JP3088786B2 - エリスリトールの晶析法 - Google Patents

エリスリトールの晶析法

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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はエリスリトールの晶析法
に関するものであり、詳しくは、粒径が500〜700
μmであり、結晶性状がグラニュー糖と類似し、結晶硬
度の大きいエリスリトール単結晶を工業的に安定して生
産するための晶析法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エリスリトールは低カロリー甘味剤(甘
さはショ糖に対して約0.8倍)として注目を集めてい
る。エリスリトールの製造法としては、ブドウ糖を原料
として、これを水性培地中でエリスリトール生産菌の存
在下、培養する方法が一般的である。この方法において
は、培養により得られたエリスリトールを含有する培養
液中の菌体を除去した後、これを晶析してエリスリトー
ル結晶を回収する必要がある。
【0003】ところが、通常、培養液中のエリスリトー
ル濃度は極めて低いので、晶析工程での効率を上げるた
めに晶析工程に供給する培養液を濃縮してエリスリトー
ル濃度をできるだけ高めておくのが望ましい。例えば、
80°Cにおけるエリスリトールの水への溶解度は水に
対して約3重量倍であるので、従来、晶析工程に供給す
る培養液中のエリスリトールは水に対して2〜3重量倍
まで濃縮した後、晶析処理されていた。
【0004】しかしながら、この晶析法によれば、生産
性は高いものの析出するエリスリトール結晶は凝集晶と
なりやすい。この凝集晶は機械的強度が弱く、破砕、粉
化しやすいので、しばしば製品の固結を招く。又、例え
ば、卓上甘味料として、グラニュー糖と混合して使用し
た場合、グラニュー糖の粒径は、500〜700μmの
単結晶であるので結晶形状が異り、両者の混合性に問題
を生じる。グラニュー糖と混合した場合、相分離がな
く、外観上も均一なエリスリトール単結晶の製造が望ま
れていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
み、グラニュー糖とほぼ同様な粒径を有するエリスリト
ール結晶を工業的に安定して生産するための方法を提供
することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の目的
を達成すべく種々検討を重ねた結果、公知の培養法によ
って得られたエリスリトール含有培養液を晶析してエリ
スリトール結晶を回収するに当たり、晶析工程に供給す
る前記培養液中のエリスリトールの濃度をある特定の範
囲に調節することにより、粒径が500〜700μmと
大きく、しかも、結晶形状もグラニュー糖と類似するエ
リスリトール単結晶が得られることを見い出し、本発明
に到達した。
【0007】すなわち、本発明の要旨は、ブドウ糖を原
料としてエリスリトール生産菌の存在下、水性培地中、
好気性条件下で培養することにより得た培養液から菌体
を除去したエリスリトール含有溶液を冷却晶析してエリ
スリトール結晶を析出、回収する方法において、晶析供
給液中のエリスリトールを水に対して0.4〜1.5重
量倍の範囲に調節することを特徴とするエリスリトール
の晶析法に存する。
【0008】以下、本発明の内容を詳細に説明する。本
発明においては、エリスリトール含有溶液を冷却晶析す
るものであるが、ここで対象となるエリスリトール含有
溶液としては、ブドウ糖を原料としてエリスリトール生
産菌の存在下、水性培地中、好気性条件下で培養するこ
とにより得た培養液から菌体を除去した溶液である。こ
の培養法によるエリスリトールの製法自体は、例えば、
特開昭63−196298号などにより公知の技術であ
る。この培養法の代表的な条件を例示すれば後記表1の
通りである。
【0009】次に、上述の培養により得られたエリスリ
トール含有培養液を冷却晶析してエリスリトール結晶を
析出させ、これを回収するが、前記培養液中のエリスリ
トールは、通常、水に対して0.1〜0.4重量倍と極
めて低濃度である。従って、晶析の効率を上げるために
前記培養液を濃縮してエリスリトールの濃度を上げる必
要があるが、本発明においては、この際のエリスリトー
ルを水に対して0.4〜1.5重量倍、好ましくは0.
7〜1.2重量倍に調節することを要件とする。すなわ
ち、この濃度が高すぎる場合には、続く晶析工程で、結
晶性状がグラニュー糖と類似するエリスリトールの結晶
を得ることができず、また、あまり濃度が低すぎると、
晶析の効率が悪く工業的に好ましくない。なお、前記培
養液の濃縮は、通常、後記表2の条件で実施される。
【0010】エリスリトール含有培養液の冷却晶析は、
通常、前記溶液を60°C以上、好ましくは65〜90
°Cの温度に加熱した後、該溶液を20°C以下、好ま
しくは15°C以下の温度まで徐々に冷却することによ
り行われる。この晶析における冷却速度は、特に、60
〜40°Cの温度範囲を通過する際に重要であり、例え
ば、3〜6°C/minの範囲に制御するのが望まし
い。
【0011】また、本発明の冷却晶析においては、冷却
過程でエリスリトール結晶を種晶として添加するのが好
ましい。この種晶の添加によって所望性状のエリスリト
ール結晶を安定して得ることができる。この際の種晶の
添加量としては、通常、前記培養液中のエリスリトール
に対して0.005〜0.5重量%、好ましくは0.0
1〜0.2重量%である。この添加量があまり少ない
と、安定して所望の単結晶を得るのが困難となり、逆
に、あまり多いと、得られる結晶の粒径が小さくなるの
で好ましくない。種晶として用いるエリスリトール結晶
は、通常、粒径が50〜100μmと比較的に小さいも
のが好ましい。通常、目標とするエリスリトール結晶を
安定して得るためには種晶の添加時期が重要であり、こ
の添加時期は溶液中のエリスリトール濃度などにより異
なるが、通常、結晶の析出前であって、しかも、晶析溶
液の温度が50〜15°C、好ましくは45〜20°C
の範囲まで冷却された時点が望ましい。
【0012】冷却晶析後の混合物は常法に従って、固液
分離して析出したエリスリトール結晶を分離し、次い
で、この結晶を必要に応じて洗浄した後、乾燥する。こ
のようにして本発明で目標とする良好なエリスリトール
結晶を回収することができる。
【0013】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に具体的に説
明するが、本発明はその要旨を超えない限り実施例の記
載に限定されるものではない。 実施例1〜5及び比較例1〜2 培養法によって得られた後記表3の組成を有する水媒体
よりなる培養液を後記表4に示すエリスリトール濃度と
なるように加熱濃縮処理した後、外部に冷却ジャケット
を備えた1.0リットルの晶析器に85°Cに加熱され
た前記溶液0.8リットルを仕込み、冷却速度3°C/
minで15°Cまで冷却することによりエリスリトー
ルの晶析を行い、次いで、同温度で析出した結晶を濾過
した。
【0014】また、上記晶析においては、冷却の過程で
表4に示したエリスリトール結晶を、飽和濃度より3°
C低い温度で種晶として添加した。このようにして回収
したエリスリトール結晶について、平均粒径を測定する
とともに、結晶の硬度を測定した結果を表4に示す。
尚、表4において晶析溶液中のエリスリトールは水に対
する重量倍で示した。また、硬度の測定法では、測定器
としてテンシロンを使用し、結晶1個に垂直荷重をかけ
て押しつぶすに要した荷重を測定し、20個の測定値の
平均値を硬度とした。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、グラニュー糖とほぼ同
様な粒径を有するエリスリトール結晶を工業的に安定し
て生産することができる。また、本発明で得られるエリ
スリトール結晶は結晶硬度が高く取り扱い性に優れてい
るというメリットも有する。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
フロントページの続き (72)発明者 藤村 孝二 北九州市八幡西区大字藤田2447番地の1 三菱化成株式会社黒崎工場内 (56)参考文献 特開 平1−320987(JP,A) 特開 平1−215293(JP,A) 特開 平2−225431(JP,A) 特開 昭49−118889(JP,A) 特開 平4−335870(JP,A) 特開 昭50−88088(JP,A) 特開 昭62−30731(JP,A) 特開 平3−198744(JP,A) 特公 昭49−20282(JP,B1) 特公 昭37−3546(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 31/24 C07C 29/78 C12P 7/18

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブドウ糖を原料としてエリスリトール
    生産菌の存在下、水性培地中、好気性条件下で培養する
    ことにより得た培養液から菌体を除去したエリスリトー
    ル含有溶液を冷却晶析してエリスリトール結晶を析出、
    回収する方法において、晶析供給液中のエリスリトール
    を水に対して0.4〜1.5重量倍の範囲に調節するこ
    とを特徴とするエリスリトールの晶析法。
  2. 【請求項2】 冷却晶析の途中でエリスリトール結晶
    を種晶として添加し、20°C以下の温度まで冷却した
    後、析出した結晶を分離することを特徴とする請求項1
    記載のエリスリトールの晶析法。
  3. 【請求項3】 晶析供給液中のエリスリトールを水に
    対して0.7〜1.2重量倍の範囲に調節することを特
    徴とする請求項1又は2記載のエリスリトールの晶析
    法。
  4. 【請求項4】 60〜40℃の温度範囲を通過すると
    きの冷却速度を3〜6℃/minの範囲に調節すること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエリスリ
    トールの晶析法。
  5. 【請求項5】 粒径が500〜700μmであること
    を特徴とするエリスリトール結晶。
  6. 【請求項6】 粒径が500〜700μmであり、且
    つ硬度が300〜360g/個であることを特徴とする
    エリスリトール結晶。
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JP4151089B2 (ja) * 1997-10-07 2008-09-17 三菱化学株式会社 高純度エリスリトール結晶の製造方法
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