JP3106822B2 - 補体価測定方法及びこれに用いる試薬 - Google Patents

補体価測定方法及びこれに用いる試薬

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JP3106822B2 JP05311229A JP31122993A JP3106822B2 JP 3106822 B2 JP3106822 B2 JP 3106822B2 JP 05311229 A JP05311229 A JP 05311229A JP 31122993 A JP31122993 A JP 31122993A JP 3106822 B2 JP3106822 B2 JP 3106822B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、試料中の補体価を定量
分析するための測定方法及びそれに使用する測定試薬に
関する。
【0002】
【従来の技術】補体系はヒト等の動物の血清中に存在す
る約20種の蛋白質の総称である。これら補体系は、生体
内に侵入した異物や細菌を認識、排除する等、生体防御
の重要な役割を担っている。また、これら補体系は、主
として免疫複合体により活性化される古典的経路と、多
糖類等により活性化される第二経路の2つの活性化経路
を持つことが知られている。近年、補体系の活性測定、
即ち補体価の測定は、急性糸球体腎炎、自己免疫疾患等
の診断や治療の指標として注目されている。
【0003】現在の補体価の測定としては、ヒツジ赤血
球と、それに対応する抗体との複合体である感作ヒツジ
赤血球を用いて補体の溶血活性を測定することにより行
う、メイヤー(Mayer)法が一般的に広く用いられ
ている。しかし、この方法は、同一検体につき何種類か
の希釈度の試料について反応を行い、その結果に基づい
て50% 溶血が起こる量(CH50 U/ml)をグラフより求め
ることにより補体価の測定を行うという煩雑な方法であ
り、しかも、使用する赤血球には、保存時の安定性が悪
いことや、動物の個体差により補体に対する感受性が異
なる等の問題があるので、必ずしも好ましい方法とはい
い難い。
【0004】一方、赤血球の代りに、より安定でロット
間差が少なく補体活性により膜損傷反応を受けるように
調製されたリポソームを用いる補体価測定法が報告され
ている(特開昭63−293470号公報、特開平1−
155271号公報、特開昭62−163966号公特
開昭62−299764号公報等)。しかしながら、こ
れら測定法に於ても、リポソームを懸濁させた試液を保
存するとリポソームが沈澱や凝果するという問題があ
る。特に、自動分析装置を使用する測定に於ては、この
ような現象が生じることは問題が多い。即ち、自動分析
装置の大部分は、試液の保冷装置も備え、試液を装置に
セットしたまま、いつでも測定できるように設計されて
いるため、保存中、或は長時間にわたる測定時に試液中
に沈降や凝集が生じると結果的に測定感度が変動するた
め、測定に支障を来すことになる。
【0005】また、上記の如きリポソーム試液に於ける
問題を解決するために、抗体を感作したリポソームの代
りにピリジル基の様な特別な低分子を使用して調製した
リポソームのみを使用する方法も提案されているが、こ
の方法の場合には、抗原抗体反応に基づく補体価測定方
であるメイヤー法との反応原理が異なるという問題点
がある為、この方法も好ましい方法とはいい難い。更
に、これら従来の測定法は、通常、37℃で1時間とい
う反応時間を必要としているため、自動分析装置に応用
するには反応時間が長すぎる、という問題も有してい
た。
【0006】そのため、抗原抗体反応に基づく補体の活
性化を利用した補体価測定試薬であって、自動分析装置
に応用が可能な反応時間で測定が可能で、且つ保存中或
は長時間にわたる測定時に試液中に沈降や凝集が生じな
い、均一性が高く、安定性に優れたリポソーム試液の開
発が望まれている現状にある。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】本発明は、上記した
如き状況に鑑みなされたもので、分散性、静置保存安定
性に優れ、自動分析装置に適応可能な、リポソームを用
いた補体価測定方法及びそれに用いる試薬を提供するこ
とをその目的とする。
【0008】
【問題を解決するための手段】本発明は、内部に標識物
質を内包し、その膜上にハプテンが固定化されたリポソ
ームであって、その動的光散乱法により求めた、個数分
布に由来する平均粒径(nm)に標準偏差を2倍した値を加
えた値が100〜500nmであるリポソームを使用することを
特徴とする補体価測定方法の発明である。
【0009】また、本発明は、内部に標識物質を内包
し、その膜上にハプテンが固定化されたリポソームであ
って、その動的光散乱法により求めた、個数分布に由来
する平均粒径(nm)に標準偏差を2倍した値を加えた値が
100〜500nmであるリポソームを含有する溶液を含んで成
る補体価測定試薬の発明である。
【0010】本発明に使用されるリポソームは、内部に
標識物質を内包し、その膜上にハプテンが固定化された
リポソームであって、その動的光散乱法(寺田弘/吉村
哲朗編著、「ライフサイエンスにおけるリポソーム実験
マニュアル」、103〜106頁、シュプリンガー・フェアラ
ーク東京、1992年8月1日発行等。)により求めた、個
数分布に由来する平均粒径(nm)に標準偏差を2倍した値
を加えた値が、通常100〜500nm、好ましくは150〜350nm
であるリポソームであればよく、その膜構成成分や調製
方法は通常この分野で調製されるリポソームに準じれば
足りる。
【0011】即ち、例えばその調製方法としては、従来
から知られているボルテックスイング法,超音波法,界
面活性剤除去法,逆相蒸発法(REV法),エタノール
注入法,エーテル注入法,プレ-ベジクル(Pre-Vesicle)
法,フレンチプレスエクストルージョン(French Press
Extrusion)法,Ca2+融合法 ,アニーリング(Annealin
g)法,凍結融解融合法,凍結乾燥法,W/O/Wエマルジョ
ン法等の方法や、S.M.Grunerら[Biochemistry, 24, 28
33(1985)]により報告された Stable Plurilamellar Ve
sicle 法 (SPLV法)等の方法が全て挙げられ、こ
れらの方法により作製されたリポソームを、フレンチプ
レス、加圧ろ過器或はエクストルーダーを用いて一定の
大きさの細孔径を有する膜等を通すことにより、目的の
性質を有するリポソームを得ることが出来る。
【0012】また、その主たる膜構成成分としては、通
常のリポソームの調製に於いて膜構成成分として用いら
れている天然レシチン(例えば、卵黄レシチン,大豆レ
シチン等)やジパルミトイルフォスファチジルコリン(D
PPC),ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC),
ジステアロイルフォスファチジルコリン(DSPC),ジオレ
オイルフォスファチジルコリン(DOPC),ジパルミトイル
ホスファチジルエタノールアミン(DPPE),ジミリストイ
ルフォスファチジルエタノールアミン(DMPE),ジパルミ
トイルフォスファチジルグリセロール(DPPG),ジミリス
トイルフォスファチジルグリセロール(DMPG),ジミリス
トイルフォスファチジン酸(DMPA),卵黄フォスファチジ
ルグリセロール等のリン脂質、或はガングリオシド糖脂
質,スフィンゴ糖脂質,グリセロ糖脂質等の糖脂質等の
1種又は2種以上、或はこれらとコレステロール類との
混合系等を組み合わせたもの等が全て挙げられる。尚、
例えばKinsky,S.C( Biochemistry,8,4149,1969 )らの用
いたリン脂質を含むヒツジ赤血球クロロホルム抽出分画
等をその構成成分として含むリポソーム等も使用できる
ことはいうまでもない。
【0013】本発明に関わるリポソームに内包させる標
識物質としては、J.liposome Res.(D.Monroe :1(3),339
-377,1989-90)に示されるように、例えばアルカリホス
ファターゼ,グルコース-6-リン酸脱水素酵素,β-ガラ
クトシダーゼ等の酵素類、例えば4-メチルウンベリフェ
リルβ-D-ガラクトシド、p-ヒドロキシフェニルプロピ
オン酸、4-メチルウンベリフェリルフォスフェート、グ
ルコース-6-リン酸等の酵素の基質、例えばカルボキシ
フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、
フルオレセインイソシアネート、テトラローダミンイソ
チオシアネート、5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスル
フォニルクロリド等の蛍光物質類、例えばアルセナゾII
I,4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノール,2-(5-ブロモ-2
-ピリジルアゾ)-5-(N-プロピル-N-スルホプロピルアミ
ノ)フェノール ナトリウム塩等の色素類、例えばルミノ
ール,イソルミノール,ルシフェリン,エオシンY,オ
ーラミンO,ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)オキザレ
ート,N-メチルアクリジニウムエステル等の発光物質
類、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ
ル(TEMPO)等に代表されるスピンラベル化剤類等、リポ
ソーム膜上で生じる抗原抗体複合物に対する補体の作用
によりリポソーム膜が損傷され、その結果何らかの方法
により検出が可能となるものであれば何でも良く、これ
らの中から検出方法、感度及びリポソームの安定性を考
慮して適宜選択すれば良い。尚、酵素を内包させた場合
は、反応が増幅されるので高感度となり、しかも通常吸
光度の測定によって検出できるため、自動分析装置への
適応上、より好ましい。また、本発明に係わるリポソー
ムに保持される標識物質の量は標識物質の種類により異
なり特に限定されないが、例えば標識物質がグルコース
-6-リン酸脱水素酵素の場合を例にとると、標識リポソ
ーム調製時に使用される標識物質を含む溶液として通常
1000〜5000U/ml、好ましくは2000〜3000U/mlの濃度の酵
素溶液を用いればよい。
【0014】本発明に係わるリポソームの膜上に固定化
されるハプテンとしては、リポソーム膜上に固定化で
き、且つそれに対する抗体と反応し得るハプテンであれ
ば特に限定されないが、例えばForssman 抗原,GM1
等の糖脂質抗原、例えばジニトロベンゼン,トリニトロ
ベンゼン等の芳香族化合物、例えばサイロキシン等のホ
ルモン、例えばテオフィリン,フェニトイン等の薬物等
が好ましく挙げられる。
【0015】本発明で用いられるリポソームへのハプテ
ンの固定化方法としては、通常この分野で用いられるリ
ポソームへのハプテンの固定化方法であれば特に限定さ
れることなく挙げられるが、例えば上記した如き糖脂質
抗原、或はハプテンのリン脂質誘導体をリポソーム膜構
成成分として用いる方法(Kinsky,S.C,Bi
ochemistry,8,4149,1969、S.
Shichijo,journal of Immun
ological Methods,85,53−6
3,1985、K.Uemura,Biochemis
try,vol.11,No22,4085,197
2、T.masaki,Journal of Imm
unological Methods,123,19
−24,1989、C.Braman,Bio.Tec
hnology,April,349,1984、U.
Glagasigij,Chem.Pharm.Bul
l,36,1086,1988、K.Kubotsu,
Clin.Chem,38,808,1992等)が好
ましく挙げられる。また、「続生化学実験講座5 免疫
生化学実験法、第1版第1刷、編集:(社)日本生化学
会、(株)東京化学同人、144〜148頁、1986
年3月14日発行」等に記載の架橋法によりリポソーム
膜表面にハプテンを固定化する方法等を利用して本発明
に係わるリポソームを調製することも可能である。尚、
該架橋法に於いて用いられる架橋剤としては、例えばN
−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピ
オネート(SPDP)、N−スクシンイミジル4−(p
−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、N−
スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)アセ
テート(SMPA)、N−スクシンイミジル4−(p−
マレイミドフェニル)プロピオネートアセテート(SM
PP)、N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシ
ンイミド(GMBS)およびN−(6−マレイミドカプ
ロイルオキシ)スクシンイミド(EMCS)等が挙げら
れる。
【0016】本発明に於いて使用される抗体としては、
リポソーム膜上に固定化されたハプテンに対する抗体で
あれば何れにてもよく特に限定されない。即ち、常法、
例えば「免疫実験学入門、第2刷、松橋直ら、(株)学
会出版センター、1981」等に記載の方法に準じて、馬、
牛、羊、兎、山羊、ラット、マウス等の動物に測定対象
を免疫して作製されるポリクローナル抗体でも、或はま
た常法、即ちケラーとミルスタイン(Nature,256巻,495
頁,1975)により確立された細胞融合法に従い、マウス
の腫瘍ラインからの細胞と測定対象物で予め免疫された
マウスの脾細胞とを融合させて得られるハイブリドーマ
が産生する単クローン性抗体でも何れにてもよく、これ
らを単独で或はこれらを適宜組み合わせて用いる等は任
意である。また、これら抗体は、血清中或は腹水中に含
まれたままの状態で使用してもよいが、補体価測定時の
非特異的反応を抑制したいのであれば、例えば硫安分
画、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマト
グラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の方
法により、IgG分画等に精製して用いることが望まし
い。
【0017】本発明の試薬を使用するヒト補体価測定法
は、例えば下記の如く行えば良い。即ち、先ず、標識物
質を内包し、その膜上にハプテンが固定化されたリポソ
ームであって、その動動的光散乱法により求めた、個数
分布に由来する平均粒径(nm)に標準偏差を2倍した
値を加えた値が100〜500nmであるリポソーム
と、試料(例えば補体を含むヒト血清等)とを適当な緩
衝液[例えばリン酸塩、ホウ酸塩、トリス(ヒドロキシ
メチル)アミノメタン(Tris)、グッド(Goo
d)緩衝剤、ベロナール緩衝剤等の緩衝剤を含む緩衝液
(浸透圧は通常150〜500mOsm/kg、好まし
くは200〜360mOsm/kg程度、pHは通常5
〜9、好ましくは6〜8程度)等]中で混合し、通常2
0〜50℃、好ましくは25〜40℃で通常3〜60分
間、好ましくは5〜30分間インキュベイトさせる。こ
れに、リポソーム膜上に固定化されたハプテンに対する
抗体を加えて反応させ、その結果検出可能となった標識
物質を、標識物質に応じた方法で測定する。得られた測
定値を、例えば予め補体価既知のラット血清等を用い、
上記と同様の操作をおこなって得た、標識物質と補体価
との関係を示す検量線に当てはめる等して、試料中の補
体価を求める。
【0018】本発明による補体価測定時に用いられる、
本発明に係わるリポソームの使用量を最終反応液中の濃
度で示すと、該リポソームに含有されるリン脂質量とし
て通常0.1〜250nmol/ml、好ましくは1〜50nmol/mlであ
る。
【0019】また、上記反応に於いて、反応時の溶液中
には例えば各種防腐剤、標識物質を測定するのに必要な
試薬(例えば、酵素の基質等)等の、自体公知のリポソ
ームを用いる免疫測定法に於いて通常用いられている試
薬類が共存していても良いことは言うまでもない。ま
た、これら試薬類等の測定用試液中の濃度範囲等も自体
公知の補体免疫測定法に於いて通常用いられる濃度範囲
等から適宜選択し決定すれば足りる。
【0020】尚、標識物質の量を測定する方法として
は、例えば標識物質が酵素の場合には、例えば「酵素免
疫測定法、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北川常廣・
南原利夫・辻章夫・石川栄治編集、51〜63頁、共立出版
(株)、1987年9月10日発行」等に記載された方法に準
じて該標識物質の測定を行えばよく、標識物質が蛍光物
質の場合には、例えば「図説 蛍光抗体、川生明著、第
1版、(株)ソフトサイエンス社、1983」等に記載され
た方法に準じて該標識物質の測定を行えばよく、標識物
質が発光性物質の場合には、例えば「酵素免疫測定法、
蛋白質 核酸 酵素別 冊 No.31、北川常廣・南原利夫・
辻章夫・石川栄治編集、252〜263頁、共立出版(株)、
1987年9月10日発行」等に記載された方法に準じて該標
識物質の測定を行えばよく、また、標識物質がスピンラ
ベル化剤としての性質を有する物質の場合には、例えば
「酵素免疫測定法、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北
川常廣・南原利夫・辻章夫・石川栄治編集、264〜271
頁、共立出版(株)、1987年9月10日発行」等に記載さ
れた方法に準じて該標識物質の測定を行えばよい。ま
た、標識物質が色素の場合には、分光光度計等を用いて
該色素の極大吸収波長を測定することにより溶液中の該
色素量を求める方法等の常法により該標識物質の測定を
行えばよい。
【0021】尚、ヒト補体価の単位としては前述のメイ
ヤー(Mayer)の方法ではCH50値(U/ml)として表
現されているが単位の設定は、CH50値に限定されるもの
ではない。
【0022】本発明の方法は、自動分析装置を用いた測
定系に好適な方法ではあるが、用手法にも十分利用可能
であり、試液が良好な保存安定性を有するが故に、容易
に且つ精度良く補体価の測定を行うことが出来る。尚、
用手法又は自動分析装置を用いて測定を行う場合の試薬
類の組み合わせについては、特に限定はされず、適用す
る自動分析装置の環境、その他の要因等に合わせて適宜
行えば良いが、本発明に係わるリポソームと、その膜上
に固定化されたハプテンに対する抗体とは反応時まで別
々の容器で保存しておいた方が保存安定性がより良好と
なるので望ましい。
【0023】また、本発明の補体価測定試薬は、内部に
標識物質を内包し、その膜上にハプテンが固定化された
リポソームであって、その動的光散乱法により求めた、
個数分布に由来する平均粒径(nm)に標準偏差を2倍した
値を加えた値が100〜500nmであるリポソームを含有する
溶液を少なくとも含んで成るものであればよいが、その
他該リポソーム膜上に固定化されているハプテンに対す
る抗体(溶液状態でも凍結乾燥状態でも可)、該リポソ
ーム溶液や抗体等を希釈するために用いられる緩衝液等
を組み合わせたものでも良い。また、これらリポソーム
溶液や希釈用の緩衝液等には、例えば各種防腐剤、標識
物質を測定するのに必要な試薬(例えば、酵素の基質
等)等の、自体公知のリポソームを用いる免疫測定法に
於いて通常用いられている試薬類が共存していても良い
ことは言うまでもない。尚、これら試薬類の溶液(又は
緩衝液)中の濃度範囲等も自体公知の補体免疫測定法に
於いて通常用いられる濃度範囲等から適宜選択し決定す
れば足りる。
【0024】尚、本発明の補体価測定試薬に於ける上記
した如き試薬類の組合せは特に限定されないが、本発明
に係わるリポソームと、その膜上に固定化されたハプテ
ンに対する抗体とは反応時まで別々の容器で保存してお
いた方が保存安定性がより良好となるので望ましい。以
下に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、
これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0025】
【実施例】
実施例1.(mean+2SD)値の異なるリポソームの安
定性の比較 (1)(mean+2SD)値の異なる、ジニトロフェニル
基が膜上に固定化されたリポソーム(以下、ジニトロフ
ェニル感作リポソームと略記する。)の調製ク゛ルコース -6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)を内包し、ジニトロフ
ェニル基が膜上に固定化されたリポソームを、ライフサ
イエンスにおけるリポソーム実験マニュアル(寺田弘、
吉村哲郎編著: シュフ゜リンカ゛ー・フェアラーク東京株式会社,60-89
1992年)に記載されたボルテックスイング法によるリポ
ソーム調製法に準じて以下のように調製した。即ち、ジ
ミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)142μmol、ジ
ミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)16μmo
l、コレステロール164μmol及び ジニトロベンゼンのホ
スファチジルエタノールアミン誘導体(AVANTI社製)1.
6μmolとを10ml のクロロホルムに溶解した後、減圧乾
燥した。これに G6PDH 水溶液 15ml[ 2500U/ml、in 10m
M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris/HCl)
緩衝液(pH7.8)]を加えボルテックスミキサーで混和し
た。このようにして得られた脂質水和液を6等分し、夫
々を適当な細孔径を有する膜を通して整粒した。得られ
た6種類のリポソーム懸濁液を夫々遠心チューブに移
し、4℃、36000rpmで遠心してリポソームに内包されな
かった酵素を除き、最後に 100mM Tris/HCl緩衝液(pH7.
8)に懸濁して、粒径の異なるジニトロフェニル感作リポ
ソームを得た。これらのリポソームの平均粒径等を動的
光散乱法による粒径解析システム(LPA-3000/3100;大塚
電子(株))により測定したところ、各リポソームの、個
数分布に由来する平均粒径(mean)、標準偏差(SD)
及び(mean+2SD)値は、表1に示す如くであった。
【0026】
【表1】
【0027】(2)(mean+2SD)値の異なるリポソ
ームの静置保存安定性 上記(1)で調製した(mean+2SD)値の異なる6種
類のG6PDH内包ジニトロフェニル感作リポソームをそれ
ぞれ脂質濃度が5nmol/mlとなるように ゼラチンベロナ
ール緩衝液(以下、GVB++と略記する。稲井眞弥他
編:補体学、医師薬出版、1983等)で希釈した溶液を10
℃で所定期間静置保存した後、その上清250μlを採取し
た。これを、補体を含むヒト血清10μlに加え、37℃で
5分間インキュベーションした後、十分量の抗ジニトロ
フェニル抗体(ヤギ、ICN社製。尚、硫安分画及びDE
AEセルロースカラムクロマトグラフィーによりIgG分
画に精製して使用した。)、24mM ク゛ルコース-6-リン酸(G6P)
及び9mM ニコチンアミト゛アテ゛ニンシ゛ヌクレオチト゛(NAD)を含むGVB++
(pH7.4)125μl加えて、37℃で5分間反応させ、次い
でG6PDH の活性値を1分間あたりの340nmの吸光度変化
(△A)として測定した。測定結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】表2の結果から明らかな如く、(mean+2
SD)値が500nm以下のリポソーム(リポソームNo1〜
3のリポソーム)を使用した場合には、1週間静置後で
もΔA(吸光度変化)に変動は認められないが、(mean
+2SD)値が500nmを越えるリポソーム(リポソームN
o4〜6のリポソーム)を使用した場合には徐々にΔA
が低下すること、言い換えれば、(mean+2SD)値が
500nm以下のリポソームは溶液中での静置保存安定性が
良好であるが、(mean+2SD)値が500nmを越えるリ
ポソームは溶液中での静置保存安定性が不良であること
が判る。尚、1週間静置保存した(mean+2SD)値が
500nmを越えるリポソーム(リポソームNo4〜6のリポ
ソーム)を含有する溶液を十分混和した後に、上記と同
じ試薬を用い同様の操作により再度ΔAを求めたとこ
ろ、得られたΔAは、調製直後のものについて得られた
ものと同等であった。このことから、これらのリポソー
ム溶液は、静置保存中にリポソームが徐々に沈澱又は沈
降すると考えられる。 また、上記の各リポソーム原液
(脂質濃度3000nmol/ml)を静置した状態で1カ月保存
したところ、(mean+2SD)値が500nmを越えるリポ
ソーム原液ではリポソームの沈降が認められるのに対
し、(mean+2SD)値が500nm以下のリポソーム原液
では沈降は認められなかった。
【0030】実施例2.ハプテン又は蛋白抗原が膜上に
固定化されたリポソームと、該ハプテン(又は抗原)に
対する抗体とを、補体価測定時まで別々に静置保存して
おいた場合と、これらを予め同一の溶液内で静置保存し
ておいた場合とに於ける、リポソーム溶液の安定性につ
いて検討を行った。 (1)ハプテンが膜上に固定化されたリポソーム(以
下、ハプテン感作リポソームと略記する。)の調製 ハプテンとしてジニトロフェニル基を感作したリポソー
ムは、実施例1の(1)と同じ試薬を用い同様の方法で
作製した。尚、ハプテン感作リポソームの整粒は、0.2
μmの細孔径を有する膜を通すことにより行った。得ら
れたハプテン感作リポソームを動的光散乱法による粒径
解析システム(LPA-3000/3100;大塚電子)により測定し
たところ、以下のような個数分布に由来するデータが得
られた。 平均粒径(mean) ;165nm。 標準偏差(SD) ; 39。 (mean+2SD)値;243。 (2)抗体固定化ハプテン感作リポソームの調製 上記(1)で作製したハプテン感作リポソームと十分量
の抗ジニトロフェニル抗体(ヤギ、ICN社製。尚、硫
安分画及びDEAEセルロースカラムクロマトグラフィーに
よりIgG分画に精製して使用した。)とを混和し、室
温で24時間反応させた後、遠心チューブに移し、4℃、
36,000rpmで遠心してリポソーム膜上に固定化されなか
った抗体を除いた。最後に100mM Tris/HCl緩衝液(pH7.
8)に懸濁して、抗体固定化ハプテン感作リポソームを得
た。 (3)蛋白抗原が膜上に固定化されたリポソーム(以
下、蛋白抗原感作リポソームと略記する。)の調製 SH基保有リポソームの調製 ジミリストイルホスファチジルコリン71μmol、ジミリ
ストイルホス ファチジルグリセロール8μmol、コレス
テロール82μmol、N−ヒドロキシスクシンイミジル−
3−(2−ピリジルジチオ)プロピネート (SPDP)のホ
スファチジルエタノールアミン誘導体2.0μmolを5mlの
クロロホルムに溶解した後、減圧乾燥した。これにG6PD
H水溶液7.5ml[2,500U/ml、in 10mM Tris/HCl緩衝液(p
H7.8)]を加え混和してリポソームを調製した。得ら
れたリポソーム懸濁液を0.2μmの細孔径を有する膜を通
して整粒した後遠心チューブに移し、4℃、36,000rpm
で遠心してリポソームに内包されなかった酵素を除き、
最後に100mM Tris 緩衝液(pH7.8) に懸濁して、SH
基を保有するリポソーム(SH基感作リポソーム)を得
た。尚、得られたSH基感作リポソームを動的光散乱法
による粒径解析システム(LPA-3000/3100;大塚電子)に
より測定したところ、以下のような個数分布に由来する
データが得られた。 平均粒径(mean) ;204nm。 標準偏差(SD) ; 23。 (mean+2SD)値;250。 蛋白抗原感作リポソームの調製 予め0.01M のN-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エ
タンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH4.5)で透析
処理した2.0mg/ml のC反応性蛋白質(CRP)溶液 1
mlに 0.1mM となるようにSPDPの0.3%エタノール溶
液を添加し、時々攪拌しながら室温で30分間反応させ
た。次いで、反応液をセファデックスG-25カラムで精製
してSPDP化CRPを得た。このSPDP化CRP
に、約50mMとなるようにジチオスレイトール(DTT)を添
加し、室温で30分間反応させた後、セファデックスG-25
カラムで精製してチオール化CRPを得た。これと上記
で得られたSH基感作リポソームとを混合して4℃、
一晩振とう下に反応させた後、4℃、36,000rpmで遠心
処理して未反応のCRPを除き、蛋白抗原感作リポソー
ムを得た。尚、得られた蛋白抗原感作リポソームを動的
光散乱法による粒径解析システム(LPA-3000/3100;大塚
電子)により測定したところ、以下のような個数分布に
由来するデータが得られた。 平均粒径(mean) ;2952nm。 標準偏差(SD) ;1210。 (mean+2SD)値;5372。 (4)抗体固定化蛋白抗原感作リポソームの調製 上記(3)で調製した蛋白抗原感作リポソームと十分量
の抗CRP抗体(ウサギ、日本バイオテスト研究所製。
尚、硫安分画及びDEAEセルロースカラムクロマトグラフ
ィーによりIgG分画に精製して使用した。)とを混和
し、室温で24時間反応させた後、遠心チューブに移し、
4℃、36,000rpmで遠心処理してリポソーム膜上に固定
化されなかった抗体を除いた。最後にリポソームを100m
M Tris/HCl緩衝液(pH7.8)に懸濁して、抗体固定化蛋白
抗原感作リポソームを得た。 (5)リポソームの保存安定性の検討 上記(1)(2)(3)及び(4)で調製した各種リポ
ソームを、夫々脂質濃度が5nmol/mlとなるように100mM
Tris/HCl緩衝液(pH7.8、0.85% NaCl含有)で希釈した
ものを、10℃で所定時間静置保存した後に、これらリポ
ソームの、個数分布に由来する平均粒径(mean)を、動
的光散乱法による粒径解析システム(LPA-3000/3100;大
塚電子)を用いて測定すると共に、目視によるリポソー
ムの沈降の有無について観察を行った。また、24時間静
置保存後の各リポソームのゼータ電位をレーザーゼータ
電位計(LEZA-600;大塚電子)により測定した。これら
の測定結果を表3に示す。尚、比較のために、上記
(1)で得たハプテン感作リポソームと抗ジニトロフェ
ニル抗体を混合した直後からの平均粒径等の変化につい
ても併せて測定を行った。得られた測定結果を、表3に
併せて示す。
【0031】
【表3】 *リポソームNo1:ハプテン感作リポソーム。 *リポソームNo2:ハプテン感作リポソーム + 抗
体。 *リポソームNo3:抗体固定化ハプテン感作リポソー
ム。 *リポソームNo4:SH基感作リポソーム。 *リポソームNo5:蛋白抗原感作リポソーム。 *リポソームNo6:抗体固定化蛋白抗原感作リポソー
ム。 尚、表3中、「−」の記号は、リポソームの沈降が目視
にて観察されたことを示す。
【0032】表3の結果から明かな如く、ハプテン感作
リポソーム(リポソームNo1)やSH基感作リポソーム
(リポソームNo4)等の(mean+2SD)値が500nm以
下のリポソームは、静置保存した場合でも殆ど変化しな
いことが判る。これに対し、ハプテン感作リポソームと
抗ジニトロフェニル抗体とを共存させて静置保存した場
合には、経時的に平均粒径が大きくなる傾向、即ち(me
an+2SD)値が大きくなる傾向が認められ、6時間程
度の保存によりリポソームの沈降も認められた。尚、一
旦沈降が認められたリポソーム溶液は、十分な攪拌を行
っても、数時間で再びリポソームの沈降が認められるこ
とも判った。更に、抗体固定化ハプテン感作リポソー
ム、蛋白抗原感作リポソーム及び抗体固定化蛋白抗原感
作リポソームは、リポソーム膜上にハプテンのみが固定
化されたハプテン感作リポソームやSH基感作リポソー
ムに比べるとその(mean+2SD)値は著しく大きく、
1時間の静置保存により、沈降が認められた。また、抗
体固定化ハプテン感作リポソーム、蛋白抗原感作リポソ
ーム及び抗体固定化蛋白抗原感作リポソームのゼータ電
位は、ハプテン感作リポソームやSH基感作リポソーム
と比べて減少していることが判る。以上の結果より、リ
ポソーム膜上に、抗原抗体反応や共有結合等によって蛋
白を固定化(感作)した場合には、リポソームのゼータ
電位が低下する等の理由によりリポソームの凝集や沈降
が起こり易くなって、その分散性や保存安定性が低下す
ると考えられる。従って、ハプテン感作リポソームと、
そのハプテンに対する抗体とは、補体価測定の反応時ま
で別々の容器で保存することが望ましいと考えられる。
【0033】実施例3.(mean+2SD)値の補体価測
定への影響 (リポソーム溶液)実施例1の(1)と同じ試薬を用い
同様の方法により調製したリポソーム溶液を、0.2μm、
0.4μm又は0.6μmの細孔径を有する膜を通し、最終的な
脂質濃度が5nmol/mlとなるように 50mM Tris/HCl緩衝
液(pH7.8、0.85% NaCl含有。)で希釈したものをリポ
ソーム溶液とした。 (操作法)リポソーム溶液250μlとラット補体溶液(補
体価:33 CH50 U/ml)10μlとを混合し、37℃で5分間
インキュベーションした後、 50mM Tris/HCl緩衝液[pH
7.8、十分量の抗ジニトロフェニル抗体(ヤギ、ICN
社製。尚、硫安分画及びDEAEセルロースカラムクロマト
グラフィーによりIgG分画に精製して使用した。)、
酵素基質(24mM ク゛ルコース-6-リン酸(G6P)、9mM ニコチンアミト゛アテ゛
ニンシ゛ヌクレオチト゛(NAD))及び 0.85% NaCl を含有。]125μl
を加え、更に37℃で5分間反応させた。次いで、G6PDH
の活性値を、1分間あたりの340nmの吸光度変化(△A
1)として測定した。また、ラット補体溶液10μlの代
りに生理的食塩水10μlをリポソーム溶液250μlと混合
し、37℃で5分間インキュベーションした後、50mM Tri
s/HCl緩衝液「pH7.8、十分量の抗ジニトロフェニル抗体
(ヤギ、ICN社製。尚、硫安分画及びDEAEセルロース
カラムクロマトグラフィーによりIgG分画に精製して
使用した。)、酵素基質(24mM ク゛ルコース-6-リン酸(G6P)、9
mM ニコチンアミト゛アテ゛ニンシ゛ヌクレオチト゛(NAD))、 0.85% NaCl 及び
界面活性剤(ジギトニン0.2%)を含有。」125μlを加え
て、更に37℃で5分間反応させて、リポソームからG6PD
Hを完全に遊出させた。遊出したG6PDH の活性値を、1
分間あたりの340nmの吸光度変化(△A2)として測定
し、各種(mean+2SD)値のリポソーム毎の内包酵素
量を求めた。これらの結果を表4に併せて示す。
【0034】
【表4】
【0035】表4の結果から明かな如く、(mean+2S
D)値が500nm以下のリポソームの方が、ΔA1/ΔA
2×100の値が大きいこと、言い換えれば、補体との反
応により検出可能となる酵素量が多いこと、更に言い換
えれば、補体との反応性が高いことが判る。
【0036】実施例4.ジニトロフェニル感作リポソー
ムを用いたヒト補体価の測定 (1)ジニトロフェニル感作リポソーム溶液の調製 実施例1の(1)と同じ試薬を用い同様の方法で調製し
たリポソームを、0.2μmの細孔径を有する膜を通して整
粒した後、脂質濃度が5nmol/mlとなるように50mM Tris
/HCl緩衝液(pH7.8、0.85% NaClを含有。)で希釈した
ものをジニトロフェニル感作リポソーム溶液とした。
尚、得られたジニトロフェニル感作リポソームを動的光
散乱法による粒径解析システム(LPA-3000/3100;大塚電
子)により測定したところ、以下のような個数分布に由
来するデータが得られた。 平均粒径(mean) ;165nm。 標準偏差(SD) ; 39。 (mean+2SD)値;243。 (2)検量線の作製及び補体価未知ヒト血清の測定 補体価既知ラット血清10μlとジニトロフェニル感作リ
ポソーム溶液250μlとを混合し、37℃で5分間インキュ
ベーションした後、50mM Tris/HCl緩衝液「pH7.8、十分
量の抗ジニトロフェニル抗体(ヤギ、ICN社製。尚、
硫安分画及びDEAEセルロースカラムクロマトグラフィー
によりIgG分画に精製して使用した。)、酵素基質(2
4mM ク゛ルコース-6-リン酸(G6P)、9mM ニコチンアミト゛アテ゛ニンシ゛ヌクレオチト゛
(NAD))及び 0.85% NaCl を含有。」125μlを加えて、
更に37℃で5分間反応させた。次いで、G6PDHの活性値
を1分間あたりの340nmの吸光度変化(△A)として測
定した。補体価(CH50 U/ml)とΔAとの関係を表す検
量線を図1に−●−として示す。また、このジニトロフ
ェニル感作リポソーム溶液を10℃で1週間静置保存した
後、その上清を採取し、この上清を用いて上記と同様の
操作により補体価とΔAとの関係を表す検量線を作成し
た。この検量線を・・・・△・・・・として図1に併せて示す。
図1から明かな如く、これら2つの検量線は殆ど一致す
ること、言い換えれば上記ジニトロフェニル感作リポソ
ーム溶液の静置保存安定性が極めて良好であることが判
る。また、上記と同じ試薬類を用い同様の操作により、
補体価未知のヒト血清について補体価を測定したとこ
ろ、従来法による測定値(測定は、メイヤー法1/2.5の
原理に基づく補体価(CH50)測定用の市販キットを用い、
その標準操作法に従って行った。)と良く一致した。こ
の結果を表5に示す。
【0037】
【表5】
【0038】実施例5.フェニトイン感作リポソームを
用いたヒト補体価の測定 (1)フェニトイン感作リポソーム溶液の調製 ジニトロベンゼンのホスファチジルエタノールアミン誘
導体の代りにフェニトインのホスファチジルエタノール
アミン誘導体[自製。尚、合成は、文献(K.Kubotsu,et
al.,Clin.Chem.38(6).808-812,1992)記載の方法に準
じて行った。]1.6μmolを使用した以外は、実施例1の
(1)と同じ試薬を用い同様の方法で調製したリポソー
ムを、0.2μmの細孔径を有する膜を通して整粒した後、
脂質濃度が5nmol/mlとなるように 50mM Tris/HCl緩衝
液(pH7.8、0.85% NaClを含有。)で希釈したものをフ
ェニトイン感作リポソーム溶液とした。尚、得られたフ
ェニトイン感作リポソームを動的光散乱法による粒径解
析システム(LPA-3000/3100;大塚電子)により測定した
ところ、以下のような個数分布に由来するデータが得ら
れた。 平均粒径(mean) ;177nm。 標準偏差(SD) ; 38。 (mean+2SD)値;253。 (2)検量線の作製及び補体価未知ヒト血清の測定 補体価既知ヤギ血清10μlとフェニトイン感作リポソー
ム溶液250μlとを混合し、37℃で5分間インキュベーシ
ョンした後、50mM Tris/HCl緩衝液[pH7.8、十分量の抗
フェニトイン抗体(ウサギ、ケミコン社製。尚、硫安分
画及びDEAEセルロースカラムクロマトグラフィーにより
IgG分画に精製して使用した。)、酵素基質(24mM ク゛
ルコース-6-リン酸(G6P)、9mM ニコチンアミト゛アテ゛ニンシ゛ヌクレオチト゛(NA
D))及び 0.85% NaCl を含有。]125μlを加えて、更に
37℃で5分間反応させた。次いで、G6PDHの活性値を1
分間あたりの340nmの吸光度変化(△A)として測定し
た。補体価(CH50 U/ml)とΔAとの関係を表す検量線
を図2に−●−として示す。また、このフェニトイン感
作リポソーム溶液を10℃で1週間静置保存した後、その
上清を採取し、この上清を用いて上記と同様の操作によ
り補体価とΔAとの関係を表す検量線を作成した。この
検量線を・・・・△・・・・として図2に併せて示す。図1から
明かな如く、これら2つの検量線は殆ど一致すること、
言い換えれば上記フェニトイン感作リポソーム溶液の静
置保存安定性が極めて良好であることが判る。また、上
記と同じ試薬類を用い同様の操作により、補体価未知の
ヒト血清について補体価を測定したところ、従来法によ
る測定値(測定は、メイヤー法1/2.5の原理に基づく補
体価(CH50)測定用の市販キットを用い、その標準操作法
に従って行った。)と良く一致した。この結果を表6に
示す。
【0039】
【表6】
【0040】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明は、従来法に比
較して操作が簡便で、静置保存安定性に優れ、且つ測定
感度の高い補体価測定方法及び試薬を提供するものであ
り、本発明を利用することにより、リポソームを用いた
補体価の測定を自動分析装置を用いて、短時間で且つ精
度・再現性よく実施することができるという効果を奏す
るものであるので、斯業に貢献するところ大なる発明で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例4で得られた、補体価(CH50 U
/ml)と340nmの吸光度変化(△A)との関係を表す検量
線である。
【図2】図2は、実施例5で得られた、補体価(CH50 U
/ml)と340nmの吸光度変化(△A)との関係を表す検量
線である。
【符号の説明】
図1及び2に於いて、−●−は調製直後のリポソーム溶
液を用いて得られた検量線を、・・・・△・・・・はリポソーム
溶液を調製後10℃で1週間静置保存した後、その上清を
採取し、この上清を用いて得られた検量線を夫々示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/544 G01N 33/53 JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部に標識物質を内包し、その膜上にハプ
    テンが固定化されたリポソームであって、その動的光散
    乱法により求めた、個数分布に由来する平均粒径(nm)に
    標準偏差を2倍した値を加えた値が100〜500nmであるリ
    ポソームを使用することを特徴とする補体価測定方法。
  2. 【請求項2】内部に標識物質を内包し、その膜上にハプ
    テンが固定化されたリポソームであって、その動的光散
    乱法により求めた、個数分布に由来する平均粒径(nm)に
    標準偏差を2倍した値を加えた値が100〜500nmであるこ
    とを確認したリポソームを含有する溶液を含んで成る補
    体価測定試薬。
  3. 【請求項3】該リポソーム膜上に固定化されたハプテン
    と反応する抗体を更に含有する、請求項2に記載の補体
    価測定試薬。
  4. 【請求項4】該リポソームと、該リポソーム膜上に固定
    化されたハプテンと反応する抗体とを、反応時まで別々
    の容器で保存する、請求項3に記載の補体価測定試薬。
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