
定されていて、このスタッド38には、上部室Aと下部
室Bとを連通する連通孔39が形成され、さらに、この
連通孔39の流路断面積を変更するための調整子40
と、流体の流通方向に応じて連通孔39側の流体の流通
を許容・遮断する伸側チェックバルブ17と圧側チェッ
クバルブ22とが設けられている。なお、この調整子4
0は、前記パルスモータ3によりコントロールロッド7
0を介して回転されるようになっている(図4参照)。
また、スタッド38には、上から順に第1ポート21,
第2ポート13,第3ポート18,第4ポート14,第
5ポート16が形成されている。
【0016】一方、調整子40は、中空部19が形成さ
れると共に、内外を連通する第1横孔24および第2横
孔25が形成され、さらに、外周部に縦溝23が形成さ
れている。
【0017】したがって、前記上部室Aと下部室Bとの
間には、伸行程で流体が流通可能な流路として、貫通孔
31bを通り伸側減衰バルブ12の内側を開弁して下部
室Bに至る伸側第1流路Dと、第2ポート13,縦溝2
3,第4ポート14を経由して伸側減衰バルブ12の外
周側を開弁して下部室Bに至る伸側第2流路Eと、第2
ポート13,縦溝23,第5ポート16を経由して伸側
チェックバルブ17を開弁して下部室Bに至る伸側第3
流路Fと、第3ポート18,第2横孔25,中空部19
を経由して下部室Bに至るバイパス流路Gの4つの流路
がある。また、圧行程で流体が流通可能な流路として、
貫通孔31aを通り圧側減衰バルブ20を開弁する圧側
第1流路Hと、中空部19,第1横孔24,第1ポート
21を経由し圧側チェックバルブ22を開弁して上部室
Aに至る圧側第2流路Jと、中空部19,第2横孔2
5,第3ポート18を経由して上部室Aに至るバイパス
流路Gとの3つの流路がある。
【0018】すなわち、ショックアブソーバSAは、調
整子40を回動させることにより、その回動に基づいて
減衰係数を、伸側・圧側のいずれとも図6に示すような
特性で、低減衰係数(以後、ソフトという)から高減衰
係数(以後、ハードという)の範囲で多段階に変更可能
に構成されている。また、図7に示すように、伸側・圧
側いずれもソフトとしたのポジションから調整子40
を反時計方向(方向)に回動させると、伸側のみハー
ド側に変化し、逆に、調整子40を時計方向(方向)
に回動させると、圧側のみハード側に変化する構造とな
っている。
【0019】ちなみに、図7において、調整子40を
,,のポジションに配置した時の、図5における
K−K断面,M−M断面,N−N断面を、それぞれ、図
8,図9,図10に示し、また、各ポジションの減衰力
特性を図11,12,13に示している。
【0020】次に、パルスモータ3の駆動を制御するコ
ントロールユニット4について説明すると、このコント
ロールユニット4のインタフェース回路4a内には、図
14の(イ),(ロ),(ハ) の各ブロック図に示すように、3組
のフィルタ回路が設けられている。
【0021】図14の(イ) は、バウンス成分信号VB
(FLVB ,FRVB ,RLVB ,RRVB )を得るためのフィ
ルタ回路であって、各上下Gセンサ1から送られるばね
上加速度G信号の中から、30Hz以上の高周波域のノイズ
を除去するためのローパスフィルタLPF1と、該ロー
パスフィルタLPF1を通過した加速度信号を積分して
ばね上速度に変換するためのカットオフ周波数が0.1Hz
のローパスフィルタLPF2と、増幅器と、カットオフ
周波数が0.3Hz のハイパスフィルタHPF1およびカッ
トオフ周波数が0.6Hz のローパスフィルタLPF3で構
成されるバンドパスフィルタとで構成されている。
【0022】図14の(ロ) は、ピッチ成分信号VP (FL
P ,FRVP ,RLVP ,RRVP )を得るためのフィルタ
回路であって、このフィルタ回路は、前輪側と後輪側の
ばね上加速度差信号の中から、30Hz以上の高周波域のノ
イズを除去するためのローパスフィルタLPF1と、該
ローパスフィルタLPF1を通過した加速度信号を積分
してばね上速度に変換するためのカットオフ周波数が0.
1Hz のローパスフィルタLPF2と、増幅器と、カット
オフ周波数が0.2Hz のハイパスフィルタHPF2および
カットオフ周波数が0.5Hz のローパスフィルタLPF4
で構成されるバンドパスフィルタとで構成されている。
【0023】図14の(ハ) は、ロール成分信号VR (FL
R ,FRVR ,RLVR ,RRVR )を得るためのフィルタ
回路であって、このフィルタ回路は、左輪側と右輪側の
ばね上加速度差信号の中から、30Hz以上の高周波域のノ
イズを除去するためのローパスフィルタLPF1と、該
ローパスフィルタLPF1を通過した加速度信号を積分
してばね上速度に変換するためのカットオフ周波数が0.
1Hz のローパスフィルタLPF2と、増幅器と、カット
オフ周波数が0.1Hz のハイパスフィルタHPF3および
カットオフ周波数が0.5Hz のローパスフィルタLPF5
で構成されるバンドパスフィルタとで構成されている。
【0024】次に、パルスモータ3の駆動を制御するコ
ントロールユニット4の作動について、図15のフロー
チャートに基づき説明する。なお、この制御は、各ショ
ックアブソーバSA毎に別個に行う。
【0025】ステップ101は、各上下Gセンサ1(1
1 ,12 ,13 ,14 )から各車輪位置のばね上加速度
G(G1 ,G2 ,G3 ,G4 )を検出するステップであ
る。なお、ばね上加速度Gは、上方向が正の値で、下方
向が負の値で与えられる。
【0026】ステップ102は、下記の数式に基づい
て、各車輪位置におけるばね上加速度のピッチ成分GP
(FLGP ,FRGP ,RLGP ,RRGP )を算出するステッ
プである。なお、FLは前輪左側、FRは前輪右側、RLは後
輪左側、RRは後輪右側をそれぞれ示していて、各ショッ
クアブソーバSA1 ,SA2 ,SA3 ,SA4 の位置に
対応させている。
【0027】 FLGP ,FRGP =(G1 +G2 )−(G3 +G4 ) RLGP ,RRGP =(G3 +G4 )−(G1 +G2 ) ステップ103は、下記の数式に基づいて、各車輪位置
におけるばね上加速度のロール成分GR (FLGR ,FRG
R ,RLGR ,RRGR )を算出するステップである。
【0028】FRGR ,RRGR =G1 −G2 FLGR ,RLGR =G2 −G1 ステップ104は、前記各ばね上加速度G(G1 ,G
2 ,G3 ,G4 )、ばね上加速度のピッチ成分GP (FL
P ,FRGP ,RLGP ,RRGP )、ばね上加速度のロー
ル成分GR (FLGR ,FRGR ,RLGR ,RRGR )を、図
14の(イ),(ロ),(ハ) で示す各フィルタ回路でそれぞれ処
理することにより、ばね上速度に基づくバウンス成分信
号VB (FLVB ,FRVB ,RLVB ,RRVB )と、ピッチ
成分信号VP (FLVP ,FRVP ,RLVP ,RRVP )と、
ロール成分信号VR (FLVR ,FRVR ,RLVR ,RRV
R )と、を求める処理を行うステップである。
【0029】ステップ105は、下記の数式に基づいて
各ショックアブソーバSAの制御信号V(FLV,FRV,
RLV,RRV)を算出するステップである。
【0030】前輪右 FRV =αf ・FRVB +βf ・FRV
P +γf ・FRVR 前輪左 FLV =αf ・FLVB +βf ・FLVP +γf ・FL
R 後輪右 RRV =αr ・RRVB +βr ・RRVP +γr ・RR
R 後輪左 RLV =αr ・RLVB +βr ・RLVP +γr ・RL
R なお、各式において、αf ,βf ,γf は、前輪の各比
例定数,αr ,βr ,γr は、後輪の各比例定数,α
f ,αr でくくっている部分がバウンスレート,βf
βr でくくっている部分がピッチレート,γf ,γr
くくっている部分がロールレートである。
【0031】ステップ106は、制御信号Vが、所定の
しきい値δT 以上であるか否かを判定するステップであ
り、YESでステップ107に進み、NOでステップ1
08に進む。
【0032】ステップ107は、ショックアブソーバS
Aを伸側ハード領域HSに制御するステップである。
【0033】ステップ108は、制御信号Vが所定のし
きい値δT としきい値−δC との間の値であるか否かを
判定するステップであり、YESでステップ109に進
み、NOでステップ110に進む。
【0034】ステップ109は、ショックアブソーバS
Aをソフト領域SSに制御するステップである。
【0035】ステップ110は、ステップ106および
ステップ108でNOと判定した場合、すなわち、制御
信号Vが、所定のしきい値−δC 以下である時の処理ス
テップであり、このステップでは、ショックアブソーバ
SAを圧側ハード領域SHに制御する。
【0036】次に、実施例装置の作動を図16のタイム
チャートにより説明する。
【0037】制御信号Vが、この図に示すように変化し
た場合、制御信号Vが所定のしきい値δT ,−δC の間
の値である時には、ショックアブソーバSAをソフト領
域SSに制御する。
【0038】また、制御信号Vがしきい値δT 以上とな
ると、伸側ハード領域HSに制御して、圧側を低減衰特
性に固定する一方、伸側の減衰特性を制御信号Vに比例
させて変更する。この時、減衰特性Cは、C=k1 ・V
となるように制御する。なお、k1 は比例定数である。
【0039】また、制御信号Vがしきい値−δC 以下と
なると、圧側ハード領域SHに制御して、伸側を低減衰
特性に固定する一方、圧側の減衰特性を制御信号Vに比
例させて変更する。この時も、減衰特性Cは、C=k2
・Vとなるように制御するものである。なお、k2 は比
例定数である。
【0040】また、図16のタイムチャートにおいて、
領域aは、制御信号Vに基づく制御信号Vが負の値(下
向き)から正の値(上向き)に逆転した状態であるが、
この時はまだ相対速度は負の値(ショックアブソーバS
Aの行程は圧行程側)となっている領域であるため、こ
の時は、制御信号Vの方向に基づいてショックアブソー
バSAは伸側ハード領域HSに制御されており、従っ
て、この領域ではその時のショックアブソーバSAの行
程である圧行程側がソフト特性となる。
【0041】また、領域bは、制御信号Vが正の値(上
向き)のままで、相対速度は負の値から正の値(ショッ
クアブソーバSAの行程は伸行程側)に切り換わった領
域であるため、この時は、制御信号Vの方向に基づいて
ショックアブソーバSAは伸側ハード領域HSに制御さ
れており、かつ、ショックアブソーバの行程も伸行程で
あり、従って、この領域ではその時のショックアブソー
バSAの行程である伸行程側が、制御信号Vの値に比例
したハード特性となる。
【0042】また、領域cは、制御信号Vが正の値(上
向き)から負の値(下向き)に逆転した状態であるが、
この時はまだ相対速度は正の値(ショックアブソーバS
Aの行程は伸行程側)となっている領域であるため、こ
の時は、制御信号Vの方向に基づいてショックアブソー
バSAは圧側ハード領域SHに制御されており、従っ
て、この領域ではその時のショックアブソーバSAの行
程である伸行程側がソフト特性となる。
【0043】また、領域dは、制御信号Vが負の値(下
向き)のままで、相対速度は正の値から負の値(ショッ
クアブソーバSAの行程は伸行程側)になる領域である
ため、この時は、制御信号Vの方向に基づいてショック
アブソーバSAは圧側ハード領域SHに制御されてお
り、かつ、ショックアブソーバの行程も圧行程であり、
従って、この領域ではその時のショックアブソーバSA
の行程である圧行程側が、制御信号Vの値に比例したハ
ード特性となる。
【0044】以上のように、この実施例では、ばね上上
下速度に基づく制御信号Vとばね上・ばね下間の相対速
度とが同符号の時(領域b,領域d)は、その時のショ
ックアブソーバSAの行程側をハード特性に制御し、異
符号の時(領域a,領域c)は、その時のショックアブ
ソーバSAの行程側をソフト特性に制御するという、ス
カイフック理論に基づいた減衰特性制御と同一の制御
が、ばね上・ばね下間相対速度を検出することなしに行
なわれることになる。そして、さらに、この実施例で
は、領域aから領域b,及び領域cから領域dへ移行す
る時には、パルスモータ3を駆動させることなしに減衰
特性の切り換えが行なわれることになる。
【0045】次に、図17の特性図に基づいて、本実施
例の作用を説明する。なお、図17の(イ) は、低減衰係
数制御時(点線で示す)および高減衰係数制御時(鎖線
で示す)における周波数に対する伝達率特性図を示し、
図17の(ロ) は、本実施例における周波数に対する伝達
率特性図を示し、図17の(ハ) は、本実施例における周
波数に対する制御ゲイン特性図を示している。なお、図
においてXW は路面入力,XO はばね上速度を示す。
【0046】すなわち、この実施例で用いたバンドパス
フィルタは、図17の(ハ) に示すように、車両のばね上
共振周波数f1 (≒1.1Hz )を中心とするばね上共振周
波数帯域より低周波数帯域(0.2 〜0.6Hz )以外をカッ
トオフ周波数とするもので、このため、車両のばね上共
振周波数f1 よりも高周波側では制御ゲインが小さくな
っている。従って、実際の車両のばね上速度と制御信号
Vとの間の位相がずれていても、車両のばね上共振周波
数f1 より高周波側の路面入力に対しては、位相ずれに
よる影響を小さく抑えることができると共に、図17の
(イ) に示す不動点以上では減衰係数Cが最小になるた
め、図17の(ロ) に示すように、優れた伝達率特性が得
られ、これにより、高周波路面入力に対する車両の乗り
心地を向上させることができる。
【0047】次に、図18の(イ) に示す実際の車両のば
ね上速度と制御信号Vとの関係を示すシュミレーション
結果としてのタイムチャート、および、図18の(ロ) に
示すばね上加速度のシュミレーション結果としてのタイ
ムチャートに基づいて、実施例の作用を説明する。な
お、この両タイムチャートにおいて、実線は、0.3 〜0.
6Hz のバンドパスフィルタを用いた本実施例のシュミレ
ーション結果を示し、点線は、1.0 〜1.5Hz のバンドパ
スフィルタを用いた従来例のシュミレーション結果を示
す。
【0048】すなわち、このシュミレーション結果で明
らかなように、従来例に比べ、実施例ではばね上加速度
の値が小さくなっており、これにより、車両の乗り心地
が改善されている。
【0049】以上説明したように、この実施例の車両懸
架装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
【0050】 車両のばね上加速度G信号が、コント
ロールユニット4のCPU4bに入力される時点で、車
両のばね上共振周波数f1 よりも低周波側の周波数帯域
のばね上速度信号に変換されることから、特にばね上共
振周波数f1 より高周波側では、制御ゲインが小さくな
っており、このため、実際のばね上加速度とフィルタ処
理されたばね上速度信号との間に位相ずれが生じても、
減衰係数制御への影響を小さく抑えることができる。
【0051】従って、ばね上共振周波数帯域での路面入
力に対する減衰係数制御効果を損なうことなしに、高周
波路面入力時における車両の乗り心地悪化を防止するこ
とができる。
【0052】 バウンスのみでなくロール,ピッチに
対しても十分な制御力を発生することができることか
ら、乗り心地と操縦安定性に優れた車両用懸架装置を提
供することができる。
【0053】 バウンスレート,ピッチレート,ロー
ルレートを求めるにあたり、それぞれ異なる比例定数
α,β,γを用いているため、車両において、ばね上共
振周波数,ピッチ共振周波数,ロール共振周波数がそれ
ぞれ異なっていても、ばね上上下速度に基づいて、各レ
ートを的確に検出することができる。
【0054】 従来のスカイフック理論に基づいた減
衰特性制御に比べ、減衰特性の切り換え頻度が少なくな
るため、制御応答性を高めることができると共に、パル
スモータ3の耐久性を向上させることができる。
【0055】以上、実施例について説明してきたが具体
的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明
に含まれる。
【0056】例えば、実施例では、各ショックアブソー
バ毎に制御を行ったが、前輪側と後輪側とに分けて制御
を行ってもよい。また、この場合、制御に用いる信号は
前輪側もしくは後輪側のいずれか一方の信号のみに基づ
いて制御を行うようにしてもよい。
【0057】また、実施例では、伸側・圧側の一方を高
減衰係数側に制御した際に、他方は低減衰係数に固定さ
れる構造の減衰係数変更手段を有したショックアブソー
バを用いたが、伸側・圧側とも同様に減衰係数が変化す
る構造の減衰係数変更手段を用いてもよい。
【0058】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明請求項1
記載の車両懸架装置は、ばね上加速度およびばね上速度
の信号伝達経路の途中に、車両のばね上共振周波数帯域
よりも低周波側の周波数帯域に設定されているバンドパ
スフィルタを設けた構成としたため、実際のばね上加速
度と減衰係数制御手段に入力されるフィルタ処理された
ばね上速度信号との間に位相ずれが生じても、特にばね
上共振周波数より高周波側の制御ゲインが小さくなるた
め、減衰制御への影響を小さく抑えることができ、従っ
て、ばね上共振周波数帯域での路面入力に対する減衰制
御効果を損なうことなしに、高周波路面入力時における
車両の乗り心地悪化を防止することができるようになる
という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両懸架装置を示すクレーム概念図で
ある。
【図2】本発明実施例の車両懸架装置を示す構成説明図
である。
【図3】実施例の車両懸架装置を示すシステムブロック
図である。
【図4】実施例装置に適用したショックアブソーバを示
す断面図である。
【図5】前記ショックアブソーバの要部を示す拡大断面
図である。
【図6】前記ショックアブソーバのピストン速度に対応
した減衰係数特性図である。
【図7】前記ショックアブソーバのパルスモータのステ
ップ位置に対応した減衰係数特性図である。
【図8】前記ショックアブソーバの要部を示す図5のK
−K断面図である。
【図9】前記ショックアブソーバの要部を示す図5のL
−L,M−M断面図である。
【図10】前記ショックアブソーバの要部を示す図5の
N−N断面図である。
【図11】前記ショックアブソーバの伸側ハード時の減
衰係数特性図である。
【図12】前記ショックアブソーバの伸側・圧側ソフト
状態の減衰係数特性図である。
【図13】前記ショックアブソーバの圧側ハード状態の
減衰係数特性図である。
【図14】実施例装置におけるCPU内部の信号処理部
の構成を示すブロック図である。
【図15】実施例装置におけるコントロールユニットの
制御作動を示すフローチャートである。
【図16】実施例装置におけるコントロールユニットの
制御作動を示すタイムチャートである。
【図17】実施例装置における周波数に対するショック
アブソーバのばね上伝達率及び制御ゲイン特性図であ
る。
【図18】実施例装置におけるシュミレーション結果を
示すタイムチャートである。
【符号の説明】
a 減衰係数変更手段 b ショックアブソーバ c ばね上加速度検出手段 d ばね上速度演算手段 e 減衰係数制御手段 f バンドパスフィルタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−353006(JP,A) 特開 昭60−151111(JP,A) 特開 平5−2516(JP,A) 特開 昭62−61811(JP,A) 特開 平4−90915(JP,A) 特開 平4−15113(JP,A) 特開 平3−276808(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60G 17/015

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車体と各車輪との間に介在され、減衰係
    数変更手段により減衰係数を任意に変更可能に形成され
    たショックアブソーバと、 車体の上下方向ばね上加速度を検出するばね上加速度検
    出手段と、 このばね上加速度検出手段で得られるばね上加速度を積
    分してばね上速度を求めるばね上速度演算手段と、 このばね上速度演算手段から得られるばね上速度に基づ
    き、ショックアブソーバの減衰係数を制御する減衰係数
    制御手段とを備えた車両懸架装置において、 前記ばね上加速度およびばね上速度の信号伝達経路の途
    中に、車両のばね上共振周波数帯域よりも低周波側の周
    波数帯域に設定されているバンドパスフィルタを設けた
    ことを特徴とする車両懸架装置。
  2. 【請求項2】 前記バンドパスフィルタが、ばね上共振
    周波数よりも低い所定の周波数をカットオフ周波数とす
    るローパスフィルタと、該ローパスフィルタのカットオ
    フ周波数よりもさらに低い周波数をカットオフ周波数と
    するハイパスフィルタとで構成されていることを特徴と
    する請求項1記載の車両懸架装置。
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