JP3074255B2 - ガイドベーンを備えたプレコート式バグフィルタ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、焼却炉または燃焼
炉等から発生する排ガス中の酸性有害ガスを中和し、併
せてダスト等を補促して除去する排ガス処理設備に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】現在、実用に供されているバグフィルタ
装置のうち、ごみ焼却施設向けに最も多く採用されてい
るものは、酸性有害ガス中和及び固形物濾過を司る消石
灰等の薬剤を、燃焼ガスに同伴させて濾布上に付着させ
るものであり、飛来し続けて濾布上に堆積する薬剤及び
ダスト等から成る粉じん層の通気抵抗が増大すれば、該
粉じん層をパルスジェットで払落す方式であり、本方式
を従来方式の代表例として説明する。

【０００３】図５は、従来から使用されていたバグフィ
ルタ装置の概略を示す図である。図５において、図示し
ない焼却炉で発生した酸性有害ガスやダストを含む高温
の燃焼ガスは、図示しないガス冷却装置等で冷却された
後、前段吸収反応部ａに入り、酸性有害ガスを吸収する
薬剤ｂを噴射される。

【０００４】この薬剤ｂは、薬剤貯槽ｃ₁ 内に貯蔵され
ており、薬剤貯槽ｃ₁ の下部に設置された定量供給フィ
ーダｃ₂ 及び吹込ブロアｃ₃ によって、上記前段吸収反
応部ａ内に空気輸送される。これら、薬剤貯槽ｃ₁ 、定
量供給フィーダｃ₂ 及び吹込ブロアｃ₃ によって、有害
ガス除去装置ｃが構成されている。

【０００５】前記前段吸収反応部ａの内部では、有害ガ
ス除去装置ｃから連続供給された薬剤ｂは、前記燃焼ガ
ス中の酸性有害ガスとある程度反応するが、大部分の薬
剤ｂは未反応のままであり、この状態の排ガスｄは、排
ガスダクトｅ内をバグフィルタ装置ｆへ送入される。

【０００６】即ち、バグフィルタ装置ｆ内に入る排ガス
ｄ中には、前記焼却炉で発生した酸性有害ガスやダスト
と共に、一部の反応生成物と大部分の未反応薬剤とが含
まれている。

【０００７】この排ガスｄ中のダスト及び反応生成物と
未反応薬剤とは、バグフィルタ装置ｆの濾過室ｆ₁ 内に
懸架された複数の濾布ｆ₂ で濾過され、濾布ｆ₂ の表面
に付着して粉じん層を形成して、次第に成長してゆく。

【０００８】一方、排ガスｄ中に含有される酸性有害ガ
スは、粉じん層中の未反応薬剤と後段吸収反応を起し、
上述の濾過作業と相まって、濾布部分を通過した排ガス
ｄは清浄ガスｇとなり、清浄ガス室ｆ₃ から誘引通風機
ｈを経て煙突ｓから大気中に放出される。

【０００９】上述した運転を継続すると、飛来し続ける
薬剤ｂ及びダストの堆積により、粉じん層の通気抵抗が
次第に増加して排ガスｄが通過し難くなる。

【００１０】その状態を、濾布ｆ₂ の内外差圧検出器ｋ
で検出し、差圧が設定値を超過すれば、制御装置ｉの指
令により、一定の順序と間隔に従って、通ガス中の複数
の濾布ｆ₂ の各列に対して、払落し装置ｊからパルスジ
ェット気流を噴射して粉じん層を剥離せしめるのが、一
般に行われる対策である。

【００１１】この剥離して落下した粉じん即ち捕集灰
は、ホッパｆ₄ から排出手段ｆ₅ によって外部に排出す
るようになされている。

【００１２】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の方式によれば、酸性有害ガス中和及びダスト濾過の
主力は、飛来し続ける薬剤ｂ及びダストにより形成され
る粉じん層であるため、バグフィルタｆの処理性能は、
運転中に時間をかけて徐々に向上することになるが、払
い落し直後は、粉じん層が払落されて、中和・濾過能力
を失っているため、未処理ガスを排出する結果となる。

【００１３】この現象を防止するために、当量比３〜５
もの多量の薬剤を噴射し続けて、粉じん層を早期に形成
するのが一般的対策であるが、大量の薬剤を排ガス流に
同伴させると、排ガス量の変動と定量供給フィーダｃ₂
の供給量の脈動などが重なって薬剤塊ができ易くなる。

【００１４】その場合、ホッパ室ｆ₄ 内に入った薬剤塊
は、濾過室ｆ₁ に向って上昇するよりも排出装置ｆ₅ に
落下する量が多くなり、薬剤ｂの有効使用率を低下さ
せ、薬剤費の高騰を招くだけでなく、「特別管理廃棄
物」に指定されている排出灰量を増加させることにな
り、後処理費用の増大を招いていた。

【００１５】従って、有害ガス除去装置ｃから供給する
薬剤ｂの量が、ますます増加する傾向になるとともに、
排ガスｄ中のダストのほぼ全量が濾布ｆ₂ 表面に吸着さ
れるために、前記薬剤の過剰供給と相まって、粉じん層
の増大速度が早まり、払落し期間が短縮され、一連の払
落し作業をほぼ連続的に行っている例が多い。

【００１６】そこで、これらの問題を解決するために、
薬剤をホッパ室（含塵ガス室）に直接送入するととも
に、排ガス導入口（含塵ガス導入口）前面にバッフル板
を設けて排ガスを一旦下方に向けたのち上向流とする
「プリコート式濾布集塵機（実開平２−１７２１３
号）」（以下先願という）が提案されている。

【００１７】以下、図６に先願の概略を示す。なお、前
述したバグフィルタ装置と同一部材には同一符号を付し
て、説明は省略する。

【００１８】ホッパ室ｆ₄ の側壁に取付けられた排ガス
ダクトｅの前面には、バッフル板ｍが設置されているた
め、排ガスダクトｅ内を直進して来た酸性有害ガスとダ
ストを含む排ガスｎは、一旦、下方に向きを変えられた
のち、濾布ｆ₂ に向って上昇する。

【００１９】この上昇気流中に薬剤供給口ｐが配設され
ているため、薬剤輸送管ｑを空送されたプレコート用薬
剤ｂの粉末及び薬剤塊は、上昇気流に吹上げられて濾布
ｆ₂表面に付着してプレコート層を形成し、形成が終れ
ば薬剤ｂの供給を停止して、通常の濾過作業に入る。

【００２０】この通常の濾過作業に入る前にプレコート
層を形成する操作のため、薬剤ｂの過剰供給が防止でき
るとともに、排ガスｎの上方への反転の結果、含有する
ダスト中の質量の大なる物は排ガスｎから分離されて排
出装置ｆ₅ 側に降下するという効果を発揮する。

【００２１】しかしながら、排ガスｎがホッパ室ｆ₄ 内
で拡散して上昇するために、流速が急に低下して、プレ
コート時の薬剤ｂの同伴力が弱まるのみでなく、ごみ焼
却炉特有の現象である排ガス量の増減にも影響されて、
薬剤ｂの濾布ｆ₂ 面への平等分布が困難であり、一部の
プレコート層の飽和による未処理ガス排出防止のため
に、他濾布上の未反応薬剤をも払落すという問題を残し
ていた。

【００２２】

【課題を解決するための手段】本発明のガイドベーンを
備えたプレコート式バグフィルタ装置は、濾過作業を行
う前に、濾布表面に予めプレコート層を形成するプレコ
ート式バグフィルタ装置において、複数の濾布を懸架す
る濾過室の下方のホッパ室に排ガスダクトが接続され、
該排ガスダクトの排ガス導入口の対向位置に上下方向に
回動自在なガス流誘導用のガイドベーンが設けられ、ガ
イドベーンは、プレコート層形成時には排ガス導入口か
ら導入される排ガス及び薬剤を上方に導く上向き位置に
配置されるとともに、該ガイドベーンの上向角度が変位
可能に構成される一方、濾過作業時には排ガスを一旦下
方に導く下向き位置に配置されるように構成されたもの
である。

【００２３】プレコート層形成時には、排ガスダクト内
を直進してきた、薬剤を含む排ガスは、排ガス導入口に
対向して設けられた上向き位置のガイドベーンによって
上向流となって濾布表面に到達し、排ガス中の薬剤が濾
過されることにより、濾布表面にプレコート層を形成す
る。この際、ガイドベーンの上向角度が変位され、薬剤
を均一な分布状態で上方に導く。

【００２４】そして、所期のプレコート層が形成されれ
ば、薬剤の供給を止めるとともに、ガイドベーンを下向
き位置に転回することにより、排ガスは、一旦下方に導
かれた後、底部で上方に反転する。この際、排ガスに含
有する粗粒ダストを振切って下方に分離せしめたのち上
昇して、通常の濾過作業に入る。

【００２５】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を参照して説明する。

【００２６】図１は、本発明に係るガイドベーンを備え
たプレコート式バグフィルタ装置のホッパ室部分を主体
とした断面図であり、図２は該バグフィルタ装置を含め
た排ガス処理装置の概略フロー図、図３はガイドベーン
の一例を示す正面図及び側面図である。

【００２７】図１乃至図３において、１はバグフィルタ
装置であり、１１は複数の濾布１２を懸架する濾過室
で、濾過室１１の下方には逆角錐形のホッパ室１３及び
ダスト排出装置１４が連接され、濾過室１１の上方に
は、ダスト払落し装置１５を備えた清浄ガス室１６が形
成されている。

【００２８】ホッパ室１３の側壁には、排ガスダクト２
が排ガス導入口２１を介して接続され、この排ガスダク
ト２には、図示しないごみ焼却炉で発生し、図示しない
ガス冷却装置等で冷却された排ガス３が、同じく図示し
ない誘引通風機に吸引されて流入する。

【００２９】さらに、ホッパ室１３内の排ガス導入口２
１に対向する位置には、ガイドベーン４が設けられてい
る。ガイドベーン４は、外縁４２，４２を付した底板４
３の断面が三日月形に弯曲形成されてなり、図示しない
駆動装置により、軸４１を中心に上下方向に回動自在に
構成されている。詳しくは、上記ガイドベーン４は、排
ガス導入口２１から導入される排ガスを上方に導く上向
き位置（図１の実線参照）と、排ガスを一旦下方に導く
下向き位置（図１の一点鎖線参照）とにされるととも
に、後述するプレコート時において、上向き位置にされ
たガイドベーン４の上向角度が変位可能に構成されてい
る。

【００３０】５は、薬剤貯槽５１、定量供給フィーダ５
２、吹込ブロア５３及び薬剤輸送管５４から成る有害ガ
ス除去装置であり、薬剤貯槽５１内に貯留された、消石
灰等の酸性有害ガス中和剤であるプレコート用薬剤６
を、排ガスダクト２の途中に設けられた薬剤供給点２２
に空送するようになされている。

【００３１】上記、清浄ガス室１６には、ガス量制御ダ
ンパ７１を設けた清浄ガスダクト７が接続され、バグフ
ィルタ装置１で濾過された清浄ガス８を、図示しない誘
引通風機で吸引して外部に放出するようになされてい
る。

【００３２】以上のように構成された排ガス処理設備の
運転操作について説明する。

【００３３】図４は、濾布１２表面の堆積状況変化を示
す模式図である。

【００３４】図１乃至図４において、図示しない焼却炉
で発生した酸性有害ガスやダストを含む高温の燃焼ガス
は、図示しないガス冷却装置で冷却されて排ガス３とな
り、同じく図示しない誘引通風機により、排ガスダクト
２を経てバグフィルタ装置１へと吸引される。

【００３５】濾過作業に先立つプレコート層形成作業で
は、有害ガス除去装置５から一挙に大量輸送される薬剤
６を、薬剤供給点２２から排ガスダクト２内に吹込み、
上記排ガス３と混合させた混合ガス３１となし、排ガス
導入口２１からホッパ室１３内へと送入する。

【００３６】ここで、排ガス導入口２１の対向位置に配
設されたガイドベーン４は図１に実線で示す上向き位置
にされており、これによって排ガスダクト２内を直進し
てきた混合ガス３１はガイドベーン４の底板４３に案内
されて高速のまま上方の濾過室１１側へと上昇し、複数
の濾布１２の表面に到達し、混合ガス３１中の薬剤６及
びダスト等の固形物が濾過されて、濾布表面に薬剤６を
主体とするプレコート層６１が短時間で形成される。
（図４参照） なお、プレコート層６１形成時の混合ガス３１の流量
は、図２に示すガス量制御弁７１で調節するが、それで
も通常は、複数の濾布１２の表面への薬剤６の分布状態
が均一にならない。そこで、ガイドベーン４の上向角度
を変位させることにより、底板４３に導かれる薬剤６の
上昇方向を分散させることで、薬剤６を平等に散布する
ことができ、複数の濾布１２の表面への薬剤６の分布状
態を均一にすることができる。なお、ガイドベーン４の
上向角度の変位は、薬剤６の上昇を阻害しない範囲で行
うことはいうまでもない。

【００３７】そして、所期のプレコート層６１が形成さ
れれば、平常の濾過作業に移行するが、その際は、まず
有害ガス除去装置５からの薬剤供給を停止すれば、混合
ガス３１は元の排ガス３に戻る。次に、ガイドベーン４
を、図１に実線で示す上向き位置から一点鎖線で示す下
向き位置にさせることにより、底板４３により排ガス３
は上向流から下向流へと変更させられる。

【００３８】これにより排ガス３は、ホッパ下部に下降
した後、濾過室１１側からの吸引作用により上方の濾過
室１１側に反転し、この反転の際、排ガス３中に含まれ
る質量の大きい粗粒ダスト３２を、遠心力で分離して、
ダスト排出装置１４側に放出することにより、濾布１２
の濾過負担を軽減し、差圧上昇による払落し期間を延長
することができる。

【００３９】そして、粗粒ダスト３２が除去された残り
の分離排ガス３３は、反転上昇して濾布１２の表面に形
成されたプレコート層６１に到達する。

【００４０】プレコート層６１は上述の如く、消石灰等
の中和用薬剤で構成されているため、分離排ガス３３中
に含有される酸性有害ガスは、薬剤６と中和反応し、残
りの含有物である中・細粒ダストは、プレコート層６１
の表面で濾過されて堆積して粉じん層６２（図４参照）
となる結果、分離排ガス３３はプレコート層６１を通過
して清浄ガス８となり、清浄ガス室１６から清浄ガスダ
クト７を経て外部に放出される。

【００４１】即ち、濾過作業開始当初から、中和・除去
能力を備えたプレコート層６１を形成しているために、
従来技術における払落し直後の能力不足のおそれはな
い。

【００４２】上述の濾過作業を継続すれば、プレコート
層６１の薬剤６の中和反応が終って、不完全処理の酸性
有害ガスが排出されたり、粉じん層６２の通気抵抗が増
加して、図示しない誘引通風機の負担が重くなってく
る。

【００４３】その場合、図２に示す排ガス濃度計９１に
よる中和処理能力の低下または、差圧検出器９２による
粉じん堆積量増加を検知して、払落し要求を制御装置９
に送る。そして、制御装置９からの指令で、図示しない
圧縮空気源からのジェットパルスをダスト払落し装置１
５に送れば、濾布１２の表面に付着しているプレコート
層６１及び粉じん層６２は剥離して、ホッパ室１３から
ダスト排出装置１４を経て外部に排出される。

【００４４】この排出灰は、ほぼ反応済の薬剤６と捕集
されたダスト及び分離された粗粒ダストのみで構成され
ており、過剰供給による未反応薬剤を含んでいないため
に、量が少なく、後処理費用が節減できる。

【００４５】ここで、制御装置９の機能を集約すると、
上述の払落し操作以外に、前述のガイドベーン４の位置
制御とガス量制御や薬剤量調節のほかに、付属機器の運
転操作にも用いられる。

【００４６】なお、本例では、バグフィルタ装置１は、
単室構造のもので説明したが、本説明と同様の構造を有
する単位集じん機構を複数集合させた多室型とし、単位
集じん機構の稼働基数を選択することによって、１基当
たりの処理ガス量を定格値付近に保つ方式を採用しても
よい。

【００４７】また、ガイドベーン４の形状は、図３に一
例を示したが、本発明の機能を満足すれば形状にはこだ
わらない。

【００４８】

【発明の効果】以上述べたように、本発明は、ホッパ室
に接続された排ガスダクトの対向位置に、上下方向に回
動自在なガス流誘導用のガイドベーンを設けるととも
に、プレコート時には、該ガイドベーンの上向角度を変
位せしむる方式である。

【００４９】従って、プレコート層形成時にはガイドベ
ーンを上向き位置にして薬剤及び排ガスを上方に導くと
ともに、ガイドベーンの上向角度を変位せしめること
で、複数の濾布表面に平等にプレコート層を形成するこ
とができ、この後、濾過作業に移るために、従来方式の
如く、払落し直後の効率低下をきたすことがなく、薬剤
の過剰供給による薬剤費の高騰と排出灰後処理費用の増
大を招くおそれもない。また、各濾布面の不平等なプレ
コート層形成に起因する早期払落しも防止できる。

【００５０】さらに、平常の濾過作業においては、ガイ
ドベーンを下向き位置に転回して、排ガスを一旦下方に
導いた後、ホッパ室の底部において上方に反転されるた
め、粗粒ダストの分離による濾過能力の増大を図ること
ができるとともに、払落し期間の延長をもたらすことが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るガイドベーンを備えたプレコート
式バグフィルタ装置のホッパ室部分を主体とした断面図
である。

【図２】プレコート式バグフィルタ装置を含めた排ガス
処理装置の概略フロー図である。

【図３】（ａ）がガイドベーンの一例を示す正面図で、
（ｂ）が側面図である。

【図４】濾布表面における付着・堆積状態を示す拡大の
断面図である。

【図５】従来のバグフィルタ装置の概略を示す図であ
る。

【図６】排ガス導入口にバッフル板を設けた従来のバグ
フィルタ装置の概略を示す図でる。

【符号の説明】

１ バグフィルタ装置 １１ 濾過室 １２ 濾布 １３ ホッパ室 ２ 排ガスダクト ２１ 排ガス導入口 ３ 排ガス ４ ガイドベーン ６ 薬剤 ６１ プレコート層

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 濾過作業を行う前に、濾布表面に予めプ
   レコート層を形成するプレコート式バグフィルタ装置に
   おいて、 複数の濾布を懸架する濾過室の下方のホッパ室に排ガス
   ダクトが接続され、該排ガスダクトの排ガス導入口の対
   向位置に上下方向に回動自在なガス流誘導用のガイドベ
   ーンが設けられ、ガイドベーンは、プレコート層形成時
   には排ガス導入口から導入される排ガス及び薬剤を上方
   に導く上向き位置に配置されるとともに、該ガイドベー
   ンの上向角度が変位可能に構成される一方、濾過作業時
   には排ガスを一旦下方に導く下向き位置に配置されるよ
   うに構成されたことを特徴とするガイドベーンを備えた
   プレコート式バグフィルタ装置。