JP3054353B2 - 木材単板の処理液注入前処理方法 - Google Patents

木材単板の処理液注入前処理方法

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JP3054353B2 JP7350568A JP35056895A JP3054353B2 JP 3054353 B2 JP3054353 B2 JP 3054353B2 JP 7350568 A JP7350568 A JP 7350568A JP 35056895 A JP35056895 A JP 35056895A JP 3054353 B2 JP3054353 B2 JP 3054353B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、WPCの製造に好
適な木材単板の処理液注入前処理方法、特に、木材単板
の歩留りおよび処理液注入後の美観を向上させることが
できる木材単板の処理液注入前処理方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来から、木材単板に種々の合成樹脂液
や改質処理液を注入含浸して、木材単板に耐磨耗性や硬
度等の強度的性質を付与したり、耐水性や寸法安定性を
向上させたり、或いは難燃性や防腐、防蟻性の付与や外
観性の向上を図ることが行われている。特に、木材単板
を建築材料や家具などの表面化粧材として使用する場合
には、該木材単板に合成樹脂液を含浸、硬化させて木材
単板と合成樹脂との複合材である、いわゆるWPCに形
成することが広く実施されている。
【0003】このようなWPC化による化粧材は、元の
木材単板に比べて所定の物理的な性能が付与されている
ことは勿論であるが、同時に高い化粧性が要求されるも
のである。しかしながら、木材単板に合成樹脂液を含浸
すると、合成樹脂液が木材単板、特にその早材部に均一
に含浸されず、このため含浸ムラとなって化粧性、装飾
性を損なうことがあり、生産の歩留りを低下させる要因
となっていた。
【0004】そこで、図5に示すように、木材単板11を
その表裏面からロールプレス12や平板プレスで押圧して
木材の細胞壁に多数の亀裂を生じさせる機械的処理方
法、或いは、木材単板を過酸化水素水やオゾン水などの
酸化性薬剤で化学処理することによって木材単板の細胞
壁に孔をあける等の前処理方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
前処理方法によれば、木材単板を1枚ずつ厚み方向に押
圧するため、その押圧により木材単板が幅方向に押し拡
げられて木材繊維間が離間する方向の作用力を受け、そ
の結果、木材単板に大きな亀裂が発生して商品価値が低
下することなり、歩留りの低下をきたすという問題点が
あった。一方、後者の化学的前処理方法によれば、薬剤
を使用するための特別な処理設備を必要とするばかりで
なく木材単板の細胞壁に孔をあけるには長時間を要して
生産能率が低下し、特に、長尺の木材単板の処理が困難
となる等の問題点があった。本発明はこのような問題点
を全面的に解消し得る木材単板の処理液注入前処理方法
を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の木材単板の処理
液注入前処理方法は、複数枚の木材単板を、木材繊維の
方向を同一方向に揃えて単板厚み方向に積層し、この積
層単板の幅方向の両側端面を挟持材によって挟持した状
態で厚み方向から押圧して積層単板を構成する全ての木
材単板を厚み方向に圧縮することにより、木材細胞壁に
無数の亀裂を生じさせることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明すると、まず、平面形状が同一大きさの長方形
状に形成されている木材単板1を複数枚、その繊維方向
を同一方向に揃えて厚み方向に積層する。木材単板1と
しては、スライス単板、ロータリー単板、ソード単板な
どが用いられ、その厚みは特に限定されるものではない
が0.2〜5mm程度のものを採用するのが好ましく、化粧
単板として使用する場合には装飾性や経済性から0.2 〜
1.0mm 厚のスライス単板が好適である。また、木材単板
の樹種についても特に限定されないが、針葉樹の方が広
葉樹に比べて経済的で入手し易く、その上、早材部の木
材細胞が比較的均質であるため圧縮処理が容易であると
共に合成樹脂液の含浸等による早材部と晩材部との濃淡
反転効果が得られ易いので、針葉樹の木材単板の方が広
く適用することができる。さらに、木材単板1としては
板目単板や追い柾単板を使用する。
【0008】このような木材単板1に対して合成樹脂液
などの処理液の含浸が容易に行えるようにするための前
処理方法としては、複数枚の木材単板1を上述したよう
にその繊維方向を同一方向に揃えた状態で積層したの
ち、図1に示すようにこの積層単板Aの両側、即ち、幅
方向の両側端面に挟持材2、2を配設し、これらの挟持
材2、2によって積層単板Aを挟持した状態で図2に示
すように、積層単板Aを厚み方向に圧縮するものであ
る。
【0009】この前処理方法をさらに詳述すると、積層
単板Aの木材繊維方向と直交する幅方向の両側端面に、
該両側端面の形状よりも大きい四角形状に形成され且つ
表面が平滑で剛性を有する材料からなる板状挟持材2、
2を、その平滑な表面が積層単板Aの両側端面に当接す
るように配したのち、これらの左右挟持材2、2の裏面
に木材単板1よりも長い断面矩形状の角状金属管からな
る固定部材3、3を当接させ、積層単板Aの長さ方向の
両端面から突出している表裏固定部材3、3の突端部に
設けているボルト孔4に長尺ボルト5を挿通してナット
6を螺締することにより積層単板Aを左右挟持材2、2
で挟圧させた状態にする。
【0010】この状態にしたのち、図2に示すように、
積層単板Aを上下プレス盤7a、7b間に挿入し、積層単板
Aの表裏面(厚み方向の上下面)に該積層単板Aの上下
面の形状に等しい大きさ、形状を有する適宜厚みの板状
押圧部材8、8を重ね合わせてこれらの押圧部材8、8
の平坦な対向面を積層単板Aの上下面に全面的に密接さ
せた状態にする。
【0011】しかるのち、上下プレス盤7a、7bによって
押圧部材8、8を介して積層単板Aの上下面を加圧する
と、積層単板Aは厚み方向に圧縮される。積層単板Aを
構成する各木材単板1は、板目単板または追い柾単板で
あるため、厚み方向に圧縮されると、図3に示すよう
に、成長が早くて細胞腔が大きく且つ細胞壁の強度が小
さい早材部1aが強度の大きい晩材部1bを介して木材単板
1の厚み方向に圧縮変形し、該早材部1aの木材細胞に多
数の微細な亀裂が生じることになる。なお、積層単板A
の厚み方向の圧縮は、通常、積層単板Aが10〜50%程度
までその厚みを減ずるまで行われる。なんとなれば、圧
縮率が10%未満であると亀裂の発生が不充分であるため
に爾後における木材単板への樹脂注入効果が現れず、50
%を越えると木材細胞の組織の破壊が著しくて樹脂注入
処理による化粧性が損なわれるからである。
【0012】また、使用する木材単板1の樹種や木目、
圧縮の度合いによっては、圧縮処理後に木材単板1が歪
み等の変形が残留する場合がある。この場合は水等の溶
媒を用いて木材単板1を膨潤させた後、乾燥することに
よって復元することができる。この処理を行うことによ
って単板の歩留りが向上する。
【0013】なお、積層単板Aを挟持した状態で固定す
る手段としては、図1に示すように挟持材2、2を積層
単板Aの両側端面に密接させてこれらの挟持材2、2の
背面に沿わせた固定部材3、3間を長尺ボルト5とナッ
ト6により挟着した手段を採用しているが、この手段に
おいて、挟持材2と固定部材3との間、或いは固定部材
3とナット6との間に弾性力の大きいコイルスプリング
を介在させた構造としておいてもよい。また、挟持材2
として硬質ゴム板、合板等の材質のものが適している
が、このような材質に限定されることなく、要するに、
積層単板Aを厚み方向に押圧、圧縮するときに、積層単
板Aを構成する各木材単板1が大きく裂けないように保
持できるものであればよい。例えば、図4に示すよう
に、積層単板Aの上下面を上下プレス盤7a、7bによって
押圧する際に、この積層単板Aの両側端面に左右プレス
部材9a、9bを押圧させることにより積層単板Aを両側か
ら挟持、固定しておいてもよい。次に、本発明の具体的
な実施例と比較例を示す。
【0014】
【実施例】
実施例 厚さ0.45mm、幅10cm、繊維方向の長さが15cmのベイツガ
板目全乾単板を25枚、その繊維方向を同一方向に向けた
状態で積層し、この積層単板の左右両側端面に図1に示
すように、厚さ10mmの合板からなる挟持材を介して固定
部材を配設したのち、長尺ボルトおよびナットにより木
材単板が幅方向に拡がらないように締め付ける。こうし
て挟圧固定された積層単板の厚み方向の上下面に硬質ゴ
ム製の押圧部材を当接させて、積層単板をその厚み方向
の寸法が20%、圧縮されるまでプレスによって圧締して
単板の細胞壁に無数の亀裂を発生させた。プレスの圧締
力は30kgf/cm2=であった。しかるのち、プレスを開放し
て取り出した単板を耐圧容器に入れ、この耐圧容器内に
不飽和ポリエステル樹脂を主成分とした粘度が700cpsに
調整されている硬化性樹脂を注入して50トールの減圧下
で10分間減圧し、次いで一旦常圧に戻したのち、容器内
圧力を5kg/cm2として30分間加圧した。この減圧・加圧
法によって樹脂液を含浸後、硬化させることによって得
られたWPC処理単板は、割れなどが生じていなく、早
材部と晩材部の濃淡が反転し、且つ早材部に樹脂がムラ
なく均一に含浸して透明感のある良好な外観を呈してい
た。
【0015】比較例1 厚さ0.45mm、幅10cm、繊維方向の長さが15cmのベイツガ
板目全乾単板を耐圧容器に入れ、この耐圧容器内に不飽
和ポリエステル樹脂を主成分とした粘度が700cpsに調整
されている硬化性樹脂を注入して50トールの減圧下で10
分間減圧し、次いで一旦常圧に戻したのち、容器内圧力
を5kg/cm2として30分間加圧した。この減圧・加圧法に
よって単板に樹脂液を含浸後、硬化させることによって
得られたWPC処理単板は、所々に注入不良による濁っ
た部分があり、好ましくない外観を呈していた。
【0016】比較例2 厚さ0.45mm、幅10cm、繊維方向の長さが15cmのベイツガ
板目全乾単板を25枚、ロール間隔を0.31mmに設定したロ
ールプレス間に1枚ずつ順次通過させることによって厚
さ方向に30%圧縮した。圧縮後、20枚の単板に目に見え
る亀裂が生じていた。亀裂が入っている単板も含めて全
ての単板を耐圧容器に入れ、この耐圧容器内に不飽和ポ
リエステル樹脂を主成分とした粘度が700cpsに調整され
ている硬化性樹脂を注入して50トールの減圧下で10分間
減圧し、次いで一旦常圧に戻したのち、容器内圧力を5
kg/cm2として30分間加圧した。この減圧・加圧法によっ
て単板に樹脂液を含浸後、硬化させることによって得ら
れたWPC処理単板は、全体的に含浸ムラは殆ど生じて
いなかったが、晩材部も圧縮処理されているために樹脂
液が該晩材部にも注入、硬化しており、このため、晩材
部の透明感が増して早材部との濃淡差が不鮮明となり、
WPC独特の化粧性が発現できていなかった。
【0017】
【発明の効果】以上のように本発明の木材単板の処理液
注入前処理方法によれば、複数枚の木材単板を、木材繊
維の方向を同一方向に揃えて単板厚み方向に積層し、こ
の積層単板の幅方向の両側端面を挟持材によって挟持し
た状態で木材繊維の方向と略直交する方向から積層単板
を押圧して積層単板を構成する全ての木材単板を厚み方
向に圧縮するものであるから、木材単板に大きな割れを
生じさせることなく細胞壁に多数の亀裂を生じさせるこ
とができ、しかも、複数枚の木材単板を同時に処理でき
るために生産性が向上するものである。
【0018】さらに、木材板目単板が積層状態で厚み方
向に押圧されるため、各木材単板の早材部が強度の大き
い晩材部を介して厚み方向に集中的に圧縮されて多数の
亀裂が生じ、早材部に生じやすい処理液の含浸ムラによ
る化粧性の低下を軽減して生産歩留りが向上するばかり
でなく、早材部と晩材部の濃淡を明瞭に反転させた透明
感のある良好な外観を呈するWPC単板を得ることがで
きるものである。また、圧縮処理後の木材単板への樹脂
液含浸も、ディッピングや塗布などの簡便な方法によっ
てムラのない含浸が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層単板を挟持、固定した状態の簡略斜視図、
【図2】積層単板を厚み方向に圧締めしている状態の簡
略正面図、
【図3】板目単板の拡大縦断面図、
【図4】別な圧締手段を示す簡略正面図、
【図5】従来例を示す簡略斜視図。
【符号の説明】
1 木材単板 2 挟持材 3 固定部材 5 長尺ボルト 6 ナット 7a、7b 上下プレス盤 A 積層単板

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数枚の木材単板を、木材繊維の方向を
    同一方向に揃えて単板厚み方向に積層し、この積層単板
    の幅方向の両側端面を挟持材によって挟持した状態で厚
    み方向から押圧して積層単板を構成する全ての木材単板
    を厚み方向に圧縮することにより、木材細胞壁に亀裂を
    生じさせることを特徴とする木材単板の処理液注入前処
    理方法。
  2. 【請求項2】 木材単板は板目単板または追い柾単板で
    あることを特徴とする請求項1記載の木材単板の処理液
    注入前処理方法。
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