JP3105887B1 - 活性カルシウム多孔体の製造方法 - Google Patents

活性カルシウム多孔体の製造方法

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JP3105887B1 JP11167206A JP16720699A JP3105887B1 JP 3105887 B1 JP3105887 B1 JP 3105887B1 JP 11167206 A JP11167206 A JP 11167206A JP 16720699 A JP16720699 A JP 16720699A JP 3105887 B1 JP3105887 B1 JP 3105887B1
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Abstract

【要約】 【課題】 貝殻を大量に、しかも安価に有効利用する技
術。 【解決手段】 貝殻を乾留することにより得られる活性
カルシウム多孔体であって、酸化カルシウムを主成分と
し炭素を副成分とする層からなる多層構造部と、該多層
構造部の層間および層中に形成された多数の細孔とを有
する構造体であることを特徴とする活性カルシウム多孔
体。活性カルシウム多孔体は主成分が酸化カルシウムで
あるため、多孔体に物理吸着した塩化水素や硫化水素を
無害なカルシウム塩に変換できる。また活性カルシウム
が溶解した水は強アルカリを示すので酸性物質の中和剤
として用いることが出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、貝殻を有効利用
する技術に関するものであり、特に、貝殻から活性カル
シウム多孔体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ホタテ、牡蠣、真珠等の養殖場や
水産加工場から排出される貝殻は、例えば、空気中で焼
いた後、破砕したものを土壌にまいたり、あるいは低床
路盤材として使用したり、さらに粉状に粉砕して飼料に
まぜたりして再利用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、どの方
法も貝殻が有効利用されているとは言えず、処理にコス
トもかかる。また、貝殻は大量に排出されており、かつ
貝殻の大部分が炭酸カルシウムで構成されているため土
になじまない。よって、昔の貝塚のような状態で、積み
上げられた貝殻がそのまま放置されているのが現状であ
る。また、空気中で焼いたものは、貝殻の表面だけが酸
化しており、これを破砕して土壌にまいたとしても、土
壌改良の効果はそれほど期待できない。そして、破砕し
た貝殻の内部はもとの貝殻の成分(主に炭酸カルシウ
ム)のままであるので、放置しておいても土壌になじま
ない。
【0004】このため、貝殻を大量に、しかも安価に有
効利用する技術の出現が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】このため、この発明に係
る発明者は、貝殻が炭酸カルシウムを主成分とする層を
含む層構造を有していること、また、これらの層間には
有機物が介在していることに着目した。そして、貝殻を
空気を遮断した雰囲気中で強く加熱処理(乾留)するこ
とによって、有機物を水と二酸化炭素との熱分解させて
貝殻から除去し、かつ炭酸カルシウムの部分を酸化カル
シウムに変えることに成功した。そして、上記乾留処理
によって残存する物質は、酸化カルシウムを主成分と
し、炭素を副成分とする多層構造部と、有機物の除去さ
れた部分からなる多数の細孔とを有していることが分か
った。よって、この多層構造部と層間および層中に形成
された多数の細孔とを有する構造体を、ここでは活性カ
ルシウム多孔体と称する。
【0006】従って、この発明の活性カルシウム多孔体
の製造方法によれば、貝殻を乾留処理する工程を含み、
この乾留処理する工程中に貝殻に対して水蒸気を用いて
水蒸気賦活を行うことを特徴とする。
【0007】この活性カルシウム多孔体は、酸化カルシ
ウムを主成分とし、炭素を副成分とする多層構造部と多
数の細孔とを有している。この多層構造部および細孔に
よって活性カルシウム多孔体の表面積は非常に大きくな
る。また、副成分である炭素は乾留処理によって活性炭
化している。このため、活性炭と同様の物理吸着性を有
する。すなわち、この多孔体に臭気や有害物質等を物理
吸着させることができる。また、活性カルシウム多孔体
は、主成分が酸化カルシウムであるため、多孔体に物理
吸着した物質によっては、酸化カルシウムと反応して化
学吸着する。例えば、塩化水素や硫化水素等の酸性物質
と反応させることによって、酸性物質を無害なカルシウ
ム塩に変えることができる。そして、活性カルシウム多
孔体の化学吸着がなされた細孔は、化学反応によって細
孔の大きさが広がるため、さらに被吸着面積を大きくす
ることができる。また、活性カルシウム多孔体と水とを
反応させると、水溶性の水酸化カルシウム(Ca(O
H)2 )が生成される。そして、この水酸化カルシウム
が溶解した水は、強アルカリ性を示す。従って、この物
質を酸性物質の中和剤として用いることができる。これ
により、例えば、この活性カルシウム多孔体を粉砕して
粉末状にしたものを酸性化した土壌にまいて土壌を改良
させることができる。また、主成分が酸化カルシウムで
ある活性カルシウム多孔体は、二酸化炭素を吸収する。
よって、例えば、河川や湖沼に活性カルシウム多孔体を
沈めることにより、水中の二酸化炭素の濃度を低下させ
る。そして、これにより、青粉や他の藻類の光合成を抑
制させることができ、これら藻類の発生を抑えることが
できる。よって、藻類の死骸が腐蝕することによるメタ
ンガスの発生を抑えることができる。
【0008】また、この発明の製造方法によって得られ
る活性カルシウム多孔体を吸着剤として用いることがで
きる。
【0009】活性カルシウム多孔体は、主成分を酸化カ
ルシウムとし、副成分を炭素として含む多層構造部と多
数の細孔とで構成されている。このため、臭気や有害物
質を物理吸着させることができる。また、酸化カルシウ
ムと反応する物質との吸着は、化学吸着となる。化学吸
着が起きると、反応した部分の細孔が広がるためにさら
に表面積が大きくなる。これにより、さらなる吸着効果
の増大が図れる。また、化学吸着により生成される物質
はカルシウム塩である。例えば、塩化水素等の酸性物質
と反応して生成される塩化カルシウムは自然界に存在す
る物質であるため、酸性物質を有害でない物質に変える
ことができる。従って、この活性カルシウム多孔体を用
いて構成される吸着剤を使用することにより、環境浄化
を図れるという効果もある。
【0010】また、この発明の製造方法によって得られ
る活性カルシウム多孔体を酸性物質中和剤としても用い
ることができる。
【0011】活性カルシウム多孔体と水とを反応させる
と、水溶性の水酸化カルシウム(Ca(OH)2 )が生
成される。そして、この水酸化カルシウムが溶解した水
は、強アルカリ性を示す。従って、この物質を酸性物質
に対する中和剤として用いることができる。これによ
り、例えば、この活性カルシウム多孔体を粉砕して粉末
状にしたものを酸性化した土壌にまいて土壌を改良させ
ることができる。
【0012】また、活性カルシウム多孔体を製造するに
あたり、貝殻を乾留処理する工程を含んでいる。
【0013】乾留処理により、空気を遮断して貝殻の熱
分解を行うので、貝殻の表面だけでなく、貝殻を構成す
る炭酸カルシウムの層間の有機物まで熱分解することが
できる。この熱分解により有機物中の炭素の一部は活性
炭化して層間および層中に残存する。さらに、炭酸カル
シウムは乾留処理によって酸化カルシウムとなる。これ
により、酸化カルシウムを主成分とし炭素を副成分とす
る多層構造部と、層間の有機物部分が除去されて形成さ
れた多数の細孔とで構成される活性カルシウム多孔体を
製造することができる。また、活性カルシウム多孔体
は、廃棄用の貝殻から乾留処理で容易に製造することが
できるため、大量の貝殻を安価に処理することができ
る。
【0014】また、乾留処理は、貝殻の炭酸カルシウム
が酸化カルシウムとなり、かつ有機物が熱分解するよう
な温度で行われる。この温度として、好ましくは、乾留
処理を行う装置内の貝殻周囲の雰囲気の温度が650〜
900℃となるように加熱するのがよい。
【0015】また、好ましくは、乾留処理中に貝殻に対
して水蒸気賦活を行うのがよい。これにより、製造され
る活性カルシウム多孔体に形成される細孔中には不純物
が除去される。よって、活性カルシウム多孔体の吸着
性、反応性を向上させることができる。
【0016】また、好ましくは、貝殻を乾留処理するこ
とにより残存して得られる活性カルシウム多孔体を吸着
剤として使用するのがよい。
【0017】活性カルシウム多孔体は、微細な孔を多数
有している。このため、物質を吸着する表面積が大き
い。従って、物理的な吸着性が高く、活性炭と同様の吸
着効果が得られる。また、物理吸着した物質が酸化カル
シウムと化学反応する物質である場合には、この化学反
応によってカルシウム塩が生成される。よって、この活
性カルシウム多孔体を、物理吸着と化学吸着との双方の
吸着性を有する吸着剤として使用することができる。ま
た、有害物質を化学吸着することによって、カルシウム
塩が生成されるが、このカルシウム塩は自然界に存在す
る無害な物質であることが多い。また、得られるカルシ
ウム塩が有害なものであっても、固体として生成される
ため、吸着剤が使用される環境からは容易に除去するこ
とができる。従って、活性カルシウム多孔体を吸着剤と
して使用することによって、使用される環境の浄化を促
すことができる。
【0018】また、活性カルシウム多孔体を、酸性物質
を中和するための中和剤として使用することもできる。
主成分が酸化カルシウムである活性カルシウム多孔体
は、水分を含むと(または水分中で)、水酸化カルシウ
ムとなるため強いアルカリ性を示す。従って、例えば、
粉末状にした活性カルシウム多孔体を酸性化した土壌に
まくことによって、土壌を中性の状態に戻す、すなわち
土壌改良を図れる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図を参照してこの発明の実
施の形態につき説明する。なお、各図は発明を理解でき
る程度に各構成成分の形状、大きさおよび配置関係を概
略的に示してあるに過ぎず、したがってこの発明を図示
例に限定するものではない。また、図において、図を分
かり易くするために断面を示すハッチング(斜線)は一
部分を除き省略してある。
【0020】<第1の実施の形態>第1の実施の形態と
して、図1〜図5を参照して、活性カルシウム多孔体の
製造方法の好適な一例につき説明する。
【0021】図1は、この発明の活性カルシウム多孔体
の製造工程を順に示す、概略的なイメージ図である。図
2は、この実施の形態の活性カルシウム多孔体の製造に
用いる乾留炉の概略的な構成図である。図3は、製造コ
ストのより低コスト化を図るための乾留装置の概略的な
構成図である。図4は、600℃の温度で乾留処理を行
って製造した活性カルシウム多孔体(サンプル1)の、
細孔半径分布曲線図である。また、図5は、1000℃
の温度で乾留処理を行って製造した活性カルシウム多孔
体(サンプル2)の細孔半径分布曲線図である。
【0022】ここでは、例えば、ホタテの加工工場から
廃棄物として出されたホタテの貝殻約10kgを用意す
る。図1(A)は、貝殻の一部の断面を示すイメージ図
である。貝殻11は炭酸カルシウムを主成分とする層1
3からなる多層構造部15を有している。また、積層さ
れた各層13の層間には、貝から分泌された有機物17
が介在している。この有機物17は、各層13をつなぐ
接着剤の役目を果たしており、層間を部分的に接着して
いるか、あるいは層間全体にわたって薄い層状に拡がっ
て接着している。
【0023】次に、貝殻11を乾留炉10に入れる(図
1(B))。乾留炉10は、例えば図2に示すような構
造のものを用いる。図2によれば、乾留炉10はステン
レスからなる外窯12と、この外窯12の内側に設けら
れた厚さ100mmの耐熱壁14と、耐熱壁14で囲ま
れた耐熱性ステンレスからなる内窯16とを備えてい
る。この内窯16は、乾留処理時には実質的に密閉状態
となる。乾留すべき貝殻は、この内窯16内に搬入され
る。そして、内窯16の加熱は、内窯16と耐熱壁14
との間の空間18(燃焼空間と称する。)で、バーナー
口20に設置されたバーナー(図示せず。)から燃焼ガ
スを燃焼させることによって行われる。また、内窯16
には、内窯16の中へ通じる第1の配管22(22aお
よび22b)が設けられいて、この第1の配管22は定
量ポンプ24および水タンク26へと通じている。ま
た、内窯16内で発生する生成ガスを内窯16から排出
させて、この生成ガスを、内窯16を加熱する燃料とし
て再利用するための第2の配管28が設けられている。
この第2の配管28によって、生成ガスはバーナー口2
0から燃焼空間18内へと導入される。また、耐熱壁1
4を貫通する排煙手段30が、燃焼空間18から外窯1
2の外側へと設けられている。また、第1および第2の
配管(22および28)はいずれもステンレス製とす
る。
【0024】このような乾留炉10の内窯16内へ貝殻
を入れて、例えばLPガスを用いて乾留処理を行う。加
熱は燃焼空間の温度が850〜1000℃の温度となる
ようにして、4時間行う。これにより、内窯16内の温
度は650〜900℃の温度となる。また、ある程度貝
殻から有機物が除去されて貝殻に多層構造と細孔が形成
された時点で、水タンク26から定量ポンプ24を用い
て内窯16内に水を導入する。これにより、内窯16内
ではこの水が水蒸気となる。そして、この水蒸気により
貝殻の層間の隙間や細孔内を水蒸気賦活することができ
る。乾留処理終了後、内窯16を密閉状態で放冷する。
これにより得られた活性カルシウム多孔体は約9kgで
あった。
【0025】ここで、図1(C)を参照する。図1
(C)は乾留後の貝殻の状態を示すイメージ図である。
図1(C)には、断面のP部分をさらに拡大したP部分
拡大図も合わせて示してある。貝殻11に対して乾留処
理を行うことによって、炭酸カルシウムの多層構造部1
5は酸化カルシウムの多層構造部19へと変化する。ま
た、多層構造部15の層間にあった有機物17は熱分解
されて、一部の炭素は二酸化炭素となり、水素は水蒸気
となって除去される。また、一部の炭素は残存する。除
去された部分は細孔21aとなる。また、乾留処理され
た貝殻11xの層中にも細孔21bが多数形成される。
そして、このような酸化カルシウムを主成分とし、炭素
を副成分として含む多層構造部19と多数の細孔21を
有する物質を、ここでは、活性カルシウム多孔体11x
と称する。この物質は貝殻の形状を保持しているが、こ
の形状のままあるいは破砕したものを、吸着剤や酸性物
質中和剤として用いることが出来る。
【0026】また、乾留処理終了後に、粉砕処理を行っ
ても良い。これにより、貝殻は粉末状となる(図1
(D))。図1(D)はこの粉末状物質11yの拡大図
である。この粉末状物質11yの主成分は酸化カルシウ
ムである。そして、表面には多数の細孔21bが形成さ
れている。このような粉末状物質11yもまた、活性カ
ルシウム多孔体11yと称する。粉末状の活性カルシウ
ム多孔体11yは、酸性化した土壌にまいたり、他の物
質と混合して用いる場合に有用である。他の物質と混合
する例としては、例えば、この粉末状物質を接着性を有
する材料と混合させる。そしてこの混合物を河川の堤防
の表面に塗布することによって、水質浄化を図ることが
出来る。
【0027】なお、この実施の形態では、乾留処理をL
Pガスを用いて行ったがこれに限る必要はない。重油や
他のガスを用いてもよい。ここで、例えば、より製造コ
ストの低減を図るのであれば、図3に示すような乾留装
置を用いるのがよい。図3の装置は、図2と同様の乾留
炉同士を第3の配管32によって連通させてある。ここ
では、連通させた装置(乾留炉)を第1装置34と第2
装置36と称する。第1装置34は、図2で説明したと
同様の貝殻を乾留処理する乾留炉とする。第2装置は、
構造は第1装置と同様とする。ただし、内窯16に入れ
る物質を、塩化ビニールや農業用ビニール等の高分子可
燃性廃棄物とする。そして、これらを熱分解することに
より生成する生成ガス(例えば、メタンガス、プロパン
ガス、ブタンガス等)を、第2装置36の第2の配管2
8xから第3の配管32を通り、これに続く第1装置3
4の第2の配管28から燃焼空間18へと導入する。よ
って、この生成ガスを第1装置34での貝殻の乾留処理
に用いるガスとすることができる。
【0028】また、この実施の形態では、外窯12、内
窯16および配管(22,28,28x,32)をステ
ンレスで構成しているが、この材料に限るものではな
い。耐熱性を有する材料であればよい。特に、内窯16
および配管(22,28,28x,32)は1000℃
程度の温度に対する耐熱性を有していればよい。
【0029】また、この実施の形態では、貝殻をホタテ
の加工工場から入手したが、これに限られるものではな
い。貝殻は、例えば、漁協組合から漁に用いるネットに
付着した貝類(例えばフジツボ、カキ、シジミ、アサリ
等)を用いてもよいし、他の貝の養殖場から廃棄される
貝殻を用いてもよい。
【0030】次に、上述した乾留炉を用いて製造される
活性カルシウム多孔体の表面積および細孔の分布を調べ
る。ここでは、測定装置として、BERSORP28
(日本ベル社製)を用いる。なお、表面積はBET法を
用いて求め、細孔分布はBJH法を用いて求めた。ま
た、サンプルは、600℃の温度(燃焼空間の温度)で
乾留処理を行って得られた活性カルシウム多孔体をサン
プル1とし、1000℃の温度(燃焼空間の温度)で乾
留処理を行って得られた活性カルシウム多孔体をサンプ
ル2とする。
【0031】まず、測定を行う前に、得られた活性カル
シウム多孔体に対して前処理を行う。ここでは、活性カ
ルシウム多孔体を0.5cm角程度の大きさに破砕し
て、この破砕物を約1g測定用セルに採取する。その
後、220℃の温度でかつ真空度1×10-3Torrの
雰囲気中で4時間脱気処理を行う。その後、精秤してお
く。サンプル1の重量は1.0719gであった。
【0032】次に、上記測定装置を用いて測定を行う。
サンプルに吸着質を吸着させて、平衡圧と、その平衡圧
での吸着質の吸着量を測定する。そして、平衡圧と吸着
量とから、最小二乗法によって、BETの等温吸着式か
ら単分子吸着量を算出する。その後、吸着質である窒素
分子の面積から、単分子吸着量をサンプルの表面積に換
算する。
【0033】サンプル1の測定における吸着条件は、吸
着質を窒素(N2 )とし、恒温槽の温度29.2℃、吸
着温度77.0K、基準容積53.06ml、死容積2
9.74ml、飽和蒸気圧766.9Torr、平衡時
間400秒、測定時間6時間51秒であった。
【0034】この結果、サンプル1の1gあたりの表面
積は0.34m2 /gであることが分かった。
【0035】また、サンプル1の細孔分布は、BJH法
を用いて算出した。ここで、図4を参照する。図4は、
算出結果から細孔半径と細孔容積との関係を示した、細
孔半径分布曲線図である。横軸に細孔半径を(nm)と
り、縦軸に細孔容積(mm3/nm・g)をとって示し
てある。これによれば、細孔半径1.7nmにおいて、
細孔容積の第1ピークがある。これは、細孔半径が1.
7nmの細孔の数が一番多いことを示している。そし
て、細孔半径2.5nmにおいて、細孔容積の第2ピー
クがある。また、細孔半径20nm付近まで細孔容積の
値がブロードに拡がっている。
【0036】次に、得られたサンプル1の活性カルシウ
ム多孔体を水中に加えてpHを測定する。pH値は約
9.5であった。これにより、サンプル1では、有機物
の熱分解はなされているが、炭酸カルシウムは部分的に
酸化カルシウムに変化せず残存していることが推定され
る。
【0037】次に、サンプル1と同様にして、サンプル
2に対して測定を行う。サンプル2の活性カルシウム多
孔体に対しても、サンプル1と同様の前処理を行った。
これにより、精秤されたサンプル2の重量は、1.09
42gであった。
【0038】サンプル2の測定における吸着条件は、吸
着質を窒素(N2 )とし、恒温槽の温度29.2℃、吸
着温度77.0K、基準容積53.06ml、死容積2
9.96ml、飽和蒸気圧757.6Torr、平衡時
間400秒、測定時間6時間6分1秒であった。
【0039】この結果、サンプル2の1gあたりの表面
積は0.23m2 /gであることが分かった。
【0040】また、サンプル2の細孔分布をサンプル1
と同様にして算出した。図5は、サンプル2の細孔半径
分布曲線図である。これによれば、細孔半径2.0nm
の位置にピークがあり、細孔半径が20nm付近までブ
ロードな分布が見られる。従って、サンプル2において
は、細孔半径が2.0nmの細孔が多く形成されている
ことが分かる。
【0041】従って、乾留処理によって得られた活性カ
ルシウム多孔体は、多数の細孔が形成されており、これ
により表面積が大きくなっていることが確認できる。
【0042】次に、サンプル2を水に加えて、pH値を
測定したところ、pH値は約14であった。これによ
り、燃焼空間の温度を1000℃(貝殻の周囲の温度は
約800℃となる。)として乾留処理を行うと、貝殻の
炭酸カルシウムが、効率よく酸化カルシウムに変化して
いることが分かった。
【0043】次に、サンプル2の活性カルシウム多孔体
について、成分分析を行った。なお、この分析は、環境
コンサルタント株式会社北網支店で行った。この分析結
果を下記の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】分析結果によれば、燃焼空間の温度を10
00℃にして乾留処理を行うことにより得られた活性カ
ルシウム多孔体には、主成分としてカルシウム(Ca)
が40重量%含まれており、副成分として炭素が11.
86重量%含まれていることが分かる。ここで、カルシ
ウムは詳解肥料分析法4.5.1.2に基づいて分析を
行い、炭素は、リービッヒ法により分析した。また、こ
の分析では、詳解肥料分析法5.6.1によれば、カド
ミウム(Cd)が0.2(mg/kg乾燥)未満、詳解
肥料分析法5.11.1によれば、水銀(Hg)が0.
03(mg/kg乾燥)未満、また、詳解肥料分析法
5.23.2によれば、ヒ素(As)が1(mg/kg
乾燥)未満という結果が得られた。これは、有害物質で
あるCd、HgおよびAsの含有量が定量限界未満であ
ることを示している。よって、これら有害物質はほとん
ど含有されていないことが分かった。
【0046】なお、上記の分析は、肥料としてこの活性
カルシウム多孔体を用いるために行われる分析であるた
め、肥料として用いるのに必要のない環境に対して安全
な成分については分析されていない。よって、上記カル
シウムおよび炭素以外には、窒素や鉄分等が含有されて
いると考えられる。
【0047】<第2の実施の形態>第2の実施の形態と
して、活性カルシウム多孔体の吸着性について説明す
る。
【0048】まず、活性カルシウム多孔体を粉砕して粉
末状にしたものを10g用意する。
【0049】次に、コップ状の透明容器に約100ml
の水を入れ、この水の中にインクを数滴垂らす。インク
の量は、水が着色されることにより透明容器の底部が見
えなくなる程度とする。
【0050】次いで、着色された水中にこの活性カルシ
ウム多孔体の粉末10gを加える。水中に活性カルシウ
ム多孔体を加えた瞬間に、インクの色はかなり薄くなっ
た。
【0051】その後、放置を続けて活性カルシウム多孔
体を加えてから1日間経過した時点での水の色を見る
と、ほとんど透明であった。
【0052】従って、活性カルシウム多孔体は吸着作用
があることが分かる。第1の実施の形態で既に説明した
ように、この活性カルシウム多孔体には、多数の細孔が
形成されており、また炭素が活性炭として含まれてい
る。このため、表面積が増大しており、有害物質や臭気
等を物理吸着させることができる。
【0053】また、ほとんど透明となった上記水を、容
器ごと加熱してみる。インクが活性カルシウム多孔体に
物理吸着でのみ吸着している場合には、加熱によって吸
着されているインクが再び水中に戻る。このため、水は
再びインクの色を呈する。
【0054】しかしながら、加熱を行っても水の色はほ
ぼ透明の状態を保っていた。
【0055】これにより、活性カルシウム多孔体は物理
吸着性だけでなく化学吸着性も有していると考えられ
る。すなわち、物理吸着により活性カルシウム多孔体に
吸着したインクの着色塗料の成分が、酸化カルシウム若
しくは水酸化カルシウムと反応して化学吸着が起こって
いると推察される。
【0056】従って、例えば塩化水素や硫化水素といっ
たカルシウムと反応する有害物質の存在する環境下にこ
の活性カルシウム多孔体を設ける。例えば、この有害物
質を塩化水素とした場合には、活性カルシウム多孔体に
物理吸着した塩化水素は、酸化カルシウムと化学反応を
起こす(この反応を化学吸着と称する。)。この反応に
より水と塩化カルシウムとが生成される。塩化カルシウ
ムは自然界に存在する物質でかつ有害ではない物質であ
る。
【0057】このように、活性カルシウム多孔体を、物
理吸着性および化学吸着性の両方の性質を有する吸着剤
として使用することができる。特に、酸化カルシウム
(水中では一部水酸化カルシウムとなっている。)と化
学反応する物質とは化学吸着させることが出来るため、
有害な反応物質を化学吸着して無害な物質に変えること
もできる。このため、環境浄化に貢献することが期待さ
れている。
【0058】<第3の実施の形態>第3の実施の形態と
して、活性カルシウム多孔体の酸性物質中和剤としての
特性について説明する。
【0059】まず、活性カルシウム多孔体を約0.5c
m角に砕いたものを5g用意する。
【0060】この活性カルシウム多孔体を約55mlの
水に加える。すると、この水はpH値が14程度の強ア
ルカリ性を示す。この水50ccを、pH値が0.5で
ある塩酸中に加える。この混合溶液は瞬時に中和され
て、pH値が6となる。また、混合溶液中には白色沈殿
が生じる。
【0061】そして、この混合溶液を2日間放置する。
2日後の混合溶液のpHを測定したところ、pH値は6
であった。
【0062】活性カルシウム多孔体を水に加えると、酸
化カルシウムと水とが反応して水溶性の水酸化カルシウ
ムが生成される。これにより、水は強アルカリ性を示
す。よって、この水を塩酸中に加えることによって、塩
酸を中和することができる。これは、塩酸に限るもので
はなく硫酸等の他の酸を用いても同様の結果が得られ
る。なお、混合液中に生じた白色沈殿は、水酸化カルシ
ウムと塩酸との中和反応によって生じる中和塩である塩
化カルシウムであると考えられる。この塩化カルシウム
は固体であるため簡単に除去することもできるし、有害
な物質ではないので混合液中に存在していても、なんら
悪影響を及ぼすおそれはない。
【0063】これにより、活性カルシウム多孔体を酸性
物質に対する中和剤として用いて好適である。よって酸
性の土壌に活性カルシウム多孔体をまくことによって土
壌改良を図ることができる。また、酸性の河川や湖沼
に、例えばこの活性カルシウム多孔体をネットに入れて
沈めたりすることによって、水質の浄化を図ることが出
来る。
【0064】また、活性カルシウム多孔体を河川や湖沼
に沈めた場合には、この活性カルシウム多孔体が水中の
酸性成分と反応する作用の他に、水中の二酸化炭素を吸
収する作用もあると考えられる。水中の二酸化炭素を吸
収することによって、青粉や他の藻類の光合成を抑制さ
せることができ、これら藻類の発生を抑えることができ
る。よって、藻類の死骸が腐蝕することによるメタンガ
スの発生をも抑えることが期待されている。
【0065】
【発明の効果】上述した説明から明らかなように、この
発明の活性カルシウム多孔体の製造方法によれば、貝殻
に対して水蒸気賦活を行いながら乾留処理することを特
徴とする。これにより得られる活性カルシウム多孔体
は、酸化カルシウムを主成分とし、炭素を副成分として
含む多層構造部と多数の細孔とを有している。また、副
成分として含有されている炭素は活性炭化している。こ
のような多層構造部および細孔によって活性カルシウム
多孔体の表面積は非常に大きくなる。このため、この多
孔体に臭気や有害物質等を物理吸着させることができ
る。また、活性カルシウム多孔体は、主成分が酸化カル
シウムであるため、多孔体に物理吸着した物質によって
は、酸化カルシウムと反応して化学吸着する。例えば、
塩化水素や硫化水素等の酸性物質と反応させることによ
って、酸性物質を無害なカルシウム塩に変えることがで
きる。そして、活性カルシウム多孔体の化学吸着がなさ
れた細孔は、化学反応によって細孔の大きさが広がるた
め、さらに被吸着面積を大きくすることができる。ま
た、活性カルシウム多孔体と水とを反応させると、水溶
性の水酸化カルシウム(Ca(OH)2 )が生成され
る。そして、この水酸化カルシウムが溶解した水は、強
アルカリ性を示す。従って、この物質を酸性物質の中和
剤として用いることができる。これにより、例えば、こ
の活性カルシウム多孔体を粉砕して粉末状にしたものを
酸性化した土壌にまいて土壌を改良させることができ
る。また、主成分が酸化カルシウムである活性カルシウ
ム多孔体は、二酸化炭素を吸収する。よって、例えば、
河川や湖沼に活性カルシウム多孔体を沈めることによ
り、水中の二酸化炭素の濃度を低下させる。そして、こ
れにより、青粉や他の藻類の光合成を抑制させることが
でき、これら藻類の発生を抑えることができる。よっ
て、藻類の死骸が腐蝕することによるメタンガスの発生
を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は、第1の実施の形態の説明に
供する、活性カルシウム製造工程図であり、概略的なイ
メージ図で示してある。
【図2】第1の実施の形態の説明に供する、乾留炉の概
略的な構成図である。
【図3】第1の実施の形態の説明に供する、乾留装置の
概略的な構成図である。
【図4】サンプル1の細孔半径分布曲線図である。
【図5】サンプル2の細孔半径分布曲線図である。
【符号の説明】
10:乾留炉 11:貝殻 11x:乾留処理された貝殻(活性カルシウム多孔体) 11y:(粉末状の)活性カルシウム多孔体 12:外窯 13:炭酸カルシウムを主成分とする層(各層) 14:耐熱壁 15:(炭酸カルシウムの)多層構造部 16:内窯 17:有機物 18:空間(燃焼空間) 19:酸化カルシウムを主成分とする多層構造部 20:バーナー口 21(21a,21b):細孔 22(22a,22b):第1の配管 24:定量ポンプ 26:水タンク 28:第2の配管 28x:(第2装置の)第2の配管 30:排煙手段 32:第3の配管 34:第1装置 36:第2装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−81552(JP,A) 特開 平8−39719(JP,A) 特開 平7−75526(JP,A) 特開 平9−249416(JP,A) 特開 平6−99020(JP,A) 特開 昭62−128920(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01F 11/02 - 11/06 B01J 20/04 - 20/30 B09B 3/00 - 5/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 貝殻を乾留処理する工程を含み、 該乾留処理する工程中に、前記貝殻に対して水蒸気を用
    いて水蒸気賦活を行うことを特徴とする活性カルシウム
    多孔体の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の活性カルシウム多孔体
    の製造方法において、 前記乾留処理を、貝殻中の炭酸カルシウムを酸化カルシ
    ウムに変え、かつ前記貝殻中の有機物を熱分解する温度
    で行うことを特徴とする活性カルシウム多孔体の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の活性カ
    ルシウム多孔体の製造方法において、 前記乾留処理を、前記貝殻の周囲の雰囲気内の温度が6
    50℃以上900℃以下の範囲内の温度となるようにす
    ることを特徴とする活性カルシウム多孔体の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の活性カルシウム多孔体
    の製造方法において、 前記乾留処理が終了した前記貝殻を粉砕することにより
    粉末状にすることを特徴とする活性カルシウム多孔体の
    製造方法。
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