JP3091758B1 - 油脂分解菌及びそれを用いる油脂含有排水の処理方法 - Google Patents

油脂分解菌及びそれを用いる油脂含有排水の処理方法

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Abstract

【要約】 【課題】 安定した油脂分解活性を有し、安価で管理に
特別な技術を要せず、曝気槽に添加する等通常の排水処
理施設で利用可能な微生物、及び、それを用いた油脂含
有排水の処理方法を提供すること。 【解決手段】 細胞外に分泌されない膜結合型の油脂分
解酵素を産生し、16SリボソームRNA遺伝子が配列
表の配列番号1に記載の部分塩基配列を有するシュード
モナス エスピー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株
(FERM P−17554)又はその突然変異体、該
微生物を用いて油脂含有排水を処理することを特徴とす
る油脂含有排水の処理方法、並びに生物膜を用いる油脂
含有排水の処理方法において、該生物膜を構成する主な
微生物がシュードモナス エスピー(Pseudomonas s
p.) AQ−T5株(FERM P−17554)又は
その突然変異体であることを特徴とする油脂含有排水の
処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油脂分解菌及びそ
れを用いる油脂含有排水の処理方法に関し、詳しくは細
胞外に分泌されず、細胞に固定された状態にある膜結合
型の油脂分解酵素を産生する新規なシュードモナス エ
スピー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株又はその突
然変異体並びに当該微生物を用いて排水中に含まれる油
脂を生物学的に分解、除去する油脂含有排水の処理方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】食品加工工場や外食産業等から発生する
排水中に含まれる動植物性油脂(トリグリセライド)
は、その性状から、これまで自然分離法、加圧浮上分離
法、各種の油吸材を利用した吸着法等の物理化学的方法
により除去されてきた。これらの物理化学的方法のう
ち、凝集剤を併用した加圧浮上分離法は、これまで多く
の処理施設に適用されているが、該方法は、発生する汚
泥の処分や臭気が問題となっている。また、乳化した油
脂を多く含む排水の場合、これらを安定に除去すること
が困難な場合が多い。例えば、活性汚泥を用いる排水処
理方法では、曝気槽中に油脂が流入することが避けられ
ない。活性汚泥に流入した油脂は、ある程度まで分解・
除去されるが、油脂負荷が増えて処理能力をオーバーし
た場合、油脂が活性汚泥のフロックや生物膜表面に付着
して活性汚泥に悪影響を及ぼし、処理効率の低下や処理
排水中のn−ヘキサン抽出物の増加等の問題点が指摘さ
れている。さらに、最近、食品加工工場等では、活性汚
泥処理後の排水を下水道に放流するために、活性汚泥処
理前にn−ヘキサン抽出物を大幅に低下させる等の対策
が求められている。
【0003】上記の物理化学的方法の他に、油脂含有排
水を生物処理する方法も開発されている。例えば、特開
平5−146798号公報には、油脂含有排水にリパー
ゼを添加して排水中の油脂を加水分解した後、生物処理
する方法が記載されている。しかし、リパーゼ自身が可
溶性タンパク質であるため、排水中に含まれる微生物由
来のタンパク質分解酵素により容易に分解され、油脂の
分解効率が低下する等、可溶性リパーゼの低安定性に基
づく問題点がある。しかも、添加したリパーゼは処理水
と共に処理系から流出するため、排水処理を継続させる
ためには、絶えず系にリパーゼを添加する必要があり、
処理費用が高くなるという問題点もある。
【0004】ところで、一般に固定化酵素は安定的に長
期使用が可能である。リパーゼについても固定化すれ
ば、タンパク質分解酵素に対して安定となることが期待
されることから、リパーゼを担体に固定化して、連続使
用することも考えられる。しかしながら、固定化酵素の
価格及び排水処理系での耐久性から判断して、現実の排
水処理への適用は困難を伴うものと認められる。
【0005】また、酵母を用いた食品工場の油分含有排
水の処理方法が報告されている。例えば、千草ら:「用
水と廃水」、37号、320〜326ページ、1995
年;食品産業クリーンエコシステム技術研究組合編:
「微生物利用水処理技術」、137〜159ページ(恒
星社厚生閣出版)が挙げられる。これらの文献に記載の
方法によれば、数種類の糸状性酵母を使用することによ
り、高濃度の油分含有排水に適用可能であり、酵母フロ
ックの沈降性が良好である等の特徴を有するとされてい
る。
【0006】しかし、酵母を用いるため、酸性領域での
酵母培養が必要であること、また、数種の酵母を組み合
わせて処理するため、原水の水質により酵母フローラが
異なることなど、通常の排水処理とは異なる特殊な管理
が求められる問題点がある。
【0007】一方、シュードモナス(Pseudomonas)属細
菌は、環境に広範囲に生息し、種々の有機物分解に関与
している細菌として知られているが、中には油脂分解酵
素を生産する菌種もある。油脂分解酵素生産菌株として
は、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeru
ginosa)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス
Pseudomonas pseudoalkaligenes)、シュードモナス・
アルカリゲネス(Pseudomonas alkaligenes)、シュード
モナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescen
s)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepaci
a)、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi)等が
挙げられる。
【0008】また、環境から分離された油脂分解能を有
するシュードモナス属菌株に関する報告も多い。例え
ば、特開平7−67636号公報には、洗剤配合用とし
て有用なリパーゼを生産するシュードモナス属菌株が記
載されている。また、特開平8−197086号公報に
は、動植物油のみならず鉱物油も含むn−ヘキサン抽出
物を分解するリパーゼを生産するシュードモナス属菌株
が記載されている。さらに、特開平11−47789号
公報には、油脂分解能力が高く、従来の排水処理施設に
適用可能なシュードモナス属菌株が記載されている。ま
た、これらの文献には、該菌株を曝気槽に添加して排水
中の油脂を効率的に処理する方法も開示されている。
【0009】しかしながら、これらの文献に記載の菌株
が生産するリパーゼは、殆どの場合、分泌型リパーゼで
あり、排水処理に適用するには、前記したような問題点
がある。また、各菌株のリパーゼ生産形態及びそれが油
脂分解能に与える影響については、何れの文献にも具体
的な説明がない。そのため、可溶性リパーゼが持つタン
パク質分解酵素に対する不安定性等の問題点は解決され
ていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、油脂含有
排水の処理にあたり、可溶性リパーゼの有する問題点を
解決し、現状の排水処理施設で利用可能な、安価で特別
な技術を要しない油脂含有排水の処理方法に適した微生
物は知られていなかった。本発明は、安定した油脂分解
活性を有し、安価で管理に特別な技術を要せず、曝気槽
に添加する等通常の排水処理施設で利用可能な微生物、
及び、それを用いた油脂含有排水の処理方法を提供する
ことを目的とするものである。
【0011】シュードモナス属細菌の1種であるシュー
ドモナス・アエルギノサは、3種類の油脂分解酵素(細
胞外リパーゼ、細胞外フォスフォリパーゼCおよび膜結
合エステラーゼ)を有することが知られている(Wolfga
ng Stuer, Karl E. Jaeger and Ulrich K. Winkler; Jo
urnal of Bacteriology, 168, p.1070-1074, 1986)。こ
れらの酵素のうち、細胞外リパーゼ、細胞外フォスフォ
リパーゼCは、細菌によって産生された後、細胞外に分
泌されて作用を示す酵素であるのに対し、膜結合エステ
ラーゼは、膜に結合して働く酵素の1種である。従来、
油脂含有排水の処理において注目されていたシュードモ
ナス属細菌由来の酵素は細胞外リパーゼであり、膜結合
エステラーゼのような膜結合型の油脂分解酵素を産生す
る微生物を利用して油脂含有排水を処理する方法につい
ては報告されていなかった。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、油脂含有
排水の処理において、細胞外リパーゼのように細胞外に
分泌されることがなく、膜結合型エステラーゼのように
細胞に固定化された状態にある膜結合型の油脂分解酵素
の酵素活性の安定性に着目し、該膜結合型油脂分解酵素
の高い産生能を有する微生物の利用を図ることについて
検討した。
【0013】まず、土壌等の環境試料から該微生物の探
索、分離を試みた。その結果、膜結合型の油脂分解酵素
を産生し、通常の排水処理施設で安価かつ簡便に利用可
能であって、油脂含有排水の処理に適した新規なシュー
ドモナス属細菌の分離に成功し、本発明を完成するに至
った。
【0014】すなわち、請求項1記載の本発明は、細胞
外に分泌されない膜結合型の油脂分解酵素を有し、16
SリボソームRNA遺伝子が配列表の配列番号1に記載
の部分塩基配列を有するシュードモナス エスピー(Ps
eudomonas sp.) AQ−T5株(FERM P−17
554)又はその突然変異体を提供するものである。請
求項2記載の本発明は、上記シュードモナス エスピー
Pseudomonas sp.) AQ−T5株(FERM P−
17554)又はその突然変異体を用いて油脂含有排水
を処理することを特徴とする油脂含有排水の処理方法を
提供するものである。請求項3記載の本発明は、生物膜
を用いる油脂含有排水の処理方法において、該生物膜を
構成する主な微生物が請求項1記載のシュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株(FER
M P−17554)又はその突然変異体であることを
特徴とする油脂含有排水の処理方法を提供するものであ
る。請求項4記載の本発明は、油脂含有排水を処理する
にあたり、処理系のpHを6.0〜8.5に保つことを
特徴とする請求項2又は3に記載の油脂含有排水の処理
方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明のシュードモナス エスピ
ー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株(FERM P
−17554)(以下、単にAQ−T5株と略記する場
合がある。)は、細胞外に分泌されない膜結合型の油脂
分解酵素を生産する微生物である。本発明者らは、以下
のようにしてAQ−T5株を単離した。まず、膜結合型
の油脂分解酵素を有する微生物を単離すべく、土壌等の
環境試料からスクリーニングを行った。膜結合型の油脂
分解酵素を有する微生物のスクリーニングは、分離源で
ある土壌を適宜希釈し、オリーブ油を炭素源とし、ロー
ダミンBを添加した寒天培地に塗布して培養し、生育し
たコロニーの周囲に黄色〜オレンジ色の蛍光ゾーンを生
成する微生物を採取することにより行った。寒天培地の
組成を以下に例示するが、G. Kouker らの文献(Giesela
Kouker and Karl-Erich Jaeger: Applied and Environ
mental Microbiology, 53, p.211-213, 1987)を参考に
して決定したものである。
【0016】・スクリーニング用寒天培地(pH7.
0)組成 オリーブ油 3% ニュートリエントブロス 0.8% NaCl 0.4% ローダミンB 10ppm 寒天 1%
【0017】採取した菌株を下記組成からなる液体培地
に接種し、30℃で振盪培養した。 ・液体培地(pH7.0)組成 オリーブ油 3% 酵母エキス 0.1% 硫酸アンモニウム 0.5% 硫酸マグネシウム 0.1% りん酸水素二ナトリウム 2.1% りん酸二水素カリウム 1.4%
【0018】培養後、遠心分離を行って菌体を集め、
0.25M りん酸緩衝液(pH7.0)で十分に洗浄
した後、再び同緩衝液に懸濁させた。続いて、U. K. Wi
nklerらのリパーゼ活性測定方法(Ulrich K. Winkler &
Martina Stuckmann; Journalof Bacteriology, 138,
p.663-670, 1979)に従って、油脂分解酵素活性を測定
した。その結果、土壌より分離した本菌株、すなわちシ
ュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.) AQ−
T5株は、高い油脂分解活性を有することが確認され
た。本菌株が産生する油脂分解酵素が膜結合型であるこ
とは、後記実施例に示す如く、油脂分解活性は培養上清
にはなく、菌体自体に存在することから明らかである。
【0019】次に、本発明のシュードモナス エスピー
Pseudomonas sp.) AQ−T5株の菌学的性質につ
いて説明する。なお、菌学的性質の試験及び分類方法
は、長谷川 武ら著「(改訂版)微生物の分類と同定」
学会出版センター発行(1984年)、及びバージイズ
マニュアル オブ ディタミネイティブ バクテリオ
ロジィー(Bergey's Manual of Determinative Bacteri
ology)(1994)の記載に基づいて行った。
【0020】1.形態 (1)細胞の大きさ及び形:幅0.5〜0.7μm、長
さ1.0〜6.0μmの桿菌 (2)運動性:あり (3)鞭毛:極鞭毛(極単毛) (4)グラム染色:陰性
【0021】2.生理学的性質 (1)オキシダーゼ:陽性 (2)カタラーゼ:陽性 (3)ウレアーゼ:陰性 (4)OFテスト:O (5)硝酸塩還元:陽性 (6)脱窒反応:陰性 (7)ゼラチン分解:陰性 (8)デンプン分解:陰性 (9)カゼイン分解:陽性 (10)Tween80分解:陽性
【0022】(11)フォスファターゼ:陰性 (12)リパーゼ:陽性 (13)卵黄反応(レシチナーゼ):陽性 (14)アルギニンデカルボキシラーゼ:陽性 (15)リジンデカルボキシラーゼ:陽性 (16)オルニチンデカルボキシラーゼ:陰性 (17)VPテスト:陰性 (18)インドール生成:陰性 (19)硫化水素生成:陰性 (20)糖からの酸生成の有無:グルコース、フラクト
ース、キシロース、リボースを利用し、酸を生成。アラ
ビノース、マルトース、ラムノース、ラクトース、シュ
ークロース、サリシン、マンニットール、セロビオー
ス、トレハロース、ガラクトース、マンノースは利用で
きない。
【0023】以上の菌学的性質と前記の文献の分類方法
に基づいて検索した結果、グラム陰性桿菌で、極鞭毛を
有すること等から、本菌株はシュードモナス(Pseudomon
as)に属する細菌と同定されたが、菌学的性質が類似し
た既知の菌種は見当たらず、新種である可能性が考えら
れた。
【0024】そこで、2種類の合成オリゴヌクレオチド
プライマー(それぞれの塩基配列は、配列表の配列番号
2及び3参照)を使い、PCR法により、本菌株の16
SリボソームRNA遺伝子を増幅し、該菌体の塩基配列
の解析を実施した。その結果得られた16Sリボソーム
RNA遺伝子の部分配列を配列表の配列番号1に示す。
この部分塩基配列は、本菌株の16SリボソームRNA
遺伝子のうち、原因不明であるが解読できなかった5’
末端から380塩基程度の部分を除いた部分配列を示し
たものである。
【0025】本塩基配列について、DDBJデータベースで
検索した結果、データベースに登録されたシュードモナ
ス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalca
ligenes)の16SリボソームRNA遺伝子の部分塩基
配列に比較的類似していることが分かった。しかし、該
菌株との塩基配列の相同性は約80.6%であることか
ら、本発明者らが分離したAQ−T5株とは全く異なる
菌株であると考えられる。
【0026】以上の知見より、形態や生理学的性質及び
16SリボソームRNA遺伝子塩基配列から、本菌株は
シュードモナス(Pseudomonas)に属する新菌株である
と判断し、シュードモナス エスピー(Pseudomonas s
p.) AQ−T5と命名した。本菌株は、平成11年9
月13日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究
所に寄託されており、その受託番号はFERM P−1
7554である。
【0027】本発明のシュードモナス エスピー(Pseu
domonas sp.) AQ−T5株の培養は、炭素源、窒素
源、りん酸塩等の各種無機塩、ビタミン、アミノ酸等の
栄養源を含む培地を使用して通常の培養方法により培養
することができる。好ましい培養条件としては、炭素源
及び有機窒素源として、酵母エキスやペプトン、トリプ
トン等を、無機塩として、硫酸アンモニウム、りん酸二
水素カリウム、りん酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシ
ウム等を用いて、pH5.0〜10.0、好ましくはp
H6.0〜8.5、培養温度15〜45℃、好ましくは
25〜40℃の条件下での好気培養が挙げられる。
【0028】また、本菌株に膜結合型の油脂分解酵素を
生産させる場合、油脂としてオリーブ油やナタネ油、コ
ーン油等を添加し、有機物として酵母エキス、ペプト
ン、トリプトン等、無機塩として硫酸アンモニウム、硫
酸マグネシウム、りん酸二水素カリウム、りん酸水素二
ナトリウム等を用いた培地で培養することが望ましい。
ここで、有機物として酵母エキスを添加する場合、油脂
濃度に対する酵母エキス濃度の比は、1対0.2以下、
好ましくは1対0.1〜0.025とすることが望まし
い。酵母エキス濃度が高すぎると、菌株は生育するが、
油脂分解酵素の生産量の低下を招くからである。また、
培養温度については40℃以下、好ましくは25〜40
℃が望ましい。培養時間は20〜48時間が適当であ
り、その間はpHを6.5〜8.5、好ましくは6.5
〜7.5にコントロールする。通気培養を行う場合は、
発泡を抑制するために、消泡剤を添加する必要がある
が、消泡剤はシリコン系の消泡剤が有効である。
【0029】本発明のシュードモナス エスピー(Pseu
domonas sp.) AQ−T5株は、細胞外に分泌されな
い膜結合型の油脂分解酵素を生産するので、安定した油
脂分解活性を持続させることができることから、油脂含
有排水の処理に効果的に利用することができる。すなわ
ち、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)
AQ−T5株の菌体自体を排水処理槽に添加することに
より、活性汚泥槽や生物膜槽の中で増殖すると共に、流
入してくる油脂を効率的に分解することができる。
【0030】AQ−T5株を利用した排水処理方法の実
施にあたり、処理形式は特に問わないが、中でも、生物
膜を用いる排水処理法は、膜結合型の油脂分解酵素を有
するシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)
AQ−T5株の特性を生かした好ましい処理方法であ
る。すなわち、生物膜を構成する主な微生物をシュード
モナス エスピー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株
又はその突然変異体とした生物膜を用いることにより、
油脂含有排水を効率よく処理することが可能である。具
体的には例えば、ポリプロピレン製の担体等の浮遊性の
担体に本菌株を吸着させ、通気により担体を流動させて
培養する流動床方式、さらには活性炭のような多孔質担
体に本菌株を吸着させ、カラムに充填し、処理排水を循
環させる固定床方式等がAQ−T5株の特性を生かした
好ましい処理方法である。ここで、シュードモナス エ
スピー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株で油脂含有
排水を処理する場合には、処理系のpHを6.0〜8.
5に保つことにより、処理効率をいっそう高めることが
できる。処理系のpHが6.0を下回ると、処理水中の
n−ヘキサン抽出物質の除去効率が低下し、pHが8.
5を上回ると菌の生育や油脂分解酵素の生産に悪影響を
与える他、pHを上昇させるための薬品が多量に必要と
なり、好ましくない。
【0031】なお、本発明においては、シュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.)AQ−T5株の他に、
本菌株に紫外線照射等の変異処理を施して得られ、同様
の膜結合性の油脂分解酵素を産生する突然変異体も使用
することができる。本発明のシュードモナス エスピー
Pseudomonas sp.) AQ−T5株の油脂分解活性
は、先述のU. K. Winkler らの方法のほか、乳脂肪分測
定法(レーゼ・ゴットリープ法、日本薬学会編:「乳製
品試験法・註解」、p.47〜48、金原出版株式会社)によ
り確認することができる。
【0032】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、
本発明はこれらによって制限されるものではない。 実施例1(シュードモナス エスピー(Pseudomonas s
p.) AQ−T5株の油脂分解活性の確認) 下記組成の培養液50mLを500mL容坂口フラスコ
に分注し、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)
後、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)
AQ−T5株(FERM P−17554)を接種し
て、37℃で24時間振盪培養した。
【0033】・培地組成(pH7.5) オリーブ油 1% 酵母エキス 0.1% 硫酸アンモニウム 0.5% 硫酸マグネシウム 0.1% りん酸水素二ナトリウム 2.1% りん酸二水素カリウム 1.5%
【0034】培養液を遠心分離して培養上清と菌体とに
分け、菌体は50mM りん酸緩衝液(pH7.5)で
3回洗浄後、同緩衝液に懸濁させた。培養上清と菌体懸
濁液の油脂分解活性をU. K. Winklerらの方法により測
定した結果、油脂分解活性は菌体に存在することが確認
された。このことから、AQ−T5株が膜結合型の油脂
分解酵素を有することが確認された。
【0035】実施例2(シュードモナス エスピー(Ps
eudomonas sp.) AQ−T5株の油脂分解活性の測
定) 下記の組成の培養液1,000mLを2L容ミニジャー
培養槽に仕込み、オートクレーブ滅菌(121℃、20
分)後、AQ−T5株(FERM P−17554)を
接種し、培養温度37℃、pH7.5、攪拌速度600
rpm、通気量1vvmの培養条件下、24時間培養し
た。培養終了後の培養液の菌体濃度は10mg/mlで
あった。
【0036】・培地組成(pH7.5) オリーブ油 3% 酵母エキス 0.1% 硫酸アンモニウム 0.5% 硫酸マグネシウム 0.1% りん酸水素二ナトリウム 0.21% りん酸二水素カリウム 0.15%
【0037】培養液を実施例1と同様に操作して得られ
た洗浄菌体の油脂分解活性を実施例1と同様に測定した
結果、77U/mg乾燥菌体(培養液換算:763U/
mL)であった。
【0038】実施例3(固定床方式による排水処理) 実施例2と同様に培養して得られたAQ−T5株の菌体
を活性炭に吸着させた後、カラム(φ30mm×H50
0mm、担体量:200mL)に充填し、処理液(市販
牛乳を純水で350倍に希釈して調製。乳脂肪:100
ppm)800mLを、室温(25〜30℃)、SV5
の条件で循環させた。経時的に処理液をサンプリング
し、乳製品試験法の乳脂肪分測定法(レーゼ・ゴットリ
ープ法)を用いて、処理液の残存乳脂肪量を測定し、当
初の処理液中の乳脂肪量を基に脂肪分解率を算出した。
その結果、脂肪分解率は、6時間後で約30%、24時
間後で約95%であった。このことから、AQ−T5株
の油脂分解活性が固定床方式による排水処理に有用であ
ることが明らかである。
【0039】実施例4(流動床方式による排水処理) 10L容処理槽にポリプロピレン製流動床用固定化担体
(φ10mm×H10mm、筒中プラスチック工業株式
会社製)2Lと市販牛乳の100倍希釈液6.8Lを入
れ、実施例2と同様にして培養して得られたAQ−T5
株(FERMP−17554)の培養液7mLを添加し
て、曝気攪拌下(流動床方式)、25℃で回分式処理を
行った。AQ−T5株が担体に十分付着したことを確認
後、100倍希釈牛乳(n−ヘキサン抽出物質:約30
0ppm)を連続的に注入し、滞留時間4時間で95日
間連続処理を行った。処理後65日経過まではpH無調
整で処理したが、pHが低下する傾向が認められ、それ
に伴いn−ヘキサン抽出物質の除去率が低下したので、
その後はpH7.0〜8.0に調整し、処理を行った。
処理液の装置出口におけるpHおよびn−ヘキサン抽出
物質を経時的に測定した。結果を第1表に示す。
【0040】
【表1】第1表(処理系のpHとn−ヘキサン抽出物質
の除去率との関係)
【0041】本発明による処理液のn−ヘキサン抽出物
質を測定したところ、40〜50ppmであり、n−ヘ
キサン抽出物質の除去率は80%以上であった。連続処
理中にpHが低下して6.0を下回ると、処理性能が低
下する傾向が認められたが、pH調整の結果、徐々にn
−ヘキサン抽出物質の除去率が回復し、88日目には処
理開始当初の状態と同等になった。これらの結果から、
AQ−T5株の油脂分解活性が流動床方式による排水処
理に有用であること、および、処理系のpHを6.0以
上に保持することにより安定した処理を行えることが証
明された。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、膜結合型の油脂分解酵
素を産生する新規な菌株であるシュードモナス エスピ
ー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株が提供される。
シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.) AQ
−T5株が産生する油脂分解酵素は、膜結合型であるた
め、酵素活性が安定している。
【0043】このことから、シュードモナス エスピー
Pseudomonas sp.) AQ−T5株あるいはその突然
変異体を利用した本発明の油脂含有排水の処理方法は、
安定した油脂分解活性を持続することができ、排水中の
油脂を効率よく分解可能である。また、安価で管理に特
別な技術を必要とせず、AQ−T5株あるいはその突然
変異体を利用する他は特別の操作も必要とされず、通常
の排水処理施設が利用可能であるため、簡便、かつ経済
的である。特に、生物膜を用いた排水処理形式とするこ
とにより、排水処理をより一層効率よく行うことができ
る。さらに、処理系のpHを6.0〜8.5の間に調整
することにより、廃水処理の効率をより高めることが可
能である。したがって、本発明は食品加工工場、外食産
業等、油脂含有排水の処理が必要とされる様々な分野に
おいて有用である。
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> AQUAS CORPORATION <120> 油脂分解菌及びそれを用いる油脂含有排水の処理方法 <130> P121095K <150> JP 11/293172 <151> 1999-10-15 <160> 3 <210> 1 <211> 1141 <212> rRNA <213> Pseudomonas sp. AQ-T5 <220> <222> 479 <223> 不明 <220> <222> 560 <223> 不明 <220> <222> 913 <223> 不明 <220> <222> 1093 <223> 不明 <220> <222> 1136 <223> 不明 <400> 1 gaggtgatcc agccatgccg cgtgtgtgaa gaaggtcttc ggattgtaaa gcactttaag 60 ttgggaggaa gggttgtaga ttaatactct gcaattttga cgttaccaac agaataagca 120 ccggctaact tcgtgccagc agccgcggta atacgaaggg tgcaagcgtt aatcggaatt 180 actgggcgta aagcgcgcgt aggtggttcg ttaagttgga tgtgaaagcc ccgggctcaa 240 cctgggaact gcatccaaaa ctggcgagct agagtacggt agagggtagt ggaatttcct 300 gtgtagcggt gaaatgcgta gatataggaa ggaacaccag tggcgaaggc gactacctgg 360 actgatactg acactgaggt gcgaaagcgt ggggagcaaa caggattaga taccctggta 420 gtccacgccg taaacgatgt caactagccg ttggaatcct tgagatttta gtggcgcanc 480 taacgcatta agttgaccgc ctggggagta cggccgcaag gttaaaactc aaatgaattg 540 acgggggccc gcacaagcgn tggagcatgt ggtttaattc gaagcaacgc gaagaacctt 600 acctggcctt gacatgctga gaactttcca gagatggatt ggtgccttcg ggagctcaga 660 cacaggtgct gcatggctgt cgtcagctcg tgtcgtgaga tgttgggtta agtcccgtaa 720 cgagcgcaac ccttgtcctt agttaccagc acgttatggt gggcactcta aggagactgc 780 cggtgacaaa ccggaggaag gtggggatga cgtcaagtca tcatggccct tacggccagg 840 gctacacacg tgctacaatg gtcggtacaa agggttgcca agccgcgagg tggagctaat 900 cccataaaac cgntcgtagt ccggatcgca gtctgcaact cgactgcgtg aagtcggaat 960 cgctagtaat cgtgaatcag aatgtcacgg tgaatacgtt cccgggcctt gtacacaccg 1020 cccgtcacac catgggagtg ggttgctcca gaagtagcta gtctaacctt cggggggacg 1080 gttaccacgg agngattcat gactggggtg aagtcgtaac aaggtagccg tagggnaacc 1140 t 1141 <210> 2 <211> 16 <212> DNA <213> Artifical Sequence <400> 2 agtttgatcc tggctc 16 <210> 3 <211> 17 <212> DNA <213> Artifical Sequence <400> 3 aaggaggtga tccagcc 17
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−47789(JP,A) 特開 昭52−82773(JP,A) 特開 平3−280876(JP,A) Biotechnol.Bioen g.,19(1977),(10),p.1493− 1501 Syst.Appl.Microbi ol.,19(1996),p.478−792 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/20 C02F 3/34 C12N 15/00 Geneseq/DDBJ/JPOna MEDLINE(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞外に分泌されない膜結合型の油脂分
    解酵素を産生し、16SリボソームRNA遺伝子が配列
    表の配列番号1に記載の部分塩基配列を有するシュード
    モナス エスピー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株
    (FERMP−17554)又はその突然変異体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のシュードモナス エスピ
    ー(Pseudomonas sp.) AQ−T5株(FERM P
    −17554)又はその突然変異体を用いて油脂含有排
    水を処理することを特徴とする油脂含有排水の処理方
    法。
  3. 【請求項3】 生物膜を用いる油脂含有排水の処理方法
    において、該生物膜を構成する主な微生物が請求項1記
    載のシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)
    AQ−T5株(FERM P−17554)又はその突
    然変異体であることを特徴とする油脂含有排水の処理方
    法。
  4. 【請求項4】 油脂含有排水を処理するにあたり、処理
    系のpHを6.0〜8.5に保つことを特徴とする請求
    項2又は3に記載の油脂含有排水の処理方法。
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Syst.Appl.Microbiol.,19(1996),p.478−792

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