JP3065679B2 - シリンダヘッドガスケット - Google Patents

シリンダヘッドガスケット

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JP3065679B2
JP3065679B2 JP3040095A JP4009591A JP3065679B2 JP 3065679 B2 JP3065679 B2 JP 3065679B2 JP 3040095 A JP3040095 A JP 3040095A JP 4009591 A JP4009591 A JP 4009591A JP 3065679 B2 JP3065679 B2 JP 3065679B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はガスケット、特に、コン
パクトで高性能の内燃機関に適したシリンダヘッドガス
ケットに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、内燃機関、特に、自動車用エン
ジンのシリンダヘッドガスケットとしては、スチールベ
ストが汎用されているが、スチールベストにはその表層
部の形成材料の一部として人体に悪影響を及ぼすアスベ
ストが使用されているため、労働衛生上の観点からアス
ベストを使用しないガスケットの開発が要望されてい
る。他方、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン
を問わず、エンジンの高出力化、小型化、省エネルギー
化および微粒子状排出物質の低減化を図るべく、圧縮比
を高めると共に、ボアの軸間距離を短くし、デッドスペ
ースを低減する研究開発が行われているが、それに伴い
信頼性および耐久性の高いシリンダヘッドガスケットの
開発が要求されている。通常、内燃機関は圧縮比を高め
るほど、高出力化でき、また排気ガス中の微粒子状排出
物質の排出量を低減できるが、従来のスチールベストで
は圧縮比を高めるには限界があり、またボアの軸間距離
を小さくするほど、シリンダヘッドのデッキ部分のシー
ル性が問題となっていた。
【0003】このため、薄肉金属板を積層した金属ガス
ケットあるいは銅系若しくは鉄系合金製の補強リングを
併用した金属ガスケットが開発され、一部実用に供され
ている。しかし、金属ガスケットは材料費が安価であっ
てもそれを加工する金型が高価であるため、結果的には
コストが高くなり、しかも使用時間の経過と共に弱くな
りシール性が低下するという問題があった。他方、銅系
合金製の補強リングを併用した金属ガスケットは、通常
の金属ガスケットより強度が強化されるが、より高温、
高圧に対処させるべく補強リングの材質を鉄系のものに
変えると、補強リングの断面形状が円形であるため、ガ
スケットの補強リングが入れてある部分がシリンダヘッ
ドおよびシリンダブロックと強い圧力で線接触すること
になり、これらの相手部材を損傷させるという問題があ
った。このシリンダヘッドやシリンダブロックの損傷
は、シリンダヘッド等をアルミニウム合金で形成したエ
ンジンにおいて特に著しい。
【0004】これらの問題を解決する手段として、本発
明者は、特開昭62−192504号にて、鉄、チタ
ン、ニッケル、アルミニウム、銅およびそれらの合金か
らなる群から選ばれた一種の金属を主成分とする焼結金
属製ガスケット素体からなり、その少なくとも貫通孔を
包囲する部位に銅、鉛、亜鉛、錫、アルミニウム若しく
はそれらをベースとする合金などの低融点金属を過剰に
溶浸させ、その貫通口を形成するガスケット素体表面に
低融点金属の薄層を形成させた金属溶浸型焼結金属製ガ
スケットを提案した。この溶浸型焼結金属ガスケット
は、貫通口を形成するガスケット素体の表面に薄い溶浸
剤層を形成させることによって、シール性、クッション
性及び機械的強度を向上させることができ、また、熱伝
導性が良いためシリンダヘッドとシリンダブロックとの
間の温度差を少なくすることができるという利点を有し
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記溶
浸型焼結金属製ガスケットは、ガスケット素体に過剰の
低融点金属を部分溶浸させる場合、溶浸剤が毛管現象に
よりガスケット素体の他の部位にまで浸透するため、ガ
スケット素体表面に溶浸剤層を形成できず、しかも、そ
の制御が極めて困難であり、これを抑制するため溶浸剤
としてヌレ性の悪い低融点金属を採用すると、溶浸が困
難となりその目的を達成し得ないという問題がある。ま
た、ガスケットの溶浸部と非溶浸部との高さを揃えるた
めに極めて高い圧力で平押プレスしなければならず、プ
レス機に故障を生じ易く、寿命が短くなるという問題が
ある。さらに、ガスケットの溶浸部でシール性やクッシ
ョン性を確保するためには、従来の金属ガスケットに比
べて締付け力を高くしなければならない他、より高性能
のエンジンに適用するためにはシール性を一段と向上さ
せる必要がある。
【0006】これらの問題を解決し、強度およびシール
性を向上させるため、溶浸型焼結金属製ガスケットとグ
ロメットを併用することが考えられるが、グロメットを
貫通口に嵌入し溶浸部にかしめた場合、ガスケットのグ
ロメット部がその板厚分だけ厚くなるため、ガスケット
本体がシールに寄与せず、かえってシール性が低下する
ということが明らかとなった。
【0007】従って、本発明は溶浸型焼結金属製ガスケ
ットの強度およびシール性を一段と向上させ、より薄肉
化でき、シリンダボアの軸間距離が小さくても十分なシ
ール性能が得られるようにすることを課題とするもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するための手段として、ガスケット素体を鉄または鉄
基合金を主成分とする焼結金属で形成し、該ガスケット
素体の両面にその厚さ方向に形成された複数の貫通口と
それぞれ同軸に凹所を形成し、前記貫通口若しくは前記
貫通口と凹所を包囲する部位に理論量以下の低融点金属
を溶浸させる一方、前記貫通口にグロメット又は耐熱性
シール部材を嵌装し、その折曲部を前記凹所に収納させ
て該折曲部の表面をガスケット素体の表面と同一平面と
なるようにしたものである。
【0009】ガスケット素体を構成する焼結金属は密度
が40〜95%、好ましくは、50〜75%のものが好
適であるが、その空孔に溶浸させる低融点金属として
は、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの材質にも
よるが、通常、ガスケット素体を形成する焼結金属より
も低融点の銅、鉛、亜鉛、錫、アルミニウムおよびそれ
らの合金が好適である。
【0010】また、ガスケット素体に形成された貫通孔
のうちシリンダボアおよびボルトボアを形成する貫通口
にはグロメットが嵌装されるが、このグロメットの材質
としては公知の任意のものを採用できるが、高出力化を
図る場合には、鉄、鉄系合金を使用するのが好適であ
る。また、前記貫通口のうち液体流通路、例えば、ウオ
ータジャケットボアおよび潤滑油流通路等を形成する貫
通口には、グロメットまたは耐熱性シール部材が嵌装さ
れるが、この場合のグロメットの材質としては銅または
銅合金を使用するのが好適であり、耐熱性シール部材の
材質としてはシリコンゴム、フッ素ゴム、ネオプレンゴ
ムなどの合成ゴムおよび天然ゴムなど耐熱性弾性材料を
使用するのが好適である。
【0011】ガスケット素体の両面に各貫通口と同軸に
形成される凹所は、通常、貫通口に嵌められるグロメッ
トの肉厚に相当する深さ、例えば、0.05〜0.5m
mの深さに形成され、その大きさはグロメットをハトメ
状にかしめた際にグロメットが折り曲げられてフランジ
となる部位と同寸法になるように決定される。また、耐
熱性シール部材を嵌める凹所の深さは、0.1〜1.0
mmの深さが好適である。
【0012】好ましい実施態様においては、ガスケット
素体の凹所の底部若しくは該凹所の底部と該凹所を包囲
する部位に形成される溶浸部以外の部位に、該溶浸部に
溶浸された金属よりも低融点の第2の金属が溶浸され
る。これらはガスケットの熱伝導率を高めると共に、そ
の熱膨張率をシリンダヘッドの材料の熱膨張率に近付
け、応力歪みを低減させる。この場合、凹所の底部若し
くは該凹所の底部とそれを包囲する部位、即ち、貫通口
を包囲する部分に銅を溶浸し、他の部位には鉛、亜鉛、
錫、アルミニウムおよびそれらの合金を溶浸するのが好
適である。
【0013】
【作用】鉄または鉄基合金製焼結体からなるガスケット
素体の相対する面に、該ガスケット素体に形成した貫通
口と同軸に凹所を設けることによって、グロメットをか
しめた際のグロメット嵌装面とガスケット素体表面との
段差を無くする一方、前記貫通口若しくは該貫通口と凹
所を包囲する部位に理論量以下の低融点金属を溶浸させ
ることによって、毛管現象による溶浸剤の他の部位への
浸透を抑制すると同時に、貫通口形成部およびその周囲
の気密性、水密性および強度を向上させる。
【0014】また、低融点金属の溶浸量を理論量以下と
することによって、溶浸部の盛り上がりなどによるガス
ケット素体の形状変化を防止し、従って、比較的低い圧
力での平押プレスを可能にし、また、凹所の深さもグロ
メットの板厚に相当する元の深さのまま維持されるた
め、グロメットを装着した際のグロメット端面とガスケ
ット素体表面の均一化を可能にしている。ガスケットの
シリンダボアおよびボルトボア等を形成する貫通口に嵌
装したグロメットは、高温高圧のガスに対する気密性お
よび水密性などガスケットのシール性および強度を一段
と向上させ、液体流通路を形成する他の貫通口に嵌めた
グロメットまたは耐熱性シール部材は水密性を向上させ
る。
【0015】以下、添付の図面を参照して本発明を詳細
に説明する。
【0016】
【実施例】図1および図2は、本発明に係るシリンダヘ
ッドガスケットを示し、このガスケットは鉄または鉄基
合金からなる焼結金属で形成されたガスケット素体1か
らなり、該ガスケット素体1には、シリンダボア2、オ
イル穴3およびボルト穴4をそれぞれ形成する複数の貫
通口が形成されている。このガスケット素体1は、図2
に示すように、その両面に各貫通口を包囲する凹所5
a、5b、6a、6b、7a,7bが形成され、各貫通
口を包囲する部位および凹所を包囲する部位には理論量
以下の銅又は銅合金が溶浸させてあり、溶浸部8を形成
している。
【0017】前記貫通口のうちシリンダボア2およびボ
ルト穴4を形成する貫通口には鉄又は鉄基合金製グロメ
ット9、10が嵌装され、それらの折曲部9a,9b,
10a,10bはそれぞれグロメット9、10の板厚に
相当する深さに形成された凹所5a,5b,7a,7b
に収納され、それらの表面とガスケット素体1の表面が
それぞれ同一平面になるようにしてある。また、前記貫
通口のうちオイル穴3など液体流通路を形成する貫通口
には耐熱性シール材、例えば、シリコンゴム製シール部
材11が嵌装され、そのフランジ部11a,11bの表
面とガスケット素体1の表面とが同一平面となるように
してある。なお、グロメットおよびシール部材、例え
ば、グロメット9の折曲部9a,9bの先端部と凹所5
a,5bの壁面との間に間隙を形成させるようにしても
良い。
【0018】前記構造のシリンダヘッドスケットは、例
えば、次のようにして製造することができる。まず、鉄
粉または鉄系合金粉末を2〜3t/cm2の圧力で圧粉
成形してシート状の圧粉体を形成し、これを窒素ガスそ
の他の非酸化性雰囲気中650℃で1時間焼成した後、
所定形状に打ち抜き加工して1mm厚のガスケット素体
を得る。なお、焼結体の空孔率は約40%である。次
に、コイニングによりガスケット素体の両面に貫通口と
同軸の深さ0.2mmの凹所を形成し、該凹所に0.4
mm厚のドーナツ形の銅板6を載せた後、窒素ガス雰囲
気中1200℃で加熱して溶浸および焼成を行う。この
時、銅は凹所の底部およびその周囲に溶浸するが、その
量が理論溶浸量以下と少ないため、他の部位への拡散は
阻止される。
【0019】次いで、シリンダボア2およびボルト穴4
となる貫通口にグロメット9、10が公知方法により嵌
装されるが、ガスケット素体の他の部位に銅よりも低融
点の金属、例えば、亜鉛、鉛、アルミニウム又はそれら
の金属の合金を溶浸又はコーティングさせる必要がある
場合は、グロメットを嵌装する前に行えば良い。
【0020】グロメット9、10を嵌装した後、銅グロ
メット若しくはシリコンゴム製シール部材11を水穴お
よびオイル穴となる貫通口に嵌装することにより図1の
ガスケットが得られる。
【0021】前記説明では、圧粉体を押し出し成形して
圧粉体を製造しているが、必ずしもこれに限られるもの
ではなく、タッピング法、ロール法、プレス法、ホット
プレスなど任意の公知方法を採用すれば良い。ロール法
などを用いてシート状若しくは平板状の圧粉体を形成し
た場合、成形後、仮焼の前後若しくは焼成後のいづれか
の段階で所定形状に加工する必要があるが、仮焼後に行
なうのが望ましい。これは打ち抜き加工が容易に行える
からである。
【0022】仮焼および焼成は、いづれも常法により行
なうことができ、雰囲気としてはアルゴンガス、窒素ガ
スなどを含む中性雰囲気、若しくはアンモニア分解ガ
ス、天然ガスなどを含む還元性雰囲気が使用される。仮
焼結温度および焼成温度は、焼結体形成材料により異な
るが、通常、仮焼結は400℃以上で、焼結は1000
〜1300℃で行われる。
【0023】前記溶浸剤は粉末状、板状など任意の形態
のものを単独であるいは組み合わせて使用でき、いづれ
の場合にも焼結体の空隙を満たす所要量以下の量が使用
される。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、ガスケ
ット素体の厚さ方向に形成された複数の貫通口と同軸
に、その両面に凹所を形成し、前記貫通口若しくは該貫
通口と凹所を包囲する部位に理論量以下の低融点金属を
溶浸させて溶浸部を形成し、前記貫通口にグロメット又
は耐熱性シール部材を嵌装し、その折曲部を凹所に収納
させて該折曲部の表面をガスケット素体の表面と同一平
面となるようにしたので、ガスケット素体の強度が向上
すると同時に、ガスケット素体とグロメットとの間に段
差を生じることがなくシール性およびクッション性が向
上し、より高性能のエンジンに適用でき、その省エネル
ギー化を図ることができる。また、ガスケットの肉厚を
0.5mm程度にまで薄くできるので、デッドスペース
を少なくし、NOxやCOxの発生を抑制すると共に、
燃焼効率を向上させることができる。さらに、シール性
の向上によりシリンダボアの軸間距離を減少させること
ができ、内燃機関の小型化および軽量化を図ることがで
きる。また、ガスケットの熱伝導性が良いため、シリン
ダブロックとシリンダヘッドとの温度差を極めて少なく
でき、従って、ノッキングの防止を図ることができる
他、シリンダブロックおよびシリンダヘッドブロックの
密着面が変形しても、それに追随可能であるため、長期
間使用してもシールの劣化の恐れがないなど優れた効果
を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るシリンダヘッドガスケットの一
実施例を示す平面図である。
【図2】 図1のII−II線に於ける断面図である。
【符号の説明】
1:ガスケット素体 2:シリンダボア 3:オイル穴 4:ボルト穴 5a,5b,6a,6b、7a,7b:凹所 8:溶浸部 9、10:グロメット 11:耐熱性シール材

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄または鉄基合金を主成分とする焼結金
    属製ガスケット素体からなり、該ガスケット素体がその
    厚さ方向に形成された複数の貫通口と、その両面に前記
    貫通口とそれぞれ同軸に形成された凹所とを有し、前記
    貫通口若しくは前記貫通口と凹所を包囲する部位に理論
    量以下の低融点金属を溶浸してなる溶浸部を有し、前記
    貫通口にグロメット又は耐熱性シール部材を嵌装し、そ
    の折曲部を前記凹所に収納させて該折曲部の表面をガス
    ケット素体の表面と同一平面にしてなることを特徴とす
    るガスケット。
  2. 【請求項2】 前記低融点金属が銅、鉛、亜鉛、錫、ア
    ルミニウムおよびそれらの合金からなる群から選ばれた
    少なくとも一種の金属であることを特徴とする請求項1
    記載のシリンダヘッドガスケット。
  3. 【請求項3】 前記ガスケット素体の溶浸部以外の他の
    部位に該溶浸部の低融点金属より融点の低い第2の低融
    点金属を溶浸させてなる第2溶浸部を有する請求項1ま
    たは2記載のガスケット。
  4. 【請求項4】 前記ガスケット素体の凹所の底部もしく
    は該凹所の底部と凹所を包囲する部位に溶浸された低融
    点金属が銅であって、ガスケット素体の他の部位に溶浸
    された第2の低融点金属が鉛、亜鉛、錫、アルミニウム
    およびそれらの合金からなる群から選ばれた少なくとも
    一種の金属である請求項3記載のガスケット。
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