JP3066162U - 噴霧試験装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 海塩粒子、融雪塩、酸性雨などの複合した腐
食環境を再現し、且つ促進試験と組み合わせて行うこと
ができる噴霧試験装置の提供。 【解決手段】 同一試験槽内に複数の噴霧装置を設置
し、組み合わせ自在に作動させる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

工業材料の腐食性を調べる試験装置について、特に環境汚染に伴い、様々な腐 食因子が複合している使用環境を再現し、促進腐食試験と組み合わせて行うため に、同一試験槽内で複数の試験溶液の噴霧試験ができる噴霧試験装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

金属、めっき、塗料などの耐食性を調べるには、その材料或いは製品を使用環 境に近い屋外で暴露する自然暴露試験と、その使用環境を人工的に再現した装置 による実験室的な促進暴露試験とがあるが、自然暴露試験では、実際の劣化状態 を知ることができるが、結果を得るまでに時間がかかる。一方、促進暴露試験は 、必ずしも劣化結果が自然暴露と一致しないが、短時間で結果が得られる方法と して採用されてきた。この代表例がＪＩＳ Ｚ ２３７１（塩水噴霧試験方法） や、ＪＩＳ Ｈ ８５０２（めっき耐食性試験方法）に規定されている酢酸酸性 塩水噴霧試験方法や、キャス試験方法であり、ＡＳＴＭ Ｄ １７３５には水噴 霧試験法がある。

【０００３】 ＪＩＳ Ｚ ２３７１記載の塩水噴霧試験方法は、沿海岸地方の海塩粒子を含 む腐食形態を模擬した一般的方法で、塩化ナトリウム溶液で濃度５％、ｐＨ６． ５乃至７．２の溶液が用いられ、ＪＩＳ Ｈ ８５０２記載の酢酸酸性塩水噴霧 試験方法は、塩化ナトリウム溶液に酢酸を添加しｐＨ３．０とし、同じくキャス 試験方法は、前記酢酸酸性の塩化ナトリウム溶液に塩化第二銅を添加したｐＨ３ ．０の溶液で、どちらも高速道路などの凍結を防止する融雪塩を起因とする腐食 試験方法であり、ＡＳＴＭ Ｄ １７３５記載の水噴霧試験法は、ｐＨ６．０〜 ８．０の蒸留水又は脱イオン交換水（以後、清水と呼ぶ）を噴霧する塗料の試験 法である。

【０００４】 いずれも単独の連続試験方法として、塩水噴霧なり、酢酸酸性塩水噴霧なり、 キャス液噴霧なり、水噴霧なりを規定時間行うため、それぞれの噴霧試験装置が 用いられてきた。

【０００５】 一方、自然暴露においては、北陸地方等に見られるように、海を越えてくる酸 性雨などの酸性降下物の影響や、高速道路網が拡大し融雪塩散布の影響が複合す るような環境汚染に伴って、腐食劣化形態も大きく変化してきている。

【０００６】 従って、従来の個別の噴霧試験による評価のみでは腐食性の把握は難しく、よ り自然暴露に近い促進試験条件即ち海塩粒子、融雪塩、酸性雨降雨などが複合す るような腐食環境を再現できるような促進噴霧試験装置が望まれていた。

【０００７】 従来、このような複合した条件を考慮したものに、代表的には、ＪＡＳＯ Ｍ ６０９（自動車用材料腐食試験方法）などの複合サイクル試験装置がある。こ の場合、促進試験条件としては、試験溶液、温度、湿度を取り上げ、主にＷＥＴ 率（１サイクル中のトータルの試験時間に対する噴霧及び湿潤の時間）の観点か ら、塩水噴霧−乾燥−湿潤のサイクルを繰り返すものである。また、酸性雨を考 慮した場合、上記に倣って、酸性雨噴霧−乾燥−湿潤のサイクルを繰り返すこと も行われている。

【０００８】 これに対し、前述した複合した腐食環境に鑑み、促進試験条件として試験溶液 の噴霧を主眼とし、従来単独に行っていた試験溶液噴霧を、一つの試験槽におい て複数の試験溶液を適宜代えながら規定の噴霧試験を連続して行えるものはなか った。

【０００９】

【考案が解決しようとする課題】

自然暴露試験における従来の海塩粒子を含む腐食環境に複合して融雪塩の影響 や酸性雨降雨や、雨天と晴天を繰り返す天候条件を再現する装置で、促進試験条 件としての試験溶液の噴霧、即ち塩水噴霧や、酢酸酸性塩水噴霧、酸性雨噴霧、 水噴霧などの複数の噴霧試験を組み合わせ、一つの試験槽で連続して行える噴霧 試験装置を提供することを目的とする。具体的には、従来は、各試験毎に図５に 示したような試験装置を個別に用意しているため、例えば、塩水噴霧試験を単独 に行った後、試験装置から試験片を取り出し、試験片表面に付着した塩分を除く ため水洗いし、次の酢酸酸性塩水噴霧試験のために別の試験装置へ入れるという 手間と時間と費用を必要とする問題点があった。即ち複合した腐食環境に応じて 、特に、促進試験条件としての複数の試験溶液の噴霧を一つの試験槽で行え、且 つ任意の噴霧試験から次の噴霧試験への移行時に人手を必要としない噴霧試験装 置が望まれていた。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

上記課題を解決するために、第一に、同一試験装置内にそれぞれの試験溶液毎 の噴霧装置を配設し、各噴霧装置を自在に組み合わせ、塩水噴霧−酢酸酸性塩 水噴霧−水噴霧−酸性雨噴霧、酢酸酸性塩水噴霧−水噴霧−塩水噴霧−酸性雨 噴霧、酸性雨噴霧−水噴霧−塩水噴霧−水噴霧のごとく、各種の試験溶液の噴 霧装置を備えるようにした。第二に、前記噴霧試験の組み合わせの中に乾燥過程 を加え、試験槽にて試験片を乾燥する乾燥空気送入回路を備えるようにした。

【００１１】 このように構成したことで、従来個別に行われていた噴霧試験を同一の試験装 置で行えるようになり、試験片に対して、環境に近似した負荷を複合して与える ことができるようになった。また、天候条件の晴天時の乾燥状態と、雨天特に酸 性雨降雨とを再現することができる噴霧試験装置となった。

【００１２】

【考案の実施の形態】

本考案の実施の形態を図面を参照して説明する。図１は本考案の構成図である 。 図１に示すように、試験槽（１）内に複数の噴霧装置（２）、（３）、（４） 、（５）、（６）を配設してある。この噴霧装置は試験槽（１）の外部に設置し た各溶液タンク（１２）（１３）、（１４）、（１５）、（１６）に連通してい る。各噴霧装置は図２に示したように、噴霧塔（９）下部の溶液溜（８）に試験 溶液が溜められ、噴霧ノズル（７）により噴霧されるようになっている。同様の 構成の噴霧装置を図１のように配設し、それぞれの噴霧装置の溶液溜（８）には 、予め調整された試験溶液を入れておく。

【００１３】 例えば、噴霧装置（２）には、濃度５％塩化ナトリウム溶液でｐＨ６．５乃至 ７．２の中性の塩水噴霧試験溶液、噴霧装置（３）には、濃度５％の塩化ナトリ ウム溶液に酢酸を添加したｐＨ３．０乃至３．３の酢酸酸性塩水噴霧の試験溶液 、噴霧装置（４）には、酸性雨のｐＨ値の低いｐＨ３．０乃至４．０の酸性雨溶 液、同様に噴霧装置（５）には、酸性雨のｐＨ値の高いｐＨ４．０乃至５．５の 酸性雨溶液、更に噴霧装置（６）にはｐＨ６．０乃至８．０の清水を用意してお く。

【００１４】 その上でマイクロコンピューターなどで構成され制御装置（４０）によって、 前記各噴霧装置の作動の順序、組み合わせが自在になされ、各噴霧時間の設定が され、試験溶液の濃度やｐＨの調整も制御できるようになっている。

【００１５】 図３は、本考案による第１の実施例である。初めの塩水噴霧では、噴霧装置（ ２）を作動させ、濃度５％塩化ナトリウム溶液でｐＨ６．５乃至７．２の中性の 塩水噴霧試験溶液を連続して規定の時間行い、続いて酢酸酸性塩水噴霧を行うた めに、噴霧装置（２）を停止し、噴霧装置（３）を作動させ、濃度５％の塩化ナ トリウム溶液に酢酸を添加したｐＨ３．０乃至３．３の酢酸酸性塩水噴霧の試験 溶液の噴霧を行い、次の水噴霧を行うために、噴霧装置（３）を停止し、噴霧装 置（６）を作動させ、ｐＨ６．０乃至８．０の清水で噴霧を行い、更に酸性雨噴 霧を行うために、噴霧装置（６）を停止し、噴霧装置（４）を作動させ、ｐＨ３ ．０乃至４．０の酸性雨溶液を噴霧させる一連の噴霧試験を繰り返す実施例であ る。この酸性雨噴霧では、酸性雨の降り始めのｐＨ値の低い状態から高い状態へ の変化を再現するために、噴霧装置（５）を作動させ、ｐＨ４．６乃至５．５の 溶液を噴霧させることもできる。また、降雨条件として細かい雨や、粗い雨を再 現するため、前記噴霧ノズル（７）を口径の異なる噴霧ノズルに替えることもで きる。この場合の粒子の違いを図６及び図７に示す。図６は口径０．５乃至０． ８mmの場合であり、図７は口径１．５乃至１．８mmの場合である。

【００１６】 図４は、本考案による第２の実施例である。塩水噴霧と、水噴霧と、酢酸酸性 塩水噴霧を組み合わせた場合で、噴霧装置（２）、（６）、（３）を順次作動さ せ、塩水噴霧をｐＨ６．５乃至７．２で連続して規定の時間行い、次にｐＨ６． ０乃至８．０の清水で噴霧を行い、更に酢酸酸性塩水噴霧をｐＨ３．０乃至３． ３で連続して規定の時間行い、これを繰り返す実施例である。この場合の水噴霧 は、水噴霧試験としての効果と同時に、酢酸酸性塩水溶液や、塩水溶液を試験片 上或いは試験槽内壁から除去できるため、従来は試験槽から試験片を取り出して 水洗いしていた手間がいらないという実施効果も得られた。

【００１７】 また、図３において、雨天から晴天に変化した乾操状態を想定し、制御装置（ ４０）により図示しない乾燥空気送入回路を作動させ、酸性雨噴霧と次の噴霧と の間に、試験槽内に乾燥空気を送り、試験片を乾燥させ、次の噴霧試験に移行で きるようにした。

【００１８】

【考案の効果】

本考案は、上記のように構成されているので、以下のような効果を奏する。即 ち噴霧装置を含む複数の噴霧装置を同一の試験槽に配置した事によって、複数の 試験装置を用意する必要がなく、一つの試験槽で各種の促進試験ができるように なり、一つの試験の終了の都度試料を取り出して水洗いするなどの手間が省ける ようになった。更に酸性雨の降雨態様等に合わせた噴霧試験ができたことで、自 然暴露に近似した結果が得られ、腐食性の評価が正確に行えるという格別の効果 を奏するものとなった。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の構成図。

【図２】本考案の噴霧ノズルを格納した噴霧装置の図。

【図３】本考案の第１の実施例を示す図。

【図４】本考案の第２の実施例を示す図。

【図５】従来の噴霧試験装置の断面図。

【図６】微細粒子の図。

【図７】粗い粒子の図。

【符号の説明】

１ 噴霧試験装置 ２，３，４，５，６ 噴霧装置 ７ 噴霧ノズル ８ 溶液溜 ９ 噴霧塔 １２，１３，１４，１５，１６ 溶液タンク ３２，３３，３４，３５，３６ 電磁弁 ４０ 制御装置 ６０ 排気管

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属、めっき等の表面劣化を人工的に促
   進させ、自然暴露の結果を短時間に再現できる試験装置
   に関するもので、塩水噴霧試験法、酸性雨噴霧試験法、
   酢酸酸性塩水噴霧試験法、水噴霧試験法などにより構成
   された噴霧試験において、同一試験装置内にそれぞれの
   試験溶液毎の噴霧装置を配設し、各噴霧装置を自在に組
   み合わせ、塩水噴霧−酢酸酸性塩水噴霧−水噴霧−酸
   性雨噴霧、酢酸酸性塩水噴霧−水噴霧−塩水噴霧−酸
   性雨噴霧、酸性雨噴霧−水噴霧−塩水噴霧−水噴霧の
   ごとく、各種の試験溶液の噴霧装置を備えたことを特徴
   とする噴霧試験装置。
2. 【請求項２】 前記噴霧試験の組み合わせの中に乾燥過
   程を加え、試験槽にて試験片を乾燥する乾燥空気送入回
   路を備えたことを特徴とする請求項１記載の噴霧試験装
   置。