JP3085830B2 - 輻射熱センサ - Google Patents

輻射熱センサ

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JP3085830B2
JP3085830B2 JP05220941A JP22094193A JP3085830B2 JP 3085830 B2 JP3085830 B2 JP 3085830B2 JP 05220941 A JP05220941 A JP 05220941A JP 22094193 A JP22094193 A JP 22094193A JP 3085830 B2 JP3085830 B2 JP 3085830B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、輻射熱エネルギーを測
定する熱効果型センサに属するもので、特にサーミスタ
ボロメータタイプの輻射熱センサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の輻射熱エネルギーを測定する手段
としては、半導体の光電効果を利用した量子型センサ
と、輻射熱を吸収し温度が上昇することを利用した熱効
果型センサの二種類に分類される。
【0003】前者は、測定精度も高く応答性も良い反
面、測定できる光の波長域が狭いことや常温で使用でき
ないという欠点を有している。それに対して、後者は、
感度、応答性ともに量子型センサより劣るが、構造が簡
単で機械的強度も大きく、広い範囲の光の波長を感知
し、常温での使用も可能である。
【0004】代表的な熱効果型のセンサには、熱電対を
多数直列に接続して起電力を高めた熱電堆(サーモパイ
ル)を用いた熱電堆タイプ、圧電体の焦電効果を利用し
た焦電タイプ、導電率の変化を利用したボロメータタイ
プがある。
【0005】熱電堆タイプは、熱効果型の中でも素子が
複雑であるため高価であるが、放射温度計として実用化
されている物のほとんどがこのタイプである。焦電タイ
プは、素子自身は比較的安価であるが出力を取り出すた
めに、光を断続的に与えるチョッパー機構が必要とな
り、高価になる。サーミスタボロメータタイプは、放熱
を良くするために、サファイア製のブロックを用いたり
光の収束のためにゲルマニウムレンズを用いたりしてお
り、高価な印象があるが、原理そのものはサーミスタと
集光部とがあればよく、潜在的なコストダウンの可能性
を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のサーミスタボロ
メータにおいては、測定用サーミスタを光の集光部に配
置し、補償用サーミスタを測定用サーミスタから離れた
位置に配置している。そうすると、両サーミスタを一箇
所に固定できず、また、センサの時定数を改善するため
の放熱手段も各サーミスタに夫々設けなければならな
い。このため、従来では放熱用のブロックで両サーミス
タを固定していた。しかし、この放熱用のブロックはコ
スト的なネックになっていた。
【0007】また、センサの感度を向上させるためにレ
ンズを用いる場合もあるが、レンズの材料としてシリコ
ンガラスやゲルマニウムレンズを用いる必要があり、こ
れも非常に高価になる。
【0008】さらに、特開平2−201229号公報に
開示されているサーミスタボロメータは、回路的な工夫
を用いて感度を向上させるために、検知部位に金黒等の
光吸収層が形成された同一構造で同一特性を有する四個
のサーミスタ素子でブリッジ回路を構成し、一方の二個
の素子を遮光体により赤外線の入射から遮蔽し、他方の
二個の素子を赤外線の入射を許容するようにしている。
これにより、特性上のバラツキを小さくし、かつ感度の
向上を図っている。
【0009】しかしながら、同一特性を有する四個のサ
ーミスタは、製造工程においては種々のばらつきが発生
するため、品質管理に問題を残す。したがって、歩留ま
り率等を考慮すると、一個当たりの製造コストが高くつ
いていた。しかも、回路的な工夫を施しても出力電圧が
2倍になるだけで熱的条件は変わらないため、サーミス
タの個数が2倍になると体積すなわち熱容量が2倍とな
り、その分時定数が大きくなる。
【0010】また、近年市場に出て来ている石油ファン
ヒータ用のコンフォートセンサや体感センサ等は、サー
ミスタボロメータの補償用サーミスタを取り除いたもの
で、反射鏡の焦点位置の近辺に超小型のサーミスタを配
置して、窓や壁の輻射熱を捕らえるものである。しかし
ながら、このセンサにおいては、反射鏡で集光できる赤
外線の絶対量が限られている上、検出効率を高めるため
にサーミスタを熱的に断熱状態に近い状態にしているた
め、時定数(63.2%変動時間)が100秒という極
めて遅い応答速度となり、真の輻射熱センサとは言えな
い。
【0011】例えば、電子レンジにおける食品温度の測
定等にこのようなセンサを用いると、応答速度が極めて
遅く、しかも反射鏡の反射面から遠い焦点位置にサーミ
スタが保持されているのでマイクロ波の影響を受けてS
/N比が100%を越えてしまう。したがって、電子レ
ンジにおける食品温度の測定等には、このようなセンサ
を使用することができない。
【0012】このように、ボロメータタイプの輻射熱セ
ンサは、サーミスタの原価が安いにもかかわらず、他の
熱電堆タイプや焦電タイプに対して、コストメリットを
打ち出せないのが現状である。
【0013】本発明は、上記に鑑み、低コストで高精度
および高速応答を実現するとともに、電子レンジ等のマ
イクロ波による影響を受けないボロメータタイプの輻射
熱センサを提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明による課題解決手
段は、集光部5を有し、熱感知部にサーミスタを利用す
るサーミスタボロメータタイプの輻射熱センサにおい
て、一方のサーミスタの表面の黒度を高くして測定用サ
ーミスタ1とし、他方のサーミスタの表面の黒度を低く
して補償用サーミスタ2とし、これらを隣接して配置し
たものである。
【0015】そして、測定用サーミスタ1の熱容量を補
償用サーミスタ2の熱容量よりも小さくし、前記測定用
サーミスタ1のリード線3の表面積を前記補償用サーミ
スタ2のリード線4の表面積よりも小とする。
【0016】また、一対のサーミスタ1,2の間に、両
サーミスタ1,2間の熱伝導を抑えるための介在子6が
介在され、介在子6に放熱用リード線7が接続される。
【0017】他の課題解決手段は、一対のサーミスタ1
1,12を輻射以外の熱伝達の条件を同一にするととも
に、熱伝達可能なように熱的に接触させ、サーミスタ1
1,12間の熱伝達における時定数が少なくともセンサ
が必要とする時定数と同程度に設定されたものである。
【0018】そして、一対のサーミスタ11,12を
在物18を介して保持するホルダー13が設けられ、前
記一対のサーミスタ11,12と前記ホルダー13との
間の熱伝達量がサーミスタ11,12間の熱伝達量より
小となるように設定される。
【0019】ここで、集光部が曲率を有する反射鏡19
とされ、該反射鏡19の反射面から焦点Fまでの最短距
離がサーミスタ11,12の全長の2倍以下とされ、一
対のサーミスタ11,12が反射面と焦点との間に配置
される。
【0020】あるいは、集光部が赤外線透過ガラスによ
り構成された集光レンズ60とされ、一対のサーミスタ
11,12が前記集光レンズ60の焦点位置に配置さ
れ、前記一対のサーミスタ11,12の近傍に電気的に
アースされた電極板61が配置される。
【0021】なお、一対のサーミスタ11,12として
他の熱感知素子を使用してもよい。
【0022】
【作用】上記課題解決手段において、集光部5の集光面
を測定用サーミスタ1および補償用サーミスタ2に対面
させ、各サーミスタ1,2に輻射熱を伝える。このと
き、両サーミスタ1,2への熱伝達量は、各サーミスタ
1,2の黒度および伝熱面積に依存するが、測定用サー
ミスタ1の黒度(輻射率)は、補償用サーミスタ2より
も大であるため、輻射による測定用サーミスタ1の熱伝
達量が補償用サーミスタ2の熱伝達量より大となり、各
サーミスタ1,2に蓄積される熱量に差が生じる。
【0023】このように、サーミスタ1,2の表面の黒
度を変えることにより、補償用サーミスタ2への赤外線
の入射を遮蔽しなくても、両サーミスタ1,2の蓄積熱
量を変えることができ、両サーミスタ1,2を隣接配置
できる。したがって、従来のように両サーミスタ1,2
を離間させる場合に比べて、放熱部材等を簡略化でき、
また、製造時において両サーミスタ1,2を単一部品と
して扱うことも可能となる。
【0024】ここで、両サーミスタ1,2においては、
輻射による伝熱の他に、サーミスタ1,2間の熱伝導、
リード線3,4からの放熱、さらに対流による放熱の授
受が行われている。補償用サーミスタ2のリード線4か
らの放熱と、測定用サーミスタ1のリード線3からの放
熱との関係は、両サーミスタ1,2の輻射による伝熱
外の温度変化が均等に行われるような関係にある。輻射
熱による測定用サーミスタ1と補償用サーミスタ2と
度変化を大きくして感度を向上させようとする場合、
測定用サーミスタ1の熱容量を補償用サーミスタ2の熱
容量より小さくする必要がある。したがって、その熱容
量の比率に応じて、測定用サーミスタ1のリード線3か
の放熱を小とする必要がある。
【0025】そこで、熱容量の比率に応じて、測定用サ
ーミスタ1のリード線3の表面積を、補償用サーミスタ
2のリード線4の表面積より小とすることで、測定用サ
ーミスタ1の熱容量を補償用サーミスタ2の熱容量より
小とし、測定用サーミスタ1と補償用サーミスタ2との
輻射熱による温度変化を大きくして、輻射熱センサの感
度を向上させる。
【0026】ここで、両サーミスタ1,2を可及的に近
接させようとした場合、両者の間で熱伝導が問題となる
が、介在子6にて両者間の熱伝導を抑えることができ
る。したがって、輻射熱の測定精度を劣化させずに小型
化が可能となり、また、放熱用の部材も、従来のように
大型のブロック等を使用しなくてもすむ。
【0027】この介在子6に蓄熱した場合でも、放熱用
リード線7からの放熱にてその温度を安定化できる。し
たがって、両サーミスタ1,2への介在子6による温度
変化の悪影響を軽減できる。
【0028】他の課題解決手段において、両サーミスタ
11,12を輻射以外の熱伝達の条件を同一にして熱的
に接触させているため、両サーミスタ11,12の温度
差すなわちセンサの出力はセンサ自身の温度変化にかか
わらず純粋に輻射熱を反映し、センサの時定数は両サー
ミスタ11,12間の熱伝達における時定数に依存す
る。したがって、両サーミスタ11,12間の熱伝達
おける時定数をセンサが必要とする時定数(例えば、2
ないし3秒)と同程度に設定すると、高速応答および高
精度を実現できる。
【0029】ここで、両サーミスタ11,12とホルダ
ー13との間の熱伝達量がサーミスタ11,12間の
伝達量より小であるため、両サーミスタ11,12間の
熱伝 により両サーミスタ11,12の温度差がなくな
るとき、すなわちセンサの出力が元に戻るとき、サーミ
スタ11,12とホルダー13との間の熱伝達が終わっ
ていなくても、両サーミスタ11,12の温度差がなく
なり、見かけ上高速に応答する。したがって、高速応答
をより一層実現できる。
【0030】マイクロ波を発生する電子レンジ等におけ
る被測定物の温度を検知する際、マイクロ波により発生
する電界が反射鏡19の反射面を基点としてサインカー
ブを描いて分布するが、反射鏡19の焦点Fが電界強度
の小さい反射面から近い位置にあるため、サーミスタ1
1,12の配されている反射面と焦点Fの間は電界強度
が小さくなり、マイクロ波の影響を受けにくい安定した
出力を得ることができる。
【0031】また、マイクロ波により発生する電界が電
極板61を基点としてサインカーブを描いて分布する
が、サーミスタ11,12の近傍に電極板61が配置さ
れているため、サーミスタ11,12付近の電界強度が
小さくなり、マイクロ波の影響を受けにくい安定した出
力を得ることができる。
【0032】そして、サーミスタ11,12の代わり
に、白金抵抗素子やダイオード等の熱感知素子を使用す
ることにより、センサを各種用途に幅広く適応できる。
【0033】
【実施例】(第一実施例) 本発明の第一実施例のボロメータタイプの輻射熱センサ
は、図1の如く、互いに隣接された一対のサーミスタ
1,2を備えている。該各サーミスタ1,2は、正特性
(PTC)または負特性(NTC)の一般的なものが使
用されるが、このうち、一方のサーミスタ1は、表面全
体に黒体塗装が施されて測定用サーミスタとされてお
り、また、他方のサーミスタ2は、表面全体に白色塗装
あるいは白色のメッキが施されて零点補償用サーミスタ
2とされている。
【0034】該各サーミスタ1,2は、リード線3,4
を介して夫々電気的に引き回しされている。そして、測
定用サーミスタ1と補償用サーミスタ2との輻射熱によ
る温度変化を大きくして感度を向上させるため、測定用
サーミスタ1の熱容量は、補償用サーミスタ2の熱容量
よりも小さく設定されている。
【0035】ここで、測定用サーミスタ1と補償用サー
ミスタ2との間の熱伝達について考えると、図2に示す
ように、両サーミスタ1,2は輻射による伝熱の他に、
サーミスタ1,2間の熱伝導、リード線3,4からの放
熱、さらに対流による放熱(図示せず)の授受が考えら
れる。
【0036】これらの放熱が輻射による熱の供給量を大
幅に上回ってしまえば、測定用サーミスタ1と補償用サ
ーミスタ2の間の温度差を検知する前に両者の温度が均
一化してしまい輻射熱センサとして用を成さない。
【0037】また、サーミスタ1,2間の伝導率は、
大きすぎると両者の温度差が発生せず感度低下に繋が
り、小さすぎるとセンサとしての反応速度すなわち時定
数が大きくなる。故に、両サーミスタ1,2間の熱伝達
λ0を適度に抑える必要がある。
【0038】一方、輻射による熱量と熱伝導による熱量
の熱流束の方向が逆方向になり熱的に振動してしまうの
を防止する必要がある。このことから、補償用サーミス
タ2のリード線4からの放熱λ2と測定用サーミスタ
1のリード線3からの放熱λ1との関係は、両サーミ
スタ1,2の輻射による伝熱以外の温度変化が均等に行
われるような関係にある必要がある。すなわち、上述の
ように測定用サーミスタ1の熱容量を補償用サーミスタ
2の熱容量より小さくした場合でも、これに関係なく伝
熱による熱の放出量を両サーミスタ1,2について同じ
にする必要がある。
【0039】これらのことを考慮し、本実施例では、測
定用サーミスタ1の熱容量を補償用サーミスタ2の熱容
量より小さくすると同時に、その比率に応じて測定用サ
ーミスタ1のリード線3からの放熱量λ1を小さくして
いる。すなわち、測定用サーミスタ1のリード線3は、
両サーミスタ1,2の熱容量の比率に応じて、補償用サ
ーミスタ2のリード線4よりも細く形成されている。こ
れにより、λ1<λ2,λ1<λ0と設定される。
【0040】また、該両サーミスタ1,2は、輻射熱を
効率よく伝達するため、集光部としての集光用凹面反射
鏡5の焦点位置に配置されている。該集光用凹面反射鏡
5は、図1の如く、矩形ケースの底部に、楕円弧状に湾
曲された金属板が取り付けられたもので、従来の光収束
用ゲルマニウムレンズにくらべて、大幅なコストダウン
を図り得る。
【0041】そして、両サーミスタ1,2の間には、図
2の如く、両サーミスタ1,2間の熱伝導を一定に抑え
るための介在子6が介在されている。この介在子6によ
る熱伝導λ0は、測定用サーミスタ1のリード線3を
介する放熱λ1より大となるよう設定される。この熱
伝導量λ0は、該介在子6の材質や形成幅寸法にて調整
でき、具体的には、例えば両サーミスタ1,2を前記集
光用凹面反射鏡5内に固定する樹脂製の接着等を兼用
すればよい。なお、両サーミスタ1,2について独立し
たインピーダンス測定を可能とするよう、該介在子6
は、電気的絶縁性を有していることが望ましい。ここ
で、両サーミスタ1,2の間の熱伝導λ0を測定用サ
ーミスタ1のリード線3の放熱λ1より大とすること
で、測定用サーミスタ1の放熱λ1を相対的に小さく
でき、測定用サーミスタ1の輻射熱による温度変化を、
補償用サーミスタ2の温度変化より大きくして、輻射熱
センサの感度を向上させることができる。しかも、両サ
ーミスタ1,2を可及的に近接させた場合に、介在子6
にて両者間の熱伝導を抑えることができる。
【0042】また、該介在子6自体が蓄熱してしまう
と、これが両サーミスタ1,2の温度変化に悪影響を与
えてしまう恐れがある。そうすると、両サーミスタ1,
2のインピーダンスに悪影響を与えてしまうことにな
り、正確な輻射熱の測定が困難になる恐れがある。そこ
で、該介在子6に、放熱量がλ3となる放熱用リード線
7を接続することで、介在子6自体の蓄熱を防止してい
る。なお、該介在子6の表面の色は、介在子6の特性が
温度によって変化するわけではないため、中間色(灰
色)が望ましい。
【0043】次に、従来、赤外線の入射を遮蔽する必要
があった補償用サーミスタ2を、本実施例において、両
サーミスタ1,2の表面の黒度を変えるだけで測定用サ
ーミスタ1と隣接することができるのは、次の理由によ
る。
【0044】まず、集光用凹面反射鏡5の集光面を被測
定物に対面させた場合、被測定物から放射される輻射熱
を両サーミスタ1,2が同等量受ける。しかし、各サー
ミスタ1,2の表面の黒度(輻射率)が異なるため、
射の熱伝達量が異なり、各サーミスタ1,2に蓄積され
る熱量が異なってくる。このときの熱伝達の様子を、図
2に基づいて説明する。
【0045】被測定物からはその物体表面の絶対温度T
0の4乗に比例する輻射熱が放射されており、放射エネ
ルギーをE0、被測定物表面の黒度をe0とすると、次の
式であらわされる。
【0046】 E0=4.88×e0×(T0/100)4 (1) 一方、センサ側も各サーミスタ1,2の表面の絶対温度
に比例した輻射熱を放出しており、その放射エネルギー
1,E2は、次の式であらわされる。
【0047】 E1=4.88×e1×(T1/100)4 (2) E2=4.88×e2×(T2/100)4 (3) したがって、両者の熱伝達における伝熱量Q0-1,Q0-2
は、被測定物と測定用サーミスタ1との間の伝熱面積を
0-1、被測定物と補償用サーミスタ2との間の伝熱面
積をA0-2とすると、次の式であらわされる。
【0048】 Q0-1=A0-1(e10−e01) (4) Q0-2=A0-2(e20−e02) (5) ただし、ここでは被測定物からセンサ方向への輻射熱の
移動をプラスとしている。ここで、被測定物およびサー
ミスタ1,2の表面がともに完全黒体であった場合の放
射エネルギーを夫々E0*,E1*,E2*とすると、式
(4),(5)は、次の式であらわされる。
【0049】 Q0-1=A0-101(E0*−E1*) (6) Q0-2=A0-202(E0*−E2*) (7) 測定初期において、測定用サーミスタ1と補償用サーミ
スタ2の温度が同じであれば、完全黒体であった場合の
放射エネルギーは等しいため、E1*=E2*となり、両
サーミスタ1,2への伝熱量は、式(6)および式
(7)の如く、各サーミスタ1,2の黒度を変えるか、
またはその伝熱面積を変えるかして調整できることがわ
かる。
【0050】ここで、伝熱面積を変えるとは、被測定物
からの赤外線の入射を遮蔽するよう補償用サーミスタ2
を配置することであるが、構造的に複雑になり、製造コ
スト拡大の原因となる。
【0051】したがって、測定用サーミスタ1と補償用
サーミスタ2との表面の黒度を変えることにより、伝熱
面積を変えることと同等の効果を得ることが可能にな
る。そうすると、補償用サーミスタ2への赤外線の入射
を遮蔽する必要がなくなり、両サーミスタ1,2を集光
部に隣接して配置することができる。
【0052】上記構成において、集光用凹面反射鏡5の
集光面に、−20℃および+30℃の温度平面を対向さ
せて時間的な出力変動を測定する。なお、センサの駆動
電圧は5V、出力はゲイン100のアンプを通して測定
する。図3に示す測定結果によると、1度あたりおよそ
70mVの出力が得られ、反応速度はおよそ3秒で出力
が安定する。
【0053】このように、測定用サーミスタ1と補償用
サーミスタ2との表面の黒度(輻射率)を変えることに
より、従来のように補償用サーミスタを赤外線領域から
遮蔽する必要がなく、補償用サーミスタ2を測定用サー
ミスタ1に隣接して配置することができ、製造コストの
大幅削減および小型化が可能となる。
【0054】また、測定用サーミスタ1の熱容量を補償
用サーミスタ2の熱容量よりも小さくして、測定用サー
ミスタ1のリード線3を補償用サーミスタ2のリード線
4よりも細くすることにより、輻射による測定用サーミ
スタ1と補償用サーミスタ2との温度変化を大きくし
て、感度を向上させることができる。
【0055】さらに、本実施例のように両サーミスタを
隣接すれば、これを単一の部品(ワンチップ)として扱
うことができ、部品管理や組立作業の面で製造上の労力
削減が可能となる。
【0056】(第二実施例) 第二実施例のボロメータタイプの輻射熱センサは、図
4,5の如く、互いに接触された一対のサーミスタ1
1,12と、集光部であるパラボラ反射鏡19と、前記
サーミスタ11,12およびパラボラ反射鏡19を保持
するホルダー13とを備えている。
【0057】前記サーミスタ11,12は、正特性(P
TC)または負特性(NTC)の一般的なものが使用さ
れるが、このうち、一方のサーミスタ11は、ガラスコ
ーティングされた表面全体に黒体塗装が施されて測定用
サーミスタとされており、また、他方のサーミスタ12
は、ガラスコーティングされたままの状態で補償用サー
ミスタ12とされている。
【0058】そして、サーミスタ11,12は、輻射以
外の熱伝達の条件を同一にして、ガラスコーティングさ
れた表面同士を溶着することにより熱伝達可能なように
熱的に接触され、リード線15,16を介して夫々電気
的に引き回しされている。そして、サーミスタ11,1
2間の溶着部分の面積や厚み等を調整することにより、
サーミスタ11,12間の熱伝導における時定数が少な
くともセンサの時定数(2ないし3秒)と同程度に設定
されている。また、両サーミスタ11,12と前記ホル
ダー13との間の熱伝達量がサーミスタ11,12間の
熱伝達量より小となるよう設定されている。
【0059】また、これら一対のサーミスタ11,12
の外周には、図6の如く、熱伝導率を安定させるための
アルミ箔17が巻き付けられ、該アルミ箔17の周りに
機械的強度を保つためのホルダーチューブ18が取り付
けられている。
【0060】前記ホルダー13は、図7,8,9の如
く、導電体により円柱状に形成されるか、非導電体によ
り円柱状に形成されて表面に導電性材料のメッキが施さ
れ、外形寸法がφ25×30mmとされている。このホ
ルダー13の長手方向の一側には、釣り鐘状の凹部が形
成され、この凹部に前記パラボラ反射鏡19が嵌合固定
されている。該パラボラ反射鏡19とホルダー13と
は、電気的に接続されてアースされている。また、ホル
ダー13の他側には、サーミスタ11,12を反射鏡1
9の焦点位置に保持するためのサーミスタ挿入孔20が
穿設されている。このサーミスタ挿入孔20は、パラボ
ラ反射鏡19の頂部開口に連結されている。なお、図
5,7,8,9中、21はホルダー13を電子レンジ等
の装置に取り付けるための取付用ねじ孔である。
【0061】前記パラボラ反射鏡19は、図4の如く、
曲率半径の小さい放物曲面で構成された反射面を有し、
該反射面から焦点までの距離がサーミスタ11,12の
全長より小とされている。そして、サーミスタ11,1
2が反射面と焦点との間に配置されている。
【0062】ここで、従来の輻射熱センサと本実施例の
輻射熱センサとの違いを説明する。図10は、従来の基
本的な輻射熱センサの原理を説明した図で、中央のビー
カ30が測定用サーミスタに相当し、ビーカ30の下方
の器31がセンサデバイスに相当し、器31の下方の水
面が室温に相当する。したがって、ビーカ30の容量が
測定用サーミスタの熱容量、ビーカ30の水位が測定用
サーミスタの温度、器31の容量がセンサデバイスの熱
容量、器31の水位がセンサデバイスの温度に夫々相当
する。補償用サーミスタはセンサデバイスの温度変化を
検知するものであるから、基本的にはセンサデバイスの
器31の水位を検知しているのと同じである。
【0063】そこで、図10に示すように、被測定物か
らの輻射によって赤外線の雨が降るものとすると、ビー
カ30、器31の夫々の大きさに応じて水位が変化す
る。このときの赤外線の雨の単位時間当たりの雨量は、
被測定物の温度によって変化する。
【0064】そして、ビーカ30に溜まった雨は、ビー
カ30に形成された排水口32から器31に排水され、
器31に溜まった雨は、器31に形成された排水口34
から室内に排水される。このときのビーカ30の排水口
32からの排水された雨は、測定用サーミスタとセンサ
デバイスとの間の熱伝達に相当する。ビーカ30に排水
口32が形成されている理由は、被測定物の温度によっ
て赤外線の雨の単位時間当たりの雨量が変化するのであ
って、一定量の赤外線の雨(熱量)が降るのではないた
め、排水口32が形成されていない(測定用サーミスタ
が断熱されている)と、時間と共にビーカ30の水位が
上昇し、赤外線の雨量を特定できないからである。な
お、器31の水位(補償用サーミスタの検知温度)も上
昇するが、器31の容量(センサデバイスの熱容量)が
ビーカ30の容量(測定用サーミスタの熱容量)に比べ
て十分大きいため、見かけ上水位は変化しない。
【0065】そして、従来の輻射熱センサは、ビーカ3
0の水位と器31の水位との差すなわち測定用サーミス
タの温度とセンサデバイスの温度(補償用サーミスタの
温度)との差を出力としている。この出力値は、ビーカ
30の水位が赤外線の雨に比例した水位まで上昇し終え
てから測定する必要がある。したがって、センサの時定
数は、ビーカ30の容量すなわち測定用サーミスタの熱
容量に依存する。
【0066】また、赤外線の雨が降り止み(センサデバ
イスを被測定物から遮断)、赤外線の雨が降る前の状態
(常温を検知したときのセンサの出力)に戻るまでの時
間は、ビーカ30の排水口32における雨の排水速度に
依存することがわかる。このように、センサの応答速度
は、赤外線による輻射熱伝達量のオーダーから考え
て、通常のサーミスタを用いた場合には極めて長くな
る。
【0067】一方、図11は、本実施例の基本的な輻射
熱センサの原理を説明した図で、中央の二つのビーカ4
0,41が測定用サーミスタ11,補償用サーミスタ1
2に相当し、ビーカ40,41の下方の器42がセンサ
デバイス(ホルダー13)に相当し、器42の下方の水
面が室温に相当する。そして、一方のビーカ41の頭部
には、赤外線の雨を反射させる傘43が取り付けられて
いる。
【0068】また、測定用サーミスタ11と補償用サー
ミスタ12とは熱的に接触させ、時定数で2ないし3秒
熱伝導を与えているが、図11においては、両ビーカ
40,41間を連結する連結管44に相当する。すなわ
ち、両者は常に同じ水位(温度)になるように働く。さ
らに、サーミスタ11,12からセンサデバイスへ熱伝
が行われるが、これは各ビーカ40,41に夫々形成
された排水口45,46に相当する。他の構成は、図1
0に示す構成と同様である。
【0069】そして、本実施例の輻射熱センサが従来の
ものと異なるところは、従来のセンサの出力が測定用サ
ーミスタの温度と補償用サーミスタすなわちセンサデバ
イスの温度との差であるのに対し、本実施例のセンサの
出力が図11に示すようにビーカ40の水位(測定用サ
ーミスタ11の温度)とビーカ41の水位(補償用サー
ミスタ12の温度)との差であるという点である。した
がって、従来の補償用サーミスタがセンサデバイスの温
度を正確に検知しなければならないのに対して、本実施
例の補償用サーミスタ12はセンサデバイスから熱的に
隔離されており、測定用サーミスタ11と輻射以外の熱
伝達の条件が同じとなっている。
【0070】このような条件の下で、赤外線の雨が降っ
てきたとき、単位時間当たりの赤外線の降雨量(赤外線
の照射量)によってビーカ40とビーカ41との水位の
差すなわち測定用サーミスタ11と補償用サーミスタ1
2との温度差が変化する。ここで、ビーカ40,41に
溜まった雨の排水口45,46からの排水量は、ビーカ
40の水位(測定用サーミスタ11の温度)と器42の
水位(センサデバイスの温度)との差、ビーカ41との
水位(補償用サーミスタ12の温度)と器42の水位と
の差によって夫々決定する。したがって、一定の降雨量
の雨が長時間に渡って降り続いて各ビーカ40,41の
水位が上昇しても、各排水口45,46における排水量
の変化は、ビーカ40とビーカ41との水位差には影響
を与えない。これにより、ビーカ40とビーカ41との
水位差は、連結管44の水の移動速度および単位時間当
たりの赤外線の雨の降雨量によってのみ決定する。
【0071】また、赤外線の雨が降り止んだとき(セン
サデバイスを被測定物から遮断したとき)、ビーカ40
とビーカ41の水位差は、連結管44における水の移動
速度に応じて速やかになくなる。このとき、連結管44
における水の移動速度が排水口45,46における排水
速度よりも十分速ければ、器42やビーカ40,41に
一定の水が残っても、ビーカ40,41の水位が速やか
に均一になるため、見かけ上高速に応答することにな
る。
【0072】このように、本実施例の輻射熱センサにお
いては、センサデバイスが赤外線の連続照射により温度
上昇を起こしても、出力は純粋に赤外線の降雨量すなわ
ち輻射のみを反映し、なおかつ連結管44の水の移動速
度すなわち測定用サーミスタ11と補償用サーミスタ1
2との熱的接触に伴う熱伝導と同程度の時定数で輻射熱
に対して反応することができる。
【0073】次に、輻射熱センサの性能は、上述のサー
ミスタの配置,熱的条件の他に、赤外線の集光率にも依
存する。光学的に集光する方法は多数存在するが、その
最も単純なものは放物線の回転体で構成されたいわゆる
パラボラ反射鏡である。
【0074】そして、パラボラ反射鏡の代表的な形状の
うち通常よく使用される形状のものを図12に示す。こ
のパラボラ反射鏡50は、曲率半径が大きいため加工が
容易であり、開口面積を大きく取れるので集光効率がよ
い等の利点がある。そのため、近年登場したコンフォー
トセンサや体感センサ等においては、すべてこの形状の
反射鏡が使用されている。
【0075】しかし、このような形状のパラボラ反射鏡
50を使用したセンサにおいては、反射面からの焦点距
離が遠いため、電子レンジ等のマイクロ波を発生する装
置に使用したとき、マイクロ波の影響を非常によく受け
てしまう。これは、図12に示すような反射面からの電
界強度の分布から明らかなように、マイクロ波により発
生する電界は反射面を基点としてサインカーブを描いて
分布するため、検知素子51が配置されている焦点付近
の電界強度が反射面付近と比べて非常に大きくなるため
である。
【0076】一方、本実施例に適用されているパラボラ
反射鏡19は、図13の如く、曲率半径が小さく、反射
面からの焦点距離が近いため、検知素子S(サーミスタ
11,12)が配置されている焦点付近の電界強度が小
さくなり、マイクロ波の影響を受けにくい。一般には、
反射面から焦点までの最短距離がサーミスタ11,12
の全長の2倍以下であった場合は、焦点付近は電界強度
が小さくマイクロ波の影響を受けにくい。したがって、
加工が比較的難しく開口面積を大きく取れない等の欠点
はあるが、S/N比が圧倒的に改善されて回路に負担が
かからないため、より高精度の輻射熱センサを実現でき
る。
【0077】上記構成において、本実施例の輻射熱セン
サを用いて各種の特性試験を行なう。実験装置として、
図14に示すように、室温24℃〜26℃の実験室に
て、50℃に制御された黒体塗装を施した被測定物Hを
設け、該被測定物Hから20cm離間して被測定物Hと
平行に輻射熱センサSを配置し、その中間点に黒体塗装
を施したシャッター機能を有する遮断板55を配置す
る。このときの輻射熱センサSの検出回路においては、
図15の如く、出力は片側にサーミスタ対を有するブリ
ッジを構成することで取り出しており、ゲイン100の
アンプ56を通して測定する。
【0078】この実験装置を使用して、パラボラ反射鏡
19の材質によるセンサの出力の影響を調べた。24.
5℃の実験室において、50℃の被測定物Hを輻射熱セ
ンサSに対向させ、被測定物Hから赤外線が照射されて
から10秒後に遮断板55を取り去り、25秒後に再び
遮断板55を戻したときのセンサSの出力の変化を記録
する。実験に供した反射鏡19を構成する材料として、
アルミニウム、SUS304、ニッケル、SUS430
が夫々使用されている。
【0079】図16はこのときの実験結果を示し、注目
すべき点は遮断板55を取り去った後のセンサSの出力
の立ち上がりであり、いずれの場合も5秒から7秒で出
力が安定している。これを63.2%変動時間すなわち
時定数で評価するとおよそ3秒となり、サーミスタを用
いた輻射熱センサとしては極めて高速な応答を達成して
いる。また、マイクロ波が発生している場合において
は、反射鏡19において反射面からの焦点距離が近いた
め、両サーミスタ11,12が配置されている焦点付近
の電界強度が小さくなり、マイクロ波の影響を受けにく
い。したがって、S/N比が低く回路に負担がかからな
いため、安定した出力を得ることができる。なお、反射
鏡19を構成する材料によってセンサSの出力幅が変動
するが、いずれを用いても所定の出力を得ることができ
る。
【0080】次に、輻射熱センサSの出力の安定性を確
かめる実験を行った。50℃の被測定物Hを輻射熱セン
サSに対向させ、被測定物Hを100℃まで温度上昇さ
せた後、被測定物Hの温度制御を打ち切って自然冷却さ
せたときの各サーミスタ11,12の温度差と各サーミ
スタ11,12の夫々の温度を記録する。
【0081】図17はこのときの実験結果を示し、被測
定物Hの温度が時間と共に低下しているにもかかわらず
測定用サーミスタ11および補償用サーミスタ12が共
に一定時間経過するまで温度上昇を続けているのがわか
る。これは、センサデバイスの放熱量が赤外線の入射量
よりも下回っているためで、被測定物の温度により赤外
線の絶対量が変化するのではなく、赤外線の単位時間当
たりの照射量が変化するということを裏付けている。
【0082】したがって、従来のサーミスタを用いた輻
射熱センサにおいては、被測定物の温度を検知している
のではなく、被測定物から放出される赤外線を捕らえて
おり、被測定物の温度が同じであっても測定時間は異な
ればセンサの出力が変化してしまう。一方、輻射熱セン
サSにおいては、その出力(測定用サーミスタ11と補
償用サーミスタ12との温度差)が被測定物Hの温度に
追従して変動しているのがわかる。
【0083】図18は横軸を被測定物Hの温度、縦軸を
各サーミスタ11,12の温度差および各サーミスタ1
1,12の温度として図17をプロットし直しており、
測定用サーミスタ11および補償用サーミスタ12の温
度は被測定物Hの温度とは無関係に変化しているにもか
かわらず、両者の温度差は被測定物Hの温度に対して明
確な比例関係にあることがわかる。
【0084】このように、測定用サーミスタ11および
補償用サーミスタ12を輻射以外の熱伝達の条件を同一
にして熱的に接触させているため、両サーミスタ11,
12の温度差すなわちセンサの出力はセンサ自身の温度
変化にかかわらず純粋に輻射熱を反映し、センサの時定
数は両サーミスタ11,12間の熱伝導における時定数
に依存する。そして、両サーミスタ11,12間の熱伝
における時定数がセンサが必要とする2ないし3秒の
時定数と同程度に設定されているため、市販のサーモパ
イル式放射温度計と比べても遜色のない高速応答および
高精度を実現できる。
【0085】また、両サーミスタ11,12とホルダー
13との間の熱伝達量がサーミスタ11,12間の熱伝
達量より小であるため、被測定物からの赤外線の照射が
遮断されて、測定用サーミスタ11の温度と補償用サー
ミスタ12の温度とが均一になるとき、すなわちセンサ
の出力が元に戻るとき、サーミスタ11,12とホルダ
ー13との間の熱伝達が終わっていなくても、両サーミ
スタ11,12の温度差がなくなり、見かけ上高速に応
答する。したがって、高速応答をより一層実現できる。
【0086】さらに、パラボラ反射鏡19における反射
面からの焦点距離が近く、サーミスタ11,12が反射
面と焦点との間に配置されているため、マイクロ波を発
生する電子レンジ等における被測定物の温度を検知する
際、両サーミスタ11,12が配置されている焦点付近
の電界強度が小さくなり、マイクロ波の影響を受けにく
い。したがって、S/N比が低く回路に負担がかからな
いため、安定した出力を得ることができる。
【0087】なお、本発明は、上記実施例に限定される
ものではなく、本発明の範囲内で上記実施例に多くの修
正および変更を加え得ることは勿論である。
【0088】例えば、上記第一実施例では、両サーミス
タ1,2の間の介在子6として、電気的絶縁性を有する
樹脂製の接着剤等を用いていたが、その他にも、エンジ
ニアリングプラスチックやセラミックを用いた小片等を
用いてもよく、または、電気的導通性の高い金属等を用
いて、電源入力用の電極として利用するものであっても
よい。この場合、リード線7が電源入力用の配線とな
り、リード線3,4は出力用配線となる。
【0089】また、上記第一実施例では、両サーミスタ
1,2の間に介在子6を介在させていたが、一般のサー
ミスタ1,2は、センサ組立前の段階で酸化防止、防
水、防湿のためにガラス等の保護体にて保護されている
ことが多いため、保護体のみにて熱伝導を抑えることが
できれば、介在子6を省略して、両サーミスタ1,2の
保護体同士を接触させてもよい。あるいは、両サーミス
タ1,2を単に離間させて配してもよい。
【0090】さらに、上記第一実施例では、測定用サー
ミスタ1の表面全体を黒体塗装していたが、例えば被測
定物に対向する面だけを黒体塗装してもよく、また、例
えば黒体塗装を縞模様として黒色面積を調整すれば、輻
射熱を調整できる。
【0091】さらにまた、上記第一実施例では、集光用
凹面反射鏡5を使用していたが、これに代えて、または
これに加えて、従来と同様の光収束用レンズを用いても
よい。この場合、光収束用レンズを省略することによる
コストメリットはなくなるが、上述のように、両サーミ
スタを隣接(ワンチップ化)することによる製造上の労
力削減が可能となる。
【0092】そして、上記第二実施例では、焦点位置が
反射面から近いパラボラ反射鏡19を使用していたが、
図19に示すように、赤外線透過ガラスにより構成され
た集光レンズ60を使用して、この集光レンズ60の焦
点位置に両サーミスタ11,12を配置し、両サーミス
タ11,12からサーミスタ11,12の全長以内の距
離に電気的にアースされた電極板61を配置することも
可能である。これによると、マイクロ波を発生する電子
レンジ等における被測定物の温度を検知する際、マイク
ロ波により発生する電界が電極板61を基点としてサイ
ンカーブを描いて分布するが、サーミスタ11,12の
近傍に電極板61が配置されているため、サーミスタ1
1,12の配されている付近は電界強度が小さくなり、
マイクロ波の影響を受けずに安定した出力を得ることが
できる。
【0093】また、第二実施例において、両サーミスタ
11,12を熱的に接触させる方法として、ガラスコー
ティングされた表面同士を溶着させることにより行って
いたが、接着剤を使用して熱的に接触させてもよく、し
かも両サーミスタ11,12間の熱伝導における時定数
の設定を接着剤の接着面積や材質等により行ってもよ
い。
【0094】さらに、第一,第二実施例において、サー
ミスタ11,12の代わりに、白金抵抗素子やダイオー
ド等の熱感知素子を使用してもよい。
【0095】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明に
よると、測定用サーミスタと補償用サーミスタとの表面
の黒度(輻射率)を変えることにより、従来のように補
償用サーミスタを赤外線領域から遮蔽する必要がなく、
補償用サーミスタを測定用サーミスタに隣接して配置す
ることが可能となる。そうすると、まず、補償用サーミ
スタを遮蔽する部材を省略できる。また、電気的リード
線を放熱用として兼用できることから、従来のように離
間した両サーミスタから放熱するための大型部材を用い
なくてもよくなる。また、両サーミスタを隣接できるた
め、組立工程等において両サーミスタを略一体のものと
して扱うことが可能となる。これらのことから、製造コ
ストの大幅削減および小型が可能となる。
【0096】そして、各サーミスタの熱容量に応じてリ
ード線の表面積を異ならせることにより、測定用サーミ
スタと補償用サーミスタとの輻射熱による温度変化を大
きくして、感度を向上させることができる。
【0097】また、一対のサーミスタの間に介在子を設
ける場合、介在子に放熱用リード線を接続しているの
で、介在子に蓄熱した場合に放熱用リード線から放熱で
き、その温度を安定化できる。したがって、両サーミス
タへの介在子による温度変化の悪影響を軽減できる。
【0098】ところで、両サーミスタを輻射以外の熱伝
達の条件を同一にして熱的に接触させることにより、両
サーミスタの温度差すなわちセンサの出力はセンサ自身
の温度変化にかかわらず純粋に輻射熱を反映し、センサ
の時定数は両サーミスタ間の熱伝達における時定数に依
存する。したがって、サーミスタ間の熱伝達における時
定数をセンサが必要とする時定数と同程度とすることに
より、サーミスタを使用した輻射熱センサとしては異例
の高速応答および高精度を実現できる。
【0099】このとき、ホルダーに保持された両サーミ
スタでは、両サーミスタとホルダーとの間の熱伝達量
サーミスタ間の熱伝達量より小であるため、被測定物か
らの赤外線の照射が遮断されたとき、サーミスタとホル
ダーとの間の熱伝達が終わっていなくても、両サーミス
タの温度差がなくなり、見かけ上高速に応答する。した
がって、高速応答をより一層実現できる。
【0100】マイクロ波を発生する電子レンジ等におけ
る被測定物の温度を検知する際、反射鏡における反射面
からの焦点距離が近いので、サーミスタが反射面と焦点
との間に配置することにより、両サーミスタが配置され
ている焦点付近の電界強度が小さくなり、マイクロ波の
影響を受けにくい。したがって、S/N比が低く回路に
負担がかからないため、安定した出力を得ることができ
る。
【0101】また、マイクロ波を発生する電子レンジ等
における被測定物の温度を検知する際、サーミスタを集
光レンズの焦点位置に配置して、サーミスタの近傍にア
ースされた電極板を配置しておくことにより、サーミス
タ付近は電界強度が小さくなり、マイクロ波の影響を受
けにくい。したがって、S/N比が低く回路に負担がか
からないため、安定した出力を得ることができる。しか
も、集光面積を大きく取って集光率を向上することがで
きるといった優れた効果がある。
【0102】さらに、サーミスタの代わりに他の熱感知
素子を使用することにより、センサを各種用途に幅広く
適応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例における輻射熱センサの斜
視図
【図2】輻射熱センサの熱伝導説明図
【図3】−20℃および+30℃の温度平面を対向させ
たときの輻射熱センサの時間的な出力変動を示す図
【図4】第二実施例の輻射熱センサの概略構成図
【図5】同じく輻射熱センサの斜視図
【図6】検知素子の分解斜視図
【図7】ホルダーの側面図
【図8】ホルダーの断面図
【図9】ホルダーの平面図
【図10】従来の基本的な輻射熱センサの原理図
【図11】第二実施例の輻射熱センサの原理図
【図12】焦点距離の遠いパラボラ反射鏡における焦点
と電界強度との関係を示す図
【図13】焦点距離の近いパラボラ反射鏡における焦点
と電界強度との関係を示す図
【図14】輻射熱センサの特性試験用の実験装置を示す
斜視図
【図15】輻射熱センサの電気回路図
【図16】反射鏡材料に応じた輻射熱センサの出力変化
を示す図
【図17】被測定物の温度変化に対する各サーミスタの
温度および温度差の時間経過による変化を示す図
【図18】被測定物の温度と各サーミスタの温度および
温度差との関係を示す図
【図19】他の実施例における集光レンズを使用した輻
射熱センサの概略図
【符号の説明】
1,11 測定用サーミスタ 2,12 補償用サーミスタ 3,4 15,16 リード線 5 集光部 6 介在子 7 放熱用リード線 19 反射鏡 60 集光レンズ 61 電極板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01J 5/02 G01J 5/20 G01J 1/02

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 集光部を有し、熱感知部にサーミスタを
    利用するサーミスタボロメータタイプの輻射熱センサに
    おいて、一対のサーミスタが隣接して配置され、一方の
    サーミスタは表面の黒度が高くされて測定用サーミスタ
    とされ、他方のサーミスタは表面の黒度が低くされて補
    償用サーミスタとされ、前記測定用サーミスタの熱容量
    は前記補償用サーミスタの熱容量よりも小とされ、前記
    測定用サーミスタのリード線の表面積は前記補償用サー
    ミスタのリード線の表面積よりも小とされたことを特徴
    とする輻射熱センサ。
  2. 【請求項2】 一対のサーミスタの間に、両サーミスタ
    間の熱伝導を一定に抑えるための介在子が介在され、該
    介在子に放熱用リード線が接続されたことを特徴とする
    請求項1記載の輻射熱センサ。
  3. 【請求項3】 各サーミスタの保護体同士を接触させた
    ことを特徴とする請求項1記載の輻射熱センサ。
  4. 【請求項4】 サーミスタが凹面反射鏡内に固定され、
    該反射鏡の焦点位置に配置されたことを特徴とする請求
    項1、2または3記載の輻射熱センサ。
  5. 【請求項5】 集光部を有し、熱感知部にサーミスタを
    利用するサーミスタボロメータタイプの輻射熱センサに
    おいて、一対のサーミスタが隣接して配置され、一方の
    サーミスタは表面の黒度が高くされて測定用サーミスタ
    とされ、他方のサーミスタは表面の黒度が低くされて補
    償用サーミスタとされ、両サーミスタは、輻射以外の熱
    伝達の条件を同一にして、両者の間で熱伝達可能なよう
    に熱的に接触され、前記集光部が曲率を有する反射鏡と
    され、該反射鏡がホルダーに固定され、該ホルダーに形
    成された挿入孔に前記サーミスタが介在物を介して挿入
    されて保持され、一対のサーミスタが前記集光レンズの
    反射面と焦点との間に配置され、前記サーミスタと前記
    ホルダーとの間の熱伝達量がサーミスタ間の熱伝達量
    り小となるように設定されたことを特徴とする輻射熱セ
    ンサ。
  6. 【請求項6】 射鏡の反射面から焦点までの最短距離
    がサーミスタの全長の2倍以下とされたことを特徴とす
    る請求項5記載の輻射熱センサ。
  7. 【請求項7】 集光部を有し、熱感知部にサーミスタを
    利用するサーミスタボロメータタイプの輻射熱センサに
    おいて、一対のサーミスタが隣接して配置され、一方の
    サーミスタは表面の黒度が高くされて測定用サーミスタ
    とされ、他方のサーミスタは表面の黒度が低くされて補
    償用サーミスタとされ、両サーミスタは、輻射以外の熱
    伝達の条件を同一にして、両者の間で熱伝達可能なよう
    に熱的に接触され、前記集光部が赤外線透過ガラスによ
    り構成された集光レンズとされ、一対のサーミスタが前
    記集光レンズの焦点位置に配置され、前記一対のサーミ
    スタの近傍に電気的にアースされた電極板が配置された
    ことを特徴とする輻射熱センサ。
  8. 【請求項8】 サーミスタ間の熱伝達における時定数が
    少なくともセンサが必要とする時定数と同程度に設定さ
    れたことを特徴とする請求項5、6または7記載の輻射
    熱センサ。
  9. 【請求項9】 サーミスタの代わりに他の熱感知素子を
    使用したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記
    載の輻射熱センサ。
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