JP3065565B2 - 糸状削出し昆布の製法 - Google Patents

糸状削出し昆布の製法

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JP3065565B2
JP3065565B2 JP9230019A JP23001997A JP3065565B2 JP 3065565 B2 JP3065565 B2 JP 3065565B2 JP 9230019 A JP9230019 A JP 9230019A JP 23001997 A JP23001997 A JP 23001997A JP 3065565 B2 JP3065565 B2 JP 3065565B2
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孝一 高橋
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ヤマトタカハシ株式会社
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、所謂「トロロ昆
布」と称される二次加工製品としての糸状削出し昆布の
製法に関し、特に、スライス状に削り出される原藻昆布
の固形ブロック化に改良を施すことにより、加工後の製
品の乾燥や経時変化による製品同士の結着を防止すると
ともに、酸味の持続性を高め、製品自体の風味が損なわ
れることのないようにしてなるものである。
【0002】一般に、昆布は、例えばワカメなどの他の
褐藻類と共に古くから保存食として食せられ、二次加工
製品としての「トロロ昆布」は、ダイエットなどに適し
た健康食品として一躍脚光を浴びている。
【0003】
【従来の技術】従来、この種の糸状削出し昆布を製造す
るにおいては、乾燥した原藻昆布に醸造酢もしくは氷酢
酸希釈液(酸度5%前後)などの漬け前液を掛けて漬け
前し、この浸潤後の原藻昆布を数時間から数日間静置し
て、水分を浸透させ酸味が均一になるように寝かせ、次
いで、この湿潤後の原藻昆布を小片状にカットした後、
これらの小片に調味料と結着剤を添加し混合することに
より調味し、この調味後の小片を型枠内に所定量充填し
圧縮してブロック状に固形化するとともに、この固形ブ
ロック体を圧縮状態にて数日間静置して水分が均一化す
るように寝かせて結着させた後、この固形ブロック体を
所定の基準寸法に裁断し正体化して削出し加工装置に装
填し、その圧縮方向側を平面として側面側に相当する部
位をスライス面にして一方向に沿って削り出すことによ
り行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来の機械削りによる糸状削出し昆布の製法では、例
えばプルランなどの増粘多糖類を結着剤として用いてい
るが、加工直後の製品が空気に触れると、糸状の削出し
形態が不定型でバラツキ易く、商品価値が低下する虞れ
がある一方、糸状に削り出した製品同士が時間経過に伴
い、乾燥と共に結着して塊状になってボリューム感がな
くなり、開封後の製品が糸状にスムーズに解れ難くなる
ばかりでなく、そのまま放置しておくと、数時間で乾燥
が始まり、翌日には製品の表面が「かさかさ」の状態に
なって、所謂「しっとり感」がなくなる。
【0005】また従来、このような加工直後の製品を食
味すると、酸臭は殆どせず、酸味や風味が微かに感じる
程度であり、酸味の持続性がなく、しかも、数日間の経
時変化によるプルランの酸化に伴うカッペン現象で異臭
が発生し、これによって、製品自体の風味を損なわせ、
製品価値を低下させるという問題があった。
【0006】この発明の目的は、加工直後の製品の乾燥
や経時変化による製品同士の結着を防止し、酸味の持続
性を高めるとともに、製品自体の風味が損なわれること
なく製品価値の向上を図ることができるようにした糸状
削出し昆布の製法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決する
ために、この発明は、乾燥した原藻昆布に、醸造酢もし
くは氷酢酸希釈液などの浸け前液に乳酸カルシウムが添
加された溶液を掛けて浸潤させる浸け前工程と、この浸
漬後の原藻昆布を数時間から数日間静置して水分を浸透
させかつ酸味が均一になるように寝かせる第1の湿潤工
程と、この湿潤後の原藻昆布を小片状にカットしかつこ
れらの小片に調味料の配合と共にアルギン酸ナトリウム
を添加し混合して調味する調味工程と、この調味・混合
後の小片を型枠内に所定量充填し圧縮してブロック状に
固形化する圧縮工程と、この固形ブロック体を圧縮状態
にて数日間静置して水分が均一化するように寝かせて結
着させる第2の湿潤工程と、この湿潤・結着後の固形ブ
ロック体を所定の基準寸法に裁断して削出し加工装置に
装填しかつその圧縮方向側を平面として側面側に相当す
る部位をスライス面にして一方向に沿って削り出す切削
工程とからなることを特徴とするものである。
【0008】この場合、前記漬け前液中の乳酸カルシウ
ムの濃度が3〜7%からなる溶液を原藻昆布に掛けて浸
け前し、調味時のアルギン酸ナトリウムは、原藻昆布の
重量に対して0.3〜1.4%の重量比率で添加してな
るものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて詳細に説明すると、図1に示すように、符
号1はこの発明に係る糸状削出し昆布の製法に用いられ
る原藻昆布からなる固形ブロック体である。
【0010】この固形ブロック体1は、図2に示すよう
に、後述する製造工程における圧縮方向P側を平面1a
として側面1b側に相当する部位をスライス面にして一
方向Xに沿って削り出すことにより、図3に示すような
「トロロ昆布」製品Wが製造されるようになっている。
【0011】次に、上記した固形ブロック体1の製造工
程を図4から図7及び図8のフローチャートに基づいて
説明すると、図4に示すように、貯液タンク11から第
1の液溜槽11A内に供給された醸造酢もしくは氷酢酸
希釈液(酸度が5%前後)などの漬け前液Aに乳酸カル
シウムの粉末Bを添加し、漬け前液A中の乳酸カルシウ
ムの濃度を3〜7%、好ましくは5%にして第2の液溜
槽11B内に貯溜された溶液Cを、乾燥した複数種の昆
布が結束された原藻昆布10の結束体10Aに柄杓11
Cにて掛けて漬け前し浸潤させることにより、原藻昆布
10を軟らかくする(図8のST1)。
【0012】この浸潤後の原藻昆布10の結束体10A
を数時間から数日間室内に積載して静置するか、必要に
応じて、湿潤促進のために微振動を与えるなどすること
により、原藻昆布10に水分を浸透させ、酸味が均一に
なるように寝かせて湿潤し、自然に半乾燥させて切断し
易くした後(図8のST2)、この湿潤後の原藻昆布1
0の結束体10Aを解束して、この軟らかな原藻昆布1
0をカッター12にて15〜20cm前後の小片状にカ
ットする(図8のST3)。
【0013】次いで、このようにカットされた各々の小
片10Bは、他の湿潤昆布クズの小片と共に砂取機13
内の上部に送り込まれ、例えば上段から下段に向け順次
網目が細かくなるように配置した上下3段のネット13
A,13B,13Cにて振るい掛けされてブラッシング
され、各々の小片10Bの表裏面に付着しているゴミ、
砂等を取り除くことによりクリーニングする(図8のS
T4)。
【0014】そして、このクリーニングした各々の小片
10Bは、図5に示すように、ミキサー14内に送り込
まれて撹拌され、ランダムに混合された後(図8のST
5)、ベルトコンベア14Aで自動計量器15に搬送さ
れて、計量ホッパ15A内に投入され蓄積されるととも
に、所定の単位重量(例えば約60kg)に計量した後
(図8のST6)、ベルトコンベア14Aを停止して、
計量ホッパ15A内の小片10Bをベルトコンベア15
B上に単位重量毎に排出する。
【0015】このベルトコンベア15B上に単位重量毎
に排出された小片10Bは、調味料配合器16内に送り
込まれ、この調味料配合器16内にて粉末調味料Dの配
合と共にアルギン酸ナトリウム粉末Eを原藻昆布の重量
に対して0.3〜1.4%、好ましくは1.0%の重量
比率で添加し混合して調味する(図8のST7)。
【0016】この場合、アルギン酸ナトリウム粉末E
は、昆布に17〜22%含有されている不溶性のアルギ
ン酸カルシウムを分離・精製することにより抽出し、水
溶性の粉末状に加工し製剤してなるものが好適に用いら
れるものであるが、水溶液を用いることも可能であり、
また、調味料Dとしても水溶液を用いることも可能であ
る。
【0017】次いで、この単位重量毎に調味されたアル
ギン酸ナトリウム後の小片10Bは、図6に示すよう
に、ベルトコンベア16Aにて小型プレス機17側に搬
送され、この小型プレス機17の4連に配置された各々
の仮締め用成形型枠17Aのそれぞれに所定量(例えば
約15kg)毎ランダムに充填し、各成形型枠17A内
の小片10Bを小型プレス機17にて20トンの加圧力
pにて圧縮し仮締めしてブロック状に半固形化する(図
8のST8)。
【0018】この半固形された4個のブロック体10C
を計量器18上に4段に重層して、所定の単位重量(例
えば60kg)に保たれているか否かの計量した後(図
8のST9)、ベルトコンベア18Aにて大型プレス機
19側に搬送し、この大型プレス機19による150ト
ンの加圧力Pにて圧縮し本締めして固形化し(図8のS
T10)、この固形化された固形ブロック体10Dを鉄
板20,20及びボルト・ナット21,21にて挾持し
締結して圧縮状態にて数日間静置し、水分が均一化する
ように寝かせて結着する(図8のST11)。
【0019】この湿潤・結着後の固形ブロック体10D
は、鉄板20,20及びボルト・ナット21,21を取
外した後、その周縁が耳取りされ、図7に示すように、
カッター22にてその圧縮方向P側を平面としてスライ
ス面となる側面を平滑に切削するとともに、所定の基準
寸法に裁断することにより(図8のST12)、図1に
示すような固形ブロック体1に形成される。
【0020】そして、このように正体化された固形ブロ
ック体1は、削出し加工装置30に装填され、その圧縮
方向P側を平面1aとして側面1b側に相当する部位を
スライス面にして一方向Xに沿ってカッター31にて削
り出すことによって(図8のST13)、図3に示すよ
うな糸状削出し昆布製品Wを得るもので、削り出された
製品Wは、作業員の手作業により丸め込み状態に整形し
て袋詰めされ、開封状態のまま計量器32にて計量後、
ベルトコンベア33にて搬送され、状態検査後、脱酸素
剤と共に密封されるようになっているものである。
【0021】すなわち、この発明は、原藻昆布10の小
片10Bからなる固形ブロック体1の製造に際して、小
片10Bに、醸造酢もしくは氷酢酸希釈液などの漬け前
液Aに乳酸カルシウムBが添加された溶液Cを掛けて漬
け前し、調味料Dの配合と共にアルギン酸ナトリウムE
を添加してなるために、小片10Bの固形ブロック化
時、アルギン酸ナトリウムに乳酸カルシウムが反応し
て、アルギン酸カルシウムの不溶性ゲル及び乳酸ナトリ
ウムが生成され、これによって、小片間の結着性及び保
湿性が高められ、従前のような加工直後の製品の乾燥が
防止される。
【0022】また、アルギン酸ナトリウムと乳酸カルシ
ウムの反応にて形成される不溶性ゲルが、原藻昆布に含
有されるアルギン酸カルシウムと同質なアルギン酸カル
シウムであるために、小片間の結着に不自然さがなく、
しかも、ゲル化によって昆布の酸味を封じ込めるため
に、酸味の持続性を高める。
【0023】さらに、不溶性ゲルが無味・無臭であるた
めに、製品自体の風味を損なわないばかりでなく、可逆
性がないために、従前のような経時変化で製品同士が塊
状に結着することがない。
【0024】ところで、下記の表1は、この発明に係る
漬け前液A中の乳酸カルシウムの濃度(%)に対する調
味液混合味のアルギン酸ナトリウムの添加量(%)の好
適な範囲関係を示すものである。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、この発
明は、乾燥した原藻昆布に、醸造酢もしくは氷酢酸希釈
液などの漬け前液に乳酸カルシウムが添加された溶液を
掛けて浸け前し、この浸潤後の原藻昆布を数時間から数
日間静置して水分を浸透させて、酸味が均一になるよう
に寝かせ、この湿潤後の原藻昆布を小片状にカットし、
この小片に調味料の配合と共にアルギン酸ナトリウムを
添加し混合して調味するとともに、この調味・混合後の
小片をブロック状に固形化し、この固形ブロック体を圧
縮状態にて数日間静置して水分が均一化するように寝か
せて結着させ、この湿潤・結着後の固形ブロック体を所
定の基準寸法に裁断して削出し加工装置に装填し、その
圧縮方向側を平面として側面側に相当する部位をスライ
ス面にして一方向に沿って削り出してなることから、固
形ブロック体の製造時、アルギン酸ナトリウムに乳酸カ
ルシウムが反応して、アルギン酸カルシウム及び乳酸ナ
トリウムの不溶性ゲルが生成されるために、小片間の結
着性及び保湿性を高めることができ、これによって、従
前のような加工直後の製品の乾燥を防止することができ
るとともに、「しっとり感」を維持することができる。
【0027】また、アルギン酸ナトリウムと乳酸カルシ
ウムの反応にて形成される不溶性ゲルが、原藻昆布に含
有されるアルギン酸カルシウムと同質なアルギン酸カル
シウムであるために、小片間の結着に不自然さがなく、
しかも、ゲル化によって昆布の酸味を封じ込めるため
に、酸味の持続性を高めることができる。
【0028】さらに、不溶性ゲルが無味・無臭であるた
めに、製品自体の風味を損なわないばかりでなく、可逆
性がないために、従前のような経時変化で製品同士が塊
状に結着することがない。
【0029】さらにまた、乳酸カルシウムの添加により
製品のカルシウム含有量が増大するために、従前の製品
よりもカルシウムの摂取量が多く、健康食品としての製
品価値の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る糸状削出し昆布の製法に用いら
れる原藻昆布の小片からなる固形ブロック体の実施の形
態を示す説明図。
【図2】図1のI−I線における拡大断面図。
【図3】同じく「トロロ昆布」製品を示す説明図。
【図4】同じく固形ブロック体の製造工程を概略的に示
す説明図。
【図5】同じく固形ブロック体の製造工程を概略的に示
す説明図。
【図6】同じく固形ブロック体の製造工程を概略的に示
す説明図。
【図7】同じく固形ブロック体による「トロロ昆布」製
品の製造工程を概略的に示す説明図。
【図8】同じく「トロロ昆布」製品の製造工程を示すフ
ローチャート。
【符号の説明】
1・・・固形ブロック体、 1a・・・平面、 1b・・・側面(スライス面)、 10・・・原藻昆布、 10A・・・結束体、 10B・・・小片、 10C・・・半固形ブロック体、 10D・・・固形ブロック体、 12・・・カッター、 13・・・砂取機、 14・・・ミキサー、 15・・・自動計量器、 16・・・調味料配合器、 17・・・小型プレス機(仮締め)、 18・・・計量器、 19・・・大型プレス機(本締め)、 22・・・カッター、 30・・・削出し加工装置、 31・・・カッター、 A・・・漬け前液、 B・・・乳酸カルシウムの粉末、 C・・・溶液、 D・・・調味料、 E・・・アルギン酸ナトリウムの粉末、 p・・・圧縮方向(仮締め)、 P・・・圧縮方向(本締め)、 X・・・削出し方向、 W・・・糸状削出し昆布製品。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】醸造酢もしくは氷酢酸希釈液などの浸け前
    液に乳酸カルシウムを添加し、漬け前液中の乳酸カルシ
    ウムの濃度が3〜7%からなる溶液を乾燥した原藻昆布
    掛けて浸潤させる浸け前工程と、 この浸漬後の原藻昆布を数時間から数日間静置して水分
    を浸透させかつ酸味が均一になるように寝かせる第1の
    湿潤工程と、 この湿潤後の原藻昆布を小片状にカットし、かつ、これ
    らの小片に、調味料の配合と共にアルギン酸ナトリウム
    を原藻昆布の重量に対して0.3〜1.4%の重量比率
    で添加し混合した調味液にて調味する調味工程と、 この調味・混合後の小片を所定の重量毎に充填し圧縮し
    てブロック状に固形化する圧縮工程と、 この固形ブロック体を圧縮状態にて数日間静置して水分
    が均一化するように寝かせて結着させる第2の湿潤工程
    と、 この湿潤・結着後の固形ブロック体を所定の基準寸法に
    裁断して削出し加工装置に装填し、かつ、その圧縮方向
    側を平面として側面側に相当する部位をスライス面にし
    て一方向に沿って削り出す切削工程とからなることを特
    徴とする糸状削出し昆布の製法。
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