JP3056136B2 - 線状体の腐食度測定装置および方法 - Google Patents

線状体の腐食度測定装置および方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】この発明は,強磁性線状体,たとえば吊
橋,斜張橋などに用いられる鋼製ロープ(ケーブル)の
腐食度を測定する方法および装置に関する。この明細書
において線状体とは,ケーブル,ロープ,ストランド,
コード,ワイヤ等の線状体,およびロッド,ポール,シ
ャフト,その他の棒状体を含み,撚ってあるもののみな
らず,単に束ねただけのものや単体のものも含む。ま
た,その径の大きさ,断面形状は問われない。
【0002】
【発明の背景】吊橋,斜張橋などに用いられる金属性
(特に鋼製)ロープまたはケーブルは屋外にあるので雨
風にさらされる。また,海岸付近では塩水の影響を受
け,工業地帯では亜硫酸の影響を受ける。このためロー
プ,ケーブルの腐食は免れない。
【0003】ロープまたはケーブルの腐食度の評価は一
般的には次のようにして行なわれていた。
【0004】直径60[mm]以下のロープについては,漏え
い磁束探傷試験によりロープの損傷を検出していた。こ
の方法では断線等の局部損傷は検出できるが全体的な腐
食は評価できない。
【0005】直径60[mm]を超えるロープについては,ロ
ープの外観を目視することによりロープの腐食度を評価
していた。この方法ではロープの腐食度評価の精度が悪
い。
【0006】また,いわゆる全磁束法を利用してロープ
またはケーブルの腐食度を評価する装置もあるが,この
装置は大型化せざるを得ず,測定環境により磁化状態が
変化するため,精度が悪くなることがある。
【0007】
【発明の開示】この発明は,装置が比較的大型化するこ
となく,かつ比較的高い精度でロープ,ケーブル等の線
状体の腐食度を評価できる方法および装置を提供するこ
とを目的とする。
【0008】この発明による線状体の腐食度測定方法
は,腐食度を測定すべき測定対象線状体を磁化し,測定
対象線状体を磁化する磁界の強さを検出し,磁化された
測定対象線状体内を通る磁束量を検出し,検出した磁界
の強さ,磁束量および測定対象線状体の透磁率に基づい
て測定対象線状体の断面積に関する値を算出し,算出さ
れた測定対象線状体の断面積に関する値と,基準線状体
の断面積に関する値との比較に基づいて測定対象線状体
の腐食の程度を測定するものである。
【0009】測定対象線状体は強磁性体であることを前
提とする。この測定対象線状体を磁化する。磁化する磁
界の強さをHとする。磁化された測定対象線状体内を通
る磁束量をΦ,その磁束密度をBとする。
【0010】測定対象線状体の透磁率をμ,測定対象線
状体の断面積をAとすると次式が成り立つ。
【0011】B=μH=Φ/A 式1
【0012】この式1を変形すると次式が得られる。
【0013】A=Φ/μH 式2
【0014】透磁率μおよび磁界の強さHを一定とする
と,測定対象線状体の断面積Aは磁束量Φに比例する。
測定対象線状体の腐食の程度は断面積Aの大きさに現わ
れる。腐食が無ければ一般には断面積Aは一定に保たれ
る。腐食が進むと断面積Aは小さくなる(腐食した部分
は非磁性体として取扱える)。したがって,基準となる
線状体の断面積と測定対象線状体の断面積を比較すれ
ば,測定対象線状体の腐食度合を評価することができ
る。
【0015】基準線状体としては測定対象線状体そのも
の,測定対象線状体と同じ材質,構造の線状体等を用い
ることができる。新品の線状体(たとえばケーブル,ロ
ープ)を敷設するときにその断面積を測定しておく(こ
れを初期断面積とする)。この線状体の敷設後,ある期
間が経過したときに(たとえば1年後,5年後,10年
後,20年後など)その敷設されている線状体の断面積を
再び測定し,測定した断面積を初期断面積と比較すれば
その期間の間に生じた腐食の程度を評価できる。過去に
設けられた線状体について腐食をみるときには,その線
状体と同材質,同構造,同寸法の新品の線状体を作成
し,この新品の線状体を基準とすればよい。
【0016】腐食度の評価のためには断面積に関する値
を用いれば充分である。断面積に関する値とは断面積A
そのものでもよいし,断面積に比例する値,検出した磁
束量Φ,磁束量Φに比例する値等が含まれる。
【0017】磁界の強さHおよび透磁率μを一定と仮定
する必要は必ずしもない。式2によれば,透磁率μ,磁
界の強さHおよび磁束量Φが分れば断面積Aに関する値
が求まる。したがって,磁界の強さHと磁束量Φを測定
すればよい。透磁率μは測定対象線状体と同質材料の線
状体について(断面積は既知),磁界の強さHに対応し
てあらかじめ求めておくことができる。
【0018】一般に強磁性体は磁気的なヒステリシス特
性を持つ。測定対象線状体を磁化するやり方(電流の方
向とその増加,減少の方向)を固定的に定めておくとと
もに,磁界の強さに対して磁束量が一義的に定まる,な
いしはほぼ一義的に定まる領域で測定を行う。たとえ
ば,磁界が飽和した領域で磁界の強さと磁束量を測定す
ればよい。
【0019】測定対象線状体の磁化は線状体に磁化コイ
ルを巻き,この磁化コイルに電流を流すことにより実現
できる。
【0020】測定対象線状体が非磁性体(コンクリー
ト,合成樹脂)等で被覆されている場合にもこの発明は
適用できる。むしろ,測定対象線状体が被覆されている
場合にはその内部にある線状体の状態を目視できないの
で,この発明による方法が有効である。
【0021】この発明による線状体の腐食度測定方法を
実現するための装置は次のように構成される。
【0022】すなわちこの発明による腐食度測定装置
は,腐食度を測定すべき測定対象線状体を磁化する磁化
コイル,上記磁化コイルにより形成される磁界の強さを
検出する磁界測定装置,上記磁化コイルにより磁化され
た測定対象線状体内を通る磁束量を検出する磁束測定装
置,上記磁界測定装置により検出される磁界の強さ,上
記磁束測定装置により検出される磁束量および測定対象
線状体の透磁率にもとづいて測定対象線状体の断面積に
関する値を算出する断面積演算手段,ならびに上記断面
積演算手段により算出された断面積に関する値と基準線
状体の断面積に関する値との比較に基づいて測定対象線
状体の腐食の程度を表わす出力信号を生成する手段を備
えている。
【0023】測定対象線状体の断面積に関する値と基準
線状体の断面積に関する値との比較を人間が行うように
するときには,上記出力信号生成手段は不要となる。
【0024】また,測定対象線状体の断面積に関する値
の算出を人間が行うようにすれば上記断面積演算手段も
不要となる。
【0025】この発明によると,測定対象線状体に磁化
コイルを巻回しかつこの磁化コイルに電流を流すことに
より線状体を磁化しているので,装置が小型,軽量とな
り,作業性が良い。
【0026】また,測定対象線状体を磁化する磁界の強
さと,磁化された線状体内を通る磁束量とに基づいて線
状体の腐食の度合いを測定しているので,測定環境に左
右されずに常に高い精度を保つことができる。
【0027】この発明はまた,腐食度を評価すべき対象
物を磁化するのに適した磁化器を提供している。
【0028】この磁化器は,測定対象物の一部をとり囲
むように配置されるものであって複数の部分に分離自在
なリール,上記リールの複数の部分を相互に結合させる
手段,および上記リールに巻回される磁化コイルを備え
ている。
【0029】リールは複数の部分からなるので,これら
の部分を測定対象物を囲むように配置して結合させれば
リールを測定対象物に取付けることができる。このリー
ルに磁化コイルを巻き付ければ磁化器ができる。
【0030】好ましくはこの磁化器は固定バンドによっ
て測定対象物に固定される。固定バンドの一部を磁化器
のリールの中央孔に入るようにしておけば磁化器は固定
バンドによって回転自在に支持される。これにより,リ
ールへの磁化コイルの巻回作業が容易となる。
【0031】この発明はまた上述した磁束測定装置の一
部として用いられる検出コイル装置を提供している。
【0032】この検出コイル装置は,測定対象物の一部
をとり囲むように配置されるボビンと,このボビンに巻
回された状態で設けられる検出コイルとから構成され
る。上記ボビンは複数の部分に分離自在に構成される。
上記検出コイルは,上記ボビンの分離自在な複数の部分
にそれぞれ設けられたコイル部分と,コイル部分の両端
に接続されたコネクタとから構成される。上記ボビンの
部分が上記ボビンを形成するように結合されたときにボ
ビン部分の対応するコネクタが相互に接続され,このよ
うにして接続されたコイル部分により上記検出コイルが
形成される。
【0033】このようにして,測定対象物のまわりに検
出コイルを容易に配置することができる。
【0034】上記の検出コイル装置のボビンに,上記磁
界測定装置の一部を構成する磁界検出素子を設けておく
と,構成が一層コンパクトになる。
【0035】
【実施例の説明】以下,この発明を橋を吊るロープ(ま
たはケーブル)の腐食度検出に適用した実施例について
詳述する。図1はロープの腐食度検出装置の斜視図,図
2はロープの腐食度検出装置を構成する検出コイル装置
1および磁化器20をロープに取付けた様子を示す正面図
である。図3は腐食度検出装置の電気的構成を示すブロ
ック図である。
【0036】吊橋を例にとると,橋を吊るロープ40の近
くにはロープ40の保守点検のための作業用通路が,ロー
プ40に沿って設けられていることが多い。作業用通路は
ロープ40が傾斜しているところでは階段状に形成されて
いる(階段50)。
【0037】ロープ40の腐食を検査すべき部分に磁化器
20が設けられ,この磁化器20はその両側においてロープ
40に固定された固定バンド30によって,ロープ40に固定
され,かつ位置決めされる(図1では手前の固定バンド
30のみが見えている。図2では固定バンド30の図示が省
略されている)。磁化器20の内側とロープ40との間には
空間があり,ここに検出コイル装置1が設けられ,この
検出コイル装置1はロープ40にきつく嵌っている。
【0038】磁化器20には,ロープ40を巻回した磁化コ
イルCが含まれている。この磁化コイルCには,階段50
上に置かれた通電方向切替装置41を介して電源45によっ
て磁化電流が流される。手動操作される通電方向切替装
置41によって磁化コイルCに流れる電流の方向が切替え
られる。磁化コイルCに磁化電流が流れることにより磁
界が発生し,ロープ40の磁化器20によって囲まれた部分
が磁化される。電源41から磁化コイルCに流れる電流の
大きさはコンピュータ44によって制御される。電流方向
切替もコンピュータ44によって制御してもよい。逆に磁
化コイルCに流す電流の大きさを手動で調整してもよ
い。
【0039】検出コイル装置1にはロープ40を巻回する
磁束検出コイル12が含まれている。この検出コイル12は
シールド線により磁束測定装置(フラックス・メータ)
43に接続されている。磁化コイルCにより磁化されたロ
ープ40内を通る磁束量が磁束測定装置43によって検出さ
れ,この検出信号がコンピュータ44に与えられる。
【0040】検出コイル装置1にはさらに4個のホール
素子10が設けられている。ホール素子10は磁界測定装置
(ガウス・メータ)42に接続されている。4個のホール
素子10からそれぞれ出力されるホール電圧の平均値に基
づいて磁界測定装置42によって磁化器20が固定されたロ
ープ40近傍の磁界の強さ,すなわち磁化器20によって発
生する磁界の強さが検出され,コンピュータ44に与えら
れる。
【0041】コンピュータ44にはロープ40の透磁率μ,
およびロープ40と同じ素材から構成され,同じ構造と同
じ寸法をもつ新品のロープの断面積(基準断面積)A0
があらかじめ入力され,そのメモリに記憶されている。
この基準断面積A0 は,好ましくは図1〜図3に示す腐
食度検出装置を用いて,ロープ40の断面積Aを測定する
のと同じやり方で,上記の新品のロープについてあらか
じめ測定される。
【0042】上述した式2において,磁界の強さHは磁
界測定装置42によって,磁束量Φは磁束測定装置43によ
ってそれぞれ測定され,コンピュータ44に与えられる。
コンピュータ44はこれらの与えられた磁界の強さH,磁
束量Φ,およびあらかじめ設定された透磁率μを用い
て,式2から,ロープ40の磁化器20が取付けられた部分
の断面積Aを算出する(透磁率を一定とみなすためには
約40KA/m以上の磁界の強さが必要である)。さらにコ
ンピュータ44は算出された断面積Aとコンピュータ44に
あらかじめ設定されている基準断面積A0 とを用いて次
式にしたがって,ロープの腐食度を算出する。
【0043】腐食度=A/A0 (%) 式3
【0044】ロープ40は強磁性体であり,その成分は主
に鉄(Fe)である。ロープ40の一部が腐食することは
鉄成分が酸化して酸化鉄(Fe23 )になっていると
考えられる。酸化鉄の透磁率は小さく,非磁性体として
取扱ってよい。
【0045】ロープ40の一部が腐食すると強磁性体であ
る部分の断面積Aが腐食の度合いに応じて小さくなる。
したがって,基準ロープの断面積A0 を基準として,こ
の基準断面積A0 と測定断面積Aとを比較すればロープ
40の腐食の度合いが分る。式3に代えて, 腐食度=(A0 −A)A0 式4 と定義することもできるし,他の定義(A0 とAとが比
較できればよい)を用いることもできる。
【0046】図4は強磁性体を磁化したときのその磁界
の強さHと強磁性体に生じる磁束量Φとの関係,すなわ
ちヒステリシス特性を示している。ヒステリシス特性の
ために,磁界の強さHに対して磁束量Φが一意的に定ま
らない領域がある。上述した腐食度の測定においては磁
束量Φが飽和した領域における磁界の強さHと磁束量Φ
との関係からロープ40の断面積Aを算出する。
【0047】より好ましくは,次に述べるように磁化曲
線における複数の点の測定値の平均値に基づいて断面積
Aまたは腐食度を算出する。
【0048】磁化コイルCに流す磁化電流を0[A] から
少しづつ上げていき磁束が飽和するまで(たとえば500
[A]まで)上昇させる。磁束が飽和したときの磁界の強
さH1および磁束量Φ1 を磁界測定装置42および磁束測
定装置43によりそれぞれ測定する。測定により得られた
磁界の強さH1 および磁束量Φ1 ならびにロープ40の透
磁率μを用いて式2にしたがった第1回目の断面積A1
を算出する。
【0049】つづいて磁化電流を少しずつ下げていき一
旦0[A] に戻す。ここで通電方向切替装置41を操作し
て,磁化電流の流れる方向を切替える。磁化電流を少し
ずつ負方向に大きくしていく。磁束が飽和したとき(た
とえば−500[A]の磁化電流が流れたとき),磁界の強さ
2 および磁束量Φ2 を磁界測定装置42および磁束測定
装置43によりそれぞれ測定する。測定された磁界の強さ
2 および磁束量Φ2 ならびにロープ40の透磁率μを用
いて式2から第2回目の断面積A2 を算出する。
【0050】さらに磁化電流を−500[A]から正方向に少
しずつ上げていき一旦0[A] に戻す。磁化電流の方向が
再び逆方向となるように通電方向切替装置41を操作し,
その後再び磁化電流を少しずつ正方向に再び500[A]にな
るまで上げていき,そのときの磁界の強さH3 および磁
束量Φ3 を測定する。測定された磁界の強さH3 および
磁束量Φ3 ならびにロープ40の透磁率μを用いて式2か
ら第3回目の断面積A3 を算出する。
【0051】磁化電流を再び500[A]から少しずつ下げ,
0[A] となったときに,通電方向切替装置41を操作して
磁化電流を逆方向にする。磁化電流を少しずつ負の方向
に大きくしていき,再び−500[A]となったときに,磁界
の強さH4 および磁束量Φ4を測定する。測定された磁
界の強さH4 および磁束量Φ4 ならびにロープ40の透磁
率μを用いて式2から第4回目の断面積A4 を算出す
る。
【0052】以上のようにして得られた第1回目の断面
積A1 から第4回目の断面積A4 までの平均断面積AAV
を算出する。算出された平均断面積AAVと基準断面積A
0 との比から腐食度を得る(式3を用いると,腐食度=
AV/A0 )。
【0053】第1回目から第4回目までに得られた磁界
の強さH1 〜H4 の平均値HAVを算出し,第1回目から
第4回目までの磁束量Φ1 〜Φ4 の平均値ΦAVを算出
し,これらの平均値HAV,ΦAVを用いて平均断面積AAV
を求めてもよい。
【0054】磁界の強さおよび磁束量の測定は上述の4
回に限らず,2回もしくは3回でもよいし,または5回
以上でもよいのはいうまでもない。
【0055】長いロープ40については,磁化器20および
検出コイル装置1を設ける位置を少しずつ(ほぼ磁化器
20の長さに相当する長さ)変えながら,上述した測定を
繰返せば,ロープ40の全体についてその腐食度合を評価
することができる。
【0056】ロープ40が裸(むき出し)ではなく,何ら
かの非磁性体(たとえばコンクリート)によって覆われ
ている場合にも上述した測定法を用いることができる。
この場合には,ロープ40を被覆する非磁性体の全体を囲
むように磁化器20および検出コイル装置1を設ければよ
い。ロープが被覆されている場合にはロープの腐食度合
を目視することができないので,上記の方法は特に有効
である。
【0057】上記では測定断面積Aと基準断面積A0
を算術比較して腐食度を求めているが,腐食度を求める
方法には種々のものがある。たとえば,断面積Aを横
軸,腐食度を縦軸として検量線をあらかじめ用紙に描い
ておけば(またはコンピュータ44のメモリに記憶してお
けば),この検量線を利用して測定断面積Aから腐食度
を得ることができる。断面積A,A0 そのものではな
く,これらに比例する値を用いることもできる。さら
に,磁界の強さHを一定にしてすべての測定を行なえ
ば,測定した磁束量Φから直接に(断面積を算出しなく
ても)腐食の程度を知ることができる。
【0058】図5(A) 〜(C) は検出コイル装置1を少し
拡大して示すもので,(A) は正面図,(B) は側面図,
(C) は(A) のVC−VC線の断面図である。図6(A) 〜
(C) は検出コイル装置1を構成するボビンをさらに拡大
して示すものであり,(A) は正面図,(B) は側面図,
(C) は底面図をそれぞれ示している。
【0059】検出コイル装置1は全体的に円環状の形状
をもち,これを丁度半分に割った形の2つの半体3と4
とから構成されている。これらの半体3,4は合成樹脂
のような非磁性体でかつ絶縁体であるものにより形成さ
れている。検出コイル装置1の内径はロープ40(または
ロープを被覆するもの)の外径とほぼ同じ寸法に形成さ
れている。
【0060】半体3には半円形のボビン2が含まれてい
る。半円形のボビン2の両側にはフランジ2aが形成さ
れており,このフランジ2aの間においてボビン2の外
周面に数本のコイル部分12が相互に絶縁した状態で取付
けられている。ボビン2の両端部にはコネクタ13が設け
られ,コイル部分12の両端がそれぞれ接続されている。
【0061】半体3にはボビン2よりも一回り大きな半
円形の外カバー6が設けられ,ボビン2と外カバー6と
がその両側面において横板11によって相互に結合してい
る。
【0062】半体4も半体3とほぼ同じ構成であり,半
円形のボビン5とこの半円形のボビン5よりも一回り大
きな外カバー7を含んでいる。ボビン5および外カバー
7の両側面に横板11が取付けられている。ボビン5の外
周面にも数本のコイル部分が設けられ,両端のコネクタ
に接続されている。
【0063】半体3および半体4の内部空間にはほぼ90
度の間隔で4つのホール素子10が設けられている。
【0064】検出コイル装置1の一方の側面の横板11に
コネクタ9が設けられている。これらのコネクタ9にホ
ール素子10が接続されている。コネクタ9にシールド線
16を接続することにより,ホール素子10の出力信号が外
部に導き出され,磁界測定装置42に与えられる。検出コ
イル装置1の側面にはまたコネクタ8が設けられてい
る。このコネクタ8にコイル部分12が接続されている。
コネクタ8にシールド線15を接続することにより,検出
コイル(コイル部分12によって形成される)が磁束測定
装置43に接続される。
【0065】検出コイル装置1の半体3と4の端部には
それぞれ対となるキャッチ・グリップ14が取付けられて
いる。このキャッチ・グリップ14により半体3と半体4
とが分離可能に結合され,検出コイル装置1となる。
【0066】ロープ40の腐食度の測定作業を行うときに
は,キャッチ・グリップ14が開放され,検出コイル装置
1が半体3と4とに分けられる。2つの半体3と4とに
よってロープ40(被覆があるときにはロープの被覆)を
挟む。キャッチ・グリップ14を閉めることにより,円環
状の検出コイル装置1となり,これがロープ40にきつく
固定される。また半体3に設けられたコネクタ13と半体
4に設けられたコネクタ(図示略)とが電気的に接続さ
れることにより,半体3に設けられたコイル部分12と半
体4に設けられたコイル部分とが,ロープ40のまわりを
巻回するように(数ターン程度)電気的につながり,こ
れにより検出コイルが形成される。
【0067】シールド線15がコネクタ8に接続され,検
出コイルは磁束測定装置43に接続される。同じようにシ
ールド線16がコネクタ9に接続され,ホール素子10は磁
界測定装置42に接続される。
【0068】図7(A) および(B) は磁化器20に含まれる
リール29を示し,(A) は正面図,(B) は(A) のVII B−
VII B線に沿う断面図である。
【0069】磁化器20はリール29に磁化コイルCが巻か
れることにより構成される。リール29は非磁性体,たと
えばアルミニウムにより形成される。
【0070】リール29は2つの半円筒21および22から構
成されている。半円筒21の両端にはフランジ21aが形成
され,半円筒22の両端にはフランジ22aが形成されてい
る。フランジ21aおよび22aの接合部に複数のねじ穴24
が形成されている。一方の半円筒22のフランジ22aには
コイルの端部を外部に引出すための開口27が形成されて
いる。
【0071】半円筒21と半円筒22とが円筒を構成するよ
うに合わされ,かつ半円筒21のフランジ21aと半円筒22
のフランジ22aの接合部にプレート25が置かれ,このプ
レート25がねじ穴24を通してフランジで21a,22aにね
じ止めされることにより半円筒21と半円筒22とが円筒を
形成するように結合される。この円筒(リール)の内径
は上述した検出コイル装置1がその円筒の内部に収まる
のに充分な大きさにつくられる。
【0072】ロープ40の腐食度を測定する作業にあたっ
ては,まず上述したようにロープ40に検出コイル装置1
を取付ける。ロープ40およびそれに取付けられた検出コ
イル装置1を囲むように半円筒21および半円筒22をこれ
らに被せ,かつ半円筒21と半円筒22とをねじ止めにより
結合してリール29を形成し,後述する固定バンド30によ
ってリール29を固定する。リール29に検出コイルCを手
巻きする。検出コイルCはロープ40を均一に磁化するた
めに整列巻きとされる。たとえば25回ずつ4層に巻かれ
る。磁化コイルCの端部が開口27から引出され,通電方
向切替装置41に接続される。以上により磁化器20が構成
される。磁化コイルCをモータ等を用いて機械巻きして
もよい。
【0073】作業性を考慮すると,磁化コイルCの巻回
数を少なくして(たとえば50〜500ターン),大きな磁
化電流を流すようにすることが好ましい。
【0074】図8(A) ,(B) および(C) は固定バンドを
示しており,(A) は正面図,(B) はVIIIB−VIIIB線に
沿う断面図,(C) は(A) のVIIIC−VIIIC線に沿う断面
図である。
【0075】固定バンド30は半円形の半体31および32か
ら構成されている。固定バンド30もまた非磁性体により
つくられる。
【0076】半体31および32の両端部にはその径方向に
固定片33が形成されている。この固定片33にはねじ穴34
が形成されている。半体31と半体32とを円となるように
互いに合わせ,これにより互いに接する固定片33をその
ねじ穴34を通してねじ止めすることにより,半体31と半
体32とが結合される。
【0077】半体31,32の内周面に沿ってゴム・パッキ
ン31が取付けられている。固定バンド30の内径はロープ
40(またはその被覆)の外径とほぼ同じ大きさに形成さ
れている。ゴム・パッキン31により,固定バンド30の内
周面とロープ40の外周面とが密着する。
【0078】半体31,32にはその外周面のやや内側に入
った位置に,外側に延びるフランジ36が形成されてい
る。磁化器20のリール29のフランジ21aおよび22aの中
央孔28内に固定バンド30がゆるく入り込み,かつフラン
ジ36がフランジ21a,22aに接するように固定バンド30
をロープ40に取付けると,リール29は固定バンド30によ
って回転自在に保持される。検出コイルCを巻くとき
に,リール29を回転させ,コイル巻回作業を楽にするこ
とができる。
【0079】固定バンド30は,磁力発生器20の両側に設
ける必要は必ずしもない。図1に示すようにロープ40が
傾斜している場合,磁力発生器20の下側にのみ固定バン
ド30を取付けてもよい。またロープ40が傾斜していなけ
れば固定バンド30は必ずしも必要ではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロープ(線状体)の腐食測定装置の全体を示す
斜視図である。
【図2】磁化器と検出コイル装置との関係を示す正面図
である。
【図3】ロープ(線状体)の腐食度測定装置の電気的構
成を示すブロック図である。
【図4】ヒステリシス特性を示す磁化曲線を示すグラフ
である。
【図5】(A) は検出コイル装置の拡大正面図,(B) はそ
の側面図,(C) は(A) のVC−VC線に沿う断面図であ
る。
【図6】(A) 〜(C) は検出コイル装置のボビンを拡大し
て示すもので,(A) は正面図,(B) は側面図,(C) は底
面図である。
【図7】(A) は磁化器を構成するリールの正面図,(B)
は(A) のVII B−VII B線に沿う断面図である。
【図8】(A) は固定バンドの正面図,(B) は(A) のVIII
B−VIIIB線に沿う断面図,(C) は(A) のVIIIC−VIII
C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 検出コイル装置 10 ホール素子 20 磁化器 30 固定バンド 40 ロープまたはケーブル(線状体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−11852(JP,A) 特開 平3−262958(JP,A) 特開 昭50−43958(JP,A) 特開 平3−96855(JP,A) 特開 平6−331602(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/72 - 27/90

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 腐食度を測定すべき測定対象線状体を磁
    化する磁化コイルを含む磁化器, 上記磁化コイルにより形成される磁界の強さを検出する
    磁界測定装置, 上記磁化コイルにより磁化された測定対象線状体内を通
    る磁束量を検出する検出コイル装置,ならびに上記磁界
    測定装置により検出される磁界の強さ,上記検出コイル
    装置により検出される磁束量および測定対象線状体の透
    磁率にもとづいて,測定対象線状体の腐食の程度を表わ
    す出力信号を生成する手段を備え, 上記磁化器が,測定対象線状体の一部をとり囲むように
    配置されるものであって複数の部分に分離自在なリー
    ル,上記リールの複数の部分を相互に結合させる手段,
    および上記リールに巻回される磁化コイルを備え,測定
    対象線状体に回転自在に取付けられるものであり, 上記検出コイル装置は,測定対象線状体の一部をとり囲
    むようにかつ上記磁化器のリールの内部に配置されるボ
    ビンと,このボビンに巻回される検出コイルとを含み,
    上記ボビンが複数の部分に分離自在であり, 上記磁界測定装置は,上記磁化器のリールの内部に配置
    される磁界検出素子を含んでいる, 線状体の腐食度測定装置。
  2. 【請求項2】 上記検出コイル装置を含む磁束測定装置
    を備えている,請求項1に記載の腐食度測定装置。
  3. 【請求項3】 上記出力信号生成手段が,上記磁界測定
    装置により検出される磁界の強さ,上記検出コイル装置
    により検出される磁束量および測定対象線状体の透磁率
    にもとづいて測定対象線状体の断面積に関する値を算出
    し,算出された断面積に関する値と基準線状体の断面積
    に関する値との比較に基づいて測定対象線状体の腐食の
    程度を表わす出力信号を生成するものである, 請求項1または2に記載の腐食度測定装置。
  4. 【請求項4】 上記磁界検出素子が上記検出コイル装置
    のボビン内に設けられている,請求項1に記載の装置。
  5. 【請求項5】 上記検出コイル装置において,上記検出
    コイルが,上記ボビンの分離自在な複数の部分に設けら
    れたコイル部分と,その両端に接続されたコネクタとか
    ら構成され,上記ボビンの部分が上記ボビンを形成する
    ように結合されたときにボビン部分の対応するコネクタ
    が相互に結合し,これにより接続されるコイル部分によ
    り上記検出コイルが形成される,請求項1に記載の腐食
    度測定装置。
  6. 【請求項6】 測定対象線状体に設けられる上記磁化器
    を固定するためのバンドであり,複数の部分に分離自在
    であり,これらの複数の部分を相互に結合させる手段
    と,外方に突出するフランジ部分とを有している固定バ
    ンドをさらに備えた請求項1に記載の腐食度測定装置。
  7. 【請求項7】 請求項1から6のいずれか一項に記載の
    腐食度測定装置を用いて,線状体の腐食度を測定する方
    法であり, 上記検出コイルを線状体に取付け, 取付けられた検出コイルを囲むように上記磁化器のリー
    ルを取付け, リールに上記磁化コイルを巻いて上記磁化器を形成し, 上記磁化コイルに通電して線状体を磁化する, 線状体の腐食度測定方法。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の腐食度測定装置を用い
    て,線状体の腐食度を測定する方法であり, 上記検出コイルを線状体に取付け, 取付けられた検出コイルを囲むように上記磁化器のリー
    ルを取付け, 上記固定バンドを線状体に固定し,固定バンドによって
    上記リールを回転自在に保持し, 回転自在に保持されたリールに上記磁化コイルを巻いて
    上記磁化器を形成し, 上記磁化コイルに通電して線状体を磁化する, 線状体の腐食度測定方法。
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