JP3079423B2 - 低温用熱電材料の製造方法 - Google Patents
低温用熱電材料の製造方法Info
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- Powder Metallurgy (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低温(77〜20
0°K)で高い性能を発揮するBi−Sb系熱電材料の
製造方法に関し、さらに詳しくは、ペルチェ効果を利用
する電子冷却用モジュールの脚部材料、あるいはゼーベ
ック効果を利用する冷熱(源)発電用モジュールの脚部
材料などに有用な、従来得られなかったp型Bi−Sb
系合金の熱電材料の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】Bi−Sb系合金は低温域で限られた範
囲(例えば4.2°KにおいてBi95Sb5 〜Bi80S
b20)で約0.015eV程度のバンドギャップを有す
るn型半導体となり、これが低温域で優れたペルチェ効
果を発揮することは広く知られている(例えば、特公昭
38−15421号公報参照)。このn型Bi−Sb合
金は、実は真性半導体であり、キャリアとして電子、正
孔ともほぼ同数存在する。しかし、電子の移動度が正孔
の移動度に比べて大きいため、n型伝導となるとされて
いる(例えば、T.AONO及びAIZAWA“Stu
dy on Thermal Gap of Bi−S
b Alloys”Tokyo Denki Uni
v.参照)。 【0003】また、IV族元素Sn,Pbなどを数100
ppm固溶させた単結晶Bi−Sbでは、極低温のいわ
ゆる不純物領域ではp型伝導を示すが、温度上昇と共に
n型へ反転するという報告がある(例えば、W.Yim
及びA.Amith,Solid−State Ele
ctronics,1972,Vol.15,P.11
41〜1165参照)。従って、極低温から室温近傍ま
でp型となるBi−Sb系合金は、単結晶製造を目的と
するブリッジ法やゾーンメルティング法では作製不可能
であり、従って、このようなp型Bi−Sb合金は今だ
発見及び製造されていない。なお、以下の記載では、極
低温から室温までp型となるBi−Sbのみをp型Bi
−Sb合金と呼ぶこととする。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】前記したように、Bi
−Sb合金は低温で高い性能を示す熱電材料として広く
知られているが、n型材料しか作製できなかったため、
電子冷却用モジュールの脚部材料への実用は行なわれて
いないのが現状である。従って、本発明の目的は、極低
温から室温までp型となるBi−Sb合金の製造方法を
提供することにある。本発明の他の目的は、電子冷却用
モジュールの脚部材料、冷熱(源)発電用モジュールの
脚部材料等に有用な、低温、例えば77〜200°Kに
おいて高い性能を発揮するBi−Sb系熱電材料の製造
方法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者の研究によれ
ば、p型Bi−Sb合金を得るためには、以下の組成と
する必要があることが見い出された。 {(Bi100−xSbx)100−yEII y}
100−zEI z ここで、EIはIII族又はIV族元素を示し、EIIはIV
・VI族元素を示し、xは5〜20、yは0〜20、zは
0.05〜10である。但し、上記合金組成を得るに
は、350〜800℃の温度で完全に一液相となってい
る状態から急冷ロール法などを用いて、強制固溶体を作
製する。すなわち、本発明の製造方法に関わるBi−S
b系熱電材料は、Bi−Sb系母合金として真性半導体
となるBi100−xSbx(ここで、x=5〜20)
を採用すると共に、p型ドーパントとしてIII族又はIV
族元素を0.05〜10at%添加し、また、実用に際
して熱電材料の性能を上げるため、必要に応じてIV・VI
族元素を0〜20at%添加するものである。なお、p
型ドーパントとしてIV族元素を添加する場合には、上記
IV・VI族元素を添加する必要性はない。 【0006】上記p型Bi−Sb合金は、本発明におい
ては、溶融状態にあるBi−Sb系合金を非平衡相にな
りうる冷却速度で凝固させることにより得られる。具体
的には、第1図に示すような装置において、溶湯溜4に
Bi−Sb系合金3を装填し、高周波コイル2で加熱
し、Bi−Sb系合金を溶融状態とする。一方、金属製
ロール1(φ200mm、幅20mm程度)を500〜
4000rpmで回転させ、溶湯溜4より不活性ガス圧
(0.5〜4kg/cm2 )により溶湯をロールに噴出
させて冷却凝固させる。なお、急冷ロール法を用いなく
とも、平衡凝固より多量のp型ドーパントを添加できる
急速凝固の方法(例えば急冷粉末)でp型Bi−Sb合
金を作製することは可能であろう。また、上記急冷ロー
ル法においては、製造条件をロール回転数500〜40
00rpm、ガス噴射圧0.5〜4kg/cm2 の範囲
に設定しないと、良質な急冷膜が得られないので、好ま
しくは上記範囲に設定する。 【0007】 【作 用】従来のブリッジマン法やゾーンメルティン
グ法では、p型ドーパントが平衡凝固で固溶される量
(数100ppm程度)しか添加できないが、前記した
本発明によると、平衡凝固量以上のp型ドーパントを添
加することが可能となり、その結果、従来作製不可能で
あったp型Bi−Sb合金が作製可能となる。すなわ
ち、前記従来技術の項で説明したように、IV族元素を平
衡凝固で数100ppm添加されたBi−Sb合金は温
度上昇と共にp型からn型へ反転するが(第4図参
照)、本発明に従ってBi100-x Sbx (x=5〜2
0)の真性半導体にp型ドーパントとしてIII 族又はIV
族元素を0.05〜10at%添加することにより、7
7°K〜室温においてp型伝導を示すBi−Sb合金が
得られる(第2,5〜7図参照)。 【0008】これは、従来の方法によって例えばp型ド
ーパントSnが平衡凝固量以下添加されたBi−Sb合
金の場合、低温ではp型ドーパントSnにより正孔濃度
が電子濃度より高いためp型となるが、温度上昇と共に
正孔と電子の濃度がほぼ等しくなる真性伝導域になるた
め、移動度の大きな電子が伝導を支配し、n型に反転す
るためで(第4図参照)、同様の現象はSn以外のIV族
元素Pbなどでも報告されている(例えば、G.E.S
mith及びR.WOlfe,Journalof a
pplied Physics,Vol.33,841
(1962))。これに対して、本発明のように平衡凝
固量以上の0.05〜10at%のp型ドーパントが添
加された場合、添加されたIII 族元素(Al,Te等)
又はIV族元素(Sn,Pb等)により、室温近傍でも依
然正孔濃度の方が電子濃度より高い状態にあるため、p
型伝導を示すと考えられる。III 族元素はIV族元素の添
加量が0.05at%未満となると室温近傍までp型伝
導を示さなくなり、一方、上記元素の添加量を10at
%より多くすることは実用的に不適当である。(実用的
には、キャリア濃度を1019〜1020程度に制御す
る。) 【0009】また、本発明のp型Bi−Sb合金には、
実用に際し熱電材料の熱伝導度を下げ、性能向上を図る
ために、p型伝導を損なわない範囲でIV・VI族元素を添
加してもよい。当然のこと乍ら、IV・VI族元素は添加し
なくてもよい。IV・VI族元素の添加量は、20at%を
超えるとBi−Sb系合金としての熱電能が損なわれる
ため好ましくない。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、実施例及び比較例を示して
本発明について具体的に説明する。なお、本発明が下記
実施例により何ら限定されるものではないことはもとよ
りである。 【0011】 【実 施 例】 実施例1 Bi88Sb12の組成をもつBi−Sb合金にp型ドーパ
ントとしてSnを1at%添加し、約600℃に加熱
し、均一な液相状態とした(1atm前後のAr雰囲気
中)。この状態より、約1000rpmで回転するCu
製ロールにガス噴射圧約1.0kg/cm2 で溶湯を噴
きつけ、長さ約20mm,巾約2mm、厚さ約30μの
薄膜を作製した。得られた膜のゼーベック定数を測定し
たところ、第2図に示す結果が得られた。 比較例1 Bi88Sb12の組成をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の
方法で作製し、ゼーベック定数を測定したところ、第3
図に示す結果が得られた。 比較例2 実施例1と同じ組成の合金を約600℃で均一な液相状
態とし、ブリッジマン法によって温度勾配約40℃/c
m、凝固速度0.76mm/hrで凝固させ、直径10
mm、長さ150mmのBi−Sb素子を作製した。素
子の中央部のゼーベック定数を測定したところ、第4図
に示す結果が得られた。第2図から明らかなように、実
施例1で作製された合金薄膜((Bi88Sb12)99Sn
1 の組成をもつ溶湯を急冷法で凝固された薄膜)のゼー
ベック定数は、77°K〜室温まで正、すなわちp型伝
導となっている。これに対し、第3図に示されるよう
に、比較例1のBi88Sb12の組成をもつ合金は、77
°K〜室温までゼーベック定数が負、すなわちn型とな
っている。(これは、p型ドーパントを含まないBi
100-x Sbx ,x=5〜20の合金でも同様である。)
一方、比較例2において、(Bi88Sb12)99Sn1 の
組成をもつ溶湯よりブリッジマン法で作製した素子(実
際は、ブリッジマン法で作製すると、Bi88Sb12にS
nは約0.03at%しか固溶しないため(Bi88Sb
12)99Sn1 の組成は作製不可能であり、Bi88Sb12
にSnを0.03at%含む単結晶となる)のゼーベッ
ク定数は、第4図に示すように、温度上昇と共に正から
負へ、すなわちp型からn型へ反転している。 【0012】実施例2 {(Bi88Sb12)95(PbSe)5 }99Ga1 の組成
をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の方法で作製し、ゼー
ベック定数を測定したところ、第5図に示す結果が得ら
れた。 実施例3 {(Bi88Sb12)95(PbTe)5 }99Tl1 の組成
をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の方法で作製し、ゼー
ベック定数を測定したところ、第6図に示す結果が得ら
れた。 実施例4 {(Bi88Sb12)94(PbSe)6 }99Al1 の組成
をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の方法で作製し、ゼー
ベック定数を測定したところ、第7図に示す結果が得ら
れた。 【0013】 【発明の効果】以上のように、本発明の製造方法によれ
ば、Bi−Sb系母合金としての真性半導体となるBi
100−xSbx(x=5〜20)にp型ドーパントと
してのIII族又はIV族元素を0.05〜10at%添加
したBi−Sb系合金が得られ、この合金は、従来作製
できなかった極低温(77°K)から室温近傍までp型
伝導を示すp型Bi−Sb合金である。従って、本発明
の製造方法によるp型Bi−Sb合金を従来のn型Bi
−Sb合金と組み合わせ、電子冷却モジュールの脚部材
料として用いることにより、現在のBiTe系材料を用
いた電子冷却での最大冷却可能温度約−100℃(ma
rlow社製M16030)を一気に−200℃近くま
で下げることが可能となるなど、多大の利点、応用効果
が得られる。
0°K)で高い性能を発揮するBi−Sb系熱電材料の
製造方法に関し、さらに詳しくは、ペルチェ効果を利用
する電子冷却用モジュールの脚部材料、あるいはゼーベ
ック効果を利用する冷熱(源)発電用モジュールの脚部
材料などに有用な、従来得られなかったp型Bi−Sb
系合金の熱電材料の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】Bi−Sb系合金は低温域で限られた範
囲(例えば4.2°KにおいてBi95Sb5 〜Bi80S
b20)で約0.015eV程度のバンドギャップを有す
るn型半導体となり、これが低温域で優れたペルチェ効
果を発揮することは広く知られている(例えば、特公昭
38−15421号公報参照)。このn型Bi−Sb合
金は、実は真性半導体であり、キャリアとして電子、正
孔ともほぼ同数存在する。しかし、電子の移動度が正孔
の移動度に比べて大きいため、n型伝導となるとされて
いる(例えば、T.AONO及びAIZAWA“Stu
dy on Thermal Gap of Bi−S
b Alloys”Tokyo Denki Uni
v.参照)。 【0003】また、IV族元素Sn,Pbなどを数100
ppm固溶させた単結晶Bi−Sbでは、極低温のいわ
ゆる不純物領域ではp型伝導を示すが、温度上昇と共に
n型へ反転するという報告がある(例えば、W.Yim
及びA.Amith,Solid−State Ele
ctronics,1972,Vol.15,P.11
41〜1165参照)。従って、極低温から室温近傍ま
でp型となるBi−Sb系合金は、単結晶製造を目的と
するブリッジ法やゾーンメルティング法では作製不可能
であり、従って、このようなp型Bi−Sb合金は今だ
発見及び製造されていない。なお、以下の記載では、極
低温から室温までp型となるBi−Sbのみをp型Bi
−Sb合金と呼ぶこととする。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】前記したように、Bi
−Sb合金は低温で高い性能を示す熱電材料として広く
知られているが、n型材料しか作製できなかったため、
電子冷却用モジュールの脚部材料への実用は行なわれて
いないのが現状である。従って、本発明の目的は、極低
温から室温までp型となるBi−Sb合金の製造方法を
提供することにある。本発明の他の目的は、電子冷却用
モジュールの脚部材料、冷熱(源)発電用モジュールの
脚部材料等に有用な、低温、例えば77〜200°Kに
おいて高い性能を発揮するBi−Sb系熱電材料の製造
方法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者の研究によれ
ば、p型Bi−Sb合金を得るためには、以下の組成と
する必要があることが見い出された。 {(Bi100−xSbx)100−yEII y}
100−zEI z ここで、EIはIII族又はIV族元素を示し、EIIはIV
・VI族元素を示し、xは5〜20、yは0〜20、zは
0.05〜10である。但し、上記合金組成を得るに
は、350〜800℃の温度で完全に一液相となってい
る状態から急冷ロール法などを用いて、強制固溶体を作
製する。すなわち、本発明の製造方法に関わるBi−S
b系熱電材料は、Bi−Sb系母合金として真性半導体
となるBi100−xSbx(ここで、x=5〜20)
を採用すると共に、p型ドーパントとしてIII族又はIV
族元素を0.05〜10at%添加し、また、実用に際
して熱電材料の性能を上げるため、必要に応じてIV・VI
族元素を0〜20at%添加するものである。なお、p
型ドーパントとしてIV族元素を添加する場合には、上記
IV・VI族元素を添加する必要性はない。 【0006】上記p型Bi−Sb合金は、本発明におい
ては、溶融状態にあるBi−Sb系合金を非平衡相にな
りうる冷却速度で凝固させることにより得られる。具体
的には、第1図に示すような装置において、溶湯溜4に
Bi−Sb系合金3を装填し、高周波コイル2で加熱
し、Bi−Sb系合金を溶融状態とする。一方、金属製
ロール1(φ200mm、幅20mm程度)を500〜
4000rpmで回転させ、溶湯溜4より不活性ガス圧
(0.5〜4kg/cm2 )により溶湯をロールに噴出
させて冷却凝固させる。なお、急冷ロール法を用いなく
とも、平衡凝固より多量のp型ドーパントを添加できる
急速凝固の方法(例えば急冷粉末)でp型Bi−Sb合
金を作製することは可能であろう。また、上記急冷ロー
ル法においては、製造条件をロール回転数500〜40
00rpm、ガス噴射圧0.5〜4kg/cm2 の範囲
に設定しないと、良質な急冷膜が得られないので、好ま
しくは上記範囲に設定する。 【0007】 【作 用】従来のブリッジマン法やゾーンメルティン
グ法では、p型ドーパントが平衡凝固で固溶される量
(数100ppm程度)しか添加できないが、前記した
本発明によると、平衡凝固量以上のp型ドーパントを添
加することが可能となり、その結果、従来作製不可能で
あったp型Bi−Sb合金が作製可能となる。すなわ
ち、前記従来技術の項で説明したように、IV族元素を平
衡凝固で数100ppm添加されたBi−Sb合金は温
度上昇と共にp型からn型へ反転するが(第4図参
照)、本発明に従ってBi100-x Sbx (x=5〜2
0)の真性半導体にp型ドーパントとしてIII 族又はIV
族元素を0.05〜10at%添加することにより、7
7°K〜室温においてp型伝導を示すBi−Sb合金が
得られる(第2,5〜7図参照)。 【0008】これは、従来の方法によって例えばp型ド
ーパントSnが平衡凝固量以下添加されたBi−Sb合
金の場合、低温ではp型ドーパントSnにより正孔濃度
が電子濃度より高いためp型となるが、温度上昇と共に
正孔と電子の濃度がほぼ等しくなる真性伝導域になるた
め、移動度の大きな電子が伝導を支配し、n型に反転す
るためで(第4図参照)、同様の現象はSn以外のIV族
元素Pbなどでも報告されている(例えば、G.E.S
mith及びR.WOlfe,Journalof a
pplied Physics,Vol.33,841
(1962))。これに対して、本発明のように平衡凝
固量以上の0.05〜10at%のp型ドーパントが添
加された場合、添加されたIII 族元素(Al,Te等)
又はIV族元素(Sn,Pb等)により、室温近傍でも依
然正孔濃度の方が電子濃度より高い状態にあるため、p
型伝導を示すと考えられる。III 族元素はIV族元素の添
加量が0.05at%未満となると室温近傍までp型伝
導を示さなくなり、一方、上記元素の添加量を10at
%より多くすることは実用的に不適当である。(実用的
には、キャリア濃度を1019〜1020程度に制御す
る。) 【0009】また、本発明のp型Bi−Sb合金には、
実用に際し熱電材料の熱伝導度を下げ、性能向上を図る
ために、p型伝導を損なわない範囲でIV・VI族元素を添
加してもよい。当然のこと乍ら、IV・VI族元素は添加し
なくてもよい。IV・VI族元素の添加量は、20at%を
超えるとBi−Sb系合金としての熱電能が損なわれる
ため好ましくない。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、実施例及び比較例を示して
本発明について具体的に説明する。なお、本発明が下記
実施例により何ら限定されるものではないことはもとよ
りである。 【0011】 【実 施 例】 実施例1 Bi88Sb12の組成をもつBi−Sb合金にp型ドーパ
ントとしてSnを1at%添加し、約600℃に加熱
し、均一な液相状態とした(1atm前後のAr雰囲気
中)。この状態より、約1000rpmで回転するCu
製ロールにガス噴射圧約1.0kg/cm2 で溶湯を噴
きつけ、長さ約20mm,巾約2mm、厚さ約30μの
薄膜を作製した。得られた膜のゼーベック定数を測定し
たところ、第2図に示す結果が得られた。 比較例1 Bi88Sb12の組成をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の
方法で作製し、ゼーベック定数を測定したところ、第3
図に示す結果が得られた。 比較例2 実施例1と同じ組成の合金を約600℃で均一な液相状
態とし、ブリッジマン法によって温度勾配約40℃/c
m、凝固速度0.76mm/hrで凝固させ、直径10
mm、長さ150mmのBi−Sb素子を作製した。素
子の中央部のゼーベック定数を測定したところ、第4図
に示す結果が得られた。第2図から明らかなように、実
施例1で作製された合金薄膜((Bi88Sb12)99Sn
1 の組成をもつ溶湯を急冷法で凝固された薄膜)のゼー
ベック定数は、77°K〜室温まで正、すなわちp型伝
導となっている。これに対し、第3図に示されるよう
に、比較例1のBi88Sb12の組成をもつ合金は、77
°K〜室温までゼーベック定数が負、すなわちn型とな
っている。(これは、p型ドーパントを含まないBi
100-x Sbx ,x=5〜20の合金でも同様である。)
一方、比較例2において、(Bi88Sb12)99Sn1 の
組成をもつ溶湯よりブリッジマン法で作製した素子(実
際は、ブリッジマン法で作製すると、Bi88Sb12にS
nは約0.03at%しか固溶しないため(Bi88Sb
12)99Sn1 の組成は作製不可能であり、Bi88Sb12
にSnを0.03at%含む単結晶となる)のゼーベッ
ク定数は、第4図に示すように、温度上昇と共に正から
負へ、すなわちp型からn型へ反転している。 【0012】実施例2 {(Bi88Sb12)95(PbSe)5 }99Ga1 の組成
をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の方法で作製し、ゼー
ベック定数を測定したところ、第5図に示す結果が得ら
れた。 実施例3 {(Bi88Sb12)95(PbTe)5 }99Tl1 の組成
をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の方法で作製し、ゼー
ベック定数を測定したところ、第6図に示す結果が得ら
れた。 実施例4 {(Bi88Sb12)94(PbSe)6 }99Al1 の組成
をもつ急冷薄膜を実施例1と同様の方法で作製し、ゼー
ベック定数を測定したところ、第7図に示す結果が得ら
れた。 【0013】 【発明の効果】以上のように、本発明の製造方法によれ
ば、Bi−Sb系母合金としての真性半導体となるBi
100−xSbx(x=5〜20)にp型ドーパントと
してのIII族又はIV族元素を0.05〜10at%添加
したBi−Sb系合金が得られ、この合金は、従来作製
できなかった極低温(77°K)から室温近傍までp型
伝導を示すp型Bi−Sb合金である。従って、本発明
の製造方法によるp型Bi−Sb合金を従来のn型Bi
−Sb合金と組み合わせ、電子冷却モジュールの脚部材
料として用いることにより、現在のBiTe系材料を用
いた電子冷却での最大冷却可能温度約−100℃(ma
rlow社製M16030)を一気に−200℃近くま
で下げることが可能となるなど、多大の利点、応用効果
が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する装置の一実施例を示す概略構
成図である。 【図2】本発明の実施例1で得られたp型Bi−Sb合
金薄膜のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図であ
る。 【図3】比較例1で得られた従来のn型Bi−Sb合金
薄膜のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図であ
る。 【図4】ブリッジマン法で作製されたBi−Sb素子の
ゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【図5】実施例2で作製されたp型Bi−Sb合金薄膜
のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【図6】実施例3で作製されたp型Bi−Sb合金薄膜
のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【図7】実施例4で作製されたp型Bi−Sb合金薄膜
のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【符号の説明】 1…金属製ロール 2…高周波コイル 3…Bi−Sb系合金 4…溶湯溜
成図である。 【図2】本発明の実施例1で得られたp型Bi−Sb合
金薄膜のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図であ
る。 【図3】比較例1で得られた従来のn型Bi−Sb合金
薄膜のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図であ
る。 【図4】ブリッジマン法で作製されたBi−Sb素子の
ゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【図5】実施例2で作製されたp型Bi−Sb合金薄膜
のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【図6】実施例3で作製されたp型Bi−Sb合金薄膜
のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【図7】実施例4で作製されたp型Bi−Sb合金薄膜
のゼーベック定数の温度変化を示すグラフ図である。 【符号の説明】 1…金属製ロール 2…高周波コイル 3…Bi−Sb系合金 4…溶湯溜
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
C22F 1/00 692 C22F 1/00 692Z
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C22C 12/00
C22F 1/00,1/16
H01L 35/15
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.平衡凝固より多量のドーパントを添加した溶融状体
にある{(Bi 100−x Sb x )
100−y E II y } 100−z E I z (但し、式中E
I はIII族又はIV族元素を示し、E II はIV・V
I族元素を示し、xは5〜20、yは0〜20、zは
0.05〜10である。)で示される組成をもつBi−
Sb系熱電合金を、500〜4000rpmで回転する
金属製ロールに噴きつけることによって非平衡相になり
うる冷却速度で凝固させることを特徴とするBi−Sb
系熱電材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09237948A JP3079423B2 (ja) | 1997-09-03 | 1997-09-03 | 低温用熱電材料の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09237948A JP3079423B2 (ja) | 1997-09-03 | 1997-09-03 | 低温用熱電材料の製造方法 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP61035337A Division JPH0684529B2 (ja) | 1986-02-21 | 1986-02-21 | 低温用熱電材料およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10117021A JPH10117021A (ja) | 1998-05-06 |
JP3079423B2 true JP3079423B2 (ja) | 2000-08-21 |
Family
ID=17022846
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP09237948A Expired - Lifetime JP3079423B2 (ja) | 1997-09-03 | 1997-09-03 | 低温用熱電材料の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3079423B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3726489B2 (ja) | 1998-04-27 | 2005-12-14 | 日産自動車株式会社 | エンジンの吸気制御装置 |
JP4286053B2 (ja) * | 2003-05-08 | 2009-06-24 | 株式会社Ihi | 熱電半導体材料、該熱電半導体材料による熱電半導体素子、該熱電半導体素子を用いた熱電モジュール及びこれらの製造方法 |
JP2009105101A (ja) * | 2007-10-19 | 2009-05-14 | Furukawa Electric Co Ltd:The | 熱電素子およびその製造方法 |
WO2018038146A1 (ja) * | 2016-08-26 | 2018-03-01 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 熱電変換材料 |
-
1997
- 1997-09-03 JP JP09237948A patent/JP3079423B2/ja not_active Expired - Lifetime
Non-Patent Citations (2)
Title |
---|
Solid−State Electronics,1972 Vol.15. pp.1141−1165 |
鋳物 第57巻(1985)第5号,第273−278頁 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10117021A (ja) | 1998-05-06 |
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